ガウスの歴史を巡るブログ(その日にあった過去の出来事)

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 今日は、昭和時代中期の1966年(昭和41)に、国際連合総会で「国際人権規約」が採択された日です。
 「国際人権規約」(こくさいじんけんきやく)は、昭和時代後期の1966年(昭和41)12月16日に国連総会で採択された基本的人権の保護に関する条約で、社会権についてのA規約「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」、自由権についてのB規約「市民的及び政治的権利に関する国際規約」及び、B規約に付属する選択議定書があり、1976年(昭和51)に発効しました。また、1989年(平成元)12月15日、「自由権規約の第2選択議定書」(死刑廃止議定書)も採択され、1991年(平成3)7月11日に発効、さらに、社会権規約の個人通報制度を規定する社会権規約選択議定書も2008年(平成20)に採択され、2013年(平成25)に発効しています。
 これらは、1948年(昭和23)に国連で採択された「世界人権宣言」が、人権に関し諸国家が達成すべき共通の基準を示したにすぎなかったものの、それを国際的に法制化しようとするもので、これによって民族自決権や個人的人権が国際的に保障されるよう定められました。日本では、1979年(昭和54)6月6日に、A・B両規約のみ(選択議定書を除く)国会で批准、6月21日に批准書を寄託し、9月21日に加盟国となりましたが、中等教育の無償化(2012年9月11日に受諾)、労働者への休日の報酬の支払い、公務員のストライキ権の保障については国内法との関係から留保、及び、社会権規約・自由権規約の「警察職員」には消防吏員も含まれると解釈宣言を行っています。
 尚、2019年(令和元)8月現在で、A規約については、署名国数71/締約国数170、B規約については、署名国数74/締約国数173となりました。
 以下に、A・B両規約を掲載しておきますので、ご参照下さい。

〇「国際人権規約」 1966年(昭和41)12月16日に国際連合総会で採択

経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)

 この規約の締約国は、
 国際連合憲章において宣明された原則によれば、人類社会のすべての構成員の固有の尊厳及び平等のかつ奪い得ない権利を認めることが世界における自由、正義及び平和の基礎をなすものであることを考慮し、
 これらの権利が人間の固有の尊厳に由来することを認め、
 世界人権宣言によれば、自由な人間は恐怖及び欠乏からの自由を享受することであるとの理想は、すべての者がその市民的及び政治的権利とともに経済的、社会的及び文化的権利を享有することのできる条件が作り出される場合に初めて達成されることになることを認め、
 人権及び自由の普遍的な尊重及び遵守を助長すべき義務を国際連合憲章に基づき諸国が負っていることを考慮し、
 個人が、他人に対し及びその属する社会に対して義務を負うこと並びにこの規約において認められる権利の増進及び擁護のために努力する責任を有することを認識して、
 次のとおり協定する。

第一部

第一条
1 すべての人民は、自決の権利を有する。この権利に基づき、すべての人民は、その政治的地位を自由に決定し並びにその経済的、社会的及び文化的発展を自由に追求する。
2 すべて人民は、互恵の原則に基づく国際的経済協力から生ずる義務及び国際法上の義務に違反しない限り、自己のためにその天然の富及び資源を自由に処分することができる。人民は、いかなる場合にも、その生存のための手段を奪われることはない。
3 この規約の締約国(非自治地域及び信託統治地域の施政の責任を有する国を含む。)は、国際連合憲章の規定に従い、自決の権利が実現されることを促進し及び自決の権利を尊重する。

第二部

第二条
1 この規約の各締約国は、立法措置その他のすべての適当な方法によりこの規約において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成するため、自国における利用可能な手段を最大限に用いることにより、個々に又は国際的な援助及び協力、特に、経済上及び技術上の援助及び協力を通じて、行動をとることを約束する。
2 この規約の締約国は、この規約に規定する権利が人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生又は他の地位によるいかなる差別もなしに行使されることを保障することを約束する。
3 開発途上にある国は、人権及び自国の経済の双方に十分な考慮を払い、この規約において認められる経済的権利をどの程度まで外国人に保障するかを決定することができる。

第三条
 この規約の締約国は、この規約に定めるすべての経済的、社会的及び文化的権利の享有について男女に同等の権利を確保することを約束する。

第四条
 この規約の締約国は、この規約に合致するものとして国により確保される権利の享受に関し、その権利の性質と両立しており、かつ、民主的社会における一般的福祉を増進することを目的としている場合に限り、法律で定める制限のみをその権利に課すことができることを認める。

第五条
1 この規約のいかなる規定も、国、集団又は個人が、この規約において認められる権利若しくは自由を破壊し若しくはこの規約に定める制限の範囲を超えて制限することを目的とする活動に従事し又はそのようなことを目的とする行為を行う権利を有することを意味するものと解することはできない。
2 いずれかの国において法律、条約、規則又は慣習によって認められ又は存する基本的人権については、この規約がそれらの権利を認めていないこと又はその認める範囲がより狭いことを理由として、それらの権利を制限し又は侵すことは許されない。

第三部

第六条
1 この規約の締約国は、労働の権利を認めるものとし、この権利を保障するため適当な措置をとる。この権利には、すべての者が自由に選択し又は承諾する労働によって生計を立てる機会を得る権利を含む。
2 この規約の締約国が1の権利の完全な実現を達成するためとる措置には、個人に対して基本的な政治的及び経済的自由を保障する条件の下で着実な経済的、社会的及び文化的発展を実現し並びに完全かつ生産的な雇用を達成するための技術及び職業の指導及び訓練に関する計画、政策及び方法を含む。

第七条
 この規約の締約国は、すべての者が公正かつ良好な労働条件を享受する権利を有することを認める。この労働条件は、特に次のものを確保する労働条件とする。
(a) すべての労働者に最小限度次のものを与える報酬
  (i) 公正な賃金及びいかなる差別もない同一価値の労働についての同一報酬。特に、女子については、同一の労働についての同一報酬とともに男子が享受する労働条件に劣らない労働条件が保障されること。
  (ii) 労働者及びその家族のこの規約に適合する相応な生活
(b) 安全かつ健康的な作業条件
(c) 先任及び能力以外のいかなる事由も考慮されることなく、すべての者がその雇用関係においてより高い適当な地位に昇進する均等な機会
(d) 休息、余暇、労働時間の合理的な制限及び定期的な有給休暇並びに公の休日についての報酬

第八条
1 この規約の締約国は、次の権利を確保することを約束する。
(a) すべての者がその経済的及び社会的利益を増進し及び保護するため、労働組合を結成し及び当該労働組合の規則にのみ従うことを条件として自ら選択する労働組合に加入する権利。この権利の行使については、法律で定める制限であって国の安全若しくは公の秩序のため又は他の者の権利及び自由の保護のため民主的社会において必要なもの以外のいかなる制限も課することができない。
(b) 労働組合が国内の連合又は総連合を設立する権利及びこれらの連合又は総連合が国際的な労働組合団体を結成し又はこれに加入する権利
(c) 労働組合が、法律で定める制限であって国の安全若しくは公の秩序のため又は他の者の権利及び自由の保護のため民主的社会において必要なもの以外のいかなる制限も受けることなく、自由に活動する権利
(d) 同盟罷業をする権利。ただし、この権利は、各国の法律に従って行使されることを条件とする。
2 この条の規定は、軍隊若しくは警察の構成員又は公務員による1の権利の行使について合法的な制限を課することを妨げるものではない。
3 この条のいかなる規定も、結社の自由及び団結権の保護に関する千九百四十八年の国際労働機関の条約の締約国が、同条約に規定する保障を阻害するような立法措置を講ずること又は同条約に規定する保障を阻害するような方法により法律を適用することを許すものではない。

第九条
 この規約の締約国は、社会保険その他の社会保障についてのすべての者の権利を認める。

第十条
 この規約の締約国は、次のことを認める。
1 できる限り広範な保護及び援助が、社会の自然かつ基礎的な単位である家族に対し、特に、家族の形成のために並びに扶養児童の養育及び教育について責任を有する間に、与えられるべきである。婚姻は、両当事者の自由な合意に基づいて成立するものでなければならない。
2 産前産後の合理的な期間においては、特別な保護が母親に与えられるべきである。働いている母親には、その期間において、有給休暇又は相当な社会保障給付を伴う休暇が与えられるべきである。
3 保護及び援助のための特別な措置が、出生の他の事情を理由とするいかなる差別もなく、すべての児童及び年少者のためにとられるべきである。児童及び年少者は、経済的及び社会的な搾取から保護されるべきである。児童及び年少者を、その精神若しくは健康に有害であり、その生命に危険があり又はその正常な発育を妨げるおそれのある労働に使用することは、法律で処罰すべきである。また、国は年齢による制限を定め、その年齢に達しない児童を賃金を支払って使用することを法律で禁止しかつ処罰すべきである。

第十一条
1 この規約の締約国は、自己及びその家族のための相当な食糧、衣類及び住居を内容とする相当な生活水準についての並びに生活条件の不断の改善についてのすべての者の権利を認める。締約国は、この権利の実現を確保するために適当な措置をとり、このためには、自由な合意に基づく国際協力が極めて重要であることを認める。
2 この規約の締約国は、すべての者が飢餓から免れる基本的な権利を有することを認め、個々に及び国際協力を通じて、次の目的のため、具体的な計画その他の必要な措置をとる。
(a) 技術的及び科学的知識を十分に利用することにより、栄養に関する原則についての知識を普及させることにより並びに天然資源の最も効果的な開発及び利用を達成するように農地制度を発展させ又は改革することにより、食糧の生産、保存及び分配の方法を改善すること。
(b) 食糧の輸入国及び輸出国の双方の問題に考慮を払い、需要との関連において世界の食糧の供給の衡平な分配を確保すること。
第十二条
1 この規約の締約国は、すべての者が到達可能な最高水準の身体及び精神の健康を享受する権利を有することを認める。
2 この規約の締約国が1の権利の完全な実現を達成するためにとる措置には、次のことに必要な措置を含む。
(a) 死産率及び幼児の死亡率を低下させるための並びに児童の健全な発育のための対策
(b) 環境衛生及び産業衛生のあらゆる状態の改善
(c) 伝染病、風土病、職業病その他の疾病の予防、治療及び抑圧
(d) 病気の場合にすべての者に医療及び看護を確保するような条件の創出

第十三条
1 この規約の締約国は、教育についてのすべての者の権利を認める。締約国は、教育が人格の完成及び人格の尊厳についての意識の十分な発達を指向し並びに人権及び基本的自由の尊重を強化すべきことに同意する。更に、締約国は、教育が、すべての者に対し、自由な社会に効果的に参加すること、諸国民の間及び人種的、種族的又は宗教的集団の間の理解、寛容及び友好を促進すること並びに平和の維持のための国際連合の活動を助長することを可能にすべきことに同意する。
2 この規約の締約国は、1の権利の完全な実現を達成するため、次のことを認める。
(a) 初等教育は、義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとすること。
(b) 種々の形態の中等教育(技術的及び職業的中等教育を含む。)は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、一般的に利用可能であり、かつ、すべての者に対して機会が与えられるものとすること。
(c) 高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること。
(d) 基礎教育は、初等教育を受けなかった者又はその全課程を修了しなかった者のため、できる限り奨励され又は強化されること。
(e) すべての段階にわたる学校制度の発展を積極的に追求し、適当な奨学金制度を設立し及び教育職員の物質的条件を不断に改善すること。
3 この規約の締約国は、父母及び場合により法定保護者が、公の機関によって設置される学校以外の学校であって国によって定められ又は承認される最低限度の教育上の基準に適合するものを児童のために選択する自由並びに自己の信念に従って児童の宗教的及び道徳的教育を確保する自由を有することを尊重することを約束する。
4 この条のいかなる規定も、個人及び団体が教育機関を設置し及び管理する自由を妨げるものと解してはならない。ただし、常に、1に定める原則が遵守されること及び当該教育機関において行なわれる教育が国によって定められる最低限度の基準に適合することを条件とする。

第十四条
 この規約の締約国となる時にその本土地域又はその管轄の下にある他の地域において無償の初等義務教育を確保するに至っていない各締約国は、すべての者に対する無償の義務教育の原則をその計画中に定める合理的な期間内に漸進的に実施するための詳細な行動計画を二年以内に作成しかつ採用することを約束する。

第十五条
1 この規約の締約国は、すべての者の次の権利を認める。
(a) 文化的な生活に参加する権利
(b) 科学の進歩及びその利用による利益を享受する権利
(c) 自己の科学的、文学的又は芸術的作品により生ずる精神的及び物質的利益が保護されることを享受する権利
2 この規約の締約国が1の権利の完全な実現を達成するためにとる措置には、科学及び文化の保存、発展及び普及に必要な措置を含む。
3 この規約の締約国は、科学研究及び創作活動に不可欠な自由を尊重することを約束する。
4 この規約の締約国は、科学及び文化の分野における国際的な連絡及び協力を奨励し及び発展させることによって得られる利益を認める。

第四部

第十六条
1 この規約の締約国は、この規約において認められる権利の実現のためにとった措置及びこれらの権利の実現についてもたらされた進歩に関する報告をこの部の規定に従って提出することを約束する。
2
(a) すべての報告は、国際連合事務総長に提出するものとし、同事務総長は、この規約による経済社会理事会の審議のため、その写しを同理事会に送付する。
(b) 国際連合事務総長は、また、いずれかの専門機関の加盟国であるこの規約の締結によって提出される報告又はその一部が当該専門機関の基本文書によりその任務の範囲内にある事項に関連を有するものである場合には、それらの報告又は関係部分の写しを当該専門機関に送付する。

第十七条
1 この規約の締約国は、経済社会理事会が締約国及び関係専門機関との協議の後この規約の効力発生の後一年以内に作成する計画に従い、報告を段階的に提出する。
2 報告には、この規約に基づく義務の履行程度に影響を及ぼす要因及び障害を記載することができる。
3 関連情報がこの規約の締約国により国際連合又はいずれかの専門機関に既に提供されている場合には、その情報については、再び提供の必要はなく、提供に係る情報について明確に言及することで足りる。

第十八条
 経済社会理事会は、人権及び基本的自由の分野における国際連合憲章に規定する責任に基づき、いずれかの専門機関の任務の範囲内にある事項に関するこの規約の規定の遵守についてもたらされた進歩に関し当該専門機関が同理事会に報告することにつき、当該専門機関と取極を行うことができる。報告には、当該専門機関の権限のある機関がこの規約の当該規定の実施に関して採択した決定及び勧告についての詳細を含ませることができる。

第十九条
 経済社会理事会は、第十六条及び第十七条の規定により締約国が提出する人権に関する報告並びに前条の規定により専門機関が提出する人権に関する報告を、検討及び一般的な性格を有する勧告のため又は適当な場合には情報用として、人権委員会に送付することができる。

第二十条
 この規約の締約国及び関係専門機関は、前条にいう一般的な性格を有する勧告に関する意見又は人権委員会の報告において若しくはその報告で引用されている文書において言及されている一般的な性格を有する勧告に関する意見を、経済社会理事会に提出することができる。

第二十一条
 経済社会理事会は、一般的な性格を有する勧告を付した報告、並びにこの規約の締約国及び専門機関から得た情報であってこの規約において認められる権利の実現のためにとられた措置及びこれらの権利の実現についてもたらされた進歩に関する情報の概要を、総会に随時提出することができる。

第二十二条
 経済社会理事会は、技術援助の供与に関係を有する国際連合の他の機関及びこれらの補助機関並びに専門機関に対し、この部に規定する報告により提起された問題であって、これらの機関がそれぞれの権限の範囲内でこの規約の効果的かつ漸進的な実施に寄与すると認められる国際的措置をとることの適否の決定に当たって参考となるものにつき、注意を喚起することができる。

第二十三条
 この規約の締約国は、この規約において認められる権利の実現のための国際的措置には条約の締結、勧告の採択、技術援助の供与並びに関係国の政府との連携により組織される協議及び検討のための地域会議及び専門家会議の開催のような措置が含まれることに同意する。

第二十四条
 この規約のいかなる規定も、この規約に規定されている事項につき、国際連合の諸機関及び専門機関の任務をそれぞれ定めている国際連合憲章及び専門機関の基本文書の規定の適用を妨げるものと解してはならない。

第二十五条
 この規約のいかなる規定も、すべての人民がその天然の富及び資源を十分かつ自由に享受し及び利用する固有の権利を害するものと解してはならない。

第五部

第二十六条
1 この規約は、国際連合又はいずれかの専門機関の加盟国、国際司法裁判所規程の当事国及びこの規約の締約国となるよう国際連合総会が招請する他の国による署名のために開放しておく。
2 この規約は、批准されなければならない。批准書は、国際連合事務総長に寄託する。
3 この規約は、1に規程する国による加入のために開放しておく。
4 加入は、加入書を国際連合事務総長に寄託することによって行う。
5 国際連合事務総長は、この規約に署名し又は加入したすべての国に対し、各批准書又は各加入書の寄託を通報する。

第二十七条
1 この規約は、三十五番目の批准書又は加入書が国際連合事務総長に寄託された日の後三箇月で効力を生ずる。
2 この規約は、三十五番目の批准書又は加入書が寄託された後に批准し又は加入する国については、その批准書又は加入書が寄託された日の後三箇月で効力を生ずる。

第二十八条
 この規約は、いかなる制限又は例外もなしに連邦国家のすべての地域について適用する。

第二十九条
1 この規約のいずれの締約国も、改正を提案し及び改正案を国際連合事務総長に提出することができる。同事務総長は、直ちに、この規約の締約国に対し、改正案を送付するものとし、締約国による改正案の審議及び投票のための締約国会議の開催についての賛否を同事務総長に通告するよう要請する。締約国の三分の一以上が会議の開催に賛成する場合には、同事務総長は、国際連合の主催の下に会議を招集する。会議において出席しかつ投票する締約国の過半数によって採択された改正案は、承認のため、国際連合総会に提出する。
2 改正は、国際連合総会が承認し、かつ、この規約の締約国の三分の二以上の多数がそれぞれの国の憲法上の手続に従って受諾したときに、効力を生ずる。
3 改正は、効力を生じたときは、改正を受諾した締約国を拘束するものとし、他の締約国は、改正前のこの規約の規定(受諾した従前の改正を含む。)により引き続き拘束される。

第三十条
 第二十六条5の規定により行われる通報にかかわらず、国際連合事務総長は、同条1に規定するすべての国に対し、次の事項を通報する。
(a) 第二十六条の規定による署名、批准及び加入
(b) 第二十七条の規定に基づきこの規約が効力を生ずる日及び前条の規定により改正が効力を生ずる日
第三十一条
1 この規約は、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語をひとしく正文とし、国際連合に寄託される。
2 国際連合事務総長は、この規約の認証謄本を第二十六条に規定するすべての国に送付する。

 以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けて、千九百六十六年十二月十九日にニューヨークで署名のために開放されたこの規約に署名した。

  (署名欄は省略)

市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)

 この規約の締約国は、
 国際連合憲章において宣明された原則によれば、人類社会のすべての構成員の固有の尊厳及び平等のかつ奪い得ない権利を認めることが世界における自由、正義及び平和の基礎をなすものであることを考慮し、
 これらの権利が人間の固有の尊厳に由来することを認め、
 世界人権宣言によれば、自由な人間は市民的及び政治的自由並びに恐怖及び欠乏からの自由を享受するものであるとの理想は、すべての者がその経済的、社会的及び文化的権利とともに市民的及び政治的権利を享有することのできる条件が作り出される場合に初めて達成されることになることを認め、
 人権及び自由の普遍的な尊重及び遵守を助長すべき義務を国際連合憲章に基づき諸国が負っていることを考慮し、
 個人が、他人に対し及びその属する社会に対して義務を負うこと並びにこの規約において認められる権利の増進及び擁護のために努力する責任を有することを認識して、
 次のとおり協定する。

第一部

第一条
1 すべての人民は、自決の権利を有する。この権利に基づき、すべての人民は、その政治的地位を自由に決定し並びにその経済的、社会的及び文化的発展を自由に追求する。
2 すべての人民は、互恵の原則に基づく国際的経済協力から生ずる義務及び国際法上の義務に違反しない限り、自己のためにその天然の富及び資源を自由に処分することができる。人民は、いかなる場合にも、その生存のための手段を奪われることはない。
3 この規約の締約国(非自治地域及び信託統治地域の施政の責任を有する国を含む。)は、国際連合憲章の規定に従い、自決の権利が実現されることを促進し及び自決の権利を尊重する。

第二部

第二条
1 この規約の各締約国は、その領域内にあり、かつ、その管轄の下にあるすべての個人に対し、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生又は他の地位等によるいかなる差別もなしにこの規約において認められる権利を尊重し及び確保することを約束する。
2 この規約の各締約国は、立法措置その他の措置がまだとられていない場合には、この規約において認められる権利を実現するために必要な立法措置その他の措置をとるため、自国の憲法上の手続及びこの規約の規定に従って必要な行動をとることを約束する。
3 この規約の各締約国は、次のことを約束する。
 (a) この規約において認められる権利又は自由を侵害された者が、公的資格で行動する者によりその侵害が行われた場合にも、効果的な救済措置を受けることを確保すること。
 (b) 救済措置を求める者の権利が権限のある司法上、行政上若しくは立法上の機関又は国の法制で定める他の権限のある機関によって決定されることを確保すること及び司法上の救済措置の可能性を発展させること。
 (c) 救済措置が与えられる場合に権限のある機関によって執行されることを確保すること。

第三条
 この規約の締約国は、この規約に定めるすべての市民的及び政治的権利の享有について男女に同等の権利を確保することを約束する。

第四条
1 国民の生存を脅かす公の緊急事態の場合においてその緊急事態の存在が公式に宣言されているときは、この規約の締約国は、事態の緊急性が真に必要とする限度において、この規約に基づく義務に違反する措置をとることができる。ただし、その措置は、当該締約国が国際法に基づき負う他の義務に抵触してはならず、また、人種、皮膚の色、性、言語、宗教又は社会的出身のみを理由とする差別を含んではならない。
2 一の規定は、第六条、第七条、第八条1及び2、第十一条、第十五条、第十六条並びに第十八条の規定に違反することを許すものではない。
3 義務に違反する措置をとる権利を行使するこの規約の締約国は、違反した規定及び違反するに至った理由を国際連合事務総長を通じてこの規約の他の締約国に直ちに通知する。更に、違反が終了する日に、同事務総長を通じてその旨通知する。

第五条
1 この規約のいかなる規定も、国、集団又は個人が、この規約において認められる権利及び自由を破壊し若しくはこの規約に定める制限の範囲を超えて制限することを目的とする活動に従事し又はそのようなことを目的とする行為を行う権利を有することを意味するものと解することはできない。
2 この規約のいずれかの締約国において法律、条約、規則又は慣習によって認められ又は存する基本的人権については、この規約がそれらの権利を認めていないこと又はその認める範囲がより狭いことを理由として、それらの権利を制限し又は侵してはならない。

第三部

第六条
1 すべての人間は、生命に対する固有の権利を有する。この権利は、法律によって保護される。何人も、恣意的にその生命を奪われない。
2 死刑を廃止していない国においては、死刑は、犯罪が行われた時に効力を有しており、かつ、この規約の規定及び集団殺害犯罪の防止及び処罰に関する条約の規定に抵触しない法律により、最も重大な犯罪についてのみ科することができる。この刑罰は、権限のある裁判所が言い渡した確定判決によってのみ執行することができる。
3 生命の剥奪が集団殺害犯罪を構成する場合には、この条のいかなる想定も、この規約の締約国が集団殺害犯罪の防止及び処罰に関する条約の規定に基づいて負う義務を方法のいかんを問わず免れることを許すものではないと了解する。
4 死刑を言い渡されたいかなる者も、特赦又は減刑を求める権利を有する。死刑に対する大赦、特赦又は減刑はすべての場合に与えることができる。
5 死刑は、十八歳未満の者が行った犯罪について科してはならず、また、妊娠中の女子に対して執行してはならない。
6 この条のいかなる規定も、この規約の締約国により死刑の廃止を遅らせ又は妨げるために援用されてはならない。

第七条
 何人も、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けない。特に、何人も、その自由な同意なしに医学的又は科学的実験を受けない。

第八条
1 何人も、奴隷の状態に置かれない。あらゆる形態の奴隷制度及び奴隷取引は、禁止する。
2 何人も、隷属状態に置かれない。
3
(a) 何人も、強制労働に服することを要求されない。
(b) (a)の規定は、犯罪に対する刑罰として強制労働を伴う拘禁刑を科することができる国において、権限のある裁判所による刑罰の言渡しにより強制労働をさせることを禁止するものと解してはならない。
(c) この三の適用上、「強制労働」には、次のものを含まない。
(i) 作業又は役務であって、(b)の規定において言及されておらず、かつ、裁判所の合法的な命令によって抑留されている者又はその抑留を条件付きで免除されている者に通常要求されるもの
(ii) 軍事的性質の役務及び、良心的兵役拒否が認められている国においては、良心的兵役拒否者が法律によって要求される国民的役務
(iii) 社会の存立又は福祉を脅かす緊急事態又は災害の場合に要求される役務
(iv) 市民としての通常の義務とされる作業又は役務

第九条
1 すべての者は、身体の自由及び安全についての権利を有する。何人も、恣意的に逮捕され又は抑留されない。何人も、法律で定める理由及び手続によらない限り、その自由を奪われない。
2 逮捕される者は、逮捕の時にその理由を告げられるものとし、自己に対する被疑事実を速やかに告げられる。
3 刑事上の罪に問われて逮捕され又は抑留された者は、裁判官又は司法権を行使することが法律によって認められている他の官憲の面前に速やかに連れて行かれるものとし、妥当な期間内に裁判を受ける権利又は釈放される権利を有する。裁判に付される者を抑留することが原則であってはならず、釈放に当たっては、裁判その他の司法上の手続のすべての段階における出頭及び必要な場合における判決の執行のための出頭が保証されることを条件とすることができる。
4 逮捕又は抑留によって自由を奪われた者は、裁判所がその抑留が合法的であるかどうかを遅滞なく決定すること及びその抑留が合法的でない場合にはその釈放を命ずることができるように、裁判所において手続をとる権利を有する。
5 違法に逮捕され又は抑留された者は、賠償を受ける権利を有する。

第十条
1 自由を奪われたすべての者は、人道的にかつ人間の固有の尊厳を尊重して、取り扱われる。
2
(a) 被告人は、例外的な事情がある場合を除くほか有罪の判決を受けた者とは分離されるものとし、有罪の判決を受けていない者としての地位に相応する別個の取扱いを受ける。
(b) 少年の被告人は、成人とは分離されるものとし、できる限り速やかに裁判に付される。
3 行刑の制度は、被拘禁者の矯正及び社会復帰を基本的な目的とする処遇を含む。少年の犯罪者は、成人とは分離されるものとし、その年齢及び法的地位に相応する取扱いを受ける。

第十一条
 何人も、契約上の義務を履行することができないことのみを理由として拘禁されない。

第十二条
1 合法的にいずれかの国の領域内にいるすべての者は、当該領域内において、移動の自由及び居住の自由についての権利を有する。
2 すべての者は、いずれの国(自国を含む。)からも自由に離れることができる。
3 1及び2の権利は、いかなる制限も受けない。ただし、その制限が、法律で定められ、国の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳又は他の者の権利及び自由を保護するために必要であり、かつ、この規約において認められる他の権利と両立するものである場合は、この限りでない。
4 何人も、自国に戻る権利を恣意的に奪われない。

第十三条
 合法的にこの規約の締約国の領域内にいる外国人は、法律に基づいて行われた決定によってのみ当該領域から追放することができる。国の安全のためのやむを得ない理由がある場合を除くほか、当該外国人は、自己の追放に反対する理由を提示すること及び権限のある機関又はその機関が特に指名する者によって自己の事案が審査されることが認められるものとし、この為にその機関又はその者に対する代理人の出頭が認められる。

第十四条
1 すべての者は、裁判所の前に平等とする。すべての者は、その刑事上の罪の決定又は民事上の権利及び義務の争いについての決定のため、法律で設置された、権限のある、独立の、かつ、公平な裁判所による公正な公開審理を受ける権利を有する。報道機関及び公衆に対しては、民主的社会における道徳、公の秩序若しくは国の安全を理由として、当事者の私生活の利益のため必要な場合において又はその公開が司法の利益を害することとなる特別な状況において裁判所が真に必要があると認める限度で、裁判の全部又は一部を公開しないことができる。もっとも、刑事訴訟又は他の訴訟において言い渡される判決は、少年の利益のために必要がある場合又は当該手続が夫婦間の争い若しくは児童の後見に関するものである場合を除くほか、公開する。
2 刑事上の罪に問われているすべての者は、法律に基づいて有罪とされるまでは、無罪と推定される権利を有する。
3 すべての者は、その刑事上の罪の決定について、十分平等に、少なくとも次の保障を受ける権利を有する。
(a) その理解する言語で速やかにかつ詳細にその罪の性質及び理由を告げられること。
(b) 防御の準備のために十分な時間及び便益を与えられ並びに自ら選任する弁護人と連絡すること。
(c) 不当に遅延することなく裁判を受けること。
(d) 自ら出席して裁判を受け及び、直接に又は自ら選任する弁護人を通じて、防御すること。弁護人がいない場合には、弁護人を持つ権利を告げられること。司法の利益のために必要な場合には、十分な支払手段を有しないときは自らその費用を負担することなく、弁護人を付されること。
(e) 自己に不利な証人を尋問し又はこれに対し尋問させること並びに自己に不利な証人と同じ条件で自己のための証人の出席及びこれに対する尋問を求めること。
(f) 裁判所において使用される言語を理解すること又は話すことができない場合には、無料で通訳の援助を受けること。
(g) 自己に不利益な供述又は有罪の自白を強要されないこと。
4 少年の場合には、手続は、その年齢及びその更生の促進が望ましいことを考慮したものとする。
5 有罪の判決を受けたすべての者は、法律に基づきその判決及び刑罰を上級の裁判所によって再審理される権利を有する。
6 確定判決によって有罪と決定された場合において、その後に、新たな事実又は新しく発見された事実により誤審のあったことが決定的に立証されたことを理由としてその有罪の判決が破棄され又は赦免が行われたときは、その有罪の判決の結果刑罰に服した者は、法律に基づいて補償を受ける。ただし、その知られなかった事実が適当な時に明らかにされなかったことの全部又は一部がその者の責めに帰するものであることが証明される場合は、この限りでない。
7 何人も、それぞれの国の法律及び刑事手続に従って既に確定的に有罪又は無罪の判決を受けた行為について再び裁判され又は処罰されることはない。

第十五条
1 何人も、実行の時に国内法又は国際法により犯罪を構成しなかった作為又は不作為を理由として有罪とされることはない。何人も、犯罪が行われた時に適用されていた刑罰よりも重い刑罰を科されない。犯罪が行われた後により軽い刑罰を科する規定が法律に設けられる場合には、罪を犯した者は、その利益を受ける。
2 この条のいかなる規定も、国際社会の認める法の一般原則により実行の時に犯罪とされていた作為又は不作為を理由として裁判しかつ処罰することを妨げるものでない。

第十六条
 すべての者は、すべての場所において、法律の前に人として認められる権利を有する。

第十七条
1 何人も、その私生活、家族、住居若しくは通信に対して恣意的に若しくは不法に干渉され又は名誉及び信用を不法に攻撃されない。
2 すべての者は、1の干渉又は攻撃に対する法律の保護を受ける権利を有する。

第十八条
1 すべての者は、思想、良心及び宗教の自由についての権利を有する。この権利には、自ら選択する宗教又は信念を受け入れ又は有する自由並びに、単独で又は他の者と共同して及び公に又は私的に、礼拝、儀式、行事及び教導によってその宗教又は信念を表明する自由を含む。
2 何人も、自ら選択する宗教又は信念を受け入れ又は有する自由を侵害するおそれのある強制を受けない。
3 宗教又は信念を表明する自由については、法律で定める制限であって公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳又は他の者の基本的な権利及び自由を保護するために必要なもののみを課することができる。
4 この規約の締約国は父母及び場合により法定保護者が、自己の信念に従って児童の宗教的及び道徳的教育を確保する自由を有することを尊重することを約束する。

第十九条
1 すべての者は、干渉されることなく意見を持つ権利を有する。
2 すべての者は、表現の自由についての権利を有する。この権利には、口頭、手書き若しくは印刷、芸術の形態又は自ら選択する他の方法により、国境とのかかわりなく、あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む。
3 2の権利の行使には、特別の義務及び責任を伴う。したがって、この権利の行使については、一定の制限を課すことができる。ただし、その制限は、法律によって定められ、かつ、次の目的のために必要とされるものに限る。
(a) 他の者の権利又は信用の尊重
(b) 国の安全、公の秩序又は公衆の健康若しくは道徳の保護

第二十条
1 戦争のためのいかなる宣伝も、法律で禁止する。
2 差別、敵意又は暴力の扇動となる国民的、人種的又は宗教的憎悪の唱道は、法律で禁止する。

第二十一条
 平和的な集会の権利は、認められる。この権利の行使については、法律で定める制限であって国の安全若しくは公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳の保護又は他の者の権利及び自由の保護のため民主的社会において必要なもの以外のいかなる制限も課することができない。

第二十二条
1 すべての者は、結社の自由についての権利を有する。この権利には、自己の利益の保護のために労働組合を結成し及びこれに加入する権利を含む。
2 1の権利の行使については、法律で定める制限であって国の安全若しくは公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳の保護又は他の者の権利及び自由の保護のため民主的社会において必要なもの以外のいかなる制限も課することができない。この条の規定は、1の権利の行使につき、軍隊及び警察の構成員に対して合法的な制限を課することを妨げるものではない。
3 この条のいかなる規定も、結社の自由及び団結権の保護に関する千九百四十八年の国際労働機関の条約の締約国が、同条約に規定する保障を阻害するような立法措置を講ずること又は同条約に規定する保障を阻害するような方法により法律を適用することを許すものではない。

第二十三条
1 家族は、社会の自然かつ基礎的な単位であり、社会及び国による保護を受ける権利を有する。
2 婚姻をすることができる年齢の男女が婚姻をしかつ家族を形成する権利は、認められる。
3 婚姻は、両当事者の自由かつ完全な合意なしには成立しない。
4 この規約の締約国は、婚姻中及び婚姻の解消の際に、婚姻に係る配偶者の権利及び責任の平等を確保するため、適当な措置をとる。その解消の場合には、児童に対する必要な保護のため、措置がとられる。

第二十四条
1 すべての児童は、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、国民的若しくは社会的出身、財産又は出生によるいかなる差別もなしに、未成年者としての地位に必要とされる保護の措置であって家族、社会及び国による措置について権利を有する。
2 すべての児童は、出生の後直ちに登録され、かつ、氏名を有する。
3 すべての児童は、国籍を取得する権利を有する。

第二十五条
 すべての市民は、第二条に規定するいかなる差別もなく、かつ、不合理な制限なしに、次のことを行う権利及び機会を有する。
(a) 直接に、又は自由に選んだ代表者を通じて、政治に参与すること。
(b) 普通かつ平等の選挙権に基づき秘密投票により行われ、選挙人の意思の自由な表明を保障する真正な定期的選挙において、投票し及び選挙されること。
(c) 一般的な平等条件の下で自国の公務に携わること。

第二十六条
 すべての者は、法律の前に平等であり、いかなる差別もなしに法律による平等の保護を受ける権利を有する。このため、法律は、あらゆる差別を禁止し及び人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生又は他の地位等のいかなる理由による差別に対しても平等のかつ効果的な保護をすべての者に保障する。

第二十七条
 種族的、宗教的又は言語的少数民族が存在する国において、当該少数民族に属する者は、その集団の他の構成員とともに自己の文化を享有し、自己の宗教を信仰しかつ実践し又は自己の言語を使用する権利を否定されない。

第四部

第二十八条
1 人権委員会(以下「委員会」という。)を設置する。委員会は、十八人の委員で構成するものとして、この部に定める任務を行う。
2 委員会は、高潔な人格を有し、かつ、人権の分野において能力を認められたこの規約の締約国の国民で構成する。この場合において、法律関係の経験を有する者の参加が有益であることに考慮を払う。
3 委員会の委員は、個人の資格で、選挙され及び職務を遂行する。

第二十九条
1 委員会の委員は、前条に定める資格を有し、かつ、この規約の締約国により選挙のために指名された者の名簿の中から秘密投票により選出される。
2 この規約の各締約国は、一人又は二人を指名することができる。指名される者は、指名する国の国民とする。
3 いずれの者も、再指名される資格を有する。

第三十条
1 委員会の委員の最初の選挙は、この規約の効力発生の日の後六箇月以内に行う。
2 第三十四条の規定に従って空席(第三十三条の規定により宣言された空席をいう。)を補充するための選挙の場合を除くほか、国際連合事務総長は、委員会の委員の選挙の日の遅くとも四箇月前までに、この規約の締約国に対し、委員会の委員に指名された者の氏名を三箇月以内に提出するよう書面で要請する。
3 国際連合事務総長は、2にいう指名された者のアルファベット順による名簿(これらの者を指名した締約国名を表示した名簿とする。)を作成し、名簿を各選挙の日の遅くとも一箇月前までにこの規約の締約国に送付する。
4 委員会の委員の選挙は、国際連合事務総長により国際連合本部に招集されるこの規約の締約国の会合において行う。この会合は、この規約の締約国の三分の二をもって定足数とする。この会合においては、出席しかつ投票する締約国の代表によって投じられた票の最多数で、かつ、過半数の票を得た指名された者をもって委員会に選出された委員とする。

第三十一条
1 委員会は、1の国の国民を二人以上含むことができない。
2 委員会の選挙に当たっては、委員の配分が地理的に衡平に行われること並びに異なる文明形態及び主要な法体系が代表されることを考慮に入れる。

第三十二条
1 委員会の委員は、四年の任期で選出される。委員は、再指名された場合には、再選される資格を有する。ただし、最初の選挙において選出された委員のうち九人の委員の任期は、二年で終了するものとし、これらの九人の委員は、最初の選挙の後直ちに、第三十条4に規定する会合において議長によりくじ引で選ばれる。
 任期満了の際の選挙は、この部の前諸条の規定に従って行う。

第三十三条
1 委員会の委員が一時的な不在以外の理由のためその職務を遂行することができなくなったことを他の委員が一致して認める場合には、委員会の委員長は国際連合事務総長にその旨を通知するものとし、同事務総長は、当該委員の職が空席となったことを宣言する。
2 委員会の委員が死亡し又は辞任した場合には、委員長は、直ちに国際連合事務総長にその旨を通知するものとし、同事務総長は、死亡し又は辞任した日から当該委員の職が空席となったことを宣言する。

第三十四条
1 前条の規定により空席が宣言された場合において、当該宣言の時から六箇月以内に交代される委員の任期が満了しないときは、国際連合事務総長は、この規約の各締約国にその旨を通知する。各締約国は、空席を補充するため、二箇月以内に第二十九条の規定により指名された者の氏名を提出することができる。
2 国際連合事務総長は、1にいう指名された者のアルファベット順による名簿を作成し、この規約の締約国に送付する。空席を補充するための選挙は、この部の関連規定に従って行う。
3 前条の規定により宣言された空席を補充するために選出された委員会の委員は、同条の規定により委員会における職が空席となった委員の残余の期間在任する。

第三十五条
 委員会の委員は、国際連合総会が委員会の任務の重要性を考慮して決定する条件に従い、同総会の承認を得て、国際連合の財源から報酬を受ける。

第三十六条
 国際連合事務総長は、委員会がこの規約に定める任務を効果的に遂行するために必要な職員及び便益を提供する。

第三十七条
1 国際連合事務総長は、委員会の最初の会合を国際連合本部に招集する。
2 委員会は、最初の会合の後は、手続規則に定める時期に会合する。
3 委員会は、通常、国際連合本部又はジュネーブにある国際連合事務所において会合する。

第三十八条

 委員会のすべての委員は、職務の開始に先立ち、公開の委員会において、職務を公平かつ良心的に遂行する旨の厳粛な宣誓を行う。

第三十九条

1 委員会は、役員を二年の任期で選出する。役員は、再選されることができる。

2 委員会は、手続規則を定める。この手続規則には、特に次のことを定める。

(a) 十二人の委員をもって定足数とすること。
(b) 委員会の決定は、出席する委員が投ずる票の過半数によって行うこと。
第四十条
1 この規約の締約国は、(a)当該締約国についてこの規約が効力を生ずる時から一年以内に、(b)その後は委員会が要請するときに、この規約において認められる権利の実現のためにとった措置及びこれらの権利の享受についてもたらされた進歩に関する報告を提出することを約束する。
2 すべての報告は、国際連合事務総長に提出するものとし、同事務総長は、検討のため、これらの報告を委員会に送付する。報告には、この規約の実施に影響を及ぼす要因及び障害が存在する場合には、これらの要因及び障害を記載する。
3 国際連合事務総長は、委員会との協議の後、報告に含まれるいずれかの専門機関の権限の範囲内にある事項に関する部分の写しを当該専門機関に送付することができる。
4 委員会は、この規約の締約国の提出する報告を検討する。委員会は、委員会の報告及び適当と認める一般的な性格を有する意見を締約国に送付しなければならず、また、この規約の締約国から受領した報告の写しとともに当該一般的な性格を有する意見を経済社会理事会に送付することができる。
5 この規約の締約国は、四の規定により送付される一般的な性格を有する意見に関する見解を委員会に提示することができる。

第四十一条
1 この規約の締約国は、この規約に基づく義務が他の締約国によって履行されていない旨を主張するいずれかの締約国からの通報を委員会が受理しかつ検討する権限を有することを認めることを、この条の規定に基づいていつでも宣言することができる。この条の規定に基づく通報は、委員会の当該権限を自国について認める宣言を行った締約国による通報である場合に限り、受理しかつ検討することができる。委員会は、宣言を行っていない締約国についての通報を受理してはならない。この条の規定により受理される通報は、次の手続に従って取り扱う。
(a) この規約の締約国は、他の締約国がこの規約を実施していないと認める場合には、書面による通知により、その事態につき当該他の締約国の注意を喚起することができる。通知を受領する国は、通知の受領の後三箇月以内に、当該事態について説明する文書その他の文書を、通知を送付した国に提供する。これらの文書は、当該事態について既にとられ、現在とっており又は将来とることができる国内的な手続及び救済措置に、可能かつ適当な範囲において、言及しなければならない。
(b) 最初の通知の受領の後六箇月以内に当該事案が関係締約国の双方の満足するように調整されない場合には、いずれの一方の締約国も、委員会及び他方の締約国に通告することにより当該事案を委員会に付託する権利を有する。
(c) 委員会は、付託された事案について利用し得るすべての国内的な救済措置がとられかつ尽くされたことを確認した後に限り、一般的に認められた国際法の原則に従って、付託された事案を取り扱う。ただし、救済措置の実施が不当に遅延する場合は、この限りでない。
(d) 委員会は、この条の規定により通報を検討する場合には、非公開の会合を開催する。
(e) (c)の規定に従うことを条件として、委員会は、この規約において認められる人権及び基本的自由の尊重を基礎として事案を友好的に解決するため、関係締約国に対してあっ旋を行う。
(f) 委員会は、付託されたいずれの事案についても、(b)にいう関係締約国に対し、あらゆる関連情報を提供するよう要請することができる。
(g) (b)にいう関係締約国は、委員会において事案が検討されている間において代表を出席させる権利を有するものとし、また、口頭又は書面により意見を提出する権利を有する。
(h) 委員会は、(b)の通告を受領した日の後十二箇月以内に、報告を提出する。報告は、各事案ごとに、関係締約国に送付する。
(i) (e)の規定により解決に到達した場合には、委員会は、事実及び到達した解決について簡潔に記述したものを報告する。
(ii) (e)の規定により解決に到達しない場合には、委員会は、事実について簡潔に記述したものを報告するものとし、当該報告に関係締約国の口頭による意見の記録及び書面による意見を添付する。
2 この条の規定は、この規約の十の締約国が1の規定に基づく宣言を行った時に効力を生ずる。宣言は、締約国が国際連合事務総長に寄託するものとし、同事務総長は、その写しを他の締約国に送付する。宣言は、同事務総長に対する通告によりいつでも撤回することができる。撤回は、この条の規定に従って既に送付された通報におけるいかなる事案の検討をも妨げるものではない。宣言を撤回した締約国による新たな通報は、同事務総長がその宣言の撤回の通告を受領した後は、当該締約国が新たな宣言を行わない限り、受理しない。

第四十二条
1
(a) 前条の規定により委員会に付託された事案が関係締約国の満足するように解決されない場合には、委員会は、関係締約国の事前の同意を得て、特別調停委員会(以下「調停委員会」という。)を設置することができる。調停委員会は、この規約の尊重を基礎として当該事案を友好的に解決するため、関係締約国に対してあっ旋を行う。
(b) 調停委員会は、関係締約国が容認する五人の者で構成する。調停委員会の構成について三箇月以内に関係締約国が合意に達しない場合には、合意が得られない調停委員会の委員については、委員会の秘密投票により、三分の二以上の多数による議決で、委員会の委員の中から選出する。
2 調停委員会の委員は、個人の資格で、職務を遂行する。委員は、関係締約国、この規約の締約国でない国又は前条の規定に基づく宣言を行っていない締約国の国民であってはならない。
3 調停委員会は、委員長を選出し及び手続規則を採択する。
4 調停委員会の会合は、通常、国際連合本部又はジュネーブにある国際連合事務所において開催する。もっとも、この会合は、調停委員会が国際連合事務総長及び関係締約国との協議の上決定する他の適当な場所において開催することができる。
5 第三十六条の規定により提供される事務局は、また、この条の規定に基づいて設置される調停委員会のために役務を提供する。
6 委員会が受領しかつ取りまとめる情報は、調停委員会の利用に供しなければならず、また、調停委員会は、関係締約国に対し、他のあらゆる関連情報を提供するよう要請することができる。
7 調停委員会は、事案を十分に検討した後に、かつ、検討のため事案を取り上げた後いかなる場合にも十二箇月以内に、関係締約国に通知するため、委員会の委員長に報告を提出する。
(a) 十二箇月以内に事案の検討を終了することができない場合には、調停委員会は、事案の検討状況について簡潔に記述したものを報告する。
(b) この規約において認められる人権の尊重を基礎として事案の友好的な解決に到達した場合には、調停委員会は、事実及び到達した解決について簡潔に記述したものを報告する。
(c) (b)に規定する解決に到達しない場合には、調停委員会の報告には、関係締約国間の係争問題に係るすべての事実関係についての調査結果及び当該事案の友好的な解決の可能性に関する意見を記載するとともに関係締約国の口頭による意見の記録及び書面による意見を添付する。
(d) (c)の規定により調停委員会の報告が提出される場合には、関係締約国は、その報告の受領の後三箇月以内に、委員会の委員長に対し、調停委員会の報告の内容を受諾するかどうかを通告する。
8 この条の規定は、前条の規定に基づく委員会の任務に影響を及ぼすものではない。
9 関係締約国は、国際連合事務総長が作成する見積りに従って、調停委員会の委員に係るすべての経費を平等に分担する。
10 国際連合事務総長は、必要なときは、9の規定による関係締約国の経費の分担に先立って調停委員会の委員の経費を支払う権限を有する。

第四十三条
 委員会の委員及び前条の規定に基づいて設置される調停委員会の委員は、国際連合の特権及び免除に関する条約の関連規定に規定する国際連合のための職務を行う専門家の便益、特権及び免除を享受する。

第四十四条
 この規約の実施に関する規定は、国際連合及び専門機関の基本文書並びに国際連合及び専門機関において作成された諸条約により又はこれらの基本文書及び諸条約に基づき人権の分野に関し定められた手続を妨げることなく適用するものとし、この規約の締約国の間で効力を有する一般的な又は特別の国際取極による紛争の解決のため、この規約の締約国が他の手続を利用することを妨げるものではない。

第四十五条
 委員会は、その活動に関する年次報告を経済社会理事会を通じて国際連合総会に提出する。

第五部

第四十六条
 この規約のいかなる規定も、この規約に規定されている事項につき、国際連合の諸機関及び専門機関の任務をそれぞれ定めている国際連合憲章及び専門機関の基本文書の規定の適用を妨げるものと解してはならない。

第四十七条
 この規約のいかなる規定も、すべての人民がその天然の富及び資源を十分かつ自由に享受し及び利用する固有の権利を害するものと解してはならない。

第六部

第四十八条
1 この規約は、国際連合又はいずれかの専門機関の加盟国、国際司法裁判所規程の当事国及びこの規約の締約国となるよう国際連合総会が招請する他の国による署名のために開放しておく。
2 この規約は、批准されなければならない。批准書は、国際連合事務総長に寄託する。
3 この規約は、1に規定する国による加入のために開放しておく。
4 加入は、加入書を国際連合事務総長に寄託することによって行う。
5 国際連合事務総長は、この規約に署名し又は加入したすべての国に対し、各批准書又は各加入書の寄託を通報する。

第四十九条
1 この規約は、三十五番目の批准書又は加入書が国際連合事務総長に寄託された日の後三箇月で効力を生ずる。
2 この規約は、三十五番目の批准書又は加入書が寄託された後に批准し又は加入する国については、その批准書又は加入書が寄託された日の後三箇月で効力を生ずる。

第五十条
 この規約は、いかなる制限又は例外もなしに、連邦国家のすべての地域について適用する。

第五十一条
1 この規約のいずれの締約国も、改正を提案し及び改正案を国際連合事務総長に提出することができる。同事務総長は、直ちに、この規約の締約国に対し、改正案を送付するものとし、締約国による改正案の審議及び投票のための締約国会議の開催についての賛否を同事務総長に通告するよう要請する。締約国の三分の一以上が会議の開催に賛成する場合には、同事務総長は、国際連合の主催の下に会議を招集する。会議において出席しかつ投票する締約国の過半数によって採択された改正案は、承認のため、国際連合総会に提出する。
2 改正は、国際連合総会が承認し、かつ、この規約の締約国の三分の二以上の多数がそれぞれの国の憲法上の手続に従って受諾したときに、効力を生ずる。
3 改正は、効力を生じたときは、改正を受諾した締約国を拘束するものとし、他の締約国は、改正前のこの規約の規定(受諾した従前の改正を含む。)により引き続き拘束される。

第五十二条
 第四十八条五の規定により行われる通報にかかわらず、国際連合事務総長は、同条1に規定するすべての国に対し、次の事項を通報する。
(a) 第四十八条の規定による署名、批准及び加入
(b) 第四十九条の規定に基づきこの規約が効力を生ずる日及び前条の規定により改正が効力を生ずる日
第五十三条
1 この規約は、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語をひとしく正文とし、国際連合に寄託される。
2 国際連合事務総長は、この規約の認証謄本を第四十八条に規定するすべての国に送付する。

 以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けて、千九百六十六年十二月十九日にニューヨークで署名のために開放されたこの規約に署名した。

 (署名欄は省略)

      「ウィキソース」より

〇同じ日の過去の出来事(以前にブログで紹介した記事)

1890年(明治23)東京市内と横浜市内の間で日本初の電話事業が開始する(電話創業の日)詳細
1907年(明治40)洋画家浅井忠の命日詳細
1932年(昭和7)東京市日本橋で白木屋大火災が起きる詳細
1971年(昭和46)全国4番目の地下鉄の札幌市営地下鉄初の北二四条駅~真駒内駅間(南北線)が開業する詳細
1972年(昭和47)全国5番目の地下鉄の横浜市営地下鉄初の伊勢佐木長者町駅~上大岡駅間(1号線)が開業する詳細
1988年(昭和63)洋画家小磯良平の命日詳細

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 今日は、昭和時代中期の1949年(昭和24)に、国際連合総会で、「人身売買及び他人の売春からの搾取の禁止に関する条約」(人身売買禁止条約)が決議された日(奴隷制度廃止国際デー)です。
 「人身売買及び他人の売春からの搾取の禁止に関する条約(じんしんばいばいおよびたにんのばいしゅんからのさくしゅのきんしにかんするじょうやく)」は、売春とこれを目的とする人身売買を禁止するための国際条約で、「人身売買禁止条約」の略称でも呼ばれてきました。
 1904年の「醜業ヲ行ハシムル為ノ婦女売取締ニ関スル国際協定」、1910年の「醜業ヲ行ナワシムル為ノ婦女売買禁止ニ関スル国際条約」、1921年の「婦人及児童ノ売買禁止ニ関スル国際条約」、1933年の「成年婦女子の売買禁止に関する国際条約」(1947年議定書により改正)、ならびに、これらを一本化し内容の拡大を目ざした国際連盟の1937年条約草案を受けて起草されます。そして、1949年(昭和24)12月2日に国連総会によって採択されて、署名開放され、1951年(昭和26)7月25日に発効しました。
 前文で、「売春及びこれに伴う悪弊である人身売買は、人のしての尊厳及び価値に反し、かつ、個人、家族及び社会の福祉をそこなう」と明記し、第1条で「売春を目的として他の者を、その者の同意があった場合においても、勧誘、誘引すること「と「本人の同意があっても、その売春から搾取すること」を禁じています。また、第2条では売春宿の経営を禁じ、第3条ではその未遂行為も禁じ、第5条では外国人の被害者に自国民と同等の権利を明記し、第16条では売春の防止とこの条約の違反行為の被害者の更生と社会的補導のための措置を奨励し、第19条では被害者の送還及び保護について規定しました。さらに、第20条では求職者、特に婦人と児童が売春の危険に晒されないよう職業紹介事業の監督のための手段を講じることが明記され、第22条ではこの条約の解釈と適応に関して紛争が生じた場合には、いずれかの紛争当事国の請求により国際司法裁判所に付託するものとすることが規定されています。
 日本は、1956年(昭和31)に制定された「売春防止法」の刑事処分の規定が1958年(昭和33)4月1日から実施されたことに伴い、同年5月1日に加入書を寄託し、7月30日に日本国内で発効しました。2012年(平成24)現在の加盟国は82ヶ国、署名国は25ヶ国ですが、署名国の内アメリカ、イギリスを含む13ヶ国が未批准の状態にあります。尚、この条約の採択された日にちなんで、12月2日が「奴隷制度廃止国際デー」に制定されています。
 以下に、「人身売買及び他人の売春からの搾取の禁止に関する条約」(人身売買禁止条約)の全文を英語版と日本語版で掲載しておきますので、ご参照下さい。

〇「人身売買及び他人の売春からの搾取の禁止に関する条約」(人身売買禁止条約)1949年(昭和24) 12月2日決議、1951年(昭和26) 7月25日発効

<英語版>
 
Convention for the Suppression of the Traffic in Persons and of the Exploitation of the Prostitution of Others

Approved by General Assembly resolution 317 (IV) of 2 December 1949
Entry into force: 25 July 1951, in accordance with article 24

Preamble

Whereas prostitution and the accompanying evil of the traffic in persons for the purpose of prostitution are incompatible with the dignity and worth of the human person and endanger the welfare of the individual, the family and the community,
Whereas , with respect to the suppression of the traffic in women and children, the following international instruments are in force:
(1) International Agreement of 18 May 1904 for the Suppression of the White Slave Traffic, as amended by the Protocol approved by the General Assembly of the United Nations on 3 December 1948,
(2) International Convention of 4 May 1910 for the Suppression of the White Slave Traffic, as amended by the above-mentioned Protocol,
(3) International Convention of 30 September 1921 for the Suppression of the Traffic in Women and Children, as amended by the Protocol approved by the General Assembly of the United Nations on 20 October 1947,
(4) International Convention of 11 October 1933 for the Suppression of the Traffic in Women of Full Age, as amended by the aforesaid Protocol,
Whereas the League of Nations in 1937 prepared a draft Convention extending the scope of the above-mentioned instruments, and
Whereas developments since 1937 make feasible the conclusion of a convention consolidating the above-mentioned instruments and embodying the substance of the 1937 draft Convention as well as desirable alterations therein:
Now therefore
The Contracting parties
Hereby agree as hereinafter provided :

Article 1

The Parties to the present Convention agree to punish any person who, to gratify the passions of another:
(1) Procures, entices or leads away, for purposes of prostitution, another person, even with the consent of that person;
(2) Exploits the prostitution of another person, even with the consent of that person.

Article 2

The Parties to the present Convention further agree to punish any person who:
(1) Keeps or manages, or knowingly finances or takes part in the financing of a brothel;
(2) Knowingly lets or rents a building or other place or any part thereof for the purpose of the prostitution of others.

Article 3

To the extent permitted by domestic law, attempts to commit any of the offences referred to in articles 1 and 2, and acts preparatory to the commission thereof, shall also be punished.

Article 4

To the extent permitted by domestic law, intentional participation in the acts referred to in articles 1 and 2 above shall also be punishable.
To the extent permitted by domestic law, acts of participation shall be treated as separate offences whenever this is necessary to prevent impunity.

Article 5

In cases where injured persons are entitled under domestic law to be parties to proceedings in respect of any of the offences referred to in the present Convention, aliens shall be so entitled upon the same terms as nationals.

Article 6

Each Party to the present Convention agrees to take all the necessary measures to repeal or abolish any existing law, regulation or administrative provision by virtue of which persons who engage in or are suspected of engaging in prostitution are subject either to special registration or to the possession of a special document or to any exceptional requirements for supervision or notification.

Article 7

Previous convictions pronounced in foreign States for offences referred to in the present Convention shall, to the extent permitted by domestic law, be taken into account for the purposes of:
(1) Establishing recidivism;
(2) Disqualifying the offender from the exercise of civil rights.

Article 8

The offences referred to in articles 1 and 2 of the present Convention shall be regarded as extraditable offences in any extradition treaty which has been or may hereafter be concluded between any of the Parties to this Convention.
The Parties to the present Convention which do not make extradition conditional on the existence of a treaty shall henceforward recognize the offences referred to in articles 1 and 2 of the present Convention as cases for extradition between themselves.
Extradition shall be granted in accordance with the law of the State to which the request is made.

Article 9

In States where the extradition of nationals is not permitted by law, nationals who have returned to their own State after the commission abroad of any of the offences referred to in articles 1 and 2 of the present Convention shall be prosecuted in and punished by the courts of their own State.
This provision shall not apply if, in a similar case between the Parties to the present Convention, the extradition of an alien cannot be granted.

Article 10

The provisions of article 9 shall not apply when the person charged with the offence has been tried in a foreign State and, if convicted, has served his sentence or had it remitted or reduced in conformity with the laws of that foreign State.

Article 11

Nothing in the present Convention shall be interpreted as determining the attitude of a Party towards the general question of the limits of criminal jurisdiction under international law.

Article 12

The present Convention does not affect the principle that the offences to which it refers shall in each State be defined, prosecuted and punished in conformity with its domestic law.

Article 13

The Parties to the present Convention shall be bound to execute letters of request relating to offences referred to in the Convention in accordance with their domestic law and practice.
The transmission of letters of request shall be effected:
(1) By direct communication between the judicial authorities; or
(2) By direct communication between the Ministers of Justice of the two States, or by direct communication from another competent authority of the State making the request to the Minister of Justice of the State to which the request is made; or
(3) Through the diplomatic or consular representative of the State making the request in the State to which the request is made; this representative shall send the letters of request direct to the competent judicial authority or to the authority indicated by the Government of the State to which the request is made, and shall receive direct from such authority the papers constituting the execution of the letters of request.
In cases 1 and 3 a copy of the letters of request shall always be sent to the superior authority of the State to which application is made.
Unless otherwise agreed, the letters of request shall be drawn up in the language of the authority making the request, provided always that the State to which the request is made may require a translation in its own language, certified correct by the authority making the request.
Each Party to the present Convention shall notify to each of the other Parties to the Convention the method or methods of transmission mentioned above which it will recognize for the letters of request of the latter State.
Until such notification is made by a State, its existing procedure in regard to letters of request shall remain in force.
Execution of letters of request shall not give rise to a claim for reimbursement of charges or expenses of any nature whatever other than expenses of experts.
Nothing in the present article shall be construed as an undertaking on the part of the Parties to the present Convention to adopt in criminal matters any form or methods of proof contrary to their own domestic laws.

Article 14

Each Party to the present Convention shall establish or maintain a service charged with the co-ordination and centralization of the results of the investigation of offences referred to in the present Convention.
Such services should compile all information calculated to facilitate the prevention and punishment of the offences referred to in the present Convention and should be in close contact with the corresponding services in other States.

Article 15

To the extent permitted by domestic law and to the extent to which the authorities responsible for the services referred to in article 14 may judge desirable, they shall furnish to the authorities responsible for the corresponding services in other States the following information:
(1) Particulars of any offence referred to in the present Convention or any attempt to commit such offence;
(2) Particulars of any search for any prosecution, arrest, conviction, refusal of admission or expulsion of persons guilty of any of the offences referred to in the present Convention, the movements of such persons and any other useful information with regard to them.
The information so furnished shall include descriptions of the offenders, their fingerprints, photographs, methods of operation, police records and records of conviction.

Article 16

The Parties to the present Convention agree to take or to encourage, through their public and private educational, health, social, economic and other related services, measures for the prevention of prostitution and for the rehabilitation and social adjustment of the victims of prostitution and of the offences referred to in the present Convention.

Article 17

The Parties to the present Convention undertake, in connection with immigration and emigration, to adopt or maintain such measures as are required, in terms of their obligations under the present Convention, to check the traffic in persons of either sex for the purpose of prostitution.
In particular they undertake:
(1) To make such regulations as are necessary for the protection of immigrants or emigrants, and in particular, women and children, both at the place of arrival and departure and while en route ;
(2) To arrange for appropriate publicity warning the public of the dangers of the aforesaid traffic;
(3) To take appropriate measures to ensure supervision of railway stations, airports, seaports and en route , and of other public places, in order to prevent international traffic in persons for the purpose of prostitution;
(4) To take appropriate measures in order that the appropriate authorities be informed of the arrival of persons who appear, prima facie , to be the principals and accomplices in or victims of such traffic.

Article 18

The Parties to the present Convention undertake, in accordance with the conditions laid down by domestic law, to have declarations taken from aliens who are prostitutes, in order to establish their identity and civil status and to discover who has caused them to leave their State. The information obtained shall be communicated to the authorities of the State of origin of the said persons with a view to their eventual repatriation.

Article 19

The Parties to the present Convention undertake, in accordance with the conditions laid down by domestic law and without prejudice to prosecution or other action for violations thereunder and so far as possible:
(1) Pending the completion of arrangements for the repatriation of destitute victims of international traffic in persons for the purpose of prostitution, to make suitable provisions for their temporary care and maintenance;
(2) To repatriate persons referred to in article 18 who desire to be repatriated or who may be claimed by persons exercising authority over them or whose expulsion is ordered in conformity with the law. Repatriation shall take place only after agreement is reached with the State of destination as to identity and nationality as well as to the place and date of arrival at frontiers. Each Party to the present Convention shall facilitate the passage of such persons through its territory.
Where the persons referred to in the preceding paragraph cannot themselves repay the cost of repatriation and have neither spouse, relatives nor guardian to pay for them, the cost of repatriation as far as the nearest frontier or port of embarkation or airport in the direction of the State of origin shall be borne by the State where they are in residence, and the cost of the remainder of the journey shall be borne by the State of origin.

Article 20

The Parties to the present Convention shall, if they have not already done so, take the necessary measures for the supervision of employment agencies in order to prevent persons seeking employment, in particular women and children, from being exposed to the danger of prostitution.

Article 21

The Parties to the present Convention shall communicate to the Secretary-General of the United Nations such laws and regulations as have already been promulgated in their States, and thereafter annually such laws and regulations as may be promulgated, relating to the subjects of the present Convention, as well as all measures taken by them concerning the application of the Convention. The information received shall be published periodically by the Secretary-General and sent to all Members of the United Nations and to non-member States to which the present Convention is officially communicated in accordance with article 23.

Article 22

If any dispute shall arise between the Parties to the present Convention relating to its interpretation or application and if such dispute cannot be settled by other means, the dispute shall, at the request of any one of the Parties to the dispute, be referred to the International Court of Justice.

Article 23

The present Convention shall be open for signature on behalf of any Member of the United Nations and also on behalf of any other State to which an invitation has been addressed by the Economic and Social Council.
The present Convention shall be ratified and the instruments of ratification shall be deposited with the Secretary-General of the United Nations.
The States mentioned in the first paragraph which have not signed the Convention may accede to it.
Accession shall be effected by deposit of an instrument of accession with the Secretary-General of the United Nations.
For the purposes of the present Convention the word "State" shall include all the colonies and Trust Territories of a State signatory or acceding to the Convention and all territories for which such State is internationally responsible.

Article 24

The present Convention shall come into force on the ninetieth day following the date of deposit of the second instrument of ratification or accession.
For each State ratifying or acceding to the Convention after the deposit of the second instrument of ratification or accession, the Convention shall enter into force ninety days after the deposit by such State of its instrument of ratification or accession.

Article 25

After the expiration of five years from the entry into force of the present Convention, any Party to the Convention may denounce it by a written notification addressed to the Secretary-General of the United Nations.
Such denunciation shall take effect for the Party making it one year from the date upon which it is received by the Secretary-General of the United Nations.

Article 26

The Secretary-General of the United Nations shall inform all Members of the United Nations and non-member States referred to in article 23:
(a) Of signatures, ratifications and accessions received in accordance with article 23;
(b) Of the date on which the present Convention will come into force in accordance with article 24;
(c) Of denunciations received in accordance with article 25.

Article 27

Each Party to the present Convention undertakes to adopt, in accordance with its Constitution, the legislative or other measures necessary to ensure the application of the Convention.

Article 28

The provisions of the present Convention shall supersede in the relations between the Parties thereto the provisions of the international instruments referred to in subparagraphs 1, 2, 3 and 4 of the second paragraph of the Preamble, each of which shall be deemed to be terminated when all the Parties thereto shall have become Parties to the present Convention.

Final protocol

Nothing in the present Convention shall be deemed to prejudice any legislation which ensures, for the enforcement of the provisions for securing the suppression of the traffic in persons and of the exploitation of others for purposes of prostitution, stricter conditions than those provided by the present Convention.
The provisions of articles 23 to 26 inclusive of the Convention shall apply to the present Protocol.

<日本語版>

 売春及びこれに伴う悪弊である売春を目的とする人身売買は、人としての尊厳及び価値に反するものであり、かつ、個人、家族及び社会の福祉をそこなうので、婦人及び児童の売買の禁止に関し、次の国際文書、すなわち、
1 千九百四十八年十二月三日に国際連合総会で承認された議定書により改正された千九百四年五月十八日の「醜業ヲ行ハシムル爲ノ婦女賣買取締二關スル國際協定」
2 前記の議定書により改正された千九百十年五月四日の「醜業ヲ行ハシムル爲ノ婦女賣買禁止二關スル國際條約」
3 千九百四十七年十月二十日に国際連合総会で承認された議定書により改正された千九百二十一年九月三十日の「婦人及児童ノ賣買禁止二關スル國際條約」
4 3に掲げる議定書により改正された千九百三十三年十月十一日の成年婦女子の売買の禁止に関する国際条約が有効であるので、千九百三十七年に、国際連盟は、前記の文書の適用範囲を拡大する条約案を作成したので、また、前記の文章を統一し、かつ、千九百三十七年の条約案の内容に望ましい変更を加えたものを具体化する条約を締結することが、千九百三十七年以来の諸事情によって可能となっているので、よって、締約国は、ここに、次のとおり協定する。

売春の勧誘、誘引及び拐去

第一条 
 この条約の締約国は、他人の情欲を満足させるために次のことを行ういかなる者をも処罰することに同意する。
1 売春を目的として他の者を、その者の同意があった場合においても、勧誘し、誘引し、又は拐去すること。
2 本人の同意があった場合においても、その者の売春から搾取すること。

売春宿の経営など

第二条
 この条約の締約国は、さらに、次のことを行ういかなる者をも処罰することに同意する。
1 売春宿を経営し、若しくは管理し、又は情を知って、これに融資し、若しくはその融資に関与すること。
2 他の者の売春のために、情を知って、建物その他の場所又はその一部を貸与し、又は賃貸すること。

未遂及ぴ予備

第三条 
 第一条及び第2条に掲げるいずれかの違反行為の未遂及び予備も、また、国内法が認める範囲内で処罰されるものとする。

加担行為

第四条 
 第一条及び第二条に掲げる行為に対する加担行為も、また、国内法が認める範囲内で処罰されるものとする。加担行為は、処罰を免かれることを防止するために必要であるときはいつでも、国内法が認める範囲内で、独立の違反行為として取り扱われるものとする。

被害者たる外国人

第五条 
 被害者が、国内法に基きこの条約に掲げるいずれかの違反行為に関する訴訟の当事者となる権利を有する場合には、外国人は、内国人と同一の条件でその権利を有するものとする。

条約違反の国内法令などの廃止

第六条 
 この条約の各締約国は、売春を行う者又は売春を行う疑のある者が特別の登録を行い、特別の書類を所持し、又は取締若しくは通告に関する特別の要件に服する旨を規定しているいかなる現行の法令又は行政規定をも無効にし、又は廃止するため必要なすべての措置を執ることに同意する。

外国の有罪判決の考慮

第七条 
 この条約に掲げる違反行為のために外国で受けた過去の有罪判決は、国内法が認める範囲内で、次の目的のために考慮に入れられるものとする。
1 常習性を証明するため。
2 犯罪者の公権を行使する資格を喪失させるため。

犯罪人引渡

第八条 
 第一条及び第二条に掲げる違反行為は、この条約のいずれかの締約国の間で締結されているか、又は将来締結される犯罪人引渡条約における引渡犯罪とみなされるものとする。この条約の締約国で、犯罪引渡について条約の存在を条件としないものは、今後、第一条及び第二条に掲げる違反行為を、これらの国の間において、引渡に係る事件と認めるものとする。犯罪人引渡は、その請求を受けた国の法令に従って行われるものとする。

訴追

第九条 
 自国民の犯罪人引渡が法令で認められていない国においては、その国の国民で第一条及び第二条に掲げる違反行為のいずれかを国外で犯した後に自国に帰国したものは、自国の裁判所で訴追され、かづ、処罰されるものとする。前項の規定は、この条約の締約国間における外国人に係る同様の場合について、外国人の犯罪人引渡を認めることができないときは、適用がないものとする。

外国で裁判を受けたものの訴追

第十条 
 前条の規定は、犯罪により訴追を受けた者ですでに外国で裁判を受けたものには、適用しないものとする。ただし、有罪の場合には、服役を完了し、又は当該外国の法令に従って刑を免除され、若しくは減刑されたものに限る。

国際法上の刑事裁判管轄権

第十一条 
 この条約のいかなる規定も、刑事裁判管轄権の範囲に関する国際法上の一般的問題に対する締約国の態度を決定するものと解してはならない。

国内法による定義、訴追及ぴ処罰

第十二条 
 この条約は、この条約に掲げる違反行為が各国においてその国内法に従って定義され、訴追され、及び処罰されるべきであるという原則に影響を与えるものではない。

司法共助

第十三条 
 この条約の締約国は、自国の国内法及び慣行に従って、この条約に掲げる違反行為に関する司法共助の嘱託書を実施する義務を負うものとする。司法共助の嘱託書の送付は、次の方法のいずれかにより行う。
1 司法当局間の直接の通信
2 両国の法務大臣の間の直接の通信又は嘱託国の権限のある他の当局から受託国の法務大臣への直接の通信
3 受託国に駐在する嘱託国の外交使節又は領事官経由。その外交使節又は領事官は、司法共助の嘱託書を直接に受託国の権限のある司法当局又は同国政府の指定する当局に送付するものとし、かつ、司法共助の嘱託書の実施に関する書類は、前記の送付先当局から直接に受領するものとする。1及び3の場合においては、司法共助の嘱託書の写一通を受託国の上級当局に必ず送付するものとする。別段の合意がない限り、司法共助の嘱託書は、嘱託当局の国語で作成しなければならない。ただし、受託国は、嘱託当局が正確であることを証明した受託国の国語による翻訳文を要求することができる。この条約の各締約国は、他の各締約国に対し、前記の送付方法のうち、自国がそれらの国の司法共助の嘱託書のために承認する一又は二以上の方法を通知するものとする。締約国が前記の通知を行うまでの間、司法共助の嘱託書に関してはその国の現行の手続によるものとする。司法共助の嘱託書の実施により、鑑定人の費用以外のいかなる性質の料金又は費用の支払請求権も生ずることはないものとする。この条約のいかなる規定も、この条約の締約国が刑事事件について、その国内法に反する立証形式又は立証方法を採用することを約束するものと解してはならない。

調査機関

第十四条 
 この条約の各締約国は、この条約に掲げる違反行為を調査した結果を整理しかつまとめることを任務とする機関を設置し、又は維持するものとする。前記の機関は、この条約に掲げる違反行為の防止及び処罰に役だつと考えられるすべての情報を収集し、かつ、他の国の対応する機関と密接な連絡を保つものとする。

情報の提供

第十五条 
 前条の機関について責任を負う当局は、国内法が認める範囲内で、かつ、その当局が望ましいと認める程度において、他の国の対応する機関について責任を負う当局に次の情報を提供するものとする。
1 この条約に掲げる違反行為又はその未遂に関する詳細
2 この条約に掲げる違反行為のいずれかを犯した者の捜査、訴追、逮捕、有罪判決、自認の拒否及び送還に関する詳細、その者の動静並びにその者についての他の有益な情報
 前記の情報は、犯罪者の人相書、指紋、写真、手口、警察の記録及び有罪判決の記録を含むものとする。

売春等の防止、更生及び社会的補導

第十六条 
 この条約の締約国は、その公私の教育、保健、社会、経済その他の関係機関を通じて、売春の防止並びに売春及びこの条約に掲げる違反行為の被害者の更生及び社会的補導のための措置を執り、又はこれを奨励することに同意する。

出入国管理

第十七条 
 この条約の締約国は、売春を目的とする男女の人身売買を防止するため、出入国に関連して、この条約に基きその義務として要求されている措置を執り、又は維持することを約束する。締約国は、特に、次のことを約束する。
1 出入国者、特に婦人及び児童を到着地及び出発地において並びにその旅行中において保護するため必要な規則を設けること。
2 前記の人身売買の危険を公衆に警告する適当な周知方法を講ずること。
3 売春を目的とする国際的人身売買を防止するため、鉄道停車場、空港、海港、旅行中及び他の公開の場所の取締を確保するための適当な措置を執ること。
4 前記の人身売買の主犯及び共犯又はその被害者であると疑うに足りる者の到着を当局が知ることができるように適当な措置を執ること。

外国人からの情報取得と通知

第十八条 
 この条約の締約国は、国内法が定める条件に従い、売春者である外国人から、その身元及び身分関係を確かめるため、並びにだれが本国を去らせるに至ったかを知るために供述を取ることを約束する。入手した情報は、それらの者が将来本国に帰国すべきことを考慮し、その本国の当局に通知するものとする。

被害者の送還及び保護

第十九条 
 この条約の締約国は、国内法が定める条件に従い、できる限り次のことを行うことを約束する。ただし、国内法に対する違反を訴追し又はこれに対しその他の措置を執ることを妨げない。
1 売春を目的とする国際的人身売買の被害者が、その本国への送還に関する措置を完了するまでの間、生活に困窮するときは、それらの者の一時的保護及び扶養のための適当な措置を講ずること。
2 第十八条に掲げる者であって、本国への帰国を希望するもの、その者に対して権限を行便する者から送還を要求されているもの又律法令に従って強制退去を命ぜられたものを本国に送還すること。本国への送還は、身元及び国籍について、並びに国境における到着の場所及び日時について送還先国と合意が成立した後にのみ実施されるものとする。この条約の各締約国は、その領域のこれらの者による通過を容易にするものとする。
 前項に掲げる者が、本国への送還の費用を返済することができず、かつ、本人に代ってその費用の支払を行う配偶者、親族又は保護者を有しないときは、その本国に向って最も近い国境、乗船港又は空港までの送還費用は、その者が居住している国の負担とし、残余の旅行の費用は、その本国の負担とする。

職業紹介事業の監督

第二十条 
 この条約の締約国は、当該措置をまだ執っていないときは、求職者、特に婦人及び児童を売春の危険にさらさないため、職業紹介事業の監督について必要な措置を執るものとする。

国際連合事務総長への通知事項

第二十一条 
 この条約の締約国は、この条約の事項に関してすでにその国で公布されている法令並びに今後、毎年、この条約の事項に関して公布される法令及びこの条約の適用に関して締約国が執るすべての措置を国際連合事務総長に通知するものとする。事務総長は、受領した情報を定期的に刊行し、かつ、すべての国際連合加盟国及び第23条の規定に従いこの条約を正式に通報してある非加盟国に送付するものとする。

第二十二条
 この条約の締約国の間にこの条約の解釈又は適用に関して紛争が生じ、かつ、その紛争を他の方法で解決することができないときは、その紛争は、いずれかの紛争当事国の請求により、国際司法裁判所に付託するものとする。

第二十三条
 この条約は、すべての国際連合加盟国及び経済社会理事会ぎ招請状を発したすべての他の国の署名のために開放しておく。
 この条約は、批准されなければならず、批准書は、国際連合事務総長に寄託するものとする。
 第一項に規定する国でこの条約に署名していないものは、この条約に加入することができる。
 加入は、加入書を国際連合事務総長に寄託することにより行うものとする。
 この条約において「国」とは、この条約に署名しかつこれを批准し、又はこれに加入する国のすべての植民地、信託統治地域及びそれらの国が国際的に責任を有するすべての地域を含むものとする。

第二十四条
 この条約は、二番目の批准書又は加入書の寄託の日の後九十日目に効力を生ずる。
 二番目の批准書又は加入書の寄託の後にこの条約を批准し、又はこれに加入する各国については、この条約は、その国が批准書又は加入書を寄託した後九十日目に効力を生ずる。

第二十五条
 この条約の効力発生の後五年が経過した後は、この条約のいずれの締約国も、国際連合事務総長にあてた書面の通告により、この条約を破棄することができる。
 破棄は、破棄通告を行った国について、その通告を国際連合事務総長が受領した日から一年で効力を生ずる。

第二十六条
 国際連合事務総長は、すべての国際連合加盟国及び第二十三条に規定する非加盟国に次の事項を通報しなければならない。
(a) 第二十三条の規定に従って行われた署名並びに受領した批准書及び加入書
(b) この条約が第二十四条の規定に従って効力を生ずる日
(c) 第二十五条の規定に従って行われた破棄通告

第二十七条
 この条約の各締約国は、その憲法の規定に従い、この条約の適用を確保するため必要な立法上その他の措置を執ることを約束する。 

第二十八条
 この条約の規定は、その締約国の間の関係においては、前文の第二項の1、2、3及び4に掲げる国際文書の規定にとって代るものとし、それらの文書は、それぞれ、そのすべての締約国がこの条約の締約国となった時に終了したものとみなされる。

    「法令全書」より

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