ガウスの歴史を巡るブログ(その日にあった過去の出来事)

 学生時代からの大の旅行好きで、日本中を旅して回りました。その中でいろいろと歴史に関わる所を巡ってきましたが、日々に関わる歴史上の出来事や感想を紹介します。Yahooブログ閉鎖に伴い、こちらに移動しました。

タグ:農地改革

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 今日は、太平洋戦争敗戦後の占領下、1945年(昭和20)に、GHQが「農業計画に関する覚書」(SCAPIN-257)を指令した日です。 
 「農業計画に関する覚書(のうぎょうけいかくにかんするおぼえがき)」は、昭和時代前期の太平洋戦争敗戦後の連合国軍占領下で、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)によって、1945年(昭和20)11月9日に発令された、連合国最高司令官指令第257号(SCAPIN-257)のことでした。
 1946年(昭和21)の日本における食糧生産問題に適切に対応するための計画を1945年(昭和20)12月15日までに、GHQへ提出するよう日本政府に指示したものです。その計画内容は、①1946年度の收穫のための植付に間に合うよう新地の開墾又は転用計画、②非常時物質の食糧としての利用計画(樹果、桑の葉、甘薯の蔓その他所謂食糧代用物資を含む)、③1946年度穀類生產計画に対応する化学肥料計画、④牽引用獣類が不足状態にある場合はこの不足に対応する計画、⑤農業補助金その他奨励的支給金計画、⑥米及びその他農産物の農家割当計画及びその集荷方法の詳細、⑦1946年度に於ける農機具及び機械類の利用案、⑧1946年食糧生産計画の管理、監督及び実施計画となっていました。
 また、日本本土の農業に対する長期計画に関する計画案も1945年(昭和20)12月31日までに提出することを求めています。そちらの計画内容は、(a)土地開墾予定計画案、(b)農業組合及びその他農夫団体に関する予定計画案、(c)農家小作、農家負債、農家信用貸(クレジット)、農家貸附金の利率、小作地に対する借地料、農家の税金、及び農家物資の費用等農地問題に対する処理案となっていて、その後の農地改革を促すものとなっていました。
 以下に、「農業計画に関する覚書」(SCAPIN-257)の英語版と日本語訳を掲載しておきましたので、ご参照下さい。

〇「農業計画に関する覚書」(SCAPIN-257)1945年(昭和20)11月9日GHQ指令

GENERAL HEADQUARTERS
SUPREME COMMANDER FOR THE ALLIED POWERS

AG 423 (9 Nov 45) NR
 (SCAPIN-257)          9 November 1945

MEMORANDUM FOR:THE IMPERIAL JAPANESE GOVERNMENT.
THROUGH:Central Liaison Office, Tokyo.
SUBJECT:Agriculture Program.

1. The Imperial Japanese Government will submit to this headquarters, on or before 15 December 1945, its program for meeting the food production problem in Japan Proper during the calendar year 1946. Among other details in this plan, specific information will be included on the following subjects:
 a. Plans for reclaiming or diverting new land to food crop production in time to be planted to crops in 1946. The information submitted will include:
 (1) The land area involved in each project.
 (2) Location of the project (local address and prefecture)
 (3) Crops that are expected to be grown on each project with estimated yield therefrom.
 (4) Estimated unit costs of production on reclaimed land as compared with average unit production costs.
 (5) A map to show the locations of these new land areas.
 b. Plans for the utilization of unusual materials for food, including acorns, mulberry leaves, sweet potato vines, and other so-called food substitute items.
 c. Plans for chemical fertilizers to meet the crop production program for 1946. Specific information will include estimated supply and estimated requirements of nitrogen, phosphate, and potassium fertilizers to implement the program.
 d. Plans for meeting the shortage of draft animals on farms if such a condition exists.
 e. Plans for agricultural subsidies and other incentive payments together with amounts involved per unit of product concerned.
 f. Plans to show the proposed farm quotas for rice and other agricultural products, and details on how they will be collected.
 g. Plans for the utilization of farm tools, implements, and machinery in 1946, including the amounts available in Japanese markets, the number and types required, and the number and types which can be manufactured in Japan.
 h. Plans for the administration, supervision, and enforcement of the 1946 food production program.
 2. The Imperial Japanese Government will submit, on or before 31 December 1945, a report on its long-range program for agriculture in Japan Proper. These plans will include information on the following items but are not necessarily limited thereto:
 a. Plans on proposed land reclamation projects with areas of land involved, locations of projects, the production expected from the new projects in terms of specific crops or as rice equivalents, and the number of years required to complete each project. Pertinent maps, charts, and graphs will be included.
 b. Proposed plans in regard to agricultural associations and other farmer organizations.
 c. Proposed plans for dealing with such agrarian problems as farm tenancy, farm indebtedness, farm credit, interest rates on farm loans, rental charges on tenant operated lands, farm taxes, and costs of farm supplies.
 3. The Imperial Japanese Government will submit the above-named reports in five copies. Metric units of weights and measures will be used throughout.

  FOR THE SUPREME COMMANDER:

                 H.W.ALLEN,
               Colonel, A.G.D.,
            Asst Adjutant General.

<日本語訳>

農業計画に関する覚書
一九四五年一一月九日

1. 日本帝国政府は、一九四六曆年期間の日本本土内食糧生産問題に対処する計画を一九四五年一二月一五日又はそれ以前に本司令部に提出せねばならない。本計画の詳細中特に次の諸問題に関する報吿が含まれねばならない。
a. 一九四六年度の收穫のための植付に間に合うよう新地の開墾又は転用計画。これに関する報吿は次の各項を含むものとする:
(1) 各企画に含まれる土地
(2) 企画の所在(地方的宛名及び府県)
(3) 各企画地に植付予定の穀物及びその收穫予想量
(4) 平均単位生産価格と比較した開墾地の予想単位生産価格
(5) 新地域の所在を示す地図
b. 異常物質の食糧としての利用計画、樹果、桑の葉、甘薯の蔓その他所謂食糧代用物資を含む。
c. 一九四六年度穀類生產計画に対応する化学肥料計画。明細報告は本計画実施上の窒素、燐酸及びカルシユーム肥料の予想供給量及び予想需要量を含むこと。
d. 牽引用獣類の不足状態ある場合はこの不足に対応する計画。
e. 農業補助金その他奨励的支給金計画、同時に関係生産物単位当たり金額をも示すこと。
f. 米及びその他農産物の農家割当計画及びその集荷方法の詳細。
g. 一九四六年度に於ける農機具及び機械類の利用案、日本の市場にて入手し得る量、所要数及び種類及び日本にて製造し得る数、及び種類を含むこと。
h. 一九四六年食糧生産計画の管理、監督及び実施計画。

2. 日本帝国政府は、一九四六年一二月三一日又はそれ以前に、日本本土の農業に対する長期計画に関する計画案を提出せねばならない。これらの計画案は以下の各項に関する報吿を含まねばならない。但し必ずしも以下に限るものではない:
a. 土地開墾予定計画案と関係地の面積、企画の所在地、各種穀類及びその米予算による新企画の予想生産量、及び各企画の完成所用年和関係地図、図表及びグラフを含むこと。
b. 農業組合及びその他農夫団体に関する予定計画案。
c. 農家小作、農家負債、農家信用貸(クレデイツト)、農家貸付金の利率、小作地に対する借地料、農家の税金、及び農家物資の費用等農地問題に対する処理案。

3. 日本帝国政府は以上の諸報告五通を提出することを要する。重量及び寸法にはメートル単位を一貫して用いることを要する。

     『日本管理法令研究』12巻より

  ※旧仮名遣いを現代仮名遣いに、旧字を新字に直してあります。

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 今日は、昭和時代中期の占領下の1946年(昭和21)に、吉田茂内閣において、「農地制度改革の徹底に関する措置要綱」が閣議決定された日です。
 「農地制度改革の徹底に関する措置要綱(のうちせいどかいかくのてっていにかんするそちようこう)」は、日本政府により国会に提案されていた「農地調整法」改正による第一次農地改革が、GHQに拒否され、その後1946年(昭和21)6月の第7回対日理事会で占領軍の「農地改革覚書案」が作成されたのに基づいて、吉田茂内閣において閣議決定されたものでした。その内容は、①不在地主の小作地はすべて、在村地主の小作地は、北海道4町歩、都府県平均1町歩を超える部分を国が買収する、②国は、農地以外でも自作農創設のため必要の場合は、(イ)採草地、宅地等農業経営に不可欠な農業用地及び農業用施設、(ロ)小開墾可能地を市町村農地委員会の決定によって買収することができる、③農地の買受人は、可能な限度で農地の代価の全部又は一部を一時払することとし、その残額は年利三分二厘、期間最長三十年(据置期間を含める。)の年賦償還とする、④国は、農地の買収及び売渡を二年間に行ふものとし、これがため登記手続の簡易化を図る、⑤農地の買収・売渡し計画の立案・審議、紛争処理の機関として地方自治体に農地委員会を置き、市町村農地委員会は農地の所有者及び小作人から選挙によって同数の者を選ぶ、⑥小作料は定額金納とし、最高小作料率は収穫物価額の二割五分(田)、一割五分(畑)とする、⑦小作契約は、すべて文書によらしめることとし、小作料額、契約期間等の主要事項を明確ならしめる、などとなっています。
 これに基づいて、「自作農創設特別措置法」、「農地調整法」改正が、同年10月に国会で成立し、同月21日に公布(施行は12月29日)されました。この結果、農地改革が推進され、1950年(昭和25)までにほぼ完了し、寄生地主制は解体、農家の90%以上が自作農か自小作農となります。しかし、山林や原野はほとんど解放されず残され、山林地主などは存続することとなりました。
 以下に、「農地制度改革の徹底に関する措置要綱」を全文掲載しておきますので、ご参照下さい。

〇「農地制度改革の徹底に関する措置要綱」1946年(昭和21)7月25日閣議決定

農地制度改革の徹底に関する措置要綱
 昭和21年7月25日 閣議決定

農業生産力の発展と農村民主化の基礎の確立を図るため、さきに農地調整法の改正により農地制度の改革を実施中のところ、情勢の推移に鑑み、更にこれを強化徹底する必要が認められるに至ったので、この際左により現行制度を改正する。

第一 自作農創設を急速且つ公正に行ふため、国は必要な農地を買収し、その売渡を行ふ。

第二 左に掲げる農地は、国が買収する。
 (イ)農地の所有者が、その住所のある市町村の区域(隣接市町村の区域内で、市町村農地委員会が指定した区域を含める。以下同じ。)外において所有する小作地
 (ロ)農地の所有者が、その住所のある市町村の区域内において、一町歩(全都府県平均。北海道は四町歩。)を超える小作地を所有する場合、その面積を超える部分の小作地
 但しその住所のある市町村の区域内において所有する小作地の面積と、自作地の面積との合計が、二町歩(全都府県平均。北海道は十二町歩。)を超えるときは、その面積を超える部分の小作地

第三 左に掲げる農地で都道府県農地委員会又は市町村農地委員会が自作農創設の用に供することが適当と認めたものは、第二にかゝはらず、国が買収することができる。
 (イ)農業経営を目的としない法人その他の団体の所有する農地
 (ロ)農業経営を目的とする法人その他の団体の自作地で、農業の発達上好ましくないもの
 (ハ)個人の自作地で、農業の発達上好ましくないものの第二(ロ)の但書の面積を超える部分の農地

第四 左に掲げる農地は、第二にかゝはらず、国は買収しない。
 (イ)兵役、疾病等特別な事情で一時賃貸借された事が明かであり、その所有者が特別の事情が発生するまで自作して居り、且つ近く自作をすることを相当とするもので市町村農地委員会が認めた農地が第二(ロ)の面積を超える場合、その超える部分の小作地
 (ロ)共同耕作の目的に供されてゐる公有地又は農業団体の所有地等で都道府県農地委員会又は市町村農地委員会の認めたもの
 (ハ)近く宅地となすを相当とする農地、焼畑、切替地、新開墾地、収穫極めて不定な農地等で都道府県農地委員会又は市町村農地委員会において自作農創設のための買収を不適当と認めた農地

第五 第二乃至第四を適用する場合は、世帯を単位とする。

第六 国は、農地以外でも自作農創設のため必要の場合は、左に掲げるものを市町村農地委員会の決定によって買収することができる。
 (イ)採草地、宅地等農業経営に不可欠な農業用地及び農業用施設
 (ロ)小開墾可能地
 右によって買収したものの売渡は、農地に準ずる。

第七 第二、第三及び第五の適用については、昭和二十年十一月二十三日又は買収の時を基準とする。

第八 国は、市町村農地委員会が都道府県農地委員会の認可を得て、定めた計画に従って強制的に土地を買収する。
 農地の所有者は、市町村農地委員会の買収計画について異議の申立をなすことができる。

第九 国の買収した農地は、健全な自作農となる見込のあるものに対して売渡す。
 売渡の相手方は、買収した農地が小作地である場合には、その農地の小作人を原則とする。

第十 農地の買収及び売渡にあたっては、できる限り小作人の土地購入の機会を公正ならしめ、田畑の割合を適当ならしめ、且つ、耕地の集団化を図る。

第十一 第九及び第十の場合において特に必要ある場合には、市町村農地委員会は、農地の所有権、永小作権、賃借権の交換分合を強制的になすことができる。

第十二 農地の価格及び報奨金は、現行通りとする。

第十三 国が買収する農地の対価の支払は、原則として農地証券の交付による。

第十四 農地の買受人は、可能な限度で農地の代価の全部又は一部を一時払することとし、その残額は年利三分二厘、期間最長三十年(据置期間を含める。)の年賦償還とする。但し、買受人は、償還期間を短縮し又は繰上償還をなすことができる。
農地の代価の年賦償還額と農地に対する公租公課との合計額は、将来農産物の価格がいかに下落しても、その農地の平年の収穫物の価額の三分の一以内で中央農地委員会の定める割合を超えないものとする。この割合を超えた場合には、償還金の減免等の措置を講ずる。
農地の流失埋没その他災害に因り償還が著しく困難となった場合の措置は、右に準ずる。

第十五 市町村農地委員会の委員は、農地の所有者及び小作人から選挙によって同数の者を選ぶ。
前項の委員の人数は、十名乃至二十名とする。
選挙による委員の外農地の所有者及び小作人を代表する委員の合議によって、三名以内の委員を置くことができる。
都道府県農地委員会は、市町村農地委員会に準じて改組する。
農地に関する重要事項を処理するため、新に中央農地委員会を置く。
中央農地委員会の委員は、農地の所有者、小作人の代表者、学識経験者等を以て充てる。

第十六 国は、農地の買収及び売渡を二年間に行ふものとし、これがため登記手続の簡易化を図る。

第十七 国の行ふ自作農創設事業の実施のため、一定期間農地の所有権、永小作権、賃借権、その他の権利の設定又は移転及び小作地の取上げの制限を強化する。

第十八 農地証券の発行及び償還、農地代金の受入を処理するため特別会計を設置する。

第十九 第六の(ロ)以外の開墾用地についても、国は農地に準じてこれを買収する。

第二十 将来の農地の兼併を防止すると共に、農地利用の適正化を図るため、その所有権、永小作権、賃借権その他の権利の設定及び移転並に農地の使用目的の変更は、地方長官又は市町村農地委員会の承認を要することとし、尚必要な場合には、その譲渡先を指定することができる等の措置を講ずる。

第二十一 小作関係の改善に関しては、左の措置を講ずる
(イ)将来農産物の価格がいかに下落しても、小作料は、田にあっては平年収穫される米の価額の二割五分、畑にあっては平年収穫される主作物の価額の一割五分以内で、中央農地委員会の定める割合を超えることができない。
(ロ)小作契約は、すべて文書によらしめることとし、小作料額、契約期間等の主要事項を明確ならしめる。

   「農地改革資料集成 第2巻」農地改革資料編纂委員会編より

☆農地改革関係略年表

<1945年(昭和20)>
・11月22日 幣原喜重郎内閣において、「農地制度改革に関する件」が閣議決定される
・12月 第89帝国議会に「農地調整法改正案」が提出される
・12月9日 GHQの最高司令官マッカーサーは、農地改革の徹底のため、日本政府に「農地改革に関する覚書」(SCAPIN-411)を送る
・12月28日 「農地調整法改正」(第1次農地改革)が成立・公布される

<1946年(昭和21)>
・6月 第7回対日理事会で占領軍の「農地改革覚書案」が作成される
・7月25日 吉田茂内閣において、「農地制度改革の徹底に関する措置要綱」が閣議決定される
・10月21日 「自作農創設特別措置法」、「農地調整法再改正」(第2次農地改革)が公布される
・12月29日 「自作農創設特別措置法」、「農地調整法再改正」(第2次農地改革)が施行される

<1947年(昭和22)>
・3月 第1回の農地買収が実施される

<1948年(昭和23)>
・2月4日 GHQの最高司令官マッカーサーは、土地改革法の対象となるすべての土地を遅滞なく購入するように、日本政府に「農地改革に関する覚書」(SCAPIN-1855)を送る

<1950年(昭和25)>
・5月 小作料と農地価格の引き上げが実施される
・9月11日 「自作農の創設に関する政令」が公布・施行され、農地改革がほぼ完了し、寄生地主制は解体、農家の90%以上が自作農か自小作農となる

<1952年(昭和27)>
・7月15日 農地改革の成果維持のため、「農地法」が公布される

〇同じ日の過去の出来事(以前にブログで紹介した記事)

1629年(寛永6)紫衣事件に抗議した沢庵らを東北へ流罪にする(新暦9月12日)詳細
1683年(天和3)江戸幕府が改訂した「武家諸法度」(天和令)15ヶ条を発布し、「諸士法度」と統合する(新暦8月26日)詳細
1929年(昭和4)映画監督・映画製作者で、「日本映画の父」と呼ばれた牧野省三の命日詳細
1933年(昭和8)フェーン現象により山形県山形市で40.8℃を記録する詳細
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 今日は、昭和時代中期の1946年(昭和21)に、「農地調整法」改正、「自作農創設特別措置法」公布により、第二次農地改革が開始された日です。
 農地改革(のうちかいかく)は、農地の所有制度を改革することですが、日本においては、特に太平洋戦争後の占領下、1947年(昭和22)~1950年(昭和25)にかけて連合国最高司令部(GHQ)の指令によって行われた日本農業の改革のこととされてきました。1945年(昭和20)12月9日、GHQの最高司令官マッカーサーは日本政府に「農地改革に関する覚書」(SCAPIN-411)を送り、「数世紀にわたる封建的圧制の下、日本農民を奴隷化してきた経済的桎梏を打破する」ことを指示します。
 これ以前に日本政府により国会に提案されていた「農地調整法」改正による第一次農地改革は、この後GHQに拒否され、日本政府はGHQの指示により、より徹底的な「自作農創設特別措置法」、「農地調整法」改正による第二次農地改革案を作成、これは1946年(昭和21)10月に国会で成立し、同月21日に公布(施行は12月29日)されました。この結果、農地改革が推進され、1950年(昭和25)までにほぼ完了し、寄生地主制は解体、農家の90%以上が自作農か自小作農となります。しかし、山林や原野はほとんど解放されず残され、山林地主などは存続することとなりました。
 以下に、「自作農創設特別措置法」の昭和22年法律第241号による改正後、昭和24年法律第155号による改正前の条文を全文掲載しておきますのでご参照下さい。

〇「自作農創設特別措置法」(昭和21年法律第43号) 1946年(昭和21)10月21日に公布、同12月29日施行

第一条 この法律は、耕作者の地位を安定し、その労働の成果を公正に享受させるため自作農を急速且つ広汎に創設し、又、土地の農業上の利用を増進し、以て農業生産力の発展と農村における民主的傾向の促進を図ることを目的とする。

第二条 この法律において、農地とは、耕作の目的に供される土地をいひ、牧野とは、家畜の放牧又は採草の目的に供される土地(農地並びに植林の目的その他家畜の放牧及び採草以外の目的に主として供される土地を除く。)をいふ。
2 この法律において、自作地とは、耕作の業務を営む者が所有権に基きその業務の目的に供してゐる農地をいひ、小作地とは、耕作の業務を営む者が賃借権、使用貸借による権利、永小作権、地上権又は質権に基きその業務の目的に供してゐる農地をいふ。
3 この法律において、自作牧野とは、耕作又は養畜の業務を営む者が所有権に基き家畜の放牧又は採草の目的に供してゐる牧野をいひ、小作牧野とは、耕作又は養畜の業務を営む者が賃借権、使用貸借による権利、永小作権又は質権に基き家畜の放牧又は採草の目的に供してゐる牧野をいふ。
4 前二項の規定の適用については、耕作若しくは養畜の業務を営む者の同居の親族若しくはその配偶者又は耕作若しくは養畜の業務を営む者の親族若しくはその配偶者で命令で定める特別の事由に因りその者と同居しなくなつたものが有する前二項に掲げる権利は、これをその耕作又は養畜の業務を営む者の有するものとみなす。
5 この法律において、自作農とは、自作地に就き耕作の業務を営む個人をいひ、小作農とは、小作地に就き耕作の業務を営む個人をいふ。

第三条 左に掲げる農地は、政府が、これを買収する。
一 農地の所有者がその住所のある市町村の区域(その隣接市町村の区域内の地域で市町村農地委員会が都道府県農地委員会の承認を得て当該市町村の区域に準ずるものとして指定したものを含む。以下本条、第四条及び第七条第二項において同じ。)外において所有する小作地
二 農地の所有者がその住所のある市町村の区域内において、北海道にあつては四町歩、都府県にあつては中央農地委員会が都府県別に定める面積を超える小作地を所有する場合、その面積を超える面積の当該区域内の小作地
三 農地の所有者がその住所のある市町村の区域内において所有する小作地の面積とその者の所有する自作地の面積の合計が、北海道にあつては十二町歩、都府県にあつては中央農地委員会が都府県別に定める面積を超えるときは、その面積を超える面積の当該区域内の小作地
2 前項第二号又は第三号に規定する都府県別の面積は、その平均面積が同項第二号に規定するものにあつては概ね一町歩、同項第三号に規定するものにあつては概ね三町歩になるやうに、これを定めなければならない。
3 都道府県農地委員会は、特に必要があると認めるときは、中央農地委員会の承認を得て、当該都道府県の区域を二以上の区域に分け各区域別に第一項第二号又は第三号の都道府県別の面積に代るべき面積を定めることができる。但し、各区域別の面積は、その平均面積が概ね同項第二号又は第三号の当該都道府県別の面積になるやうに、これを定めなければならない。
4 第五条第七号及び第八号に規定する農地で命令で定めるものの面積は、第一項第二号又は第三号に規定する小作地又は自作地の面積にこれを算入しない。
5 第一項の農地の外左に掲げる農地で、都道府県農地委員会又は市町村農地委員会が、命令の定めるところにより、自作農の創設上政府において買収することを相当と認めたものは、政府が、これを買収する。
一 自作農でその者の営む耕作の業務が適正でないものの所有する自作地の面積が第一項第三号の面積(第三項の規定により当該区域につき定められた同号の面積に代るべき面積があるときは、その面積)を超える場合、当該面積を超える面積の自作地二 自作地で当該自作地に就いての自作農以外の者が請負その他の契約に基き耕作の業務に供してゐるもの
三 法人その他の団体でその営む耕作の業務が適正でないものの所有する自作地
四 法人その他の団体の所有する小作地
五 農地で所有権その他の権原に基きこれを耕作することのできる者が現に耕作の目的に供してゐないもの
六 前各号に掲げるものを除く外農地でその所有者が市町村農地委員会に対し政府において買収すべき旨を申し出たもの
6 前項第一号又は第三号の規定の適用については、左の場合に限り、当該自作農又は法人その他の団体の営む耕作の業務は、これを適正なものとする。
一 自作農については、その者が当該農地を効率的に耕作するのに充分な自家労力を有している場合又は当該農地を分割して耕作することに因つてその生産の減退が必至であると認められる場合
二 法人その他の団体については、当該農地を分割して耕作することに因つてその生産の減退が必至であると認められ、且つその耕作の業務が法人その他の団体の主たる業務の運営に欠くことのできないものである場合

第四条 前条の規定の適用については、農地の所有者の同居の親族若しくはその配偶者又は農地の所有者の親族若しくはその配偶者で第二条第四項に規定する特別の事由に因りその者と同居しなくなつた者が当該農地の所有者の住所のある市町村の区域内において所有する農地は、これを当該農地の所有者の所有する農地とみなす。
2 前条第一項の規定の適用については、農地の所有者で第二条第四項に規定する特別の事由に因りその所有する農地のある市町村の区域内に住所を有しなくなつたものは、これを当該市町村の区域内に住所を有する者とみなす。

第五条 政府は、左の各号の一に該当する農地については、第三条の規定による買収をしない。
一 国又は公共団体が公共用地又は公用に供してゐる農地
二 都道府県、市町村その他命令で定める団体の所有する農地で自作農の創設又は共同耕作の目的に供するもの
三 試験研究若しくは農地指導の目的又は主として省令で定める耕作以外の目的に供してゐる農地で都道府県知事の指定したもの
四 都市計画法第十二条第一項の規定による土地区劃整理を施行する土地その他主務大臣の指定するこれに準ずる土地又は都市計画による同法第十六条第一項の施設に必要な土地の境域内にある農地で都道府県知事の指定する区域内にあるもの
五 近く土地使用の目的を変更することを相当とする農地で市町村農地委員会が都道府県農地委員会の承認を得て指定し、又は都道府県農地委員会の指定したもの
六 自作農が疾病その他命令で定める事由に因つてその自作地に就き自ら耕作の業務を営むことができないため賃貸借又は使用貸借により一時当該自作地を他人の耕作の業務の目的に供した場合、市町村農地委員会が、その自作農が近く自作するものと認め、且つその自作を相当と認める当該農地但し、その自作農の所有する農地の面積が第三条第一項第三号の面積又は同条第三項の規定により当該区域につき定められた同号の面積に代るべき面積を超えるときは、その面積を超えない面積の当該農地に限る。
七 第四十条の二の規定による買収のあつた牧野の所有者がその買収のあつた後において所有する牧野を以て開発した自作地
八 新開墾地、焼畑、切替畑等収穫の著しく不定な農地その他命令で定める農地で市町村農地委員会が政府において買収することを不相当と認めるもの

第五条の二 都道府県が農業技術の現地指導の目的に供するため昭和二十一年十二月二十九日以後において賃借権、使用貸借による権利又は永小作権を取得した農地については、前条第一号の規定は、これを適用しない。但し、これらの権利の取得の当時当該農地の所有者が当該農地に就いて耕作の業務を営む自作農である場合において、当該農地と当該自作農が現に耕作の業務を営む自作地との面積の合計が第三条第一項第三号の面積(同条第三項の規定により当該区域につき定められた同号の面積に代るべき面積があるときは、その面積以下本条において同じ。)を超えないときは、当該農地の全部、同号の面積を超えるときは、当該農地のうち当該自作農の面積との合計が同号の面積に達するまでの部分については、この限りでない。

第六条 政府が第三条の規定による買収をするには、市町村農地委員会の定める農地買収計画によらなければならない。
2 農地買収計画においては、買収すべき農地並びに買収の時期及び対価を定めなければならない。
3 前項の対価は、当該農地につき土地台帳法による賃貸価格があるときは、田にあつては当該賃貸価格に四十(農地調整法第六条の三第一項の規定により都道府県知事の定めた率があるときは、その率)、畑にあつては当該賃貸価格に四十八(同条同項の規定により都道府県知事の定めた率があるときは、その率)を乗じて得た額(同条同項の規定により都道府県知事の定めた額があるときは、その額)の範囲内においてこれを定め、当該農地につき土地台帳法による賃貸価格がないときは、市町村農地委員会が都道府県知事の認可を受けて定めた額による。但し、特別の事情に因つて市町村農地委員会が都道府県知事の認可を受けて当該農地につき額を定めたときは、その額による。
4 市町村農地委員会は、農地買収計画を定めるには、左の事項を勘案してこれをしなければならない。
一 自作農となるべき者の農地を買ひ受ける機会を公正にすること。
二 自作農となるべき者の耕作する農地を集団化し、且つ当該地方の状況に応じて当該農地につき田畑の割合を適正にすること。
5 市町村農地委員会は、農地買収計画を定めたときは、遅滞なくその旨を公告し、且つ公告の日から十日間市町村の事務所において左の事項を記載した書類を縦覧に供しなければならない。
一 買収すべき農地の所有者の氏名又は名称及び住所二 買収すべき農地の所在、地番、地目(土地台帳の地目が現況と異なるときは、土地台帳の地目及び現況による地目以下同じ)及び面積
三 対価
四 買収の時期

第六条の二 昭和二十年十一月二十三日現在において小作地に就き耕作の業務を営んでいた小作農(その小作農が当該小作地につき同日現在において有していた賃借権、使用貸借による権利又は永小作権を当該小作農から譲り受けた者を含む。以下本条において同じ。)で同日以後において当該小作地に就いての耕作の業務をやめたもの若しくは同日現在における小作地で同日現在におけるその所有者若しくはその所有者の住所が同日以後において変更したものに就き同日以後引き続き耕作の業務を営んでいる小作農又はこれらの者の相続人が、市町村農地委員会に対して当該小作地の同日現在における所有者が同日現在において所有していた小作地につき同日現在における事実に基いて前条の規定による農地買収計画を定めるべきことを請求したときは、市町村農地委員会は、当該所有者が同日現在において所有していた小作地につき同日現在における事実に基いて農地買収計画を定めなければならない。
2 前項の請求があつた場合において、市町村農地委員会は、同項の規定による農地買収計画において左の各号の一に該当する小作地を買収すべきことを定めることはできない。
一 昭和二十年十一月二十三日現在における小作地の同日現在におけるその所有者又はその承継人が同日以後において当該小作地の賃貸借の解除若しくは解約(合意解約を含む。以下同じ。)をし、又は更新を拒絶した場合において、都道府県農地委員会が当該賃貸借の解除若しくは解約又は更新の拒絶のあつたときにおける当該所有者又は承継人及び小作農に就いての事情を調査して当該解除若しくは解約又は更新の拒絶を適法且つ正当であると認めた場合、当該解除若しくは解約又は更新の拒絶に係る小作地
二 前号の外市町村農地委員会において前項の請求が信義に反すると認めた場合、その請求をした者が昭和二十年十一月二十三日現在において耕作の業務を営んでいた小作地
三 前項の小作農又はその相続人が所有権、賃借権、使用貸借による権利又は永小作権に基いて第三条第一項第三号の面積又は同条第三項の規定により当該区域につき定められた同号の面積に代るべき面積を超える面積の農地に就き現に耕作の業務を営んでいる場合、その請求をした者が昭和二十年十一月二十三日現在において耕作の業務を営んでいた小作地
四 昭和二十年十一月二十三日現在における事実に基いて定められた農地買収計画によつて買収をするときは、当該小作他の同日現在における所有者又はその承継人で同日以後において当該小作地に就き耕作の業務を営むものの生活状態が同項の請求をした者の生活状態に較べて著しくわるくなる場合、その請求をした者が同日現在において耕作の業務を営んでいた小作地

第六条の三 市町村農地委員会が前条第一項の請求を受けた日から二箇月以内に当該請求に係る小作地の昭和二十年十一月二十三日現在における所有者が同日現在において所有していた小作地につき同項の規定により農地買収計画を定めない場合において、当該請求をした者がその期間経過後一箇月以内に都道府県農地委員会に対して当該市町村農地委員会に同項の規定により農地買収計画を定めるべき旨を指示すべきことを請求したときは、都道府県農地委員会は、当該市町村農地委員会に対して同項の規定により農地買収計画を定めるべき旨を指示しなければならない。
2 前項の場合には、前条第二項の規定を準用する。この場合において、同項第二号中「市町村農地委員会」とあるのは、「都道府県農地委員会」と読み替へるものとする。

第六条の四 前二条の規定の適用については、昭和二十年十一月二十三日現在において第三条第五項第二号に規定する自作地に就き請負その他の契約に基いて耕作の業務を営んでいた者で同日以後当該自作地に就いての耕作の業務をやめたものは、これを小作農とみなし、当該自作地は、これを小作地とみなす。

第六条の五 昭和二十年十一月二十三日現在と第六条の規定による農地買収計画を定める時期とにおいて、所有権、賃借権、使用貸借による権利若しくは永小作権その他の権原に基いて耕作の業務を営む者が異なり、又は所有者若しくは所有者の住所が異なる農地及び同日現在における農地で同日以後において農地でなくなつたものについては、市町村農地委員会は、第六条の二第一項の請求がない場合でも、同日現在における事実に基いて第六条の規定による農地買収計画を定めることができる。
2 前項の場合には、第六条の二第二項の規定を準用する。
3 市町村農地委員会は、第一項の農地につき第六条の二第一項の規定により農地買収計画を定めることの可否につき審議しなければならない。
4 市町村農地委員会は、前項の審議において第一項の規定により農地買収計画を定めることを否としたときは、その理由を議事録に記載しなければならない。

第七条 第六条の規定による農地買収計画に定められた農地につき所有権を有する者は、当該農地買収計画について異議があるときは、市町村農地委員会に対して異議を申し立てることができる。但し、同条第五項の縦覧期間を経過したときは、この限リでない。
2 前項の農地につき所有権を有する者が当該農地のある市町村の区域内に住所を有するときは、その者が当該市町村の区域内において所有する農地に就き耕作の業務を営む小作農についても、また同項と同様とする。この場合には、第四条第一項の規定を準用する。
3 市町村農地委員会は、第一項の申立を受けたときは、第六条第五項の縦覧期間満了後二十日以内に決定をしなければならない。
4 前項の決定に対して不服ある申立人は、都道府県農地委員会に訴願することができる。但し、同項の期間満了後十日を経過したときは、この限リでない。
5 都道府県農地委員会は、前項の訴願を受理したときは、同項但書の期間満了後二十日以内に裁決しなければならない。

第八条 第六条の規定による農地買収計画につき同条第五項の期間内に前条第一項の規定による異議の申立がないとき、同項の規定による異議の申立があつた場合においてそのすべてについて同条第三項の規定による決定があり、且つ同条第四項但書の期間内に訴願の提起がなかつたとき、又は同項の規定による訴願の提起があつた場合においてそのすべてについて同条第五項の規定による裁決があつたときは、市町村農地委員会は、遅滞なく当該農地買収計画について都道府県農地委員会の承認を受けなければならない。

第九条 第三条の規定による買収は、都道府県知事が前条の規定による承認があつた農地買収計画により当該農地の所有者に対し買収令書を交付して、これをしなければならない。但し、当該農地の所有者が知れないとき、その他令書の交付をすることができないときは、命令の定めるところにより、第二項各号に掲げる事項を公告し、令書の交付に代へることができる。
2 令書には、左の事項を記載しなければならない。
一 第六条第五項各号に掲げる事項
二 対価の支払の方法及び時期
三 その他必要な事項

第十条 第三条、第六条及び前条の規定の適用については、農地の面積は、土地台帳に登録した当該農地の地積による。但し、市町村農地委員会が当該農地につき土地台帳に登録した地積を以てその面積とすることを著しく不相当と認め、別段の面積を定めたときは、当該農地については、その面積による。

第十一条 第六条乃至第九条の規定によりした手続その他の行為は、第三条の規定により買収すべき農地の所有者、先取特権者、質権者又は抵当権者の承継人に対してもその効力を有する。

第十二条 都道府県知事が第九条の規定による手続をしたときは、令書に記載し、又は同条第一項但書の規定により公告した買収の時期に、当該農地の所有権は、政府が、これを取得し、当該農地に関する権利は、消滅する。
2 前項の規定により政府が取得した農地につきその取得の当時賃借権、使用貸借による権利、永小作権、地上権又は地役権があるときは、第十二条の二第二項の場合を除いて、その取得の時に当該権利を有する者のために従前と同一の条件を以て当該権利が設定されたものとみなす。但し、その権利の存続期間は、従前の権利の残存期間とする。
3 前項の場合において、従前の権利の上に先取特権、質権又は抵当権があるときは、その先取特権、質権又は抵当権は、同項の規定により設定された権利の上にあるものとみなす。

第十二条の二 前条第一項の規定により政府の取得した農地がその取得の当時電気事業法による電気事業者又は同法第三十条第二項の事業を営む者(以下電気事業者と総称する。)の所有に属し、電線路(電線の支持物を除く。以下本条において同じ。)の施設の用に供されているものであるときは、その取得の時に当該電気事業者のために、当該電線路の施設を目的として、当該電線路に近接する発電所、変電所、開閉所又は電線の支持物の用地で当該電気事業者の所有するものを要役地とし、当該農地を承役地とする地役権が設定されたものとみなす。
2 前条第一項の規定により政府が取得した農地につきその取得の当時電気事業者が電線路の施設のためにする賃借権、使用貸借による権利又は地上権を有するときは、その取得の時に当該電気事業者のために当該電線路の施設を目的として、当該電線路に近接する発電所、変電所、開閉所又は電線の支持物の用地で当該電気事業者の所有するものを要役地とし、当該農地を承役地とする地役権が設定されたものとみなす。但し、その地役権の存続期間は、従前の権利の残存期間とする。
3 前二項の地役権は、承役地の所有者が工作物の設備その他電路線の施設の妨げとなる行為をしないことを内容とする。
4 第一項又は第二項の規定により地役権が設定された場合において、その設定の当時その要役地が抵当権の目的である工場財団、鉄道財団又は軌道財団に属しているときは、その地役権は、当該抵当権の目的となるものとする。

第十三条 第三条の規定による農地の買収については、政府は、その対価を買収の時期における当該農地の所有者に支払はなければならない。但し、当該農地の上に先取特権、質権又は抵当権があるときは、当該権利を有する者から供託をしなくてもよい旨の申出がある場合を除いて、政府は、その対価を供託しなければならない。
2 当該農地の上に先取特権、質権又は抵当権を有する者は、前項の規定により供託した対価に対してその権利を行ふことができる。
3 政府は、第三条の規定により買収する農地の所有者に対して、その農地の面積(その農地の面積が同条第一項第三号の面積を超えるときは、同号の面積)に応じて報償金を交付する。
4 前項の報償金の一段当りの額は、田にあつては二百二十円、畑にあつては百三十円を基準とし、当該農地の収量、位置その他の状況を参酌して、主務大臣が、これを定める。
5 第三項の規定の適用については、第十条の規定を準用する。

第十四条 第三条の規定により買収した農地の対価の額に不服ある者は、訴を以てその増額を請求することができる。但し、令書の交付又は第九条第一項但書の公告のあつた日から一箇月を経過したときは、この限りでない。
2 前項の訴においては、国を被告とする。

第十五条 第三条の規定により買収する農地若しくは第十六条第一項の命令で定める農地に就き自作農となるべき者又は当該農地につき所有権その他の権利を有する者が左に掲げる農業用施設、水の使用に関する権利、立木、土地又は建物を政府において買収すべき旨の申請をした場合において、市町村農地委員会がその申請を相当と認めたときは、政府は、これを買収する。
一 第三条の規定により買収する農地又は第十六条第一項の命令で定める農地の利用上必要な農業用施設、水の使用に関する権利又は立木
二 第三条の規定により買収する農地又は第十六条第一項の命令で定める農地に就き自作農となるべき者が、賃借権、使用貸借による権利若しくは地上権を有する宅地又は賃借権を有する建物
2 前項の場合には、第六条第一項第二項第五項、第七条乃至第十二条の二、第十三条第一項第二項及び前条の規定を準用する。
3 前項において準用する第六条第二項の対価は、牧野にあつては、命令の定めるところにより、当該牧野の近傍類似の農地の時価を参酌し、牧野以外のものにあつては時価を参酌してこれを定める。

第十六条 政府は、第三条の規定により買収した農地及び政府の所有に属する農地で命令で定めるものを、命令の定めるところにより、その買収の時期において当該農地に就き耕作の業務を営む小作農その他命令で定める者で自作農として農業に精進する見込のあるものに売り渡す。
2 政府は、特別の事情があるときは、前項に掲げる農地を省令で定める団体に売り渡すことができる。
3 前項の規定による売渡を受けた団体が行ふ農地の管理又は売渡に関し必要な事項は、省令でこれを定める。

第十七条 前条に規定する者で同条に規定する農地を買ひ受けようとするものは、市町村農地委員会に対してその申込をしなければならない。

第十八条 政府が第十六条の規定により売渡をするには、市町村農地委員会の定める農地売渡計画によらなければならない。
2 農地売渡計画においては、売り渡すべき農地並びに売渡の相手方、時期及び対価を定めなければならない。
3 前項の売渡の相手方は、前条の規定による買受の申込をした者でなければならない。
4 市町村農地委員会は、農地売渡計画を定めたときは、遅滞なくその旨を公告し、且つ公告の日から十日間市町村の事務所において左の事項を記載した書類を縦覧に供しなければならない。
一 売渡の相手方の氏名又は名称及び住所
二 売り渡すべき農地の所在、地番、地目及び面積
三 対価
四 売渡の時期
5 農地売渡計画については、第八条の規定を準用する。この場合において、同条中「同条第五項」とあるのは、「第十八条第四項」と、「前条第一項」とあるのは、「第十九条第一項」と読み替へるものとする。

第十九条 第十七条の規定による買受の申込をした者は、前条の規定による農地売渡計画について異議があるときは、市町村農地委員会に対して異議を申し立てることができる。但し、同条第四項の縦覧期間を経過したときは、この限りでない。
2 前項の場合には、第七条第三項乃至第五項の規定を準用する。この場合において、同条第三項中「第六条第五項」とあるのは、「第十八条第四項」と読み替へるものとする。

第二十条 第十六条の規定による売渡は、都道府県知事が第十八条第五項において準用する第八条の規定による承認があつた農地売渡計画により売渡の相手方に対し売渡通知書を交付して、これをしなければならない。
2 通知書には、左の事項を記載しなければならない。
一 第十八条第四項各号に掲げる事項
二 対価の支払の方法及び時期
三 その他必要な事項

第二十一条 前条の規定による売渡通知書の交付があつたときは、その通知書に記載された売渡の時期に、当該農地の所有権は、その通知書に記載された売渡の相手方に移転する。
2 前項の規定により取得した農地の対価については、第十四条の規定を準用する。この場合において、同条第一項中「増額」とあるのは、「減額」と読み替ヘるものとする。

第二十二条 第三条の規定により買収した農地で第十二条第二項の規定による権利の設定があつたもの及び第十六条第一項の命令で定める農地で賃借権、使用貸借による権利、永小作権、地上権又は地役権の設定されてゐるものにつき同条の規定による売渡があつた場合において、その権利を有する者が当該農地の売渡の相手方でないときは、当該権利(当該権利が地役権であるときは、市町村農地委員会が当該農地を耕作することの妨げになるものと認定した地役権に限る。)は、当該農地の売渡の時期に消滅する。但し、電気事業者のために電線路の施設を目的として設定されてゐる当該農地に関する権利はこの限りでない。
2 政府は、前項の規定により消滅する権利を有する者に対してその権利の消滅に因つて生じた損失を補償しなければならない。但し、その者が第六条第五項の規定による公告のあつた後第十二条第一項の規定により消滅した権利を取得した者又は第十六条第一項の命令で定める農地につき、省令で定める公告のあつた後前項の規定により消滅した権利を取得した者であるときは、この限りでない。
3 前項の規定により補償すべき損失は、第一項の規定による権利の消滅に因つて通常生ずべき損失とする。
4 第二項の補償金額は、市町村農地委員会が、都道府県知事の認可を受けてこれを決定する。
5 市町村農地委員会は、前項の補償金額を決定したときは、遅滞なく第二項の規定により補償を受けるべき者に対してこれを通知しなければならない。
6 第四項の補償金額に不服ある者は、訴を以てその増額を請求することができる。但し、前項の通知を受けた日から一箇月を経過したときは、この限りでない。
7 前項の訴においては、国を被告とする。
8 第一項の規定により消滅する権利の上に先取特権、質権又は抵当権があるときは、第十三条第一項及び第二項の規定を準用する。

第二十三条 政府が第十六条の規定により農地を売り渡す場合において、自作農の創設を適正に行ふため特に必要があるときは、市町村農地委員会は、地目、面積、等位等が当該農地と近似する小作地と当該農地との交換に関し、当該小作地の所有者に対して、必要な事項を指示することができる。
2 前項の指示は、交換により当該小作地の所有者の取得すべき農地及び政府の取得すべき農地についてその所在、地番、地目及び面積を定めて、これをしなければならない。
3 第一項の規定による指示を受けた者は、その指示を受けた日から十日以内に当該指示に係る交換に関して市町村農地委員会と協議しなければならない。
4 前項の場合において、協議が調はないとき、又は協議をすることができないときは、市町村農地委員会は、都道府県農地委員会の裁定の申請をすることができる。
5 前項の規定による裁定があつたときは、その定めるところにより、交換の契約が成立したものとみなす。

第二十四条 前条の規定による交換においては、同条第三項の協議又は同条第四項の裁定において定められた日に、農地の所有権の移転の効力が、生ずるものとする。
2 前項の規定による所有権の移転の際当該小作地の上にある先取特権、質権又は抵当権は、当該小作地の所有者が交換に因り取得した農地の上にあるものとする。

第二十五条 政府が第十六条の規定により農地を売り渡す場合において、自作農の創設を適正に行ふため特に必要があるときは、市町村農地委員会は、政府の売り渡すべき農地につき賃借権又は永小作権を有する者及び地目、面積、等位等が当該農地と近似する農地で政府の買収しないものにつき賃借権又は永小作権を有する者に対して当該賃借権又は永小作権の交換に関し必要な事項を指示することができる。
2 前項の指示は、交換に因り移転すべき賃借権又は永小作権の目的たる農地の所在、地番、地目及び面積を定めて、これをしなければならない。
3 第一項の規定による交換については、賃借権又は永小作権の移転は、民法第二百七十二条但書及び第六百十二条の規定にかかはらず、これをすることができる。
4 市町村農地委員会が第一項の指示をしたときは、遅滞なくその旨を当該指示に係る農地の所有者及び所有者でない賃貸人に通知しなければならない。
5 前項の通知を受けた者は、第一項の指示に異議があるときは、市町村農地委員会に異議を申し立てることができる。但し、前項の通知を受けた日から十日を経過したときは、この限りでない。
6 第一項の規定による交換には、第二十三条第三項乃至第五項及び前条の規定を準用する。この場合においては、第二十三条第三項中「市町村農地委員会と協議し」とあるのは、「協議し」と、同条第四項中「市町村農地委員会は、都道府県農地委員会の裁定」とあるのは、「第一項の指示を受けた者は、市町村農地委員会の裁定」と読み替へるものとする。

第二十六条 第十六条の規定により売り渡した農地の対価の支払は、支払期間三十年(据置期間を含む。)以内、年利三分二厘の均等年賦支払の方法によるものとする。但し、当該農地を買ひ受けた者の申出のあるときは、その対価の全部又は一部につき一時支払の方法によるものとする。

第二十六条の二 政府は、命令の定めるところにより、第十六条の規定により売り渡した農地の対価の徴収を市町村にさせることができる。
2 市町村が避けられない災害に因つて前項の規定による徴収金を失つたときは、政府は、省令の定めるところにより、その責任を免除することができる。
3 第一項の対価の支払期限を過ぎてその対価を支払はない者があるときは、政府は、命令の定めるところにより、これを督促し、督促手数料及び延滞金を徴収する。
4 第一項の対価並びに前項の督促手数料及び延滞金は、国税滞納処分の例によりこれを徴収することができる。但し、先取特権の順位は、国税に次ぐものとする。

第二十七条 第十六条の規定により売り渡した農地の対価を命令で定める支払の方法により支払ふものとした場合における年賦金額と当該農地の公租公課の金額の合計額が当該農地の通常収穫物の価額の一定の割合を超えるときは、政府は、当該農地の対価の支払につき年賦金額を減免し、年賦金額の支払を猶予し、その他対価の支払に関する負担を軽減するため、必要な措置を講じなければならない。
2 前項の一定の割合は、中央農地委員会が、これを定める。但し、三分の一を超えてはならない。
3 前項に規定するものの外第一項の規定の施行に関し必要な事項は、命令でこれを定める。

第二十八条 第十六条の規定による農地の売渡を受けた者若しくはその者から当該農地の所有権を承継した者が当該農地に就いての自作をやめようとするとき又は同条第二項の省令で定める団体が同条第三項の省令に違反したときは、政府は、命令の定めるところにより、その者に対して当該農地を買ひ取るべきことを申し入れなければならない。
2 前項の申入があつたときは、その時にその申入において定めた条件によつて当該農地の売買が、成立する。この場合における当該農地の対価には、第六条第三項及び第十四条の規定を準用する。
3 政府は、第一項の規定による買取により農地を取得したときは、命令で定める場合を除いて、遅滞なく自作農として農業に精進する見込のある者に当該農地を売り渡さなければならない。
4 前項の規定による売渡については、第十条、第十六条第二項第三項、第十七条乃至第二十一条及び第二十六条乃至前条の規定を準用する。この場合において、第十七条中「前条」とあるのは、「第二十八条第三項」と読み替へるものとする。
5 第三項の規定により売り渡した農地については、前四項の規定を準用する。

第二十九条 第十六条の規定により農地の売渡を受けた者で命令で定めるものは、第十五条の規定により政府が買収した農業用施設、水の使用に関する権利、立木、土地若しくは建物又は政府の所有に属する農業用施設、水の使用に関する権利、立木、土地若しくは建物で命令で定めるものを買ひ受けようとするときは、市町村農地委員会に対して申込をしなければならない。
2 第十五条の規定により政府が買収した農業用施設、水の使用に関する権利、立木、土地若しくは建物又は政府の所有に属する農業用施設、水の使用に関する権利、立木、土地若しくは建物で命令で定めるものの売渡については、第十六条、第十八条乃至第二十二条、第二十六条、第二十六条の二及び前条の規定を準用する。この場合において、第十八条第三項中「前条」とあり、又は第十九条第一項中「第十七条」とあるのは、「第二十九条第一項」と読み替ヘるものとする。

第二十九条の二 第三条若しくは第十五条の規定により買収した土地、農業用施設、水の使用に関する権利、立木若しくは建物又は政府の所有に属する土地、農業用施設、水の使用に関する権利、立木若しくは建物で命令で定めるものの借賃、小作料、地代その他の使用料の徴収については、第二十六条の二の規定を準用する。

第三十条 政府は、自作農を創設し、又は土地の農業上の利用を増進するため必要があるときは、左に掲げるものを買収することができる。
一 農地及び牧野以外の土地で農地の開発に供しようとするもの
二 政府の所有に属する土地で農地の開発に供しようとするものに関する所有権及び担保権以外の権利
三 第一号又は前号の土地附近の農地又は牧野で当該土地と併せて開発するのを相当とするもの
四 第一号又は第二号の土地の上にある立木又は建物その他の工作物
五 漁業権
六 水の使用に関する権利
七 開発後における第一号又は第二号の土地の利用上必要な土地、
立木又は建物その他の工作物
八 第一号及び第三号の土地を除く外農地の開発上必要な土地
九 公有水面の埋立をする権利
2 前項第六号乃至第八号に掲げるものは、政府が、これを使用することができる。

第三十条の二 主務大臣は、前条の規定による買収又は使用をするため必要があるときは、期間を定め、買収又は使用予定地域を指定することができる。但し、その期間は、一年を超えてはならない。
2 主務大臣は、前項の規定による指定をしたときは、その旨を公告しなければならない。
3 第一項の規定による指定があつたときは、同項の規定により定められた期間内には、当該買収又は使用予定地域内において左の各号の一に該当する行為をしようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない。但し、省令で定める場合は、この限りでない。
一 土地の形質の変更
二 竹木の植栽若しくは伐採又は土地に定着する物件の移転、除去若しくは損壊
三 土地又は土地に定着する物件の譲渡
4 前項の許可を受けないでした同項第三号に該当する行為は、その効力を生じない。
5 政府は、第一項の規定による指定に因つて通常生ずべき損失を補償しなければならない。

第三十一条 政府が第三十条の規定による買収又は使用をするには、都道府県農地委員会が命令の定めるところにより定める未墾地買収計画によらなければならない。
2 未墾地買収計画においては、買収し、又は使用すべき土地、権利、立木又は建物その他の工作物、買収の時期又は使用の時期及び期間並びに対価を定めなければならない。
3 前項の対価を定める場合には、農地にあつては、第六条第三項の規定を準用し、農地以外の土地にあつては、命令の定めるところにより、当該土地の近傍類似の農地の時価を参酌し、土地以外のものにあつては、時価を参酌する。この場合において、同項中「市町村農地委員会」とあるのは、「都道府県農地委員会」と読み替へるものとする。
4 都道府県農地委員会は、未墾地買収計画を定めたときは、遅滞なくその旨を公告し、且つ公告の日から二十日間前条の規定により買収し、又は使用すべきものの所在地の市町村の事務所において左の事項を記載した書類を縦覧に供しなければならない。
一 買収し、又は使用すべき土地、権利、立木又は工作物の所有者の氏名又は名称及び住所
二 買収し、又は使用すべき土地については、その所在、地番、地目及び面積、権利については、その種類、立木については、その樹種、数量及び所在の場所、工作物については、その種類及び所在の場所
三 対価
四 買収の時期又は使用の時期及び期間
5 未墾地買収計画については、第七条及び第八条の規定を準用する。この場合において、これらの規定中「市町村農地委員会」とあるのは、「都道府県農地委員会」と、「都道府県農地委員会」とあるのは、「都道府県知事」と、第七条第一項及び第八条中「同条第五項」とあり、又は第七条第三項中「第六条第五項」とあるのは、「第三十一条第四項」と、第八条中「承認」とあるのは、「認可」と読み替へるものとする。

第三十二条 都道府県農地委員会は、前条の規定による未墾地買収計画を定めるため必要があるときは、その委員又は委員会の事務に従事する者に、他人の土地に立ち入つて、測量し、検査し、又は測量若しくは検査の障害となる物を移転し、若しくは除却させることができる。但し、これに因つて生じた損害は、これを補償しなければならない。
2 政府が第三十条の規定による買収又は使用をすある場合には、前項の規定を準用する。この場合において、同項の規定中「その委員又は委員会の事務に従事する者」とあるのは、「当該官吏吏員」と読み替へるものとする。

第三十二条の二 当該官吏吏員又は都道府県農地委員会の委員若しくはその事務に従事する者は、登記所、漁業免許に関する登録、土地台帳若しくは家屋台帳の所管庁又は市町村の事務所に就き、無償で第三十条の規定による買収又は使用に関し必要な簿書の閲覧又は謄写を求めることができる。

第三十三条 政府は、第三十条の規定による買収又は使用に係る土地(同条第一項第二号に規定する土地を含む。)又は工作物にある物件の所有者又は占有者に、その物件を収去させることができる。
2 前項の場合において、当該物件を収去することに因つて当該物件を従来用ひた目的に供することができないときは、当該物件の所有者は、命令の定めるところにより、政府に対してその買収を請求することができる。
3 前項に規定する買収の対価は、都道府県知事が、時価を参酌してこれを定める。
4 第二項に規定する買収については、第九条、第十一条、第十二条第一項、第十三条第一項第二項及び第十四条の規定を準用する。この場合において、第九条第二項第一号中「第六条第五項各号」とあるのは、「第三十一条第四項各号」と、第十一条中「第六条乃至第九条」とあるのは、「第三十三条第四項において準用する第九条」と読み替ヘるものとする。

第三十四条 第三十条の規定による買収又は使用については、第九条乃至第十一条、第十二条第一項、第十三条第一項第二項及び第十四条の規定を準用する。この場合において、第九条第二項第一号中「第六条第五項各号」とあるのは、「第三十一条第四項各号」と、第十一条中「第六条乃至第九条」とあるのは、「第三十一条第一項乃至第四項(第三十八条第二項において準用する場合を含む。)若しくは同条第一項、第三十一条第五項若しくは第三十八条第二項において準用する第七条及び第八条並びに第三十四条において準用する第九条」と読み替ヘるものとし、第十条中「市町村農地委員会」とあるのは、当該買収が第三十八条に規定するものである場合を除いて、「都道府県農地委員会」と読み替ヘるものとする。
2 第三十条第一項の規定による買収に係る土地が、その買収の当時電気事業者が所有権、賃借権、使用貸借による権利又は地上権に基き電線路の施設の用に供してゐるものである場合には、前項において準用する規定の外、第十二条第二項第三項及び第十二条の二の規定を準用する。

第三十五条 政府が、第三十条第二項の規定により、権利、土地、立木又は工作物を使用する場合においては、前条において準用する第九条第一項の令書に記載し、又は同項但書の規定により公告した使用の時期に、政府は、当該権利、土地、立木又は工作物の使用権を取得し、当該権利又は当該土地、立木若しくは工作物に関する権利は、使用の期間その行使を停止される。但し、使用を妨げないものは、この限りでない。

第三十六条 第三十条第二項の規定による権利、土地、立木若しくは工作物の使用が三年以上に亙るとき、又はその使用に因つて当該権利、土地、立木若しくは工作物を従来用ひた目的に供することが著しく困難となるときは、当該権利を有する者又は当該土地、立木若しくは工作物の所有者は、命令の定めるところにより、政府に対して当該権利又は土地、立木若しくは工作物の買収を請求することができる。
2 前項に規定する買収の対価は、都道府県知事が、これを定める。
3 第一項の場合には、第三十一条第三項前段及び第三十三条第四項の規定を準用する。この場合において、第三十一条第三項前段において準用する第六条第三項中「市町村農地委員会が都道府県知事の認可を受けて」とあるのは、「都道府県知事が」と読み替ヘるものとする。

第三十七条 政府は、第三十条の規定により土地の買収をする場合において、特に必要があるときは、その買収の当時当該土地に関し所有権、賃借権、使用貸借による権利、永小作権、地上権又は入会権を有する者に対し当該土地に代るべき土地として売り渡し、又は賃貸するため必要な他の土地(当該土地の上にある立木を含む。)を買収し、又は使用することができる。
2 前項の場合には、第三十一条乃至前条の規定を準用する。

第三十八条 政府が第三十条第一項の規定による買収をする場合において、その買収に係る同項第一号の土地の面積が主務大臣の定める面積を超えないときは、政府は、第三十一条第一項の規定にかかはらず、市町村農地委員会の定める未墾地買収計画により第三十条第一項の規定による買収をすることができる。
2 前項の場合には、第七条、第八条、第三十一条第二項第三項前段第四項、第三十二条第一項及び第三十二条の二の規定を準用する。この場合において、第七条第一項及び第八条中「同条第五項」とあり、又は第七条第三項中「第六条第五項」とあるのは、「第三十一条第四項」と、第三十一条第四項、第三十二条第一項及び第三十二条の二中「都道府県農地委員会」とあるのは、「市町村農地委員会」と読み替ヘるものとする。

第三十九条 政府は、第三十二条第一項(同条第二項、第三十七条第二項及び前条第二項において準用する場合を含む。)の規定による行為、第三十三条第一項(第三十七条第二項において準用する場合を含む。)の規定による収去、第三十三条第四項(第三十六条第三項及び第三十七条第二項において準用する場合を含む。)若しくは第三十四条(第三十七条第二項において準用する場合を含む。)において準用する第十二条第一項の規定による権利の消滅又は第三十五条(第三十七条第二項において準用する場合を含む。)の規定による権利の行使の停止に因つて生じた損失を補償しなければならない。
2 第三十二条第一項(同条第二項、第三十七条第二項及び前条第二項において準用する場合を含む。)の規定による行為に係る補償の場合を除いて、前項の規定による補償を受けるべき者は、第三十条若しくは第三十七条の規定による買収若しくは使用又は第三十三条第二項(第三十七条第二項において準用する場合を含む。)若しくは第三十六条第一項(第三十七条第二項において準用する場合を含む。)の規定による買収の場合にあつては、当該土地、権利又は立木、工作物その他の物件に関し所有権及び担保権以外の権利を有した者、第三十三条第一項(第三十七条第二項において準用する場合を含む。)の規定による収去の場合にあつては、当該物件に関し担保権以外の権利を有した者に限る。但し、その者が第三十一条第四項(第三十七条第二項及び前条第二項において準用する場合を含む。)の規定による公告のあつた後当該権利を取得した者であるときは、この限りでない。
3 第一項の補償金額については、第二十二条第三項乃至第八項の規定を準用する。この場合において、「市町村農地委員会」とあるのは、第三十二条第二項(第三十七条第二項において準用する場合を含む。)において準用する同条第一項の規定による行為、第三十三条第一項(第三十七条第二項において準用する場合を含む。)の規定による収去又は第三十三条第二項若しくは第三十六条第一項(第三十七条第二項において準用する場合を含む。)の規定による買収に係る補償については、「都道府県知事」と、その他の補償については、前条の規定による買収に係る場合を除いて、「都道府県農地委員会」と読み替ヘるものとする。

第四十条 第三十条の規定により政府が買収した土地又は同条第一項第二号に規定する土地の開発については、他の法令中命令で定める制限又は禁止の規定は、これを適用しない。

第四十条の二 左に掲げる牧野は、政府が、これを買収する。
一 牧野の所有者がその住所のある市町村の区域(その隣接市町村の区域を含む。以下第二号及び第四号において同じ。)外において所有する小作牧野
二 牧野の所有者がその住所のある市町村の区域内において、北海道にあつては一町歩、都府県にあつては中央農地委員会が都府県別に定める面積を超える小作牧野を所有する場合、その面積を超える面積の当該区域内の小作牧野
三 牧野の所有者が所有する自作牧野の面積(その者が農地を所有する場合にあつては、その者が第三条の規定による買収を受けることのない農地の面積を加算して得た面積以下同じ。)が、北海道にあつては二十町歩、都府県にあつては中央農地委員会が都府県別に定める面積を超えるときは、その面積を超える面積の自作牧野四 牧野の所有者がその住所のある市町村の区域内において所有する小作牧野の面積とその者の所有する自作牧野の面積の合計が前号に規定する面積を超えるときは、その面積を超える面積の当該区域内の小作牧野
2 前項第二号又は第三号の規定の適用については、第三条第二項及び第三項の規定を準用する。この場合において、同条第二項中「前項」とあるのは、「第四十条の二第一項」と、「一町歩」とあるのは、「三段歩」と、「三町歩」とあるのは、「五町歩」と、同条第三項中「第一項」とあるのは、「第四十条の二第一項」と読み替へるものとする。
3 第一項第三号の都府県別の面積又は前項において準用する第三条第三項の規定により都道府県農地委員会が定める同号の面積に代るべき面積は、四十町歩を超えてはならない。
4 第一項の牧野の外左に掲げる牧野で、都道府県農地委員会又は市町村農地委員会が自作農の創設上政府において買収することを相当と認めたものは、政府が、これを買収する。
一 農地を所有しない者又は耕作若しくは養畜の業務を営まない者の所有する小作牧野
二 自作牧野の所有者が牧野を集約的に利用することに因つて第一項第三号の面積(その者が農地を所有する場合にあつては、その者が第三条の規定による買収を受けることのない農地の面積を控除して得た面積以下本号において同じ。)以下において、省令の定めるところにより、都道府県農地委員会又は市町村農地委員会において定める一定面積の牧野を以て同号の面積の牧野と同程度の生産をあげることができると認められる場合、同号の面積からその一定面積を控除して得た面積の当該自作牧野
三 耕作又は養畜を主たる業務としない法人その他の団体の所有する牧野
四 牧野で所有権その他の権原に基きこれを家畜の放牧又は採草の目的に供することのできる者が現に当該目的に供していないもの
五 前各号に掲げるものを除く外牧野でその所有者が市町村農地委員会に対し政府において買収すべき旨を申し出たもの
5 第一項乃至前項の規定の適用については、第四条第一項の規定を、第一項の規定の適用については、同条第二項の規定を準用する。この場合において、同条中「市町村の区域」とあるのは「市町村の区域(その隣接市町村の区域を含む。)」と読み替へるものとする。
6 政府は、必要があると認めるときは、左に掲げるものを買収することができる。
一 第一項又は第四項の規定により買収する牧野の上にある立木又は建物その他の工作物
二 第一項若しくは第四項の規定により買収する牧野又は当該牧野を以て造成される農地の利用上必要な農業用施設又は水の使用に関する権利

第四十条の三 政府は、左の各号の一に該当する牧野については、前条の規定による買収をしない。
一 都道府県又は市町村の所有に属し、公共用又は公用に供している牧野で主務大臣の指定したもの
二 市町村、財産区又は農業協同組合(主務大臣の指定するものを除く。)の所有に属し、共同利用に供している牧野(前条第一項第三号の面積に当該牧野を共同利用している者の人数を乗じて得た面積からそれらの者の所有している牧野でそれらの者が前条の規定による買収を受けることのないものの面積の合計を控除して得た面積を超える面積の牧野を除く。)
三 都道府県又は主務大臣の指定する教育機関の所有に属し、専ら試験研究の目的に供している牧野
四 前各号に掲げるものの外、省令の定めるところにより、主務大臣の指定した牧野
五 自作牧野を家畜の放牧又は採草の目的に供していた者が第五条第六号に規定する事由に因つてその自作牧野を自ら家畜の放牧又は採草の目的に供することができないため一時当該自作牧野につき賃借権又は使用貸借による権利を設定した場合、都道府県農地委員会又は市町村農地委員会が、その自作牧野の所有者が近く当該牧野を自ら家畜の放牧又は採草の目的に供するものと認め、且つそのことを相当と認める当該牧野但し、その者が所有する牧野の面積(その者が農地を所有する場合にあつては、その者が第三条の規定による買収を受けることのない農地の面積を加算して得た面積)が前条第一項第三号の面積又は同条第二項において準用する第三条第三項の規定により当該区域につき定められた同号の面積に代るべき面積を超えるときは、その面積を超えない面積の当該牧野に限る。

第四十条の四 政府が第四十条の二の規定による買収をするには、市町村農地委員会(省令で定める場合にあつては、都道府県農地委員会以下第四項において同じ。)の定める牧野買収計画によらなければならない。
2 牧野買収計画においては、買収すべき牧野、立木、建物その他の工作物又は権利並びに買収の時期及び対価を定めなければならない。
3 前項の対価は、省令の定めるところにより、牧野にあつては当該牧野の近傍類似の農地の時価を参酌し、牧野以外のものにあつては時価を参酌してこれを定める。
4 市町村農地委員会は、牧野買収計画を定めたときは、遅滞なくその旨を公告し、且つ公告の日から二十日間第四十条の二の規定により買収すべきものの所在地の市町村の事務所において左の事項を記載した書類を縦覧に供しなければならない。
一 買収すべき牧野、立木、工作物又は権利の所有者の氏名又は名称及び住所
二 買収すべき牧野については、その所在、地番、地目及び面積、立木については、その樹種、数量及び所在の場所、工作物については、その種類及び所在の場所
三 対価
四 買収の時期
5 牧野買収計画については、第六条の二、第六条の三及び第六条の五乃至第八条の規定を準用する。この場合において、第一項の省令で定める場合にあつては、これらの規定中「市町村農地委員会」とあるのは、「都道府県農地委員会」と、「都道府県農地委員会」とあるのは、「都道府県知事」と、「承認」とあるのは、「認可」と読み替へるものとし、第七条第一項及び第八条中「同条第五項」とあり、又は第七条第三項中「第六条第五項」とあるのは、「第四十条の四第四項」と、第七条第二項中「市町村の区域」とあるのは、「市町村の区域(その隣接市町村の区域を含む。)」と読み替へるものとする。

第四十条の五 第四十条の二の規定による買収については、第九条乃至第十二条の二、第十三条第一項第二項、第十四条及び第三十二条乃至第三十三条の規定を準用する。この場合において、第三十二条第一項中「都道府県農地委員会」とあるのは、前条第一項の省令で定める場合を除いて、「市町村農地委員会」と読み替へるものとする。
2 政府は、前項において準用する第三十二条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。以下第三項において同じ。)の規定による行為、前項において準用する第三十三条第一項の規定による収去又は同条第四項において準用する第十二条第一項の規定による権利の消滅に因つて生じた損失を補償しなければならない。
3 第一項において準用する第三十二条第一項の規定による行為に係る補償の場合を除いて、前項の規定による補償を受けるべき者は、第一項において準用する第三十三条第一項の規定による収去の場合にあつては、当該物件に関し担保権以外の権利を有した者、第一項において準用する第三十三条第二項の規定による買収の場合にあつては、当該土地、権利又は立木、工作物その他の物件に関し所有権及び担保権以外の権利を有した者に限る。但し、その者が第四十条の四第四項の規定による公告のあつた後当該権利を取得した者であるときは、この限りでない。
4 第二項の補償金額については、第二十二条第三項乃至第八項の規定を準用する。この場合において、同条第四項及び第五項中「市町村農地委員会」とあるのは、第一項において準用する第三十二条第一項の規定による行為に係る補償については、同項の規定により市町村農地委員会がした行為に係る場合を除いては、「都道府県農地委員会」と、その他の補償については、「都道府県知事」と読み替へるものとする。

第四十条の六 第四十条の二の規定による買収のあつた牧野で都道府県農地委員会が、省令の定めるところにより、指定するものにつき、前条第一項において準用する第十二条第二項の規定により設定された権利がある場合において、当該牧野を開発して自作農を創設するため第四十一条の規定による当該牧野の売渡がある前に当該権利を消滅させる必要があるときは、都道府県農地委員会は、当該権利の消滅すべき時期を指定することができる。
2 前項に規定する権利は、同項の規定により指定された時期に消滅する。
3 前項の場合には、第二十二条第二項乃至第八項の規定を準用する。この場合において、同条第二項中「第十六条第一項の命令で定める農地」とあるのは、「第四十一条第一項第二号に掲げる牧野」と、「第六条第五項」とあるのは、「第四十条の四第四項」と読み替へるものとする。
4 第一項に規定する牧野については、第四十条の規定を準用する。

第四十一条 政府は、左に掲げるものを農業に精進する見込のある者その他省令で定める者に売り渡し、又は賃貸することができる。
一 第三十条、第三十三条第二項(第四十条の五第一項において準用する場合を含む。)、第三十六条又は第四十条の二の規定により買収し、又は使用した土地、権利又は立木、工作物その他の物件
二 政府の所有に属する牧野若しくはその上にある立木、建物その他の工作物又は牧野の利用上必要な農業用施設若しくは水の使用に関する権利で、政令の定めるところにより、農業に精進する見込のある者その他省令で定める者に売り渡すべきものと決定されたもの
三 政府の所有に属する土地物件で、政令の定めるところにより、農地の開発又は開発後における土地の利用に供すべきものと決定されたもの
四 公有水面埋立法により主務大臣が造成した埋立地
2 前項の規定による売渡又は賃貸については、第十七条、第十八条第一項乃至第三項第五項、第二十条、第二十一条及び第二十六条の二の規定を準用する。この場合において、第十七条中「前条」とあるのは、「第四十一条第一項」と、「同条」とあるのは、「同項」と読み替へるものとし、市町村農地委員会の定めた未墾地買収計画又は牧野買収計画により買収した土地を売り渡し、又は賃貸する場合を除いては、第十七条及び第十八条第一項並びに同条第五項において準用する第八条中「市町村農地委員会」とあるのは「都道府県農地委員会」と、「都道府県農地委員会の承認」とあるのは、「都道府県知事の認可」と読み替へるものとする。
3 市町村農地委員会が定めた牧野買収計画により買収した牧野を第一項の規定により売り渡す場合には、前項において準用する規定の外第十条、第十八条第四項及び第十九条の規定を準用する。
4 第一項の規定により同項に規定する土地を売り渡す場合には、前二項において準用する規定の外、第二十六条、第二十七条及び第二十八条第一項乃至第三項第四項本文第五項の規定を準用する。この場合において、第二十八条第三項中「自作農として農業に精進する見込のある者」とあるのは、「第四十一条第一項に規定する者」と、同条第四項中「第十条、第十六条第二項第三項、第十七条乃至第二十一条及び第二十六条乃至前条」とあるのは、「第四十一条第二項第三項」と読み替へるものとする。
5 第一項の規定により牧野を売り渡す場合には、前三項において準用する規定の外、第二十二条の規定を準用する。この場合において、同条第一項及び第二項中「第十六条第一項の命令で定める農地」とあるのは、「第四十一条第一項第二号に掲げる牧野」と、第二十二条第二項中「第六条第五項」とあるのは、「第四十条の四第四項」と読み替へるものとする。
6 第一項の規定により売り渡した土地については、土地台帳法第十八条の規定は、これを適用しない。

第四十一条の二 政府は、前条第一項の処分をするまで、同項に規定する者の申出により同項第一号、第三号又は第四号に掲げるものを都道府県知事の定める条件によりその者に使用させることができる。
2 前項の使用は、無償とする。但し、命令で定める場合は、この限りでない。この場合には、第二十六条の二の規定を準用する。
3 前条第一項第三号の決定前において政府の所有に属する土地物件を同項に規定する者に使用させる場合も、前二項と同様とする。

第四十一条の三 第三十七条の規定により買収し、若しくは使用した土地(当該土地の上にある立木を含む。以下本条において同じ。)又は政府の所有に属する土地で、命令の定めるところにより、第三十七条第一項に掲げる者に売り渡し、若しくは賃貸すべきものと決定されたものの売渡又は賃貸は、都道府県知事が売渡又は賃貸の相手方に対し通知書を交付して、これをするものとする。
2 前項の場合には、第十七条、第二十条第二項、第二十一条及び第二十六条の二の規定を準用する。
3 第一項に規定する売渡のあつた土地の対価の支払は、命令で定める均等年賦支払の方法によるものとする。但し、当該土地を買ひ受けた者の申出のあるときは、その対価の全部又は一部につき一時支払の方法によるものとする。

第四十二条 第六条第五項(第十五条第二項において準用する場合を含む。)、第三十一条第四項(第三十七条第二項及び第三十八条第二項において準用する場合を含む。)又は第四十条の四第四項の規定による公告のあつた後は、当該買収計画において定められた土地、農業用施設、工作物又は立木に関する権利を有する者は、買収又は使用に支障を及ぼす虞のない場合を除いて、都道府県知事の許可を受けなければ、当該土地の形質を変更し、又は当該農業用施設、工作物若しくは立木を損壊し、若しくは収去してはならない。

第四十三条 第三条、第十五条、第三十条、第三十三条第二項、第三十六条、第三十七条又は第四十条の二の規定により買収し、又は使用する土地、権利又は立木、工作物その他の物件の対価、第十三条第三項に規定する報償金及び第二十二条第二項(第四十条の六第二項及び第四十一条第五項において準用する場合を含む。)、第三十九条第一項又は第四十条の五第二項の規定による補償金は、三十年以内に償還すべき証券を以てこれを交付することができる。
2 前項の規定により交付するため、政府は、必要な額を限度として証券を発行することができる。
3 前二項の規定により交付する証券の交付価格は、時価を参酌して大蔵大臣が、これを定める。
4 第二項の証券に関し必要な事項は、命令でこれを定める。

第四十四条 第三条、第十五条、第三十条第一項、第三十三条第二項(第四十条の五第一項において準用する場合を含む。)、第三十六条、第三十七条若しくは第四十条の二の規定による買収、第十六条(第二十八条第四項第五項及び第二十九条第二項において準用する場合を含む。)、第二十八条第三項(同条第五項において準用する場合を含む。)若しくは第四十一条の規定による売渡若しくは賃貸、第二十三条若しくは第二十五条の規定による交換又は第二十八条第一項(同条第五項及び第四十一条第四項において準用する場合を含む。)の規定による買収をする場合における登記は、政令の定めるところによる。

第四十四条の二 第三条、第十五条若しくは第四十条の二の規定による買収、第二十三条の規定による交換又は第二十八条第一項(同条第五項及び第四十一条第四項において準用する場合を含む。)の規定による買収に因つて政府が取得した土地については、土地台帳法第四十四条の規定にかかはらず、省令の定めるところにより、同法を適用する。

第四十四条の三 第三条、第十五条、第三十条第一項、第三十六条、第三十七条若しくは第四十条の二の規定による買収、第二十三条の規定による交換又は第二十八条第一項(同条第五項及び第四十一条第四項において準用する場合を含む。)の規定による買取をする場合において必要があるときは、都道府県知事は、省令の定めるところにより、土地台帳法第十八条、第二十六条、第四十条又は第四十一条の規定による申告を士地所有者又は質権者若しくは地上権者に代つてすることができる。
2 第十六条(第二十八条第四項第五項、第二十九条第二項及び第四十一条第四項において準用する場合を含む。)、第二十八条第三項(同条第五項及び第四十一条第四項において準用する場合を含む。)若しくは第四十一条第一項の規定により売り渡した土地又は第四十一条の三第一項に規定する売渡のあつた土地についての土地台帳法の登録については、政令で特例を定めることができる。

第四十四条の四 政府が、第三条、第十五条、第三十条第一項、第三十三条第二項(第四十条の五第一項において準用する場合を含む。)、第三十六条、第三十七条若しくは第四十条の二の規定による買収、第二十三条の規定による交換又は第二十八条第一項(同条第五項及び第四十一条第四項において準用する場合を含む。)の規定による買取に因つて取得した土地又は建物に対し、地方税法第四十六条又は第四十七条の規定によりその取得の際における当該土地又は建物の所有者に地租又は家屋税が賦課されたときは、省令の定めるところにより、政府又は第十六条(第二十八条第四項第五項、第二十九条第二項及び第四十一条第四項において準用する場合を含む。)、第二十八条第三項(同条第五項及び第四十一条第四項において準用する場合を含む。)若しくは第四十一条第一項の規定による当該土地若しくは建物の売渡若しくは第四十一条の三第一項に規定する当該土地の売渡を受けた者は、当該所有者に当該地租又は家屋税の全部又は一部に相当する金額を支払はなければならない。
2 政府が、第三条、第十五条、第三十条第一項、第三十六条、第三十七条又は第四十条の二の規定による買収に因つて取得した土地に対し、地方税法第四十六条の規定によりその取得の際における当該土地の質権者又は存続期間百年以上の地上権者に地租が賦課されたときは、省令の定めるところにより、政府又は第十六条(第二十八条第四項第五項、第二十九条第二項及び第四十一条第四項において準用する場合を含む。)若しくは第四十一条第一項の規定による当該土地の売渡若しくは第四十一条の三第一項に規定する当該土地の売渡を受けた者は、当該質権者又は地上権者に当該地租の全部又は一部に相当する金額を支払はなければならない。

第四十五条 主務大臣又は都道府県知事は、必要があると認めるときは、農地その他の土地又は物件に関し必要な報告を徴することができる。

第四十六条 政府が、第三条、第十五条若しくは第四十条の二の規定による買収、第二十三条の規定による交換又は第二十八条第一項(同条第五項、第二十九条第二項及び第四十一条第四項において準用する場合を含む。)の規定による買取に因つて取得した土地、権利又は立木、工作物その他の物件、第十六条第一項又は第二十九条第一項の命令で定める土地物件又は権利並びに第四十一条第一項及び第四十一条の三第一項に掲げるものは、農林大臣が、これを管理し、又は処分する。
2 農林大臣は、前項に掲げる土地、権利又は立木、工作物その他の物件の管理に関する権限の一部を市町村農地委員会その地省令で定めるものに行はせることができる。

第四十七条 主務大臣又は都道府県知事は、自作農の創設上特に必要があると認めるときは、この法律により市町村農地委員会の権限に属させた事項を都道府県農地委員会に処理させることができる。
2 前項の場合には、同項の規定により都道府県農地委員会に処理させる事項に関しては、この法律により都道府県農地委員会の権限に属させた事項は、都道府県知事が、これを処理し、この法律により市町村農地委員会に対してすべき異議の申立は、都道府県農地委員会に対し、都道府県農地委員会に対してすべき訴願の提起は、都道府県知事に対してこれをするものとする。
3 主務大臣は、自作農の創設上特に必要があると認めるときは、この法律により都道府県農地委員会の権限に属させた事項を都道府県知事又は中央農地委員会に処理させることができる。
4 前項の場合には、同項の規定により都道府県知事又は中央農地委員会に処理させる事項に関しては、この法律により都道府県知事の権限に属させた事項は、主務大臣が、これを処理し、この法律により都道府県農地委員会に対してすべき異議の申立は、都道府県知事又は中央農地委員会に対し、都道府県知事に対してすべき訴願の提起は、主務大臣に対してこれをするものとする。
5 主務大臣は、自作農の創設上特に必要があると認めるときは、この法律により都道府県知事又は都道府県農地委員会の権限に属させた事項を処理することができる。
6 前項の場合には、同項の規定により主務大臣の処理する事項に関しては、この法律により都道府県農地委員会に対してすべき異議の申立は、主務大臣に対してこれをするものとする。この場合には、第七条第四項及び第五項の規定を適用しない。

第四十七条の二 この法律による行政庁の処分で違法なものの取消又は変更を求める訴は、昭和二十二年法律第七十五号第八条の規定にかかはらず、当事者がその処分のあつたことを知つた日から一箇月以内にこれを提起しなければならない。但し、処分の日から二箇月を経過したときは、同条の規定にかかはらず、訴を提訴することができない。
2 前項の訴の提訴は、この法律による行政庁の処分の執行を停止しない。

第四十八条 この法律中市町村農地委員会に関する規定は、地区農地委員会の設けられてゐる市町村の地区にあつては、地区農地委員会にこれを適用する。この場合において、第三条第一項、第四条(第四十条の二第五項において準用する場合を含む。)、第七条第二項(第四十条の四第五項において準用する場合を含む。)及び第四十条の二第一項中「市町村の区域」とあるのは、「地区農地委員会の設けられてゐる地区」と、第三条第一項第一号、第四十条の二第一項第一号、同条第五項及び第四十条の四第五項中「隣接市町村の区域」とあるのは、「隣接市町村の区域内の地域又は他の地区農地委員会の設けられてゐる地区で当該地区に隣接する地区」と、第六条第五項(第十五条第二項において準用する場合を含む。)、第十八条第四項(第二十九条第二項及び第四十一条第三項において準用する場合を含む。)、第三十八条第二項において準用する第三十一条第四項及び第四十条の四第四項中「市町村の事務所」とあるのは、「地区農地委員会の事務所」と読み替へるものとする。

第四十九条 この法律中都道府県又は都道府県知事に関する規定は、特別市の指定があつたときは、命令で定める時期までは、当該特別市の区域を含む指定前の都道府県又はその知事に、市町村又は市町村長に関する規定は、特別区のある地にあつては特別区又は特別区の区長に、地方自治法第百五十五条第二項の市にあつては区又は区長に、特別市にあつては行政区又は行政区の区長に、全部事務組合又は役場事務組合のある地にあつては組合又は組合管理者にこれを適用する。

第五十条 左の各号の一に該当する者は、これを六箇月以下の懲役又は五百円以下の罰金に処する。
一 第三十条の二第三項の規定に違反して同項各号の一に該当する行為をした者
二 第四十二条の規定に違反した者
三 第四十五条の規定に違反して、報告を怠り、又は虚偽の報告をした者

第五十一条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し前条第二号又は第三号の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対して同条の罰金刑を科する。

附 則

この法律の施行の期日は、勅令でこれを定める。

附 則 (昭和二十二年法律第二百四十一号)

第一条 この法律は、公布の日から、これを施行する。但し、改正後の第二条第四項及び第四条第一項の規定は、昭和二十二年五月三日から、第四十一条の二第二項第三項の規定は、同年四月一日から、これを適用する。

第二条 この法律施行前に改正前の附則第二項の規定による農地買収計画に関してされた手続は、第六条の二、第六条の三又は第六条の五の規定によりされた手続とみなす。

第三条 この法律施行前に政府が第三条、第十五条、第三十条第一項又は第三十七条第一項の規定により買収した土地については、第十二条の二の規定を適用する。

第四条 この法律施行前に政府が第三条の規定により買収した農地の所有者であつた者に対し、第十三条第三項の規定により報償金を交付する場合には、改正後の同項の規定を適用する。

第五条 この法律施行前に政府が第十六条(第二十九条第二項において準用する場合を含む。)又は第四十一条第一項の規定により売り渡した土地については、第二十二条第一項但書の規定を適用する。

第六条 この法律施行前に政府が、第三条、第十五条、第三十条第一項、第三十三条第二項、第三十六条若しくは第三十七条の規定による買収、第二十三条の規定による交換又は第二十八条第一項(改正前の第四十一条第三項において準用する場合を含む。)の規定による買収に因つて取得した土地又は建物については、第四十四条の三及び第四十四条の四の規定を適用する。

第七条 この法律施行前にした自作農創設特別措置法による行政庁の処分で違法なものの取消又は変更を求める訴は、この法律施行前にその処分のあつたことを知つた者にあつては、第四十七条の二第一項の規定にかかわらず、この法律施行の日から一箇月以内にこれを提起することができる。
2 前項に規定する行政庁の処分については、第四十七条の二第一項但書の期間は、この法律施行の日から、これを起算する。
3 前二項の規定は、昭和二十二年法律第七十五号第八条の規定の適用を妨げない。

  「官報」より

注:上掲のものは、昭和22年法律第241号による改正後、昭和24年法律第155号による改正前の条文

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