今日は、大正時代の1917年(大正6)に、映画文化の中心地であった東京市を対象とした「活動写真興行取締規則」(警視庁令第12号)が公布された日です。
「活動写真興行取締規則(かつどうしゃしんこうぎょうとりしまりきそく)」は、東京の警視庁が出した映画文化の中心地であった東京市を対象とした初めての映画に対する統制令でした。1917年(大正6)2月に、沢柳政太郎を会長とする帝国教育会が、「活動写真取締建議」を文部・内務両省並びに警視庁に提出します。
その内容は、①活動写真取締に関しては、関係官庁、特に教育官庁と警察官庁との間の連絡を尚一層親密にし、一定の方針に依りて取締を厳重にすること、②中央地方の各官庁に於 けるフイルムの検閲は成るべくその標準を一定すること、③各官庁に於ては活動写真特にフイルムの検閲に関しては特に教育上の意見を徴すべき機関を設けること、④活動写真説明者たらんと欲する者には其の人物性向等を調査の 上之に鑑札を興ふること、⑤説明者の説明要領はフイルムと共に検閲すること、⑥活動写真に関し衛生上の取締を尚一層厳重にすること、⑦関係官庁に於て特に児童生徒等に適する教育的活動写真の興行及び之に必要なるフイルムの製造を保護奨励すること、⑧いかなる活動写真館に於ても十六歳未満のものをして夜間は入場せしめざること、⑨学校在学児童に対しては教育官庁より学校当事者に訓令して活動写真の閲覧を取締らしむることを努めしめ、そして警察官庁は之と協力すること、⑩関係官庁、役所、教育会、学校等に 於て活動写真の教育上の影響を調査し、児童生徒の父兄等に注意を興ふること、となっていました。それを受けて、同年7月14日に映画文化の中心地であった東京市を対象としたこの取締規則の公布となりましたが、その要旨は、(1)フイルムを甲乙両種に分け、甲種フイルムは十五歳未満 の者には閲覧させないこと、(2)フイルムは警視庁で検閲すること、(3)男女席を区別すること、(4)説明者は免許を受けること、(5)看板を制限すること、となります。
その後、1925年(大正14)5月26日に、内務省令「活動写真〈フィルム〉検閲規則」が出され、内務省の映画フィルム検閲が始まり、また「各府県興行取締規則」に基づく映画興行取締りも行われていきました。さらに、軍国主義ファシズム体制化の進行により、1933年(昭和8)2月に衆議院で採択された「映画国策樹立に関する建議案」を契機に、プロパガンダ(大衆的教化)の宣伝媒体としての映画をめぐる統制論議が高まり、翌年4月の映画統制委員会設置を経て、1939年(昭和14)4月5日には、「映画法」が公布(施行は10月1日)されることになります。
これによって、日本映画界の各パートで働く者は政府に登録しなければいかなる部門にも従事することはできなくなり、登録するためには春と秋の年二回行われる「技能審査」という試験を受けなければならなくなり、人材面でも統制されました。また、検閲の強化により、内容の大幅な変更や上映禁止処分などを受けるようになり、恋愛映画や娯楽映画等は検閲段階で排除されることが多くなります。
そして、1931年(昭和16)に昭和16年法律第35号による「映画法」改正がなされ、太平洋戦争後の1945年(昭和20)に昭和20年法律第61号により、12月26日をもって廃止されるまで続きました。
〇戦前の映画に対する規制に関する略年表
・1917年(大正6)2月 帝国教育会の「活動写真取締建議」が、文部・内務両省並びに警視庁に提出される
・1917年(大正6)7月14日 映画文化の中心地であった東京市を対象とした「活動写真興行取締規則J (警視庁令第12号)が公布される
・1925年(大正14)5月26日 内務省令「活動写真〈フィルム〉検閲規則」が出され、内務省の映画フィルム検閲が始まる
・1925年(大正14) 「各府県興行取締規則」に基づく映画興行取締りが行われる
・1933年(昭和8)2月 「映画国策樹立に関する建議案」が衆議院で採択される
・1933年(昭和8)6月 『各国に於ける映画国策の概況』という文献にまとめられ、映画国策化のための大事な資料として取扱われる
・1934年(昭和9)4月 映画統制委員会が設置される
・1939年(昭和14)4月5日 「映画法」が公布される
・1939年(昭和14)10月1日 「映画法」が施行される
・1931年(昭和16) 「映画法」が改正(昭和16年法律第35号)される
・1945年(昭和20)12月26日 「映画法」が昭和20年法律第61号により、廃止される
〇同じ日の過去の出来事(以前にブログで紹介した記事)
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1871年(明治4) | 「廃藩置県の詔」(新暦8月29日)が出される(廃藩置県の日) | 詳細 |
1967年(昭和42) | 「世界知的所有権機関を設立する条約」がストックホルムで調印される | 詳細 |
1969年(昭和44) | 洋画家坂本繁二郎の命日 | 詳細 |