ガウスの歴史を巡るブログ(その日にあった過去の出来事)

 学生時代からの大の旅行好きで、日本中を旅して回りました。その中でいろいろと歴史に関わる所を巡ってきましたが、日々に関わる歴史上の出来事や感想を紹介します。Yahooブログ閉鎖に伴い、こちらに移動しました。

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 幕末明治維新期の1868年(慶応4)に、明治政府の基本方針である五箇条の御誓文が出された日ですが、新暦では4月6日となります。
 この文章自体は由利公正が起草し、福岡孝弟が修正したものに、さらに木戸孝允が編集をして成立したとされています。
 この内容は、「広く会議を開いて、すべての政治は人々の意見によって行われるように」、「上の者も下の者も心を1つに、国を治めていこう」、「身分にかかわらずに、誰もが志を全うし、その意思を達成できるように」、「今までの悪しき習慣はやめて、国際社会に合った行動を」、「新しい知識を世界から学び、天皇が国を収める基礎を築くように」というものでした。
 この翌日に、「五榜の掲示」も公示されています。

〇五箇条の御誓文 (全文) 1868年4月7日(慶応4年3月15日)公示

五箇条の御誓文  

一、広ク会議ヲ興シ万機[1]公論[2]ニ決スヘシ

一、上下[3]心ヲ一ニシテ盛ニ経綸[4]ヲ行フヘシ

一、官武[5]一途庶民ニ至ル迄各其志ヲ遂ケ人心ヲシテ倦マサラシメン[6]事ヲ要ス

一、旧来ノ陋習[7]ヲ破リ天地ノ公道[8]ニ基クヘシ

一、智識ヲ世界ニ求メ大イニ皇基[9]ヲ振起スヘシ

 我国未曽有[10]ノ変革ヲ為ントシ、朕躬ヲ以テ衆ニ先ンシ、天地神明ニ誓ヒ、大ニ斯国是[11]ヲ定メ、万民保全ノ道ヲ立ントス、衆亦此旨趣ニ基キ、協心努力セヨ。

                         「法令全書」より

【注釈】
[1]万機:ばんき=すべての政治。国家のまつりごと。
[2]公論:こうろん=公平な議論。
[3]上下:じょうげ=身分の上下。
[4]経論:けいろん=国家を治め整えること。国の政策。
[5]官武:かんぶ=公家と武家。
[6]倦マサラシメン:うまさらしめん=人々の気持ちを飽きさせない。
[7]旧来ノ陋習:きゅうらいのろうしゅう=昔からの悪習。ここでは攘夷の風潮のこと。
[8]天地ノ坑道:てんちのこうどう=世界共通の正しい道理。国際法のこと。
[9]皇基:こうき=皇国のもとい。天皇国家の基礎。
[10]未曽有:みぞう=今までに一度もなかったこと。非常に珍しいこと。希有。
[11]国是:こくぜ=国政の基本方針。

<現代語訳>

五箇条の御誓文

一、広く会議を開いて、すべての政治は公平な議論によって行われるべきである
一、上の者も下の者も心を一つにして、さかんに国を治め整えていくべきである
一、公家と武家が一体になり、庶民に至るまで、それぞれが志を全うし、人々の心をあきさせないことが必要である
一、昔からの悪しき習慣はやめて、世界共通の正しい道理に合った行動をするべきである
一、新しい知識を世界から学び、天皇国家の基礎を築くようにするべきである
 わが国は、今までにない変革を行い、私(明治天皇)は自ら皆に先立って、天地神明に誓い、おおいに国政の基本方針を定め、すべての民を守る道を志そうとしている。皆はまたこの趣旨に基づいて、協力して努力せよ。
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 今日は、太平洋戦争後の1945年(昭和20)に、GHQの最高司令官マッカーサーが日本政府に「農地改革に関する覚書」(SCAPIN-411)を送った日です。
 これは、農地改革を進め「数世紀にわたる封建的圧制の下、日本農民を奴隷化してきた経済的桎梏を打破する」ことを指示したものでした。
 これ以前に日本政府により国会に提案されていた「農地調整法」改正による第一次農地改革は、この後GHQに拒否され、日本政府はGHQの指示により、より徹底的な「自作農創設特別措置法」、「農地調整法」改正による第二次農地改革案を作成、これは1946年(昭和21)10月に国会で成立します。
 この結果、農地改革が推進され、1950年(昭和25)までにほぼ完了し、寄生地主制は解体、農家の90%以上が自作農か自小作農となりました。しかし、山林や原野はほとんど解放されず残され、山林地主などは存続することとなります。

〇農地改革に関する覚書(抄文) 1945年(昭和20)12月9日に指示

昭和二十年十二月付 農地改革指令

第一項 日本帝国政府は民主主義的傾向の復活強化に対する経済的障礙を除き 去り人民の権威尊重を樹立し、日本農民を数世紀におよぶ封建的抑圧のもと においてきた経済的束縛を破壊するための日本の土地を耕すものがかれらの 労働の果実を享受する平等な機会を持つことを保障するやうな措置をとるやう指令される。

第二項 この指令の目的は全人口の殆んど半分が農耕に従事してゐる日本の農 業構造を永きにわたってむしばんできた害毒を除去するにある。その病根の主たるものを掲げれば次の如し
(A)極端なる零細農形態 …
(B)極めて不利なる小作条件下における小作農の夥多 …
(C)極めて高率の農村金利の下における農村負担の重圧 …
(D)商工業に対比し格段に農業上に不利なる政府の財政政策 …
(E)農民の利害を無視せる農民乃至農村団体に対する政府の権力的統制 …

第三項 従って日本政府は本司令部に対し農地改革計画を一九四六年三月十五 日或ひはそれ以前に提出することを命ぜられる。この計画は次の諸計画を含 むべきである。
(A)不在地主から耕作者への土地所有権の移転。
(B)公正な価格で農地を非耕作者から購入する規定。
(C)小作人の所得に相応した年賦による小作人の土地購入に関する規定。
(D)小作人たりしものが再度小作人に転落することを合理的に防止する規定 …

第四項 日本政府は以上のほか農業に対しその貢献に相応する国民所得の分前 を保障するために必要と思はれる他の提案をも提出することを要求される。

              『農地改革顛末概要』より
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 今日は、南北朝時代の1336年(延元元/建武3)に、足利尊氏が室町幕府の基本的な政治方針「建武式目」を制定した日ですが、新暦では12月10日となります。
 これは、足利尊氏が中原是円・真恵らに諮問して政治方針をまとめさせて発布した 17箇条からなる武家法でした。
 後醍醐天皇の建武政権を破って、新しい武家政権を打ち立てるために制定した政治方針の要綱です。
 内容は、前文では、「幕府の所在地を鎌倉に置くか他所に移すか。」、本文17箇条では、「どのような法理によって政道を進めていくか。」の2部構成となっていました。
 条文が17であることは、聖徳太子の十七条憲法を意識したものであると言われています。

〇建武式目 (全文) 1336年(延元元/建武3年11月7日)足利尊氏が発布

建武式目の条々

鎌倉元のごとく柳営たるべきか、他所たるべきや否やの事
 右、漢家本朝、上古の儀遷移これ多く、羅縷に遑あらず。季世に迄り、煩擾あるによつて、移徙容易ならざるか。なかんづく鎌倉郡は、文治に右幕下はじめて武館を構へ、承久に義時朝臣天下を併呑す。武家に於ては、もつとも吉土と謂ふべきか。ここに禄多く権重く、驕を極め欲をほしいままにし、悪を積みて改めず。果たして滅亡せしめ了んぬ。たとひ他所たりといへども、近代覆車の轍を改めずば、傾危なんの疑ひあるべけんや。それ周・秦ともに崤函に宅するなり。秦は二世にして滅び、周は八百の祚を闡く。隋・唐おなじく長安に居するなり。隋は二代にして亡び、唐は三百の業を興す。しからば居処の興廃は、政道の善悪によるべし。これ人凶は宅凶にあらざるの謂なり。ただし、諸人もし遷移せんと欲せば、衆人の情にしたがふべきか。

政道の事
 右、時を量り制を設く。和漢の間、なんの法を用ひらるべきか。まづ武家全盛の跡を逐ひ、もつとも善政を施さるべきか。しからば宿老・評定衆・公人等済々たり。故実を訪はんに於て、なんの不足あるべきか。古典に曰く、徳はこれ嘉政、政は民を安んずるにありと云々。早く万人の愁を休むるの儀、速かに御沙汰あるべきか。その最要あらあら左に註す。
一 倹約を行はるべき事
 近日婆佐羅と号して、専ら過差を好み、綾羅錦繍・精好銀剣・風流服飾、目を驚かさざるはなし。頗る物狂と謂ふべきか。富者はいよいよこれを誇り、貧者は及ばざるを恥づ。俗の凋弊これより甚だしきはなし。もつとも厳制あるべきか。
一 群飲佚遊を制せらるべき事
 格条のごとくば、厳制ことに重し。あまつさへ好女の色に耽り、博奕の業に及ぶ。このほかまた、或は茶寄合と号し、或は連歌会と称して、莫太の賭に及ぶ。その費勝計し難きものか。
一 狼藉を鎮めらるべき事
 昼打入り、夜強盗、処々の屠殺、辻々の引剥、叫喚さらに断絶なし。もつとも警固の御沙汰あるべきか。
一 私宅の点定を止めらるべき事
 尩弱の微力を励まして、構へ造るの私宅、たちまち点定せられ、また壊ち取らるるの間、身を隠すに所なし。即ち浮浪せしめ、つひに活計を失ふ。もつとも不便の次第なり。
一 京中の空地、本主に返さるべき事
 当時のごとくば、京中の過半は空地たり。早く本主に返され、造作を許さるべきか。巷説のごとくば、今度山上の臨幸扈従の人、上下を論ぜず、虚実をいはず、大略没収せらると云々。律条のごとくば、謀反逆叛の人、協同と駈率と罪名同じからざるか。もつとも尋ね究められ、差異あるべきか。およそ承久没収の地、その数あらんか。今またことごとく召し放たれば、公家被官の仁、いよいよ牢籠すべきか。
一 無尽銭・土倉を興行せらるべき事
 或は莫太の課役を充て召され、或は打入りを制せられざるの間、已に断絶せしむるか。貴賤の急用たちまち闕如せしめ、貧乏の活計いよいよ治術を失ふ。いそぎ興行の儀あらば、諸人安堵の基たるべきか。
一 諸国の守護人、ことに政務の器用を択ばるべき事
 当時のごとくば、軍忠に募りて、守護職に補せらるるか。恩賞を行はるべくば、庄園を充て給ふべきか。守護職は上古の吏務なり。国中の治否ただこの職による。もつとも器用を補せられば、撫民の儀に叶ふべきか。
一 権貴ならびに女姓・禅律僧の口入を止めらるべき事
一 公人の緩怠を誡めらるべし。ならびに精撰あるべき事
 この両条代々の制法たり。さらに新儀にあらず。
一 固く賄貨を止めらるべき事
 この条また今に始まらずといへども、ことに厳密の御沙汰あるべし。仮令百文の分際たりといへども、賄賂をなさば、永くその人を召し仕はるべからず。過分たらば、生涯を失はるべきか。
一 殿中内外に付き諸方の進物を返さるべき事
 上の好む所、下必ずこれに随ふ。もつとも精廉の化を行はるべし。
 次に唐物已下の珍奇、ことに賞翫の儀あるべからざるものなり。
一 近習の者を選ばるべき事
 その君を知らずばその臣を見よ、その人を知らずばその友を見よと云々。しからば君の善悪は、必ず臣下により、即ち顕はるるものなり。もつともその器用を択ばるべきか。また党類を結び、互に毀誉を成す。闘乱の基、何事かこれにしかん。漢家本朝この儀多し。或は衣裳、或は能芸已下、好翫をもつて体となし、おのおの心底ことごとく相叶ふものか。違犯の輩に於ては、近辺に召し仕はるべからず。もつとも遠慮あるべきか。
一 礼節を専らにすべき事
 国を理むるの要、礼を好むに過ぐるなし。君に君礼あるべし、臣に臣礼あるべし。およそ上下おのおの分際を守り、言行必ず礼儀を専らにすべきか。
一 廉義の名誉あらば、ことに優賞せらるべき事
 これ善人を進め悪人を退くるの道なり。もつとも褒貶の御沙汰あるべきか。
一 貧弱の輩の訴訟を聞し食さるべき事
 堯舜の政、これをもつて最となす。尚書のごとくば、凡人の軽んずる所、聖人の重んずる所と云々、ことに御意に懸けらるべきなり。御憐愍はすべからく貧家の輩に在るべし。彼等の愁訴を聞し食し入れらるる事、御沙汰の専一たるか。
一 寺社の訴訟、事によつて用捨あるべき事
 或は威猛を振ひ、或は興隆と号し、または奇瑞を耀かし、または御祈と称す。かくのごときの類、もつとも御沙汰を尽くさるべきなり。
一 御沙汰の式日・時刻を定めらるべき事
 諸人の愁、緩怠に過ぐるはなし。また事を早速に寄せ、淵底を究めずば然るべからず。彼といひ此といひ、所詮人愁なきの様、御沙汰あるべきなり。
以前十七箇条、大概かくのごとし。是円李曹の余胤を受くるといへども、すでに草野の庸愚たり。忝くも政道治否の諮詢を蒙り、和漢古今の訓謨をひろふ所なり。方今諸国の干戈いまだ止まらず。もつとも跼蹐あるべきか。古人曰く、安きに居てなほ危ふきを思ふと。今危ふきに居てなんぞ危ふきを思はざるや。恐るべきはこの時なり。慎むべきは近き日なり。遠くは延喜・天暦両聖の徳化を訪ひ、近くは義時・泰時父子の行状をもつて、近代の師となす。ことに万人帰仰の政道を施されば、四海安全の基たるべきか。よつて言上件のごとし。

 建武三年十一月七日
          真 恵
          是 円
  人衆
 前民部卿     是円
 真恵       玄恵法印
 太宰少弐     明石民部大夫
 太田七郎左衛門尉 布施彦三郎入道

                       『中世政治社会思想』(上)より

         *縦書きの原文を横書きに改め、句読点を付してあります。

<現代語訳>

建武式目の条々

鎌倉を元のように幕府の所在地とするべきか、他所に移すべきかどうかの事
 右のことは、中国と日本において、その昔は政治の中心地が移りかわることが多く、じっくりと政治を行う時間の余裕がなかった。末世にいたり、わずらわしいほど乱れることによつて、移転することが容易ではなかったのであろう。特に鎌倉郡は、文治年間に源頼朝がはじめて幕府の館を構へ、承久の乱の勝利で北条義時が天下を一つに合わせて従えることとなった。武家にとっては、もつとも縁起の良い土地といえるだろう。しかし、得宗領などを拡大し、幕府の主要権力を独占し、得意になって威張ることを極めて欲望をほしいままにし、悪事を重ねて改めなかった。従って、予想通り滅亡したのである。たとえ他所に移したとしても、近年の北条氏のような失政を改めなかったならば、政権が傾むく危険があることに何の疑ひがあるだろうか。さて周・秦ともに堅固な地形に拠って本拠を構えていた。しかし、秦は二世にして滅び、周は多くのさいわいをひらいた。隋・唐は、同じように長安に本拠を構えていた。しかし、隋は二代にして亡び、唐は多くの業績を興した。だから、幕府の所在地が栄えるか衰えるかは、政治が良いか悪いかによるのである。これは、人の運命の吉凶は、住居の吉凶によるものではないという意味である。ただし、人々がもし幕府を鎌倉から京都へ移すことを要望するならば、大勢の人々の意向に従うべきであろう。

政治のあり方の事
 右のことは、時代に適応した法律制度を作るということである。日本・中国の様々な法律の中からどのような法を用いるのが良いのだろうか。先ず武家政治の全盛時代、つまり北条義時・泰時の執権政治の全盛時代の事績を踏襲して、善政を行うことが肝要であろう。そうであるならば、旧幕府の重臣・評定衆・下級役人などが健在である。儀式・法令・作法などの故例を調査するにおいて、なんの不足があろうか、ないはずである。古典には、「徳とはこれ良い政治、政治の基本は民を安定させるにある」と言っている。早く万人の不安をなくす方策を早急に処置するべきであろう。その要点の概要を左に記す。
一 倹約をするべき事
 近頃、見栄を張って派手に遠慮なく振る舞ったり、特に分に過ぎた華美やぜいたくを好み、華美な服装、精密に美しく装飾を施した銀剣、華美・美麗な服飾や飾りなど、目を驚かさないものはない。まったく気ちがい沙汰と言うべきであろう。富める者はますますこれを誇り、貧しい者はそれに及ばないことを恥じている。世の中の廃れ衰えることこれより甚だしきものはない。もつとも厳しく取り締まられるべきであろう。
一 多数の人が集まって酒盛りをしたり、きままに遊び惚けることは禁止されるべき事
 格の規定によれば、このことに対する禁制は特に厳しい。そればかりか女色にふけり、金品を賭けて勝負を争っている。このほかまた、あるいは茶を飲んでその種類をあてる賭け事、あるいは連歌を競って得点を付けて賭け事として、極めて大きい額を賭けている。その費用は計算できないほど多いものであろう。
一 無法な荒々しい振る舞いを鎮められるべき事
 昼は無理矢理に商家などへ打入り、夜は強盗をし、所々で人を殺したり牛馬を殺したり、辻々では追いはぎをしたりして、人々のおめき叫ぶ声が絶えない。特に警固の指示があるべきであろう。
一 私宅の財産などを調べて差押えや強制的に没収することを止められるべき事
 貧しい微力を励まして、構築した私宅を、たちまち財産などを調べて差押えや強制的に没収させられ、また壊されて取られる間、身を隠す場所もない。すなわち浮浪せざるを得なくなり、ついには生活を維持することもできなくなる。もつとも憐れむべき事情である。
一 京都中の空地は、元の所有者に返されるべき事
 現在の状態は、京都中の半分以上は空地となっている。早く元の所有者に返され、建築する事を許されるべきであろう。ちまたのうわさようであるならば、この度のことは山上の天皇につき従う人、上級下級を論ぜず、嘘真を問わず、だいたい没収されたと言っている。律条のようであるならば、謀反人・反逆人と協同人・追従人とで罪名が同じなのであろうか。きちんと究明され、差異がはっきりされるべきであろう。およそ承久の変によって没収された土地、その数はどうなのであろう。今またすべてを召し寄せてしまったならば、朝廷および直属の役所に仕える人々は、いよいよ苦境に立つことになるであろう。
一 無尽銭や土倉の営業を盛んにするべき事
 あるいは莫大な仕事を割り当てて任じ、あるいは打入りを制止させることが間に合わない間、すでに家が廃絶してしまはないか。貴人・賤人の急ぎの必要品がたちまち欠如してしまい、貧乏のため生活を維持することが困難になり、ますます治す手立てを失ってしまう。急いで無尽銭や土倉の営業を盛んにすることができれば、多くの人々の生活を安定させる基本となるであろう。
一 諸国の守護人は、特に政務の有能な者が選らばれるべき事
 現在のようであるならば、軍功の恩賞として、守護職に任じられているのであろうか。恩賞を与えるならば、荘園などの所領を給与すべきであろう。守護職は昔の国司の職務に相当する。国中が良く治まるかどうかは、ただこの職に依っている。特に有能な者を任じれば、人民をいたわる方針にかなうことであろう。
一 権門貴族ならびに女性・僧侶の政治介入を止められるべき事
一 下級役人のいいかげんに考えてなまけることを戒められるべし。ならびに人材の選り抜きあるべき事
 この二つの条は、代々の法でも制定されている。特に新しいものではない。
一 かたく賄賂を止められるべき事
 この条はまた今に始まったものでないといっても、ことに厳密な処置があるべきである。たとえ百文程度のものといっても、賄賂をもらったならば、永くその人に職務を与えてはいけない。分を過ぎたものならば、生涯失職させるべきであろう。
一 殿中内外について、いろいろな方からの贈り物を返されるべき事
 上の者が好んで行うことは、下の者が必ずこれに随うものである。もつとも心が清らかで私欲がないように変わるべきである。
 次に舶来品などの珍しい物、特に珍重するものについてはあってはならないことである。
一 近く仕える者を選ばれるべき事
 「その君を知ろうとするならばその臣を見よ、その人を知ろうとするならばその友を見よ」と言われている。そうであるならば君主の善悪は、必ず臣下により、すなわち顕在化するものである。従ってその有能な者が選ばれるべきであろう。また徒党を組み、たがいに悪口を言ったり称賛したりする。戦争の原因は、これによるものに違いない。中国と日本ではこのようなことが多い。あるいは衣裳、あるいは才能と技芸以下、好いてもてあそぶをもつて本質とし、それぞれの心底ことごとく相性とするべきか。法にそむいて罪を犯す者においては、近辺に召し仕わせるべきではない。もつとも遠ざけるべきであろう。
一 礼節を主要なものにすべき事
 国を統治する要点は、礼を好むのに過ぎることはない。君主には君礼があるべきであり、臣下には臣礼があるべきである。およそ上下それぞれの身の程をわきまえ、言葉と行動は必ず礼儀を主要なものにするべきであろう。
一 清く正しいという名誉があれば、ことに手厚くほめるられるべき事
 これは善人を増やし、悪人をなくす道理である。もつとも賞罰の沙汰があるべきであろう。
一 貧しい者・弱い者の訴えを聞き届けられるべき事
 中国の堯と舜の時代の政治(良く治まった世の中の意味)、これをもって最上のものとする。尚書によれば、「凡人の軽んずる所、聖人の重んずる所」と言っているが、ことに心掛けられるべきことである。あわれみは、当然貧しい家の者にあるべきである。彼らの苦しみや悲しみの訴えを聞き届けられるべき事は、処置の第一にするべきことであろう。
一 寺社の訴訟、事によつては取捨あるべき事
 あるいは豪猛な態度をとり、あるいは勢いが盛んになって栄えていると叫ぶ、またはめでたいことの前兆として起こる不思議な現象(吉兆)だときらめかす、または御祈と称する。このような場合には、特に吟味を徹底するべきである。
一 裁判を行う定例日と開始時刻を定められるべき事
 多くの人々の愁うることは、なおざりにされること以上のものはない。従って、事を早速に判断し、物事の奥深いところを探究しなければならない。あれやこれや言っても、行きつくところは、人が心配がない様な、沙汰がされるべきことである。
 これらの十七箇条、大略は以上のとおりである。是円は、法曹家の家柄の子孫ではあるが、すでに民間の凡人である。怖れ多くも幕府政治の是非についての諮問を受けたので、日本・中国の昔から今に至る教訓を拾い集めた次第である。只今諸国の戦争はいまだ収まっていない。特にかしこまって身を慎んで政治を担当するべき時ではないか。昔の人は言っている、「安全な所にいても、尚危険なときのことを考える」と。今危ういところにいて、どうして危険な状態だと思わないのだろうか。恐れるべきは現在である。慎むべきは近き日である。昔では延喜・天暦時代の天皇(醍醐天皇・村上天皇)の徳ある政治を尋ね、近年では北条義時・泰時父子の治績をもって、近代の模範とする。特にすべての人が従い仰ぐ善政を施したならば、日本全国の平和の基本となるであろう。以上のように申し上げる。

  建武三年十一月七日
           真 恵
           是 円
    人衆
 前民部卿     是円
 真恵       玄恵法印
 太宰少弐     明石民部大夫
 太田七郎左衛門尉 布施彦三郎入道


【注釈】
[1]柳営:りゅうえい=将軍の陣営、将軍の御所、幕府の所在地。
[2]漢家本朝:かんかほんちょう=中国と日本。
[3]遷移:せんい=うつりかわること。うつりかわり。推移。
[4]羅縷:らる=網の目のように詳しくということ。
[5]遑:いとま=時間の余裕。ひま。
[6]季世:きせい=末の世。末世。
[7]迄り:いたり=ある物事が最高の状態に達していること。極み。
[8]移徙:いし=移り動くこと。移転。移動。
[9]文治:ぶんち=元号の一つで1185年~1190年のこと。文治元年の守護・地頭の設置を指すと思われる。
[10]幕下:ばっか=近衛大将の唐名で、右近衛大将であった源頼朝を指す。
[11]義時:よしとき=1221年(承久3)の承久の変に勝った北条義時のこと。
[12]併呑:へいどん=一つに合わせて従えること。
[13]吉土:きちど=縁起の良い土地。
[14]禄多く権重く:ろくおおくけんおもく=得宗領などを拡大し、幕府の主要権力を独占したことを指す。
[15]驕:おごり=得意になって威張ること。わがままな振る舞い。
[16]悪を積みて改めず:あくをつみてあらためず=悪事を重ねて改めなかった。
[17]果たして:はたして=案の定。予期した通り。
[18]近代:きんだい=近頃。
[19]覆車:ふくしゃ=車が転覆すること。
[20]轍:てつ=車が通った車輪の跡のことで、転じて先例を意味する。
[21]傾危:けいき=傾いて危ないこと。
[22]なんの疑ひあるべけんや:なんのうたがいあるべけんや=何の疑いもない。
[23]崤函:こうかん=崤山と函谷関の意味で、堅固な地形に拠っていること。
[24]闡く:ひらく=大きくあけひろげる。あけすけにする。
[25]居処の興廃:きょしょのこうはい=幕府の所在地が栄えるか衰えるか。
[26]政道の善悪によるべし:せいどうのぜんあくによるべし=政治が良いか悪いかによる。
[27]人凶:じんきょう=人の運命の吉凶。
[28]宅凶:たくきょう=住居の吉凶。
[29]謂なり:いいなり=という意味である。
[30]衆人:しゅうじん=多くの人々。
[31]情:こころ=意向。
[32]政道の事:せいどうのこと=政治のあり方のこと。
[33]時を量り:ときをはかり=時代に適応した。
[34]制を設く:せいをもうく=法律制度を作る。
[35]和漢の間:わかんのあいだ=日本・中国の様々な法律の中から。
[36]武家全盛:ぶけぜんせい=武家政治の全盛時代、つまり北条義時・泰時の執権政治の全盛時代のこと。
[37]宿老:しゅくろう=幕府の高官。幕府の重臣。
[38]評定衆:ひょうじょうしゅう=鎌倉幕府において、重要政務・訴訟を、執権・連署とともに審議したメンバー。
[39]公人:くにん=政所職員などの下級役人。
[40]済々:せいせい=多く盛んなさま。健在であること。
[41]故実:こじつ=儀式・法令・作法などの故例。
[42]訪はん:とぶらはん=調査する。
[43]何の不足あるべきか:なんのふそくあるべきか=なんの不足があろうか、ないはずである。
[44]嘉政:かせい=良い政治。
[45]安んずる:やすんずる=安らかにする。安定させる。
[46]速かに:すみやかに=早急に。
[47]御沙汰:ごさた=処置。命令。指示。おさばき。
[48]最要:さいよう=肝心なこと。要点。
[49]粗:あらあら=簡潔に。かいつまんで。
[50]婆佐羅:ばさら=見栄を張って派手に遠慮なく振る舞う風俗。
[51]過差:かさ=分に過ぎた華美やぜいたく。
[52]綾羅錦繍:りょうらきんしゅう=あやぎぬとうすぎぬとにしきとぬいとり、華美な服装の意味。
[53]精好:せいごう=精密に美しく装飾を施したもの。
[54]風流服飾:ふりゅうふくしょく=華美・美麗な服飾や飾り。美しく見事な服装や装身具。
[55]頗る:すこぶる=まったく。
[56]物狂:ぶっきょう=気ちがい沙汰。狂気の沙汰。
[57]凋弊:ちょうへい=廃れ衰えること。疲弊。
[58]群飲:ぐんいん=多数の人が集まって酒盛りをすること。
[59]佚遊:いつゆう=きままに遊び惚けること。
[60]格条:きゃくじょう=格の規定のことで、866年(貞観8)の「太政官符」などを指す。
[61]あまつさへ:そればかりか。おまけに。
[62]好女の色に耽り:こうじょのしょくにふけり=女色にふけること。
[63]博奕の業に及ぶ:ばくえきのわざにおよぶ=ばくちまでしている。金品を賭けて勝負を争っている。
[64]茶寄合:ちゃよりあい=茶を飲んでその種類をあてる賭け事。闘茶。
[65]連歌会:れんがえ=連歌を競い、得点を付けて賭け事とした。
[66]莫太:ばくだい=程度や量が甚だしいさま。極めて大きい。
[67]費:ついえ=費用。
[68]狼藉:ろうぜき=無法な荒々しい振る舞い。乱暴な行い。
[69]屠殺:とさつ=家畜などを殺すこと。
[70]引剥:ひっぱぎ=追いはぎ。
[71]叫喚さらに断絶なし:きょうかんさらにだんぜつなし=人々のおめき叫ぶ声が絶えない。
[72]点定:てんじょう=財産などを調べて差押えや強制的に没収すること。
[73]尩弱:おうじゃく=貧しいこと。また、そのさま。
[74]活計:かっけい=生活を維持すること。また、そのための手段。生計。
[75]巷説:こうせつ=ちまたのうわさ。世間の評判。世の中の風説。
[76]臨幸:りんこう=天皇が行幸してその場に臨むこと。
[77]扈従:こじゅう=貴人につき従うこと。また、その人。おとも。こじゅう。
[78]駈率:くそつ=追い従う。
[79]牢籠:ろうろう=苦境に立つこと。追いつめられて悩むこと。思い通りの行動がとれないこと。行き詰まること。
[80]無尽銭:むじんせん=貸付金のこと。
[81]土倉:どそう=財物を預かって金を貸す質屋のこと。
[82]興行:こうぎょう=盛んにすること。
[83]闕如:けつじょ=本来あって然るべきものが、抜け落ちていて、足りないさま。欠落。欠如。
[84]治術:ちじゅつ=国を治める方法。治療の方法。
[85]諸人:もろびと=多くの人々。たくさんの人。 衆人。
[86]安堵:あんど=土地の所有権・知行権などを将軍や領主が承認すること。安心すること。心が落ち着くこと。
[87]器用を択ばるべき事:きようをえらばるべはこと=有能な者が選らばれること。
[88]当時:とうじ=現代。現在。
[89]軍忠に募りて:ぐんちゅうにつのりて=軍功の恩賞として。手柄の大きさによって。
[90]庄園を充て給ふべきか:しょうえんをあてたまふべきか=荘園などの所領を給与すべきであろう。
[91]上古の吏務:かみこのりむ=昔の役人の職務の意味で、昔の国司の職務のこと。
[92]国中の治否:くにじゅうのちひ=国中が良く治まるかどうか。
[93]撫民:ぶみん=人民をいたわる。民をいつくしむ。<br>
[94]権貴:けんき=権力を持ち、とうとい身分であること。また、その人 。
[95]禅律僧:ぜんりつそう=僧侶のこと 。
[96]口入:くちいれ=政治への介入 。
[97]緩怠:かんたい=いいかげんに考えてなまけること。 また、そのさま。
[98]精撰:せいせん=特によいものだけをえらび出すこと。えりぬき。よりぬき。
[99]賄貨:わいか=自分に有利なようにはからってもらうために贈る金品。
[100]仮令:けりょう=たとえば。。かりに。
[101]過分:かぶん=分に過ぎた扱いを受けること。身に余るさま。思い上がっていること。僭越なこと。
[102]進物:しんもつ=人に差し上げる品物。贈り物。
[103]精廉:せいれん=心が清らかで私欲がないこと。また、そのさま。廉潔。
[104]唐物:からもの=中国 大陸 (唐土〈もろこし〉) から渡来した物品の総称。
[105]已下:いか=それより少ないこと、または劣っていることを表す。
[106]賞翫:しょうがん=そのもののよさを楽しむこと。珍重すること。味のよさを楽しむこと。賞味すること。
[107]近習:きんじゅう=近く仕えること。またその人。近侍。近寄衆。
[108]顕はるる:あらはるる=姿を現す。顕在化する。
[109]毀誉:きよ=けなすこととほめること。悪口と称賛。
[110]闘乱:とうらん=戦闘 。 戦い。 闘い。闘争。
[111]能芸:のうげい=才能と技芸。 芸能。また、身につけた芸。
[112]好翫:こうがん=好いてもてあそぶ。
[113]違犯の輩:いはんのやから=法にそむいて罪を犯す者。
[114]礼節:れいせつ=礼儀と節度。また、礼儀。
[115]分際:ぶんざい=身分・地位の程度。 身のほど。分限。
[116]廉義:れんぎ=いさぎよくてよい。清く正しい。
[117]優賞:ゆうじょう=手厚くほめること。また、ほめてほうびを 与えること。
[118]褒貶:ほうへん=ほめることとけなすこと。事のよしあしを 言うこと。
[119]貧弱:ひんじゃく=乏しく、必要を満たすに十分でない こと。また、そのさま。
[120]堯舜の政:ぎょうしゅんのせい=中国の堯と舜の時代の政治のことで、よく 治まった世の中の意味。
[121]御憐愍:ごれんびん= かわいそうに思うこと。あわれむこと。 あわれみ。
[122]愁訴:しゅうそ=つらい事情を明かして嘆き訴えること 。また、その訴え。
[123]威猛を振ひ:いもうをふるい=豪猛な態度。性格や態度が勇ましく猛烈にふるまうこと。
[124]興隆と号し:こうりゅうとごうし=勢いが盛んになって栄えていると叫ぶこと。
[125]奇瑞を耀かし:きずいをかがやかし=めでたいことの前兆として起こる不思議な現象(吉兆)だときらめかす。
[126]御沙汰の式日・時刻:ごさたのしきじつ・じこく=裁判を行う定例日と開始時刻。
[127]緩怠:かんたい=なまけること。なまけるさま。なおざり。
[128]淵底を究めずば:えんていをきわめずば=物事の奥深いところを探究しなければ。奥底を見なければ。
[129]李曹の余胤を受くる:りそうのよいんをうくる=法律家の家の出身。法曹家の家柄の子孫。
[130]草野の庸愚:そうやのようぐ=平凡で愚かな人。民間の凡人。
[131]政道治否の諮詢:せいどうちひのしじゅん=政治の参考の為に尋ねて相談すること。政治の是非についての諮問。
[132]和漢古今の訓謨:わかんこきんのくんぼ=日本・中国の昔から今に至る教訓。
[133]干戈:かんか=干(たて)と戈(ほこ)、つまり戦争のこと。
[134]跼蹐:きょくせき=かしこまって身を縮めること。
[135]延喜・天暦両聖:えんぎ・てんりゃくりょうせい=延喜・天暦時代の天皇(醍醐天皇・村上天皇)を指す。
[136]行状:ぎょうじょう=おこない。治績。
[137]近代の師となす:きんだいのしとなす=近代の模範(手本)とする。
[138]万人帰仰の政道:ばんにんきぎょうのせいどう=すべての人が従い仰ぐ善政。
[139]四海安全の基:しかいあんぜんのもとい=日本全国の平和の基本。
[140]言上件のごとし:ごんじょうくだんのごとし=以上のように申し上げる。
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 今日は、昭和時代中期の1953年(昭和28)に、「離島振興法」が公布・施行された日です。
 当時は、10年間の時限立法として制定公布・施行され、時々の状況に合わせて何度か改正されていて、現時点では、2023年(平成35)3月31日まで延長されました。
 この法律は、「離島について、人の往来及び生活に必要な物資等の輸送に要する費用が他の地域に比較して多額である状況を改善するとともに、産業基盤及び生活環境等に関する地域格差の是正を図り、並びにその地理的及び自然的特性を生かした振興を図るため、離島の振興に関し、基本理念を定め、及び国の責務を明らかにし、地域における創意工夫を生かしつつ、その基礎条件の改善及び産業振興等に関する対策を樹立し、これに基づく事業を迅速かつ強力に実施する等離島の振興のための特別の措置を講ずることによつて、離島の自立的発展を促進し、島民の生活の安定及び福祉の向上を図るとともに、地域間の交流を促進し、もつて居住する者のない離島の増加及び離島における人口の著しい減少の防止並びに離島における定住の促進を図り、あわせて国民経済の発展及び国民の利益の増進に寄与することを目的とする。」(第1条)とした法律です。
 首相による離島振興対策実施地域の指定、首相・知事による電力・水道・道路・漁港・教育・厚生等の振興計画の作成、事業の実施および助成方法等が規定されました。
 2017年4月1日時点での有人指定離島の合計は、70市31町11村の78地域、258島になりますが、この法律以外でも、「小笠原諸島振興開発特別措置法」に指定されている2島、「奄美群島振興開発特別措置法」に指定されている8島、「沖縄振興特別措置法」に指定されている39島の計49の有人離島が国の振興対象となっています。

〇「離島振興法」の有人指定離島の一覧(2017年4月1日現在)

<北海道>
・礼文島(礼文町)
・利尻島(利尻町、利尻富士町)
・天売島(羽幌町)
・焼尻島(羽幌町)
・奥尻島(奥尻町)
・小島(厚岸町)
<宮城県>
・大島(気仙沼市)
・ 出島(女川町)、
・江島(女川町)
・網地島(石巻市)
・田代島(石巻市)
・寒風沢島(塩竈市)
・野々島(塩竈市)
・桂島(塩竈市)
・朴島(塩竈市)
<山形県>
・飛島(酒田市)
<東京都>
・大島(大島町)
・利島(利島村)
・新島(新島村)
・式根島(新島村)
・神津島(神津島村)
・三宅島(三宅村)
・御蔵島(御蔵島村)
・八丈島(八丈町)
・青ヶ島(青ヶ島村)
<新潟県>
・粟島(粟島浦村)
・佐渡島(佐渡市)
<石川県>
・舳倉島(輪島市)
<静岡県>
・初島(熱海市)
<愛知県>
・佐久島(西尾市)
・日間賀島(南知多町)
・篠島(南知多町)
<三重県>
・神島(西尾市)
・答志島(鳥羽市)
・菅島(鳥羽市)
・坂手島(鳥羽市)
・渡鹿野島(志摩市)
・間崎島(志摩市)
<滋賀県>
・沖島(近江八幡市)
<兵庫県>
・沼島(南淡路市)
・男鹿島(姫路市)
・家島(姫路市)
・坊勢島(姫路市)
・西島(姫路市)
<島根県>
・島後(隠岐の島町)
・中ノ島(海士町)
・西ノ島(西ノ島町)
・知夫里島(知夫村)
<岡山県>
・大多府島(備前市)
・鴻島(備前市)
・犬島(岡山市東区)
・石島(玉野市)
・松島(倉敷市)
・六口島(倉敷市)
・高島(笠岡市)
・白石島(笠岡市)
・北木島(笠岡市)
・真鍋島(笠岡市)
・小飛島(笠岡市)
・大飛島(笠岡市)
・六島(笠岡市)
・前島(瀬戸内市)
<広島県>
・走島(福山市)
・百島(尾道市)
・細島(尾道市)
・佐木島(三原市)
・小佐木島(三原市)
・生野島(大崎上島町)
・大崎上島(大崎上島町)
・長島(大崎上島町)
・三角島(呉市)
・斎島(呉市)
・情島(呉市)
・阿多田島(大竹市)
・似島(広島市南区)
<山口県>
・端島(岩国市)
・柱島(岩国市)
・黒島(岩国市)
・情島(周防大島町)
・浮島(周防大島町)
・前島(周防大島町)
・笠佐島(周防大島町)
・平郡島(柳井市)
・馬島(田布施町)
・佐合島(平生町)
・祝島(上関町)
・八島(上関町)
・牛島(光市)
・大津島(周南市)
・野島(防府市)
・蓋井島(下関市)
・六連島(下関市)
・見島(萩市)
・大島(萩市)
・櫃島(萩市)
・相島(萩市)
<徳島県>
・伊島(阿南市)
・出羽島(牟岐町)
<香川県>
・直島(直島町)
・屏風島(直島町)
・向島(直島町)
・男木島(高松市)
・女木島(高松市)
・大島(高松市)
・櫃石島(坂出市)
・岩黒島(坂出市)
・与島(坂出市)
・小与島(坂出市)
・本島(丸亀市)
・牛島(丸亀市)
・広島(丸亀市)
・手島(丸亀市)
・小手島(丸亀市)
・佐柳島(多度津町)
・高見島(多度津町)
・粟島(三豊市)
・志々島(三豊市)
・伊吹島(観音寺市)
・小豆島(小豆島町、土庄町)
・沖之島(土庄町)
・小豊島(土庄町)
・豊島(土庄町)
<愛媛県>
・高井神島(上島町)
・魚島(上島町)
・弓削島(上島町)
・佐島(上島町)
・生名島(上島町)
・岩城島(上島町)
・赤穂根島(上島町)
・鵜島(今治市)
・津島(今治市)
・大下島(今治市)
・小大下島(今治市)
・小島(今治市)
・来島(今治市)
・馬島(今治市)
・比岐島(今治市)
・大島(新居浜市)
・野忽那島(松山市)
・睦月島(松山市)
・中島(松山市)
・怒和島(松山市)
・津和地島(松山市)
・二神島(松山市)
・釣島(松山市)
・安居島(松山市)
・興居島(松山市)
・青島(大洲市)
・大島(八幡浜市)
・九島(宇和島市)
・嘉島(宇和島市)
・戸島(宇和島市)
・日振島(宇和島市)
・竹ヶ島(宇和島市)
<高知県>
・沖の島(宿毛市)
・鵜来島(宿毛市)
<福岡県>
・馬島(北九州市小倉北区)
・藍島(北九州市小倉北区)
・地島(宗像市)
・大島(宗像市)
・相島(新宮町)
・玄界島(福岡市西区)
・小呂島(福岡市西区)
・姫島(糸島市)
<佐賀県>
・高島(唐津市)
・神集島(唐津市)
・小川島(唐津市)
・加唐島(唐津市)
・松島(唐津市)
・馬渡島(唐津市)
・向島(唐津市)
<長崎県>
・対馬島(対馬市)
・海栗島(対馬市)
・泊島(対馬市)
・赤島(対馬市)
・沖ノ島(対馬市)
・島山島(対馬市)
・壱岐島(壱岐市)
・若宮島(壱岐市)
・原島(壱岐市)
・長島(壱岐市)
・大島(壱岐市)
・黒島(松浦市)
・青島(松浦市)
・飛島(松浦市)
・大島(平戸市)
・度島(平戸市)
・高島(平戸市)
・宇久島(佐世保市)
・寺島(佐世保市)
・高島(佐世保市)
・黒島(佐世保市)
・六島(小値賀町)
・野崎島(小値賀町)
・納島(小値賀町)
・小値賀島(小値賀町)
・黒島(小値賀町)
・大島(小値賀町)
・斑島(小値賀町)
・中通島(新上五島町)
・頭ヶ島(新上五島町)
・桐ノ小島(新上五島町)
・若松島(新上五島町)
・日ノ島(新上五島町)
・有福島(新上五島町)
・漁生浦島
・奈留島(五島市)
・前島(五島市)
・久賀島(五島市)
・蕨小島(五島市)
・椛島(五島市)
・福江島(五島市)
・赤島(五島市)
・黄島(五島市)
・黒島(五島市)
・島山島(五島市)
・嵯峨島(五島市)
・江島(西海市)
・平島(西海市)
・松島(西海市)
・池島(長崎市)
・高島(長崎市)
<熊本県>
・湯島(上天草市)
・中島(上天草市)
・横浦島(天草市)
・牧島(天草市)
・御所浦島(天草市)
・横島(天草市)
<大分県>
・姫島(姫島村)
・地無垢島(津久見市)
・保戸島(津久見市)
・大入島(佐伯市)
・大島(佐伯市)
・屋形島(佐伯市)
・深島(佐伯市)
<宮崎県>
・島野浦島(延岡市)
・大島(日南市)
・築島(串間市)
<鹿児島県>
・獅子島(長島町)
・桂島(出水市)
・上甑島(薩摩川内市)
・中甑島(薩摩川内市)
・下甑島(薩摩川内市)
・新島(鹿児島市)
・種子島(西之表市、中種子町、南種子町)
・馬毛島(西之表市)
・屋久島(屋久島町)
・口永良部島(屋久島町)
・竹島(三島村)
・硫黄島(三島村)
・黒島(三島村)
・口之島(十島村)
・中之島(十島村)
・諏訪之瀬島(十島村)
・平島(十島村)
・悪石島(十島村)
・小宝島(十島村)
・宝島(十島村)

〇「離島振興法」(抄文)

(目的)
第一条  この法律は、我が国の領域、排他的経済水域等の保全、海洋資源の利用、多様な文化の継承、自然環境の保全、自然との触れ合いの場及び機会の提供、食料の安定的な供給等我が国及び国民の利益の保護及び増進に重要な役割を担つている離島が、四方を海等に囲まれ、人口の減少が長期にわたり継続し、かつ、高齢化が急速に進展する等、他の地域に比較して厳しい自然的社会的条件の下にあることに鑑み、離島について、人の往来及び生活に必要な物資等の輸送に要する費用が他の地域に比較して多額である状況を改善するとともに、産業基盤及び生活環境等に関する地域格差の是正を図り、並びにその地理的及び自然的特性を生かした振興を図るため、離島の振興に関し、基本理念を定め、及び国の責務を明らかにし、地域における創意工夫を生かしつつ、その基礎条件の改善及び産業振興等に関する対策を樹立し、これに基づく事業を迅速かつ強力に実施する等離島の振興のための特別の措置を講ずることによつて、離島の自立的発展を促進し、島民の生活の安定及び福祉の向上を図るとともに、地域間の交流を促進し、もつて居住する者のない離島の増加及び離島における人口の著しい減少の防止並びに離島における定住の促進を図り、あわせて国民経済の発展及び国民の利益の増進に寄与することを目的とする。

(基本理念及び国の責務)
第一条の二  離島の振興のための施策は、離島が我が国の領域、排他的経済水域等の保全、海洋資源の利用、多様な文化の継承、自然環境の保全、自然との触れ合いの場及び機会の提供、食料の安定的な供給等我が国及び国民の利益の保護及び増進に重要な役割を担つていることに鑑み、その役割が十分に発揮されるよう、厳しい自然的社会的条件を改善し、地域間の交流の促進、居住する者のない離島の増加及び離島における人口の著しい減少の防止並びに離島における定住の促進が図られることを旨として講ぜられなければならない。
2  国は、前項の基本理念にのつとり、離島の振興のため必要な施策を総合的かつ積極的に策定し、及び実施する責務を有する。

(指定)
第二条  主務大臣は、国土審議会の意見を聴いて、第一条の目的を達成するために必要と認める離島の地域の全部又は一部を、離島振興対策実施地域として指定する。
2  主務大臣は、前項の指定をした場合においては、その旨を公示しなければならない。

(離島振興基本方針)
第三条  主務大臣は、離島振興対策実施地域の振興を図るため、離島振興基本方針を定めるものとする。
2  離島振興基本方針は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一  離島の振興の意義及び方向に関する事項
二  本土と離島及び離島と離島並びに離島内の交通通信を確保するための航路、航空路、港湾、空港、道路等の交通施設及び通信施設の整備、人の往来及び物資の流通(廃棄物の運搬を含む。以下同じ。)に要する費用の低廉化その他の必要な措置に関する基本的な事項
三  農林水産業、商工業等の産業の振興及び資源開発を促進するための漁港、林道、農地、電力施設等の整備その他の必要な措置に関する基本的な事項
四  雇用機会の拡充、職業能力の開発その他の就業の促進に関する基本的な事項
五  生活環境の整備(廃棄物の減量その他その適正な処理を含む。以下同じ。)に関する基本的な事項
六  医療の確保等(妊婦が健康診査を受診し、及び出産に必要な医療を受ける機会を確保するための支援を含む。以下同じ。)に関する基本的な事項
七  介護サービスの確保等に関する基本的な事項
八  高齢者の福祉その他の福祉の増進に関する基本的な事項
九  教育及び文化の振興(子どもの修学の機会を確保するための支援を含む。以下同じ。)に関する基本的な事項
十  観光の開発に関する基本的な事項
十一  国内及び国外の地域との交流の促進に関する基本的な事項
十二  自然環境の保全及び再生に関する基本的な事項
十三  再生可能エネルギーの利用その他のエネルギー対策に関する基本的な事項
十四  水害、風害、地震災害(地震に伴い発生する津波等により生ずる被害を含む。以下同じ。)その他の災害を防除するために必要な国土保全施設等の整備その他の防災対策に関する基本的な事項
十五  離島の振興に寄与する人材の確保及び育成に関する基本的な事項
十六  前各号に掲げるもののほか、離島の振興に関する基本的な事項
3  主務大臣は、離島振興基本方針を定めようとするときは、関係行政機関の長に協議するとともに、国土審議会の意見を聴かなければならない。
4  主務大臣は、離島振興基本方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
5  前二項の規定は、離島振興基本方針の変更について準用する。

(離島振興計画)
第四条  第二条第一項の規定により離島振興対策実施地域の指定があつた場合においては、関係都道府県は、離島振興基本方針に基づき、当該地域について離島振興計画を定めるよう努めるものとする。
2  離島振興計画は、おおむね次に掲げる事項について定めるものとする。
一  離島の振興の基本的方針に関する事項
二  本土と離島及び離島と離島並びに離島内の交通通信を確保するための航路、航空路、港湾、空港、道路等の交通施設及び通信施設の整備、人の往来及び物資の流通に要する費用の低廉化その他の必要な措置に関する事項
三  農林水産業、商工業等の産業の振興及び資源開発を促進するための漁港、林道、農地、電力施設等の整備その他の必要な措置に関する事項
四  雇用機会の拡充、職業能力の開発その他の就業の促進に関する事項
五  生活環境の整備に関する事項
六  医療の確保等に関する事項
七  介護サービスの確保等に関する事項
八  高齢者の福祉その他の福祉の増進に関する事項
九  教育及び文化の振興に関する事項
十  観光の開発に関する事項
十一  国内及び国外の地域との交流の促進に関する事項
十二  自然環境の保全及び再生に関する事項
十三  再生可能エネルギーの利用その他のエネルギー対策に関する事項
十四  水害、風害、地震災害その他の災害を防除するために必要な国土保全施設等の整備その他の防災対策に関する事項
十五  離島の振興に寄与する人材の確保及び育成に関する事項
十六  前各号に掲げるもののほか、離島振興対策実施地域の振興に関し必要な事項
3  都道府県は、離島振興対策実施地域について離島振興計画を定めようとするときは、あらかじめ、その全部又は一部の区域が当該地域である市町村(次項の規定による要請があつた場合における当該要請をした市町村を除く。以下この項において同じ。)に対し、当該市町村に係る離島振興計画の案を作成し、当該都道府県に提出するよう求めなければならない。この場合において、一の離島振興対策実施地域が二以上の市町村の区域にわたるときは、当該市町村は、共同して、離島振興計画の案を作成し、及び提出することができる。
4  その全部又は一部の区域が一の離島振興対策実施地域である市町村は、当該地域に係る離島振興計画が定められていない場合には、単独で又は共同して、都道府県に対し、当該地域について離島振興計画を定めることを要請することができる。この場合においては、当該市町村に係る離島振興計画の案を添えなければならない。
5  前項の規定による要請があつたときは、都道府県は、速やかに、当該要請に係る離島振興対策実施地域について離島振興計画を定めなければならない。
6  市町村は、第三項又は第四項の案を作成しようとするときは、あらかじめ、その離島振興対策実施地域の住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。
7  第三項又は第四項の案の提出を受けた都道府県は、離島振興計画を定めるに当たつては、当該案の内容をできる限り反映させるよう努めるものとする。
8  都道府県は、離島振興計画を定めたときは、直ちに、これを主務大臣に提出するとともに、その内容を関係市町村に通知しなければならない。
9  主務大臣は、前項の規定により離島振興計画の提出があつた場合においては、直ちに、その内容を関係行政機関の長に通知しなければならない。この場合において、関係行政機関の長は、当該離島振興計画についてその意見を主務大臣に申し出ることができる。
10  主務大臣は、第八項の規定により提出された離島振興計画が離島振興基本方針に適合していないと認めるときは、当該都道府県に対し、これを変更すべきことを求めることができる。
11  主務大臣は、第八項の規定により提出された離島振興計画について前項の規定による措置を執る必要がないと認めるときは、その旨を当該都道府県に通知しなければならない。
12  第三項、第四項及び第六項から前項までの規定は、離島振興計画の変更について準用する。

(事業の実施)
第五条  離島振興計画に基づく事業は、この法律に定めるもののほか、当該事業に関する法律(これに基づく命令を含む。)の規定に従い、国、地方公共団体その他の者が実施するものとする。

(財政上の措置等)
第六条  国は、第一条の二第一項に定める基本理念にのつとり、毎年度、予算で定めるところにより、離島振興計画の円滑な実施その他の離島振興対策実施地域の振興に必要な財政上の措置その他の措置を講ずるものとする。
2  国は、離島振興計画に基づく公共事業の実施に要する経費について予算に計上するに当たつては、離島振興計画の実施に係る予算の明確化について特別の配慮をしなければならない。
3  地方公共団体は、離島振興計画に基づく公共事業の実施に要する経費について予算に計上するに当たつては、離島振興計画の実施に係る予算の明確化について特別の配慮をするよう努めなければならない。

(国の負担又は補助の割合の特例等)
第七条  離島振興計画に基づく事業のうち別表に掲げるものに要する費用について国が負担し又は補助する割合は、当該事業に関する法令の規定にかかわらず、同表に掲げる割合とする。
2  国は、離島振興計画に基づく事業のうち、別表に掲げるものに要する経費に充てるため政令で定める交付金を交付する場合においては、政令で定めるところにより、当該経費について前項の規定を適用したとするならば国が負担し、又は補助することとなる割合を参酌して、当該交付金の額を算定するものとする。
3  第一項の場合において、地方交付税法 (昭和二十五年法律第二百十一号)第十条 に規定する普通交付税の交付を受けない地方公共団体については、別表で定める国庫の負担割合及び補助割合を減ずることができる。ただし、同表に掲げる法律に規定する国庫の負担割合又は補助割合を下ることはできない。
4  離島振興対策実施地域における災害復旧事業については、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法 (昭和二十六年法律第九十七号)第三条 の規定により地方公共団体に対して国がその費用の一部を負担する場合における当該災害復旧事業費に対する国の負担率は、同法第四条 の規定によつて算定した率が五分の四に満たない場合においては、同条 の規定にかかわらず、五分の四とし、公立学校施設災害復旧費国庫負担法 (昭和二十八年法律第二百四十七号)第三条 の規定により国がその経費の一部を負担する場合における当該公立学校の施設の災害復旧に要する経費に対する国の負担率は、同条 の規定にかかわらず、五分の四とする。
5  国は、離島振興計画に基づき簡易水道の用に供する水道施設の新設又は増設をする地方公共団体に対し、予算の範囲内において、政令の定めるところにより、その新設又は増設に要する費用の二分の一以内を補助することができる。
6  政府は、別表に掲げる費用以外の費用についても、これに対し国が補助する割合及び対象を定める政令がある場合においては、第一項の規定に準じ当該政令の特例を設けるものとする。
7  国は、義務教育諸学校等の施設費の国庫負担等に関する法律 (昭和三十三年法律第八十一号)第十二条第一項 の規定により地方公共団体に対して交付金を交付する場合において、当該地方公共団体が同条第二項 の規定により作成した施設整備計画に記載された改築等事業(同法第十一条第一項 に規定する「改築等事業」をいう。)として、離島振興計画に基づく次に掲げる事業がある場合においては、当該事業に要する費用の十分の五・五を下回らない額の交付金が充当されるように算定するものとする。
一  公立の小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校の前期課程又は公立の特別支援学校(視覚障害者又は聴覚障害者である児童又は生徒に対する教育を主として行うものに限る。別表(五)において同じ。)の小学部若しくは中学部に勤務する教員又は職員のための住宅の建築(買収その他これに準ずる方法による取得を含む。)をすること。
二  体育、音楽等の学校教育及び社会教育の用に供するための施設を公立の小学校、中学校若しくは義務教育学校又は中等教育学校の前期課程に設けること。

(離島活性化交付金等事業計画の作成)
第七条の二  都道府県は、離島振興計画に基づく事業又は事務(以下「事業等」という。)のうち、離島振興対策実施地域の活性化に資する事業等(その全部又は一部の区域が離島振興対策実施地域である市町村その他の者(以下「離島関係市町村等」という。)が実施する離島振興対策実施地域の活性化に資する事業等を含む。)を実施するための計画(以下「離島活性化交付金等事業計画」という。)を作成することができる。
2  離島活性化交付金等事業計画には、次に掲げる事項を記載するものとする。
一  離島振興対策実施地域の活性化に資する事業等で政令で定めるものに関する事項
二  計画期間
3  離島活性化交付金等事業計画には、前項に掲げる事項のほか、次に掲げる事項を記載するよう努めるものとする。
一  離島活性化交付金等事業計画の目標
二  その他主務省令で定める事項
4  都道府県は、離島活性化交付金等事業計画を作成しようとするときは、あらかじめ、離島関係市町村等の意見を聴くよう努めるものとする。
5  都道府県は、離島活性化交付金等事業計画に離島関係市町村等が実施する事業等に係る事項を記載しようとするときは、当該事項について、あらかじめ、当該離島関係市町村等の同意を得なければならない。
6  前二項の規定は、離島活性化交付金等事業計画の変更について準用する。

(交付金等の交付等)
第七条の三  都道府県又は離島関係市町村等が次項の交付金等を充てて離島活性化交付金等事業計画に基づく事業等の実施をしようとするときは、当該都道府県は、当該離島活性化交付金等事業計画をそれぞれの事業等を所管する大臣(以下「事業等所管大臣」という。)に提出しなければならない。
2  国は、前項の都道府県又は離島関係市町村等に対し、同項の規定により提出された離島活性化交付金等事業計画に基づく事業等の実施に要する経費に充てるため、予算の範囲内で、それぞれの事業等ごとに、交付金又は補助金(以下「交付金等」という。)の交付を行うことができる。
3  前二項に定めるもののほか、交付金等の交付に関し必要な事項は、主務省令で定める。

(離島振興対策実施地域の活性化に資する事業等の公表)
第七条の四  国は、毎年度、離島活性化交付金等事業計画に記載された事業等及びその他の離島振興対策実施地域の活性化に資する事業等として政令で定めるもので当該年度に実施するものについて、その内容を取りまとめ、公表するものとする。

(地方債についての配慮)
第八条  地方公共団体が離島振興計画を達成するために行う事業に要する経費に充てるために起こす地方債については、法令の範囲内において、資金事情及び当該地方公共団体の財政状況が許す限り、特別の配慮をするものとする。

(資金の確保等)
第九条  国及び地方公共団体は、離島振興計画の達成に資すると認められる事業を営む者に対し、必要な資金の確保その他の援助に努めなければならない。

(医療の確保等)
第十条  都道府県は、離島振興対策実施地域における医療を確保するため、離島振興計画に基づいて、無医地区に関し次に掲げる事業を実施しなければならない。
一  診療所の設置
二  患者輸送車(患者輸送艇を含む。)の整備
三  定期的な巡回診療
四  保健師による保健指導等の活動
五  医療機関の協力体制(救急医療用の機器を装備したヘリコプター等により患者を輸送し、かつ、患者の輸送中に医療を行う体制を含む。以下同じ。)の整備
六  その他無医地区の医療の確保に必要な事業
2  都道府県は、前項に規定する事業を実施する場合において特に必要があると認めるときは、病院又は診療所の開設者又は管理者に対し、次に掲げる事業につき、協力を要請することができる。
一  医師又は歯科医師の派遣
二  巡回診療車(巡回診療船を含む。)による巡回診療
3  国及び都道府県は、離島振興対策実施地域内の無医地区における診療に従事する医師若しくは歯科医師又はこれを補助する看護師(以下「医師等」という。)の確保その他当該無医地区における医療の確保(当該診療に従事する医師又は歯科医師を派遣する病院に対する助成を含む。)に努めなければならない。
4  都道府県は、第一項及び第二項に規定する事業の実施に要する費用を負担する。
5  国は、前項の費用のうち第一項第一号から第三号までに掲げる事業及び第二項に規定する事業に係るものについて、政令の定めるところにより、その二分の一を補助するものとする。
6  国及び都道府県は、離島振興対策実施地域における医療を確保するため、市町村が離島振興計画に基づいて第一項各号に掲げる事業を実施しようとするときは、当該事業が円滑に実施されるよう適切な配慮をするものとする。
7  国及び地方公共団体は、離島振興対策実施地域に居住する妊婦が健康診査を受診し、及び出産に必要な医療を受ける機会を確保するため、妊婦が居住する離島に妊婦の健康診査又は出産に係る保健医療サービスを提供する病院、診療所等が設置されていないことにより当該離島の区域外の病院、診療所等に健康診査の受診又は出産のために必要な通院又は入院をしなければならない場合における当該通院又は入院に対する支援について適切な配慮をするものとする。
8  都道府県は、医療法 (昭和二十三年法律第二百五号)第三十条の四第一項 に規定する医療計画を作成するに当たつては、離島振興対策実施地域における医療の特殊事情に鑑み、当該地域において医師等の確保、病床の確保等により必要な医療が確保されるよう適切な配慮をするものとする。
9  前各項に定めるもののほか、国及び地方公共団体は、離島振興対策実施地域において、必要な医師等の確保、定期的な巡回診療、医療機関の協力体制の整備等により医療の充実が図られるよう適切な配慮をするものとする。

(介護サービスの確保等)
第十条の二  国及び地方公共団体は、離島振興対策実施地域における介護サービスの確保及び充実を図るため、老人福祉法 (昭和三十八年法律第百三十三号)第五条の二第一項 に規定する老人居宅生活支援事業に係る介護サービスの提供、介護サービスに従事する者の確保、介護施設の整備、提供される介護サービスの内容の充実等について適切な配慮をするものとする。

(高齢者の福祉の増進)
第十一条  国及び地方公共団体は、離島振興対策実施地域における高齢者の福祉の増進を図るため、高齢者の居住の用に供するための施設の整備等について適切な配慮をするものとする。

(保健医療サービス等を受けるための住民負担の軽減)
第十一条の二  国及び地方公共団体は、離島振興対策実施地域における保健医療サービス、介護サービス、高齢者福祉サービス及び保育サービスを受けるための条件の他の地域との格差の是正を図るため、離島振興対策実施地域の住民がこれらのサービスを受けるための住民負担の軽減について適切な配慮をするものとする。

(交通の確保等)
第十二条  国及び地方公共団体は、離島振興対策実施地域における人の往来及び物資の流通に関する条件の他の地域との格差の是正、島民の生活の利便性の向上、産業の振興等を図るため、離島振興対策実施地域に係る海上、航空及び陸上の交通について、総合的かつ安定的な確保及びその充実並びに人の往来及び物資の流通に要する費用の低廉化に資するための施策の充実に特別の配慮をするものとする。

(情報の流通の円滑化及び通信体系の充実)
第十三条  国及び地方公共団体は、離島振興対策実施地域における情報通信技術の利用の機会の他の地域との格差の是正、島民の生活の利便性の向上、産業の振興、医療及び教育の充実等を図るため、情報の流通の円滑化及び高度情報通信ネットワークその他の通信体系の充実について適切な配慮をするものとする。

(農林水産業その他の産業の振興)
第十四条  国及び地方公共団体は、離島振興対策実施地域の特性に即した農林水産業の振興を図るため、生産基盤の強化、地域特産物の開発並びに流通及び消費の増進並びに観光業との連携の推進について適切な配慮をするものとする。
2  国及び地方公共団体は、離島における水産業の重要性に鑑み、離島振興対策実施地域の漁業者がその周辺の海域の漁場において安定的に水産業を営むことができるよう、水産動植物の生育環境の保全及び改善について適切な配慮をするものとする。
3  前二項に規定するもののほか、国及び地方公共団体は、離島振興対策実施地域の特性に即した産業の振興を図るため、生産性の向上、産業の振興に寄与する人材の育成及び確保、起業を志望する者に対する支援、先端的な技術の導入並びに他の産業との連携の推進について適切な配慮をするものとする。

(就業の促進)
第十四条の二  国及び地方公共団体は、離島振興対策実施地域の住民及び離島振興対策実施地域へ移住しようとする者の離島振興対策実施地域における就業の促進を図るため、良好な雇用機会の拡充並びに実践的な職業能力の開発及び向上のための施策の充実について適切な配慮をするものとする。

(生活環境の整備)
第十四条の三  国及び地方公共団体は、離島振興対策実施地域における定住の促進に資するため、住宅及び水の確保、汚水及び廃棄物の処理その他の快適な生活環境の確保を図るための施策の充実について適切な配慮をするものとする。

(教育の充実)
第十五条  国及び地方公共団体は、離島振興対策実施地域における教育の特殊事情に鑑み、子どもの修学の機会の確保に資するため、離島の区域(当該離島の区域が二以上の市町村の区域にわたる場合にあつては、当該離島のうち一の市町村の区域に属する区域。以下この項において同じ。)内に高等学校、中等教育学校の後期課程その他これらに準ずる教育施設(以下「高等学校等」という。)が設置されていないことにより当該離島の区域内から当該離島の区域外に所在する高等学校等へ通学する場合又は当該離島の区域外に居住して当該高等学校等へ通学する場合における当該通学又は居住に対する支援について適切な配慮をするものとする。
2  国及び地方公共団体は、離島振興対策実施地域における教育の特殊事情に鑑み、公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律 (昭和三十六年法律第百八十八号)の規定による公立高等学校等を設置する地方公共団体ごとの教員及び職員の定員の算定並びに離島振興対策実施地域に所在する公立の高等学校等に勤務する教員及び職員の定員の決定について特別の配慮をするものとする。
3  前二項に定めるもののほか、国及び地方公共団体は、離島振興対策実施地域において、その教育の特殊事情に鑑み、学校教育及び社会教育の充実に努めるとともに、地域社会の特性に応じた生涯学習の振興に資するための施策の充実について適切な配慮をするものとする。

(地域文化の振興)
第十六条  国及び地方公共団体は、離島振興対策実施地域において伝承されてきた多様な文化的所産の保存及び活用並びに担い手の育成について適切な措置が講ぜられるよう努めるとともに、地域における文化の振興について適切な配慮をするものとする。

(観光の振興及び地域間交流の促進)
第十七条  国及び地方公共団体は、離島には優れた自然の風景地が存すること、国外の地域と近接していること等の特性があることに鑑み、国民の離島に対する理解と関心を深め、離島と他の地域との間の交流を拡大するとともに、離島振興対策実施地域の活性化に資するため、離島振興対策実施地域における観光の振興並びに離島振興対策実施地域と国内及び国外の地域との交流の促進について適切な配慮をするものとする。

(自然環境の保全及び再生)
第十七条の二  国及び地方公共団体は、離島振興対策実施地域及びその周辺の海域における自然環境の保全及び再生に資するため、海岸漂着物等の処理並びに生態系に係る被害を及ぼすおそれのある外来生物及び伝染病の防除及び防疫その他の生態系の維持又は回復について適切な配慮をするものとする。

(エネルギー対策の推進)
第十七条の三  国及び地方公共団体は、離島振興対策実施地域において、その自然的特性を生かしたエネルギーを利用することが、その経済的社会的環境に応じたエネルギーの安定的かつ適切な供給の確保及びエネルギーの供給に係る環境への負荷の低減を図る上で重要であることに鑑み、再生可能エネルギーの利用の推進について適切な配慮をするものとする。
2  前項に規定するもののほか、国及び地方公共団体は、離島振興対策実施地域におけるエネルギーの利用に関する条件の他の地域との格差の是正、島民の生活の利便性の向上、産業の振興等を図るため、離島振興対策実施地域における石油製品の価格の低廉化その他のエネルギーに関する対策の推進について適切な配慮をするものとする。

(防災対策の推進)
第十七条の四  国及び地方公共団体は、離島が四方を海等に囲まれている等厳しい自然条件の下にあることを踏まえ、災害を防除し、及び災害が発生した場合において島民が孤立することを防止するため、離島振興対策実施地域において、国土保全施設、避難施設、備蓄倉庫、防災行政無線設備、人工衛星を利用した通信設備その他の施設及び設備の整備、防災のための住居の集団的移転の促進、防災上必要な教育及び訓練の実施、被災者の救難、救助その他の保護を迅速かつ的確に実施するための体制の整備及び関係行政機関の連携の強化その他の防災対策の推進について適切な配慮をするものとする。

(農地法 等における配慮)
第十八条  国の行政機関の長又は都道府県は、離島振興対策実施地域における農地法 (昭和二十七年法律第二百二十九号)、自然公園法 (昭和三十二年法律第百六十一号)その他の法律の規定の運用に当たつては、離島振興計画に基づく事業の円滑な実施が図られるよう適切な配慮をするものとする。

(離島特別区域制度の整備)
第十八条の二  政府は、地域における創意工夫を生かした離島の振興を図るため、その全部又は一部の区域が離島振興対策実施地域である地方公共団体の申出により当該離島振興対策実施地域内に区域を限つて規制の特例措置その他の特別措置を適用する制度の創設について総合的に検討を加え、必要な措置を講ずるものとする。

(税制上の措置等)
第十九条  国は、離島について、人の往来及び生活に必要な物資等の輸送に要する費用が他の地域に比較して多額である状況を改善するとともに、産業基盤及び生活環境等に関する地域格差の是正を図り、並びにその地理的及び自然的特性を生かした振興を図るため、離島の振興のための特別の措置を講ずることによつて、離島の自立的発展を促進し、島民の生活の安定及び福祉の向上を図るとともに、地域間の交流を促進し、もつて居住する者のない離島の増加及び離島における人口の著しい減少の防止並びに離島における定住の促進を図ること等としている第一条の目的の達成に資するため、租税特別措置法 (昭和三十二年法律第二十六号)等の定めるところにより、離島振興対策実施地域の振興に必要な税制上の措置その他の措置を講ずるものとする。

(地方税の課税免除又は不均一課税に伴う措置)
第二十条  地方税法 (昭和二十五年法律第二百二十六号)第六条 の規定により、地方公共団体が、離島振興対策実施地域内において製造の事業、旅館業(下宿営業を除く。)、情報サービス業その他総務省令で定める事業の用に供する設備を新設し、若しくは増設した者について、その事業に対する事業税、その事業に係る建物若しくはその敷地である土地の取得に対する不動産取得税若しくはその事業に係る機械及び装置若しくはその事業に係る建物若しくはその敷地である土地に対する固定資産税を課さなかつた場合若しくは離島振興対策実施地域内において畜産業、水産業若しくは薪炭製造業を行う個人について、その事業に対する事業税を課さなかつた場合又はこれらの者について、これらの地方税に係る不均一の課税をした場合において、これらの措置が総務省令で定める場合に該当するものと認められるときは、地方交付税法第十四条 の規定による当該地方公共団体の各年度における基準財政収入額は、同条 の規定にかかわらず、当該地方公共団体の当該各年度分の減収額(事業税又は固定資産税に関するこれらの措置による減収額にあつては、これらの措置がされた最初の年度以降三箇年度(個人の行う畜産業、水産業及び薪炭製造業に対するものにあつては、総務省令で定める期間に係る年度)におけるものに限る。)のうち総務省令で定めるところにより算定した額を同条 の規定による当該地方公共団体の当該各年度(これらの措置が総務省令で定める日以後において行われたときは、当該減収額について当該各年度の翌年度)における基準財政収入額となるべき額から控除した額とする。

(国土審議会)
第二十一条  国土審議会は、離島振興に関する重要事項を調査審議する。
2  国土審議会は、前項に規定する事項につき、関係行政機関の長に対し意見を申し出ることができる。

(国土審議会への報告)
第二十一条の二  主務大臣は、毎年、離島の振興に関して講じた施策について、国土審議会に報告するものとする。

(主務大臣等)
第二十一条の三  第二条及び前条における主務大臣は、国土交通大臣、総務大臣及び農林水産大臣とする。
2  第三条第一項、第三項及び第四項(同条第五項において準用する場合を含む。)における主務大臣は、離島振興基本方針のうち、同条第二項第三号及び第十五号に掲げる事項に係る部分については国土交通大臣、総務大臣、農林水産大臣及び経済産業大臣、同項第四号及び第六号から第八号までに掲げる事項に係る部分については国土交通大臣、総務大臣、農林水産大臣及び厚生労働大臣、同項第五号及び第十二号に掲げる事項に係る部分については国土交通大臣、総務大臣、農林水産大臣及び環境大臣、同項第九号に掲げる事項に係る部分については国土交通大臣、総務大臣、農林水産大臣及び文部科学大臣、同項第十三号に掲げる事項に係る部分については国土交通大臣、総務大臣、農林水産大臣、経済産業大臣及び環境大臣とし、その他の部分については国土交通大臣、総務大臣及び農林水産大臣とする。
3  第四条第八項から第十一項まで(同条第十二項において準用する場合を含む。)における主務大臣は、国土交通大臣、総務大臣、農林水産大臣、文部科学大臣、厚生労働大臣、経済産業大臣及び環境大臣とする。
4  第七条の二第三項第二号における主務省令は、前項に規定する主務大臣の共同で発する命令とする。
5  第七条の三第三項における主務省令は、事業等所管大臣の発する命令とする。

(政令への委任)
第二十二条  この法律の実施のための手続その他必要な事項は、政令で定める。

(以下略)

                 「法令全書」より
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