ガウスの歴史を巡るブログ(その日にあった過去の出来事)

 学生時代からの大の旅行好きで、日本中を旅して回りました。その中でいろいろと歴史に関わる所を巡ってきましたが、日々に関わる歴史上の出来事や感想を紹介します。Yahooブログ閉鎖に伴い、こちらに移動しました。

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 今日は、平成時代の1994年(平成6)に、日本国内において「児童の権利に関する条約」の効力が発生した日です。
 「児童の権利に関する条約」(じどうのけんりにかんするじょうやく)は、1959年(昭和34)11月20日に国連(国際連合)で採択された「児童の権利に関する宣言」の30周年にあたる、1989年(平成元)11月20日に国連総会で全会一致で採択され、1990年(平成2)9月2日に、国際条約として発効した18歳未満の子供の権利について定めた国際条約で「子どもの権利条約」とも呼ばれてきました。日本国内では、1994年(平成6)3月29日に国会承認され、同年5月22日から効力が発生しましたが、「批准国は子の最善の利益のために行動しなければならない」(第3条)と定められています。
 この条約は、前文と 3部(54条)からなり、18歳未満のすべての人の保護と基本的人権の尊重を促進することを目的とし、①生命・生存への権利、②親・家族にかかわる子供の権利、③意見表明権、市民的権利、④特別な状況下にある子供の保護、⑤教育への権利、文化への権利などが示されました。2016年(平成28)現在、署名国・地域数は140、締約国・地域数は196ですが、アメリカ合衆国は条約に署名はしたものの、批准していません。
 以下に、「児童の権利に関する条約」の日本語訳を全文掲載しておきますので、ご参照下さい。

〇児童の権利に関する宣言(じどうのけんりにかんするせんげん)とは?

 昭和時代中期の1959年(昭和34)11月20日に、国連総会において採択された子どもの権利を促進するための国際文書です。前段として、1924年(昭和19)に、5ヶ条からなる「ジュネーブ児童権利宣言」が、国際連盟で採択され、太平洋戦争後に拡張されたものでした。「国連憲章」と「世界人権宣言」に基づくもので、前文6項と本文10ヶ条からなり、心身ともに未成熟な子供が,健全な成育と幸福と社会的諸権利を保障されるべきことを確認したものでした。
 これを実現するために、両親、個人、民間団体、地方行政機関および政府が、この宣言に従って立法およびその他の措置を講じることを求めています。日本は、1959年(昭和34)12月に参議院本会議で支持を決議しました。

☆「児童の権利に関する条約」1989年(平成元)11月20日採択、1990年(平成2)9月2日発効

前文

 この条約の締約国は、
 国際連合憲章において宣明された原則によれば、人類社会のすべての構成員の固有の尊厳及び平等のかつ奪い得ない権利を認めることが世界における自由、正義及び平和の基礎を成すものであることを考慮し、
 国際連合加盟国の国民が、国際連合憲章において、基本的人権並びに人間の尊厳及び価値に関する信念を改めて確認し、かつ、一層大きな自由の中で社会的進歩及び生活水準の向上を促進することを決意したことに留意し、
 国際連合が、世界人権宣言及び人権に関する国際規約において、すべての人は人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生又は他の地位等によるいかなる差別もなしに同宣言及び同規約に掲げるすべての権利及び自由を享有することができることを宣明し及び合意したことを認め、
 国際連合が、世界人権宣言において、児童は特別な保護及び援助についての権利を享有することができることを宣明したことを想起し、
 家族が、社会の基礎的な集団として、並びに家族のすべての構成員、特に、児童の成長及び福祉のための自然な環境として、社会においてその責任を十分に引き受けることができるよう必要な保護及び援助を与えられるべきであることを確信し、
 児童が、その人格の完全なかつ調和のとれた発達のため、家庭環境の下で幸福、愛情及び理解のある雰囲気の中で成長すべきであることを認め、
 児童が、社会において個人として生活するため十分な準備が整えられるべきであり、かつ、国際連合憲章において宣明された理想の精神並びに特に平和、尊厳、寛容、自由、平等及び連帯の精神に従って育てられるべきであることを考慮し、
 児童に対して特別な保護を与えることの必要性が、1924年の児童の権利に関するジュネーヴ宣言及び1959年11月20日に国際連合総会で採択された児童の権利に関する宣言において述べられており、また、世界人権宣言、市民的及び政治的権利に関する国際規約(特に第23条及び第24条)、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(特に第10条)並びに児童の福祉に関係する専門機関及び国際機関の規程及び関係文書において認められていることに留意し、
 児童の権利に関する宣言において示されているとおり「児童は、身体的及び精神的に未熟であるため、その出生の前後において、適当な法的保護を含む特別な保護及び世話を必要とする。」ことに留意し、
 国内の又は国際的な里親委託及び養子縁組を特に考慮した児童の保護及び福祉についての社会的及び法的な原則に関する宣言、少年司法の運用のための国際連合最低基準規則(北京規則)及び緊急事態及び武力紛争における女子及び児童の保護に関する宣言の規定を想起し、
 極めて困難な条件の下で生活している児童が世界のすべての国に存在すること、また、このような児童が特別の配慮を必要としていることを認め、
 児童の保護及び調和のとれた発達のために各人民の伝統及び文化的価値が有する重要性を十分に考慮し、
 あらゆる国特に開発途上国における児童の生活条件を改善するために国際協力が重要であることを認めて、
 次のとおり協定した。

第一部

第一条 [定義]
この条約の適用上、児童とは、18歳未満のすべての者をいう。ただし、当該児童で、その者に適用される法律によりより早く成年に達したものを除く。
第二条 [差別の禁止]
締約国は、その管轄の下にある児童に対し、児童又はその父母若しくは法定保護者の人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、種族的若しくは社会的出身、財産、心身障害、出生又は他の地位にかかわらず、いかなる差別もなしにこの条約に定める権利を尊重し、及び確保する。
締約国は、児童がその父母、法定保護者又は家族の構成員の地位、活動、表明した意見又は信念によるあらゆる形態の差別又は処罰から保護されることを確保するためのすべての適当な措置をとる。
第三条 [児童の利益の最優先]
児童に関するすべての措置をとるに当たっては、公的若しくは私的な社会福祉施設、裁判所、行政当局又は立法機関のいずれによって行われるものであっても、児童の最善の利益が主として考慮されるものとする。
締約国は、児童の父母、法定保護者又は児童について法的に責任を有する他の者の権利及び義務を考慮に入れて、児童の福祉に必要な保護及び養護を確保することを約束し、このため、すべての適当な立法上及び行政上の措置をとる。
締約国は、児童の養護又は保護のための施設、役務の提供及び設備が、特に安全及び健康の分野に関し並びにこれらの職員の数及び適格性並びに適正な監督に関し権限のある当局の設定した基準に適合することを確保する。
第四条 [条約義務の実施]
締約国は、この条約において認められる権利の実現のため、すべての適当な立法措置、行政措置その他の措置を講ずる。締約国は、経済的、社会的及び文化的権利に関しては、自国における利用可能な手段の最大限の範囲内で、また、必要な場合には国際協力の枠内で、これらの措置を講ずる。
第五条 [保護者の指導の尊重]
締約国は、児童がこの条約において認められる権利を行使するに当たり、父母若しくは場合により地方の慣習により定められている大家族若しくは共同体の構成員、法定保護者又は児童について法的に責任を有する他の者がその児童の発達しつつある能力に適合する方法で適当な指示及び指導を与える責任、権利及び義務を尊重する。
第六条 [生命に対する権利]
締約国は、すべての児童が生命に対する固有の権利を有することを認める。
締約国は、児童の生存及び発達を可能な最大限の範囲において確保する。
第七条 [氏名及び国籍に対する権利]
児童は、出生の後直ちに登録される。児童は、出生の時から氏名を有する権利及び国籍を取得する権利を有するものとし、また、できる限りその父母を知りかつその父母によって養育される権利を有する。
締約国は、特に児童が無国籍となる場合を含めて、国内法及びこの分野における関連する国際文書に基づく自国の義務に従い、1の権利の実現を確保する。
第八条 [身元関係事項の保持]
締約国は、児童が法律によって認められた国籍、氏名及び家族関係を含むその身元関係事項について不法に干渉されることなく保持する権利を尊重することを約束する。
締約国は、児童がその身元関係事項の一部又は全部を不法に奪われた場合には、その身元関係事項を速やかに回復するため、適当な援助及び保護を与える。
第九条 [父母からの分離の防止]
締約国は、児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する。ただし、権限のある当局が司法の審査に従うことを条件として適用のある法律及び手続に従いその分離が児童の最善の利益のために必要であると決定する場合は、この限りでない。このような決定は、父母が児童を虐待し若しくは放置する場合又は父母が別居しており児童の居住地を決定しなければならない場合のような特定の場合において必要となることがある。
すべての関係当事者は、1の規定に基づくいかなる手続においても、その手続に参加しかつ自己の意見を述べる機会を有する。
締約国は、児童の最善の利益に反する場合を除くほか、父母の一方又は双方から分離されている児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係及び直接の接触を維持する権利を尊重する。
3の分離が、締約国がとった父母の一方若しくは双方又は児童の抑留、拘禁、追放、退去強制、死亡(その者が当該締約国により身体を拘束されている間に何らかの理由により生じた死亡を含む。)等のいずれかの措置に基づく場合には、当該締約国は、要請に応じ、父母、児童又は適当な場合には家族の他の構成員に対し、家族のうち不在となっている者の所在に関する重要な情報を提供する。ただし、その情報の提供が児童の福祉を害する場合は、この限りでない。締約国は、更に、その要請の提出自体が関係者に悪影響を及ぼさないことを確保する。
第一〇条 [家族の再統合の支援]
前条1の規定に基づく締約国の義務に従い、家族の再統合を目的とする児童又はその父母による締約国への入国又は締約国からの出国の申請については、締約国が積極的、人道的かつ迅速な方法で取り扱う。締約国は、更に、その申請の提出が申請者及びその家族の構成員に悪影響を及ぼさないことを確保する。
父母と異なる国に居住する児童は、例外的な事情がある場合を除くほか定期的に父母との人的な関係及び直接の接触を維持する権利を有する。このため、前条1の規定に基づく締約国の義務に従い、締約国は、児童及びその父母がいずれの国(自国を含む。)からも出国し、かつ、自国に入国する権利を尊重する。出国する権利は、法律で定められ、国の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳又は他の者の権利及び自由を保護するために必要であり、かつ、この条約において認められる他の権利と両立する制限にのみ従う。
第一一条 [不法な国外移送等の防止]
締約国は、児童が不法に国外へ移送されることを防止し及び国外から帰還することができない事態を除去するための措置を講ずる。
このため、締約国は、二国間若しくは多数国間の協定の締結又は現行の協定への加入を促進する。
第一二条 [意思表明の権利]
締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする。
このため、児童は、特に、自己に影響を及ぼすあらゆる司法上及び行政上の手続において、国内法の手続規則に合致する方法により直接に又は代理人若しくは適当な団体を通じて聴取される機会を与えられる。
第一三条 [表現の自由]
児童は、表現の自由についての権利を有する。この権利には、口頭、手書き若しくは印刷、芸術の形態又は自ら選択する他の方法により、国境とのかかわりなく、あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む。
1の権利の行使については、一定の制限を課することができる。ただし、その制限は、法律によって定められ、かつ、次の目的のために必要とされるものに限る。
(a) 他の者の権利又は信用の尊重
(b) 国の安全、公の秩序又は公衆の健康若しくは道徳の保護
第一四条 [思想、良心及び宗教の自由]
締約国は、思想、良心及び宗教の自由についての児童の権利を尊重する。
締約国は、児童が1の権利を行使するに当たり、父母及び場合により法定保護者が児童に対しその発達しつつある能力に適合する方法で指示を与える権利及び義務を尊重する。
宗教又は信念を表明する自由については、法律で定める制限であって公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳又は他の者の基本的な権利及び自由を保護するために必要なもののみを課することができる。
第一五条 [結社及び集会の自由]
締約国は、結社の自由及び平和的な集会の自由についての児童の権利を認める。
1の権利の行使については、法律で定める制限であって国の安全若しくは公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳の保護又は他の者の権利及び自由の保護のため民主的社会において必要なもの以外のいかなる制限も課することができない。
第一六条 [私生活、名誉及び信頼の保護]
いかなる児童も、その私生活、家族、住居若しくは通信に対して恣意的に若しくは不法に干渉され又は名誉及び信用を不法に攻撃されない。
児童は、1の干渉又は攻撃に対する法律の保護を受ける権利を有する。
第一七条 [マス・メディアの活用]
締約国は、大衆媒体(マス・メディア)の果たす重要な機能を認め、児童が国の内外の多様な情報源からの情報及び資料、特に児童の社会面、精神面及び道徳面の福祉並びに心身の健康の促進を目的とした情報及び資料を利用することができることを確保する。このため、締約国は、
(a) 児童にとって社会面及び文化面において有益であり、かつ、第29条の精神に沿う情報及び資料を大衆媒体(マス・メディア)が普及させるよう奨励する。
(b) 国の内外の多様な情報源(文化的にも多様な情報源を含む。)からの情報及び資料の作成、交換及び普及における国際協力を奨励する。
(c) 児童用書籍の作成及び普及を奨励する。
(d) 少数集団に属し又は原住民である児童の言語上の必要性について大衆媒体(マス・メディア)が特に考慮するよう奨励する。
(e)第13条及び次条の規定に留意して、児童の福祉に有害な情報及び資料から児童を保護するための適当な指針を発展させることを奨励する。
第一八条 [父母の責任と父母への支援]
締約国は、児童の養育及び発達について父母が共同の責任を有するという原則についての認識を確保するために最善の努力を払う。父母又は場合により法定保護者は、児童の養育及び発達についての第一義的な責任を有する。児童の最善の利益は、これらの者の基本的な関心事項となるものとする。
締約国は、この条約に定める権利を保障し及び促進するため、父母及び法定保護者が児童の養育についての責任を遂行するに当たりこれらの者に対して適当な援助を与えるものとし、また、児童の養護のための施設、設備及び役務の提供の発展を確保する。
締約国は、父母が働いている児童が利用する資格を有する児童の養護のための役務の提供及び設備からその児童が便益を受ける権利を有することを確保するためのすべての適当な措置をとる。
第一九条 [虐待等からの保護]
締約国は、児童が父母、法定保護者又は児童を監護する他の者による監護を受けている間において、あらゆる形態の身体的若しくは精神的な暴力、傷害若しくは虐待、放置若しくは怠慢な取扱い、不当な取扱い又は搾取(性的虐待を含む。)からその児童を保護するためすべての適当な立法上、行政上、社会上及び教育上の措置をとる。
1の保護措置には、適当な場合には、児童及び児童を監護する者のために必要な援助を与える社会的計画の作成その他の形態による防止のための効果的な手続並びに1に定める児童の不当な取扱いの事件の発見、報告、付託、調査、処置及び事後措置並びに適当な場合には司法の関与に関する効果的な手続を含むものとする。
第二〇条 [家庭環境を奪われた児童の保護]
一時的若しくは恒久的にその家庭環境を奪われた児童又は児童自身の最善の利益にかんがみその家庭環境にとどまることが認められない児童は、国が与える特別の保護及び援助を受ける権利を有する。
締約国は、自国の国内法に従い、1の児童のための代替的な監護を確保する。
2の監護には、特に、里親委託、イスラム法の力ファーラ、養子縁組又は必要な場合には児童の監護のための適当な施設への収容を含むことができる。解決策の検討に当たっては、児童の養育において継続性が望ましいこと並びに児童の種族的、宗教的、文化的及び言語的な背景について、十分な考慮を払うものとする。
第二一条 [養子縁組]
養子縁組の制度を認め又は許容している締約国は、児童の最善の利益について最大の考慮が払われることを確保するものとし、また、
(a) 児童の養子縁組が権限のある当局によってのみ認められることを確保する。この場合において、当該権限のある当局は、適用のある法律及び手続に従い、かつ、信頼し得るすべての関連情報に基づき、養子縁組が父母、親族及び法定保護者に関する児童の状況にかんがみ許容されること並びに必要な場合には、関係者が所要のカウンセリングに基づき養子縁組について事情を知らされた上での同意を与えていることを認定する。
(b) 児童がその出身国内において里親若しくは養家に託され又は適切な方法で監護を受けることができない場合には、これに代わる児童の監護の手段として国際的な養子縁組を考慮することができることを認める。
(c) 国際的な養子縁組が行われる児童が国内における養子縁組の場合における保護及び基準と同等のものを享受することを確保する。
(d) 国際的な養子縁組において当該養子縁組が関係者に不当な金銭上の利得をもたらすことがないことを確保するためのすべての適当な措置をとる。
(e) 適当な場合には、二国間又は多数国間の取極又は協定を締結することによりこの条の目的を促進し、及びこの枠組みの範囲内で他国における児童の養子縁組が権限のある当局又は機関によって行われることを確保するよう努める。
第二二条 [難民児童の保護]
締約国は、難民の地位を求めている児童又は適用のある国際法及び国際的な手続若しくは国内法及び国内的な手続に基づき難民と認められている児童が、父母又は他の者に付き添われているかいないかを間わず、この条約及び自国が締約国となっている人権又は人道に関する他の国際文書に定める権利であって適用のあるものの享受に当たり、適当な保護及び人道的援助を受けることを確保するための適当な措置をとる。
このため、締約国は、適当と認める場合には、1の児童を保護し及び援助するため、並びに難民の児童の家族との再統合に必要な情報を得ることを目的としてその難民の児童の父母又は家族の他の構成員を捜すため、国際連合及びこれと協力する他の権限のある政府間機関又は関係非政府機関による努力に協力する。その難民の児童は、父母又は家族の他の構成員が発見されない場合には、何らかの理由により恒久的又は一時的にその家庭環境を奪われた他の児童と同様にこの条約に定める保護が与えられる。
第二三条 [障害児童の権利]
締約国は、精神的又は身体的な障害を有する児童が、その尊厳を確保し、自立を促進し及び社会への積極的な参加を容易にする条件の下で十分かつ相応な生活を享受すべきであることを認める。
締約国は、障害を有する児童が特別の養護についての権利を有することを認めるものとし、利用可能な手段の下で、申込みに応じた、かつ、当該児童の状況及び父母又は当該児童を養護している他の者の事情に適した援助を、これを受ける資格を有する児童及びこのような児童の養護について責任を有する者に与えることを奨励し、かつ、確保する。
障害を有する児童の特別な必要を認めて、2の規定に従って与えられる援助は、父母又は当該児童を養護している他の者の資力を考慮して可能な限り無償で与えられるものとし、かつ、障害を有する児童が可能な限り社会への統合及び個人の発達(文化的及び精神的な発達を含む。)を達成することに資する方法で当該児童が教育、訓練、保健サービス、リハビリテーション・サービス、雇用のための準備及びレクリエーションの機会を実質的に利用し及び享受することができるように行われるものとする。
締約国は、国際協力の精神により、予防的な保健並びに障害を有する児童の医学的、心理学的及び機能的治療の分野における適当な情報の交換(リハビリテーション、教育及び職業サービスの方法に関する情報の普及及び利用を含む。)であってこれらの分野における自国の能力及び技術を向上させ並びに自国の経験を広げることができるようにすることを目的とするものを促進する。これに関しては、特に、開発途上国の必要を考慮する。
第二四条 [健康を享受する権利]
締約国は、到達可能な最高水準の健康を享受すること並びに病気の治療及び健康の回復のための便宜を与えられることについての児童の権利を認める。締約国は、いかなる児童もこのような保健サービスを利用する権利が奪われないことを確保するために努力する。
締約国は、1の権利の完全な実現を追求するものとし、特に、次のことのための適当な措置をとる。
(a) 幼児及び児童の死亡率を低下させること。
(b) 基礎的な保健の発展に重点を置いて必要な医療及び保健をすべての児童に提供することを確保すること。
(c) 環境汚染の危険を考慮に入れて、基礎的な保健の枠組みの範囲内で行われることを含めて、特に容易に利用可能な技術の適用により並びに十分に栄養のある食物及び清潔な飲料水の供給を通じて、疾病及び栄養不良と闘うこと。
(d) 母親のための産前産後の適当な保健を確保すること。
(e) 社会のすべての構成員特に父母及び児童が、児童の健康及び栄養、母乳による育児の利点、衛生(環境衛生を含む。)並びに事故の防止についての基礎的な知識に関して、情報を提供され、教育を受ける機会を有し及びその知識の使用について支援されることを確保すること。
(f) 予防的な保健、父母のための指導並びに家族計画に関する教育及びサービスを発展させること。
締約国は、児童の健康を害するような伝統的な慣行を廃止するため、効果的かつ適当なすべての措置をとる。
締約国は、この条において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成するため、国際協力を促進し及び奨励することを約束する。これに関しては、特に、開発途上国の必要を考慮する。
第二五条 [児童収容措置に対する審査]
締約国は、児童の身体又は精神の養護、保護又は治療を目的として権限のある当局によって収容された児童に対する処遇及びその収容に関連する他のすべての状況に関する定期的な審査が行われることについての児童の権利を認める。
第二六条 [社会保障に対する権利]
締約国は、すべての児童が社会保険その他の社会保障からの給付を受ける権利を認めるものとし、自国の国内法に従い、この権利の完全な実現を達成するための必要な措置をとる。
1の給付は、適当な場合には、児童及びその扶養について責任を有する者の資力及び事情並びに児童によって又は児童に代わって行われる給付の申請に関する他のすべての事項を考慮して、与えられるものとする。
第二七条 [生活水準に関する権利]
締約国は、児童の身体的、精神的、道徳的及び社会的な発達のための相当な生活水準についてのすべての児童の権利を認める。
父母又は児童について責任を有する他の者は、自己の能力及び資力の範囲内で、児童の発達に必要な生活条件を確保することについての第一義的な責任を有する。
締約国は、国内事情に従い、かつ、その能力の範囲内で、1の権利の実現のため、父母及び児童について責任を有する他の者を援助するための適当な措置をとるものとし、また、必要な場合には、特に栄養、衣類及び住居に関して、物的援助及び支援計画を提供する。
締約国は、父母又は児童について金銭上の責任を有する他の者から、児童の扶養料を自国内で及び外国から、回収することを確保するためのすべての適当な措置をとる。特に、児童について金銭上の責任を有する者が児童と異なる国に居住している場合には、締約国は、国際協定への加入又は国際協定の締結及び他の適当な取決めの作成を促進する。
第二八条 [教育に関する権利]
締約国は、教育についての児童の権利を認めるものとし、この権利を漸進的にかつ機会の平等を基礎として達成するため、特に、
(a) 初等教育を義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとする。
(b) 種々の形態の中等教育(一般教育及び職業教育を含む。)の発展を奨励し、すべての児童に対し、これらの中等教育が利用可能であり、かつ、これらを利用する機会が与えられるものとし、例えば、無償教育の導入、必要な場合における財政的援助の提供のような適当な措置をとる。
(c) すべての適当な方法により、能力に応じ、すべての者に対して高等教育を利用する機会が与えられるものとする。
(d) すべての児童に対し、教育及び職業に関する情報及び指導が利用可能であり、かつ、これらを利用する機会が与えられるものとする。
(e) 定期的な登校及び中途退学率の減少を奨励するための措置をとる。
締約国は、学校の規律が児童の人間の尊厳に適合する方法で及びこの条約に従って運用されることを確保するためのすべての適当な措置をとる。
締約国は、特に全世界における無知及び非識字の廃絶に寄与し並びに科学上及び技術上の知識並びに最新の教育方法の利用を容易にするため、教育に関する事項についての国際協力を促進し、及び奨励する。これに関しては、特に、開発途上国の必要を考慮する。
第二九条 [教育の目的]
締約国は、児童の教育が次のことを指向すべきことに同意する。
(a) 児童の人格、才能並びに精神的及び身体的な能力をその可能な最大限度まで発達させること。
(b) 人権及び基本的自由並びに国際連合憲章にうたう原則の尊重を育成すること。
(c) 児童の父母、児童の文化的同一性、言語及び価値観、児童の居住国及び出身国の国民的価値観並びに自己の文明と異なる文明に対する尊重を育成すること。
(d) すべての人民の間の、種族的、国民的及び宗教的集団の間の並びに原住民である者の理解、平和、寛容、両性の平等及び友好の精神に従い、自由な社会における責任ある生活のために児童に準備させること。
(e) 自然環境の尊重を育成すること。
この条又は前条のいかなる規定も、個人及び団体が教育機関を設置し及び管理する自由を妨げるものと解してはならない。ただし、常に、1に定める原則が遵守されること及び当該教育機関において行われる教育が国によって定められる最低限度の基準に適合することを条件とする。
第三〇条 [少数民族又は原住民児童の権利]
種族的、宗教的若しくは言語的少数民族又は先住民である者が存在する国において、当該少数民族に属し又は先住民である児童は、その集団の他の構成員とともに自己の文化を享有し、自己の宗教を信仰しかつ実践し又は自己の言語を使用する権利を否定されない。
第三一条 [文化的生活等への参加]
締約国は、休息及び余暇についての児童の権利並びに児童がその年齢に適した遊び及びレクリエーションの活動を行い並びに文化的な生活及び芸術に自由に参加する権利を認める。
締約国は、児童が文化的及び芸術的な生活に十分に参加する権利を尊重しかつ促進するものとし、文化的及び芸術的な活動並びにレクリエーション及び余暇の活動のための適当かつ平等な機会の提供を奨励する。
第三二条 [経済的搾取及び有害労働からの保護]
締約国は、児童が経済的な搾取から保護され及び危険となり若しくは児童の教育の妨げとなり又は児童の健康若しくは身体的、精神的、道徳的若しくは社会的な発達に有害となるおそれのある労働への従事から保護される権利を認める。
締約国は、この条の規定の実施を確保するための立法上、行政上、社会上及び教育上の措置をとる。このため、締約国は、他の国際文書の関連規定を考慮して、特に、
(a) 雇用が認められるための1又は2以上の最低年齢を定める。
(b) 労働時間及び労働条件についての適当な規則を定める。
(c) この条の規定の効果的な実施を確保するための適当な罰則その他の制裁を定める。
第三三条 [麻薬及び向精神薬からの保護]
締約国は、関連する国際条約に定義された麻薬及び向精神薬の不正な使用から児童を保護し並びにこれらの物質の不正な生産及び取引における児童の使用を防止するための立法上、行政上、社会上及び教育上の措置を含むすべての適当な措置をとる。
第三四条 [性的搾取及び性的虐待からの保護]
締約国は、あらゆる形態の性的搾取及び性的虐待から児童を保護することを約束する。このため、締約国は、特に、次のことを防止するためのすべての適当な国内、二国間及び多数国間の措置をとる。
(a) 不法な性的な行為を行うことを児童に対して勧誘し又は強制すること。
(b) 売春又は他の不法な性的な業務において児童を搾取的に使用すること。
(c) わいせつな演技及び物において児童を搾取的に使用すること。
第三五条 [誘拐、売買又は取引の防止]
締約国は、あらゆる目的のための又はあらゆる形態の児童の誘拐、売買又は取引を防止するためのすべての適当な国内、二国間及び多数国間の措置をとる。
第三六条 [他の全ての形態の搾取からの保護]
締約国は、いずれかの面において児童の福祉を害する他のすべての形態の搾取から児童を保護する。
第三七条 [拷問及び死刑等の禁止・自由を奪われた児童の取り扱い]
締約国は、次のことを確保する。
(a) いかなる児童も、拷問又は他の残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けないこと。死刑又は釈放の可能性がない終身刑は、十八歳未満の者が行った犯罪について科さないこと。
(b) いかなる児童も、不法に又は恣意的にその自由を奪われないこと。児童の逮捕、抑留又は拘禁は、法律に従って行うものとし、最後の解決手段として最も短い適当な期間のみ用いること。
(c) 自由を奪われたすべての児童は、人道的に、人間の固有の尊厳を尊重して、かつ、その年齢の者の必要を考慮した方法で取り扱われること。特に、自由を奪われたすべての児童は、成人とは分離されないことがその最善の利益であると認められない限り成人とは分離されるものとし、例外的な事情がある場合を除くほか、通信及び訪問を通じてその家族との接触を維持する権利を有すること。
(d) 自由を奪われたすべての児童は、弁護人その他適当な援助を行う者と速やかに接触する権利を有し、裁判所その他の権限のある、独立の、かつ、公平な当局においてその自由の剥奪の合法性を争い並びにこれについての決定を速やかに受ける権利を有すること。
第三八条 [武力紛争における保護]
締約国は、武力紛争において自国に適用される国際人道法の規定で児童に関係を有するものを尊重し及びこれらの規定の尊重を確保することを約束する。
締約国は、15歳未満の者が敵対行為に直接参加しないことを確保するためのすべての実行可能な措置をとる。
締約国は、15歳未満の者を自国の軍隊に採用することを差し控えるものとし、また、15歳以上18歳未満の者の中から採用するに当たっては、最年長者を優先させるよう努める。
締約国は、武力紛争において文民を保護するための国際人道法に基づく自国の義務に従い、武力紛争の影響を受ける児童の保護及び養護を確保するためのすべての実行可能な措置をとる。
第三九条 [被害児童の回復及び社会復帰]
締約国は、あらゆる形態の放置、搾取若しくは虐待、拷間若しくは他のあらゆる形態の残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰又は武力紛争による被害者である児童の身体的及び心理的な回復及び社会復帰を促進するためのすべての適当な措置をとる。このような回復及び復帰は、児童の健康、自尊心及び尊厳を育成する環境において行われる。
第四〇条 [刑事法上の保護責任]
締約国は、刑法を犯したと申し立てられ、訴追され又は認定されたすべての児童が尊厳及び価値についての当該児童の意識を促進させるような方法であって、当該児童が他の者の人権及び基本的自由を尊重することを強化し、かつ、当該児童の年齢を考慮し、更に、当該児童が社会に復帰し及び社会において建設的な役割を担うことがなるべく促進されることを配慮した方法により取り扱われる権利を認める。
このため、締約国は、国際文書の関連する規定を考慮して、特に次のことを確保する。
(a) いかなる児童も、実行の時に国内法又は国際法により禁じられていなかった作為又は不作為を理由として刑法を犯したと申し立てられ、訴追され又は認定されないこと。
(b) 刑法を犯したと申し立てられ又は訴追されたすべての児童は、少なくとも次の保障を受けること。
(i) 法律に基づいて有罪とされるまでは無罪と推定されること。
(ii) 速やかにかつ直接に、また、適当な場合には当該児童の父母又は法定保護 者を通じてその罪を告げられること並びに防御の準備及び申立てにおいて弁 護人その他適当な援助を行う者を持つこと。
(iii) 事案が権限のある、独立の、かつ、公平な当局又は司法機関により法律に基づく公正な審理において、弁護人その他適当な援助を行う者の立会い及び、特に当該児童の年齢又は境遇を考慮して児童の最善の利益にならないと認められる場合を除くほか、当該児童の父母又は法定保護者の立会いの下に遅滞なく決定されること。
(iv) 供述又は有罪の自白を強要されないこと。不利な証人を尋間し又はこれに対し尋問させること並びに対等の条件で自己のための証人の出席及びこれに対する尋問を求めること。
(v) 刑法を犯したと認められた場合には、その認定及びその結果科せられた措置について、法律に基づき、上級の、権限のある、独立の、かつ、公平な当局又は司法機関によって再審理されること。
(vi) 使用される言語を理解すること又は話すことができない場合には、無料で通訳の援助を受けること。
(vii) 手続のすべての段階において当該児童の私生活が十分に尊重されること。
締約国は、刑法を犯したと申し立てられ、訴追され又は認定された児童に特別に適用される法律及び手続の制定並びに当局及び施設の設置を促進するよう努めるものとし、特に、次のことを行う。
(a) その年齢未満の児童は刑法を犯す能力を有しないと推定される最低年齢を設定すること。
(b) 適当なかつ望ましい場合には、人権及び法的保護が十分に尊重されていることを条件として、司法上の手続に訴えることなく当該児童を取り扱う措置をとること。
児童がその福祉に適合し、かつ、その事情及び犯罪の双方に応じた方法で取り扱われることを確保するため、保護、指導及び監督命令、力ウンセリング、保護観察、里親委託、教育及び職業訓練計画、施設における養護に代わる他の措置等の種々の処置が利用し得るものとする。
第四一条 [他の法規との関係]
この条約のいかなる規定も、次のものに含まれる規定であって児童の権利の実現に一層貢献するものに影響を及ぼすものではない。
(a) 締約国の法律
(b) 締約国について効力を有する国際法

第二部

第四二条 [締約国の広報義務]
締約国は、適当かつ積極的な方法でこの条約の原則及び規定を成人及び児童のいずれにも広く知らせることを約束する。
第四三条 [児童の権利に関する委員会]
この条約において負う義務の履行の達成に関する締約国による進捗の状況を審査するため、児童の権利に関する委員会(以下「委員会」という。)を設置する。委員会は、この部に定める任務を行う。
委員会は、徳望が高く、かつ、この条約が対象とする分野において能力を認められた10人の専門家で構成する。委員会の委員は、締約国の国民の中から締約国により選出されるものとし、個人の資格で職務を遂行する。その選出に当たっては、衡平な地理的配分及び主要な法体系を考慮に入れる。
委員会の委員は、締約国により指名された者の名簿の中から秘密投票により選出される。各締約国は、自国民の中から一人を指名することができる。
委員会の委員の最初の選挙は、この条約の効力発生の日の後6箇月以内に行うものとし、その後の選挙は、2年ごとに行う。国際連合事務総長は、委員会の委員の選挙の日の遅くとも4箇月前までに、締約国に対し、自国が指名する者の氏名を2箇月以内に提出するよう書簡で要請する。その後、同事務総長は、指名された者のアルファべット順による名簿(これらの者を指名した締約国名を表示した名簿とする。)を作成し、この条約の締約国に送付する。
委員会の委員の選挙は、国際連合事務総長により国際連合本部に招集される締約国の会合において行う。これらの会合は、締約国の3分の2をもって定足数とする。これらの会合においては、出席しかつ投票する締約国の代表によって投じられた票の最多数で、かつ、過半数の票を得た者をもって委員会に選出された委員とする。
委員会の委員は、4年の任期で選出される。委員は、再指名された場合には、再選される資格を有する。最初の選挙において選出された委員のうち5人の委員の任期は、2年で終了するものとし、これらの5人の委員は、最初の選挙の後直ちに、最初の選挙が行われた締約国の会合の議長によりくじ引で選ばれる。
委員会の委員が死亡し、辞任し又は他の理由のため委員会の職務を遂行することができなくなったことを宣言した場合には、当該委員を指名した締約国は、委員会の承認を条件として自国民の中から残余の期間職務を遂行する他の専門家を任命する。
委員会は、手続規則を定める。
委員会は、役員を2年の任期で選出する。
委員会の会合は、原則として、国際連合本部又は委員会が決定する他の適当な場所において開催する。委員会は、原則として毎年1回会合する。委員会の会合の期間は、国際連合総会の承認を条件としてこの条約の締約国の会合において決定し、必要な場合には、再検討する。
国際連合事務総長は、委員会がこの条約に定める任務を効果的に遂行するために必要な職員及び便益を提供する。
この条約に基づいて設置する委員会の委員は、国際連合総会が決定する条件に従い、同総会の承認を得て、国際連合の財源から報酬を受ける。
第四四条 [締約国の報告義務]
締約国は、(a)当該締約国についてこの条約が効力を生ずる時から2年以内に、(b)その後は5年ごとに、この条約において認められる権利の実現のためにとった措置及びこれらの権利の享受についてもたらされた進歩に関する報告を国際連合事務総長を通じて委員会に提出することを約束する。
この条の規定により行われる報告には、この条約に基づく義務の履行の程度に影響を及ぼす要因及び障害が存在する場合には、これらの要因及び障害を記載する。当該報告には、また、委員会が当該国における条約の実施について包括的に理解するために十分な情報を含める。
委員会に対して包括的な最初の報告を提出した締約国は、1(b)の規定に従って提出するその後の報告においては、既に提供した基本的な情報を繰り返す必要はない。
委員会は、この条約の実施に関連する追加の情報を締約国に要請することができる。
委員会は、その活動に関する報告を経済社会理事会を通じて2年ごとに国際連合総会に提出する。
締約国は、1の報告を自国において公衆が広く利用できるようにする。
第四五条 [国際協力のための委員会の機能]
この条約の効果的な実施を促進し及びこの条約が対象とする分野における国際協力を奨励するため、
(a) 専門機関及び国際連合児童基金その他の国際連合の機関は、その任務の範囲内にある事項に関するこの条約の規定の実施についての検討に際し、代表を出す権利を有する。委員会は、適当と認める場合には、専門機関及び国際連合児童基金その他の権限のある機関に対し、これらの機関の任務の範囲内にある事項に関するこの条約の実施について専門家の助言を提供するよう要請することができる。委員会は、専門機関及び国際連合児童基金その他の国際連合の機関に対し、これらの機関の任務の範囲内にある事項に関するこの条約の実施について報告を提出するよう要請することができる。
(b) 委員会は、適当と認める場合には、技術的な助言若しくは援助の要請を含んでおり又はこれらの必要性を記載している締約国からのすべての報告を、これらの要請又は必要性の記載に関する委員会の見解及び提案がある場合は当該見解及び提案とともに、専門機関及び国際連合児童基金その他の権限のある機関に送付する。
(c) 委員会は、国際連合総会に対し、国際連合事務総長が委員会のために児童の権利に関連する特定の事項に関する研究を行うよう同事務総長に要請することを勧告することができる。
(d) 委員会は、前条及びこの条の規定により得た情報に基づく提案及び一般的な性格を有する勧告を行うことができる。これらの提案及び一般的な性格を有する勧告は、関係締約国に送付し、締約国から意見がある場合にはその意見とともに国際連合総会に報告する。

第三部

第四六条 [署名]
この条約は、すべての国による署名のために開放しておく。
第四七条 [批准]
この条約は、批准されなければならない。批准書は、国際連合事務総長に寄託する。
第四八条 [加入]
この条約は、すべての国による加入のために開放しておく。加入書は、国際連合事務総長に寄託する。
第四九条 [効力発生]
この条約は、20番目の批准書又は加入書が国際連合事務総長に寄託された日の後30日目の日に効力を生ずる。
この条約は、20番目の批准書又は加入書が寄託された後に批准し又は加入する国については、その批准書又は加入書が寄託された日の後30日目に効力を生ずる。
第五〇条 [改正の手続き]
いずれの締約国も、改正を提案し及び改正案を国際連合事務総長に提出することができる。同事務総長は、直ちに、締約国に対し、その改正案を送付するものとし、締約国による改正案の審議及び投票のための締約国の会議の開催についての賛否を示すよう要請する。その送付の日から4箇月以内に締約国の3分の1以上が会議の開催に賛成する場合には、同事務総長は、国際連合の主催の下に会議を招集する。会議において出席しかつ投票する締約国の過半数によって採択された改正案は、承認のため、国際連合総会に提出する。
1の規定により採択された改正は、国際連合総会が承認し、かつ、締約国の3分の2以上の多数が受諾した時に、効力を生ずる。
改正は、効力を生じたときは、改正を受諾した締約国を拘束するものとし、他の締約国は、改正前のこの条約の規定(受諾した従前の改正を含む。)により引き続き拘束される。
第五一条 [留保]
国際連合事務総長は、批准又は加入の際に行われた留保の書面を受領し、かつ、すべての国に送付する。
この条約の趣旨及び目的と両立しない留保は、認められない。
留保は、国際連合事務総長にあてた通告によりいつでも撤回することができるものとし、同事務総長は、その撤回をすべての国に通報する。このようにして通報された通告は、同事務総長により受領された日に効力を生ずる。
第五二条 [廃棄]
締約国は、国際連合事務総長に対して書面による通告を行うことにより、この条約を廃棄することができる。廃棄は、同事務総長がその通告を受領した日の後1年で効力を生ずる。
第五三条 [寄託]
国際連合事務総長は、この条約の寄託者として指名される。
第五四条 [正文]
アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語をひとしく正文とするこの条約の原本は、国際連合事務総長に寄託する。
以上の証拠として、下名の全権委員は、各自の政府から正当に委任を受けてこの条約に署名した。

   「ウィキソース」より

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seibutsuheikikinshijyouyaku
 今日は、昭和時代後期の1972年(昭和47)に、「生物兵器禁止条約」に日・米・ソなど47ヶ国が調印(発効は1975年3月26日)した日です。
 「生物兵器禁止条約」(せいぶつへいききんしじょうやく)は、生物兵器および毒素兵器の開発、生産、貯蔵を禁止し、現有兵器は9ヶ月以内に廃棄することを定めた国際条約で、正式名称は、「細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発,生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約」と言いました。すでに、1925年(大正14)の「ジュネーヴ議定書(窒息性ガス、毒性ガス又はこれらに類するガス及び細菌学的手段の戦争における使用の禁止に関する議定書)」によって生物兵器は使用禁止とされていて、この議定書への加入国を増やし、生物・化学兵器の使用禁止だけでなく、その開発,製造,貯蔵なども禁止しようとする交渉は,第2次世界大戦後も国連総会、ジュネーブ軍縮委員会などを中心に続けられます。
 その中で、1966年(昭和41)の第21回国連総会において化学兵器及び生物兵器の使用を非難する決議が採択され、1969年(昭和44)にウ・タント国連事務総長が、報告書「化学・細菌兵器とその使用の影響」を提出すると、国連などの場で化学兵器及び生物兵器の規制問題の議論が活発となりました。その後、1971年(昭和46)の軍縮委員会により「生物兵器禁止条約(BWC)」が作成され、同年の第26回国連総会決議にて採択されます。その内容は、前文と本文 15ヶ条からなり、存続期間は無期限とし、各締約国は微生物剤その他の生物剤、または毒素、またはそれらの使用のための兵器や運搬手段の開発、生産、貯蔵、取得、保有をしないことを約束し(第1条)、さらに条約発効後遅くとも 9ヶ月以内に、自国が保持する生物剤、毒素、兵器、運搬手段などを廃棄することを約束し(第2条)、また各締約国は、その領域内または管轄下にある上記生物剤などの開発その他の禁止に必要な措置をとることも定める(第4条)、などしました。
 1972年(昭和47)4月10日に署名開放され、1975年(昭和50)3月26日に発効しましたが、2018年(平成30)4月現在で、締約国・地域は183ヶ国、署名国は5ヶ国となっています。日本は、1972年(昭和47)4月10日(署名開放日)に署名、1982年(昭和57)6月8日に批准、国内法として「細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発、生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約等の実施に関する法律」が制定されました。
 以下に、「生物兵器禁止条約(BWC)」の英語版原文と日本語訳を掲載しておきますので、ご参照下さい。

〇「生物兵器禁止条約(BWC)」1972年(昭和47)4月10日署名開放、1975年(昭和50)3月26日発効

<英語版原文>

CONVENTION 
ON THE PROHIBITION OF THE DEVELOPMENT, PRODUCTION AND STOCKPILING OF BACTERIOLOGICAL (BIOLOGICAL) AND TOXIN WEAPONS AND ON THEIR DESTRUCTION 

 The States Parties to this Convention, 
 Determined to act with a view to achieving effective progress towards general and complete disarmament, including the prohibition and elimination of all types of weapons of mass destruction, and convinced that :he prohibition of the development, production and stockpiling of chemical and bacteriological (biological) weapons and their elimination, through effective measures, will facilitate the achievement of general and complete disarmament under strict and effective international control, 
 Recognising the important significance of the Protocol for the Prohibition of the Use in War of Asphyxiating, Poisonous or Other Gases, 
and of Bacteriological Methods of Warfare, signed at Geneva on 17 June 1925, and conscious also of the contribution which the said Protocol has already made, and continues to make, to mitigating the horrors of war, 
 Reaffirming their adherence to the principles and objectives of that Protocol and calling upon all States to comply strictly with them, 
 Recalling that the General Assembly of the United Nations has repeatedly condemned all actions contrary to the principles and objectives of the Geneva Protocol of 17 June 1925, 
 Desiring to contribute to the strengthening of confidence between peoples and the general improvement of the international atmosphere, 
 Desiring also to contribute to the realisation of the purposes and principles of the Charter of the United Nations, 
 Convinced oE the importance and urgency of eliminating from the arsenals of States, through effective measures. such dangerous weapons of mass destruction as those using chemical or bacteriological (biological) agents, 
 Recognising that an agreement on the prohibition of bacteriological (biological) and toxin weapons represents a first possible step towards the achievement of agreement on effective measures also for the prohibition of the development, production and stockpiling of chemical weapons, and determined to continue negotiations to that end, 
 Determined, for the sake of all mankind, to exclude completely the possibility of bacteriological (biological) agents and toxins being used as weapons, 
 Convinced that such use would be repugnant to the conscience of mankind and that no effort should be spared to minimise this risk, 
 Have agreed as follows: 

 ARTICLE Ⅰ
 Each State Party to this Convention undertakes never in any circumstances to develop, produce, stockpile or otherwise acquire or retain: 
 (1) mjcrobia] or other biological agents, or toxins whatever their origin or method of production, of types and in quantities that have no justification for prophylactic, protective or other peaceful purposes; 
 (2) weapons, equipment or means of delivery designed to use such agents or toxins for hostile purposes or in armed conflict, 

 ARTICLE Ⅱ
 Each State Party to this Convention undertakes to destroy, or to divert to peaceful purposes, as soon as possible but not later than nine months after the entry into force of the Convention, all agents, toxins, weapons, 
equipment and means of deljvery specified in Article 1 of the Convention, which are in its p~ssession or under its jurisdiction or control. In implementing the provisions of this Article all necessary safety precautions shall be observed to protect populations and the environment. 

 ARTICLE Ⅲ
 Each State Party to this Convention undertakes not to transfer to any recipient whatsoever, directly or indirectly, and not in any way to assist, encourage, or induce any State, group of States or international organisations to manufacture or otherwise acquire any of the agents, toxins, weapons, equipment or means of delivery specified in Article I of the Convention, 

 ARTICLE Ⅳ
 Each State Party to this Convention shall, in accordance with its constitutional processes, take any necessary measures to prohibit and prevent the development, production, stockpiling, acquisition or retention d the agents, toxins, weapons, equipment and means of delivery specified in Article I of the Convention, within the territory of such State, under its jurisdiction or under its control anywhere. 

 ARTICLE Ⅴ
 The States Parties to this Convention undertake to consult one another and to co-operate in solving any problems which may arise in relation to the objective of, or in the application of the provisions of, the Convention. 
Consultation and co-operation pursuant to this Article may also be undertaken through appropriate international procedures within the framework of the United Nations and in accordance with its Charter. 

 ARTICLE Ⅵ
 (1) Any State Party to this Convention which finds that any other State Party is acting in breach of obligations deriving from the provisions of the Convention may lodge a complaint with the Security Council of the United Nations. Such a complaint should include all possible evidence confirming its validity, as well as a request for its consideration by the Security Council. 
 (2) Each State Party to this Convention undertakes to co-operate in carrying out any investigation which the Security Council may initiate, h accordance with the provisions of the Charter of the United Nations, on the basis of the complaint received by the Council. The Security Council shall inform the States Parties to the Convention of the results of the investigation. 

 ARTICLE Ⅶ
 Each State Party to this Convention undertakes to provide or support assistance, in accordance with the United Nations Charter, to any Party to the Convention which so requests, if the Security Council decides that such Party has been exposed to danger as a result of violation of the Convention, 

 ARTICLE Ⅷ
 Nothing in this Convention shall be interpreted as in any way limiting or detracting from the obligations assumed by any State under the Protocol for the Prohibition of the Use in War of Asphyxiating, Poisonous or Other Gases, and of Bacteriological Methods of Warfare, signed at Geneva on 17 June 1925. 

 ARTICLE Ⅸ
 Each State Party to this Convention affirms the recognised objective of effective prohibition of chemical weapons and, to this end, undertakes to continue negotiations in good faith with a view to reaching early agreement on effective measures for the prohibition of their development, production and stockpiling and for their destruction, and on appropriate measures concerning equipment and means of delivery specifically designed for the production or use of chemical agents for weapons purposes. 

 ARTICLE Ⅹ
 (1) The States Parties to this Convention undertake to facilitate, and have the right to participate in, the fullest possible exchange of equipment, materials and scientific and technological information for the use of bacteriological (biological) agents and toxins for peaceful purposes. Parties to the Convention in a position to do so shall also co-operate in contributing individually or together with other States or international organisations to the further development and application of scientific discoveries in the field of bacteriology (biology) for the prevention of disease, or for other peaceful purposes. 
 (2) This Convention shall be implemented in a manner designed to avoid hampering the economic or technological development of States Parties to the Convention or international co-operation in the field of peaceful bacteriological (biological) activities, including the international exchange of bacteriological (biological) agents and toxins and equipment for the processing. use or production of bacteriological (biological) agents and toxins for peaceful purposes in accordance with the provisions of the Convention. 

 ARTICLE XⅠ
 Any State Party may propose amendments to this Convention, Amendments shall enter into force for each State Party accepting the amendments upon their acceptance by a majority of the States Parties to the Convention and thereafter for each remaining State Party on the date of acceptance by it, 

 ARTICLE XⅡ
 Five years after the entry into force of this Convention, or earlier if it is requested by a majority of Parties to the Convention by submitting a proposal to this effect to the Depositary Governments, a conference of States Parties to the Convention shall be held at Geneva, Switzerland, to review the operation of the Convention, with a view to assuring that the purposes of the preamble and the provisions of the Convention, including the provisions concerning negotiations on chemical weapons, are being realised, Such review shall take into account any new scientific and technological developments relevant to the Convention, 

 ARTICLE XⅢ 
 (1) This Convention shall be of unlimited duration, 
 (2) Each State Party to this Convention shall in exercising its national sovereignty have the right to withdraw from the Convention if it decides that extraordinary events, related to the subject matter of the Convention, have jeopardised the supreme interests of its country. It shall give notice of such withdrawal to all other States Parties to the Convention and to the United Nations Security Council three months in advance. Such notice shall include a statement of the extraordinary events it regards as having jeopardised its supreme interests. 

 ARTICLE XⅣ 
 (1) This Convention shall be open to all States for signature. Any State which does not sign the Convention before its entry into force in accordance with paragraph 3 of this Article may accede to it at any time. 
 (2) This Convention shall be subject to ratification by signatory States, Instruments of ratification and instruments of accession shall be deposited with the Governments of the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland, the Union of Soviet Socialist Republics and the United States of America, which are hereby designated the Depositary Governments. 
 (3) This Convention shall enter into force after the deposit of instruments of ratification by twenty-two Governments, including the Governments designated as Depositaries of the Convention. 
 (4) For States whose instruntents of ratification or accession are deposited subsequent to the entry into force of this Convention, it shall enter into force on the date of the deposit of their instruments of ratification or accession. 
 (5) The Depositary Governments shall promptly inform all signatory and acceding States of the date of each signature, the date of deposit of each instrument of ratification or of accession and the date of the entry into force of this Convention, and of the receipt of other notices. 
 (6) This Convention shall be registered by the Depositary Governments pursuant to Article 102 of the Charter of the United Nations. 

 ARTICLE XⅤ
 This Convention, the English, Russian, French, Spanish and Chinese texts of which are equally authentic, shall be deposited in the archives of the Depositary Governments. Duly certified copies of the Convention shall be transmitted by the Depositary Governments to the Governments of the signatory and acceding States.

<日本語訳>

細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発,生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約

 この条約の締約国は,
 あらゆる種類の大量破壊兵器の禁止及び廃棄を含む全面的かつ完全な軍備縮小への効果的な進展を図ることを決意し,効果的な措置による化学兵器及び細菌兵器(生物兵器)の開発,生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄が厳重かつ効果的な国際管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小の達成を容易にすることを確信し,
 1925年6月17日にジュネーヴで署名された窒息性ガス,毒性ガス又はこれらに類するガス及び細菌学的手段の戦争のおける使用の禁止に関する議定書の有する重要な意義を認識し,
 同議定書が戦争の恐怖の軽減に貢献しており,また,引き続きその軽減に貢献することを認識し,同議定書の目的及び原則を堅持することを再確認し,すべての国に対しその目的及び原則を厳守することを要請し,
 国際連合総会が同議定書の目的及び原則に反するすべての行為を繰り返し非難してきたことを想起し,
 諸国民間の信頼の強化及び国際関係の全般的な改善に貢献することを希望し,
 国際連合憲章の目的及び原則の実現に貢献することを希望し,
 化学剤又は細菌剤(生物剤)を利用した兵器のような危険な大量破壊兵器を効果的な措置により諸国の軍備から除去することが重要かつ緊急であることを確信し,
 細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の禁止に関する取極が化学兵器の開発,生産及び貯蔵の禁止のための効果的な措置について合意を達成するための第一歩となるものであることを認識し,
 この合意の達成のために交渉を継続することを決意し,
 全人類のため,兵器としての細菌剤(生物剤)及び毒素の使用の可能性を完全に無くすことを決意し,
 このような使用が人類の良心に反するものであること及びこのような使用のおそれを最小にするためにあらゆる努力を払わなければならないことを確信して,
 次のとおり協定した。

 第1条
 締約国は,いかなる場合にも,次の物を開発せず,生産せず,貯蔵せず若しくはその他の方法によって取得せず又は保有しないことを約束する。
 (1) 防疫の目的,身体防護の目的その他の平和的目的による正当化ができない種類及び量の微生物剤その他の生物剤又はこのような種類及び量の毒素(原料又は製法のいかんを問わない。)
 (2) 微生物剤その他の生物剤又は毒素を敵対目的のために又は武力紛争において使用するために設計された兵器,装置又は運搬手段

 第2条
 締約国は,この条約の効力発生の後できる限り速やかに,遅くとも9箇月以内に,自国の保有し又は自国の管轄若しくは管理の下にある前条に規定するすべての微生物剤その他の生物剤,毒素,兵器,装置及び運搬手段を廃棄し又は平和的目的のために転用することを約束する。この条の規定の実施に当たっては,住民及び環境の保護に必要なすべての安全上の予防措置をとるものとする。

 第3条
締約国は,第1条に規定する微生物剤その他の生物剤,毒素,兵器,装置又は運搬手段をいかなる者に対しても直接又は間接に移譲しないこと及びこれらの物の製造又はその他の方法による取得につき,いかなる国,国の集団又は国際機関に対しても,何ら援助,奨励又は勧誘を行わないことを約束する。

 第4条
 締約国は,自国の憲法上の手続に従い,その領域内及びその管轄又は管理の下にあるいかなる場所においても,第1条に規定する微生物剤その他の生物剤,毒素,兵器,装置及び運搬手段の開発,生産,貯蔵,取得又は保有を禁止し及び防止するために必要な措置をとる。

 第5条
 締約国は,この条約の目的に関連して生ずる問題又はこの条約の適用に際して生ずる問題の解決に当たって相互に協議し及び協力することを約束する。この条の規定に基づく協議及び協力は,国際連合の枠内で及び国際連合憲章に従って,適当な国際的手続により行うことができる。

 第6条
 (1) 締約国は,他の締約国がこの条約に基づく義務に違反していると認めるときは,国際連合安全保障理事会に苦情を申し立てることができる。苦情の申立てには,同理事会に対する審議の要請のほか,その申立ての妥当性を裏付けるすべての証拠を含めるものとする。
 (2) 締約国は,安全保障理事会がその受理した苦情の申立てに基づき国際連合憲章に従って行う調査に対し協力することを約束する。同理事会は,この調査の結果を締約国に通知する。

 第7条
 締約国は,この条約の違反によりいずれかの締約国が危険にさらされていると安全保障理事会が決定する場合には,援助又は支援を要請する当該いずれかの締約国に対し国際連合憲章に従って援助又は支援を行うことを約束する。

 第8条
 この条約のいかなる規定も,1925年6月17日にジュネーヴで署名された窒息性ガス,毒性ガス又はこれらに類するガス及び細菌学的手段の戦争における使用の禁止に関する議定書に基づく各国の義務を限定し又は軽減するものと解してはならない。

 第9条
 締約国は,化学兵器についてその効果的な禁止が目標とされていることを確認し,化学兵器の開発,生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄のための効果的な措置について並びに兵器用化学剤の生産又は使用のため特に設計された装置及び運搬手段に係る適当な措置について早期に合意に達するため,誠実に交渉を継続することを約束する。

 第10条
 (1) 締約国は,細菌剤(生物剤)及び毒素の平和的目的のための使用に資する装置,資材並びに科学的及び技術的情報を可能な最大限度まで交換することを容易にすることを約束し,また,その交換に参加する権利を有する。締約国は,可能なときは,単独で又は他の国若しくは国際機関と共同して,疾病の予防その他の平和的目的に資するため,細菌学(生物学)に係る科学的知見の拡大及び応用に貢献することに協力する。
 (2) この条約は,締約国の経済的若しくは技術的発展又は細菌学(生物学)の平和的利用に関する国際協力を妨げないような態様で実施する。この国際協力は,この条約に従って平和的目的のため細菌剤(生物剤)及び毒素並びにこれらの加工,使用又は生産のための装置を交換することを含む。

 第11条
 いずれの締約国も,この条約の改正を提案することができる。改正は,締約国の過半数が改正を受諾した時に,受諾した締約国について効力を生ずるものとし,その後に改正を受諾する他の締約国については,その受諾の日に効力を生ずる。

 第12条
 前文の目的の実現及びこの条約の規定(化学兵器についての交渉に関する規定を含む。)の遵守を確保するようにこの条約の運用を検討するため,この条約の効力発生の5年後に又は寄託政府に対する提案により締約国の過半数が要請する場合にはそれ以前に,スイスのジュネーヴで締約国の会議を開催する。検討に際しては,この条約に関連するすべての科学及び技術の進歩を考慮するものとする。

 第13条
 (1) この条約の有効期間は,無期限とする。
 (2) 締約国は,この条約の対象である事項に関連する異常な事態が自国の至高の利益を危うくしていると認める場合には,主権を行使してこの条約から脱退する権利を有する。この権利を行使する締約国は,他のすべての締約国及び国際連合安全保障理事会に対し3箇月前にその旨を通知する。通知には,自国の至高の利益を危うくしていると認める異常な事態についても記載しなければならない。

 第14条
 (1) この条約は,署名のためにすべての国に開放される。(3)の規定に基づくこの条約の効力発生前にこの条約に署名しなかった国は,いつでもこの条約に加入することができる。
 (2) この条約は,署名国によって批准されなければならない。批准書及び加入書は,この条約により寄託政府として指定されるグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国,ソヴィエト社会主義共和国連邦及びアメリカ合衆国の政府に寄託する。
 (3) この条約は,寄託政府として指定される政府を含む22の政府が批准書を寄託した時に効力を生ずる。
 (4) この条約は,その効力発生の後に批准書又は加入書を寄託する国については,その批准書又は加入書の寄託の日に効力を生ずる。
 (5) 寄託政府は,すべての署名国及び加入国に対し,署名の日,批准書又は加入書の寄託の日,この条約の効力発生の日及び他の通知の受領を速やかに通報する。
 (6) この条約は,寄託政府が国際連合憲章第102条の規定により登録する。

 第15条
 この条約は,英語,ロシア語,フランス語,スペイン語及び中国語をひとしく正文とするものとし,寄託政府に寄託する。この条約の認証謄本は,寄託政府が署名国及び加入国の政府に送付する。

 以上の証拠として,下名は,正当に委任を受けてこの条約に署名した。

 1972年4月10日にロンドン市,モスクワ市及びワシントン市で本書3通を作成した。

  「外務省ホームページ」より

〇同じ日の過去の出来事(以前にブログで紹介した記事)

1874年(明治7)板垣退助らが高知で、日本初の政治結社「立志社」を結成する詳細
1886年(明治19)「師範学校令」が公布される詳細
「小学校令」が公布される詳細
「中学校令」が公布される詳細
1919年(大正8) 「史蹟名勝天然紀念物保存法」(大正8年法律第44号)が公布(同年6月1日施行)される詳細
「地方鉄道法」(大正8年法律第52号)が公布(施行は同年8月15日)される詳細
1988年(昭和63)瀬戸大橋が開通する詳細

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bukibouekijyouyaku01
 今日は、平成時代の2014年(平成26)に、通常兵器の国際移転(移譲)を規制する「武器貿易条約(ATT)」が発効した日です。
 「武器貿易条約」(ぶきぼうえきじょうやく)は、通常兵器の国際取引を規制するための共通基準を定めた国際条約で、英語では、「Arms Trade Treaty」、略称はATTと言います。1990年代以降、通常兵器の国際的な移転を規制するための地域的合意等の形成が進み、2006年(平成18)から国際連合において、通常兵器の移転の規制に関する高い水準の国際的な基準を規定する「武器貿易条約」に関する検討が開始され、2013年(平成25)4月2日の国連総会で採択されました。
 その後、2014年(平成26)12月24日に発効し、2022年(令和4)12月時点での締約国は113ヶ国となっています。戦車、攻撃ヘリコプター、戦闘機などを対象にし、紛争やテロで使用されないように拡散防止体制を確立するのが目的とされました。
 締結国の主要な義務は、国際貿易を管理するための国内制度を整備する、国連安保理決議や自国が当事国である国際協定に基づく義務等に違反する場合は、移転を許可しない、通常兵器が平和及び安全に寄与し又はこれを損なう可能性、国際人道法・国際人権法の重大な違反等に使用される可能性について評価し、著しい危険性がある場合は、移転を許可しない、通常兵器の流用を防止するための措置をとる、通常兵器の輸出に関する記録を保持・保存する、条約の実施のためにとられた措置等について条約事務局に報告することとなっています。
 以下に、「武器貿易条約(ATT)」の英語版原文と日本語訳を掲載しておきましたので、ご参照下さい。

〇「武器貿易条約」2013年(平成25)4月2日の国連総会で採択、2014年(平成26)12月24日発効

<英語版原文>

THE ARMS TRADE TREATY

Preamble
The States Parties to this Treaty,
Guided by the purposes and principles of the Charter of the United Nations,
Recalling Article 26 of the Charter of the United Nations which seeks to promote the establishment and maintenance of international peace and security with the least diversion for armaments of the world's human and economic resources,
Underlining the need to prevent and eradicate the illicit trade in conventional arms and to prevent their diversion to the illicit market, or for unauthorized end use and end users, including in the commission of terrorist acts,
Recognizing the legitimate political, security, economic and commercial interests of States in the international trade in conventional arms,
Reaffirming the sovereign right of any State to regulate and control conventional arms exclusively within its territory, pursuant to its own legal or constitutional system,
Acknowledging that peace and security, development and human rights are pillars of the United Nations system and foundations for collective security and recognizing that development, peace and security and human rights are interlinked and mutually reinforcing,
Recalling the United Nations Disarmament Commission Guidelines for international arms transfers in the context of General Assembly resolution 46/36H of 6 December 1991,
Noting the contribution made by the United Nations Programme of Action to Prevent, Combat and Eradicate the Illicit Trade in Small Arms and Light Weapons in All Its Aspects, as well as the Protocol against the Illicit Manufacturing of and Trafficking in Firearms, Their Parts and Components and Ammunition, supplementing the United Nations Convention against Transnational Organized Crime, and the International Instrument to Enable States to Identify and Trace, in a Timely and Reliable Manner, Illicit Small Arms and Light Weapons,
Recognizing the security, social, economic and humanitarian consequences of the illicit and unregulated trade in conventional arms, Bearing in mind that civilians, particularly women and children, account for the vast majority of those adversely affected by armed conflict and armed violence,
Recognizing also the challenges faced by victims of armed conflict and their need for adequate care, rehabilitation and social and economic inclusion, Emphasizing that nothing in this Treaty prevents States from maintaining and adopting additional effective measures to further the object and purpose of this Treaty,
Mindful of the legitimate trade and lawful ownership, and use of certain conventional arms for recreational, cultural, historical, and sporting activities, where such trade, ownership and use are permitted or protected by law,
Mindful also of the role regional organizations can play in assisting States Parties, upon request, in implementing this Treaty,
Recognizing the voluntary and active role that civil society, including non-governmental organizations, and industry can play in raising awareness of the object and purpose of this Treaty, and in supporting its implementation,
Acknowledging that regulation of the international trade in conventional arms and preventing their diversion should not hamper international cooperation and legitimate trade in materiel, equipment and technology for peaceful purposes,
Emphasizing the desirability of achieving universal adherence to this Treaty,
Determined to act in accordance with the following principles;

Principles
-The inherent right of all States to individual or collective self-defense as recognized in Article 51 of the Charter of the United Nations;
-The settlement of international disputes by peaceful means in such a manner that international peace and security, and justice, are not endangered in accordance with Article 2 (3) of the Charter of the United Nations;
- Refraining in their international relations from the threat or use of force against the territorial integrity or political independence of any State, or in any other manner inconsistent with the purposes of the United Nations in accordance with Article 2 ( 4) of the Charter of the United Nations;
- Non-intervention in matters which are essentially within the domestic jurisdiction of any State in accordance with Article 2 (7) of the Charter of the United Nations;
-Respecting and ensuring respect for international humanitarian law in accordance with, inter alia, the Geneva Conventions of 1949, and respecting and ensuring respect for human rights in accordance with, inter alia, the Charter of the United Nations and the Universal Declaration of Human Rights;
- The responsibility of all States, in accordance with their respective international obligations, to effectively regulate the international trade in conventional arms, and to prevent their diversion, as well as the primary responsibility of all States in establishing and implementing their respective national control systems;
- The respect for the legitimate interests of States to acquire conventional arms to exercise their right to self-defence and for peacekeeping operations; and to produce, export, import and transfer conventional arms;
- Implementing this Treaty m a consistent, objective and non-discriminatory manner,
Have agreed as follows:

Article 1 Object and Purpose
The object of this Treaty is to:
- Establish the highest possible common international standards for regulating or improving the regulation of the international trade in conventional arms;
- Prevent and eradicate the illicit trade in conventional arms and prevent their diversion;
for the purpose of:
- Contributing to international and regional peace, security and stability;
- Reducing human suffering;
-Promoting cooperation, transparency and responsible action by States Parties in the international trade in conventional arms, thereby building confidence among States Parties.

Article 2 Scope
1. This Treaty shall apply to all conventional arms within the following categories:
(a) Battle tanks;
(b) Armoured combat vehicles;
(c) Large-calibre artillery systems;
(d) Combat aircraft;
(e) Attack helicopters;
(f) Warships;
(g) Missiles and missile launchers; and
(h) Small arms and light weapons.
2. For the purposes of this Treaty, the activities of the international trade comprise export, import, transit, trans-shipment and brokering, hereafter referred to as "transfer".
3. This Treaty shall not apply to the international movement of conventional arms by, or on behalf of, a State Party for its use provided that the conventional arms remain under that State Party's ownership.

Article 3 Ammunition/Munitions
Each State Party shall establish and maintain a national control system to regulate the export of ammunition/munitions fired, launched or delivered by the conventional arms covered under Article 2 (1 ), and shall apply the provisions of Article 6 and Article 7 prior to authorizing the export of such ammunition/munitions.

Article 4 Parts and Components
Each State Party shall establish and maintain a national control system to regulate the export of parts and components where the export is in a form that provides the capability to assemble the conventional arms covered under Article 2 (1) and shall apply the provisions of Article 6 and Article 7 prior to authorizing the export of such parts and components.

Article 5 General Implementation
1. Each State Party shall implement this Treaty in a consistent, objective and non discriminatory manner, bearing in mind the principles referred to in this Treaty.
2. Each State Party shall establish and maintain a national control system, including a national control list, in order to implement the provisions of this Treaty.
3. Each State Party is encouraged to apply the provisions of this Treaty to the broadest range of conventional arms. National definitions of any of the categories covered under Article 2 (1) (a)-(g) shall not cover less than the descriptions used in the United Nations Register of Conventional Arms at the time of entry into force of this Treaty. For the category covered under Article 2 (1) (h), national definitions shall not cover less than the descriptions used in relevant United Nations instruments at the time of entry into force of this Treaty.

4. Each State Party, pursuant to its national laws, shall provide its national control list to the Secretariat, which shall make it available to other States Parties. States Parties are encouraged to make their control lists publicly available.

5. Each State Party shall take measures necessary to implement the provisions of this Treaty and shall designate competent national authorities in order to have an effective and transparent national control system regulating the transfer of conventional arms covered under Article 2 (1) and of items covered under Article 3 and Article 4.

6. Each State Party shall designate one or more national points of contact to exchange information on matters related to the implementation of this Treaty. Each State Party shall notify the Secretariat, established under Article 18, of its national point(s) of contact and keep the information updated.

Article 6 Prohibitions
1. A State Party shall not authorize any transfer of conventional arms, covered under Article 2 (1) or of items covered under Article 3 or Article 4, if the transfer would violate its obligations under measures adopted by the United Nations Security Council acting under Chapter VII of the Charter of the United Nations, in particular arms embargoes.
2. A State Party shall not authorize any transfer of conventional arms covered under Article 2 (1) or of items covered under Article 3 or Article 4, if the transfer would violate its relevant international obligations under international agreements to which it is a Party, in particular those relating to the transfer of, or illicit trafficking in, conventional arms.
3. A State Party shall not authorize any transfer of conventional arms covered under Article 2 (1) or of items covered under Article 3 or Article 4, if it has knowledge at the time of authorization that the arms or items would be used in the commission of genocide, crimes against humanity, grave breaches of the Geneva Conventions of 1949, attacks directed against civilian objects or civilians protected as such, or other war crimes as defined by international agreements to which it is a Party.

Article 7 Export and Export Assessment
1. If the export is not prohibited under Article 6, each exporting State Party, prior to authorization of the export of conventional arms covered under Article 2 (1) or of items covered under Article 3 or Article 4, under its jurisdiction and pursuant to its national control system, shall, in an objective and non-discriminatory manner, taking into account relevant factors, including information provided by the importing State in accordance with Article 8 (1), assess the potential that the conventional arms or items:
(a) would contribute to or undermine peace and security;
(b) could be used to:
(i) commit or facilitate a serious violation of international humanitarian law;
(ii) commit or facilitate a serious violation of international human rights law;
(iii) commit or facilitate an act constituting an offense under international conventions or protocols relating to terrorism to which the exporting State is a Party; or
(iv) commit or facilitate an act constituting an offense under international conventions or protocols relating to transnational organized crime to which the exporting State is a Party.
2. The exporting State Party shall also consider whether there are measures that could be undertaken to mitigate risks identified in (a) or (b) in paragraph 1, such as confidence-building measures or jointly developed and agreed programmes by the exporting and importing States.
3. If, after conducting this assessment and considering available mitigating measures, the exporting State Party determines that there is an overriding risk of any of the negative consequences in paragraph 1, the exporting State Party shall not authorize the export.
4. The exporting State Party, in making this assessment, shall take into account the risk of the conventional arms covered under Article 2 ( 1) or of the items covered under Article 3 or Article 4 being used to commit or facilitate serious acts of gender-based violence or serious acts of violence against women and children.
5. Each exporting State Party shall take measures to ensure that all authorizations for the export of conventional arms covered under Article 2 ( 1) or of items covered under Article 3 or Article 4 are detailed and issued prior to the export.
6. Each exporting State Party shall make available appropriate information about the authorization in question, upon request, to the importing State Party and to the transit or trans-shipment States Parties, subject to its national laws, practices or policies.
7. If, after an authorization has been granted, an exporting State Party becomes aware of new relevant information, it is encouraged to reassess the authorization after consultations, if appropriate, with the importing State.

Article 8 Import
1. Each importing State Party shall take measures to ensure that appropriate and relevant information is provided, upon request, pursuant to its national laws, to the exporting State Party, to assist the exporting State Party in conducting its national export assessment under Article 7. Such measures may include end use or end user documentation.
2. Each importing State Party shall take measures that will allow it to regulate, where necessary, imports under its jurisdiction of conventional arms covered under Article 2 (1). Such measures may include import systems.
3. Each importing State Party may request information from the exporting State Party concerning any pending or actual export authorizations where the importing State Party is the country of final destination.

Article 9 Transit or trans-shipment
Each State Party shall take appropriate measures to regulate, where necessary and feasible, the transit or trans-shipment under its jurisdiction of conventional arms covered under Article 2 (1) through its territory m accordance with relevant international law.

Article 10 Brokering
Each State Party shall take measures, pursuant to its national laws, to regulate brokering taking place under its jurisdiction for conventional arms covered under Article 2 (1). Such measures may include requiring brokers to register or obtain written authorization before engaging in brokering.

Article 11 Diversion
1. Each State Party involved in the transfer of conventional arms covered under Article 2 (1) shall take measures to prevent their diversion.
2. The exporting State Party shall seek to prevent the diversion of the transfer of conventional arms covered under Article 2 (1) through its national control system, established in accordance with Article 5 (2), by assessing the risk of diversion of the export and considering the establishment of mitigation measures such as confidence-building measures or jointly developed and agreed programmes by the exporting and importing States. Other prevention measures may include, where appropriate: examining parties involved in the export, requiring additional documentation, certificates, assurances, not authorizing the export or other appropriate measures.
3. Importing, transit, trans-shipment and exporting States Parties shall cooperate and exchange information, pursuant to their national laws, where appropriate and feasible, in order to mitigate the risk of diversion of the transfer of conventional arms covered under Article 2 ( 1 ).
4. If a State Party detects a diversion of transferred conventional arms covered under Article 2 (1 ), the State Party shall take appropriate measures, pursuant to its national laws and in accordance with international law, to address such diversion. Such measures may include alerting potentially affected States Parties, examining diverted shipments of such conventional arms covered under Article 2 (1), and taking follow-up measures through investigation and law enforcement.
5. In order to better comprehend and prevent the diversion of transferred conventional arms covered under Article 2 (1 ), States Parties are encouraged to share relevant information with one another on effective measures to address diversion. Such information may include information on illicit activities including corruption, international trafficking routes, illicit brokers, sources of illicit supply, methods of concealment, common points of dispatch, or destinations used by organized groups engaged in diversion.
6. States Parties are encouraged to report to other States Parties, through the Secretariat, on measures taken in addressing the diversion of transferred conventional arms covered under Article 2 ( 1 ).

Article 12 Record keeping
1. Each State Party shall maintain national records, pursuant to its national laws and regulations, of its issuance of export authorizations or its actual exports of the conventional arms covered under Article 2 (1 ).
2. Each State Party is encouraged to maintain records of conventional arms covered under Article 2 (1) that are transferred to its territory as the final destination or that are authorized to transit or trans-ship territory under its jurisdiction.
3. Each State Party is encouraged to include in those records: the quantity, value, model/type, authorized international transfers of conventional arms covered under Article 2 ( 1 ), conventional arms actually transferred, details of exporting State(s), importing State(s), transit and trans-shipment State(s), and end users, as appropriate.
4. Records shall be kept for a minimum of ten years.

Article 13 Reporting
1. Each State Party shall, within the first year after entry into force of this Treaty for that State Party, in accordance with Article 22, provide an initial report to the Secretariat of measures undertaken in order to implement this Treaty, including national laws, national control lists and other regulations and administrative measures. Each State Party shall report to the Secretariat on any new measures undertaken in order to implement this Treaty, when appropriate. Reports shall be made available, and distributed to States Parties by the Secretariat.
2. States Parties are encouraged to report to other States Parties, through the Secretariat, information on measures taken that have been proven effective in addressing the diversion of transferred conventional arms covered under Article 2 (1).
3. Each State Party shall submit annually to the Secretariat by 31 May a report for the preceding calendar year concerning authorized or actual exports and imports of conventional arms covered under Article 2 (1). Reports shall be made available, and distributed to States Parties by the Secretariat. The report submitted to the Secretariat may contain the same information submitted by the State Party to relevant United Nations frameworks, including the United Nations Register of Conventional Arms. Reports may exclude commercially sensitive or national security information.

Article 14 Enforcement
Each State Party shall take appropriate measures to enforce national laws and regulations that implement the provisions of this Treaty.

Article 15 International Cooperation
1. States Parties shall cooperate with each other, consistent with their respective security interests and national laws, to effectively implement this Treaty.
2. States Parties are encouraged to facilitate international cooperation, including exchanging information on matters of mutual interest regarding the implementation and application of this Treaty pursuant to their respective security interests and national laws.
3. States Parties are encouraged to consult on matters of mutual interest and to share information, as appropriate, to support the implementation of this Treaty.
4. States Parties are encouraged to cooperate, pursuant to their national laws, in order to assist national implementation of the provisions ofthis Treaty, including through sharing information regarding illicit activities and actors and in order to prevent and eradicate diversion of conventional arms covered under Article 2 (1).
5. States Parties shall, where jointly agreed and consistent with their national laws, afford one another the widest measure of assistance in investigations, prosecutions and judicial proceedings in relation to violations of national measures established pursuant to this Treaty.
6. States Parties are encouraged to take national measures and to cooperate with each other to prevent the transfer of conventional arms covered under Article 2 (1) becoming subject to corrupt practices.
7. States Parties are encouraged to exchange experience and information on lessons learned in relation to any aspect of this Treaty.

Article 16 International Assistance
1. In implementing this Treaty, each State Party may seek assistance including legal or legislative assistance, institutional capacity-building, and technical, material or financial assistance. Such assistance may include stockpile management, disarmament, demobilization and reintegration programmes, model legislation, and effective practices for implementation. Each State Party in a position to do so shall provide such assistance, upon request.
2. Each State Party may request, offer or receive assistance through, inter alia, the United Nations, international, regional, subregional or national organizations, non-governmental organizations, or on a bilateral basis.
3. A voluntary trust fund shall be established by States Parties to assist requesting States Parties requiring international assistance to implement this Treaty. Each State Party is encouraged to contribute resources to the fund.

Article 17 Conference of States Parties
1. A Conference of States Parties shall be convened by the provisional Secretariat, established under Article 18, no later than one year following the entry into force of this Treaty and thereafter at such other times as may be decided by the Conference of States Parties.
2. The Conference of States Parties shall adopt by consensus its rules of procedure at its first session.
3. The Conference of States Parties shall adopt financial rules for itself as well as governing the funding of any subsidiary bodies it may establish as well as financial provisions governing the functioning of the Secretariat. At each ordinary session, it shall adopt a budget for the financial period until the next ordinary session.
4. The Conference of States Parties shall:
(a) Review the implementation of this Treaty, including developments in the field of conventional arms;
(b) Consider and adopt recommendations regarding the implementation and operation of this Treaty, in particular the promotion of its universality;
(c) Consider amendments to this Treaty in accordance with Article 20;
(d) Consider issues arising from the interpretation of this Treaty;
(e) Consider and decide the tasks and budget of the Secretariat;
(f) Consider the establishment of any subsidiary bodies as may be necessary to improve the functioning of this Treaty; and
(g) Perform any other function consistent with this Treaty.
5. Extraordinary meetings of the Conference of States Parties shall be held at such other times as may be deemed necessary by the Conference of States Parties, or at the written request of any State Party provided that this request is supported by at least two-thirds of the States Parties.

Article 18 Secretariat
1. This Treaty hereby establishes a Secretariat to assist States Parties in the effective implementation of this Treaty. Pending the first meeting of the Conference of States Parties, a provisional Secretariat will be responsible for the administrative functions covered under this Treaty.
2. The Secretariat shall be adequately staffed. Staff shall have the necessary expertise to ensure that the Secretariat can effectively undertake the responsibilities described in paragraph 3.
3. The Secretariat shall be responsible to States Parties. Within a minimized structure, the Secretariat shall undertake the following responsibilities:
(a) Receive, make available and distribute the reports as mandated by this Treaty;
(b) Maintain and make available to States Parties the list of national points of contact;
(c) Facilitate the matching of offers of and requests for assistance for Treaty implementation and promote international cooperation as requested;
(d) Facilitate the work of the Conference of States Parties, including making arrangements and providing the necessary services for meetings under this Treaty; and
(e) Perform other duties as decided by the Conferences of States Parties.
Article 19 Dispute Settlement
1. States Parties shall consult and, by mutual consent, cooperate to pursue settlement of any dispute that may arise between them with regard to the interpretation or application of this Treaty including through negotiations, mediation, conciliation, judicial settlement or other peaceful means.
2. States Parties may pursue, by mutual consent, arbitration to settle any dispute between them, regarding issues concerning the interpretation or application of this Treaty.

Article 20 Amendments
1. Six years after the entry into force of this Treaty, any State Party may propose an amendment to this Treaty. Thereafter, proposed amendments may only be considered by the Conference of States Parties every three years.
2. Any proposal to amend this Treaty shall be submitted in writing to the Secretariat, which shall circulate the proposal to all States Parties, not less than 180 days before the next meeting of the Conference of States Parties at which amendments may be considered pursuant to paragraph 1. The amendment shall be considered at the next Conference of States Parties at which amendments may be considered pursuant to paragraph 1 if, no later than 120 days after its circulation by the Secretariat, a majority of States Parties notify the Secretariat that they support consideration of the proposal.
3. The States Parties shall make every effort to achieve consensus on each amendment. If all efforts at consensus have been exhausted, and no agreement reached, the amendment shall, as a last resort, be adopted by a three-quarters majority vote of the States Parties present and voting at the meeting of the Conference of States Parties. For the purposes of this Article, States Parties present and voting means States Parties present and casting an affirmative or negative vote. The Depositary shall communicate any adopted amendment to all States Parties.
4. An amendment adopted in accordance with paragraph 3 shall enter into force for each State Party that has deposited its instrument of acceptance for that amendment, ninety days following the date of deposit with the Depositary of the instruments of acceptance by a majority of the number of States Parties at the time of the adoption of the amendment. Thereafter, it shall enter into force for any remaining State Party ninety days following the date of deposit of its instrument of acceptance for that amendment.

Article 21 Signature, Ratification, Acceptance, Approval or Accession
1. This Treaty shall be open for signature at the United Nations Headquarters in New York by all States from 3 June 2013 until its entry into force.
2. This Treaty is subject to ratification, acceptance or approval by each signatory State.
3. Following its entry into force, this Treaty shall be open for accession by any State that has not signed the Treaty.
4. The instruments of ratification, acceptance, approval or accession shall be deposited with the Depositary.

Article 22 Entry into Force
1. This Treaty shall enter into force ninety days following the date of the deposit of the fiftieth instrument of ratification, acceptance or approval with the Depositary.
2. For any State that deposits its instrument of ratification, acceptance, approval or accession subsequent to the entry into force of this Treaty, this Treaty shall enter into force for that State ninety days following the date of deposit of its instrument of ratification, acceptance, approval or accession.

Article 23 Provisional Application
Any State may at the time of signature or the deposit of its instrument of ratification, acceptance, approval or accession, declare that it will apply provisionally Article 6 and Article 7 pending the entry into force of this Treaty for that State.

Article 24 Duration and Withdrawal
1. This Treaty shall be of unlimited duration.
2. Each State Party shall, in exercising its national sovereignty, have the right to withdraw from this Treaty. It shall give notification of such withdrawal to the Depositary, which shall notify all other States Parties. The notification of withdrawal may include an explanation of the reasons for its withdrawal. The notice of withdrawal shall take effect ninety days after the receipt of the notification of withdrawal by the Depositary, unless the notification of withdrawal specifies a later date.
3. A State shall not be discharged, by reason of its withdrawal, from the obligations arising from this Treaty while it was a Party to this Treaty, including any financial obligations that it may have accrued.

Article 25 Reservations
1. At the time of signature, ratification, acceptance, approval or accession, each State may formulate reservations, unless the reservations are incompatible with the object and purpose of this Treaty.
2. A State Party may withdraw its reservation at any time by notification to this effect addressed to the Depositary.

Article 26 Relationship with other international agreements
1. The implementation of this Treaty shall not prejudice obligations undertaken by States Parties with regard to existing or future international agreements, to which they are parties, where those obligations are consistent with this Treaty.
2. This Treaty shall not be cited as grounds for voiding defence cooperation agreements concluded between States Parties to this Treaty.

Article 27 Depositary
The Secretary-General of the United Nations shall be the Depositary of this Treaty.

Article 28 Authentic Texts
The original text of this Treaty, of which the Arabic, Chinese, English, French, Russian and Spanish texts are equally authentic, shall be deposited with the Secretary-General of the United Nations.

DONE AT NEW YORK, this second day of April, two thousand and thirteen.

    「ウィキソース」より

<日本語訳>

武器貿易条約

前文
 この条約の締約国は、
 国際連合憲章の目的及び原則に従い、
 世界の人的及び経済的資源を軍備のために転用することを最も少なくして国際の平和及び安全の確立及び維持を促進することを目的とする国際連合憲章第二十六条の規定を想起し、
 通常兵器の不正な取引を防止し、及び根絶するとともに、通常兵器の不正な市場への流出又は認められていない最終用途への若しくは認められていない最終使用者による流用(テロリズムの行為の実行への流用を含む。)を防止することの必要性を強調し、
 通常兵器の国際貿易に関する各国の政治上、安全保障上、経済上及び商業上の正当な利益を認識し、
 全ての国が専ら自国の領域内で自国の法律上又は憲法上の制度により通常兵器を規制し、及び管理する主権的権利を有することを再確認し、
 平和及び安全、開発並びに人権が国際連合及びその関連機関の活動の支柱を成し、並びに集団的安全保障の基盤であることを認め、また、開発、平和及び安全並びに人権が相互に関連し、かつ、相互に補強し合うものであることを認識し、
 千九百九十一年十二月六日の国際連合総会決議第三十六号H(第四十六回会期)に関連する国際的な武器の移転に関する国際連合軍縮委員会の指針を想起し、
 あらゆる側面において小型武器及び軽兵器の不正な取引を防止し、これと戦い、及びこれを根絶するための国際連合行動計画、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する銃器並びにその部品及び構成部分並びに弾薬の不正な製造及び取引の防止に関する議定書並びに各国が不正な小型武器及び軽兵器を適時に及び信頼することができる方法で特定し、及び追跡することを可能とするための国際文書による貢献に留意し、
 通常兵器の不正な及び規制されていない取引が及ぼす安全保障上、社会上、経済上及び人道上の影響を認識し、
 文民(特に女性及び児童)が、武力紛争及び武力による暴力によって悪影響を受ける者の大多数を占めることに留意し、
 武力紛争の犠牲者が直面する課題並びにこれらの者が十分な看護、リハビリテーション並びに社会的及び経済的に包容されることを必要とすることを認識し、
 この条約のいかなる規定も、各国がこの条約の趣旨及び目的を促進するための追加的かつ効果的な措置を維持し、及び採用することを妨げるものではないことを強調し、
 レクリエーション、文化、歴史及びスポーツに係る活動のためのある種の通常兵器の正当な貿易並びに合法的な所有及び使用(当該貿易、所有及び使用が法律により許可され、又は保護される場合に限る。)に留意し、
 締約国によるこの条約の実施に当たり要請に応じて当該締約国を援助する上で、地域的機関が果たすことができる役割に留意し、
 この条約の趣旨及び目的についての意識を高め、並びにその実施を支援する上で、市民社会(非政府機関を含む。)及び産業が果たすことができる自発的及び積極的な役割を認識し、
通常兵器の国際貿易の規制及び通常兵器の流用の防止が、平和的目的のための国際協力並びに物 品、装置及び技術の正当な貿易を妨げるべきでないことを認め、
 この条約への普遍的な参加が達成されることが望ましいことを強調し、
 全ての国が国際連合憲章第五十一条の規定において認められる個別的又は集団的自衛の固有の権利を有し、 同憲章第二条3に定めるところにより国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決し、 同条4に定めるところにより国際関係において武力による威嚇又は武力の行使をいかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎み、 同条7に定めるところにより本質上いずれかの国の国内管轄権内にある事項に干渉せず、 特に千九百四十九年のジュネーヴ諸条約に定めるところにより国際人道法を尊重しかつその尊重を確保するとともに、特に同憲章及び世界人権宣言に定めるところにより人権を尊重しかつその尊重を確保し、
 全ての国がそれぞれの国際的義務に基づく通常兵器の国際貿易の効果的な規制及びその流用の防止の責任並びにそれぞれの国内的な管理制度の確立及び実施の第一義的な責任を有し、 自衛の権利の行使及び平和維持活動のための通常兵器の取得並びに通常兵器の生産、輸出、輸入及び移転を行う各国の正当な利益を尊重し、 一貫性があり、客観的かつ無差別な方法でこの条約を実施するという原則に従って行動することを決意して、
 次のとおり協定した。

第一条 趣旨及び目的
 この条約は、国際的及び地域的な平和、安全及び安定に寄与し、人類の苦しみを軽減し、並びに通常兵器の国際貿易における締約国間の協力、透明性及び責任ある行動を促進し、もって締約国間の信頼を醸成するため、通常兵器の国際貿易を規制し、又はその規制を改善するための可能な最高水準の共通の国際的基準を確立すること並びに通常兵器の不正な取引を防止し、及び根絶し、並びに通常兵器の流用を防止することを目的とする。

第二条 適用範囲
1 この条約は、次の区分の全ての通常兵器について適用する。
 (a) 戦車
 (b) 装甲戦闘車両
 (c) 大口径火砲システム
 (d) 戦闘用航空機
 (e) 攻撃ヘリコプター
 (f) 軍艦
 (g) ミサイル及びその発射装置
 (h) 小型武器及び軽兵器
2 この条約の適用上、国際貿易の活動は、輸出、輸入、通過、積替え及び仲介から成り、以下「移転」という。
3 この条約は、締約国が使用する通常兵器の国際的な移動であって、当該締約国によって又は当該締約国のために行われるものについては、適用しない。ただし、当該通常兵器が引き続き当該締約国の所有の下にある場合に限る。

第三条 弾薬類
 締約国は、前条1の規定の対象となる通常兵器により発射され、打ち上げられ、又は投射される弾薬類の輸出を規制するための国内的な管理制度を確立し、及び維持し、並びに当該弾薬類の輸出を許可する前に第六条及び第七条の規定を適用する。

第四条 部品及び構成品
 締約国は、部品及び構成品の輸出が第二条1の規定の対象となる通常兵器を組み立てる能力を提供する方法で行われる場合において当該部品及び構成品の輸出を規制するための国内的な管理制度を確立し、及び維持し、並びに当該部品及び構成品の輸出を許可する前に第六条及び第七条の規定を適用する。

第五条 実施全般
1 締約国は、この条約に規定する原則に留意して、一貫性があり、客観的かつ無差別な方法でこの条約を実施する。
2 締約国は、この条約の規定を実施するため、国内的な管理制度(国内的な管理リストを含む。)を確立し、及び維持する。
3 締約国は、この条約の規定を最も広い範囲の通常兵器について適用することが奨励される。第二条1(a)から(g)までの規定の対象となるいずれの区分についても、各国の定義は、この条約の効力発生時における国際連合軍備登録制度において用いられるものよりも狭い範囲の通常兵器を対象とするものであってはならない。第二条1(h)の規定の対象となる区分については、各国の定義は、この条約の効力発生時における国際連合の関連文書において用いられるものよりも狭い範囲の通常兵器を対象とするものであってはならない。
4 締約国は、自国の国内法に従い、その国内的な管理リストを事務局に提供し、事務局は、これを他の締約国の利用に供する。締約国は、その管理リストを公の利用に供することが奨励される。
5 締約国は、この条約の規定を実施するために必要な措置をとるものとし、第二条1の規定の対象となる通常兵器並びに第三条及び前条の規定の対象となる物品の移転を規制する効果的な及び透明性のある国内的な管理制度を備えるため、権限のある当局を指定する。
6 締約国は、この条約の実施に関連する事項に関する情報を交換するための一又は二以上の自国の連絡先を指定する。締約国は、第十八条の規定により設置される事務局に対し、自国の連絡先を通報し、及びその情報を常に最新のものとする。

第六条 禁止
1 締約国は、第二条1の規定の対象となる通常兵器又は第三条若しくは第四条の規定の対象となる物品の移転が、国際連合憲章第七章の規定に基づいて行動する国際連合安全保障理事会によって採択された措置に基づく自国の義務(特に武器の輸出入禁止)に違反する場合には、当該移転を許可してはならない。
2 締約国は、第二条1の規定の対象となる通常兵器又は第三条若しくは第四条の規定の対象となる物品の移転が、自国が当事国である国際協定に基づく自国の関連する国際的な義務(特に、通常兵器の移転又は不正な取引に関連するもの)に違反する場合には、当該移転を許可してはならない。
3 締約国は、第二条1の規定の対象となる通常兵器又は第三条若しくは第四条の規定の対象となる物品の移転について許可を与えようとする時において、当該通常兵器又は物品が集団殺害、人道に対する犯罪、千九百四十九年のジュネーヴ諸条約に対する重大な違反行為、民用物若しくは文民として保護されるものに対する攻撃又は自国が当事国である国際協定に定める他の戦争犯罪の実行に使用されるであろうことを知っている場合には、当該移転を許可してはならない。

第七条 輸出及び輸出評価
1 輸出が前条の規定により禁止されない場合には、輸出を行う締約国は、第二条1の規定の対象となる通常兵器又は第三条若しくは第四条の規定の対象となる物品の輸出であって、自国の管轄の下で、かつ、その国内的な管理制度に従って行われるものについて許可を与えようとする前に、関連要素(輸入を行う締約国から次条1の規定に従って提供される情報を含む。)を考慮し、客観的かつ無差別な方法で、当該通常兵器又は物品が有する次の可能性について評価を行う。
 (a) 平和及び安全に寄与し、又はこれらを損なう可能性
 (b) 次のいずれかの目的のために使用される可能性
  (i) 国際人道法の重大な違反を犯し、又はこれを助長すること。
  (ii) 国際人権法の重大な違反を犯し、又はこれを助長すること。
  (iii) 当該輸出を行う国が当事国であるテロリズムに関する国際条約又は議定書に基づく犯罪を構成する行為を行い、又は助長すること。
  (iv) 当該輸出を行う国が当事国である国際的な組織犯罪に関する国際条約又は議定書に基づく犯罪を構成する行為を行い、又は助長すること。
2 輸出を行う締約国は、1(a)又は(b)の規定において特定される危険性を緩和するために実施され得る措置、例えば、信頼の醸成のための措置又は輸出を行う国及び輸入を行う国が共同で作成し、合意した計画があるか否かを検討する。
3 輸出を行う締約国は、1の評価を行い、及び危険性の緩和のために実施され得る措置を検討した後、1に規定するいずれかの否定的な結果を生ずる著しい危険性が存在すると認める場合には、当該輸出を許可してはならない。
4 輸出を行う締約国は、1の評価を行うに当たり、第二条1の規定の対象となる通常兵器又は第三条若しくは第四条の規定の対象となる物品が性別に基づく重大な暴力行為又は女性及び児童に対する重大な暴力行為を行い、又は助長するために使用される危険性を考慮する。
5 輸出を行う締約国は、第二条1の規定の対象となる通常兵器又は第三条若しくは第四条の規定の対象となる物品の輸出のための全ての許可が、詳細なものであり、かつ、当該輸出に先立って与えられることを確保するための措置をとる。
6 輸出を行う締約国は、自国の法律、慣行又は政策に従うことを条件として、輸入を行う締約国及び通過又は積替えが行われる締約国の要請に応じ、当該輸出に係る許可に関する適切な情報を利用に供する。
7 輸出を行う締約国は、許可を与えた後に新たな関連する情報を知った場合には、適当なときは輸入を行う国との協議の後、当該許可について評価を見直すことが奨励される。

第八条 輸入
1 輸入を行う締約国は、輸出を行う締約国が前条の規定に基づき国内の輸出評価を行うことを支援するため、輸出を行う締約国の要請に応じ、適切な及び関連する情報が自国の国内法に従って提供されることを確保するための措置をとる。その措置には、最終用途又は最終使用者に係る文書の提供を含めることができる。
2 輸入を行う締約国は、第二条1の規定の対象となる通常兵器の輸入であって自国の管轄の下で行われるものを必要なときに規制することを可能とする措置をとる。その措置には、輸入に係る諸制度の整備を含めることができる。
3 輸入を行う締約国は、自国が最終仕向国である場合には、輸出を行う締約国に対し、検討中の又は既に与えられた輸出許可に関する情報を要請することができる。

第九条 通過又は積替え
 締約国は、関連国際法に従い、必要かつ実行可能な場合には、第二条1の規定の対象となる通常兵器の通過又は積替えであって、自国の管轄の下で行われるものを規制するための適切な措置をとる。

第十条 仲介
 締約国は、自国の国内法に従い、第二条1の規定の対象となる通常兵器の仲介であって自国の管轄の下で行われるものを規制するための措置をとる。その措置には、仲介者に対し、仲介に従事する前に登録又は書面による許可の取得を要求することを含めることができる。

第十一条 流用
1 第二条1の規定の対象となる通常兵器の移転に関与する締約国は、当該通常兵器の流用を防止するための措置をとる。
2 輸出を行う締約国は、当該輸出についての流用の危険性を評価すること並びに信頼の醸成のための措置、当該輸出を行う国及び輸入を行う国が共同で作成し、合意した計画等の危険性の緩和のための措置が実施されるか否かを検討することにより、第五条2の規定に従って確立される国内的な管理制度を通じ、第二条1の規定の対象となる通常兵器の移転についての流用を防止するよう努める。防止のための他の措置には、適当な場合には、当該輸出に関与する当事者の調査、追加的な文書、証明書及び保証の要求、輸出を許可しないことその他の適切な措置を含めることができる。
25 3 輸入を行う締約国、通過が行われる締約国、積替えが行われる締約国及び輸出を行う締約国は、自国の国内法に従い、適当かつ実行可能な場合には、第二条1の規定の対象となる通常兵器の移転についての流用の危険性を緩和するため、協力し、及び情報を交換する。
4 締約国は、第二条1の規定の対象となる通常兵器であって移転されたものの流用を探知する場合には、自国の国内法及び国際法に従い、当該流用に対処するための適切な措置をとる。その措置には、影響を受ける可能性がある締約国に警報を発すること、仕向地が変更された当該通常兵器の貨物を調査すること並びに捜査及び法令の実施を通じて事後措置をとることを含めることができる。
5 締約国は、第二条1の規定の対象となる通常兵器であって移転されるものの流用の更なる把握及び防止のため、流用に対処するための効果的な措置について関連する情報を相互に共有することが奨励される。当該情報は、不正な活動(腐敗行為、国際的な取引の経路、不正な仲介者、不正な供給源、秘匿のための方法、一般的な発送地点又は組織された集団が従事する流用における仕向地を含む。)に関する情報を含み得る。
6 締約国は、第二条1の規定の対象となる通常兵器であって移転されるものの流用に対処するに当たってとられた措置について、事務局を通じ他の締約国に報告することが奨励される。

第十二条 記録の保存
1 締約国は、自国の国内法令に従い、第二条1の規定の対象となる通常兵器の輸出許可の発給又は実際の輸出に関する国の記録を保持する。
2 締約国は、第二条1の規定の対象となる通常兵器であって、最終仕向地として自国の領域に移転されたもの又はその管轄の下にある領域を通過し、若しくは当該領域において積み替えることを許可されたものについて、記録を保持することが奨励される。
3 締約国は、適当な場合には、1及び2に規定する記録に、第二条1の規定の対象となる通常兵器の数量、価値、モデル又は型式及び許可された国際的な移転、実際に移転された通常兵器並びに輸出を行う国、輸入を行う国、通過又は積替えが行われる国及び最終使用者の詳細を含めることが奨励される。
4 記録は、少なくとも十年間、保存するものとする。

第十三条 報告
1 締約国は、この条約が第二十二条の規定に従い自国について効力を生じた後一年以内に、この条約の実施のためにとられた措置(国内法、国内的な管理リスト並びに他の規則及び行政措置を含む。)について事務局に最初の報告を提出する。締約国は、適当な場合には、この条約の実施のためにとられた新たな措置について事務局に報告する。これらの報告は、閲覧することができるものとし、事務局が締約国に配布する。
2 締約国は、第二条1の規定の対象となる通常兵器であって移転されるものの流用に対処する上で効果的であることが判明した措置に関する情報を事務局を通じ他の締約国に報告することが奨励される。
3 締約国は、毎年五月三十一日までに、第二条1の規定の対象となる通常兵器の前暦年における許可された又は実際の輸出及び輸入に関する報告を事務局に提出する。報告は、閲覧することができるものとし、事務局が締約国に配布する。事務局に提出される報告には、当該報告を提出する締約国が関連する国際連合の枠組み(国際連合軍備登録制度を含む。)に提出した情報と同一の情報を含めることができる。報告には、商業上機微な情報又は国家の安全保障に関する情報を含めないことができる。

第十四条 執行
 締約国は、この条約の規定を実施する国内法令を執行するための適切な措置をとる。

第十五条 国際協力
1 締約国は、それぞれの安全保障上の利益及び国内法に反することなく、この条約を効果的に実施するために相互に協力する。
2 締約国は、国際協力を促進すること(それぞれの安全保障上の利益及び国内法に基づきこの条約の実施及び適用に関する相互の関心事項について情報を交換することを含む。)が奨励される。
3 締約国は、相互の関心事項について協議すること及び適当な場合にはこの条約の実施を支援するために情報を共有することが奨励される。
4 締約国は、自国の国内法に従い、この条約の規定の各国における実施の援助(不正な活動及びこれを行う者に関する情報の共有を通じて行われるものを含む。)のため並びに第二条1の規定の対象となる通常兵器の流用の防止及び根絶のために協力することが奨励される。
5 締約国は、相互に合意する場合には、自国の国内法に反することなく、この条約に従ってとられる各国の措置の違反に関する捜査、訴追及び司法手続について相互に最大限の援助を与える。
6 締約国は、第二条1の規定の対象となる通常兵器の移転が腐敗行為の対象となることを防止するため、国内措置をとり、及び相互に協力することが奨励される。
7 締約国は、この条約のあらゆる側面について得られた教訓に関する経験を共有し、及び情報を交換することが奨励される。

第十六条 国際的援助
1 締約国は、この条約を実施するに当たり、援助(司法上又は立法上の援助、制度上の能力の構築及び技術的、物的又は財政的な援助を含む。)を求めることができる。求めることができる援助には、貯蔵管理、武装解除、動員解除及び社会復帰の計画、法令のひな型並びに条約の実施の効果的な方法に関するものが含まれる。このような援助を提供することができる締約国は、要請に応じて当該援助を提供する。
2 締約国は、特に、国際連合、国際的、地域的若しくは小地域的な機関、国の機関若しくは非政府機関を通じて又は二国間で、援助を要請し、提案し、又は受けることができる。
3 この条約を実施するための国際的な援助を要請する締約国を援助するため、締約国により任意の信託基金が設置される。締約国は、当該基金に拠出することが奨励される。

第十七条 締約国会議
1 締約国会議は、次条の規定により設置される暫定事務局によりこの条約の効力発生の後一年以内に招集され、その後は締約国会議によって決定される時に招集される。
2 締約国会議は、第一回会合においてコンセンサス方式により手続規則を採択する。
3 締約国会議は、同会議のための財政規則及び同会議が設置する補助機関の予算を規律する財政規則並びに事務局の任務の遂行を規律する財政規定を採択する。締約国会議は、通常会合において、次の通常会合までの会計期間の予算を採択する。
4 締約国会議は、次の任務を遂行する。
 (a) この条約の実施状況(通常兵器の分野における動向を含む。)の検討
 (b) この条約の実施及び運用、特にその普遍性の促進に関する勧告の検討及び採択
 (c) 第二十条の規定に基づくこの条約の改正の検討
 (d) この条約の解釈から生ずる問題の検討
 (e) 事務局の任務及び予算の検討及び決定
 (f) この条約の機能の改善のために必要な補助機関の設置の検討
 (g) この条約に適合するその他の任務 4. The Conference of States Parties shall:
5 締約国会議の特別会合は、締約国会議が必要と認めるとき又はいずれかの締約国から書面による要請がある場合において締約国の少なくとも三分の二がその要請を支持するときに開催する。

第十八条 事務局
1 この条約により、この条約の効果的な実施において締約国を援助するため、事務局を設置する。締約国会議の第一回会合が開催されるまでの間は、暫定事務局がこの条約に定める運営上の任務について責任を負う。
2 事務局は、適切な人数の職員を有する。職員は、事務局が3に規定する責任を効果的に遂行することができることを確保するために必要な専門知識を有するものとする。
3 事務局は、締約国に対して責任を負うものとし、最小限の組織で、次のことについて責任を遂行する。
 (a) この条約により義務付けられる報告を受領し、閲覧に供し、及び配布すること。
 (b) 国内の連絡先の一覧表を保持し、及び締約国の利用に供すること。
 (c) 条約の実施のための援助の提案及び要請を結び付けることを容易にし、並びに要請された国際協力を促進すること。
 (d) 締約国会議の活動を容易にすること(この条約に基づく会合のための準備及び必要な役務の提供を含む。)。
 (e) 締約国会議が決定する他の任務を遂行すること。

第十九条 紛争解決
1 締約国は、この条約の解釈又は適用に関して締約国間に生ずることがある紛争の解決を追求するために協議し、及び相互の合意により交渉、仲介、調停、司法的解決その他の平和的手段を通じて協力する。
2 締約国は、相互の合意により、この条約の解釈又は適用に関する問題についての締約国間の紛争を解決するために仲裁を求めることができる。

第二十条 改正
1 締約国は、この条約の効力発生の後六年を経過した後、この条約の改正を提案することができる。その後、締約国会議は、提案された改正を三年ごとにのみ検討することができる。
2 この条約の改正案は、事務局に書面で提出するものとし、事務局は、1の規定により改正を検討することができる次回の締約国会議の会合の少なくとも百八十日前までに全ての締約国に当該改正案を配布す る。当該改正案は、事務局による配布の後百二十日以内に締約国の過半数が当該改正案を検討することを支持する旨を事務局に通報する場合には、当該次回の締約国会議の会合において検討される。
3 締約国は、各改正案につき、コンセンサス方式により合意に達するようあらゆる努力を払う。コンセンサスのためのあらゆる努力にもかかわらず合意に達しない場合には、改正案は、最後の解決手段として、締約国会議の会合に出席し、かつ、投票する締約国の四分の三以上の多数による議決で採択される。この条の規定の適用上、「出席し、かつ、投票する締約国」とは、出席し、かつ、賛成票又は反対票を投ずる締約国をいう。寄託者は、採択された改正を全ての締約国に送付する。
4 3の規定に従って採択された改正は、当該改正が採択された時に締約国であった国の過半数が受諾書を寄託者に寄託した日の後九十日で、その受諾書を寄託した締約国について効力を生ずる。その後は、当該改正は、当該改正の受諾書を寄託する他のいずれの締約国についても、その寄託の日の後九十日で効力を生ずる。

第二十一条 署名、批准、受諾、承認又は加入
1 この条約は、二千十三年六月三日からその効力が生ずるまでの期間、ニューヨークにある国際連合本部において、全ての国による署名のために開放しておく。
2 この条約は、署名国によって批准され、受諾され、又は承認されなければならない。
3 この条約は、その効力発生の後、この条約に署名しなかった国による加入のために開放しておく。
4 批准書、受諾書、承認書又は加入書は、寄託者に寄託する。

第二十二条 効力発生
1 この条約は、五十番目の批准書、受諾書又は承認書が寄託された日の後九十日で効力を生ずる。
2 この条約は、その効力発生の後に批准書、受諾書、承認書又は加入書を寄託する国については、その批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託の日の後九十日で効力を生ずる。

第二十三条 暫定的適用
 いずれの国も、自国の署名又は批准書、受諾書、承認書若しくは加入書の寄託の時に、この条約が自国について効力を生ずるまでの間第六条及び第七条の規定を暫定的に適用する旨を宣言することができる。

第二十四条 有効期間及び脱退
1 この条約の有効期間は、無期限とする。
2 締約国は、その主権を行使してこの条約から脱退する権利を有する。この権利を行使する締約国は、寄託者に対してその旨を通告し、寄託者は、他の全ての締約国にその旨を通報する。脱退の通告には、脱退しようとする理由についての説明を記載することができる。脱退の通告は、一層遅い日が通告に明記されている場合を除くほか、寄託者が当該脱退の通告を受領した後九十日で効力を生ずる。
3 いずれの国も、その脱退を理由として、この条約の締約国であった間のこの条約に基づく義務(その間に生じた財政上の義務を含む。)を免除されない。

第二十五条 留保
1 各国は、署名、批准、受諾、承認又は加入の時に、留保を付することができる。ただし、当該留保がこの条約の趣旨及び目的と両立する場合に限る。
2 締約国は、その留保を寄託者に宛てた通告によりいつでも撤回することができる。

第二十六条 他の国際協定との関係
1 この条約の実施は、締約国が当事国である既存又は将来の国際協定との関連で当該締約国が負う義務に影響を及ぼすものではない。ただし、当該義務がこの条約と両立する場合に限る。
2 この条約は、この条約の締約国の間で締結された防衛協力協定を無効とする根拠として引用してはならない。

第二十七条 寄託者
 国際連合事務総長は、この条約の寄託者とする。

第二十八条 正文
 アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語をひとしく正文とするこの条約の原本は、国際連合事務総長に寄託する。

 二千十三年四月二日にニューヨークで作成された。

〇同じ日の過去の出来事(以前にブログで紹介した記事)

1882年(明治15)言語学者・国語学者橋本進吉の誕生日詳細
1902年(明治35)文芸評論家・思想家高山樗牛の命日詳細
1920年(大正9)小説家阿川弘之の誕生日詳細
1933年(昭和8)東京都千代田区有楽町に日本劇場が開館し、開場披露式が挙行される詳細
1943年(昭和18)「徴兵適齢臨時特例」が公布・施行され、徴兵年齢が1歳引き下げられ19歳になる詳細
1953年(昭和28)日本とアメリカ合衆国が「奄美群島返還協定」に調印する詳細
1975年(昭和50)国鉄最後の蒸気機関車(SL)牽引による定期貨物列車が夕張線で運転される詳細
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cyberhanzai01
 今日は、平成時代の2001年(平成13)に、ハンガリーのブダペストにおいて、「サイバー犯罪に関する条約」に、日本を含む30ヶ国が署名・採択した日です。
 「サイバー犯罪に関する条約」(さいばーはんざいにかんするじょうやく)は、コンピューター犯罪に国際的に対処するための国際条約です。コンピューター・システムを攻撃するような犯罪およびコンピューター・システムを利用して行われる犯罪(いわゆるサイバー犯罪)に対し、国際的に協調して有効な手段をとる必要性から、欧州評議会が2001年(平成13)に発案し、ハンガリーのブダペストで、11月23日に日本を含む30ヶ国が署名・採択したことから「ブダペスト条約」とも呼ばれてきました。
 条約は全48ヶ条で、①違法アクセス、オンライン詐欺、コンピュータ・ウイルスによるデータの破損やシステム機能妨害、児童ポルノ配信、著作権侵害などのサイバー犯罪の類型を定義した刑事実体法部分、②データの保全、捜索、押収、通信傍受などの手法を定めた手続法部分、③国際的な捜査の相互協力、犯罪人引き渡し、裁判権などを定めた条約部分、などで構成されています。日本は、2004年(平成16)4月に国会承認して批准し、同年7月1日に、批准国数の条件を満たして発効しました。2023年(令和5)11月現在の条約の締約国は、68ヶ国となっています。
 以下に、「サイバー犯罪に関する条約」の日本語訳を掲載しておきますので、ご参照下さい。

〇「サイバー犯罪に関する条約」2001年(平成13)11月23日署名・採択、2004年(平成16)7月1日発効

前文

 欧州評議会の加盟国及びこの条約に署名したその他の国は、
 欧州評議会の目的がその加盟国の一層強化された統合を達成することであることを考慮し、
 この条約の他の締約国との協力を促進することの価値を認識し、
 特に適当な法令を制定し及び国際協力を促進することによって、サイバー犯罪から社会を保護することを目的とした共通の刑事政策を優先事項として追求することが必要であることを確信し、コンピュータ・ネットワークがデジタル化され、統合され及び地球的規模で拡大し続けることによってもたらされる大きな変化を認識し、
 コンピュータ・ネットワーク及び電子情報が犯罪を行うためにも利用される可能性があるという危険並びに犯罪に関する証拠がコンピュータ・ネットワークによって蔵置され及び送信される可能性があるという危険を憂慮し、
 サイバー犯罪との戦いにおいて国家と民間業界との間の協力が必要であること並びに情報技術の利用及び開発において正当な利益を保護することが必要であることを認識し、
 サイバー犯罪と効果的に戦うためには、刑事問題に関する国際協力を強化し、迅速に行い、かつ、十分に機能させることが必要であることを確信し、
 この条約に規定する行為を犯罪として定め及びそのような犯罪と効果的に戦うための十分な権限の付与について定めること、そのような犯罪の探知、捜査及び訴追を国内的にも国際的にも促進すること並びに迅速で信頼し得る国際協力のための措置を定めることによって、コンピュータ・システム、コンピュータ・ネットワーク及びコンピュータ・データの秘密性、完全性及び利用可能性に対して向けられた行為並びにコンピュータ・システム、コンピュータ・ネットワーク及びコンピュータ・データの濫用を抑止するために、この条約が必要であることを確信し、
 すべての者が有する干渉されることなく意見を持つ権利、表現の自由(国境とのかかわりなくあらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由等)についての権利及びプライバシーの尊重についての権利を再確認する千九百五十年に欧州評議会で採択された人権及び基本的自由の保護に関する条約、千九百六十六年に国際連合で採択された市民的及び政治的権利に関する国際規約その他の適用される人権に関する国際条約にうたう法の執行の利益と基本的人権の尊重との間に適正な均衡を確保することが必要であることに留意し、
 また、個人情報の保護についての権利(例えば、千九百八十一年に欧州評議会で採択された個人情報の自動処理における個人の保護に関する条約によって付与されている権利)に留意し、
 千九百八十九年に国際連合で採択された児童の権利に関する条約及び千九百九十九年に国際労働機関で採択された最悪の形態の児童労働条約を考慮し、
 欧州評議会で採択された刑事分野における協力に関する現行の諸条約及び欧州評議会の加盟国と他の国々との間に存在する同様の諸条約を考慮し、並びにこの条約が、コンピュータ・システム及びコンピュータ・データに関連する犯罪に関する捜査及び刑事訴訟をより効果的なものとし、かつ、犯罪に関する電子的形態の証拠の収集を可能とするために、それらの条約を補足することを目的とするものであることを強調し、
 国際連合、経済協力開発機構、欧州連合及び主要八箇国(G8)の活動その他の近年の進展により、サイバー犯罪との戦いに関する国際的な理解及び協力が更に進められていることを歓迎し、刑事問題についての相互援助に関する欧州条約の実際の適用(電気通信の傍受に係る嘱託状に関するもの)に関する閣僚委員会勧告第十号(千九百八十五年) 、著作権及び著作隣接権の分野における違法な複製行為に関する同勧告第二号(千九百八十八年) 、警察部門における個人情報の使用を規制する同勧告第十五号(千九百八十七年) 、電気通信サービス(特に電話サービス)の領域における個人情報の保護に関する同勧告第四号(千九百九十五年) 、特定のコンピュータ犯罪の定義について国内の立法機関のための指針を提供するコンピュータに関連する犯罪に関する同勧告第九号(千九百八十九年)及び刑事手続法における情報技術に関連する問題に関する同勧告第十三号(千九百九十五年)を想起し、
 第二十一回欧州司法大臣会議(千九百九十七年六月十日及び十一日にプラハで開催)において採択された決議第一号(国内刑事法の規定を相互に一層類似したものとし及びサイバー犯罪の捜査について効果的な手段を利用可能とするために犯罪問題に関する欧州委員会(CDPC)が実施するサイバー犯罪に関する作業を支持するよう閣僚委員会に勧告したもの)及び第二十三回欧州司法大臣会議(二千年六月八日及び九日にロンドンで開催)において採択された決議第三号(できる限り多数の国がこの条約の締約国となることができるようにするための適当な解決を見いだすために交渉当事国が努力を継続するよう奨励し、及びサイバー犯罪との戦いについての特有の要件を十分に考慮した迅速かつ効果的な国際協力体制の必要性を認めたもの)に考慮を払い、
 また、第二回首脳会議(千九百九十七年十月十日及び十一日にストラスブールで開催)において欧州評議会の加盟国の元首又は政府の長によって採択された行動計画(欧州評議会の基準及び価値に基づき新たな情報技術の開発に対する共通の対応を追求するためのもの)に考慮を払って、
 次のとおり協定した。

第一章 用語

第一条 定義
 この条約の適用上、
a「コンピュータ・システム」とは、プログラムに従ってデータの自動処理を行う装置又は相互に接続された若しくは関連する一群の装置であってそのうちの一若しくは二以上の装置がプログラムに従ってデータの自動処理を行うものをいう。
b「コンピュータ・データ」とは、コンピュータ・システムにおける処理に適した形式によって事実、情報又は概念を表したものをいい、コンピュータ・システムに何らかの機能を実行させるための適当なプログラムを含む。
c「サービス・プロバイダ」とは、次のものをいう。
ⅰ そのサービスの利用者に対しコンピュータ・システムによって通信する能力を提供する者(公私を問わない。 )
ⅱ ⅰに規定する通信サービス又はその利用者のために、コンピュータ・データを処理し又は蔵置するその他の者
d「通信記録」とは、コンピュータ・システムによる通信に関するコンピュータ・データであって、通信の連鎖の一部を構成するコンピュータ・システムによって作り出され、かつ、通信の発信元、発信先、経路、時刻、日付、規模若しくは継続時間又は通信の基礎となるサービスの種類を示すものをいう。

第二章 国内的にとる措置

第一節 刑事実体法

第一款 コンピュータ・データ及びコンピュータ・システムの秘密性、完全性及び利用可能性に対する犯罪

第二条 違法なアクセス
 締約国は、コンピュータ・システムの全部又は一部に対するアクセスが、権限なしに故意に行われることを自国の国内法上の犯罪とするため、必要な立法その他の措置をとる。締約国は、このようなアクセスが防護措置を侵害することによって行われること、コンピュータ・データを取得する意図その他不正な意図をもって行われること又は他のコンピュータ・システムに接続されているコンピュータ・システムに関連して行われることをこの犯罪の要件とすることができる。

第三条 違法な傍受
 締約国は、コンピュータ・システムへの若しくはそこからの又はその内部におけるコンピュータ・データの非公開送信(コンピュータ・データを伝送するコンピュータ・システムからの電磁的放射を含む。 )の傍受が、技術的手段によって権限なしに故意に行われることを自国の国内法上の犯罪とするため、必要な立法その他の措置をとる。締約国は、このような傍受が不正な意図をもって行われること又は他のコンピュータ・システムに接続されているコンピュータ・システムに関連して行われることをこの犯罪の要件とすることができる。

第四条 データの妨害
1 締約国は、コンピュータ・データの破損、削除、劣化、改ざん又は隠ぺいが権限なしに故意に行われることを自国の国内法上の犯罪とするため、必要な立法その他の措置をとる。
2 締約国は、1に規定する行為が重大な損害を引き起こすことをこの犯罪の要件とする権利を留保することができる。

第五条 システムの妨害
 締約国は、コンピュータ・データの入力、送信、破損、削除、劣化、改ざん又は隠ぺいによりコンピュータ・システムの機能に対する重大な妨害が権限なしに故意に行われることを自国の国内法上の犯罪とするため、必要な立法その他の措置をとる。

第六条 装置の濫用
1締約国は、権限なしに故意に行われる次の行為を自国の国内法上の犯罪とするため、必要な立法その他の措置をとる。
a第二条から前条までの規定に従って定められる犯罪を行うために使用されることを意図して、次のものを製造し、販売し、使用のために取得し、輸入し、頒布し又はその他の方法によって利用可能とすること。
ⅰ 第二条から前条までの規定に従って定められる犯罪を主として行うために設計され又は改造された装置(コンピュータ・プログラムを含む。 )
ⅱ コンピュータ・システムの全部又は一部にアクセス可能となるようなコンピュータ・パスワード、アクセス・コード又はこれらに類するデータ
b第二条から前条までの規定に従って定められる犯罪を行うために使用されることを意図して、aⅰ又はⅱに規定するものを保有すること。締約国は、自国の法令により、これらのものの一定数の保有を刑事上の責任を課するための要件とすることができる。
2この条の規定は、1に規定する製造、販売、使用のための取得、輸入、頒布若しくはその他の方法によって利用可能とする行為又は保有が、第二条から前条までの規定に従って定められる犯罪を行うことを目的としない場合(例えば、コンピュータ・システムの正当な試験又は保護のために行われる場合)に刑事上の責任を課するものと解してはならない。
3締約国は、1の規定を適用しない権利を留保することができる。ただし、その留保が1ⅰⅱに規定するものの販売、頒布又はその他の方法によって利用可能とする行為に関するものでない場合に限る。

第二款 コンピュータに関連する犯罪

第七条 コンピュータに関連する偽造
 締約国は、コンピュータ・データの入力、改ざん、削除又は隠ぺいにより、真正でないコンピュータ・データ(直接読取りが可能であるか否か及び直接理解が可能であるか否かを問わない。 )を生じさせる行為が、当該データが法律上真正であるとみなされ又は扱われることを意図して権限なしに故意に行われることを自国の国内法上の犯罪とするため、必要な立法その他の措置をとる。締約国は、詐取する意図又はこれに類する不正な意図を刑事上の責任を課するための要件とすることができる。

第八条 コンピュータに関連する詐欺
 締約国は、自己又は他人のために権限なしに経済的利益を得るという詐欺的な又は不正な意図をもって、権限なしに故意に次の行為が行われ、他人に対し財産上の損害が加えられることを自国の国内法上の犯罪とするため、必要な立法その他の措置をとる。
aコンピュータ・データの入力、改ざん、削除又は隠ぺい
bコンピュータ・システムの機能に対する妨害

第三款 特定の内容に関連する犯罪

第九条 児童ポルノに関連する犯罪
1締約国は、権限なしに故意に行われる次の行為を自国の国内法上の犯罪とするため、必要な立法その他の措置をとる。
aコンピュータ・システムを通じて頒布するために児童ポルノを製造すること。
bコンピュータ・システムを通じて児童ポルノの提供を申し出又はその利用を可能にすること。
cコンピュータ・システムを通じて児童ポルノを頒布し又は送信すること。
d自己又は他人のためにコンピュータ・システムを通じて児童ポルノを取得すること。
eコンピュータ・システム又はコンピュータ・データ記憶媒体の内部に児童ポルノを保有すること。
21の規定の適用上、 「児童ポルノ」とは、次のものを視覚的に描写するポルノをいう。
a性的にあからさまな行為を行う未成年者
b性的にあからさまな行為を行う未成年者であると外見上認められる者
c性的にあからさまな行為を行う未成年者を表現する写実的影像
32の規定の適用上、 「未成年者」とは、十八歳未満のすべての者をいう。もっとも、締約国は、より低い年齢(十六歳を下回ってはならない。 )の者のみを未成年者とすることができる。
4締約国は、1d及びe並びに2b及びcの規定の全部又は一部を適用しない権利を留保することができる。

第四款 著作権及び関連する権利の侵害に関連する犯罪

第十条 著作権及び関連する権利の侵害に関連する犯罪
1締約国は、文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約の千九百七十一年七月二十四日のパリ改正条約、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定及び著作権に関する世界知的所有権機関条約に基づく義務に従って自国の法令に定める著作権(これらの条約によって付与された人格権を除く。 )の侵害が故意に、商業的規模で、かつ、コンピュータ・システムによって行われることを自国の国内法上の犯罪とするため、必要な立法その他の措置をとる。
2締約国は、実演家、レコード製作者及び放送機関の保護に関する国際条約(ローマ条約) 、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定及び実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約に基づく義務に従って自国の法令に定める関連する権利(これらの条約によって付与された人格権を除く。 )の侵害が故意に、商業的規模で、かつ、コンピュータ・システムによって行われることを自国の国内法上の犯罪とするため、必要な立法その他の措置をとる。
3締約国は、限定的な状況において、1及び2の規定に基づく刑事上の責任を課さない権利を留保することができる。ただし、他の効果的な救済手段が利用可能であり、かつ、その留保が1及び2に規定する国際文書に定める締約国の国際的義務に違反しない場合に限る。

第五款 付随的責任及び制裁

第十一条 未遂及びほう助又は教唆
1締約国は、第二条から前条までの規定に従って定められる犯罪が行われることを意図して故意にこれらの犯罪の実行をほう助し又は教唆することを自国の国内法上の犯罪とするため、必要な立法その他の措置をとる。
2締約国は、第三条から第五条まで、第七条、第八条並びに第九条1a及びcの規定に従って定められる犯罪であって故意に行われるものの未遂を自国の国内法上の犯罪とするため、必要な立法その他の措置をとる。
3いずれの締約国も、2の規定の全部又は一部を適用しない権利を留保することができる。

第十二条 法人の責任
1締約国は、単独で又は法人の機関の一部として活動する自然人であって当該法人内部で指導的地位にあるものが、次のいずれかの権限に基づき、かつ、当該法人の利益のためにこの条約に従って定められる犯罪を行う場合に当該犯罪についての責任を当該法人に負わせ得ることを確保するため、必要な立法その他の措置をとる。
a法人の代表権
b法人のために決定を行う権限c法人内部で管理を行う権限
21に規定する場合に加え、締約国は、法人の権限に基づき活動する自然人が当該法人の利益のためにこの条約に従って定められる犯罪を行う場合において、当該犯罪の実行が1に規定する自然人による監督又は管理の欠如によるものであるときは、当該法人に責任を負わせ得ることを確保するため、必要な措置をとる。
3法人の責任は、締約国の法的原則に従って、刑事上、民事上又は行政上のものとすることができる。
4法人の責任は、犯罪を行った自然人の刑事上の責任に影響を及ぼすものではない。

第十三条 制裁及び措置
1締約国は、第二条から第十一条までの規定に従って定められる犯罪について自由のはく奪その他の制裁であって効果的な、均衡のとれたかつ抑止力のあるものが科されることを確保するため、必要な立法その他の措置をとる。
2締約国は、前条の規定に従って責任を負う法人に対し、刑罰又は刑罰以外の制裁若しくは措置であって効果的な、均衡のとれたかつ抑止力のあるもの(金銭的制裁を含む。 )が科されることを確保する。

第二節手続法

第一款 共通規定

第十四条 手続規定の適用範囲
1締約国は、特定の捜査又は刑事訴訟のためにこの節に定める権限及び手続を設定するため、必要な立法その他の措置をとる。
2第二十一条に別段の定めがある場合を除くほか、締約国は、次の事項について1に規定する権限及び手続を適用する。
a第二条から第十一条までの規定に従って定められる犯罪
bコンピュータ・システムによって行われる他の犯罪
c犯罪に関する電子的形態の証拠の収集
3a締約国は、留保において特定する犯罪又は犯罪類型についてのみ第二十条に定める措置を適用する権利を留保することができる。ただし、当該犯罪又は犯罪類型の範囲が、第二十一条に定める措置を適用する犯罪の範囲よりも制限的とならない場合に限る。締約国は、第二十条に定める措置を最も幅広く適用することができるように留保を制限することを考慮する。
b締約国は、この条約の採択の時に有効な法令における制限により次のÞ及びßのシステムを有するサービス・プロバイダのコンピュータ・システムの内部における通信に第二十条及び第二十一条に定める措置を適用することができない場合には、そのような通信にこれらの措置を適用しない権利を留保することができる。
ⅰ閉鎖されたグループの利用者のために運営されているシステム
ⅱ公共通信ネットワークを利用せず、かつ、他のコンピュータ・システム(公的なものであるか私的なものであるかを問わない。)に接続されていないシステム締約国は、第二十条及び第二十一条に定める措置を最も幅広く適用することができるように留保を制限することを考慮する。

第十五条 条件及び保障措置
1締約国は、この節に定める権限及び手続の設定、実施及び適用が、自国の国内法に定める条件及び保障措置であって、千九百五十年に欧州評議会で採択された人権及び基本的自由の保護に関する条約、千九百六十六年に国際連合で採択された市民的及び政治的権利に関する国際規約その他の適用される人権に関する国際文書に基づく義務に従って生ずる権利その他の人権及び自由の適当な保護を規定しており、かつ、比例原則を含むものに従うことを確保する。
21に規定する条件及び保障措置には、該当する権限又は手続の性質にかんがみ適当な場合には、特に、司法上の又は他の独立した監督、適用を正当化する事由並びに当該権限又は手続の適用範囲及び期間に関する制限を含む。
3締約国は、公共の利益、特に司法の健全な運営に反しない限り、この節に定める権限及び手続が第三者の権利、責任及び正当な利益に及ぼす影響を考慮する。

第二款 蔵置されたコンピュータ・データの迅速な保全

第十六条 蔵置されたコンピュータ・データの迅速な保全
1締約国は、特に、自国の権限のある当局がコンピュータ・システムによって蔵置された特定のコンピュータ・データ(通信記録を含む。 )が特に滅失しやすく又は改変されやすいと信ずるに足りる理由がある場合には、当該権限のある当局が当該コンピュータ・データについて迅速な保全を命令すること又はこれに類する方法によって迅速な保全を確保することを可能にするため、必要な立法その他の措置をとる。
2締約国は、ある者が保有し又は管理している特定の蔵置されたコンピュータ・データを保全するよう当該者に命令することによって1の規定を実施する場合には、自国の権限のある当局が当該コンピュータ・データの開示を求めることを可能にするために必要な期間(九十日を限度とする。)、当該コンピュータ・データの完全性を保全し及び維持することを当該者に義務付けるため、必要な立法その他の措置をとる。締約国は、そのような命令を引き続き更新することができる旨定めることができる。
3締約国は、コンピュータ・データを保全すべき管理者その他の者に対し、1又は2に定める手続がとられていることについて、自国の国内法に定める期間秘密のものとして取り扱うことを義務付けるため、必要な立法その他の措置をとる。
4この条に定める権限及び手続は、前二条の規定に従うものとする。第十七条通信記録の迅速な保全及び部分開示1締約国は、前条の規定に基づいて保全される通信記録について、次のことを行うため、必要な立法その他の措置をとる。
a通信の伝達に関与したサービス・プロバイダが一であるか二以上であるかにかかわらず、通信記録の迅速な保全が可能となることを確保すること。
第十七条 通信記録の迅速な保全及び部分開示
1締約国は、前条の規定に基づいて保全される通信記録について、次のことを行うため、必要な立法その他の措置をとる。
a通信の伝達に関与したサービス・プロバイダが一であるか二以上であるかにかかわらず、通信記録の迅速な保全が可能となることを確保すること。
b当該サービス・プロバイダ及び通信が伝達された経路を自国が特定することができるようにするために十分な量の通信記録が、自国の権限のある当局又は当該権限のある当局によって指名された者に対して迅速に開示されることを確保すること。
2この条に定める権限及び手続は、第十四条及び第十五条の規定に従うものとする。

第三款 提出命令

第十八条 提出命令
1締約国は、自国の権限のある当局に対し次のことを行う権限を与えるため、必要な立法その他の措置をとる。
a自国の領域内に所在する者に対し、当該者が保有し又は管理している特定のコンピュータ・データであって、コンピュータ・システム又はコンピュータ・データ記憶媒体の内部に蔵置されたものを提出するよう命令すること。
b自国の領域内でサービスを提供するサービス・プロバイダに対し、当該サービス・プロバイダが保有し又は管理している当該サービスに関連する加入者情報を提出するよう命令すること。
2この条に定める権限及び手続は、第十四条及び第十五条の規定に従うものとする。3この条の規定の適用上、「加入者情報」とは、コンピュータ・データという形式又はその他の形式による情報のうち、サービス・プロバイダが保有するサービス加入者に関連する情報(通信記録及び通信内容に関連するものを除く。 )であって、それにより次のことが立証されるものをいう。
a利用された通信サービスの種類、当該サービスのためにとられた技術上の措置及びサービスの期間
b加入者の身元、郵便用あて名又は住所及び電話番号その他のアクセスのための番号並びに料金の請求及び支払に関する情報であって、サービスに関する契約又は取決めに基づいて利用可能なもの
c通信設備の設置場所に関するその他の情報であってサービスに関する契約又は取決めに基づいて利用可能なもの

第四款 蔵置されたコンピュータ・データの捜索及び押収

第十九条 蔵置されたコンピュータ・データの捜索及び押収
1締約国は、自国の権限のある当局に対し、自国の領域内において次のものに関し捜索又はこれに類するアクセスを行う権限を与えるため、必要な立法その他の措置をとる。
aコンピュータ・システムの全部又は一部及びその内部に蔵置されたコンピュータ・データ
bコンピュータ・データを蔵置することができるコンピュータ・データ記憶媒体
2締約国は、自国の権限のある当局が1aの規定に基づき特定のコンピュータ・システムの全部又は一部に関し捜索又はこれに類するアクセスを行う場合において、当該捜索等の対象となるデータが自国の領域内にある他のコンピュータ・システムの全部又は一部の内部に蔵置されていると信ずるに足りる理由があり、かつ、当該データが当該特定のコンピュータ・システムから合法的にアクセス可能であるか又は入手可能であるときは、当該権限のある当局が当該他のコンピュータ・システムに関し捜索又はこれに類するアクセスを速やかに行うことができることを確保するため、必要な立法その他の措置をとる。
3締約国は、自国の権限のある当局に対し、1又は2の規定に基づきアクセスしたコンピュータ・データの押収又はこれに類する確保を行う権限を与えるため、必要な立法その他の措置をとる。これらの措置には、次のことを行う権限を与えることを含む。
aコンピュータ・システムの全部若しくは一部又はコンピュータ・データ記憶媒体の押収又はこれに類する確保を行うこと。
b当該コンピュータ・データの複製を作成し及び保管すること。
c関連する蔵置されたコンピュータ・データの完全性を維持すること。
dアクセスしたコンピュータ・システムの内部の当該コンピュータ・データにアクセスすることができないようにすること又は当該コンピュータ・データを移転すること。
4締約国は、自国の権限のある当局に対し、1又は2に定める措置をとることを可能にするために必要な情報を合理的な範囲で提供するようコンピュータ・システムの機能又はコンピュータ・システムの内部のコンピュータ・データを保護するために適用される措置に関する知識を有する者に命令する権限を与えるため、必要な立法その他の措置をとる。
5この条に定める権限及び手続は、第十四条及び第十五条の規定に従うものとする。

第五款 コンピュータ・データのリアルタイム収集

第二十条 通信記録のリアルタイム収集
1締約国は、自国の権限のある当局に対し、コンピュータ・システムによって伝達される自国の領域内における特定の通信に係る通信記録についてリアルタイムで次のことを行う権限を与えるため、必要な立法その他の措置をとる。
a自国の領域内にある技術的手段を用いることにより、当該通信記録を収集し又は記録すること。
bサービス・プロバイダに対し、その既存の技術的能力の範囲内で次のいずれかのことを行うよう強制すること。
ⅰ自国の領域内にある技術的手段を用いることにより、当該通信記録を収集し又は記録すること。
ⅱ当該権限のある当局が当該通信記録を収集し又は記録するに当たり、これに協力し及びこれを支援すること。
2締約国は、自国の国内法制の確立された原則により1aに定める措置をとることができない場合には、当該措置に代えて、自国の領域内にある技術的手段を用いることにより、自国の領域内において伝達される特定の通信に係る通信記録をリアルタイムで収集し又は記録することを確保するため、必要な立法その他の措置をとることができる。
3締約国は、サービス・プロバイダに対し、この条に定める権限の行使の事実及び当該権限の行使に関する情報について秘密のものとして取り扱うことを義務付けるため、必要な立法その他の措置をとる。
4この条に定める権限及び手続は、第十四条及び第十五条の規定に従うものとする。

第二十一条 通信内容の傍受
1締約国は、自国の権限のある当局に対し、自国の国内法に定める範囲の重大な犯罪に関して、コンピュータ・システムによって伝達される自国の領域内における特定の通信の通信内容についてリアルタイムで次のことを行う権限を与えるため、必要な立法その他の措置をとる。
a自国の領域内にある技術的手段を用いることにより、当該通信内容を収集し又は記録すること。
bサービス・プロバイダに対し、その既存の技術的能力の範囲内で次のいずれかのことを行うよう強制すること。
ⅰ自国の領域内にある技術的手段を用いることにより、当該通信内容を収集し又は記録すること。
ⅱ当該権限のある当局が当該通信内容を収集し又は記録するに当たり、これに協力し及びこれを支援すること。
2締約国は、自国の国内法制の確立された原則により1aに定める措置をとることができない場合には、当該措置に代えて、自国の領域内にある技術的手段を用いることにより、自国の領域内における特定の通信の通信内容をリアルタイムで収集し又は記録することを確保するため、必要な立法その他の措置をとることができる。
3締約国は、サービス・プロバイダに対し、この条に定める権限の行使の事実及び当該権限の行使に関する情報について秘密のものとして取り扱うことを義務付けるため、必要な立法その他の措置をとる。
4この条に定める権限及び手続は、第十四条及び第十五条の規定に従うものとする。

第三節 裁判権

第二十二条 裁判権
1締約国は、次の場合において第二条から第十一条までの規定に従って定められる犯罪についての自国の裁判権を設定するため、必要な立法その他の措置をとる。
a犯罪が自国の領域内で行われる場合
b犯罪が自国を旗国とする船舶内で行われる場合
c犯罪が自国の法令により登録されている航空機内で行われる場合
d犯罪が行われた場所の刑事法に基づいて刑を科することができる場合又は犯罪がすべての国の領域的管轄の外で行われる場合において、当該犯罪が自国の国民によって行われるとき。
2締約国は、1bからdまでの全部若しくは一部に定める裁判権に関する規則を適用しない権利又は特定の場合若しくは状況においてのみ当該規則を適用する権利を留保することができる。
3締約国は、容疑者が自国の領域内に所在し、かつ、引渡しの請求を受けたにもかかわらず当該容疑者の国籍のみを理由として他の締約国に当該容疑者の引渡しを行わない場合において第二十四条1に定める犯罪についての裁判権を設定するため、必要な措置をとる。
4この条約は、締約国が自国の国内法に従って行使する刑事裁判権を排除するものではない。
5この条約に従って定められる犯罪が行われたとされる場合において、二以上の締約国が裁判権を主張するときは、関係締約国は、適当な場合には、訴追のために最も適した裁判権を有する国を決定するために協議する。

第三章 国際協力

第一節 一般原則

第一款 国際協力に関する一般原則

第二十三条 国際協力に関する一般原則
 締約国は、この章の規定に従い、かつ、刑事問題についての国際協力に関する関連の国際文書、統一的又は相互主義的な法令を基礎として合意された取極及び国内法の適用を通じ、コンピュータ・システム及びコンピュータ・データに関連する犯罪に関する捜査若しくは刑事訴訟のため又は犯罪に関する電子的形態の証拠の収集のために、できる限り広範に相互に協力する。

第二款 犯罪人引渡しに関する原則

第二十四条 犯罪人引渡し
1aこの条の規定は、第二条から第十一条までの規定に従って定められる犯罪(双方の締約国の法令において長期一年以上自由をはく奪する刑又はこれよりも重い刑を科することができるものに限る。 )に関する締約国間の犯罪人引渡しについて適用する。
b統一的若しくは相互主義的な法令を基礎として合意された取極又は二以上の締約国間で適用可能な犯罪人引渡条約(犯罪人引渡しに関する欧州条約(ETS第二十四号)等)に基づいて適用される最も軽い刑罰が異なる場合には、当該取極又は条約に定める最も軽い刑罰を適用する。
21に定める犯罪は、締約国間の現行の犯罪人引渡条約における引渡犯罪とみなされる。締約国は、締約国間で将来締結されるすべての犯罪人引渡条約に1に定める犯罪を引渡犯罪として含めることを約束する。
3条約の存在を犯罪人引渡しの条件とする締約国は、自国との間に犯罪人引渡条約を締結していない他の締約国から犯罪人引渡しの請求を受けた場合には、この条約を1に定める犯罪に関する犯罪人引渡しのための法的根拠とみなすことができる。
4条約の存在を犯罪人引渡しの条件としない締約国は、相互間で、1に定める犯罪を引渡犯罪と認める。
5犯罪人引渡しは、請求を受けた締約国の法令に定める条件又は適用可能な犯罪人引渡条約に定める条件に従う。これらの条件には、請求を受けた締約国が犯罪人引渡しを拒否することができる理由を含む。
6請求を受けた締約国は、1に定める犯罪に関する犯罪人引渡しにつき、引渡しを求められている者の国籍のみを理由として又は自国が当該犯罪について裁判権を有すると認めることを理由として拒否する場合には、請求を行った締約国からの要請により訴追のため自国の権限のある当局に事件を付託するものとし、適当な時期に確定的な結果を当該請求を行った締約国に報告する。当該権限のある当局は、自国の法令に定めるこれと同様の性質を有する他の犯罪の場合と同様の方法で、決定、捜査及び刑事訴訟を行う。
7a締約国は、署名の際又は批准書、受諾書、承認書若しくは加入書の寄託の際に、欧州評議会事務局長に対し、犯罪人引渡条約が存在しない場合に犯罪人引渡し又は仮拘禁のための請求を行い又は受けることについて責任を有する当局の名称及び所在地を通報する。
b欧州評議会事務局長は、締約国によって指定された当局の登録簿を作成し、これを常に最新のものとする。締約国は、登録簿に記載された事項が常に正確であることを確保する。

第三款 相互援助に関する一般原則

第二十五条 相互援助に関する一般原則
1締約国は、コンピュータ・システム及びコンピュータ・データに関連する犯罪に関する捜査若しくは刑事訴訟のため又は犯罪に関する電子的形態の証拠の収集のために、できる限り広範に相互に援助を提供する。
2締約国は、第二十七条から第三十五条までに定める義務を履行するため、必要な立法その他の措置をとる。
3締約国は、緊急の状況においては、ファクシミリ、電子メール等の緊急の通信手段が適当な水準の安全性及び認証を提供する限り(必要な場合には、暗号の使用を含む。)、このような手段により相互援助の要請又はこれに関連する通報を行うことができる。この場合において、要請を受けた締約国が要求するときは、その後正式な確認を行う。要請を受けた締約国は、このような緊急の通信手段による要請を受け入れ、そのような手段によりこれに回答する。
4この章に別段の定めがある場合を除くほか、相互援助は、要請を受けた締約国の法令に定める条件又は適用可能な相互援助条約に定める条件に従う。これらの条件には、当該締約国が協力を拒否することができる理由を含む。当該締約国は、要請が財政に係る犯罪と認められる犯罪に関係することのみを理由として、第二条から第十一条までに定める犯罪について相互援助を拒否する権利を行使してはならない。
5要請を受けた締約国がこの章の規定に基づき双罰性を相互援助の条件とする場合において、援助が求められている犯罪の基礎を成す行為が当該締約国の法令によって犯罪とされているものであるときは、当該援助が求められている犯罪が、当該締約国の法令により、要請を行った締約国における犯罪類型と同一の犯罪類型に含まれるか否か又は同一の用語で定められているか否かにかかわらず、この条件が満たされているものとみなす。

第二十六条 自発的な情報提供
1締約国は、自国が行った捜査の枠組みの中で入手した情報を他の締約国に開示することが、当該他の締約国がこの条約に従って定められる犯罪に関する捜査若しくは刑事訴訟を開始し若しくは実施するに際して役立つ可能性があると認める場合又はそのような開示により当該他の締約国がこの章の規定に基づき協力を要請することとなる可能性があると認める場合には、自国の国内法の範囲内において当該情報を事前の要請なしに当該他の締約国に送付することができる。
21に規定する情報を提供しようとする締約国は、当該情報を提供する前に、当該情報を秘密のものとして取り扱うこと又は一定の条件を満たす場合にのみ使用することを要請することができる。情報を受領することとなる締約国は、そのような要請に応ずることができない場合には、情報を提供しようとする締約国に対しその旨を通報する。この場合において、情報を提供しようとする締約国は、それにもかかわらず情報を提供すべきか否かについて決定する。情報を受領する締約国は、条件が付された情報を受領する場合には、当該条件に拘束される。

第四款 適用される国際協定が存在しない場合の相互援助の要請に関する手続

第二十七条 適用される国際協定が存在しない場合の相互援助の要請に関する手続
1相互援助条約又は統一的若しくは相互主義的な法令を基礎とする取極であって要請を行った締約国と要請を受けた締約国との間において有効なものが存在しない場合には、2から9までの規定を適用する。そのような条約、取極又は法令が存在する場合には、関係締約国がこれらの条約、取極又は法令に代えて2から9までの規定の一部又は全部を適用することを合意したときを除くほか、この条の規定を適用しない。
2a締約国は、相互援助の要請を送付し及び当該要請に回答し、当該要請を実施し又は当該要請を実施する権限を有する当局に対して当該要請を送付する責任を有する一又は二以上の中央当局を指定する。
b中央当局は、直接相互に連絡する。
c締約国は、署名の際又は批准書、受諾書、承認書若しくは加入書の寄託の際に、欧州評議会事務局長に対し、この2の規定に従って指定した中央当局の名称及び所在地を通報する。
d欧州評議会事務局長は、締約国によって指定された中央当局の登録簿を作成し、これを常に最新のものとする。締約国は、登録簿に記載された事項が常に正確であることを確保する。
3この条の規定による相互援助の要請は、当該要請を受けた締約国の法令と両立しない場合を除くほか、当該要請を行った締約国が定める手続に従って実施される。
4要請を受けた締約国は、第二十五条4に規定する拒否の理由がある場合に加え、次の場合には援助を拒否することができる。
a当該要請が、政治犯罪又はこれに関連する犯罪であると自国が認める犯罪に関係する場合
b当該要請の実施により自国の主権、安全、公の秩序その他の重要な利益を害されるおそれがあると自国が認める場合
5要請を受けた締約国は、当該要請に基づく措置が自国の権限のある当局が行う捜査又は刑事訴訟を害することとなる場合には、当該措置をとることを延期することができる。
6要請を受けた締約国は、援助を拒否し又は延期する前に、当該要請を行った締約国と協議し、適当な場合には、当該要請を部分的に認めるか否か又は当該要請を自国が必要と認める条件に従って認めるか否かについて検討する。
7要請を受けた締約国は、当該要請を行った締約国に対し、援助の要請の実施の結果を速やかに通報する。当該要請を拒否し又は延期する場合には、その理由を示さなければならない。また、当該要請を受けた締約国は、当該要請を行った締約国に対し、当該要請を実施することができない理由又は当該要請の実施を著しく遅延させるおそれのある理由を通報する。
8要請を行った締約国は、当該要請を受けた締約国に対し、当該要請の実施に必要な範囲を除くほか、この章の規定に基づく要請の事実及び内容を秘密のものとして取り扱うことを求めることができる。当該要請を受けた締約国は、当該要請を秘密のものとして取り扱うことができない場合には、速やかにその旨を当該要請を行った締約国に通報する。この場合において、当該要請を行った締約国は、それにもかかわらず当該要請が実施されるべきか否かについて決定する。
9a緊急の場合には、相互援助の要請又はこれに関連する通報は、当該要請を行う締約国の司法当局が当該要請を受ける締約国の司法当局に直接行うことができる。この場合において、当該要請を受ける締約国の中央当局に対し、当該要請を行う締約国の中央当局を通じて当該要請の写しを同時に送付する。
bこの9の規定に基づく要請又は通報は、国際刑事警察機構を通じて行うことができる。
caの規定に基づく要請が行われたが、要請を受けた司法当局が当該要請を取り扱う権限を有していない場合には、当該司法当局は、当該要請を自国の権限のある当局に委託し、その委託の事実を当該要請を行った締約国に直接通報する。
dこの9の規定に基づいて行われる要請又は通報(強制的な措置に関するものを除く。 )は、当該要請を行う締約国の権限のある当局が当該要請を受ける締約国の権限のある当局に直接行うことができる。
e締約国は、署名の際又は批准書、受諾書、承認書若しくは加入書の寄託の際に、この9の規定に基づく要請については効率上の理由により自国の中央当局に対して行われるべきことを欧州評議会事務局長に通報することができる。

第二十八条 秘密性及び使用制限
1相互援助条約又は統一的若しくは相互主義的な法令を基礎とする取極であって要請を行った締約国と要請を受けた締約国との間において有効なものが存在しない場合には、この条の規定を適用する。そのような条約、取極又は法令が存在する場合には、関係締約国がこれらの条約、取極又は法令に代えて2から4までの規定の一部又は全部を適用することを合意したときを除くほか、この条の規定を適用しない。
2要請を受けた締約国は、当該要請に応じて情報又は資料を提供するに際し、次の条件を付することができる。
a秘密保持の条件なしでは法律上の相互援助の要請に応じられない場合に当該情報又は資料が秘密のものとして取り扱われること。
b要請書に記載された捜査又は刑事訴訟以外の捜査又は刑事訴訟に当該情報又は資料が使用されないこと。
3要請を行った締約国は、2に定める条件に従うことができない場合には、速やかにその旨を当該要請を受けた締約国に通報する。この場合において、当該要請を受けた締約国は、それにもかかわらず情報を提供すべきか否かについて決定する。当該要請を行った締約国は、そのような条件を受け入れた場合には、当該条件に拘束される。42に定める条件を付して情報又は資料を提供する締約国は、当該条件に関連して、要請を行った締約国に対し、当該情報又は資料がどのように使用されたかについて説明するよう要求することができる。

第二節 特別規定

第一款 暫定措置に関する相互援助

第二十九条 蔵置されたコンピュータ・データの迅速な保全
1締約国は、他の締約国に対し、コンピュータ・システムによって蔵置されたコンピュータ・データであって、当該他の締約国の領域内に所在し、かつ、自国が当該データに関しその捜索若しくはこれに類するアクセス、その押収若しくはこれに類する確保又はその開示のために相互援助の要請を提出する意図を有するものについて、迅速な保全を命令し又はその他の方法によって迅速な保全を確保するよう要請することができる。
21の規定に基づいて行われる保全の要請書には、次の事項を明記する。
a保全を求める当局
b捜査又は刑事訴訟の対象となっている犯罪及び関連する事実の簡潔な要約
c保全すべき蔵置されたコンピュータ・データ及び当該データとbに規定する犯罪との関係
d蔵置されたコンピュータ・データの管理者又はコンピュータ・システムの所在地を特定する情報であって、利用可能なもの
e保全の必要性f締約国が、蔵置されたコンピュータ・データの捜索若しくはこれに類するアクセス、その押収若しくはこれに類する確保又はその開示のために相互援助の要請を提出する意図を有すること。
3締約国は、他の締約国から要請を受けた場合には、特定のデータを自国の国内法に従って迅速に保全するため、すべての適当な措置をとる。締約国は、要請に応ずるに当たり、双罰性をそのような保全を行うための条件として要求してはならない。
4蔵置されたコンピュータ・データの捜索若しくはこれに類するアクセス、その押収若しくはこれに類する確保又はその開示のための相互援助の要請に応ずる条件として双罰性を要求する締約国は、第二条から第十一条までの規定に従って定められる犯罪以外の犯罪に関し、開示の時点で双罰性の条件が満たされないと信ずるに足りる理由がある場合には、この条の規定に基づく保全のための要請を拒否する権利を留保することができる。
5保全のための要請は、4に定める場合に加え、次の場合にのみ拒否することができる。
a当該要請が、政治犯罪又はこれに関連する犯罪であると当該要請を受けた締約国が認める犯罪に関係する場合
b当該要請の実施により自国の主権、安全、公の秩序その他の重要な利益を害されるおそれがあると当該要請を受けた締約国が認める場合
6要請を受けた締約国は、保全によっては当該要請に係るデータの将来における利用可能性が確保されず、又は当該要請を行った締約国の捜査の秘密性が脅かされ若しくはその他の態様で捜査が害されるであろうと信ずる場合には、当該要請を行った締約国に対し速やかにその旨を通報する。この場合において、当該要請を行った締約国は、それにもかかわらず当該要請が実施されるべきか否かについて決定する。
71に定める要請に応ずるために行われた保全は、当該要請を行った締約国が蔵置されたコンピュータ・データの捜索若しくはこれに類するアクセス、その押収若しくはこれに類する確保又はその開示のための要請を提出することができるようにするため六十日以上の期間のものとする。当該データは、当該要請を受領した後、当該要請に関する決定が行われるまでの間引き続き保全される。

第三十条 保全された通信記録の迅速な開示
1前条の規定に基づいて行われた要請を受けた締約国は、特定の通信に関する通信記録の保全のための要請を実施する過程において、他の国のサービス・プロバイダが当該通信の伝達に関与していたことを知った場合には、要請を行った締約国に対し、当該サービス・プロバイダ及び当該通信が伝達された経路を特定するために十分な量の通信記録を迅速に開示する。
21の規定に基づく通信記録の開示は、次の場合にのみ行わないことができる。
a要請が、政治犯罪又はこれに関連する犯罪であると当該要請を受けた締約国が認める犯罪に関係する場合
b要請の実施により自国の主権、安全、公の秩序その他の重要な利益を害されるおそれがあると当該要請を受けた締約国が認める場合

第二款 捜査の権限に関する相互援助

第三十一条 蔵置されたコンピュータ・データに対するアクセスに関する相互援助
1締約国は、他の締約国に対し、コンピュータ・システムによって蔵置されたコンピュータ・データ(第二十九条の規定に従って保全されたデータを含む。 )であって当該他の締約国の領域内に所在するものの捜索若しくはこれに類するアクセス、その押収若しくはこれに類する確保又はその開示を要請することができる。
2要請を受けた締約国は、第二十三条に規定する国際文書、取極及び法令の適用を通じ、かつ、この章の他の関連する規定に従って、当該要請に応じなければならない。
3要請を受けた締約国は、次の場合には、迅速に当該要請に応じなければならない。
a関連するデータが特に滅失しやすく又は改変されやすいと信ずるに足りる理由がある場合
b2に規定する国際文書、取極及び法令に迅速な協力について別段の定めがある場合

第三十二条 蔵置されたコンピュータ・データに対する国境を越えるアクセス(当該アクセスが同意に基づく場合又は当該データが公に利用可能な場合)
 締約国は、他の締約国の許可なしに、次のことを行うことができる。
a公に利用可能な蔵置されたコンピュータ・データにアクセスすること(当該データが地理的に所在する場所のいかんを問わない。)。
b自国の領域内にあるコンピュータ・システムを通じて、他の締約国に所在する蔵置されたコンピュータ・データにアクセスし又はこれを受領すること。ただし、コンピュータ・システムを通じて当該データを自国に開示する正当な権限を有する者の合法的なかつ任意の同意が得られる場合に限る。

第三十三条 通信記録のリアルタイム収集に関する相互援助
1締約国は、コンピュータ・システムによって伝達される自国の領域内における特定の通信に係る通信記録をリアルタイムで収集することについて、相互に援助を提供する。2の規定に従うことを条件として、この援助は、国内法に定める条件及び手続に従って行う。
2締約国は、少なくとも国内の類似の事件において通信記録のリアルタイム収集を行うことができる犯罪については、1に規定する援助を提供する。

第三十四条 通信内容の傍受に関する相互援助
 締約国は、自国に適用される条約及び国内法によって認められている範囲内で、コンピュータ・システムによって伝達される特定の通信の通信内容をリアルタイムで収集し又は記録することについて、相互に援助を提供する。

第三款二十四/七ネットワーク

第三十五条 二十四/七ネットワーク
1締約国は、コンピュータ・システム及びコンピュータ・データに関連する犯罪に関する捜査若しくは刑事訴訟のため又は犯罪に関する電子的形態の証拠の収集のために速やかに援助することを確保するため、週七日かつ一日二十四時間利用可能な連絡部局を指定する。その援助には、次の措置を促進すること又は国内法及び慣行によって認められている場合には次の措置を直接とることを含む。
a技術上の助言を提供すること。
b第二十九条及び第三十条の規定に従いデータを保全すること。
c証拠を収集し、法律上の情報を提供し、及び容疑者の所在を探すこと。
2a締約国の連絡部局は、他の締約国の連絡部局と迅速に通信する能力を有する。
b締約国が指定する連絡部局は、国際的な相互援助又は犯罪人引渡しについて責任を有する当該締約国の当局の一部でない場合には、当該責任を有する当局と迅速に調整を行うことができることを確保する。
3締約国は、二十四/七ネットワークの運用を促進するため、訓練されかつ装備された要員が利用可能であることを確保する。

第四章 最終規定

第三十六条 署名及び効力発生
1この条約は、欧州評議会の加盟国及びこの条約の作成に参加した欧州評議会の非加盟国による署名のために開放しておく。
2この条約は、批准され、受諾され又は承認されなければならない。批准書、受諾書又は承認書は、欧州評議会事務局長に寄託する。
3この条約は、五の国(欧州評議会の加盟国の少なくとも三の国を含むことを要する。 )が、この条約に拘束されることに同意する旨を1及び2の規定に従って表明した日の後三箇月の期間が満了する日の属する月の翌月の初日に効力を生ずる。
4この条約は、この条約に拘束されることに同意する旨をその後表明する署名国については、その旨を1及び2の規定に従って表明した日の後三箇月の期間が満了する日の属する月の翌月の初日に効力を生ずる。

第三十七条 この条約への加入
1この条約の効力発生の後、欧州評議会閣僚委員会は、この条約の締約国と協議してすべての締約国の同意を得た後に、この条約の作成に参加しなかった欧州評議会の非加盟国に対してこの条約に加入するよう招請することができる。決定は、欧州評議会規程第二十条dに定める多数による議決であって同委員会に出席する資格を有するすべての締約国の代表の賛成票を含むものによって行う。
2この条約は、1の規定によりこの条約に加入する国については、加入書を欧州評議会事務局長に寄託した日の後三箇月の期間が満了する日の属する月の翌月の初日に効力を生ずる。

第三十八条 適用領域
1いずれの国も、署名の際又は批准書、受諾書、承認書若しくは加入書の寄託の際に、この条約を適用する領域を特定することができる。
2いずれの国も、その後いつでも、欧州評議会事務局長にあてた宣言により、当該宣言において特定する他の領域についてこの条約の適用を拡大することができる。この条約は、当該他の領域については、同事務局長が当該宣言を受領した日の後三箇月の期間が満了する日の属する月の翌月の初日に効力を生ずる。
31又は2の規定に基づいて行われたいかなる宣言も、当該宣言において特定された領域について、欧州評議会事務局長にあてた通告により撤回することができる。撤回は、同事務局長が通告を受領した日の後三箇月の期間が満了する日の属する月の翌月の初日に効力を生ずる。

第三十九条 この条約の効果
1この条約は、締約国間で適用される多数国間又は二国間の条約及び取極を補足することを目的とする。これらの条約及び取極には、次のものを含む。千九百五十七年十二月十三日にパリにおいて署名のために開放された犯罪人引渡しに関する欧州条約(ETS第二十四号)千九百五十九年四月二十日にストラスブールにおいて署名のために開放された刑事問題についての相互援助に関する欧州条約(ETS第三十号)千九百七十八年三月十七日にストラスブールにおいて署名のために開放された刑事問題についての相互援助に関する欧州条約の追加議定書(ETS第九十九号)
2二以上の締約国は、この条約に規定する事項に関して、既に協定若しくは条約を締結し若しくは他の方法による固有の関係を確立している場合又は将来そのような協定若しくは条約を締結し若しくはそのような関係を確立する場合には、当該協定若しくは条約を適用し又は当該他の方法による関係に従って当該締約国間の関係を規律する権利を有する。締約国は、この条約に規定する事項に関しこの条約が規律する態様以外の態様でそのような関係を確立する場合には、この条約の目的及び原則に反しないように行う。
3この条約のいかなる規定も、締約国が有する他の権利、制限、義務及び責任に影響を及ぼすものではない。

第四十条 宣言
 いずれの国も、欧州評議会事務局長にあてた書面による通告により、署名の際又は批准書、受諾書、承認書若しくは加入書の寄託の際に、第二条、第三条、第六条1b、第七条、第九条3及び第二十七条9eに定める追加的な要件を課することを宣言することができる。

第四十一条 連邦条項
1連邦制の国は、第三章に定める協力を行うことができることを条件として、第二章に定める義務を中央政府と州その他これに類する領域的主体との間の関係を規律する基本原則に適合する範囲において履行する権利を留保することができる。
2連邦制の国は、1の規定に基づく留保を付する場合には、第二章に定める措置について規定する義務を免除し又は著しく減ずることとなる内容の留保を付してはならない。連邦制の国は、いかなる場合にも、第二章に定める措置について幅広くかつ効果的な法執行能力を規定する。
3この条約の規定であって、州その他これに類する領域的主体の管轄の下で実施されるものであり、かつ、連邦の憲法制度によって州その他これに類する領域的主体が立法措置をとることを義務付けられていないものについては、連邦の政府は、これらの州の権限のある当局に対し、好意的な意見を付してその規定を通報し、その実施のために適当な措置をとることを奨励する。

第四十二条 留保
 いずれの国も、欧州評議会事務局長にあてた書面による通告により、署名の際又は批准書、受諾書、承認書若しくは加入書の寄託の際に、第四条2、第六条3、第九条4、第十条3、第十一条3、第十四条3、第二十二条2、第二十九条4及び第四十一条1に定める留保を付する旨を宣言することができる。その他のいかなる留保も、付することができない。

第四十三条 留保の撤回
1前条の規定に従って留保を付した締約国は、欧州評議会事務局長にあてた通告により留保の全部又は一部を撤回することができる。撤回は、同事務局長が通告を受領した日に効力を生ずる。通告において特定された日に留保の撤回が効力を生ずる旨が記載されており、かつ、当該特定された日が同事務局長による当該通告の受領の日よりも遅い日である場合には、撤回は、当該特定された日に効力を生ずる。
2前条に規定する留保を付した締約国は、状況が許す場合には、その留保の全部又は一部を速やかに撤回する。
3欧州評議会事務局長は、前条に規定する留保を付した締約国に対し、その留保の撤回の見込みについて定期的に照会することができる。

第四十四条 改正
1いずれの締約国も、この条約の改正を提案することができる。欧州評議会事務局長は、改正案を欧州評議会の加盟国、この条約の作成に参加した欧州評議会の非加盟国及び第三十七条の規定によりこの条約に加入し又は加入するよう招請された国に通報する。
2締約国が提案する改正案は、犯罪問題に関する欧州委員会(CDPC)に通報され、CDPCは、当該改正案に関する意見を欧州評議会閣僚委員会に提出する。
3欧州評議会閣僚委員会は、改正案及びCDPCによって提出された意見を検討するものとし、欧州評議会の非加盟国であってこの条約の締約国であるものと協議を行った後、当該改正案を採択することができる。
43の規定に従って欧州評議会閣僚委員会によって採択された改正は、受諾のため締約国に送付される。
53の規定に従って採択された改正は、すべての締約国が欧州評議会事務局長に対しこれを受諾する旨を通告した後三十日目の日に効力を生ずる。

第四十五条 紛争の解決
1犯罪問題に関する欧州委員会(CDPC)は、この条約の解釈及び適用に関して常時通報を受ける。
2この条約の解釈又は適用に関して締約国間で紛争が生じた場合には、当該締約国は、交渉又はその選択する他の平和的手段(関係締約国間の合意に基づき、当該紛争をCDPC、締約国を拘束する決定を行う仲裁裁判所又は国際司法裁判所に付託すること等)により紛争の解決に努める。

第四十六条 締約国間の協議
1締約国は、適当な場合には、次のことを促進するため定期的に協議する。
aこの条約の効果的な活用及び実施(これらに関する問題の特定及びこの条約に基づいて行われた宣言又は留保の効果を含む。 )
bサイバー犯罪及び電子的形態の証拠の収集に関連する法律上、政策上又は技術上の著しい進展に関する情報の交換
cこの条約の補足又は改正の検討
2犯罪問題に関する欧州委員会(CDPC)は、1に規定する協議の結果に関して定期的に通報を受ける。
3CDPCは、適当な場合には、1に規定する協議を促進するものとし、締約国がこの条約の補足又は改正のために努力することを支援するために必要な措置をとる。CDPCは、この条約が効力を生じた後三年以内に、締約国と協力してこの条約のすべての規定を再検討し、必要な場合には、適当な改正を勧告する。
41の規定の実施に要する費用は、欧州評議会が負担する場合を除くほか、締約国が決定する方法で締約国が負担する。
5締約国は、この条の規定に基づく任務を遂行するに当たり、欧州評議会事務局の支援を受ける。

第四十七条 廃棄
1いずれの締約国も、欧州評議会事務局長にあてた通告により、いつでもこの条約を廃棄することができる。
2廃棄は、欧州評議会事務局長が通告を受領した日の後三箇月の期間が満了する日の属する月の翌月の初日に効力を生ずる。

第四十八条 通報
 欧州評議会事務局長は、欧州評議会の加盟国、この条約の作成に参加した欧州評議会の非加盟国及びこの条約に加入し又は加入するよう招請された国に対して次の事項を通報する。
a署名
b批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託
c第三十六条及び第三十七条の規定による効力発生の日
d第四十条の規定に従って行われた宣言及び第四十二条の規定に従って付された留保
eこの条約に関して行われたその他の行為、通告又は通報
 以上の証拠として、下名は、正当に委任を受けてこの条約に署名した。

 二千一年十一月二十三日にブダペストで、ひとしく正文である英語及びフランス語により本書一通を作成した。本書は、欧州評議会に寄託する。欧州評議会事務局長は、欧州評議会の各加盟国、この条約の作成に参加した欧州評議会の非加盟国及びこの条約に加入するよう招請されたすべての国に対しその認証謄本を送付する。

       内閣総理大臣 野田佳彦
       総務大臣   川端達夫
       法務大臣   滝実
       外務大臣   玄葉光一郎
       文部科学大臣 平野博文
       経済産業大臣 枝野幸男

   「ウィキソース」より

〇同じ日の過去の出来事(以前にブログで紹介した記事)

1703年(元禄16)房総半島沖を震源とする元禄地震がおきる(新暦12月31日)詳細
1707年(宝永4) 富士山宝永噴火が始まる(新暦12月16日)詳細
1885年(明治18)自由民権運動激化事件の一つである大阪事件が起きる詳細
1896年(明治29)小説家樋口一葉の命日(一葉忌)詳細
1909年(明治42)大阪・長堀川に石造りの心斎橋が完成し、渡り初め式が行われ詳細
1940年(昭和15)産業報国会の全国連合組織として大日本産業報国会が結成される詳細
2004年(平成16)洋画家吉井淳二の命日詳細
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 今日は、平成時代の1989年(平成元)に、国連総会において、「児童の権利に関する条約」が採択された日です。
 「児童の権利に関する条約」(じどうのけんりにかんするじょうやく)は、1959年(昭和34)11月20日に国連(国際連合)で採択された「児童の権利に関する宣言」の30周年にあたる、1989年(平成元)11月20日に国連総会で全会一致で採択され、1990年(平成2)9月2日に、国際条約として発効した18歳未満の子供の権利について定めた国際条約で「子どもの権利条約」とも呼ばれてきました。日本国内では、1994年(平成6)3月29日に国会承認され、同年5月22日から効力が発生しましたが、「批准国は子の最善の利益のために行動しなければならない」(第3条)と定められています。
 この条約は、前文と 3部(54条)からなり、18歳未満のすべての人の保護と基本的人権の尊重を促進することを目的とし、①生命・生存への権利、②親・家族にかかわる子供の権利、③意見表明権、市民的権利、④特別な状況下にある子供の保護、⑤教育への権利、文化への権利などが示されました。2016年(平成28)現在、署名国・地域数は140、締約国・地域数は196ですが、アメリカ合衆国は条約に署名はしたものの、批准していません。
 以下に、「児童の権利に関する条約」の日本語訳を全文掲載しておきますので、ご参照下さい。

〇児童の権利に関する宣言(じどうのけんりにかんするせんげん)とは?

 昭和時代中期の1959年(昭和34)11月20日に、国連総会において採択された子どもの権利を促進するための国際文書です。前段として、1924年(昭和19)に、5ヶ条からなる「ジュネーブ児童権利宣言」が、国際連盟で採択され、太平洋戦争後に拡張されたものでした。「国連憲章」と「世界人権宣言」に基づくもので、前文6項と本文10ヶ条からなり、心身ともに未成熟な子供が,健全な成育と幸福と社会的諸権利を保障されるべきことを確認したものでした。
 これを実現するために、両親、個人、民間団体、地方行政機関および政府が、この宣言に従って立法およびその他の措置を講じることを求めています。日本は、1959年(昭和34)12月に参議院本会議で支持を決議しました。

☆「児童の権利に関する条約」1989年(平成元)11月20日採択、1990年(平成2)9月2日発効

前文

 この条約の締約国は、
 国際連合憲章において宣明された原則によれば、人類社会のすべての構成員の固有の尊厳及び平等のかつ奪い得ない権利を認めることが世界における自由、正義及び平和の基礎を成すものであることを考慮し、
 国際連合加盟国の国民が、国際連合憲章において、基本的人権並びに人間の尊厳及び価値に関する信念を改めて確認し、かつ、一層大きな自由の中で社会的進歩及び生活水準の向上を促進することを決意したことに留意し、
 国際連合が、世界人権宣言及び人権に関する国際規約において、すべての人は人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生又は他の地位等によるいかなる差別もなしに同宣言及び同規約に掲げるすべての権利及び自由を享有することができることを宣明し及び合意したことを認め、
 国際連合が、世界人権宣言において、児童は特別な保護及び援助についての権利を享有することができることを宣明したことを想起し、
 家族が、社会の基礎的な集団として、並びに家族のすべての構成員、特に、児童の成長及び福祉のための自然な環境として、社会においてその責任を十分に引き受けることができるよう必要な保護及び援助を与えられるべきであることを確信し、
 児童が、その人格の完全なかつ調和のとれた発達のため、家庭環境の下で幸福、愛情及び理解のある雰囲気の中で成長すべきであることを認め、
 児童が、社会において個人として生活するため十分な準備が整えられるべきであり、かつ、国際連合憲章において宣明された理想の精神並びに特に平和、尊厳、寛容、自由、平等及び連帯の精神に従って育てられるべきであることを考慮し、
 児童に対して特別な保護を与えることの必要性が、1924年の児童の権利に関するジュネーヴ宣言及び1959年11月20日に国際連合総会で採択された児童の権利に関する宣言において述べられており、また、世界人権宣言、市民的及び政治的権利に関する国際規約(特に第23条及び第24条)、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(特に第10条)並びに児童の福祉に関係する専門機関及び国際機関の規程及び関係文書において認められていることに留意し、
 児童の権利に関する宣言において示されているとおり「児童は、身体的及び精神的に未熟であるため、その出生の前後において、適当な法的保護を含む特別な保護及び世話を必要とする。」ことに留意し、
 国内の又は国際的な里親委託及び養子縁組を特に考慮した児童の保護及び福祉についての社会的及び法的な原則に関する宣言、少年司法の運用のための国際連合最低基準規則(北京規則)及び緊急事態及び武力紛争における女子及び児童の保護に関する宣言の規定を想起し、
 極めて困難な条件の下で生活している児童が世界のすべての国に存在すること、また、このような児童が特別の配慮を必要としていることを認め、
 児童の保護及び調和のとれた発達のために各人民の伝統及び文化的価値が有する重要性を十分に考慮し、
 あらゆる国特に開発途上国における児童の生活条件を改善するために国際協力が重要であることを認めて、
 次のとおり協定した。

第一部

第一条 [定義]
この条約の適用上、児童とは、18歳未満のすべての者をいう。ただし、当該児童で、その者に適用される法律によりより早く成年に達したものを除く。
第二条 [差別の禁止]
締約国は、その管轄の下にある児童に対し、児童又はその父母若しくは法定保護者の人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、種族的若しくは社会的出身、財産、心身障害、出生又は他の地位にかかわらず、いかなる差別もなしにこの条約に定める権利を尊重し、及び確保する。
締約国は、児童がその父母、法定保護者又は家族の構成員の地位、活動、表明した意見又は信念によるあらゆる形態の差別又は処罰から保護されることを確保するためのすべての適当な措置をとる。
第三条 [児童の利益の最優先]
児童に関するすべての措置をとるに当たっては、公的若しくは私的な社会福祉施設、裁判所、行政当局又は立法機関のいずれによって行われるものであっても、児童の最善の利益が主として考慮されるものとする。
締約国は、児童の父母、法定保護者又は児童について法的に責任を有する他の者の権利及び義務を考慮に入れて、児童の福祉に必要な保護及び養護を確保することを約束し、このため、すべての適当な立法上及び行政上の措置をとる。
締約国は、児童の養護又は保護のための施設、役務の提供及び設備が、特に安全及び健康の分野に関し並びにこれらの職員の数及び適格性並びに適正な監督に関し権限のある当局の設定した基準に適合することを確保する。
第四条 [条約義務の実施]
締約国は、この条約において認められる権利の実現のため、すべての適当な立法措置、行政措置その他の措置を講ずる。締約国は、経済的、社会的及び文化的権利に関しては、自国における利用可能な手段の最大限の範囲内で、また、必要な場合には国際協力の枠内で、これらの措置を講ずる。
第五条 [保護者の指導の尊重]
締約国は、児童がこの条約において認められる権利を行使するに当たり、父母若しくは場合により地方の慣習により定められている大家族若しくは共同体の構成員、法定保護者又は児童について法的に責任を有する他の者がその児童の発達しつつある能力に適合する方法で適当な指示及び指導を与える責任、権利及び義務を尊重する。
第六条 [生命に対する権利]
締約国は、すべての児童が生命に対する固有の権利を有することを認める。
締約国は、児童の生存及び発達を可能な最大限の範囲において確保する。
第七条 [氏名及び国籍に対する権利]
児童は、出生の後直ちに登録される。児童は、出生の時から氏名を有する権利及び国籍を取得する権利を有するものとし、また、できる限りその父母を知りかつその父母によって養育される権利を有する。
締約国は、特に児童が無国籍となる場合を含めて、国内法及びこの分野における関連する国際文書に基づく自国の義務に従い、1の権利の実現を確保する。
第八条 [身元関係事項の保持]
締約国は、児童が法律によって認められた国籍、氏名及び家族関係を含むその身元関係事項について不法に干渉されることなく保持する権利を尊重することを約束する。
締約国は、児童がその身元関係事項の一部又は全部を不法に奪われた場合には、その身元関係事項を速やかに回復するため、適当な援助及び保護を与える。
第九条 [父母からの分離の防止]
締約国は、児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する。ただし、権限のある当局が司法の審査に従うことを条件として適用のある法律及び手続に従いその分離が児童の最善の利益のために必要であると決定する場合は、この限りでない。このような決定は、父母が児童を虐待し若しくは放置する場合又は父母が別居しており児童の居住地を決定しなければならない場合のような特定の場合において必要となることがある。
すべての関係当事者は、1の規定に基づくいかなる手続においても、その手続に参加しかつ自己の意見を述べる機会を有する。
締約国は、児童の最善の利益に反する場合を除くほか、父母の一方又は双方から分離されている児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係及び直接の接触を維持する権利を尊重する。
3の分離が、締約国がとった父母の一方若しくは双方又は児童の抑留、拘禁、追放、退去強制、死亡(その者が当該締約国により身体を拘束されている間に何らかの理由により生じた死亡を含む。)等のいずれかの措置に基づく場合には、当該締約国は、要請に応じ、父母、児童又は適当な場合には家族の他の構成員に対し、家族のうち不在となっている者の所在に関する重要な情報を提供する。ただし、その情報の提供が児童の福祉を害する場合は、この限りでない。締約国は、更に、その要請の提出自体が関係者に悪影響を及ぼさないことを確保する。
第一〇条 [家族の再統合の支援]
前条1の規定に基づく締約国の義務に従い、家族の再統合を目的とする児童又はその父母による締約国への入国又は締約国からの出国の申請については、締約国が積極的、人道的かつ迅速な方法で取り扱う。締約国は、更に、その申請の提出が申請者及びその家族の構成員に悪影響を及ぼさないことを確保する。
父母と異なる国に居住する児童は、例外的な事情がある場合を除くほか定期的に父母との人的な関係及び直接の接触を維持する権利を有する。このため、前条1の規定に基づく締約国の義務に従い、締約国は、児童及びその父母がいずれの国(自国を含む。)からも出国し、かつ、自国に入国する権利を尊重する。出国する権利は、法律で定められ、国の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳又は他の者の権利及び自由を保護するために必要であり、かつ、この条約において認められる他の権利と両立する制限にのみ従う。
第一一条 [不法な国外移送等の防止]
締約国は、児童が不法に国外へ移送されることを防止し及び国外から帰還することができない事態を除去するための措置を講ずる。
このため、締約国は、二国間若しくは多数国間の協定の締結又は現行の協定への加入を促進する。
第一二条 [意思表明の権利]
締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする。
このため、児童は、特に、自己に影響を及ぼすあらゆる司法上及び行政上の手続において、国内法の手続規則に合致する方法により直接に又は代理人若しくは適当な団体を通じて聴取される機会を与えられる。
第一三条 [表現の自由]
児童は、表現の自由についての権利を有する。この権利には、口頭、手書き若しくは印刷、芸術の形態又は自ら選択する他の方法により、国境とのかかわりなく、あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む。
1の権利の行使については、一定の制限を課することができる。ただし、その制限は、法律によって定められ、かつ、次の目的のために必要とされるものに限る。
(a) 他の者の権利又は信用の尊重
(b) 国の安全、公の秩序又は公衆の健康若しくは道徳の保護
第一四条 [思想、良心及び宗教の自由]
締約国は、思想、良心及び宗教の自由についての児童の権利を尊重する。
締約国は、児童が1の権利を行使するに当たり、父母及び場合により法定保護者が児童に対しその発達しつつある能力に適合する方法で指示を与える権利及び義務を尊重する。
宗教又は信念を表明する自由については、法律で定める制限であって公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳又は他の者の基本的な権利及び自由を保護するために必要なもののみを課することができる。
第一五条 [結社及び集会の自由]
締約国は、結社の自由及び平和的な集会の自由についての児童の権利を認める。
1の権利の行使については、法律で定める制限であって国の安全若しくは公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳の保護又は他の者の権利及び自由の保護のため民主的社会において必要なもの以外のいかなる制限も課することができない。
第一六条 [私生活、名誉及び信頼の保護]
いかなる児童も、その私生活、家族、住居若しくは通信に対して恣意的に若しくは不法に干渉され又は名誉及び信用を不法に攻撃されない。
児童は、1の干渉又は攻撃に対する法律の保護を受ける権利を有する。
第一七条 [マス・メディアの活用]
締約国は、大衆媒体(マス・メディア)の果たす重要な機能を認め、児童が国の内外の多様な情報源からの情報及び資料、特に児童の社会面、精神面及び道徳面の福祉並びに心身の健康の促進を目的とした情報及び資料を利用することができることを確保する。このため、締約国は、
(a) 児童にとって社会面及び文化面において有益であり、かつ、第29条の精神に沿う情報及び資料を大衆媒体(マス・メディア)が普及させるよう奨励する。
(b) 国の内外の多様な情報源(文化的にも多様な情報源を含む。)からの情報及び資料の作成、交換及び普及における国際協力を奨励する。
(c) 児童用書籍の作成及び普及を奨励する。
(d) 少数集団に属し又は原住民である児童の言語上の必要性について大衆媒体(マス・メディア)が特に考慮するよう奨励する。
(e)第13条及び次条の規定に留意して、児童の福祉に有害な情報及び資料から児童を保護するための適当な指針を発展させることを奨励する。
第一八条 [父母の責任と父母への支援]
締約国は、児童の養育及び発達について父母が共同の責任を有するという原則についての認識を確保するために最善の努力を払う。父母又は場合により法定保護者は、児童の養育及び発達についての第一義的な責任を有する。児童の最善の利益は、これらの者の基本的な関心事項となるものとする。
締約国は、この条約に定める権利を保障し及び促進するため、父母及び法定保護者が児童の養育についての責任を遂行するに当たりこれらの者に対して適当な援助を与えるものとし、また、児童の養護のための施設、設備及び役務の提供の発展を確保する。
締約国は、父母が働いている児童が利用する資格を有する児童の養護のための役務の提供及び設備からその児童が便益を受ける権利を有することを確保するためのすべての適当な措置をとる。
第一九条 [虐待等からの保護]
締約国は、児童が父母、法定保護者又は児童を監護する他の者による監護を受けている間において、あらゆる形態の身体的若しくは精神的な暴力、傷害若しくは虐待、放置若しくは怠慢な取扱い、不当な取扱い又は搾取(性的虐待を含む。)からその児童を保護するためすべての適当な立法上、行政上、社会上及び教育上の措置をとる。
1の保護措置には、適当な場合には、児童及び児童を監護する者のために必要な援助を与える社会的計画の作成その他の形態による防止のための効果的な手続並びに1に定める児童の不当な取扱いの事件の発見、報告、付託、調査、処置及び事後措置並びに適当な場合には司法の関与に関する効果的な手続を含むものとする。
第二〇条 [家庭環境を奪われた児童の保護]
一時的若しくは恒久的にその家庭環境を奪われた児童又は児童自身の最善の利益にかんがみその家庭環境にとどまることが認められない児童は、国が与える特別の保護及び援助を受ける権利を有する。
締約国は、自国の国内法に従い、1の児童のための代替的な監護を確保する。
2の監護には、特に、里親委託、イスラム法の力ファーラ、養子縁組又は必要な場合には児童の監護のための適当な施設への収容を含むことができる。解決策の検討に当たっては、児童の養育において継続性が望ましいこと並びに児童の種族的、宗教的、文化的及び言語的な背景について、十分な考慮を払うものとする。
第二一条 [養子縁組]
養子縁組の制度を認め又は許容している締約国は、児童の最善の利益について最大の考慮が払われることを確保するものとし、また、
(a) 児童の養子縁組が権限のある当局によってのみ認められることを確保する。この場合において、当該権限のある当局は、適用のある法律及び手続に従い、かつ、信頼し得るすべての関連情報に基づき、養子縁組が父母、親族及び法定保護者に関する児童の状況にかんがみ許容されること並びに必要な場合には、関係者が所要のカウンセリングに基づき養子縁組について事情を知らされた上での同意を与えていることを認定する。
(b) 児童がその出身国内において里親若しくは養家に託され又は適切な方法で監護を受けることができない場合には、これに代わる児童の監護の手段として国際的な養子縁組を考慮することができることを認める。
(c) 国際的な養子縁組が行われる児童が国内における養子縁組の場合における保護及び基準と同等のものを享受することを確保する。
(d) 国際的な養子縁組において当該養子縁組が関係者に不当な金銭上の利得をもたらすことがないことを確保するためのすべての適当な措置をとる。
(e) 適当な場合には、二国間又は多数国間の取極又は協定を締結することによりこの条の目的を促進し、及びこの枠組みの範囲内で他国における児童の養子縁組が権限のある当局又は機関によって行われることを確保するよう努める。
第二二条 [難民児童の保護]
締約国は、難民の地位を求めている児童又は適用のある国際法及び国際的な手続若しくは国内法及び国内的な手続に基づき難民と認められている児童が、父母又は他の者に付き添われているかいないかを間わず、この条約及び自国が締約国となっている人権又は人道に関する他の国際文書に定める権利であって適用のあるものの享受に当たり、適当な保護及び人道的援助を受けることを確保するための適当な措置をとる。
このため、締約国は、適当と認める場合には、1の児童を保護し及び援助するため、並びに難民の児童の家族との再統合に必要な情報を得ることを目的としてその難民の児童の父母又は家族の他の構成員を捜すため、国際連合及びこれと協力する他の権限のある政府間機関又は関係非政府機関による努力に協力する。その難民の児童は、父母又は家族の他の構成員が発見されない場合には、何らかの理由により恒久的又は一時的にその家庭環境を奪われた他の児童と同様にこの条約に定める保護が与えられる。
第二三条 [障害児童の権利]
締約国は、精神的又は身体的な障害を有する児童が、その尊厳を確保し、自立を促進し及び社会への積極的な参加を容易にする条件の下で十分かつ相応な生活を享受すべきであることを認める。
締約国は、障害を有する児童が特別の養護についての権利を有することを認めるものとし、利用可能な手段の下で、申込みに応じた、かつ、当該児童の状況及び父母又は当該児童を養護している他の者の事情に適した援助を、これを受ける資格を有する児童及びこのような児童の養護について責任を有する者に与えることを奨励し、かつ、確保する。
障害を有する児童の特別な必要を認めて、2の規定に従って与えられる援助は、父母又は当該児童を養護している他の者の資力を考慮して可能な限り無償で与えられるものとし、かつ、障害を有する児童が可能な限り社会への統合及び個人の発達(文化的及び精神的な発達を含む。)を達成することに資する方法で当該児童が教育、訓練、保健サービス、リハビリテーション・サービス、雇用のための準備及びレクリエーションの機会を実質的に利用し及び享受することができるように行われるものとする。
締約国は、国際協力の精神により、予防的な保健並びに障害を有する児童の医学的、心理学的及び機能的治療の分野における適当な情報の交換(リハビリテーション、教育及び職業サービスの方法に関する情報の普及及び利用を含む。)であってこれらの分野における自国の能力及び技術を向上させ並びに自国の経験を広げることができるようにすることを目的とするものを促進する。これに関しては、特に、開発途上国の必要を考慮する。
第二四条 [健康を享受する権利]
締約国は、到達可能な最高水準の健康を享受すること並びに病気の治療及び健康の回復のための便宜を与えられることについての児童の権利を認める。締約国は、いかなる児童もこのような保健サービスを利用する権利が奪われないことを確保するために努力する。
締約国は、1の権利の完全な実現を追求するものとし、特に、次のことのための適当な措置をとる。
(a) 幼児及び児童の死亡率を低下させること。
(b) 基礎的な保健の発展に重点を置いて必要な医療及び保健をすべての児童に提供することを確保すること。
(c) 環境汚染の危険を考慮に入れて、基礎的な保健の枠組みの範囲内で行われることを含めて、特に容易に利用可能な技術の適用により並びに十分に栄養のある食物及び清潔な飲料水の供給を通じて、疾病及び栄養不良と闘うこと。
(d) 母親のための産前産後の適当な保健を確保すること。
(e) 社会のすべての構成員特に父母及び児童が、児童の健康及び栄養、母乳による育児の利点、衛生(環境衛生を含む。)並びに事故の防止についての基礎的な知識に関して、情報を提供され、教育を受ける機会を有し及びその知識の使用について支援されることを確保すること。
(f) 予防的な保健、父母のための指導並びに家族計画に関する教育及びサービスを発展させること。
締約国は、児童の健康を害するような伝統的な慣行を廃止するため、効果的かつ適当なすべての措置をとる。
締約国は、この条において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成するため、国際協力を促進し及び奨励することを約束する。これに関しては、特に、開発途上国の必要を考慮する。
第二五条 [児童収容措置に対する審査]
締約国は、児童の身体又は精神の養護、保護又は治療を目的として権限のある当局によって収容された児童に対する処遇及びその収容に関連する他のすべての状況に関する定期的な審査が行われることについての児童の権利を認める。
第二六条 [社会保障に対する権利]
締約国は、すべての児童が社会保険その他の社会保障からの給付を受ける権利を認めるものとし、自国の国内法に従い、この権利の完全な実現を達成するための必要な措置をとる。
1の給付は、適当な場合には、児童及びその扶養について責任を有する者の資力及び事情並びに児童によって又は児童に代わって行われる給付の申請に関する他のすべての事項を考慮して、与えられるものとする。
第二七条 [生活水準に関する権利]
締約国は、児童の身体的、精神的、道徳的及び社会的な発達のための相当な生活水準についてのすべての児童の権利を認める。
父母又は児童について責任を有する他の者は、自己の能力及び資力の範囲内で、児童の発達に必要な生活条件を確保することについての第一義的な責任を有する。
締約国は、国内事情に従い、かつ、その能力の範囲内で、1の権利の実現のため、父母及び児童について責任を有する他の者を援助するための適当な措置をとるものとし、また、必要な場合には、特に栄養、衣類及び住居に関して、物的援助及び支援計画を提供する。
締約国は、父母又は児童について金銭上の責任を有する他の者から、児童の扶養料を自国内で及び外国から、回収することを確保するためのすべての適当な措置をとる。特に、児童について金銭上の責任を有する者が児童と異なる国に居住している場合には、締約国は、国際協定への加入又は国際協定の締結及び他の適当な取決めの作成を促進する。
第二八条 [教育に関する権利]
締約国は、教育についての児童の権利を認めるものとし、この権利を漸進的にかつ機会の平等を基礎として達成するため、特に、
(a) 初等教育を義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとする。
(b) 種々の形態の中等教育(一般教育及び職業教育を含む。)の発展を奨励し、すべての児童に対し、これらの中等教育が利用可能であり、かつ、これらを利用する機会が与えられるものとし、例えば、無償教育の導入、必要な場合における財政的援助の提供のような適当な措置をとる。
(c) すべての適当な方法により、能力に応じ、すべての者に対して高等教育を利用する機会が与えられるものとする。
(d) すべての児童に対し、教育及び職業に関する情報及び指導が利用可能であり、かつ、これらを利用する機会が与えられるものとする。
(e) 定期的な登校及び中途退学率の減少を奨励するための措置をとる。
締約国は、学校の規律が児童の人間の尊厳に適合する方法で及びこの条約に従って運用されることを確保するためのすべての適当な措置をとる。
締約国は、特に全世界における無知及び非識字の廃絶に寄与し並びに科学上及び技術上の知識並びに最新の教育方法の利用を容易にするため、教育に関する事項についての国際協力を促進し、及び奨励する。これに関しては、特に、開発途上国の必要を考慮する。
第二九条 [教育の目的]
締約国は、児童の教育が次のことを指向すべきことに同意する。
(a) 児童の人格、才能並びに精神的及び身体的な能力をその可能な最大限度まで発達させること。
(b) 人権及び基本的自由並びに国際連合憲章にうたう原則の尊重を育成すること。
(c) 児童の父母、児童の文化的同一性、言語及び価値観、児童の居住国及び出身国の国民的価値観並びに自己の文明と異なる文明に対する尊重を育成すること。
(d) すべての人民の間の、種族的、国民的及び宗教的集団の間の並びに原住民である者の理解、平和、寛容、両性の平等及び友好の精神に従い、自由な社会における責任ある生活のために児童に準備させること。
(e) 自然環境の尊重を育成すること。
この条又は前条のいかなる規定も、個人及び団体が教育機関を設置し及び管理する自由を妨げるものと解してはならない。ただし、常に、1に定める原則が遵守されること及び当該教育機関において行われる教育が国によって定められる最低限度の基準に適合することを条件とする。
第三〇条 [少数民族又は原住民児童の権利]
種族的、宗教的若しくは言語的少数民族又は先住民である者が存在する国において、当該少数民族に属し又は先住民である児童は、その集団の他の構成員とともに自己の文化を享有し、自己の宗教を信仰しかつ実践し又は自己の言語を使用する権利を否定されない。
第三一条 [文化的生活等への参加]
締約国は、休息及び余暇についての児童の権利並びに児童がその年齢に適した遊び及びレクリエーションの活動を行い並びに文化的な生活及び芸術に自由に参加する権利を認める。
締約国は、児童が文化的及び芸術的な生活に十分に参加する権利を尊重しかつ促進するものとし、文化的及び芸術的な活動並びにレクリエーション及び余暇の活動のための適当かつ平等な機会の提供を奨励する。
第三二条 [経済的搾取及び有害労働からの保護]
締約国は、児童が経済的な搾取から保護され及び危険となり若しくは児童の教育の妨げとなり又は児童の健康若しくは身体的、精神的、道徳的若しくは社会的な発達に有害となるおそれのある労働への従事から保護される権利を認める。
締約国は、この条の規定の実施を確保するための立法上、行政上、社会上及び教育上の措置をとる。このため、締約国は、他の国際文書の関連規定を考慮して、特に、
(a) 雇用が認められるための1又は2以上の最低年齢を定める。
(b) 労働時間及び労働条件についての適当な規則を定める。
(c) この条の規定の効果的な実施を確保するための適当な罰則その他の制裁を定める。
第三三条 [麻薬及び向精神薬からの保護]
締約国は、関連する国際条約に定義された麻薬及び向精神薬の不正な使用から児童を保護し並びにこれらの物質の不正な生産及び取引における児童の使用を防止するための立法上、行政上、社会上及び教育上の措置を含むすべての適当な措置をとる。
第三四条 [性的搾取及び性的虐待からの保護]
締約国は、あらゆる形態の性的搾取及び性的虐待から児童を保護することを約束する。このため、締約国は、特に、次のことを防止するためのすべての適当な国内、二国間及び多数国間の措置をとる。
(a) 不法な性的な行為を行うことを児童に対して勧誘し又は強制すること。
(b) 売春又は他の不法な性的な業務において児童を搾取的に使用すること。
(c) わいせつな演技及び物において児童を搾取的に使用すること。
第三五条 [誘拐、売買又は取引の防止]
締約国は、あらゆる目的のための又はあらゆる形態の児童の誘拐、売買又は取引を防止するためのすべての適当な国内、二国間及び多数国間の措置をとる。
第三六条 [他の全ての形態の搾取からの保護]
締約国は、いずれかの面において児童の福祉を害する他のすべての形態の搾取から児童を保護する。
第三七条 [拷問及び死刑等の禁止・自由を奪われた児童の取り扱い]
締約国は、次のことを確保する。
(a) いかなる児童も、拷問又は他の残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けないこと。死刑又は釈放の可能性がない終身刑は、十八歳未満の者が行った犯罪について科さないこと。
(b) いかなる児童も、不法に又は恣意的にその自由を奪われないこと。児童の逮捕、抑留又は拘禁は、法律に従って行うものとし、最後の解決手段として最も短い適当な期間のみ用いること。
(c) 自由を奪われたすべての児童は、人道的に、人間の固有の尊厳を尊重して、かつ、その年齢の者の必要を考慮した方法で取り扱われること。特に、自由を奪われたすべての児童は、成人とは分離されないことがその最善の利益であると認められない限り成人とは分離されるものとし、例外的な事情がある場合を除くほか、通信及び訪問を通じてその家族との接触を維持する権利を有すること。
(d) 自由を奪われたすべての児童は、弁護人その他適当な援助を行う者と速やかに接触する権利を有し、裁判所その他の権限のある、独立の、かつ、公平な当局においてその自由の剥奪の合法性を争い並びにこれについての決定を速やかに受ける権利を有すること。
第三八条 [武力紛争における保護]
締約国は、武力紛争において自国に適用される国際人道法の規定で児童に関係を有するものを尊重し及びこれらの規定の尊重を確保することを約束する。
締約国は、15歳未満の者が敵対行為に直接参加しないことを確保するためのすべての実行可能な措置をとる。
締約国は、15歳未満の者を自国の軍隊に採用することを差し控えるものとし、また、15歳以上18歳未満の者の中から採用するに当たっては、最年長者を優先させるよう努める。
締約国は、武力紛争において文民を保護するための国際人道法に基づく自国の義務に従い、武力紛争の影響を受ける児童の保護及び養護を確保するためのすべての実行可能な措置をとる。
第三九条 [被害児童の回復及び社会復帰]
締約国は、あらゆる形態の放置、搾取若しくは虐待、拷間若しくは他のあらゆる形態の残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰又は武力紛争による被害者である児童の身体的及び心理的な回復及び社会復帰を促進するためのすべての適当な措置をとる。このような回復及び復帰は、児童の健康、自尊心及び尊厳を育成する環境において行われる。
第四〇条 [刑事法上の保護責任]
締約国は、刑法を犯したと申し立てられ、訴追され又は認定されたすべての児童が尊厳及び価値についての当該児童の意識を促進させるような方法であって、当該児童が他の者の人権及び基本的自由を尊重することを強化し、かつ、当該児童の年齢を考慮し、更に、当該児童が社会に復帰し及び社会において建設的な役割を担うことがなるべく促進されることを配慮した方法により取り扱われる権利を認める。
このため、締約国は、国際文書の関連する規定を考慮して、特に次のことを確保する。
(a) いかなる児童も、実行の時に国内法又は国際法により禁じられていなかった作為又は不作為を理由として刑法を犯したと申し立てられ、訴追され又は認定されないこと。
(b) 刑法を犯したと申し立てられ又は訴追されたすべての児童は、少なくとも次の保障を受けること。
(i) 法律に基づいて有罪とされるまでは無罪と推定されること。
(ii) 速やかにかつ直接に、また、適当な場合には当該児童の父母又は法定保護 者を通じてその罪を告げられること並びに防御の準備及び申立てにおいて弁 護人その他適当な援助を行う者を持つこと。
(iii) 事案が権限のある、独立の、かつ、公平な当局又は司法機関により法律に基づく公正な審理において、弁護人その他適当な援助を行う者の立会い及び、特に当該児童の年齢又は境遇を考慮して児童の最善の利益にならないと認められる場合を除くほか、当該児童の父母又は法定保護者の立会いの下に遅滞なく決定されること。
(iv) 供述又は有罪の自白を強要されないこと。不利な証人を尋間し又はこれに対し尋問させること並びに対等の条件で自己のための証人の出席及びこれに対する尋問を求めること。
(v) 刑法を犯したと認められた場合には、その認定及びその結果科せられた措置について、法律に基づき、上級の、権限のある、独立の、かつ、公平な当局又は司法機関によって再審理されること。
(vi) 使用される言語を理解すること又は話すことができない場合には、無料で通訳の援助を受けること。
(vii) 手続のすべての段階において当該児童の私生活が十分に尊重されること。
締約国は、刑法を犯したと申し立てられ、訴追され又は認定された児童に特別に適用される法律及び手続の制定並びに当局及び施設の設置を促進するよう努めるものとし、特に、次のことを行う。
(a) その年齢未満の児童は刑法を犯す能力を有しないと推定される最低年齢を設定すること。
(b) 適当なかつ望ましい場合には、人権及び法的保護が十分に尊重されていることを条件として、司法上の手続に訴えることなく当該児童を取り扱う措置をとること。
児童がその福祉に適合し、かつ、その事情及び犯罪の双方に応じた方法で取り扱われることを確保するため、保護、指導及び監督命令、力ウンセリング、保護観察、里親委託、教育及び職業訓練計画、施設における養護に代わる他の措置等の種々の処置が利用し得るものとする。
第四一条 [他の法規との関係]
この条約のいかなる規定も、次のものに含まれる規定であって児童の権利の実現に一層貢献するものに影響を及ぼすものではない。
(a) 締約国の法律
(b) 締約国について効力を有する国際法

第二部

第四二条 [締約国の広報義務]
締約国は、適当かつ積極的な方法でこの条約の原則及び規定を成人及び児童のいずれにも広く知らせることを約束する。
第四三条 [児童の権利に関する委員会]
この条約において負う義務の履行の達成に関する締約国による進捗の状況を審査するため、児童の権利に関する委員会(以下「委員会」という。)を設置する。委員会は、この部に定める任務を行う。
委員会は、徳望が高く、かつ、この条約が対象とする分野において能力を認められた10人の専門家で構成する。委員会の委員は、締約国の国民の中から締約国により選出されるものとし、個人の資格で職務を遂行する。その選出に当たっては、衡平な地理的配分及び主要な法体系を考慮に入れる。
委員会の委員は、締約国により指名された者の名簿の中から秘密投票により選出される。各締約国は、自国民の中から一人を指名することができる。
委員会の委員の最初の選挙は、この条約の効力発生の日の後6箇月以内に行うものとし、その後の選挙は、2年ごとに行う。国際連合事務総長は、委員会の委員の選挙の日の遅くとも4箇月前までに、締約国に対し、自国が指名する者の氏名を2箇月以内に提出するよう書簡で要請する。その後、同事務総長は、指名された者のアルファべット順による名簿(これらの者を指名した締約国名を表示した名簿とする。)を作成し、この条約の締約国に送付する。
委員会の委員の選挙は、国際連合事務総長により国際連合本部に招集される締約国の会合において行う。これらの会合は、締約国の3分の2をもって定足数とする。これらの会合においては、出席しかつ投票する締約国の代表によって投じられた票の最多数で、かつ、過半数の票を得た者をもって委員会に選出された委員とする。
委員会の委員は、4年の任期で選出される。委員は、再指名された場合には、再選される資格を有する。最初の選挙において選出された委員のうち5人の委員の任期は、2年で終了するものとし、これらの5人の委員は、最初の選挙の後直ちに、最初の選挙が行われた締約国の会合の議長によりくじ引で選ばれる。
委員会の委員が死亡し、辞任し又は他の理由のため委員会の職務を遂行することができなくなったことを宣言した場合には、当該委員を指名した締約国は、委員会の承認を条件として自国民の中から残余の期間職務を遂行する他の専門家を任命する。
委員会は、手続規則を定める。
委員会は、役員を2年の任期で選出する。
委員会の会合は、原則として、国際連合本部又は委員会が決定する他の適当な場所において開催する。委員会は、原則として毎年1回会合する。委員会の会合の期間は、国際連合総会の承認を条件としてこの条約の締約国の会合において決定し、必要な場合には、再検討する。
国際連合事務総長は、委員会がこの条約に定める任務を効果的に遂行するために必要な職員及び便益を提供する。
この条約に基づいて設置する委員会の委員は、国際連合総会が決定する条件に従い、同総会の承認を得て、国際連合の財源から報酬を受ける。
第四四条 [締約国の報告義務]
締約国は、(a)当該締約国についてこの条約が効力を生ずる時から2年以内に、(b)その後は5年ごとに、この条約において認められる権利の実現のためにとった措置及びこれらの権利の享受についてもたらされた進歩に関する報告を国際連合事務総長を通じて委員会に提出することを約束する。
この条の規定により行われる報告には、この条約に基づく義務の履行の程度に影響を及ぼす要因及び障害が存在する場合には、これらの要因及び障害を記載する。当該報告には、また、委員会が当該国における条約の実施について包括的に理解するために十分な情報を含める。
委員会に対して包括的な最初の報告を提出した締約国は、1(b)の規定に従って提出するその後の報告においては、既に提供した基本的な情報を繰り返す必要はない。
委員会は、この条約の実施に関連する追加の情報を締約国に要請することができる。
委員会は、その活動に関する報告を経済社会理事会を通じて2年ごとに国際連合総会に提出する。
締約国は、1の報告を自国において公衆が広く利用できるようにする。
第四五条 [国際協力のための委員会の機能]
この条約の効果的な実施を促進し及びこの条約が対象とする分野における国際協力を奨励するため、
(a) 専門機関及び国際連合児童基金その他の国際連合の機関は、その任務の範囲内にある事項に関するこの条約の規定の実施についての検討に際し、代表を出す権利を有する。委員会は、適当と認める場合には、専門機関及び国際連合児童基金その他の権限のある機関に対し、これらの機関の任務の範囲内にある事項に関するこの条約の実施について専門家の助言を提供するよう要請することができる。委員会は、専門機関及び国際連合児童基金その他の国際連合の機関に対し、これらの機関の任務の範囲内にある事項に関するこの条約の実施について報告を提出するよう要請することができる。
(b) 委員会は、適当と認める場合には、技術的な助言若しくは援助の要請を含んでおり又はこれらの必要性を記載している締約国からのすべての報告を、これらの要請又は必要性の記載に関する委員会の見解及び提案がある場合は当該見解及び提案とともに、専門機関及び国際連合児童基金その他の権限のある機関に送付する。
(c) 委員会は、国際連合総会に対し、国際連合事務総長が委員会のために児童の権利に関連する特定の事項に関する研究を行うよう同事務総長に要請することを勧告することができる。
(d) 委員会は、前条及びこの条の規定により得た情報に基づく提案及び一般的な性格を有する勧告を行うことができる。これらの提案及び一般的な性格を有する勧告は、関係締約国に送付し、締約国から意見がある場合にはその意見とともに国際連合総会に報告する。

第三部

第四六条 [署名]
この条約は、すべての国による署名のために開放しておく。
第四七条 [批准]
この条約は、批准されなければならない。批准書は、国際連合事務総長に寄託する。
第四八条 [加入]
この条約は、すべての国による加入のために開放しておく。加入書は、国際連合事務総長に寄託する。
第四九条 [効力発生]
この条約は、20番目の批准書又は加入書が国際連合事務総長に寄託された日の後30日目の日に効力を生ずる。
この条約は、20番目の批准書又は加入書が寄託された後に批准し又は加入する国については、その批准書又は加入書が寄託された日の後30日目に効力を生ずる。
第五〇条 [改正の手続き]
いずれの締約国も、改正を提案し及び改正案を国際連合事務総長に提出することができる。同事務総長は、直ちに、締約国に対し、その改正案を送付するものとし、締約国による改正案の審議及び投票のための締約国の会議の開催についての賛否を示すよう要請する。その送付の日から4箇月以内に締約国の3分の1以上が会議の開催に賛成する場合には、同事務総長は、国際連合の主催の下に会議を招集する。会議において出席しかつ投票する締約国の過半数によって採択された改正案は、承認のため、国際連合総会に提出する。
1の規定により採択された改正は、国際連合総会が承認し、かつ、締約国の3分の2以上の多数が受諾した時に、効力を生ずる。
改正は、効力を生じたときは、改正を受諾した締約国を拘束するものとし、他の締約国は、改正前のこの条約の規定(受諾した従前の改正を含む。)により引き続き拘束される。
第五一条 [留保]
国際連合事務総長は、批准又は加入の際に行われた留保の書面を受領し、かつ、すべての国に送付する。
この条約の趣旨及び目的と両立しない留保は、認められない。
留保は、国際連合事務総長にあてた通告によりいつでも撤回することができるものとし、同事務総長は、その撤回をすべての国に通報する。このようにして通報された通告は、同事務総長により受領された日に効力を生ずる。
第五二条 [廃棄]
締約国は、国際連合事務総長に対して書面による通告を行うことにより、この条約を廃棄することができる。廃棄は、同事務総長がその通告を受領した日の後1年で効力を生ずる。
第五三条 [寄託]
国際連合事務総長は、この条約の寄託者として指名される。
第五四条 [正文]
アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語をひとしく正文とするこの条約の原本は、国際連合事務総長に寄託する。
以上の証拠として、下名の全権委員は、各自の政府から正当に委任を受けてこの条約に署名した。

   「ウィキソース」より

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