ガウスの歴史を巡るブログ(その日にあった過去の出来事)

 学生時代からの大の旅行好きで、日本中を旅して回りました。その中でいろいろと歴史に関わる所を巡ってきましたが、日々に関わる歴史上の出来事や感想を紹介します。Yahooブログ閉鎖に伴い、こちらに移動しました。

タグ:片山哲内閣

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 今日は、昭和時代中期の1947年(昭和22)に、経済安定本部が「新価格体系の確立について」を発表した日です。
 「新価格体系の確立について」(しんかかくたいけいのかくりつについて)は、1947年(昭和22)7月5日に、片山哲内閣で閣議決定され、経済安定本部から発表された緊急経済対策です。太平洋戦争敗戦後経済危機が進行し、極度のインフレとなって、国民生活を圧迫しました。そこで、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)は1947年(昭和22)3月22日に、マッカーサー司令官より吉田首相宛の書簡を発して、統制経済の強化と経済安定本部の拡充を強く要望しました。
 その中で発足した片山哲内閣は、6月11日に、「緊急経済対策」を決定、食糧確保、物資流通秩序の確立、賃金・物価の全面的改訂、財政金融の健全化、重点生産の継続と企業経営の健全化、勤労者の生活と雇用の確保、輸出振興、不健全な企業の管理という8つを経済対策の柱として提起します。そこで、「基礎的な価格の安定帯を設定する」という「新物価体系」の確立を図ると共に、それを実現するための融資統制の強化と傾斜金融の一層の徹底を打ち出しました。
 7月4日には経済安定本部の作成になる最初の経済白書「第一次経済実相報告書」が出され、翌5日には、この閣議決定がが発表されます。その内容は、「政府は、インフレーションの進行をくいとめ、物価賃金の安定をはかるため、さきに発表した経済緊急対策に基づき、新価格体系を確立する。今日まで続いている生産の不振、流通秩序のゆるみ、通貨流通量の増加等によって、物価と賃金とは悪循環的上昇をきたし、その結果、まじめに働く勤労者はその生活をおびやかされ、まじめな企業はその経営の方途を失っている。政府はこの現状にかんがみて、実質賃金の充実、企業経営の健全化、物価と賃金の調整を主眼として、公定価格の総合的改訂を行う。」とされました。
 そこでは、1,800円を暫定業種別賃金とする新物価体系「1,800円ベース」が決定されていますが、翌年4月決定の「2,920円ベース」、すぐに引上げられた「3,791円ベース」と変更されていきました。
 以下に、「新価格体系の確立について」を全文掲載しておきますので、ご参照下さい。

〇「新価格体系の確立について」1947年(昭和22)7月5日 片山内閣の閣議決定

 政府は、インフレーションの進行をくいとめ、物価賃金の安定をはかるため、さきに発表した経済緊急対策に基づき、新価格体系を確立する。今日まで続いている生産の不振、流通秩序のゆるみ、通貨流通量の増加等によって、物価と賃金とは悪循環的上昇をきたし、その結果、まじめに働く勤労者はその生活をおびやかされ、まじめな企業はその経営の方途を失っている。政府は、この現状にかんがみて、実質賃金の充実、企業経営の健全化、物価と賃金との調整を主眼として、公定価格の総合的改訂を行う。
 この改訂された新しい水準において物価賃金の安定がえられるならば、わが国の経済は安定復興への第一歩をふみ出すことができる。もし、これがえられなければ、わが国の経済は破局的インフレーションに突入する危険が極めて大である。そこで、政府は、全国民の協力をえて生産の増強をはかり、闇を根絶して流通秩序を回復し、その新価格体系の維持安定をはかるため、あらゆる努力をかたむける。

第一、新価格体系組立の原則 新価格体系は、インフレーションの進行をくいとめ、かつ、正常な国際貿易の再開に備えてできるかぎり価格系列を整えるために、左の原則によって、これを組み立てる。

一、基礎的な価格の安定帯=わが国の経済がほぼ正常であったと認められる昭和九年から同十一年(基準年次)の価格水準の約六十五倍を限界として、基礎的な価格の安定帯を設ける。基礎的な物資の供給者価格が安定帯を上廻るときには、原則として、価格調整補給金によって、その需要者価格を安定帯の限界まで引下げる。この原則にしたがって左の措置をとる。
(一)石炭の特定産業(海運業並びにガス、コークス、銑鉄、普通鋼鋼材、同半製品、ソーダ灰、苛性ソーダ及び硫安製造業とする。)向け消費者価格は屯当り六百円基準によって算定した価格とする。
(二)コークス、銑鉄、普通鋼鋼材、同半製品、電気銅、鉛地金、硫安、過燐酸石灰、ソーダ灰及び苛性ソーダの消費者価格は、基準年次の価格水準の六十五倍を基準とする。石灰窒素及び亜鉛の消費者価格は、それぞれ硫安及び鉛の消費者価格と適当な関係をもたせるように、これを定める。
(三)以上の措置のため、昭和二十二年度七月以降年度末までに必要な価格調整補給金として百二十億円を予定する。

二、鉱工業品の価格は、生産配給の施策に照応して、原則として、原価主義によってこれを定める。運賃その他の料金についても同様とする。価格の算定にあたっては、
(一)価格相互間のはねかえりをできるかぎり織り込む。
(二)闇価格は、これを算入しない。
(三)当該産業の操業度及び能率については、原則として、現状を基礎とし、近い将来における推移を考慮する。
(四)減価償却費は、帳簿価格を基礎として、これを算入する。但し、非稼動設備の減価償却費は、これを算入しない。
(五)利潤は、能率が標準より高い経営についてのみ産れる程度にかぎって、これを算入する。
(六)賃金は、工業総平均賃金を月千八百円とし、概ね給与審議会準備会特別小委員会において決定した方法によって算定した暫定業種別平均賃金を基準として、これを算入する。実際賃金が右の算定額をこえている業種については、実際賃金をも考慮する。この場合には、消費者の利益との調和をはかるため、減価償却費及び利潤の算入を減少する。

三、農産品価格は、原則として、農業経営及び農家家計において購入する商品の価格と農産品の価格との基準年次における均衡をたもたせるように、これを定める。畜水林産品の価格の決定については、農産品の価格の決定に準ずる。

第二、賃金水準 物価賃金安定の途は、実質賃金の充実を中心とする貨幣賃金の維持のほかにはないのであるから、今回の新価格体系の確立にあたっては、勤労者の実質生活の確保と企業経営の健全化を目途として、物価賃金の同時的決定を行う。このため、価格調整補給金によって公定価格の引上げを最少限度にくいとめるとともに、食糧その他の緊急対策を実施して正規配給量の増加による実質賃金の充実をはかり、勤労者が現在の生活水準を維持できるところを目やすとして、価格に算入する賃金水準は、現在の実際水準から若干引上げ、工業総平均月千八百円とし、今回の公定価格の引上げによる勤労者の家計への影響に対処する。

第三、価格差益の徴収 価格改訂によって、公団、生産業者及び配給業者の在庫品につき生ずる価格差益は、これを徴収し、新価格体系維持安定のためにこれを活用する。

 大蔵省財政史室編「昭和財政史 終戦から講和まで」第17巻より 

〇同じ日の過去の出来事(以前にブログで紹介した記事)

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1590年(天正18)北條氏直が小田原城を開城して豊臣秀吉に降伏し、秀吉の天下統一が完成する詳細
1639年(寛永16)江戸幕府が「寛永十六年七月令」(第五次鎖国令)を布告、ポルトガル船の入港を禁止(新暦8月5日)詳細
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2008年(平成20)東海北陸自動車道の飛驒清見IC~白川郷IC間開通(2車線)により、全線開通する詳細
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 今日は、昭和時代中期の1947年(昭和22)に、社会党首班政権である片山哲内閣の下で、「臨時石炭鉱業管理法」(昭和22年法律第219号)が公布(施行は翌年4月1日)された日です。
 「臨時石炭鉱業管理法」(りんじせきたんこうぎょうかんりほう)は、炭鉱を国家管理する3年の時限立法でした。太平洋戦争敗戦後、日本での生産復興をめぐって、石炭増産を中心に据えて復興を図っていこうとし、そのために石炭産業の国家管理を打ち出したものです。
 1947年(昭和22)9月に、社会党首班政権である片山内閣によって法案が国会に提出されましたが、国家管理される炭鉱主側が反発が強く、保守系会派と結んで抵抗した結果、生産現場の国家直接管理の方針は撤回され、経営者を通じた間接管理に修正され、炭鉱自体の経営権に触れる条項はなくなりました。その上で、一時的に石炭産業を政府の管理下に置き、商工省の下に石炭庁を設置、北海道札幌市、福島県平市(現在のいわき市)、山口県宇部市、福岡県福岡市に石炭局を置き、商工省・石炭局に諮問機関を置いて、政府指定の特定炭鉱で、政府が決定した事業計画の実施を強制する一方で、必要物資を優先的に調達するというものとなります。
 そして、3年間の時限立法(1948年4月1日~)とされて、同年12月に修正案がようやく成立しました。その後、1948年(昭和23)10月15日の芦田均内閣崩壊による社会党下野によって廃止論が優勢となり、1950年(昭和25)5月20日に期限を半年余り残して、廃止されています。
 以下に、「臨時石炭鉱業管理法」(昭和22年法律第219号)を掲載しておきますので、ご参照下さい。

〇「臨時石炭鉱業管理法」(昭和22年法律第219号)

第一章 総則

第一条 この法律は、産業の復興と経済の安定に至るまでの緊急措置として、政府において石炭鉱業を臨時に管理し、以て政府、経営者及び従業者がその全力をあげて石炭の増産を達成することを目的とする。

第二条 この法律で炭鉱とは、石炭の堀採を目的とする事業場(これに附属する事業場を含む。)をいう。

第三条 商工大臣その他この法律の施行の責に任ずる官吏及び炭鉱管理委員会の委員は、炭鉱の事業主が、生産協議会の議を経て定められた事項以外の事項について、炭鉱の従業者が組織する労働組合法に規定する労働組合と団体交渉をする権限と責任を尊重しなければならない。

第四条 この法律の規定に基いてした命令その他の処分及びこの法律の規定に基いて炭鉱の事業主がした行為は、炭鉱の事業主の承継人に対してもその効力を有する。

第二章 炭鉱の管理

第五条 炭鉱の事業主は、命令の定めるところにより、その経営する炭鉱ごとに毎年度の予定事業計画及び毎四半期の事業計画を作成して、所轄石炭局長に届け出なければならない。予定事業計画又は事業計画を変更したときも同様である。
  石炭局長は、必要があると認めるときには、地方炭鉱管理委員会に諮つて、前項の事業計画の変更を命ずることができる。
  事業主は、前項の命令が著しく不当であると認めるときには、商工大臣に対して不服の申立をすることができる。
  商工大臣は、全国炭鉱管理委員会に諮つて、前項の申立を理由があると認めるときは、当該石炭局長に対して当該命令を取り消し、又は変更すべきことを命じなければならない。

第六条 炭鉱の事業主は、政府の監督に従い、事業計画の実施の責に任ずる。

第七条 炭鉱の事業主は、命令の定めるところにより、事業計画の実施状況を所轄石炭局長に報告しなければならない。

第八条 石炭庁長官又は石炭局長は、炭鉱の事業主の業務の状況に関し必要な報告をさせ、又は当該の官吏をして生産拡充用の資金及び資材の使途、生産の状況並びに拡充工事の達成状況に関して、監査させることができる。
  前項の規定により当該の官吏に監査させる場合には、その身分を示す証票を携帯させなければならない。

第九条 この法律の規定による報告又は監査に基き必要があると認めるときには、石炭庁長官は、全国炭鉱管理委員会に、石炭局長は、地方炭鉱管理委員会に諮つて、炭鉱の事業主に対し、監督上必要な命令をすることができる。

第十条 炭鉱の事業主は、商工大臣の許可を受けなければ、その経営する石炭鉱業の全部又は一部を廃止し、又は休止してはならない。
  商工大臣は、前項の許可をしようとするときには、全国炭鉱管理委員会に諮らなければならない。

第十一条 石炭鉱業の全部若しくは一部の賃貸、譲渡若しくは経営の委任又は炭鉱の事業主である会社の合併若しくは解散は、商工大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
  商工大臣は、前項の認可をしようとするときには、全国炭鉱管理委員会に諮らなければならない。

第十二条 特に必要があると認めるときには、石炭庁長官は、全国炭鉱管理委員会に、石炭局長は、地方炭鉱管理委員会に諮つて、炭鉱の事業主に対し、その所有する設備又は資材を他の炭鉱の事業主に譲渡し、又は貸し渡すべきことを命ずることができる。
  前項の規定により命令を受けた者は、他の法令の規定にかかわらず、譲り渡し、又は貸し渡すことができる。
  第一項の場合における譲渡又は貸渡の条件は、当事者間の協議によりこれを定める。協議が調わないとき、又は協議をすることができないときには、石炭庁長官又は石炭局長が、これを裁定する。
  前項の裁定中対価について不服のある者は、その裁定の通知を受けた日から三十日以内に、訴を以てその金額の増減を請求することができる。
  前項の訴においては、譲渡又は貸渡の当事者を被告とする。
  第一項の規定による命令をする場合におけるその担保の処理その他必要な事項は、命令でこれを定める。

第三章 指定炭鉱の管理

 第一節 指定炭鉱の指定

第十三条 商工大臣は、全国炭鉱管理委員会に諮つて、前章の規定によるの外、この章の規定による管理を行うべき炭鉱(指定炭鉱)を指定する。
  前項の規定による指定の基準は、能率、生産費、品位、出炭量等に基いて、これを毎六箇月に定めるものとする。
  第一項の規定による指定は、告示により、これを行う。

第十四条 商工大臣は、指定炭鉱について、この章の規定による管理を行う必要がなくなつたと認めるときには、全国炭鉱管理委員会に諮つて、その指定を取り消すことができる。
  前条第三項の規定は、前項の場合に、これを準用する。

 第二節 業務計画

第十五条 指定炭鉱の事業主は、第十七条の規定により、当該指定炭鉱につき、毎四半期の詳細な事業計画(業務計画)の案を作成し、所轄石炭局長に提出するものとする。
  指定炭鉱については、前章中事業計画に関する規定は、これを適用しない。

第十六条 石炭局長は、地方炭鉱管理委員会に諮つて、指定炭鉱ごとにその業務計画の案の作成上基準となるべき事項を定めて、これを当該指定炭鉱の事業主に指示しなければならない。

第十七条 前条の規定による指示があつたときには、その指示に従い、命令の定めるところにより、指定炭鉱の事業主は、炭鉱管理者をして業務計画の案を作成せしめ、所轄石炭局長に提出しなければならない。
  炭鉱管理者は、前項の案を作成する場合には、生産協議会の議を経なければならない。
  前項の場合において、生産協議会の議を経ることができないときには、事業主は、当該業務計画の案を作成して提出するとともに、命令の定めるところにより、その旨を所轄石炭局長に報告しなければならない。

第十八条 石炭局長は、前条第一項又は第三項の規定による業務計画の案の提出があつたときには、これを審査した上で、地方炭鉱管理委員会に諮つて、当該指定炭鉱の業務計画を決定し、これを指定炭鉱の事業主及び炭鉱管理者に指示しなければならない。
  前項の規定による指示があるまでは、事業主は、前条第一項又は第三項の規定により所轄石炭局長に提出した業務計画の案により、指定炭鉱の業務を行わなければならない。

第十九条 指定炭鉱の事業主は、やむを得ない事由により前条第一項の業務計画を変更する必要があると認めるときには、命令の定めるところにより、所轄石炭局長に、業務計画の変更案を提出することができる。
  第十七条の規定は、前項の場合に、これを準用する。
  石炭局長は、第一項の規定により業務計画の変更案の提出があつた場合において、業務計画を変更する必要があると認めるときには、遅滞なく、地方炭鉱管理委員会に諮つて、業務計画を変更し、これを事業主及び炭鉱管理者に指示しなければならない。
  石炭局長は、特に必要があると認めるときには、地方炭鉱管理委員会に諮つて、指定炭鉱の業務計画を変更し、これを事業主及び炭鉱管理者に指示することができる。

第二十条 石炭局長は、指定炭鉱の業務計画の実施上必要があると認めるときには、地方炭鉱管理委員会に諮つて、指定炭鉱の事業主に対し、監督上必要な命令をし、又は必要な指示をすることができる。
  指定炭鉱の事業主又は炭鉱管理者は、前項の命令又は指示に不服があるときには、命令の定めるところにより、商工大臣に対して、不服の申立をすることができる。
  商工大臣は、全国炭鉱管理委員会に諮つて、前項の申立を理由があると認めるときには、当該石炭局長に対して、当該命令又は指示を取り消し、又は変更すべきことを命じなければならない。

第二十一条 指定炭鉱の事業主は、命令の定めるところにより、業務計画の実施状況を所轄石炭局長に報告しなければならない。

 第三節 炭鉱管理者

第二十二条 指定炭鉱の事業主は、指定炭鉱の指定があつたとき、又は炭鉱管理者が欠けたときには、遅滞なく、指定炭鉱ごとに炭鉱管理者一人を選任しなければならない。
  事業主は、前項の規定による選任をしたときには、その旨を商工大臣に届け出なければならない。

第二十三条 炭鉱管理者は、所轄石炭局長の監督を受け、当該炭鉱の最高能率の発揮を目途として、業務計画の実施の責に任ずる。

第二十四条 生産協議会の委員の定数の過半数に相当する委員が、炭鉱管理者を著しく不適任であると認めるときには、その旨を、所轄石炭局長を経由して、商工大臣に申し立てることができる。この場合には、商工大臣は、指定炭鉱の事業主の意見を徴した上で、全国炭鉱管理委員会に諮つて、事業主に対し、当該炭鉱管理者を解任すべきことを命ずることができる。
  商工大臣は、炭鉱管理者が著しく不適任であると認めるときには、事業主の意見を徴した上で、全国炭鉱管理委員会に諮つて、事業主に対し、当該炭鉱管理者を解任すべきことを命ずることができる。

第二十五条 指定炭鉱の事業主は、業務計画の実施に関し、命令の定めるところにより、必要な権限を炭鉱管理者に委任しなければならない。

 第四節 生産協議会

第二十六条 指定炭鉱ごとに生産協議会を置く。

第二十七条 生産協議会は、炭鉱管理者及び委員で、これを組織する。
  委員は、業務委員及び労働委員とし、各々同数とする。
  生産協議会の議長は、炭鉱管理者を以て、これに充てる。

第二十八条 生産協議会の委員の数は、命令の定めるところにより、炭鉱管理者が、これを定める。
  炭鉱管理者は、必要があると認めるときには、生産協議会の議を経て、委員の数を増加し、又は減少することができる。但し、委員の数を減少するのは、委員の任期の満了した際に限る。
  前二項の場合においては、炭鉱管理者は、遅滞なく、委員の数を、適当な方法で、公示しなければならない。

第二十九条 業務委員は、当該指定炭鉱の業務に従事する者の中から、炭鉱管理者が、これを選任する。
  労働委員は、当該指定炭鉱の坑内従業者三坑外従業者二の比率とし、指定炭鉱の従業者の過数が労働組合を組織している場合において、その労働組合の数が一であるときにはその推薦により、労働組合の数が二以上であるときには、それらの労働組合の共同の推薦により、労働組合の推薦がない場合及び指定炭鉱の従業者の過半数が労働組合を組織していない場合には、当該指定炭鉱の従業者又はこれを代表する従業者の過半数の推薦により、炭鉱管理者が、これを選任する。
  前項の従業者には、指定炭鉱の事業主の利益を代表すると認められる者を含まない。
  第二項で労働組合とは、指定炭鉱ごとに組織する労働組合法に規定する労働組合をいう。
  業務委員と労働委員とは、互にこれを兼ね、又は代理することができない。

第三十条 生産協議会の委員の選任は、第二十八条第一項の場合又は委員の任期が満了した場合には、同条第三項の規定による公示があつた日又は委員の任期が満了した日から二週間以内に全員につき同時に、委員が欠けた場合又は同条第二項の規定により委員の数が増加した場合には、委員が欠けた日又は同条第三項の規定による公示があつた日から二週間以内に、これを行わなければならない。

第三十一条 生産協議会の委員の任期は、一年とする。但し、補欠委員及び第二十八条第二項の規定により委員の数が増加した際にあらたに選任された委員の任期は、他の委員の残任期間と同一とする。

第三十二条 生産協議会の委員の選任が行われたときには、炭鉱管理者は、遅滞なく、その委員の氏名を所轄石炭局長に届け出なければならない。

第三十三条 生産協議会は、議長がこれを招集し、その議事は、出席した委員の過半数でこれを決する。但し、第三十五条第一項但書の場合には、出席した委員全員で、これを決する。

  生産協議会は、業務委員及び労働委員各々一人以上が出席しなければ、議事を開くことができない。

  議長は、いかなる場合においても、議決に加わることができない。

第三十四条 炭鉱管理者は、業務計画の実施に関し、左に掲げる事項の基本について、生産協議会の議を経てこれを定めなければならない。
 一 作業計画に関する事項
 二 労働能率の向上又は作業条件の合理化に関する事項
 三 労働条件の適正化に関する事項
 四 労働力の保全に関する事項
 五 安全保特に関する事項
  炭鉱管理者は、前項の場合を除くの外、業務計画の実施に関し必要と認める事項について、生産協議会の議を経てこれを定めることができる。
  第二十条第一項の命令又は指示を受けた事項については、前二項の規定は、これを適用しない。
  生産協議会は、第一項又は第二項に規定する審議のため必要があると認めるときには、指定炭鉱の事業主に対して、事業の経理内容に関する報告を求めることができる。

第三十五条 炭鉱管理者は、前条第一項又は第二項の場合において、生産協議会の議を経ることができないときには、命令の定めるところにより、所轄石炭局長の裁定を求めることができる。但し、労働条件の適正化その他従業者の待遇に関する事項については、石炭局長の裁定を求めることにつき、生産協議会の議を経た場合に限る。
  前項の規定による石炭局長の裁定は、地方炭鉱管理委員会に諮つて、これを行わなければならない。
  第一項但書の事項について、石炭局長の裁定を求めることにつき、生産協議会の議を経ることができない場合の処置については、労働関係調整法の定めるところによる。

第三十六条 この法律及びこの法律に基いて発する命令に定めるものの外、生産協議会に関し必要な事項は、生産協議会の議を経て、炭鉱管理者が、これを定める。

 第五節 雑則

第三十七条 指定炭鉱の事業主である会社は、商工大臣の認可を受けなければ、利益金を処分することができない。

第三十八条 特に必要があると認めるときには、石炭庁長官は、全国炭鉱管理委員会に、石炭局長は、地方炭鉱管理委員会に諮つて、指定炭鉱の事業主に対し、指定炭鉱の設備の新設、拡張若しくは改良又は新坑の開発若しくは坑道の掘進を命ずることができる。
  指定炭鉱の事業主は、前項の命令が著しく不当であると認めるときには、命令の定めるところにより、商工大臣に対して、不服の申立をすることができる。
  商工大臣は、全国炭鉱管理委員会に諮つて、前項の申立を理由があると認めるときには、石炭庁長官又は当該石炭局長に対して、当該命令を取り消し、又は変更すべきことを命じなければならない。

第四章 協力命令

第三十九条 主務大臣は、特に必要があると認めるときには、石炭の生産に要する物資の生産又は販売の事業を営む者に対して、その所有する物資を、炭鉱の事業主に譲り渡すべきことを命ずることができる。
  主務大臣は、特に必要があると認めるときには、遊休設備の所有者に対して、当該設備を、炭鉱の事業主に譲り渡し、又は貸し渡すべきことを命ずることができる。
  主務大臣は、特に必要があると認めるときには、左に掲げる事業を営む者に対して、炭鉱の事業主の業務に必要な機械の修理、工事の施行又は貨物の運送若しくは取扱に関し必要な命令をすることができる。
 一 機械の修理の事業
 二 土木、建築その他工作物の建設(改造及び修理を含む。)の事業
 三 貨物の運送又は取扱の事業

  第十二条第二項乃至第六項の規定は、前三項の場合に、これを準用する。但し、同条第三項中「石炭庁長官又は石炭局長」とあるのは、「主務大臣」と読み替えるものとする。

第五章 損失の補償

第四十条 政府は、この法律の規定に基いてした命令又は指示に因り損失を受けた者に対して、その損失を補償する。
  前項の規定により補償すべき損失は、通常生ずべき損失とする。
  第一項の規定による補償を伴うべき命令又は指示は、これによつて必要となる補償金の総額が国会の議決を経た予算の金額を超えない範囲内で、これをしなければならない。
  第一項の規定による補償の金額は、商工大臣が、大蔵大臣に協議して、石炭鉱業損失補償審査会の議を経てこれを定める。
  前項の石炭鉱業損失補償審査会に関する事項は、政令でこれを定める。
  前五項に定めるものの外、損失の補償に関し必要な事項は、命令でこれを定める。

第六章 石炭局

第四十一条 この法律の施行に関する事務その他石炭の生産に関する事務を掌らしめるため、石炭局を置く。
  石炭局は、商工大臣の管理に属する。

第四十二条 石炭局の名称、位置及び管轄区域は、別表の通りとする。

第四十三条 石炭局に左の職員を置く。
  局長
  局員
  主事
  局員及び主事の定数は、各石炭局ごとに、商工大臣が、これを定める。

第四十四条 局長は、石炭の生産に関し学識経験ある一級の商工事務官又は商工技官を以て、これに充てる。
  局長は、商工大臣(石炭庁長官の権限に属する事項については石炭庁長官)の指揮監督を受け、局中全般の事務を掌理する。
  局長に事故があるとき、又は局長が欠けたときには、商工大臣の指定する局員が、臨時に、局長の職務を行う。

第四十五条 局長は、所部の職員を指揮監督し、三級官吏の進退を行う。

第四十六条 局員は、石炭の生産に関し学識経験ある者又は一級若しくは二級の商工事務官若しくは商工技官の中から、商工大臣が、これを命ずる。
  局員は、局長の命を受け、局務を掌る。
  第四十三条第二項の規定による各石炭局の局員の定数の過半数に相当する局員は、石炭の生産に関し学識経験ある者及び石炭の生産に関し学識経験ある官吏の中から、命ぜられた者でなければならない。

第四十七条 主事は、三級の商工事務官又は商工技官の中から、これを命ずる。
  主事は、上司の指揮を受け、局務に従事する。

第四十八条 官吏でなくて局員を命ぜられた者の服務については、官吏服務紀律を準用する。

第四十九条 商工大臣は、石炭局の局務の一部を分掌させるため、必要に応じ、石炭局の支局を置くことができる。
  支局の名称、位置及び管轄区域は、商工大臣が、全国炭鉱管理委員会に諮つて、これを定める。

第七章 炭鉱管理委員会

第五十条 炭鉱管理委員会は、全国炭鉱管理委員会及び地方炭鉱管理委員会とする。
  全国炭鉱管理委員会は、商工省にこれを置く。
  地方炭鉱管理委員会は、石炭局ごとにこれを置き、当該石炭局の名称を冠する。
  全国炭鉱管理委員会は、商工大臣の、地方炭鉱管理委員会は、石炭局長の監督に属する。

第五十一条 全国炭鉱管理委員会は、この法律の他の規定によりその権限に属せしめられた事項を調査審議するの外、商工大臣又は石炭庁長官の諮問に応じ、石炭の生産に関する左の事項を調査審議する。
 一 石炭鉱業の管理の運営方針に関する事項
 二 石炭の生産に関する計画に関する事項
 三 石炭鉱業の最高能率発揮に関する事項
  地方炭鉱管理委員会は、この法律の他の規定によりその権限に属せしめられた事項を調査審議するの外、石炭局長の諮問に応じ、石炭の生産に関する前項各号の事項を調査審議する。
  炭鉱管理委員会は、石炭の生産に関する事項について、関係行政庁に建議することができる。

第五十二条 全国炭鉱管理委員会は、会長一人、委員三十人、特別委員若干人及び臨事委員若干人で、これを組織する。
  地方炭鉱管理委員会は、会長一人、委員四十五人以内及び特別委員若干人で、これを組織する。

第五十三条 全国炭鉱管理委員会の会長は、商工大臣を以て、これに充てる。
  全国炭鉱管理委員会の委員は、石炭の生産に関し学識経験ある者五人、炭鉱の事業主を代表する者十人、炭鉱の従業者(炭鉱の事業主の利益を代表すると認められる者を除く。)を代表する者十人及び石炭の需要者を代表する者五人とし、商工大臣が、これを命ずる。
  商工大臣は、必要があると認めるときには、石炭鉱業と密接な関係を有する事業を代表する者を、臨時委員として依嘱することができる。

第五十四条 地方炭鉱管理委員会の会長は、石炭局長を以て、これに充てる。
  地方炭鉱管理委員会の委員は、石炭の生産に関し学識経験ある者五人以内、当該石炭局管轄区域内の炭鉱の事業主を代表する者二十人以内、当該石炭局管轄区域内の炭鉱の従業者(事業主の利益を代表すると認められる者を除く。)を代表する者二十人以内とし、石炭局長が、これを命ずる。
  前項の規定による炭鉱の従業者を代表する委員は、坑内従業者三坑外従業者二の比率とする。

第五十五条 炭鉱管理委員会の会長は、労働能率の向上に関する事項その他炭鉱管理委員会の所掌事項に係る事門的事項を分掌させるため、労働事門部会その他の専門部会を置くことができる。
  地方炭鉱管理委員会の会長は、地方炭鉱管理委員会の所掌事項のうち地区的事項を分掌させるため、石炭局の支局ごとに、地区部会を置くことができる。
  地方炭鉱管理委員会は、その定めるところにより、地区部会の決議を以て、地方炭鉱管理委員会の決議に代えることができる。

第五十六条 商工大臣又は石炭局長は、関係官公吏の中から特別委員を依嘱することができる。

第五十七条 特別委員及び臨時委員は議決権を有しない。

第五十八条 この法律に定めるものの外、炭鉱管理委員会に関し必要な事項は、命令でこれを定める。

第八章 罰則

第五十九条 左の各号の一に該当する指定炭鉱の事業主(事業主が法人である場合には、その違反行為をした代表者)は、これを三年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
 一 第九条に規定する石炭庁長官又は石炭局長の監督上の命令に違反した者
 二 第十条第一項の規定に違反した者
 三 第十二条第一項に規定する石炭庁長官又は石炭局長の命令に違反した者
 四 第二十条第一項に規定する石炭局長の監督上の命令に違反した者
 五 第三十八条第一項に規定する石炭庁長官又は石炭局長の命令に違反した者

第六十条 第三十七条の違反があつた場合においては、その違反行為をした会社の代表者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。

第六十一条 第八条の規定による当該の官吏の監査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、これを六箇月以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。

第六十二条 左の各号の一に該当する者(法人である場合には、その違反行為をした代表者)は、これを一万円以下の過料に処する。
 一 第五条第一項の規定に違反して、予定事業計画又は事業計画を届け出なかつた者
 二 第七条、第八条第一項又は第二十一条の規定に違反して、報告を怠り、又は虚偽の報告をした者
 三 第九条に規定する石炭庁長官又は石炭局長の監督上の命令に違反した者(第五十九条の規定により処罰される者を除く。)
 四 第十条第一項の規定に違反した者(第五十九条の規定により処罰される者を除く。)
 五 第十二条第一項に規定する石炭庁長官又は石炭局長の命令に違反した者(第五十九条の規定により処罰される者を除く。)
 六 第十七条第一項又は第三項の規定に違反して業務計画の案を提出しなかつた者
 七 第二十二条第二項の規定による炭鉱管理者の選任を届け出なかつた者
 八 第二十四条の規定による解任の命令に違反した者
 九 第三十九条第一項、第二項又は第三項に規定する主務大臣の命令に違反した者

附 則

第六十三条 この法律施行の期日は、昭和二十三年四月一日とする。

第六十四条 この法律の有効期間は、この法律の施行の日から、三年とする。但し、その期間満了の際における経済事情により特に必要があるときには、これを延長することができる。
  前項の場合について必要な事項は、法律でこれを定める。

 別 表
名称位置管理区域
札幌石炭局札幌市北海道
平石炭局平市青森県 岩手県 宮城県 秋田県 山形県 福島県 東京都 茨城県 群馬県 栃木県 埼玉県 千葉県 神奈川県 山梨県 新潟県 長野県 岐阜県 愛知県 静岡県 三重県 富山県 石川県
宇部石炭局宇部市滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県 福井県 鳥取県 島根県 岡山県 広島県 山口県 徳島県 香川県 愛媛県 高知県
福岡石炭局福岡市福岡県 佐賀県 長崎県 熊本県 大分県 宮崎県 鹿児島県

   「衆議院ホームページ」より

〇同じ日の過去の出来事(以前にブログで紹介した記事)

1879年(明治12)青森県の尻屋崎灯台に日本初の霧笛(霧信号所)が設置された(霧笛記念日)詳細
1930年(昭和5)岡崎駅~多治見駅間・瀬戸記念橋駅~高蔵寺駅間で省営自動車(国鉄バスの前身)が運行開始される詳細
1962年(昭和37)首都高速道路初の開通区間である京橋~芝浦間(4.5km)が開通する詳細
1984年(昭和59)小説家藤原審爾の命日詳細
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katayamatetsunaikaku01

 今日は、昭和時代中期の1947年(昭和22)に、片山哲内閣によって、「新日本建設国民運動要領」が閣議決定された日です。
 「新日本建設国民運動要領(しんにほんけんせつこくみんうんどうようりょう)」は、太平洋戦争敗戦後の荒廃した日本を再建するため「新日本建設国民運動」を推進しようという、片山哲内閣での閣議決定でした。内容は、①勤労意欲の高揚、②友愛協力の発揮、③自立精神の養成、④社会正義の実現、⑤合理的・民主的な生活慣習の確立、⑥芸術、宗教およびスポーツの重視、⑦平和運動の推進という七つの目標を達成するための国民運動の展開を呼びかけたものです。
 これに基づいて、動員の対象とされたのは、各界代表者、学校、学校関係団体、青年団、婦人会、労働組合、農民組合、各種産業団体、法曹団体、文化団体、宗教団体などで、新聞、雑誌、放送、映画、演劇、音楽、文芸などのメディアの参加も求められました。その中で、憲法普及会と同会を主体とした、日本国憲法に基づく政治教育運動の推進がうたわれていましたが、憲法普及会が1947年(昭和22)末に解散したため、実現していません。
 一方、新生活運動推進協議会という地域組織が各地につくられ、片山内閣が退陣し、1955年(昭和30)の保守合同後も、鳩山内閣時の1956年(昭和31)に「(財)新生活運動協会」が設立されます。この組織は、都道府県に支部をおき、より民主的、合理的、文化的な生活を実現することを目的として、①公衆道徳の高揚・助けあい運動・健全娯楽の振興、②冠婚葬祭の簡素化・無駄の排除・貯蓄と家計の合理化・時間励行、③生活行事や慣習の改善・迷信因習の打破、④衣食住の改善・保健衛生の改善、⑤家族計画、など多岐にわる運動を展開し、地域や企業によっては住民ぐるみ、従業員ぐるみの運動となりました。
 以下に、閣議決定された「新日本建設国民運動要領」を全文掲載しておきますので、ご参照下さい。

〇「新日本建設国民運動要領」1947年(昭和22)6月20日 閣議決定

勤労を尊ぶ民主的・平和的な文化国家をその現実の目標としながら、敗戦日本の国民生活は、いまや崩壊の危機にひんしている。
財政の窮乏と生産の停滞、インフレーションの高進とヤミの横行などの経済的な悪条件がかさなり合つて、国民の生活苦と生活不安がますます深まり行く反面では、道義はたい廃し、思想は動揺し、その結果、社会の秩序は混乱して、国民協同体の基盤にすら恐ろしい亀裂が生じようとしているのである。
この冷厳な事実のはつきりした認識のもとに、新日本の目標とするすぐれた国家理想をたかく執つて、しかもさしせまるこの危機を乗り切つて行くのには、どうしても全国民の間に、祖国再建をめざす積極的な意欲と情熱にみちた力強く新しい精神がよび起されなければならぬ。なぜならば、かような新精神が国民の末端にまでしみ込んでこそ、人々の間に自立自救の責任感と相互扶助の友愛心が培われ、正しきを踏んで生活の窮苦に打ち克つ心構えが生れ、生産の増強と生活の安定のために国民諸階層のあらゆる力が結集せられて、当面の国家的危機が打開できるからである。
すでに戦時中から、長い不自由な生活を忍びに忍んできた国民に、もう一度耐乏の生活を求めることは、政府としてはまことに堪えがたいところである。しかし、戦いに勝つた国民すら、戦いに敗れたわれわれにも優る戦後の困窮を忍んで、ひたすら国力の回復に努めているという。してみれば、われわれ戦敗国民はさらに一段の勇気をふるつて、この荒れ果てた国土を住みよい日本に築き上げてゆくべきであろう。われわれは明日の正しく明るく力強い文化日本を迎え入れるためにこそ、乏しさを分ち、今日の苦しみに堪えてこの危機を突破しようではないか。かくて政府は、耐乏のうちに希望を失わず、勤労のうちに再建の歓びを感じることのできる新しい国民生活の設計を目当てとして、新生活国民運動が速かに展開されることを期待しつつ、次の七目標をかかげて、文化の面における新日本建設の力強い行進を喚び起したいと思う。

第一 勤労意欲の高揚
国民生活の再建には重要な物資の生産を増強することが極めて大切であるから、肉体労働と頭脳労働とを問わず、勤労者こそ日本再建の推進力であるとの自覚と誇りをもつて、明るい気持で進んで勤労にいそしむように努めるとともに、国家も社会も産業も経営も勤労の尊重をかけ声にとどめず、その具体化に努めること。

第二 友愛協力の発揮
生活の苦しみが増すにつれて、他を顧みる余裕を失い、ひたすら自分の利益のみを追い求める傾きを生じているから、国民は社会連帯意識に目覚めて相互の友愛と協力によつて社会公共の福祉のために貢献するように努めること。

第三 自立精神の養成
新憲法は個人の自由と人格の尊厳を重んずることを定めているが、国民は自由に伴う責任を明らかにするとともに、いたずらに権勢に依頼しあるいは追随するような気風を改めて、自らの責任において自らの生活を立て、万事を処理するような自立の精神を養うこと。

第四 社会正義の実現
いわゆる正直者がばかを見るようなことなく、真面目に働く者は常に報いられ、不正を働く者は必ず斥けられ、さらに公共の負担が公平に割りあてられるような社会正義の行われる社会環境を作つて、国民の気風を一新すること。

第五 合理的・民主的な生活慣習の確立
生活のむだをはぶき、ぜいたくを慎しみ、常に合理的に考え、能率的に処理する生活態度を養うとともに、封建的な風習を取り除いて、明るく快く健康な民主的生活慣習をうち立てるように衣食住の全面にわたつて国民生活に工夫と改善を行うこと。

第六 芸術、宗教およびスポーツの重視
暗いとげとげしい閉鎖的な生活におちいることなく、国民各自が余暇を善用して、清純な芸術、宗教、スポーツ等に親しむゆとりを持ち、人心の深奥を開拓して、乏しさのうちにもうるおいと喜びを見出すことができるような気高く朗らかで開放的な生活環境を作ること。

第七 平和運動の推進
個人的あるいは集団的な利害のみにとらわれて互に相争うような傾向を反省し、道理に従い納得ずくで問題を平和的に解決するように努めるとともに、これを国際関係に及ぼし、ひいては世界文化の発展に貢献するよう、平和運動を積極的に推進すること。

右の国民運動展開のため左のような方策を講ずる。
 一、各界代表者の積極的協力を求め、その創意に基く実践運動方策の答申を持ち寄つて、各界それぞれのイニシアテイブの下に運動を推進する。
 二、全国各地に国民運動協議会を開き盛んな討論と研究によつて本運動を促進する。
 三、学校、学校関係団体、青年団、婦人会、労働組合、農民組合、各種産業団体、法曹団体、文化団体、宗教団体等の奮起を促し、本運動の推進力たらしめる。
 四、公民館を活用し、地方の実情に即して新生活の確立を図る。
 五、憲法普及会のかつぱつな活動を促し、同会を主体とする政治教育運動の推進を図る。
 六、勤労者の教育を徹底し、職域を中心とするリクリエーション運動を促進する。
 七、新聞、雑誌、放送、映画、演劇、音楽、文芸等を通じて本運動を展開する。

    「国立国会図書館リサーチ・ナビ」より

〇同じ日の過去の出来事(以前にブログで紹介した記事)

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