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 今日は、大正時代の1922年(大正11)に、「史蹟名勝天然紀念物保存法」により、初めて国の名勝として、天橋立、三保松原、偕楽園など9件が指定された日です。
 「史蹟名勝天然紀念物保存法」(しせきめいしょうてんねんきねんぶつほぞんほう)は、大正時代の1919年(大正8)4月10日に公布(同年6月1日施行)された、文化財のうち、今日の分類における「記念物」を対象とし、その保護を目的とした法律で、現行の「文化財保護法」の前身の一つでした。明治時代以降、国勢の発展に伴ない、土地の開拓、道路の新設、鉄道の開通、工場の設置、その他の人為的な原因によって、史蹟や天然紀念物が破壊されている状況を考慮して、制定されています。
 その内容は、史蹟名勝天然紀念物指定及び仮指定(第1条)、保存のための調査(第2条)、現状変更の鵠限等(第3条)、一定の行為の禁止若しくは制限(第4条)、管理(第5条)、罰則(第6条)に関する規定がなされました。その後、昭和22年法律第239号及び昭和25年法律第168号による改正がなされ、1950年(昭和25)の「文化財保護法」(昭和25年法律第214号)の制定により、同年8月29日をもって廃止されています。
 尚、この法律による指定は、第1回は1920年(大正9)7月で、成東・東金食虫植物群落(千葉県)等10件の天然紀念物、第2回は1921年(大正10)で、水城跡、大宰府跡(福岡県)等史蹟48件、天然紀念物30件.第3回は1922年(大正11)で.陸奥国分寺跡(宮城県)、頭塔(奈良県)等史蹟71件、名勝9件、天然紀念物55件が指定されました。新法移行時までの指定件数は、史蹟618件、名勝241件、天然紀念物850件、計1,580件となっています。
 以下に、「史蹟名勝天然紀念物保存法」を全文掲載しておきますので、ご参照下さい。

〇名勝(めいしょう)とは?

 景色のすぐれた地、風光明媚で知られる場所のことですが、現在では、「文化財保護法」によって、芸術上または観賞上価値が高い土地について、国および地方公共団体が指定を行ったものを言います。同法第2条第1項第4号で定められた記念物のうち、「庭園、橋梁、峡谷、海浜、山岳その他の名勝地で我が国にとつて芸術上又は観賞上価値の高いもの」で文部科学大臣が指定した、とくに重要なものとされてきました。また、地方公共団体においては、文部科学大臣の指定から漏れたものに対して、それぞれの条例に基づいて教育委員会が指定を行っています。
 名勝の保護制度は、1919年(大正8年)に施行された「史蹟名勝天然紀念物保存法」において、風致景観の優秀な土地、名所的な土地を保護する制度として始まり、1922年(大正11)3月8日に.天橋立、三保松原、偕楽園など9件が、初めて指定されました。この法律によって、241件が指定された後、1950年(昭和25)5月30日に公布(同年8月29日施行)の「文化財保護法」に引き継がれ、自然保護制度としての性格を強めています。また、名勝のうち、とくに価値が高いものを「特別名勝」としてきました。
 国が指定した名勝は、2024年(令和6)3月1日時点で429件(内、特別名勝36件)で、都道府県が指定した名勝は287件、市町村が指定した名勝は880件(いずれも2019年5月時点)となっています。

☆「史蹟名勝天然紀念物保存法」 (全文)  1919年(大正8)4月10日公布、同年6月1日施行

史蹟名勝天然紀念物保存法 (大正8年法律第44号)

第一条 本法ヲ適用スヘキ史蹟名勝天然紀念物ハ内務大臣之ヲ指定ス
2 前項ノ指定以前ニ於テ必要アルトキハ地方長官ハ仮ニ之ヲ指定スルコトヲ得

第二条 史蹟名勝天然紀念物ノ調査ニ関シ必要アルトキハ指定ノ前後ヲ問ハス当該吏員ハ其ノ土地又ハ隣接地ニ立入リ土地ノ発掘障碍物ノ撤去其ノ他調査ニ必要ナル行為ヲ為スコトヲ得

第三条 史蹟名勝天然紀念物ニ関シ其ノ現状ヲ変更シ又ハ其ノ保存ニ影響ヲ及ホスヘキ行為ヲ為サムトスルトキハ地方長官ノ許可ヲ受クヘシ

第四条 内務大臣ハ史蹟名勝天然紀念物ノ保存ニ関シ地域ヲ定メテ一定ノ行為ヲ禁止若ハ制限シ又ハ必要ナル施設ヲ命スルコトヲ得
2 前項ノ命令若ハ処分又ハ第二条ノ規定ニ依ル行為ノ為損害ヲ被リタル私人ニ対シテハ命令ノ定ムル所ニ依リ政府之ヲ補償ス

第五条 内務大臣ハ地方公共団体ヲ指定シテ史蹟名勝天然紀念物ノ管理ヲ為サシムルコトヲ得
2 前項ノ管理ニ要スル費用ハ当該公共団体ノ負担トス
3 国庫ハ前項ノ費用ニ対シ其ノ一部ヲ補助スルコトヲ得

第六条 第三条ノ規定ニ違反シ又ハ第四条第一項ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者ハ六月以下ノ禁錮若ハ拘留又ハ百円以下ノ罰金若ハ科料ニ処ス

  附 則

1 本法施行ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
2 本法施行ノ期日ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
3 古社寺保存法第十九条ハ本法施行ノ日ヨリ之ヲ廃止ス

   「官報」より

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