ガウスの歴史を巡るブログ(その日にあった過去の出来事)

 学生時代からの大の旅行好きで、日本中を旅して回りました。その中でいろいろと歴史に関わる所を巡ってきましたが、日々に関わる歴史上の出来事や感想を紹介します。Yahooブログ閉鎖に伴い、こちらに移動しました。

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 今日は、平成時代の1989年(平成元)に、国連総会において、「児童の権利に関する条約」が採択された日です。
 「児童の権利に関する条約」(じどうのけんりにかんするじょうやく)は、1959年(昭和34)11月20日に国連(国際連合)で採択された「児童の権利に関する宣言」の30周年にあたる、1989年(平成元)11月20日に国連総会で全会一致で採択され、1990年(平成2)9月2日に、国際条約として発効した18歳未満の子供の権利について定めた国際条約で「子どもの権利条約」とも呼ばれてきました。日本国内では、1994年(平成6)3月29日に国会承認され、同年5月22日から効力が発生しましたが、「批准国は子の最善の利益のために行動しなければならない」(第3条)と定められています。
 この条約は、前文と 3部(54条)からなり、18歳未満のすべての人の保護と基本的人権の尊重を促進することを目的とし、①生命・生存への権利、②親・家族にかかわる子供の権利、③意見表明権、市民的権利、④特別な状況下にある子供の保護、⑤教育への権利、文化への権利などが示されました。2016年(平成28)現在、署名国・地域数は140、締約国・地域数は196ですが、アメリカ合衆国は条約に署名はしたものの、批准していません。
 以下に、「児童の権利に関する条約」の日本語訳を全文掲載しておきますので、ご参照下さい。

〇児童の権利に関する宣言(じどうのけんりにかんするせんげん)とは?

 昭和時代中期の1959年(昭和34)11月20日に、国連総会において採択された子どもの権利を促進するための国際文書です。前段として、1924年(昭和19)に、5ヶ条からなる「ジュネーブ児童権利宣言」が、国際連盟で採択され、太平洋戦争後に拡張されたものでした。「国連憲章」と「世界人権宣言」に基づくもので、前文6項と本文10ヶ条からなり、心身ともに未成熟な子供が,健全な成育と幸福と社会的諸権利を保障されるべきことを確認したものでした。
 これを実現するために、両親、個人、民間団体、地方行政機関および政府が、この宣言に従って立法およびその他の措置を講じることを求めています。日本は、1959年(昭和34)12月に参議院本会議で支持を決議しました。

☆「児童の権利に関する条約」1989年(平成元)11月20日採択、1990年(平成2)9月2日発効

前文

 この条約の締約国は、
 国際連合憲章において宣明された原則によれば、人類社会のすべての構成員の固有の尊厳及び平等のかつ奪い得ない権利を認めることが世界における自由、正義及び平和の基礎を成すものであることを考慮し、
 国際連合加盟国の国民が、国際連合憲章において、基本的人権並びに人間の尊厳及び価値に関する信念を改めて確認し、かつ、一層大きな自由の中で社会的進歩及び生活水準の向上を促進することを決意したことに留意し、
 国際連合が、世界人権宣言及び人権に関する国際規約において、すべての人は人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生又は他の地位等によるいかなる差別もなしに同宣言及び同規約に掲げるすべての権利及び自由を享有することができることを宣明し及び合意したことを認め、
 国際連合が、世界人権宣言において、児童は特別な保護及び援助についての権利を享有することができることを宣明したことを想起し、
 家族が、社会の基礎的な集団として、並びに家族のすべての構成員、特に、児童の成長及び福祉のための自然な環境として、社会においてその責任を十分に引き受けることができるよう必要な保護及び援助を与えられるべきであることを確信し、
 児童が、その人格の完全なかつ調和のとれた発達のため、家庭環境の下で幸福、愛情及び理解のある雰囲気の中で成長すべきであることを認め、
 児童が、社会において個人として生活するため十分な準備が整えられるべきであり、かつ、国際連合憲章において宣明された理想の精神並びに特に平和、尊厳、寛容、自由、平等及び連帯の精神に従って育てられるべきであることを考慮し、
 児童に対して特別な保護を与えることの必要性が、1924年の児童の権利に関するジュネーヴ宣言及び1959年11月20日に国際連合総会で採択された児童の権利に関する宣言において述べられており、また、世界人権宣言、市民的及び政治的権利に関する国際規約(特に第23条及び第24条)、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(特に第10条)並びに児童の福祉に関係する専門機関及び国際機関の規程及び関係文書において認められていることに留意し、
 児童の権利に関する宣言において示されているとおり「児童は、身体的及び精神的に未熟であるため、その出生の前後において、適当な法的保護を含む特別な保護及び世話を必要とする。」ことに留意し、
 国内の又は国際的な里親委託及び養子縁組を特に考慮した児童の保護及び福祉についての社会的及び法的な原則に関する宣言、少年司法の運用のための国際連合最低基準規則(北京規則)及び緊急事態及び武力紛争における女子及び児童の保護に関する宣言の規定を想起し、
 極めて困難な条件の下で生活している児童が世界のすべての国に存在すること、また、このような児童が特別の配慮を必要としていることを認め、
 児童の保護及び調和のとれた発達のために各人民の伝統及び文化的価値が有する重要性を十分に考慮し、
 あらゆる国特に開発途上国における児童の生活条件を改善するために国際協力が重要であることを認めて、
 次のとおり協定した。

第一部

第一条 [定義]
この条約の適用上、児童とは、18歳未満のすべての者をいう。ただし、当該児童で、その者に適用される法律によりより早く成年に達したものを除く。
第二条 [差別の禁止]
締約国は、その管轄の下にある児童に対し、児童又はその父母若しくは法定保護者の人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、種族的若しくは社会的出身、財産、心身障害、出生又は他の地位にかかわらず、いかなる差別もなしにこの条約に定める権利を尊重し、及び確保する。
締約国は、児童がその父母、法定保護者又は家族の構成員の地位、活動、表明した意見又は信念によるあらゆる形態の差別又は処罰から保護されることを確保するためのすべての適当な措置をとる。
第三条 [児童の利益の最優先]
児童に関するすべての措置をとるに当たっては、公的若しくは私的な社会福祉施設、裁判所、行政当局又は立法機関のいずれによって行われるものであっても、児童の最善の利益が主として考慮されるものとする。
締約国は、児童の父母、法定保護者又は児童について法的に責任を有する他の者の権利及び義務を考慮に入れて、児童の福祉に必要な保護及び養護を確保することを約束し、このため、すべての適当な立法上及び行政上の措置をとる。
締約国は、児童の養護又は保護のための施設、役務の提供及び設備が、特に安全及び健康の分野に関し並びにこれらの職員の数及び適格性並びに適正な監督に関し権限のある当局の設定した基準に適合することを確保する。
第四条 [条約義務の実施]
締約国は、この条約において認められる権利の実現のため、すべての適当な立法措置、行政措置その他の措置を講ずる。締約国は、経済的、社会的及び文化的権利に関しては、自国における利用可能な手段の最大限の範囲内で、また、必要な場合には国際協力の枠内で、これらの措置を講ずる。
第五条 [保護者の指導の尊重]
締約国は、児童がこの条約において認められる権利を行使するに当たり、父母若しくは場合により地方の慣習により定められている大家族若しくは共同体の構成員、法定保護者又は児童について法的に責任を有する他の者がその児童の発達しつつある能力に適合する方法で適当な指示及び指導を与える責任、権利及び義務を尊重する。
第六条 [生命に対する権利]
締約国は、すべての児童が生命に対する固有の権利を有することを認める。
締約国は、児童の生存及び発達を可能な最大限の範囲において確保する。
第七条 [氏名及び国籍に対する権利]
児童は、出生の後直ちに登録される。児童は、出生の時から氏名を有する権利及び国籍を取得する権利を有するものとし、また、できる限りその父母を知りかつその父母によって養育される権利を有する。
締約国は、特に児童が無国籍となる場合を含めて、国内法及びこの分野における関連する国際文書に基づく自国の義務に従い、1の権利の実現を確保する。
第八条 [身元関係事項の保持]
締約国は、児童が法律によって認められた国籍、氏名及び家族関係を含むその身元関係事項について不法に干渉されることなく保持する権利を尊重することを約束する。
締約国は、児童がその身元関係事項の一部又は全部を不法に奪われた場合には、その身元関係事項を速やかに回復するため、適当な援助及び保護を与える。
第九条 [父母からの分離の防止]
締約国は、児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する。ただし、権限のある当局が司法の審査に従うことを条件として適用のある法律及び手続に従いその分離が児童の最善の利益のために必要であると決定する場合は、この限りでない。このような決定は、父母が児童を虐待し若しくは放置する場合又は父母が別居しており児童の居住地を決定しなければならない場合のような特定の場合において必要となることがある。
すべての関係当事者は、1の規定に基づくいかなる手続においても、その手続に参加しかつ自己の意見を述べる機会を有する。
締約国は、児童の最善の利益に反する場合を除くほか、父母の一方又は双方から分離されている児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係及び直接の接触を維持する権利を尊重する。
3の分離が、締約国がとった父母の一方若しくは双方又は児童の抑留、拘禁、追放、退去強制、死亡(その者が当該締約国により身体を拘束されている間に何らかの理由により生じた死亡を含む。)等のいずれかの措置に基づく場合には、当該締約国は、要請に応じ、父母、児童又は適当な場合には家族の他の構成員に対し、家族のうち不在となっている者の所在に関する重要な情報を提供する。ただし、その情報の提供が児童の福祉を害する場合は、この限りでない。締約国は、更に、その要請の提出自体が関係者に悪影響を及ぼさないことを確保する。
第一〇条 [家族の再統合の支援]
前条1の規定に基づく締約国の義務に従い、家族の再統合を目的とする児童又はその父母による締約国への入国又は締約国からの出国の申請については、締約国が積極的、人道的かつ迅速な方法で取り扱う。締約国は、更に、その申請の提出が申請者及びその家族の構成員に悪影響を及ぼさないことを確保する。
父母と異なる国に居住する児童は、例外的な事情がある場合を除くほか定期的に父母との人的な関係及び直接の接触を維持する権利を有する。このため、前条1の規定に基づく締約国の義務に従い、締約国は、児童及びその父母がいずれの国(自国を含む。)からも出国し、かつ、自国に入国する権利を尊重する。出国する権利は、法律で定められ、国の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳又は他の者の権利及び自由を保護するために必要であり、かつ、この条約において認められる他の権利と両立する制限にのみ従う。
第一一条 [不法な国外移送等の防止]
締約国は、児童が不法に国外へ移送されることを防止し及び国外から帰還することができない事態を除去するための措置を講ずる。
このため、締約国は、二国間若しくは多数国間の協定の締結又は現行の協定への加入を促進する。
第一二条 [意思表明の権利]
締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする。
このため、児童は、特に、自己に影響を及ぼすあらゆる司法上及び行政上の手続において、国内法の手続規則に合致する方法により直接に又は代理人若しくは適当な団体を通じて聴取される機会を与えられる。
第一三条 [表現の自由]
児童は、表現の自由についての権利を有する。この権利には、口頭、手書き若しくは印刷、芸術の形態又は自ら選択する他の方法により、国境とのかかわりなく、あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む。
1の権利の行使については、一定の制限を課することができる。ただし、その制限は、法律によって定められ、かつ、次の目的のために必要とされるものに限る。
(a) 他の者の権利又は信用の尊重
(b) 国の安全、公の秩序又は公衆の健康若しくは道徳の保護
第一四条 [思想、良心及び宗教の自由]
締約国は、思想、良心及び宗教の自由についての児童の権利を尊重する。
締約国は、児童が1の権利を行使するに当たり、父母及び場合により法定保護者が児童に対しその発達しつつある能力に適合する方法で指示を与える権利及び義務を尊重する。
宗教又は信念を表明する自由については、法律で定める制限であって公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳又は他の者の基本的な権利及び自由を保護するために必要なもののみを課することができる。
第一五条 [結社及び集会の自由]
締約国は、結社の自由及び平和的な集会の自由についての児童の権利を認める。
1の権利の行使については、法律で定める制限であって国の安全若しくは公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳の保護又は他の者の権利及び自由の保護のため民主的社会において必要なもの以外のいかなる制限も課することができない。
第一六条 [私生活、名誉及び信頼の保護]
いかなる児童も、その私生活、家族、住居若しくは通信に対して恣意的に若しくは不法に干渉され又は名誉及び信用を不法に攻撃されない。
児童は、1の干渉又は攻撃に対する法律の保護を受ける権利を有する。
第一七条 [マス・メディアの活用]
締約国は、大衆媒体(マス・メディア)の果たす重要な機能を認め、児童が国の内外の多様な情報源からの情報及び資料、特に児童の社会面、精神面及び道徳面の福祉並びに心身の健康の促進を目的とした情報及び資料を利用することができることを確保する。このため、締約国は、
(a) 児童にとって社会面及び文化面において有益であり、かつ、第29条の精神に沿う情報及び資料を大衆媒体(マス・メディア)が普及させるよう奨励する。
(b) 国の内外の多様な情報源(文化的にも多様な情報源を含む。)からの情報及び資料の作成、交換及び普及における国際協力を奨励する。
(c) 児童用書籍の作成及び普及を奨励する。
(d) 少数集団に属し又は原住民である児童の言語上の必要性について大衆媒体(マス・メディア)が特に考慮するよう奨励する。
(e)第13条及び次条の規定に留意して、児童の福祉に有害な情報及び資料から児童を保護するための適当な指針を発展させることを奨励する。
第一八条 [父母の責任と父母への支援]
締約国は、児童の養育及び発達について父母が共同の責任を有するという原則についての認識を確保するために最善の努力を払う。父母又は場合により法定保護者は、児童の養育及び発達についての第一義的な責任を有する。児童の最善の利益は、これらの者の基本的な関心事項となるものとする。
締約国は、この条約に定める権利を保障し及び促進するため、父母及び法定保護者が児童の養育についての責任を遂行するに当たりこれらの者に対して適当な援助を与えるものとし、また、児童の養護のための施設、設備及び役務の提供の発展を確保する。
締約国は、父母が働いている児童が利用する資格を有する児童の養護のための役務の提供及び設備からその児童が便益を受ける権利を有することを確保するためのすべての適当な措置をとる。
第一九条 [虐待等からの保護]
締約国は、児童が父母、法定保護者又は児童を監護する他の者による監護を受けている間において、あらゆる形態の身体的若しくは精神的な暴力、傷害若しくは虐待、放置若しくは怠慢な取扱い、不当な取扱い又は搾取(性的虐待を含む。)からその児童を保護するためすべての適当な立法上、行政上、社会上及び教育上の措置をとる。
1の保護措置には、適当な場合には、児童及び児童を監護する者のために必要な援助を与える社会的計画の作成その他の形態による防止のための効果的な手続並びに1に定める児童の不当な取扱いの事件の発見、報告、付託、調査、処置及び事後措置並びに適当な場合には司法の関与に関する効果的な手続を含むものとする。
第二〇条 [家庭環境を奪われた児童の保護]
一時的若しくは恒久的にその家庭環境を奪われた児童又は児童自身の最善の利益にかんがみその家庭環境にとどまることが認められない児童は、国が与える特別の保護及び援助を受ける権利を有する。
締約国は、自国の国内法に従い、1の児童のための代替的な監護を確保する。
2の監護には、特に、里親委託、イスラム法の力ファーラ、養子縁組又は必要な場合には児童の監護のための適当な施設への収容を含むことができる。解決策の検討に当たっては、児童の養育において継続性が望ましいこと並びに児童の種族的、宗教的、文化的及び言語的な背景について、十分な考慮を払うものとする。
第二一条 [養子縁組]
養子縁組の制度を認め又は許容している締約国は、児童の最善の利益について最大の考慮が払われることを確保するものとし、また、
(a) 児童の養子縁組が権限のある当局によってのみ認められることを確保する。この場合において、当該権限のある当局は、適用のある法律及び手続に従い、かつ、信頼し得るすべての関連情報に基づき、養子縁組が父母、親族及び法定保護者に関する児童の状況にかんがみ許容されること並びに必要な場合には、関係者が所要のカウンセリングに基づき養子縁組について事情を知らされた上での同意を与えていることを認定する。
(b) 児童がその出身国内において里親若しくは養家に託され又は適切な方法で監護を受けることができない場合には、これに代わる児童の監護の手段として国際的な養子縁組を考慮することができることを認める。
(c) 国際的な養子縁組が行われる児童が国内における養子縁組の場合における保護及び基準と同等のものを享受することを確保する。
(d) 国際的な養子縁組において当該養子縁組が関係者に不当な金銭上の利得をもたらすことがないことを確保するためのすべての適当な措置をとる。
(e) 適当な場合には、二国間又は多数国間の取極又は協定を締結することによりこの条の目的を促進し、及びこの枠組みの範囲内で他国における児童の養子縁組が権限のある当局又は機関によって行われることを確保するよう努める。
第二二条 [難民児童の保護]
締約国は、難民の地位を求めている児童又は適用のある国際法及び国際的な手続若しくは国内法及び国内的な手続に基づき難民と認められている児童が、父母又は他の者に付き添われているかいないかを間わず、この条約及び自国が締約国となっている人権又は人道に関する他の国際文書に定める権利であって適用のあるものの享受に当たり、適当な保護及び人道的援助を受けることを確保するための適当な措置をとる。
このため、締約国は、適当と認める場合には、1の児童を保護し及び援助するため、並びに難民の児童の家族との再統合に必要な情報を得ることを目的としてその難民の児童の父母又は家族の他の構成員を捜すため、国際連合及びこれと協力する他の権限のある政府間機関又は関係非政府機関による努力に協力する。その難民の児童は、父母又は家族の他の構成員が発見されない場合には、何らかの理由により恒久的又は一時的にその家庭環境を奪われた他の児童と同様にこの条約に定める保護が与えられる。
第二三条 [障害児童の権利]
締約国は、精神的又は身体的な障害を有する児童が、その尊厳を確保し、自立を促進し及び社会への積極的な参加を容易にする条件の下で十分かつ相応な生活を享受すべきであることを認める。
締約国は、障害を有する児童が特別の養護についての権利を有することを認めるものとし、利用可能な手段の下で、申込みに応じた、かつ、当該児童の状況及び父母又は当該児童を養護している他の者の事情に適した援助を、これを受ける資格を有する児童及びこのような児童の養護について責任を有する者に与えることを奨励し、かつ、確保する。
障害を有する児童の特別な必要を認めて、2の規定に従って与えられる援助は、父母又は当該児童を養護している他の者の資力を考慮して可能な限り無償で与えられるものとし、かつ、障害を有する児童が可能な限り社会への統合及び個人の発達(文化的及び精神的な発達を含む。)を達成することに資する方法で当該児童が教育、訓練、保健サービス、リハビリテーション・サービス、雇用のための準備及びレクリエーションの機会を実質的に利用し及び享受することができるように行われるものとする。
締約国は、国際協力の精神により、予防的な保健並びに障害を有する児童の医学的、心理学的及び機能的治療の分野における適当な情報の交換(リハビリテーション、教育及び職業サービスの方法に関する情報の普及及び利用を含む。)であってこれらの分野における自国の能力及び技術を向上させ並びに自国の経験を広げることができるようにすることを目的とするものを促進する。これに関しては、特に、開発途上国の必要を考慮する。
第二四条 [健康を享受する権利]
締約国は、到達可能な最高水準の健康を享受すること並びに病気の治療及び健康の回復のための便宜を与えられることについての児童の権利を認める。締約国は、いかなる児童もこのような保健サービスを利用する権利が奪われないことを確保するために努力する。
締約国は、1の権利の完全な実現を追求するものとし、特に、次のことのための適当な措置をとる。
(a) 幼児及び児童の死亡率を低下させること。
(b) 基礎的な保健の発展に重点を置いて必要な医療及び保健をすべての児童に提供することを確保すること。
(c) 環境汚染の危険を考慮に入れて、基礎的な保健の枠組みの範囲内で行われることを含めて、特に容易に利用可能な技術の適用により並びに十分に栄養のある食物及び清潔な飲料水の供給を通じて、疾病及び栄養不良と闘うこと。
(d) 母親のための産前産後の適当な保健を確保すること。
(e) 社会のすべての構成員特に父母及び児童が、児童の健康及び栄養、母乳による育児の利点、衛生(環境衛生を含む。)並びに事故の防止についての基礎的な知識に関して、情報を提供され、教育を受ける機会を有し及びその知識の使用について支援されることを確保すること。
(f) 予防的な保健、父母のための指導並びに家族計画に関する教育及びサービスを発展させること。
締約国は、児童の健康を害するような伝統的な慣行を廃止するため、効果的かつ適当なすべての措置をとる。
締約国は、この条において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成するため、国際協力を促進し及び奨励することを約束する。これに関しては、特に、開発途上国の必要を考慮する。
第二五条 [児童収容措置に対する審査]
締約国は、児童の身体又は精神の養護、保護又は治療を目的として権限のある当局によって収容された児童に対する処遇及びその収容に関連する他のすべての状況に関する定期的な審査が行われることについての児童の権利を認める。
第二六条 [社会保障に対する権利]
締約国は、すべての児童が社会保険その他の社会保障からの給付を受ける権利を認めるものとし、自国の国内法に従い、この権利の完全な実現を達成するための必要な措置をとる。
1の給付は、適当な場合には、児童及びその扶養について責任を有する者の資力及び事情並びに児童によって又は児童に代わって行われる給付の申請に関する他のすべての事項を考慮して、与えられるものとする。
第二七条 [生活水準に関する権利]
締約国は、児童の身体的、精神的、道徳的及び社会的な発達のための相当な生活水準についてのすべての児童の権利を認める。
父母又は児童について責任を有する他の者は、自己の能力及び資力の範囲内で、児童の発達に必要な生活条件を確保することについての第一義的な責任を有する。
締約国は、国内事情に従い、かつ、その能力の範囲内で、1の権利の実現のため、父母及び児童について責任を有する他の者を援助するための適当な措置をとるものとし、また、必要な場合には、特に栄養、衣類及び住居に関して、物的援助及び支援計画を提供する。
締約国は、父母又は児童について金銭上の責任を有する他の者から、児童の扶養料を自国内で及び外国から、回収することを確保するためのすべての適当な措置をとる。特に、児童について金銭上の責任を有する者が児童と異なる国に居住している場合には、締約国は、国際協定への加入又は国際協定の締結及び他の適当な取決めの作成を促進する。
第二八条 [教育に関する権利]
締約国は、教育についての児童の権利を認めるものとし、この権利を漸進的にかつ機会の平等を基礎として達成するため、特に、
(a) 初等教育を義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとする。
(b) 種々の形態の中等教育(一般教育及び職業教育を含む。)の発展を奨励し、すべての児童に対し、これらの中等教育が利用可能であり、かつ、これらを利用する機会が与えられるものとし、例えば、無償教育の導入、必要な場合における財政的援助の提供のような適当な措置をとる。
(c) すべての適当な方法により、能力に応じ、すべての者に対して高等教育を利用する機会が与えられるものとする。
(d) すべての児童に対し、教育及び職業に関する情報及び指導が利用可能であり、かつ、これらを利用する機会が与えられるものとする。
(e) 定期的な登校及び中途退学率の減少を奨励するための措置をとる。
締約国は、学校の規律が児童の人間の尊厳に適合する方法で及びこの条約に従って運用されることを確保するためのすべての適当な措置をとる。
締約国は、特に全世界における無知及び非識字の廃絶に寄与し並びに科学上及び技術上の知識並びに最新の教育方法の利用を容易にするため、教育に関する事項についての国際協力を促進し、及び奨励する。これに関しては、特に、開発途上国の必要を考慮する。
第二九条 [教育の目的]
締約国は、児童の教育が次のことを指向すべきことに同意する。
(a) 児童の人格、才能並びに精神的及び身体的な能力をその可能な最大限度まで発達させること。
(b) 人権及び基本的自由並びに国際連合憲章にうたう原則の尊重を育成すること。
(c) 児童の父母、児童の文化的同一性、言語及び価値観、児童の居住国及び出身国の国民的価値観並びに自己の文明と異なる文明に対する尊重を育成すること。
(d) すべての人民の間の、種族的、国民的及び宗教的集団の間の並びに原住民である者の理解、平和、寛容、両性の平等及び友好の精神に従い、自由な社会における責任ある生活のために児童に準備させること。
(e) 自然環境の尊重を育成すること。
この条又は前条のいかなる規定も、個人及び団体が教育機関を設置し及び管理する自由を妨げるものと解してはならない。ただし、常に、1に定める原則が遵守されること及び当該教育機関において行われる教育が国によって定められる最低限度の基準に適合することを条件とする。
第三〇条 [少数民族又は原住民児童の権利]
種族的、宗教的若しくは言語的少数民族又は先住民である者が存在する国において、当該少数民族に属し又は先住民である児童は、その集団の他の構成員とともに自己の文化を享有し、自己の宗教を信仰しかつ実践し又は自己の言語を使用する権利を否定されない。
第三一条 [文化的生活等への参加]
締約国は、休息及び余暇についての児童の権利並びに児童がその年齢に適した遊び及びレクリエーションの活動を行い並びに文化的な生活及び芸術に自由に参加する権利を認める。
締約国は、児童が文化的及び芸術的な生活に十分に参加する権利を尊重しかつ促進するものとし、文化的及び芸術的な活動並びにレクリエーション及び余暇の活動のための適当かつ平等な機会の提供を奨励する。
第三二条 [経済的搾取及び有害労働からの保護]
締約国は、児童が経済的な搾取から保護され及び危険となり若しくは児童の教育の妨げとなり又は児童の健康若しくは身体的、精神的、道徳的若しくは社会的な発達に有害となるおそれのある労働への従事から保護される権利を認める。
締約国は、この条の規定の実施を確保するための立法上、行政上、社会上及び教育上の措置をとる。このため、締約国は、他の国際文書の関連規定を考慮して、特に、
(a) 雇用が認められるための1又は2以上の最低年齢を定める。
(b) 労働時間及び労働条件についての適当な規則を定める。
(c) この条の規定の効果的な実施を確保するための適当な罰則その他の制裁を定める。
第三三条 [麻薬及び向精神薬からの保護]
締約国は、関連する国際条約に定義された麻薬及び向精神薬の不正な使用から児童を保護し並びにこれらの物質の不正な生産及び取引における児童の使用を防止するための立法上、行政上、社会上及び教育上の措置を含むすべての適当な措置をとる。
第三四条 [性的搾取及び性的虐待からの保護]
締約国は、あらゆる形態の性的搾取及び性的虐待から児童を保護することを約束する。このため、締約国は、特に、次のことを防止するためのすべての適当な国内、二国間及び多数国間の措置をとる。
(a) 不法な性的な行為を行うことを児童に対して勧誘し又は強制すること。
(b) 売春又は他の不法な性的な業務において児童を搾取的に使用すること。
(c) わいせつな演技及び物において児童を搾取的に使用すること。
第三五条 [誘拐、売買又は取引の防止]
締約国は、あらゆる目的のための又はあらゆる形態の児童の誘拐、売買又は取引を防止するためのすべての適当な国内、二国間及び多数国間の措置をとる。
第三六条 [他の全ての形態の搾取からの保護]
締約国は、いずれかの面において児童の福祉を害する他のすべての形態の搾取から児童を保護する。
第三七条 [拷問及び死刑等の禁止・自由を奪われた児童の取り扱い]
締約国は、次のことを確保する。
(a) いかなる児童も、拷問又は他の残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けないこと。死刑又は釈放の可能性がない終身刑は、十八歳未満の者が行った犯罪について科さないこと。
(b) いかなる児童も、不法に又は恣意的にその自由を奪われないこと。児童の逮捕、抑留又は拘禁は、法律に従って行うものとし、最後の解決手段として最も短い適当な期間のみ用いること。
(c) 自由を奪われたすべての児童は、人道的に、人間の固有の尊厳を尊重して、かつ、その年齢の者の必要を考慮した方法で取り扱われること。特に、自由を奪われたすべての児童は、成人とは分離されないことがその最善の利益であると認められない限り成人とは分離されるものとし、例外的な事情がある場合を除くほか、通信及び訪問を通じてその家族との接触を維持する権利を有すること。
(d) 自由を奪われたすべての児童は、弁護人その他適当な援助を行う者と速やかに接触する権利を有し、裁判所その他の権限のある、独立の、かつ、公平な当局においてその自由の剥奪の合法性を争い並びにこれについての決定を速やかに受ける権利を有すること。
第三八条 [武力紛争における保護]
締約国は、武力紛争において自国に適用される国際人道法の規定で児童に関係を有するものを尊重し及びこれらの規定の尊重を確保することを約束する。
締約国は、15歳未満の者が敵対行為に直接参加しないことを確保するためのすべての実行可能な措置をとる。
締約国は、15歳未満の者を自国の軍隊に採用することを差し控えるものとし、また、15歳以上18歳未満の者の中から採用するに当たっては、最年長者を優先させるよう努める。
締約国は、武力紛争において文民を保護するための国際人道法に基づく自国の義務に従い、武力紛争の影響を受ける児童の保護及び養護を確保するためのすべての実行可能な措置をとる。
第三九条 [被害児童の回復及び社会復帰]
締約国は、あらゆる形態の放置、搾取若しくは虐待、拷間若しくは他のあらゆる形態の残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰又は武力紛争による被害者である児童の身体的及び心理的な回復及び社会復帰を促進するためのすべての適当な措置をとる。このような回復及び復帰は、児童の健康、自尊心及び尊厳を育成する環境において行われる。
第四〇条 [刑事法上の保護責任]
締約国は、刑法を犯したと申し立てられ、訴追され又は認定されたすべての児童が尊厳及び価値についての当該児童の意識を促進させるような方法であって、当該児童が他の者の人権及び基本的自由を尊重することを強化し、かつ、当該児童の年齢を考慮し、更に、当該児童が社会に復帰し及び社会において建設的な役割を担うことがなるべく促進されることを配慮した方法により取り扱われる権利を認める。
このため、締約国は、国際文書の関連する規定を考慮して、特に次のことを確保する。
(a) いかなる児童も、実行の時に国内法又は国際法により禁じられていなかった作為又は不作為を理由として刑法を犯したと申し立てられ、訴追され又は認定されないこと。
(b) 刑法を犯したと申し立てられ又は訴追されたすべての児童は、少なくとも次の保障を受けること。
(i) 法律に基づいて有罪とされるまでは無罪と推定されること。
(ii) 速やかにかつ直接に、また、適当な場合には当該児童の父母又は法定保護 者を通じてその罪を告げられること並びに防御の準備及び申立てにおいて弁 護人その他適当な援助を行う者を持つこと。
(iii) 事案が権限のある、独立の、かつ、公平な当局又は司法機関により法律に基づく公正な審理において、弁護人その他適当な援助を行う者の立会い及び、特に当該児童の年齢又は境遇を考慮して児童の最善の利益にならないと認められる場合を除くほか、当該児童の父母又は法定保護者の立会いの下に遅滞なく決定されること。
(iv) 供述又は有罪の自白を強要されないこと。不利な証人を尋間し又はこれに対し尋問させること並びに対等の条件で自己のための証人の出席及びこれに対する尋問を求めること。
(v) 刑法を犯したと認められた場合には、その認定及びその結果科せられた措置について、法律に基づき、上級の、権限のある、独立の、かつ、公平な当局又は司法機関によって再審理されること。
(vi) 使用される言語を理解すること又は話すことができない場合には、無料で通訳の援助を受けること。
(vii) 手続のすべての段階において当該児童の私生活が十分に尊重されること。
締約国は、刑法を犯したと申し立てられ、訴追され又は認定された児童に特別に適用される法律及び手続の制定並びに当局及び施設の設置を促進するよう努めるものとし、特に、次のことを行う。
(a) その年齢未満の児童は刑法を犯す能力を有しないと推定される最低年齢を設定すること。
(b) 適当なかつ望ましい場合には、人権及び法的保護が十分に尊重されていることを条件として、司法上の手続に訴えることなく当該児童を取り扱う措置をとること。
児童がその福祉に適合し、かつ、その事情及び犯罪の双方に応じた方法で取り扱われることを確保するため、保護、指導及び監督命令、力ウンセリング、保護観察、里親委託、教育及び職業訓練計画、施設における養護に代わる他の措置等の種々の処置が利用し得るものとする。
第四一条 [他の法規との関係]
この条約のいかなる規定も、次のものに含まれる規定であって児童の権利の実現に一層貢献するものに影響を及ぼすものではない。
(a) 締約国の法律
(b) 締約国について効力を有する国際法

第二部

第四二条 [締約国の広報義務]
締約国は、適当かつ積極的な方法でこの条約の原則及び規定を成人及び児童のいずれにも広く知らせることを約束する。
第四三条 [児童の権利に関する委員会]
この条約において負う義務の履行の達成に関する締約国による進捗の状況を審査するため、児童の権利に関する委員会(以下「委員会」という。)を設置する。委員会は、この部に定める任務を行う。
委員会は、徳望が高く、かつ、この条約が対象とする分野において能力を認められた10人の専門家で構成する。委員会の委員は、締約国の国民の中から締約国により選出されるものとし、個人の資格で職務を遂行する。その選出に当たっては、衡平な地理的配分及び主要な法体系を考慮に入れる。
委員会の委員は、締約国により指名された者の名簿の中から秘密投票により選出される。各締約国は、自国民の中から一人を指名することができる。
委員会の委員の最初の選挙は、この条約の効力発生の日の後6箇月以内に行うものとし、その後の選挙は、2年ごとに行う。国際連合事務総長は、委員会の委員の選挙の日の遅くとも4箇月前までに、締約国に対し、自国が指名する者の氏名を2箇月以内に提出するよう書簡で要請する。その後、同事務総長は、指名された者のアルファべット順による名簿(これらの者を指名した締約国名を表示した名簿とする。)を作成し、この条約の締約国に送付する。
委員会の委員の選挙は、国際連合事務総長により国際連合本部に招集される締約国の会合において行う。これらの会合は、締約国の3分の2をもって定足数とする。これらの会合においては、出席しかつ投票する締約国の代表によって投じられた票の最多数で、かつ、過半数の票を得た者をもって委員会に選出された委員とする。
委員会の委員は、4年の任期で選出される。委員は、再指名された場合には、再選される資格を有する。最初の選挙において選出された委員のうち5人の委員の任期は、2年で終了するものとし、これらの5人の委員は、最初の選挙の後直ちに、最初の選挙が行われた締約国の会合の議長によりくじ引で選ばれる。
委員会の委員が死亡し、辞任し又は他の理由のため委員会の職務を遂行することができなくなったことを宣言した場合には、当該委員を指名した締約国は、委員会の承認を条件として自国民の中から残余の期間職務を遂行する他の専門家を任命する。
委員会は、手続規則を定める。
委員会は、役員を2年の任期で選出する。
委員会の会合は、原則として、国際連合本部又は委員会が決定する他の適当な場所において開催する。委員会は、原則として毎年1回会合する。委員会の会合の期間は、国際連合総会の承認を条件としてこの条約の締約国の会合において決定し、必要な場合には、再検討する。
国際連合事務総長は、委員会がこの条約に定める任務を効果的に遂行するために必要な職員及び便益を提供する。
この条約に基づいて設置する委員会の委員は、国際連合総会が決定する条件に従い、同総会の承認を得て、国際連合の財源から報酬を受ける。
第四四条 [締約国の報告義務]
締約国は、(a)当該締約国についてこの条約が効力を生ずる時から2年以内に、(b)その後は5年ごとに、この条約において認められる権利の実現のためにとった措置及びこれらの権利の享受についてもたらされた進歩に関する報告を国際連合事務総長を通じて委員会に提出することを約束する。
この条の規定により行われる報告には、この条約に基づく義務の履行の程度に影響を及ぼす要因及び障害が存在する場合には、これらの要因及び障害を記載する。当該報告には、また、委員会が当該国における条約の実施について包括的に理解するために十分な情報を含める。
委員会に対して包括的な最初の報告を提出した締約国は、1(b)の規定に従って提出するその後の報告においては、既に提供した基本的な情報を繰り返す必要はない。
委員会は、この条約の実施に関連する追加の情報を締約国に要請することができる。
委員会は、その活動に関する報告を経済社会理事会を通じて2年ごとに国際連合総会に提出する。
締約国は、1の報告を自国において公衆が広く利用できるようにする。
第四五条 [国際協力のための委員会の機能]
この条約の効果的な実施を促進し及びこの条約が対象とする分野における国際協力を奨励するため、
(a) 専門機関及び国際連合児童基金その他の国際連合の機関は、その任務の範囲内にある事項に関するこの条約の規定の実施についての検討に際し、代表を出す権利を有する。委員会は、適当と認める場合には、専門機関及び国際連合児童基金その他の権限のある機関に対し、これらの機関の任務の範囲内にある事項に関するこの条約の実施について専門家の助言を提供するよう要請することができる。委員会は、専門機関及び国際連合児童基金その他の国際連合の機関に対し、これらの機関の任務の範囲内にある事項に関するこの条約の実施について報告を提出するよう要請することができる。
(b) 委員会は、適当と認める場合には、技術的な助言若しくは援助の要請を含んでおり又はこれらの必要性を記載している締約国からのすべての報告を、これらの要請又は必要性の記載に関する委員会の見解及び提案がある場合は当該見解及び提案とともに、専門機関及び国際連合児童基金その他の権限のある機関に送付する。
(c) 委員会は、国際連合総会に対し、国際連合事務総長が委員会のために児童の権利に関連する特定の事項に関する研究を行うよう同事務総長に要請することを勧告することができる。
(d) 委員会は、前条及びこの条の規定により得た情報に基づく提案及び一般的な性格を有する勧告を行うことができる。これらの提案及び一般的な性格を有する勧告は、関係締約国に送付し、締約国から意見がある場合にはその意見とともに国際連合総会に報告する。

第三部

第四六条 [署名]
この条約は、すべての国による署名のために開放しておく。
第四七条 [批准]
この条約は、批准されなければならない。批准書は、国際連合事務総長に寄託する。
第四八条 [加入]
この条約は、すべての国による加入のために開放しておく。加入書は、国際連合事務総長に寄託する。
第四九条 [効力発生]
この条約は、20番目の批准書又は加入書が国際連合事務総長に寄託された日の後30日目の日に効力を生ずる。
この条約は、20番目の批准書又は加入書が寄託された後に批准し又は加入する国については、その批准書又は加入書が寄託された日の後30日目に効力を生ずる。
第五〇条 [改正の手続き]
いずれの締約国も、改正を提案し及び改正案を国際連合事務総長に提出することができる。同事務総長は、直ちに、締約国に対し、その改正案を送付するものとし、締約国による改正案の審議及び投票のための締約国の会議の開催についての賛否を示すよう要請する。その送付の日から4箇月以内に締約国の3分の1以上が会議の開催に賛成する場合には、同事務総長は、国際連合の主催の下に会議を招集する。会議において出席しかつ投票する締約国の過半数によって採択された改正案は、承認のため、国際連合総会に提出する。
1の規定により採択された改正は、国際連合総会が承認し、かつ、締約国の3分の2以上の多数が受諾した時に、効力を生ずる。
改正は、効力を生じたときは、改正を受諾した締約国を拘束するものとし、他の締約国は、改正前のこの条約の規定(受諾した従前の改正を含む。)により引き続き拘束される。
第五一条 [留保]
国際連合事務総長は、批准又は加入の際に行われた留保の書面を受領し、かつ、すべての国に送付する。
この条約の趣旨及び目的と両立しない留保は、認められない。
留保は、国際連合事務総長にあてた通告によりいつでも撤回することができるものとし、同事務総長は、その撤回をすべての国に通報する。このようにして通報された通告は、同事務総長により受領された日に効力を生ずる。
第五二条 [廃棄]
締約国は、国際連合事務総長に対して書面による通告を行うことにより、この条約を廃棄することができる。廃棄は、同事務総長がその通告を受領した日の後1年で効力を生ずる。
第五三条 [寄託]
国際連合事務総長は、この条約の寄託者として指名される。
第五四条 [正文]
アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語をひとしく正文とするこの条約の原本は、国際連合事務総長に寄託する。
以上の証拠として、下名の全権委員は、各自の政府から正当に委任を受けてこの条約に署名した。

   「ウィキソース」より

〇同じ日の過去の出来事(以前にブログで紹介した記事)

1858年(安政5)政治家尾崎行雄の誕生日(新暦12月24日)詳細
1890年(明治23)木骨煉瓦造り3階建て約60室の初代帝国ホテルが完成し、竣工式が行われる詳細
1938年(昭和13)岩波書店が「岩波新書」の最初の20点(赤版)を刊行する詳細
1942年(昭和17)日本文学報国会が企画・選定した「愛国百人一首」が情報局より発表される詳細
1945年(昭和20)GHQが「無線通信の統制に関する覚書」 (SCAPIN-321)を出す詳細
1959年(昭和34)国連総会において「児童の権利に関する宣言」が採択される(世界こどもの日)詳細
2005年(平成17)書家村上三島の命日詳細
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 今日は、平成時代の1994年(平成6)に、「気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)」が発効した日です。
 「気候変動に関する国際連合枠組条約」(きこうへんどうにかんするこくさいれんごうわくぐみじょうやく)は、地球温暖化対策の枠組みを初めて定めた国際条約で、略称を「気候変動枠組条約(UNFCCC)」と言いました。1992年(平成4)5月の国連総会で採択され、同年6月3日~14日まで、ブラジルの都市リオ・デ・ジャネイロにおいて開催された環境と開発に関する国際連合会議(UNCED、地球サミット)において、署名のために開放され、155ヶ国が署名し、1994年(平成6)3月21日に発効します。
 その目的は、大気中の温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素[亜酸化窒素:N2O]など、HFCs、PFCs、SF6)の増加が地球を温暖化し、自然の生態系などに悪影響を及ぼすおそれがあることを、人類共通の関心事であると確認し、大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させ、現在および将来の気候を保護することであるとされ、気候変動がもたらす様々な悪影響を防止するための取り組みの原則、措置などを定めました。この条約に基づき、1995年(平成7)以降、気候変動枠組条約締約国会議(COP)が毎年開催されることになります。
 1990年代末までに二酸化炭素(CO2)をはじめとする大気中の温室効果ガスの排出量を 1990年の水準に戻すことをおもな目的とし、締約国は具体的施策や排出量などの情報を締約国会議に報告することを義務付けられました。1997年(平成9)に京都で行なわれた第3回締約国会議(COP3)では、「京都議定書」が採択され、2015年(平成27)にフランスのパリで行なわれた第21回締約国会議(COP21)では「パリ協定」が採択されています。
 以下に、「気候変動に関する国際連合枠組条約」の英語版原文と日本語訳を掲載しておきましたから、ご参照下さい。

〇「気候変動に関する国際連合枠組条約」(平成6年条約第6号)1996年(平成6)6月21日公布

<英語版原文>

Preamble

The Parties to this Convention,
Acknowledging that change in the Earth's climate and its adverse effects are a common concern of humankind,
Concerned that human activities have been substantially increasing the atmospheric concentrations of greenhouse gases, that these increases enhance the natural greenhouse effect, and that this will result on average in an additional warming of the Earth's surface and atmosphere and may adversely affect natural ecosystems and humankind,
Noting that the largest share of historical and current global emissions of greenhouse gases has originated in developed countries, that per capita emissions in developing countries are still relatively low and that the share of global emissions originating in developing countries will grow to meet their social and development needs,
Aware of the role and importance in terrestrial and marine ecosystems of sinks and reservoirs of greenhouse gases,
Noting that there are many uncertainties in predictions of climate change, particularly with regard to the timing, magnitude and regional patterns thereof,
Acknowledging that the global nature of climate change calls for the widest possible cooperation by all countries and their participation in an effective and appropriate international response, in accordance with their common but differentiated responsibilities and respective capabilities and their social and economic conditions,
Recalling the pertinent provisions of the Declaration of the United Nations Conference on the Human Environment, adopted at Stockholm on 16 June 1972,
Recalling also that States have, in accordance with the Charter of the United Nations and the principles of international law, the sovereign right to exploit their own resources pursuant to their own environmental and developmental policies, and the responsibility to ensure that activities within their jurisdiction or control do not cause damage to the environment of other States or of areas beyond the limits of national jurisdiction,
Reaffirming the principle of sovereignty of States in international cooperation to address climate change,
Recognizing that States should enact effective environmental legislation, that environmental standards, management objectives and priorities should reflect the environmental and developmental context to which they apply, and that standards applied by some countries may be inappropriate and of unwarranted economic and social cost to other countries, in particular developing countries,
Recalling the provisions of General Assembly resolution 44/228 of 22 December 1989 on the United Nations Conference on Environment and Development, and resolutions 43/53 of 6 December 1988, 44/207 of 22 December 1989, 45/212 of 21 December 1990 and 46/169 of 19 December 1991 on protection of global climate for present and future generations of mankind,
Recalling also the provisions of General Assembly resolution 44/206 of 22 December 1989 on the possible adverse effects of sea-level rise on islands and coastal areas, particularly low-lying coastal areas and the pertinent provisions of General Assembly resolution 44/172 of 19 December 1989 on the implementation of the Plan of Action to Combat Desertification,
Recalling further the Vienna Convention for the Protection of the Ozone Layer, 1985, and the Montreal Protocol on Substances that Deplete the Ozone Layer, 1987, as adjusted and amended on 29 June 1990,
Noting the Ministerial Declaration of the Second World Climate Conference adopted on 7 November 1990,
Conscious of the valuable analytical work being conducted by many States on climate change and of the important contributions of the World Meteorological Organization, the United Nations Environment Programme and other organs, organizations and bodies of the United Nations system, as well as other international and intergovernmental bodies, to the exchange of results of scientific research and the coordination of research,
Recognizing that steps required to understand and address climate change will be environmentally, socially and economically most effective if they are based on relevant scientific, technical and economic considerations and continually re-evaluated in the light of new findings in these areas,
Recognizing that various actions to address climate change can be justified economically in their own right and can also help in solving other environmental problems,
Recognizing also the need for developed countries to take immediate action in a flexible manner on the basis of clear priorities, as a first step towards comprehensive response strategies at the global, national and, where agreed, regional levels that take into account all greenhouse gases, with due consideration of their relative contributions to the enhancement of the greenhouse effect,
Recognizing further that low-lying and other small island countries, countries with low-lying coastal, arid and semi- arid areas or areas liable to floods, drought and desertification, and developing countries with fragile mountainous ecosystems are particularly vulnerable to the adverse effects of climate change,
Recognizing the special difficulties of those countries, especially developing countries, whose economies are particularly dependent on fossil fuel production, use and exportation, as a consequence of action taken on limiting greenhouse gas emissions,
Affirming that responses to climate change should be coordinated with social and economic development in an integrated manner with a view to avoiding adverse impacts on the latter, taking into full account the legitimate priority needs of developing countries for the achievement of sustained economic growth and the eradication of poverty,
Recognizing that all countries, especially developing countries, need access to resources required to achieve sustainable social and economic development and that, in order for developing countries to progress towards that goal, their energy consumption will need to grow taking into account the possibilities for achieving greater energy efficiency and for controlling greenhouse gas emissions in general, including through the application of new technologies on terms which make such an application economically and socially beneficial,
Determined to protect the climate system for present and future generations,
Have agreed as follows:

Article 1: Definitions
For the purposes of this Convention:
1. "Adverse effects of climate change" means changes in the physical environment or biota resulting from climate change which have significant deleterious effects on the composition, resilience or productivity of natural and managed ecosystems or on the operation of socio-economic systems or on human health and welfare.
2. "Climate change" means a change of climate which is attributed directly or indirectly to human activity that alters the composition of the global atmosphere and which is in addition to natural climate variability observed over comparable time periods.
3. "Climate system" means the totality of the atmosphere, hydrosphere, biosphere and geosphere and their interactions.
4. "Emissions" means the release of greenhouse gases and/or their precursors into the atmosphere over a specified area and period of time.
5. "Greenhouse gases" means those gaseous constituents of the atmosphere, both natural and anthropogenic, that absorb and re-emit infrared radiation.
6. "Regional economic integration organization" means an organization constituted by sovereign States of a given region which has competence in respect of matters governed by this Convention or its protocols and has been duly authorized, in accordance with its internal procedures, to sign, ratify, accept, approve or accede to the instruments concerned.
7. "Reservoir" means a component or components of the climate system where a greenhouse gas or a precursor of a greenhouse gas is stored.
8. "Sink" means any process, activity or mechanism which removes a greenhouse gas, an aerosol or a precursor of a greenhouse gas from the atmosphere.
9. "Source" means any process or activity which releases a greenhouse gas, an aerosol or a precursor of a greenhouse gas into the atmosphere.

Article 2: Objective
The ultimate objective of this Convention and any related legal instruments that the Conference of the Parties may adopt is to achieve, in accordance with the relevant provisions of the Convention, stabilization of greenhouse gas concentrations in the atmosphere at a level that would prevent dangerous anthropogenic interference with the climate system. Such a level should be achieved within a time-frame sufficient to allow ecosystems to adapt naturally to climate change, to ensure that food production is not threatened and to enable economic development to proceed in a sustainable manner.

Article 3: Principles
In their actions to achieve the objective of the Convention and to implement its provisions, the Parties shall be guided, inter alia, by the following:

1. The Parties should protect the climate system for the benefit of present and future generations of humankind, on the basis of equity and in accordance with their common but differentiated responsibilities and respective capabilities. Accordingly, the developed country Parties should take the lead in combating climate change and the adverse effects thereof.
2. The specific needs and special circumstances of developing country Parties, especially those that are particularly vulnerable to the adverse effects of climate change, and of those Parties, especially developing country Parties, that would have to bear a disproportionate or abnormal burden under the Convention, should be given full consideration.
3. The Parties should take precautionary measures to anticipate, prevent or minimize the causes of climate change and mitigate its adverse effects. Where there are threats of serious or irreversible damage, lack of full scientific certainty should not be used as a reason for postponing such measures, taking into account that policies and measures to deal with climate change should be cost-effective so as to ensure global benefits at the lowest possible cost. To achieve this, such policies and measures should take into account different socio-economic contexts, be comprehensive, cover all relevant sources, sinks and reservoirs of greenhouse gases and adaptation, and comprise all economic sectors. Efforts to address climate change may be carried out cooperatively by interested Parties.
4. The Parties have a right to, and should, promote sustainable development. Policies and measures to protect the climate system against human-induced change should be appropriate for the specific conditions of each Party and should be integrated with national development programmes, taking into account that economic development is essential for adopting measures to address climate change.
5. The Parties should cooperate to promote a supportive and open international economic system that would lead to sustainable economic growth and development in all Parties, particularly developing country Parties, thus enabling them better to address the problems of climate change. Measures taken to combat climate change, including unilateral ones, should not constitute a means of arbitrary or unjustifiable discrimination or a disguised restriction on international trade.

Article 4: Commitments
1. All Parties, taking into account their common but differentiated responsibilities and their specific national and regional development priorities, objectives and circumstances, shall:
(a) Develop, periodically update, publish and make available to the Conference of the Parties, in accordance with Article 12, national inventories of anthropogenic emissions by sources and removals by sinks of all greenhouse gases not controlled by the Montreal Protocol, using comparable methodologies to be agreed upon by the Conference of the Parties;
(b) Formulate, implement, publish and regularly update national and, where appropriate, regional programmes containing measures to mitigate climate change by addressing anthropogenic emissions by sources and removals by sinks of all greenhouse gases not controlled by the Montreal Protocol, and measures to facilitate adequate adaptation to climate change;
(c) Promote and cooperate in the development, application and diffusion, including transfer, of technologies, practices and processes that control, reduce or prevent anthropogenic emissions of greenhouse gases not controlled by the Montreal Protocol in all relevant sectors, including the energy, transport, industry, agriculture, forestry and waste management sectors;
(d) Promote sustainable management, and promote and cooperate in the conservation and enhancement, as appropriate, of sinks and reservoirs of all greenhouse gases not controlled by the Montreal Protocol, including biomass, forests and oceans as well as other terrestrial, coastal and marine ecosystems;
(e) Cooperate in preparing for adaptation to the impacts of climate change; develop and elaborate appropriate and integrated plans for coastal zone management, water resources and agriculture, and for the protection and rehabilitation of areas, particularly in Africa, affected by drought and desertification, as well as floods;
(f) Take climate change considerations into account, to the extent feasible, in their relevant social, economic and environmental policies and actions, and employ appropriate methods, for example impact assessments, formulated and determined nationally, with a view to minimizing adverse effects on the economy, on public health and on the quality of the environment, of projects or measures undertaken by them to mitigate or adapt to climate change;
(g) Promote and cooperate in scientific, technological, technical, socio-economic and other research, systematic observation and development of data archives related to the climate system and intended to further the understanding and to reduce or eliminate the remaining uncertainties regarding the causes, effects, magnitude and timing of climate change and the economic and social consequences of various response strategies;
(h) Promote and cooperate in the full, open and prompt exchange of relevant scientific, technological, technical, socio-economic and legal information related to the climate system and climate change, and to the economic and social consequences of various response strategies;
(i) Promote and cooperate in education, training and public awareness related to climate change and encourage the widest participation in this process, including that of non-governmental organizations; and
(j) Communicate to the Conference of the Parties information related to implementation, in accordance with Article 12.
2. The developed country Parties and other Parties included in Annex I commit themselves specifically as provided for in the following:
(a) Each of these Parties shall adopt national1 policies and take corresponding measures on the mitigation of climate change, by limiting its anthropogenic emissions of greenhouse gases and protecting and enhancing its greenhouse gas sinks and reservoirs. These policies and measures will demonstrate that developed countries are taking the lead in modifying longer-term trends in anthropogenic emissions consistent with the objective of the Convention, recognizing that the return by the end of the present decade to earlier levels of anthropogenic emissions of carbon dioxide and other greenhouse gases not controlled by the Montreal Protocol would contribute to such modification, and taking into account the differences in these Parties' starting points and approaches, economic structures and resource bases, the need to maintain strong and sustainable economic growth, available technologies and other individual circumstances, as well as the need for equitable and appropriate contributions by each of these Parties to the global effort regarding that objective. These Parties may implement such policies and measures jointly with other Parties and may assist other Parties in contributing to the achievement of the objective of the Convention and, in particular, that of this subparagraph;
(b) In order to promote progress to this end, each of these Parties shall communicate, within six months of the entry into force of the Convention for it and periodically thereafter, and in accordance with Article 12, detailed information on its policies and measures referred to in subparagraph (a) above, as well as on its resulting projected anthropogenic emissions by sources and removals by sinks of greenhouse gases not controlled by the Montreal Protocol for the period referred to in subparagraph (a), with the aim of returning individually or jointly to their 1990 levels these anthropogenic emissions of carbon dioxide and other greenhouse gases not controlled by the Montreal Protocol. This information will be reviewed by the Conference of the Parties, at its first session and periodically thereafter, in accordance with Article 7;
(c) Calculations of emissions by sources and removals by sinks of greenhouse gases for the purposes of subparagraph (b) above should take into account the best available scientific knowledge, including of the effective capacity of sinks and the respective contributions of such gases to climate change. The Conference of the Parties shall consider and agree regional economic integration organizations. This includes policies and measures adopted by on methodologies for these calculations at its first session and review them regularly thereafter;
(d) The Conference of the Parties shall, at its first session, review the adequacy of subparagraphs (a) and (b) above. Such review shall be carried out in the light of the best available scientific information and assessment on climate change and its impacts, as well as relevant technical, social and economic information. Based on this review, the Conference of the Parties shall take appropriate action, which may include the adoption of amendments to the commitments in subparagraphs (a) and (b) above. The Conference of the Parties, at its first session, shall also take decisions regarding criteria for joint implementation as indicated in subparagraph (a) above. A second review of subparagraphs (a) and (b) shall take place not later than 31 December 1998, and thereafter at regular intervals determined by the Conference of the Parties, until the objective of the Convention is met;
(e) Each of these Parties shall :
(i) Coordinate as appropriate with other such Parties, relevant economic and administrative instruments developed to achieve the objective of the Convention; and
(ii) Identify and periodically review its own policies and practices which encourage activities that lead to greater levels of anthropogenic emissions of greenhouse gases not controlled by the Montreal Protocol than would otherwise occur;
(f) The Conference of the Parties shall review, not later than 31 December 1998, available information with a view to taking decisions regarding such amendments to the lists in Annexes I and II as may be appropriate, with the approval of the Party concerned;
(g) Any Party not included in Annex I may, in its instrument of ratification, acceptance, approval or accession, or at any time thereafter, notify the Depositary that it intends to be bound by subparagraphs (a) and (b) above. The Depositary shall inform the other signatories and Parties of any such notification.
3. The developed country Parties and other developed Parties included in Annex II shall provide new and additional financial resources to meet the agreed full costs incurred by developing country Parties in complying with their obligations under Article 12, paragraph 1. They shall also provide such financial resources, including for the transfer of technology, needed by the developing country Parties to meet the agreed full incremental costs of implementing measures that are covered by paragraph 1 of this Article and that are agreed between a developing country Party and the international entity or entities referred to in Article 11, in accordance with that Article. The implementation of these commitments shall take into account the need for adequacy and predictability in the flow of funds and the importance of appropriate burden sharing among the developed country Parties.
4. The developed country Parties and other developed Parties included in Annex II shall also assist the developing country Parties that are particularly vulnerable to the adverse effects of climate change in meeting costs of adaptation to those adverse effects.
5. The developed country Parties and other developed Parties included in Annex II shall take all practicable steps to promote, facilitate and finance, as appropriate, the transfer of, or access to, environmentally sound technologies and know-how to other Parties, particularly developing country Parties, to enable them to implement the provisions of the Convention. In this process, the developed country Parties shall support the development and enhancement of endogenous capacities and technologies of developing country Parties. Other Parties and organizations in a position to do so may also assist in facilitating the transfer of such technologies.
6. In the implementation of their commitments under paragraph 2 above, a certain degree of flexibility shall be allowed by the Conference of the Parties to the Parties included in Annex I undergoing the process of transition to a market economy, in order to enhance the ability of these Parties to address climate change, including with regard to the historical level of anthropogenic emissions of greenhouse gases not controlled by the Montreal Protocol chosen as a reference.
7. The extent to which developing country Parties will effectively implement their commitments under the Convention will depend on the effective implementation by developed country Parties of their commitments under the Convention related to financial resources and transfer of technology and will take fully into account that economic and social development and poverty eradication are the first and overriding priorities of the developing country Parties.
8. In the implementation of the commitments in this Article, the Parties shall give full consideration to what actions are necessary under the Convention, including actions related to funding, insurance and the transfer of technology, to meet the specific needs and concerns of developing country Parties arising from the adverse effects of climate change and/or the impact of the implementation of response measures, especially on:
(a) Small island countries;
(b) Countries with low-lying coastal areas;
(c) Countries with arid and semi-arid areas, forested areas and areas liable to forest decay;
(d) Countries with areas prone to natural disasters;
(e) Countries with areas liable to drought and desertification;
(f) Countries with areas of high urban atmospheric pollution;
(g) Countries with areas with fragile ecosystems, including mountainous ecosystems;
(h) Countries whose economies are highly dependent on income generated from the production, processing and export, and/or on consumption of fossil fuels and associated energy-intensive products; and
(i) Land-locked and transit countries.
Further, the Conference of the Parties may take actions, as appropriate, with respect to this paragraph.
9. The Parties shall take full account of the specific needs and special situations of the least developed countries in their actions with regard to funding and transfer of technology.
10. The Parties shall, in accordance with Article 10, take into consideration in the implementation of the commitments of the Convention the situation of Parties, particularly developing country Parties, with economies that are vulnerable to the adverse effects of the implementation of measures to respond to climate change. This applies notably to Parties with economies that are highly dependent on income generated from the production, processing and export, and/or consumption of fossil fuels and associated energy-intensive products and/or the use of fossil fuels for which such Parties have serious difficulties in switching to alternatives.

Article 5: Research and Systematic Observation
In carrying out their commitments under Article 4, paragraph 1(g), the Parties shall:
(a) Support and further develop, as appropriate, international and intergovernmental programmes and networks or organizations aimed at defining, conducting, assessing and financing research, data collection and systematic observation, taking into account the need to minimize duplication of effort;
(b) Support international and intergovernmental efforts to strengthen systematic observation and national scientific and technical research capacities and capabilities, particularly in developing countries, and to promote access to, and the exchange of, data and analyses thereof obtained from areas beyond national jurisdiction; and
(c) Take into account the particular concerns and needs of developing countries and cooperate in improving their endogenous capacities and capabilities to participate in the efforts referred to in subparagraphs (a) and (b) above.

Article 6: Education, Training and Public Awareness
In carrying out their commitments under Article 4, paragraph 1(i), the Parties shall:
(a) Promote and facilitate at the national and, as appropriate, subregional and regional levels, and in accordance with national laws and regulations, and within their respective capacities:
(i) The development and implementation of educational and public awareness programmes on climate change and its effects;
(ii) Public access to information on climate change and its effects;
(iii) Public participation in addressing climate change and its effects and developing adequate responses; and
(iv) Training of scientific, technical and managerial personnel.
(b) Cooperate in and promote, at the international level, and, where appropriate, using existing bodies:
(i) The development and exchange of educational and public awareness material on climate change and its effects; and
(ii) The development and implementation of education and training programmes, including the strengthening of national institutions and the exchange or secondment of personnel to train experts in this field, in particular for developing countries.

Article 7: Conference of the Parties
1. A Conference of the Parties is hereby established.
2. The Conference of the Parties, as the supreme body of this Convention, shall keep under regular review the implementation of the Convention and any related legal instruments that the Conference of the Parties may adopt, and shall make, within its mandate, the decisions necessary to promote the effective implementation of the Convention. To this end, it shall:
(a) Periodically examine the obligations of the Parties and the institutional arrangements under the Convention, in the light of the objective of the Convention, the experience gained in its implementation and the evolution of scientific and technological knowledge;
(b) Promote and facilitate the exchange of information on measures adopted by the Parties to address climate change and its effects, taking into account the differing circumstances, responsibilities and capabilities of the Parties and their respective commitments under the Convention;
(c) Facilitate, at the request of two or more Parties, the coordination of measures adopted by them to address climate change and its effects, taking into account the differing circumstances, responsibilities and capabilities of the Parties and their respective commitments under the Convention;
(d) Promote and guide, in accordance with the objective and provisions of the Convention, the development and periodic refinement of comparable methodologies, to be agreed on by the Conference of the Parties, inter alia, for preparing inventories of greenhouse gas emissions by sources and removals by sinks, and for evaluating the effectiveness of measures to limit the emissions and enhance the removals of these gases;
(e) Assess, on the basis of all information made available to it in accordance with the provisions of the Convention, the implementation of the Convention by the Parties, the overall effects of the measures taken pursuant to the Convention, in particular environmental, economic and social effects as well as their cumulative impacts and the extent to which progress towards the objective of the Convention is being achieved;
(f) Consider and adopt regular reports on the implementation of the Convention and ensure their publication;
(g) Make recommendations on any matters necessary for the implementation of the Convention;
(h) Seek to mobilize financial resources in accordance with Article 4, paragraphs 3, 4 and 5, and Article 11;
(i) Establish such subsidiary bodies as are deemed necessary for the implementation of the Convention;
(j) Review reports submitted by its subsidiary bodies and provide guidance to them;
(k) Agree upon and adopt, by consensus, rules of procedure and financial rules for itself and for any subsidiary bodies;
(l) Seek and utilize, where appropriate, the services and cooperation of, and information provided by, competent international organizations and intergovernmental and non-governmental bodies; and
(m) Exercise such other functions as are required for the achievement of the objective of the Convention as well as all other functions assigned to it under the Convention.
3. The Conference of the Parties shall, at its first session, adopt its own rules of procedure as well as those of the subsidiary bodies established by the Convention, which shall include decision-making procedures for matters not already covered by decision-making procedures stipulated in the Convention. Such procedures may include specified majorities required for the adoption of particular decisions.
4. The first session of the Conference of the Parties shall be convened by the interim secretariat referred to in Article 21 and shall take place not later than one year after the date of entry into force of the Convention. Thereafter, ordinary sessions of the Conference of the Parties shall be held every year unless otherwise decided by the Conference of the Parties.
5. Extraordinary sessions of the Conference of the Parties shall be held at such other times as may be deemed necessary by the Conference, or at the written request of any Party, provided that, within six months of the request being communicated to the Parties by the secretariat, it is supported by at least one third of the Parties.
6. The United Nations, its specialized agencies and the International Atomic Energy Agency, as well as any State member thereof or observers thereto not Party to the Convention, may be represented at sessions of the Conference of the Parties as observers. Any body or agency, whether national or international, governmental or non-governmental, which is qualified in matters covered by the Convention, and which has informed the secretariat of its wish to be represented at a session of the Conference of the Parties as an observer, may be so admitted unless at least one third of the Parties present object. The admission and participation of observers shall be subject to the rules of procedure adopted by the Conference of the Parties.

Article 8: Secretariat
1. A secretariat is hereby established. 2. The functions of the secretariat shall be:
(a) To make arrangements for sessions of the Conference of the Parties and its subsidiary bodies established under the Convention and to provide them with services as required;
(b) To compile and transmit reports submitted to it;
(c) To facilitate assistance to the Parties, particularly developing country Parties, on request, in the compilation and communication of information required in accordance with the provisions of the Convention;
(d) To prepare reports on its activities and present them to the Conference of the Parties;
(e) To ensure the necessary coordination with the secretariats of other relevant international bodies;
(f) To enter, under the overall guidance of the Conference of the Parties, into such administrative and contractual arrangements as may be required for the effective discharge of its functions; and
(g) To perform the other secretariat functions specified in the Convention and in any of its protocols and such other functions as may be determined by the Conference of the Parties.
3. The Conference of the Parties, at its first session, shall designate a permanent secretariat and make arrangements for its functioning.

Article 9: Subsidiary Body for Scientific and Technological Advice
1. A subsidiary body for scientific and technological advice is hereby established to provide the Conference of the Parties and, as appropriate, its other subsidiary bodies with timely information and advice on scientific and technological matters relating to the Convention. This body shall be open to participation by all Parties and shall be multidisciplinary. It shall comprise government representatives competent in the relevant field of expertise. It shall report regularly to the Conference of the Parties on all aspects of its work.
2. Under the guidance of the Conference of the Parties, and drawing upon existing competent international bodies, this body shall:
(a) Provide assessments of the state of scientific knowledge relating to climate change and its effects;
(b) Prepare scientific assessments on the effects of measures taken in the implementation of the Convention;
(c) Identify innovative, efficient and state-of-the-art technologies and know-how and advise on the ways and means of promoting development and/or transferring such technologies;
(d) Provide advice on scientific programmes, international cooperation in research and development related to climate change, as well as on ways and means of supporting endogenous capacity-building in developing countries; and
(e) Respond to scientific, technological and methodological questions that the Conference of the Parties and its subsidiary bodies may put to the body.
3. The functions and terms of reference of this body may be further elaborated by the Conference of the Parties.

Article 10: Subsidiary Body for Implementation
1. A subsidiary body for implementation is hereby established to assist the Conference of the Parties in the assessment and review of the effective implementation of the Convention. This body shall be open to participation by all Parties and comprise government representatives who are experts on matters related to climate change. It shall report regularly to the Conference of the Parties on all aspects of its work.
2. Under the guidance of the Conference of the Parties, this body shall:
(a) Consider the information communicated in accordance with Article 12, paragraph 1, to assess the overall aggregated effect of the steps taken by the Parties in the light of the latest scientific assessments concerning climate change;
(b) Consider the information communicated in accordance with Article 12, paragraph 2, in order to assist the Conference of the Parties in carrying out the reviews required by Article 4, paragraph 2(d); and
(c) Assist the Conference of the Parties, as appropriate, in the preparation and implementation of its decisions.

Article 11: Financial Mechanism
1. A mechanism for the provision of financial resources on a grant or concessional basis, including for the transfer of technology, is hereby defined. It shall function under the guidance of and be accountable to the Conference of the Parties, which shall decide on its policies, programme priorities and eligibility criteria related to this Convention. Its operation shall be entrusted to one or more existing international entities.
2. The financial mechanism shall have an equitable and balanced representation of all Parties within a transparent system of governance.
3. The Conference of the Parties and the entity or entities entrusted with the operation of the financial mechanism shall agree upon arrangements to give effect to the above paragraphs, which shall include the following:
(a) Modalities to ensure that the funded projects to address climate change are in conformity with the policies, programme priorities and eligibility criteria established by the Conference of the Parties;
(b) Modalities by which a particular funding decision may be reconsidered in light of these policies, programme priorities and eligibility criteria;
(c) Provision by the entity or entities of regular reports to the Conference of the Parties on its funding operations, which is consistent with the requirement for accountability set out in paragraph 1 above; and
(d) Determination in a predictable and identifiable manner of the amount of funding necessary and available for the implementation of this Convention and the conditions under which that amount shall be periodically reviewed.
4. The Conference of the Parties shall make arrangements to implement the above-mentioned provisions at its first session, reviewing and taking into account the interim arrangements referred to in Article 21, paragraph 3, and shall decide whether these interim arrangements shall be maintained. Within four years thereafter, the Conference of the Parties shall review the financial mechanism and take appropriate measures.
5. The developed country Parties may also provide and developing country Parties avail themselves of, financial resources related to the implementation of the Convention through bilateral, regional and other multilateral channels.

Article 12: Communication of Information Related to Implantation
1. In accordance with Article 4, paragraph 1, each Party shall communicate to the Conference of the Parties, through the secretariat, the following elements of information:
(a) A national inventory of anthropogenic emissions by sources and removals by sinks of all greenhouse gases not controlled by the Montreal Protocol, to the extent its capacities permit, using comparable methodologies to be promoted and agreed upon by the Conference of the Parties;
(b) A general description of steps taken or envisaged by the Party to implement the Convention; and
(c) Any other information that the Party considers relevant to the achievement of the objective of the Convention and suitable for inclusion in its communication, including, if feasible, material relevant for calculations of global emission trends.
2. Each developed country Party and each other Party included in Annex I shall incorporate in its communication the following elements of information:
(a) A detailed description of the policies and measures that it has adopted to implement its commitment under Article 4, paragraphs 2(a) and 2(b); and
(b) A specific estimate of the effects that the policies and measures referred to in subparagraph (a) immediately above will have on anthropogenic emissions by its sources and removals by its sinks of greenhouse gases during the period referred to in Article 4, paragraph 2(a).
3. In addition, each developed country Party and each other developed Party included in Annex II shall incorporate details of measures taken in accordance with Article 4, paragraphs 3, 4 and 5.
4. Developing country Parties may, on a voluntary basis, propose projects for financing, including specific technologies, materials, equipment, techniques or practices that would be needed to implement such projects, along with, if possible, an estimate of all incremental costs, of the reductions of emissions and increments of removals of greenhouse gases, as well as an estimate of the consequent benefits.
5. Each developed country Party and each other Party included in Annex I shall make its initial communication within six months of the entry into force of the Convention for that Party. Each Party not so listed shall make its initial communication within three years of the entry into force of the Convention for that Party, or of the availability of financial resources in accordance with Article 4, paragraph 3. Parties that are least developed countries may make their initial communication at their discretion. The frequency of subsequent communications by all Parties shall be determined by the Conference of the Parties, taking into account the differentiated timetable set by this paragraph.
6. Information communicated by Parties under this Article shall be transmitted by the secretariat as soon as possible to the Conference of the Parties and to any subsidiary bodies concerned. If necessary, the procedures for the communication of information may be further considered by the Conference of the Parties.
7. From its first session, the Conference of the Parties shall arrange for the provision to developing country Parties of technical and financial support, on request, in compiling and communicating information under this Article, as well as in identifying the technical and financial needs associated with proposed projects and response measures under Article 4. Such support may be provided by other Parties, by competent international organizations and by the secretariat, as appropriate.
8. Any group of Parties may, subject to guidelines adopted by the Conference of the Parties, and to prior notification to the Conference of the Parties, make a joint communication in fulfilment of their obligations under this Article, provided that such a communication includes information on the fulfilment by each of these Parties of its individual obligations under the Convention.
9. Information received by the secretariat that is designated by a Party as confidential, in accordance with criteria to be established by the Conference of the Parties, shall be aggregated by the secretariat to protect its confidentiality before being made available to any of the bodies involved in the communication and review of information.
10.Subject to paragraph 9 above, and without prejudice to the ability of any Party to make public its communication at any time, the secretariat shall make communications by Parties under this Article publicly available at the time they are submitted to the Conference of the Parties.

Article 13: Resolution of Questions Regarding Implementation
The Conference of the Parties shall, at its first session, consider the establishment of a multilateral consultative process, available to Parties on their request, for the resolution of questions regarding the implementation of the Convention.

Article 14: Settlement of Disputes
1. In the event of a dispute between any two or more Parties concerning the interpretation or application of the Convention, the Parties concerned shall seek a settlement of the dispute through negotiation or any other peaceful means of their own choice.
2. When ratifying, accepting, approving or acceding to the Convention, or at any time thereafter, a Party which is not a regional economic integration organization may declare in a written instrument submitted to the Depositary that, in respect of any dispute concerning the interpretation or application of the Convention, it recognizes as compulsory ipso facto and without special agreement, in relation to any Party accepting the same obligation:
(a) Submission of the dispute to the International Court of Justice, and/or
(b) Arbitration in accordance with procedures to be adopted by the Conference of the Parties as soon as practicable, in an annex on arbitration.
A Party which is a regional economic integration organization may make a declaration with like effect in relation to arbitration in accordance with the procedures referred to in subparagraph (b) above.
3. A declaration made under paragraph 2 above shall remain in force until it expires in accordance with its terms or until three months after written notice of its revocation has been deposited with the Depositary.
4. A new declaration, a notice of revocation or the expiry of a declaration shall not in any way affect proceedings pending before the International Court of Justice or the arbitral tribunal, unless the parties to the dispute otherwise agree.
5. Subject to the operation of paragraph 2 above, if after twelve months following notification by one Party to another that a dispute exists between them, the Parties concerned have not been able to settle their dispute through the means mentioned in paragraph 1 above, the dispute shall be submitted, at the request of any of the parties to the dispute, to conciliation.
6. A conciliation commission shall be created upon the request of one of the parties to the dispute. The commission shall be composed of an equal number of members appointed by each party concerned and a chairman chosen jointly by the members appointed by each party. The commission shall render a recommendatory award, which the parties shall consider in good faith.
7. Additional procedures relating to conciliation shall be adopted by the Conference of the Parties, as soon as practicable, in an annex on conciliation.
8. The provisions of this Article shall apply to any related legal instrument which the Conference of the Parties may adopt, unless the instrument provides otherwise.

Article 15: Amendments to the Convention
1. Any Party may propose amendments to the Convention.
2. Amendments to the Convention shall be adopted at an ordinary session of the Conference of the Parties. The text of any proposed amendment to the Convention shall be communicated to the Parties by the secretariat at least six months before the meeting at which it is proposed for adoption. The secretariat shall also communicate proposed amendments to the signatories to the Convention and, for information, to the Depositary.
3. The Parties shall make every effort to reach agreement on any proposed amendment to the Convention by consensus. If all efforts at consensus have been exhausted, and no agreement reached, the amendment shall as a last resort be adopted by a three-fourths majority vote of the Parties present and voting at the meeting. The adopted amendment shall be communicated by the secretariat to the Depositary, who shall circulate it to all Parties for their acceptance.
4. Instruments of acceptance in respect of an amendment shall be deposited with the Depositary. An amendment adopted in accordance with paragraph 3 above shall enter into force for those Parties having accepted it on the ninetieth day after the date of receipt by the Depositary of an instrument of acceptance by at least three fourths of the Parties to the Convention.
5. The amendment shall enter into force for any other Party on the ninetieth day after the date on which that Party deposits with the Depositary its instrument of acceptance of the said amendment.
6. For the purposes of this Article, "Parties present and voting" means Parties present and casting an affirmative or negative vote.

Article 16: Adoption and Amendment of Annexes to the Convention
1. Annexes to the Convention shall form an integral part thereof and, unless otherwise expressly provided, a reference to the Convention constitutes at the same time a reference to any annexes thereto. Without prejudice to the provisions of Article 14, paragraphs 2(b) and 7, such annexes shall be restricted to lists, forms and any other material of a descriptive nature that is of a scientific, technical, procedural or administrative character.
2. Annexes to the Convention shall be proposed and adopted in accordance with the procedure set forth in Article 15, paragraphs 2, 3 and 4.
3. An annex that has been adopted in accordance with paragraph 2 above shall enter into force for all Parties to the Convention six months after the date of the communication by the Depositary to such Parties of the adoption of the annex, except for those Parties that have notified the Depositary, in writing, within that period of their non-acceptance of the annex. The annex shall enter into force for Parties which withdraw their notification of non-acceptance on the ninetieth day after the date on which withdrawal of such notification has been received by the Depositary.
4. The proposal, adoption and entry into force of amendments to annexes to the Convention shall be subject to the same procedure as that for the proposal, adoption and entry into force of annexes to the Convention in accordance with paragraphs 2 and 3 above.
5. If the adoption of an annex or an amendment to an annex involves an amendment to the Convention, that annex or amendment to an annex shall not enter into force until such time as the amendment to the Convention enters into force.

Article 17: Protocols
1. The Conference of the Parties may, at any ordinary session, adopt protocols to the Convention.
2. The text of any proposed protocol shall be communicated to the Parties by the secretariat at least six months before such a session.
3. The requirements for the entry into force of any protocol shall be established by that instrument.
4. Only Parties to the Convention may be Parties to a protocol.
5. Decisions under any protocol shall be taken only by the Parties to the protocol concerned.

Article 18: Right to Vote
1. Each Party to the Convention shall have one vote, except as provided for in paragraph 2 below.
2. Regional economic integration organizations, in matters within their competence, shall exercise their right to vote with a number of votes equal to the number of their member States that are Parties to the Convention. Such an organization shall not exercise its right to vote if any of its member States exercises its right, and vice versa.

Article 19: Depositary
The Secretary-General of the United Nations shall be the Depositary of the Convention and of protocols adopted in accordance with Article 17.

Article 20: Signature
This Convention shall be open for signature by States Members of the United Nations or of any of its specialized agencies or that are Parties to the Statute of the International Court of Justice and by regional economic integration organizations at Rio de Janeiro, during the United Nations Conference on Environment and Development, and thereafter at United Nations Headquarters in New York from 20 June 1992 to 19 June 1993.

Article 21: Interim Arrangements
1. The secretariat functions referred to in Article 8 will be carried out on an interim basis by the secretariat established by the General Assembly of the United Nations in its resolution 45/212 of 21 December 1990, until the completion of the first session of the Conference of the Parties.
2. The head of the interim secretariat referred to in paragraph 1 above will cooperate closely with the Intergovernmental Panel on Climate Change to ensure that the Panel can respond to the need for objective scientific and technical advice. Other relevant scientific bodies could also be consulted.
3. The Global Environment Facility of the United Nations Development Programme, the United Nations Environment Programme and the International Bank for Reconstruction and Development shall be the international entity entrusted with the operation of the financial mechanism referred to in Article 11 on an interim basis. In this connection, the Global Environment Facility should be appropriately restructured and its membership made universal to enable it to fulfil the requirements of Article 11.

Article 22: Ratification, Acceptance, Approval or Accession
1. The Convention shall be subject to ratification, acceptance, approval or accession by States and by regional economic integration organizations. It shall be open for accession from the day after the date on which the Convention is closed for signature. Instruments of ratification, acceptance, approval or accession shall be deposited with the Depositary.
2. Any regional economic integration organization which becomes a Party to the Convention without any of its member States being a Party shall be bound by all the obligations under the Convention. In the case of such organizations, one or more of whose member States is a Party to the Convention, the organization and its member States shall decide on their respective responsibilities for the performance of their obligations under the Convention. In such cases, the organization and the member States shall not be entitled to exercise rights under the Convention concurrently.
3. In their instruments of ratification, acceptance, approval or accession, regional economic integration organizations shall declare the extent of their competence with respect to the matters governed by the Convention. These organizations shall also inform the Depositary, who shall in turn inform the Parties, of any substantial modification in the extent of their competence.

Article 23: Entry into Force
1. The Convention shall enter into force on the ninetieth day after the date of deposit of the fiftieth instrument of ratification, acceptance, approval or accession.
2. For each State or regional economic integration organization that ratifies, accepts or approves the Convention or accedes thereto after the deposit of the fiftieth instrument of ratification, acceptance, approval or accession, the Convention shall enter into force on the ninetieth day after the date of deposit by such State or regional economic integration organization of its instrument of ratification, acceptance, approval or accession.
3. For the purposes of paragraphs 1 and 2 above, any instrument deposited by a regional economic integration organization shall not be counted as additional to those deposited by States members of the organization.

Article 24: Reservations
No reservations may be made to the Convention.

Article 25: Withdrawal
1. At any time after three years from the date on which the Convention has entered into force for a Party, that Party may withdraw from the Convention by giving written notification to the Depositary.
2. Any such withdrawal shall take effect upon expiry of one year from the date of receipt by the Depositary of the notification of withdrawal, or on such later date as may be specified in the notification of withdrawal.
3. Any Party that withdraws from the Convention shall be considered as also having withdrawn from any protocol to which it is a Party.

Article 26: Authentic Texts
The original of this Convention, of which the Arabic, Chinese, English, French, Russian and Spanish texts are equally authentic, shall be deposited with the Secretary-General of the United Nations.

IN WITNESS WHEREOF the undersigned, being duly authorized to that effect, have signed this Convention.

DONE at New York this ninth day of May one thousand nine hundred and ninety-two.

Annexes

<日本語訳>

気候変動に関する国際連合枠組条約をここに公布する。

 気候変動に関する国際連合枠組条約

 この条約の締約国は、
 地球の気候の変動及びその悪影響が人類の共通の関心事であることを確認し、
 人間活動が大気中の温室効果ガスの濃度を著しく増加させてきていること、その増加が自然の温室効果を増大させていること並びにこのことが、地表及び地球の大気を全体として追加的に温暖化することとなり、自然の生態系及び人類に悪影響を及ぼすおそれがあることを憂慮し、
 過去及び現在における世界全体の温室効果ガスの排出量の最大の部分を占めるのは先進国において排出されたものであること、開発途上国における一人当たりの排出量は依然として比較的少ないこと並びに世界全体の排出量において開発途上国における排出量が占める割合はこれらの国の社会的な及び開発のためのニーズに応じて増加していくことに留意し、
 温室効果ガスの吸収源及び貯蔵庫の陸上及び海洋の生態系における役割及び重要性を認識し、
 気候変動の予測には、特に、その時期、規模及び地域的な特性に関して多くの不確実性があることに留意し、
 気候変動が地球的規模の性格を有することから、すべての国が、それぞれ共通に有しているが差異のある責任、各国の能力並びに各国の社会的及び経済的状況に応じ、できる限り広範な協力を行うこと及び効果的かつ適当な国際的対応に参加することが必要であることを確認し、
 千九百七十二年六月十六日にストックホルムで採択された国際連合人間環境会議の宣言の関連規定を想起し、
 諸国は、国際連合憲章及び国際法の諸原則に基づき、その資源を自国の環境政策及び開発政策に従って開発する主権的権利を有すること並びに自国の管轄又は管理の下における活動が他国の環境又はいずれの国の管轄にも属さない区域の環境を害さないことを確保する責任を有することを想起し、
 気候変動に対処するための国際協力における国家の主権の原則を再確認し、
 諸国が環境に関する効果的な法令を制定すべきであること、環境基準、環境の管理に当たっての目標及び環境問題における優先度はこれらが適用される環境及び開発の状況を反映すべきであること、並びにある国の適用する基準が他の国(特に開発途上国)にとって不適当なものとなり、不当な経済的及び社会的損失をもたらすものとなるおそれがあることを認め、
 国際連合環境開発会議に関する千九百八十九年十二月二十二日の国際連合総会決議第二百二十八号(第四十四回会期)並びに人類の現在及び将来の世代のための地球的規模の気候の保護に関する千九百八十八年十二月六日の国際連合総会決議第五十三号(第四十三回会期)、千九百八十九年十二月二十二日の同決議第二百七号(第四十四回会期)、千九百九十年十二月二十一日の同決議第二百十二号(第四十五回会期)及び千九百九十一年十二月十九日の同決議第百六十九号(第四十六回会期)を想起し、
 海面の上昇が島及び沿岸地域(特に低地の沿岸地域)に及ぼし得る悪影響に関する千九百八十九年十二月二十二日の国際連合総会決議第二百六号(第四十四回会期)の規定及び砂漠化に対処するための行動計画の実施に関する千九百八十九年十二月十九日の国際連合総会決議第百七十二号(第四十四回会期)の関連規定を想起し、
 更に、千九百八十五年のオゾン層の保護のためのウィーン条約並びに千九百九十年六月二十九日に調整され及び改正された千九百八十七年のオゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書(以下「モントリオール議定書」という)を想起し、
 千九百九十年十一月七日に採択された第二回世界気候会議の閣僚昼言に留意し、
 多くの国が気候変動に関して有益な分析を行っていること並びに際連合の諸機関(特に、世界気象機関、国際連合環境計画)その他の国際機関及び政府間機関が科学的研究の成果の交換及び研究の整について重要な貢献を行っていることを意識し、
 気候変動を理解し及びこれに対処するために必要な措置は、関連する科学、技術及び経済の分野における考察に基礎を置き、かつ、これらの分野において新たに得られた知見に照らして絶えず再評価れる場合には、環境上、社会上及び経済上最も効果的なものになことを認め、
 気候変動に対処するための種々の措置は、それ自体経済的に正当し得ること及びその他の環境問題の解決に役立ち得ることを認め、
 先進国が、明確な優先順位に基づき、すべての温室効果ガスを考慮に入れ、かつ、それらのガスがそれぞれ温室効果の増大に対して与える相対的な影響を十分に勘案した包括的な対応戦略(地球的、国家的及び合意がある場合には地域的な規模のもの)に向けた第一歩として、直ちに柔軟に行動することが必要であることを認め、
 更に、標高の低い島しょ国その他の島しょ国、低地の沿岸地域、乾燥地城若しくは半乾燥地域又は洪水、干ばつ若しくは砂漠化のおそれのある地域を有する国及びぜい弱な山岳の生態系を有する開発途上国は、特に気候変動の悪影響を受けやすいことを認め、
 経済が化石燃料の生産、使用及び輸出に特に依存している国(特に開発途上国)について、温室効果ガスの排出抑制に関してとられる措置の結果特別な困難が生ずることを認め、
 持続的な経済成長の達成及び貧困の撲滅という開発途上国の正当かつ優先的な要請を十分に考慮し、気候変動への対応については、社会及び経済の開発に対する悪影響を回避するため、これらの開発との間で総合的な調整が図られるべきであることを確認し、
 すべての国(特に開発途上国)が社会及び経済の持続可能な開の達成のための資源の取得の機会を必要としていること、並びに発途上国がそのような開発の達成という目標に向かって前進するため、一層高いエネルギー効率の達成及び温室効果ガスの排出の一般的な抑制の可能性(特に、新たな技術が経済的にも社会的にも有利な条件で利用されることによるそのような可能性)をも考慮に入れつつ、そのエネルギー消費を増加させる必要があることを認め、
 現在及び将来の世代のために気候系を保護することを決意して、
 次のとおり協定した。

第一条 定義(注)
注 各条の表題は、専ら便宜のために付するものである。

この条約の適用上、
「気候変動の悪影響」とは、気候変動に起因する自然環境又は生物相の変化であって、自然の及び管理された生態系の構成、回復力若しくは生産力、社会及び経済の機能又は人の健康及び福祉に対し著しく有害な影響を及ぼすものをいう。
「気候変動」とは、地球の大気の組成を変化させる人間活動に直接又は間接に起因する気候の変化であって、比較可能な期間において観測される気候の自然な変動に対して追加的に生ずるものをいう。
「気候系」とは、気圏、水圏、生物圏及び岩石圏の全体並びにこれらの間の相互作用をいう。
「排出」とは、特定の地域及び期間における温室効果ガス又はその前駆物質の大気中への放出をいう。
「温室効果ガス」とは、大気を構成する気体(天然のものであるか人為的に排出されるものであるかを問わない。)であって、赤外線を吸収し及び再放射するものをいう。
「地域的な経済統合のための機関」とは、特定の地域の主権国家によって構成され、この条約又はその議定書が規律する事項に関して権限を有し、かつ、その内部手続に従ってこの条約若しくはその議定書の署名、批准、受諾若しくは承認又はこの条約若しくはその議定書への加入が正当に委任されている機関をいう。
「貯蔵庫」とは、温室効果ガス又はその前駆物質を貯蔵する気候系の構成要素をいう。
「吸収源」とは、温室効果ガス、エーロゾル又は温室効果ガスの前駆物質を大気中から除去する作用、活動又は仕組みをいう。
「発生源」とは、温室効果ガス、エーロゾル又は温室効果ガスの前駆物質を大気中に放出する作用又は活動をいう。

第二条 目的
 この条約及び締約国会議が採択する法的文書には、この条約の関連規定に従い、気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを究極的な目的とする。そのような水準は、生態系が気候変動に自然に適応し、食糧の生産が脅かされず、かつ、経済開発が持続可能な態様で進行することができるような期間内に達成されるべきである。

第三条 原則
 締約国は、この条約の目的を達成し及びこの条約を実施するための措置をとるに当たり、特に、次に掲げるところを指針とする。
締約国は、衡平の原則に基づき、かつ、それぞれ共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力に従い、人類の現在及び将釆の世代のために気候系を保護すべきである。したがって、先進締約国は、率先して気候変動及びその悪影響に対処すべきである。
開発途上締約国(特に気候変動の悪影響を著しく受けやすいもの)及びこの条約によって過重又は異常な負担を負うこととなる締約国(特に開発途上締約国)の個別のニーズ及び特別な事情について十分な考慮が払われるべきである。
締約国は、気候変動の原因を予測し、防止し又は最小限にするための予防措置をとるとともに、気候変動の悪影響を緩和すべきである。深刻な又は回復不可能な損害のおそれがある場合には、科学的な確実性が十分にないことをもって、このような予防措置とることを延期する理由とすべきではない。もっとも、気候変動に対処するための政策及び措置は、可能な限り最小の費用によって地球的規模で利益がもたらされるように費用対効果の大きいものとすることについても考慮を払うべきである。このため、これらの政策及び措置は、社会経済状況の相違が考慮され、包括的なものであり、関連するすべての温室効果ガスの発生源、吸収源及び貯蔵庫並びに適応のための措置を網羅し、かつ、経済のすべての部門を含むべきである。気候変動に対処するための努力は、関心を有する締約国の協力によっても行われ得る。
締約国は、持続可能な開発を促進する権利及び責務を有する。気候変動に対処するための措置をとるためには経済開発が不可欠であることを考慮し、人に起因する変化から気候系を保護するための政策及び措置については、各締約国の個別の事情に適合したものとし、各国の開発計画に組み入れるべきである。
締約国は、すべての締約国(特に開発途上締約国)において持続可能な経済成長及び開発をもたらし、もって締約国が一層気候変動の問題に対処することを可能にするような協力的かつ開放的な国際経済体制の確立に向けて協力すべきである。気候変動に対処するためにとられる措置(一方的なものを含む。)は、国際貿易における恣意的若しくは不当な差別の手段又は偽装した制限となるべきではない。

第四条 約束
すべての締約国は、それぞれ共通に有しているが差異のある責任、各国及び地域に特有の開発の優先順位並びに各国特有の目的及び事情を考慮して、次のことを行う。
(a) 締約国会議が合意する比較可能な方法を用い、温室効果ガス(モントリオール議定書によって規制されているものを除く。)について、発生源による人為的な排出及び吸収源による除去に関する自国の目録を作成し、定期的に更新し、公表し及び第十二条の規定に従って締約国会議に提供すること。
(b) 自国の(適当な場合には地域の)計画を作成し、実施し、公表し及び定期的に更新すること。この計画には、気候変動を緩和するための措置(温室効果ガス(モントリオール議定書によって規制されているものを除く。)の発生源による人為的な排出及び吸収源による除去を対象とするもの)及び気候変動に対する適応を容易にするための措置を含めるものとする。
(c) エネルギー、運輸、工業、農業、林業、廃棄物の処理その他すべての関連部門において、温室効果ガス(モントリオール議定書によって規制されているものを除く。)の人為的な排出を抑制し、削減し又は防止する技術、慣行及び方法の開発、利用及び普及(移転を含む。)を促進し、並びにこれらについて協力すること。
(d) 温室効果ガス(モントリオール議定書によって規制されているものを除く。)の吸収源及び貯蔵庫(特に、バイオマス、森林、海その他陸上、沿岸及び海洋の生態系)の持続可能な管理を促進すること並びにこのような吸収源及び貯蔵庫の保全(適当な場合には強化)を促進し並びにこれらについて協力すること。
(e) 気候変動の影響に対する適応のための準備について協力すること。沿岸地域の管理、水資源及び農業について、並びに干ばつ及び砂漠化により影響を受けた地域(特にアフリカにおける地域)並びに洪水により影響を受けた地域の保護及び回復について、適当かつ総合的な計画を作成すること。
(f) 気候変動に関し、関連する社会、経済及び環境に関する自国の政策及び措置において可能な範囲内で考慮を払うこと。気候変動を緩和し又はこれに適応するために自国が実施する事業又は措置の経済、公衆衛生及び環境に対する悪影響を最小限にするため、自国が案出し及び決定する適当な方法(例えば影響評価)を用いること。
(g) 気候変動の原因、影響、規模及び時期並びに種々の対応戦略の経済的及び社会的影響についての理解を増進し並びにこれらについて残存する不確実性を減少させ又は除去することを目的として行われる気候系に関する科学的、技術的、社会経済的研究その他の研究、組織的観測及び資料の保管制度の整備を促進し、並びにこれらについて協力すること。
(h) 気候系及び気候変動並びに種々の対応戦略の経済的及び社会的影響に関する科学上、技術上、社会経済上及び法律上の情報について、十分な、開かれた及び迅速な交換を促進し、並びにこれらについて協力すること。
(i) 気候変動に関する教育、訓練及び啓発を促進し、これらについて協力し、並びにこれらへの広範な参加(民間団体の参加を含む。)を奨励すること。
(j) 第十二条の規定に従い、実施に関する情報を締約国会議に送付すること。
附属書1に掲げる先進締約国その他の締約国(以下「附属書1の締約国」という。)は、特に、次に定めるところに従って約束する。
(a) 附属書1の締約国は、温室効果ガスの人為的な排出を抑制すること並びに温室効果ガスの吸収源及び貯蔵庫を保護し及び強化することによって気候変動を緩和するための自国の政策を採用し、これに沿った措置をとる(注)。これらの政策及び措置は、温室効果ガスの人為的な排出の長期的な傾向をこの条約の目的に沿って修正することについて、先進国が率先してこれを行っていることを示すこととなる。二酸化炭素その他の温室効果ガス(モントリオール議定書によって規制されているものを除く。)の人為的な排出の量を千九百九十年代の終わりまでに従前の水準に戻すことは、このような修正に寄与するものであることが認識される。また、附属書1の締約国の出発点、対処の方法、経済構造及び資源的基盤がそれぞれ異なるものであること、強力かつ持続可能な経済成長を維持する必要があること、利用可能な技術その他の個別の事情があること、並びにこれらの締約国がこの条約の目的のための世界的な努力に対して衡平かつ適当な貢献を行う必要があることについて、考慮が払われる。附属書1の締約国が、これらの政策及び措置を他の締約国と共同して実施すること並びに他の締約国によるこの条約の目的、特に、この(a)の規定の目的の達成への貢献について当該他の締約国を支援することもあり得る。注 これらの政策及び措置には、地域的な経済統合のための機関がとるものが含まれる。
(b) (a) の規定の目的の達成を促進するため、附属書1の締約国は、(a) に規定する政策及び措置並びにこれらの政策及び措置をとった結果(a) に規定する期間について予測される二酸化炭素その他の温室効果ガス(モントリオール議定書によって規制されているものを除く。)の発生源による人為的な排出及び吸収源による除去に関する詳細な情報を、この条約が自国について効力を生じた後六箇月以内に及びその後は定期的に、第十二条の規定に従って送付する。その送付は、二酸化炭素その他の温室効果ガス(モントリオール議定書によって規制されているものを除く。)の人為的な排出の量を個別に又は共同して千九百九十年の水準に戻すという目的をもって行われる。締約国会議は、第七条の規定に従い、第一回会合において及びその後は定期的に、当該情報について検討する。
(c) (b) の規定の適用上、温室効果ガスの発生源による排出の量及び吸収源による除去の量の算定に当たっては、入手可能な最良の科学上の知識(吸収源の実効的な能力及びそれぞれの温室効果ガスの気候変動への影響の度合に関するものを含む。)を考慮に入れるべきである。締約国会議は、この算定のための方法について、第一回会合において検討し及び合意し、その後は定期的に検討する。
(d) 締約国会議は、第一回会合において、(a)及び(b)の規定の妥当性について検討する。その検討は、気候変動及びその影轡に関する入手可能な最良の科学的な情報及び評価並びに関連する技術上、社会上及び経済上の情報に照らして行う。締約国会議は、この検討に基づいて適当な措置((a)及び(b)に定める約束に関する改正案の採択を含む。)をとる。締約国会議は、また、第一回会合において、(a) に規定する共同による実施のための基準に関する決定を行う。(a)及び(b)の規定に関する二回目の検討は、千九百九十八年十二月三十一日以前に行い、その後は締約国会議が決定する一定の間隔で、この条約の目的が達成されるまで行う。
(e) 附属書1の締約国は、次のことを行う。
(i) 適当な場合には、この条約の目的を達成するために開発された経済上及び行政上の手段を他の附属書1の締約国と調整すること。 
(ii) 温室効果ガス(モントリオール議定書によって規制されているものを除く。)の人為的な排出の水準を一層高めることとなるような活動を助長する自国の政策及び慣行を特定し及び定期的に検討すること。
(f) 締約国会議は、関係する締約国の承認を得て附属書1及び附属書[2] の一覧表の適当な改正について決定を行うために、千九百九十八年十二月三十一日以前に、入手可能な情報について検討する。
(g) 附属書1の締約国以外の締約国は、批准書、受諾書、承認書若しくは加入書において又はその後いつでも、寄託者に対し、自国が(a)及び(b)の規定に拘束される意図を有する旨を通告することができる。寄託者は、他の署名国及び締約国に対してその通告を通報する。
附属書[2]に掲げる先進締約国(以下一附属書[2]の孫約国」という。)は、開発途上締約国が第十二条1の規定に基づく義務を履行するために負担するすべての合意された費用に充てるため、新規のかつ追加的な資金を供与する。附属書[2] の締約国は、また、1の規定の対象とされている措置であって、開発途上締約国と第十一条に規定する国際的組織との間で合意するものを実施するためのすべての合意された増加費用を負担するために開発途上締約国が必要とする新規のかつ追加的な資金(技術移転のためのものを含む。)を同条の規定に従って供与する。これらの約束の履行に当たっては、資金の流れの妥当性及び予測可能性が必要であること並びに先進締約国の間の適当な責任分担が重要であることについて考慮を払う。
附属書[2] の締約国は、また、気候変動の悪影響を特に受けやすい開発途上締約国がそのような悪影響に適応するための費用を負担することについて、当該開発途上締約国を支援する。
附属書[2] の締約国は、他の締約国(特に開発途上締約国)がこの条約を実施することができるようにするため、適当な場合には、これらの他の締約国に対する環境上適正な技術及びノウハウの移転又は取得の機会の提供について、促進し、容易にし及び資金を供与するための実施可能なすべての措置をとる。この場合において、先進締約国は、開発途上締約国の固有の能力及び技術の開発及び向上を支援する。技術の移転を容易にすることについてのこのような支援は、その他の締約国及び機関によっても行われ得る。
締約国会議は、附属書1の締約国のうち市場経済への移行の過程にあるものによる2の規定に基づく約束の履行については、これらの締約国の気候変動に対処するための能力を高めるために、ある程度の弾力的適用(温室効果ガス(モントリオール議定書によって規制されているものを除く。)の人為的な排出の量の基準として用いられる過去の水準に関するものを含む。)を認めるものとする。
開発途上締約国によるこの条約に基づく約束の効果的な履行の程度は、先進締約国によるこの条約に基づく資金及び技術移転に関する約束の効果的な履行に依存しており、経済及び社会の開発並びに貧困の撲滅が開発途上締約国にとって最優先の事項であることが十分に考慮される。
締約国は、この条に規定する約束の履行に当たり、気候変動の悪影響又は対応措置の実施による影響(特に、次の(a)から(i)までに掲げる国に対するもの)に起因する開発途上締約国の個別のニーズ及び思念に対処するためにこの条約の下でとるべき措置(資金供与、保険及び技術移転に関するものを含む。)について十分な考慮を払う。
(a) 島しょ国
(b) 低地の沿岸地域を有する国
(c) 乾燥地域、半乾燥地域、森林地域又は森林の衰退のおそれのある地域を有する国
(d) 自然災害が起こりやすい地域を有する国
(e) 干ばつ又は砂漠化のおそれのある地域を有する国
(f) 都市の大気汚染が著しい地域を有する国
(g) ぜい弱な生態系(山岳の生態系を含む。)を有する地域を有する国
(h) 化石燃料及び関連するエネルギー集約的な製品の生産、加工及び輪出による収入又はこれらの消費に経済が大きく依存している国
(i) 内陸国及び通過国更に、この8の規定に関しては、適当な場合には締約国会議が措置をとることができる。
締約国は、資金供与及び技術移転に関する措置をとるに当たり、後発開発途上国の個別の二ーズ及び特別な事情について十分な考慮を払う。
締約国は、第十条の規定に従い、この条約に基づく約束の履行に当たり、気候変動に対応するための措置の実施による悪影響を受けやすい経済を有する締約国(特に開発途上締約国)の事情を考慮に入れる。この場合において、特に、化石燃料及び関連するエネルギー集約的な製品の生産、加工及び輸出による収入若しくはこれらの消費にその経済が 大きく依存している締約国又は化石燃料の使用にその経済が大きく依存し、かつ、代替物への転換に重大な困難を有する締約国の事情を考慮に入れる。

第五条 研究及び組織的観測
 締約国は、前条1(g) の規定に基づく約束の履行に当たって、次のことを行う。
(a) 研究、資料の収集及び粗織的観測について企画し、実施し、評価し及び資金供与を行うことを目的とする国際的な及び政府間の計画、協力網又は機関について、努力の重複を最小限にする必要性に考慮を払いつつ、これらを支援し及び、適当な場合には、更に発展させること。
(b) 組織的観測並びに科学的及び技術的研究に関する各国(特に開発途上国)の能力を強化するための並びに各国が自国の管轄の外の区域において得られた資料及びその分析について利用し及び交換することを促進するための国際的な及び政府間の努力を支援すること。
(c) 開発途上国の特別の懸念及びニーズに考慮を払うこと並びに(a)及び(b)に規定する努力に参加するための開発途上国の固有の能力を改善することについて協力すること 。

第六条 教育、訓練及び啓発
 締約国は、第四条1(i) の規定に基づく約束の履行に当たって、次のことを行う。
(a) 国内的な(適当な場合には小地域的及び地域的な)規模で、自国の法令に従い、かつ、自国の能力の範囲内で、次のことを促進し及び円滑にすること。
(i) 気候変動及びその影響に関する教育啓発事業の計画の作成及び実施
(ii) 気候変動及びその影響に関する情報の公開
(iii) 気候変動及びその影響についての検討並びに適当な対応措置の策定への公衆の参加
(iv) 科学、技術及び管理の分野における人材の訓練
(b) 国際的に及び造当な場合には既存の団体を活用して、次のことについて協力し及びこれを促進すること。
(i) 気候変動及びその影響に関する教育及び啓発の資料の作成及び交換
(ii) 教育訓練事業の計画(特に開発途上国のためのもの。国内の教育訓練機関の強化及び教育訓練専門家を養成する者の交流又は派道に関するものを含む。)の作成及び実施

第七条 締約国会議
この条約により締約国会議を設置する。
締約国会議は、この条約の最高機関として、この条約及び締約国会議が採択する関連 する法的文書の実施状況を定期的に兼用するものとし、その権限の範囲内で、この条約の効果的な実施を促進するために必要な決定を行う。このため、締約国会議は、次のことを行う。
(a) この条約の目的、この条約の実施により得られた経験並びに科学上及び技術上の知識の進展に照らして、この条約に基づく締約国の義務及びこの条約の下における制度的な措置について定期的に検討すること。
(b) 締約国の様々な事情、責任及び能力並びにこの条約に基づくそれぞれの締約国の約束を考慮して、気候変動及びその影響に対処するために締約国が採用する措置に関する情報の交換を促進し及び円滑にすること。
(c) 二以上の締約国の要請に応じ、締約国の様々な事情、責任及び能力並びにこの条約に基づくそれぞれの締約国の約束を考慮して、気候変動及びその影響に対処するために締約国が採用する措置の調整を円滑にすること。
(d) 締約国会議が合意することとなっている比較可能な方法、特に、温室効果ガスの発生源による排出及び吸収源による除去に関する目録を作成するため並びに温室効果ガスの排出の抑制及び除去の増大に関する措置の効果を評価するための方法について、この条約の目的及び規定に従い、これらの開発及び定期的な改善を促進し及び指導すること。
(e) この条約により利用が可能となるすべての情報に基づき、締約国によるこの条約の実施状況、この条約に基づいてとられる措置の全般的な影響(特に、環境、経済及び社会に及ぼす影響並びにこれらの累積的な影響)及びこの条約の目的の達成に向けての進捗状況を評価すること。
(f) この条約の実施状況に関する定期的な報告書を検討し及び採択すること並びに当該報告書の公表を確保すること。
(g) この条約の実施に必要な事項に関する勧告を行うこと。
(h) 第四条の3から5までの規定及び第十一条の規定に従って資金が供与されるよう努めること。
(i) この条約の実施に必要と認められる補助機関を設置すること。
(j) 補助機関により提出される報告書を検討し、及び補助機関を指導すること。
(k) 締約国会議及び補助機関の手続規則及び財政規則をコンセンサス方式により合意し及び採択すること。
(l) 適当な場合には、能力を有する国際機関並びに政府間及び民間の団体による役務、協力及び情報の提供を求め及び利用すること。
(m) その他この条約の目的の達成のために必要な任務及びこの条約に基づいて締約国会議に課されるすべての任務を遂行すること。
締約国会議は、第一回会合において、締約国会議及びこの条約により設置される補助機関の手続規則を採択する。この手続規則には、この条約において意思決定手続が定められていない事項に関する意思決定手筋を含む。この手続規則には、特定の決定の採択に必要な特定の多数を含むことができる。
締約国会議の第一回会合は、第二十一条に規定する暫定的な事務局が招集するものとし、この条約の効力発生の日の後一年以内に開催する。その後は、締約国会議の通常会合は、締約国会議が別段の決定を行わない限り、毎年開催する。
締約国会議の特別会合は、締約国会議が必要と認めるとき又はいずれかの締約国から書面による要請のある場合において事務局がその要請を締約国に通報した後六箇月以内に締約国の少なくとも三分の一がその要請を支持するときに開催する。
国際連合、その専門機関、国際原子力機関及びこれらの国際機関の加盟国又はオブザーバーであってこの条約の締約国でないものは、締約国会議の会合にオブザーバーとして出席することができる。この条約の対象とされている事項について認められた団体又は機関(国内若しくは国際の又は政府若しくは民間のもののいずれであるかを問わない。)であって、締約国会議の会合にオブザーバーとして出席することを希望する旨事務局に通報したものは、当該会合に出席する締約国の三分の一以上が反対しない限り、オブザーバーとして出席することを認められる。オブザーバーの出席については、締約国会議が採択する手続規則に従う。

第八条 事務局
この条約により事務局を設置する。
事務局は、次の任務を遂行する。
(a) 締約国会議の会合及びこの条約により設置される補助機関の会合を準備すること並びに必要に応じてこれらの会合に役務を提供すること。
(b) 事務局に提出される報告書を取りまとめ及び送付すること。
(c) 要請に応じ、締約国(特に開発途上締約国)がこの条約に従って情報を取りまとめ及び送付するに当たり、当該締約国に対する支援を円滑にすること。
(d) 事務局の活動に関する報告書を作成し、これを締約国会議に提出すること。
(e) 他の関係国際団体の事務局との必要な調整を行うこと。
(f) 締約国会議の全般的な指導の下に、事務局の任務の効果的な遂行のために必要な事務的な及び契約上の取決めを行うこと。
(g) その他この条約及びその議定書に定める事務局の任務並びに締約国会議が決定する任務を遂行すること。
締約国会議は、第一回会合において、常設の事務局を指定し、及びその任務の遂行のための措置をとる。

第九条 科学上及び技術上の助言に関する補助機関
この条約により科学上及び技術上の助言に関する補助機関を設置する。当該補助機関は、締約国会議及び適当な場合には他の補助機関に対し、この条約に関連する科学的及び技術的な事項に関する時宜を得た情報及び助言を提供する。当該補助機関は、すべての締約国による参加のために開放するものとし、学際的な性格を有する。当該補助機関は、関連する専門分野に関する知識を十分に有している政府の代表者により構成する。当該補助機関は、その活動のすべての側面に関して、締約国会議に対し定期的に報告を行う。
1の補助機関は、締約国会議の指導の下に及び能力を有する既存の国際団体を利用して次のことを行う。
(a) 気候変動及びその影響に関する科学上の知識の現状の評価を行うこと。
(b) この条約の実施に当たってとられる措置の影響に関する科学的な評価のための準備を行うこと。
(c) 革新的な、効率的な及び最新の技術及びノウハウを特定すること並びにこれらの技術の開発又は移転を促進する方法及び手段に関する助言を行うこと。
(d) 気候変動に関する科学的な計画、気候変動に関する研究及び開発における国際協力並びに開発途上国の固有の能力の開発を支援する方法及び手段に関する助言を行うこと。
(e) 締約国会議及びその補助機関からの科学、技術及び方法論に関する質問に回答すること。
1の補助機関の任務及び権限については、締約国会議が更に定めることができる。

第十条 実施に関する補助機関
この条約により実施に関する補助機関を設置する。当該補助機関は、この条約の効果的な実施について評価し及び検討することに関して締約国会議を補佐する。当該補助機関は、すべての締約国による参加のために開放するものとし、気候変動に関する事項の専門家である政府の代表者により構成する。当該補助機関は、その活動のすべての側面に関して、締約国会議に対し定期的に報告を行う。
1の補助機関は、締約国会議の指導の下に、次のことを行う。
(a) 気候変動に関する最新の科学的な評価に照らして、締約国によってとられた措置の影響を全体として評価するため、第十二条1の規定に従って送付される情報を検討すること。
(b) 締約国会議が第四条2(d)に規定する検討を行うことを補佐するため、第十二条2の規定に従って送付される情報を検討すること。
(c) 適当な場合には、締約国会議の行う決定の準備及び実施について締約国会議を補佐すること。

第十一条 資金供与の制度
贈与又は緩和された条件による資金供与(技術移転のためのものを含む。)のための制度についてここに定める。この制度は、締約国会議の指導の下に機能し、締約国会議に対して責任を負う。締約国会議は、この条約に関連する政策、計画の優先度及び適格性の基準について決定する。当該制度の運営は、一又は二以上の既存の国際的組織に委託する。
1の資金供与の制度については、透明な管理の仕組みの下に、すべての締約国から衡平なかつ均衡のとれた形で代表されるものとする。
締約国会議及び1の資金供与の制度の運営を委託された組織は、1及び2の規定を実施するための取決めについて合意する。この取決めには、次のことを含む。
(a) 資金供与の対象となる気候変動に対処するための事業が締約国会議の決定する政策、計画の優先度及び適格性の基準に適合していることを確保するための方法
(b) 資金供与に関する個別の決定を(a) の政策、計画の優先度及び適格性の基準に照らして再検討するための方法
(c) 1に規定する責任を果たすため、当該組織か締約国会議に対し資金供与の実施に関して定期的に報告書を提出すること。
(d) この条約の実施のために必要かつ利用可能な資金の額について、予測し及び特定し得るような方法により決定すること、並びにこの額の定期的な検討に関する要件
締約国会議は、第一回会合において、第二十一条3に定める暫定的措置を検討し及び考慮して、1から3までの規定を実施するための措置をとり、及び当該暫定的措置を維持するかしないかを決定する。締約国会議は、その後四年以内に、資金供与の制度について検討し及び適当な措置をとる。
先進締約国は、また、二国間の及び地域的その他の多数国間の経路を通じて、この条約の実施に関連する資金を供与することができるものとし、開発途上締約国は、これを利用することができる。

第十二条 実施に関する情報の送付
締約国は、第四条1の規定に従い、事務局を通じて締約国会議に対し次の情報を送付する。
(a) 温室効果ガス(モントリオール議定書によって規制されているものを除く。)の発生源による人為的な排出及び吸収源による除去に関する自国の目録。この目録は、締約国会議が合意し及び利用を促進する比較可能な方法を用いて、自国の能力の範囲内で作成する。
(b) この条約を実施するために締約国がとり又はとろうとしている措置の概要
(c) その他この条約の目的の達成に関連を有し及び通報に含めることが適当であると締約国が認める情報(可能なときは、世界全体の排出量の傾向の算定に関連する資料を含む。)
附属書1の締約国は、送付する情報に次の事項を含める。
(a) 第四条2の(a)及び(b)の規定に基づく約束を履行するために採用した政策及び措置の詳細
(b) (a) に規定する政策及び措置が、温室効果ガスの発生源による人為的な排出及び吸収源による除去に関して第四条2(a) に規定する期間についてもたらす効果の具体的な見積り
更に、附属書llの締約国は、第四条の3から5までの規定に従ってとる措置の詳細を含める。
開発途上締約国は、任意に、資金供与の対象となる事業を提案することができる。その提案には、当該事業を実施するために必要な特定の技術、資材、設備、技法及び慣行を含めるものとし、可能な場合には、すべての増加費用、温室効果ガスの排出の削減及び除去の増大並びにこれらに伴う利益について、それらの見積りを含める。
附属書1の締約国は、この条約が自国について効力を生じた後六箇月以内に最初の情報の送付を行う。附属書1の締約国以外の締約国は、この条約が自国について効力を生じた後又は第四条3の規定に従い資金が利用可能となった後三年以内に最初の情報の送付を行う。後発開発途上国である締約国は、最初の情報の送付については、その裁量によることができる。すべての締約国がその後行う送付の頻度は、この5に定める送付の期限の差異を考慮して、締約国会議が決定する。
事務局は、この条の規定に従って締約国が送付した情報をできる限り速やかに締約国会議及び関係する補助機関に伝達する。締約国会議は、必要な場合には、情報の送付に関する手続について更に検討することができる。
開発途上締約国が、この条の規定に従って情報を取りまとめ及び送付するに当たり並びに第四条の規定に基づいて提案する事業及び対応措置に必要な技術及び資金を特定するに当たり、締約国会議は、第一回会合の時から、開発途上締約国に対しその要請に応じ技術上及び財政上の支援が行われるよう措置をとる。このような支援は、適当な場合には、他の締約国、能力を有する国際機関及び事務局によって行われる。
この条の規定に基づく義務を履行するための情報の送付は、締約国会議が採択した指針に従うこと及び締約国会議に事前に通報することを条件として、二以上の締約国が共同して行うことができる。この場合において、送付する情報には、当該二以上の締約国のこの条約に基づくそれぞれの義務の履行に関する情報を含めるものとする。
事務局が受領した情報であって、締約国会議が定める基準に従い締約国が秘密のものとして指定したものは、情報の送付及び検討に関係する機関に提供されるまでの間、当該情報の秘密性を保護するため、事務局が一括して保管する。
9の規定に従うことを条件として、かつ、締約国が自国の送付した情報の内容をいつでも公表することができることを妨げることなく、事務局は、この条の規定に従って送付される締約国の情報について、締約国会議に提出する時に、その内容を公に利用可能なものとする。

第十三条 実施に関する問題の解決
締約国会議は、第一回会合において、この条約の実施に関する問題の解決のための多数国間の協議手続(締約国がその要請により利用することができるもの)を定めることを検討する。

第十四条 紛争の解決
この条約の解釈又は適用に関して締約国間で紛争が生じた場合には、紛争当事国は、交渉又は当該紛争当事国が選択するその他の平和的手段により紛争の解決に努める。
地域的な経済統合のための機関でない締約国は、この条約の解釈又は適用に関する紛争について、同一の義務を受諾する締約国との関係において次の一方又は双方の手段を当然にかつ特別の合意なしに義務的であると認めることをこの条約の批准、受諾若しくは承認若しくはこれへの加入の際に又はその後いつでも、寄託者に対し書面により宣言することができる。
(a) 国際司法裁判所への紛争の付託
(b) 締約国会議ができる限り速やかに採択する仲裁に関する附属書に定める手続による仲裁
地域的な経済統合のための機関である締約国は、他に規定する手続による仲裁に関して同様の効果を有する宣言を行うことができる。
2の規定に基づいて行われる宣言は、当該宣言の期間が満了するまで又は書面による当該宣言の撤回の通告が寄託者に寄託された後三箇月が経過するまでの間、効力を有する。
新たな宣言、宣言の撤回の通告又は宣言の期間の満了は、紛争当事国が別段の合意をしない限り、国際司法裁判所又は仲裁裁判所において進行中の手続に何ら影響を及ぼすものではない。
2の規定が連用される場合を除くほか、いずれかの紛争当事国が他の紛争当事国に対して紛争が存在する旨の通告を行った後十二箇月以内にこれらの紛争当事国が1に定める手段によって当該紛争を解決することができなかった場合には、当該紛争は、いずれかの紛争当事国の要請により調停に付される。
いずれかの紛争当事国の要請があったときは、調停委員会が設置される。調停委員会は、各紛争当事国が指名する同数の委員及び指名された委員が共同で選任する委員長によって構成される。調停委員会は、勧告的な裁定を行い、紛争当事国は、その裁定を誠実に検討する。
1から6までに定めるもののほか、調停に関する手続は、締約国会議ができる限り速やかに採択する調停に関する附属書に定める。
この条の規定は、締約国会議が採択する関連する法的文書に別段の定めがある場合を除くほか、当該法的文書について準用する。

第十五条 この条約の改正
締約国は、この条約の改正を提案することができる。
この条約の改正は、締約国会議の通常会合において採択する。この条約の改正案は、その採択が提案される会合の少なくとも六箇月前に事務局が締約国に通報する。事務局は、また、改正案をこの条約の署名国及び参考のために寄託者に通報する。
締約国は、この条約の改正案につき、コンセンサス方式により合意に達するようあらゆる努力を払う。コンセンサスのためのあらゆる努力にもかかわらず合意に達しない場合には、改正案は、最後の解決手段として、当該会合に出席しかつ投票する締約国の四分の三以上の多数による議決で採択する。採択された改正は、事務局が寄託者に通報するものとし、寄託者がすべての締約国に対し受諾のために送付する。
改正の受諾書は、寄託者に寄託する。3の規定に従って採択された改正は、この条約の締約国の少なくとも四分の三の受諾書を寄託者が受領した日の後九十日目の日に、当該改正を受諾した締約国について効力を生ずる。
改正は、他の締約国が当該改正の受諾書を寄託者に寄託した日の後九十日目の日に当該他の締約国について効力を生ずる。
この条の規定の適用上、「出席しかつ投票する締約国」とは、出席しかつ賛成票又は反対票を投ずる締約国をいう。

第十六条 この条約の附属書の採択及び改正
この条約の附属書は、この条約の不可分の一部を成すものとし、「この条約」というときは、別段の明示の定めがない限り、附属書を含めていうものとする。附属書は、表、書式その他科学的、技術的、手続的又は事務的な性格を有する説明的な文書に限定される(ただし、第十四条の2(b)及び7の規定については、この限りでない。 )。
この条約の附属書は、前条の2から4までに定める手続を準用して提案され及び採択される。
2の規定に従って採択された附属書は、寄託者がその採択を締約国に通報した日の後六箇月で、その期間内に当該附属書を受諾しない旨を寄託者に対して書面により通告した締約国を除くほか、この条約のすべての締約国について効力を生ずる。当該附属書は、当該通告を撤回する旨の通告を寄託者が受領した日の後九十日目の日に、当該通告を撤回した締約国について効力を生ずる。
この条約の附属書の改正の提案、採択及び効力発生は、2及び3の規定によるこの条約の附属書の提案、採択及び効力発生と同一の手続に従う。
附属書の採択又は改正がこの条約の改正を伴うものである場合には、採択され又は改正された附属書は、この条約の改正が効力を生ずる時まで効力を生じない。

第十七条 議定書
締約国会議は、その通常会合において、この条約の議定書を採択することができる。
議定書案は、1の通常会合の少なくとも六箇月前に事務局が締約国に通報する。
議定書の効力発生の要件は、当該議定書に定める。
この条約の締約国のみが、議定書の締約国となることができる。
議定書に基づく決定は、当該議定書の締約国のみが行う

第十八条 投票権
この条約の各締約国は、2に規定する場合を除くほか、一の票を有する。
地域的な経済統合のための機関は、その権限の範囲内の事項について、この条約の締約国であるその構成国の数と同数の票を投ずる権利を行使する。当該機関は、その構成国が自国の投票権を行使する場合には、投票権を行使してはならない。その逆の場合も、同様とする。

第十九条 寄託
国際連合事務総長は、この条約及び第十七条の規定に従って採択される議定書の寄託者とする。

第二十条 署名
この条約は、国際連合環境開発会議の開催期間中はリオ・デ・ジャネイロにおいて、千九百九十二年六月二十日から千九百九十三年六月十九日まではニュー・ヨークにある国際連合本部において、国際連合又はその専門機関の加盟国、国際司法裁判所規程の当事国及び地域的な経済統合のための機関による署名のために開放しておく。

第二十一条 暫定的措置
第八条に規定する事務局の任務は、締約国会議の第一回会合が終了するまでの間、国際連合総会が千九百九十年十二月二十一日の決議第二百十二号(第四十五回会期)によって設置した事務局が暫定的に遂行する。
1に規定する暫定的な事務局の長は、気候変動に関する政府間パネルと緊密に協力し、同パネルによる客観的な科学上及び技術上の助言が必要とされる場合に、同パネルが対応することができることを確保する。科学に関するその他の関連団体も、協議を受ける。
国際連合開発計画、国際連合環境計画及び国際復興開発銀行の地球環境基金は、第十一条に規定する資金供与の制度の運営について暫定的に委託される国際的組織となる。この点に関し、同基金が同条の要件を満たすことができるようにするため、同基金は、適切に再編成されるべきであり、その参加国の構成は、普遍的なものとされるべきである。

第二十二条 批准、受諾、承認又は加入
この条約は、国家及び地域的な経済統合のための機関により批准され、受諾され、承認され又は加入されなければならない。この条約は、この条約の署名のための期間の終了の日の後は、加入のために開放しておく。批准書、受諾書、承認書又は加入書は、寄託者に寄託する。
この条約の締約国となる地域的な経済統合のための機関で当該機関のいずれの構成国も締約国となっていないものは、この条約に基づくすべての義務を負う。当該機関及びその一又は二以上の構成国がこの条約の締約国である場合には、当該機関及びその構成国は、この条約に基づく義務の履行につきそれぞれの責任を決定する。この場合において、当該機関及びその構成国は、この条約に基づく権利を同時に行使することができない。
地域的な経済統合のための機関は、この条約の規律する事項に関する当該機関の権限の範囲をこの条約の批准書、受諾書、承認書又は加入書において宣言する。当該機関は、また、その権限の範囲の実質的な変更を寄託者に通報し、寄託者は、これを締約国に通報する。

第二十三条 効力発生
この条約は、五十番目の批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託の日の後九十日目の日に効力を生ずる。
この条約は、五十番目の批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託の後にこれを批准し、受諾し若しくは承認し又はこれに加入する国又は地域的な経済統合のための機関については、当該国又は機関による批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託の日の後九十日目の日に効力を生ずる。
地域的な経済統合のための機関によって寄託される文書は、1及び2の規定の適用上、当該機関の構成国によって寄託されたものに追加して教えてはならない。

第二十四条 留保
この条約には、いかなる留保も付することができない。

第二十五条 脱退
締約国は、自国についてこの条約が効力を生じた日から三年を経過した後いつでも、寄託者に対して書面による脱退の通告を行うことにより、この条約から脱退することができる。
1の脱退は、寄託者が脱退の通告を受領した日から一年を経過した日又はそれよりも遅い日であって脱退の通告において指定されている日に効力を生ずる。
この条約から脱退する締約国は、自国が締約国である議定書からも脱退したものとみなす。
第二十六条 正文
アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語をひとしく正文とするこの条約の原本は、国際連合事務総長に寄託する。

以上の証拠として、下名は、正当に委任を受けてこの条約に署名した。

千九百九十二年五月九日にニュー・ヨークで作成した。

附属書1
オーストラリア、オーストリア、べラルーシ(注)、ベルギー、ブルガリア(注)、カナダ、チェッコ・スロヴァキア(注)、デンマーク、欧州経済共同体、エストニア(注)、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー(注)、アイスランド、アイルランド、イタリア、日本国、ラトヴィア(注)、リトアニア(注)、ルクセンブルグ、オランダ、ニュー・ジーランド、ノールウェイ、ポーランド(注)、ポルトガル、ルーマニア(注)、ロシア連邦(注)、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、ウクライナ(注)、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国、アメリカ合衆国
注 市場経済への移行の過程にある国

附属書2
オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、デンマーク、欧州経済共同体、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイスランド、アイルランド、イタリア、日本国、ルクセンブルグ、オランダ、ニュー・ジーランド、ノールウェイ、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国、アメリカ合衆国

日本国政府は、平成四年五月九日にニュー・ヨークで作成された「気候変動に関する国際連合枠組条約」を平成五年五月二十八日に受諾していたところ、同条約は、その第二十三条1の規定に従い、平成六年三月二十一日に効力を生じた。
なお、平成六年三月二十一日現在、同条約の締約国は次のとおりである。
アルジェリア民主人民共和国、アンティグァ・バーブーダ、アルゼソティン共和国、アルメニア共和国、オーストラリア連邦、オーストリア共和国、ボツワナ共和国、ブラジル連邦共和国、ブルキナ・ファソ、カナダ、中華人民共和国、キューバ共和国、チェッコ共和国、デンマーク王国、ドミニカ国、エクアドル共和国、フィージー共和国、ドイツ連邦共和国、ギニア共和国、ハンガリー共和国、アイスランド共和国、インド、日本国、ジョルダン・ハシェミット王国、大韓民国、モルディヴ共和国、マルタ共和国、マーシャル諸島共和国、モーリタニア・イスラム共和国、モーリシャス共和国、メキシコ合衆国、ミクロネシア連邦、モナコ公国、モンゴル国、ナウル共和国、オランダ王国、ニュー・ジーランド、ノールウェー王国、パブア・ニューギニア独立国、バラグアイ共和国、ペルー共和国、ポルトガル共和国、セント・クリストファー・ネイヴィース、セント・ルシア、セイシェル共和国、スペイン、スリ・ランカ民主社会主義共和国、スーダン共和国、スウェーデン王国、スイス連邦、テュニジア共和国、トゥヴァル、ウガンダ共和国、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国、アメリカ合衆国、ウズベキスタン共和国、ヴァヌアツ共和国、ザンビア共和国、ジンバブエ共和国、欧州経済共同体

   「環境省ホームページ」より

〇同じ日の過去の出来事(以前にブログで紹介した記事)

835年(承和2)真言宗の開祖空海(弘法大師)の命日(新暦4月22日)詳細
850年(嘉祥3)第54代の天皇とされる仁明天皇の命日(新暦5月4日)詳細
1912年(明治45)東京の州崎大火で、全焼1,149戸、半焼11戸の被害を出す詳細
1934年(昭和9)函館大火が起こり、22,667戸焼失、死者2,166名、負傷者9,485名を出す詳細
1942年(昭和17)既存の武徳会が改組され、厚生・文部・陸軍・海軍・内務の5省が共管する新たな大日本武徳会が発足する詳細
1972年(昭和47)奈良県明日香村の高松塚古墳の石室で極彩色壁画を発見する詳細

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CTBT01
 今日は、平成時代の1996年(平成8)に、国連総会で9月10日に採択された「包括的核実験禁止条約(CTBT)」に日本など71ヶ国が署名した日です。
 「包括的核実験禁止条約」(ほうかつてきかくじっけんきんしじょうやく)は、「部分的核実験停止条約」で除外された地下核実験を含めてすべての核実験を禁止する条約で、英語では、Comprehensive Nuclear Test Ban Treatyと表記され、略称は、CTBTと言いました。内容は、地下核実験、平和目的の核爆発、低威力の核爆発を伴う流体核実験など、爆発を伴う核実験を例外なく禁止することにより、新型核兵器の開発と現有核兵器の維持に制約を課すものです。
 1977年(昭和52)に、アメリカ合衆国、イギリス、ソビエト連邦の3国は作成作業を開始し、ジュネーブ軍縮委員会の核実験禁止特別委員会で検討が進められてきましたが、インドが最後まで反対したため、国連総会で採択することとなり、1996年(平成8)9月10日に国連総会が賛成158、反対3(インド,ブータン,リビア)、棄権5の圧倒的多数で採択したものでした。条約発効の為には、核保有5ヶ国とインド、パキスタン、北朝鮮など潜在的核保有国を含む44ヶ国の署名・批准が必要とされ、同年9月24日に、日本など71ヶ国が署名、その後、署名・批准が進み、2022年(令和4)12月現在で186ヶ国が署名、174ヶ国が批准しています。しかし、発効要件国(核兵器保有国を含む44ヶ国)の批准が完了していないため、未発効とされてきました。
 以下に、「包括的核実験禁止条約」の日本語訳を掲載しておきますので、ご参照下さい。

〇「包括的核実験禁止条約」 1996年(平成8)9月10日採択、日本の署名:同年9月24日、批准: 1997年(平成9年)7月8日

包括的核実験禁止条約

前文

この条約の締約国(以下「締約国」という。)は、
核軍備の縮小(軍備における核兵器の削減を含む。)及びすべての側面における核拡散の防止の分野における近年の国際協定その他の積極的措置を歓迎し、
これらの国際協定その他の積極的措置を完全かつ迅速に実施することの重要性を強調し、
現在の国際情勢が核軍備の縮小に向けて及びすべての側面における核兵器の拡散に対して一層効果的な措置をとる機会を与えていることを確信し、また、そのような措置をとる意図を有することを宣言し、
核兵器の除去及び厳重かつ効果的な国際管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小を究極的な目標として世界的規模で核兵器を削減するための系統的かつ漸進的な努力を継続することの必要性を強調し、
核兵器のすべての実験的爆発及び他のすべての核爆発を停止することは、核兵器の開発及び質的な改善を抑制し並びに高度な新型の核兵器の開発を終了させることによって核軍備の縮小及びすべての側面における核不拡散のための効果的な措置となることを認識し
更に、核兵器のすべての実験的爆発及び他のすべての核爆発を終了させることが核軍備の縮小を達成するための系統的な過程を実現させる上での有意義な一歩となることを認識し、
核実験の終了を達成するための最も効果的な方法が軍備縮小及び不拡散の分野において長期にわたって国際杜会の最優先の目標の一であった普遍的な及び国際的かつ効果的に検証することのできる包括的核実験禁止条約を締結することであることを確信し、
千九百六十三年の大気圏内、宇宙空間及び水中における核兵器実験を禁止する条約の締約国が核兵器のすべての実験的爆発の永久的停止の達成を希求する旨を表明したことに留意し、
更に、この条約が環境の保護に貢献し得るとの見解が表明されたことに留意し、
すべての国によるこの条約への参加を得るという目的並びにすべての側面における核兵器の拡散の防止、核軍備の縮小の過程の進展並びに国際の平和及び安全の強化に効果的に貢献するというこの条約の趣旨を確認して、
次のとおり協定した。

第一条 基本的義務
1 締約国は、核兵器の実験的爆発又は他の核爆発を実施せず並びに自国の管轄又は管理の下にあるいかなる場所においても核兵器の実験的爆発及び他の核爆発を禁止し及び防止することを約束する。
2 締約国は、更に、核兵器の実験的爆発又は他の核爆発の実施を実現させ、奨励し又はいかなる態様によるかを問わずこれに参加することを差し控えることを約束する。

第二条 機関
A 一般規定
1 締約国は、この条約の趣旨及び目的を達成し、この条約の規定(この条約の遵守についての国際的な検証に関する規定を含む。)の実施を確保し並びに締約国間の協議及び協力のための場を提供するため、この条約により包括的核実験禁止条約機関(以下「機関」という。)を設立する。
2 すべての締約国は、機関の加盟国となる。締約国は、機関の加盟国としての地位を奪われることはない。
3 機関の所在地は、オーストリア共和国ウィーンとする。
4 機関の内部機関として、締約国会議、執行理事会及び技術事務局(国際データセンターを含む。)をこの条約により設置する。
5 締約国は、この条約に従い機関がその任務を遂行することに協力する。締約国は、この条約の趣旨及び目的又はその規定の実施に関して提起される事項について、締約国間で直接又は機関若しくは他の適当な国際的な手続(国際連合憲章に基づく国際連合の枠内の手続を含む。)を通じて協議する。
6 機関は、できる限り干渉の程度が低く、かつ、検証活動の目的の適時の及び効果的な達成に合致する方法で、この条約に規定する検証活動を行う。機関は、この条約に基づく自己の責任を果たすために必要な情報及び資料のみを要請する。機関は、この条約の実施を通じて知るに至った非軍事上及び軍事上の活動及び施設に関する情報の秘密を保護するためにすべての措置をとるものとし、特に、秘密の保護に関するこの条約の規定を遵守する。
7 締約国は、この条約の実施に関連して機関から秘密のものとして受領する情報及び資料を秘密のものとして取り扱い、並びに当該情報及び資料に対して特別の取扱いを行う。締約国は、当該情報及び資料をこの条約に基づく自国の権利及び義務との関連においてのみ利用する。
8 機関は、独立の機関として、国際原子力機関等の他の国際機関との間の協力のための措置を通じ、可能な場合には既存の専門的知識及び施設を利用するよう及び費用対効果を最大にするよう努める。当該措置については、軽微な及び通常の商業的かつ契約的な性質を有するものを除くほか、承認のために締約国会議に提出される協定で定める。
9 機関の活動に要する費用については、国際連合と機関との間の加盟国の相違を考慮して調整される国際連合の分担率に従って締約国が毎年負担する。
10 準備委員会に対する締約国の財政的負担については、適当な方法によって機関の通常予算に対する当該締約国の分担金から控除する。
11 機関に対する分担金の支払か延滞している機関の加盟国は、その未払の額が当該年に先立つ二年の間に当該加盟国から支払われるべきであった分担金の額に等しい場合又はこれを超える場合には、機関において投票権を有しない。ただし、締約国会議は、支払の不履行が当該加盟国にとってやむを得ない事情によると認めるときは、当該加盟国に投票を許すことができる。
B 締約国会議
構成、手続及び意思決定
12 締約国会議(以下「会議」という。)は、すべての締約国によって構成される。各締約国は、会議において一人の代表を有するものとし、代表は、代表代理及び随員を伴うことができる。
13 会議の第一回会期の会合については、この条約が効力を生じた後三十日以内に寄託者が招集する。
14 会議は、別段の決定を行う場合を除くほか、毎年通常会期として会合する。
15 会議の特別会期の会合は、次のいずれかの場合に開催される。
⒜ 会議が決定する場合
⒝ 執行理事会が要請する場合
⒞ いずれかの締約国が要請し、かつ、締約国の過半数が支持する場合
当該会合は、開催の決定又は要請において別段の明示がない限り、会議の決定、執行理事会の要請又は必要な支持の獲得の後三十日以内に開催される。
16 会議は、第七条の規定に従って改正会議として開催することができる。
17 会議は、第八条の規定に従って検討会議として開催することができる。
18 会期の会合は、会議が別段の決定を行う場合を除くほか、機関の所在地で開催される。
19 会議は、その手続規則を採択する。会議は、各会期の始めに、議長及び他の必要な役員を選出する。これらの者は、次の会期において新たな議長及ぴ他の役員か選出されるまで在任する。
20 定足数は、締約国の過半数とする。
21 各締約国は、一の票を有する。
22 会議は、出席しかつ投票する締約国の過半数による議決で手続事項についての決定を行う。実質事項についての決定は、できる限りコンセンサス方式によって行う。決定に当たってコンセンサスが得られない場合には、会議の議長は、いかなる投票も二十四時間延期し、この間にコンセンサスの達成を容易にするためのあらゆる努力を払い、及び当該二十四時間の終了の前に会議に報告する。当該二十四時間の終了の時にコンセンサスが得られない場合には、会議は、この条約に別段の定めがある場合を除くほか、出席しかつ投票する締約国の三分の二以上の多数による議決で決定を行う。実質事項であるか否かについて問題が生ずる事項については、実質事項についての決定に必要な多数による議決で別段の決定か行われない限り、実質事項として取り扱う。
23 会議は、26⒦に規定する任務を遂行する場合には、22に規定する実質事項についての決定のための手続に従いこの条約の附属書一の国の一覧表に新たな国を追加する決定を行う。会議は、この条約の附属書一のその他の変更については、22の規定にかかわらず、コンセンサス方式によって決定する。
権限及び任務
24 会議は、機関の主要な内部機関であり、この条約に従ってこの条約の範囲内のいかなる問題又は事項(執行理事会及び技術事務局の権限及び任務に関するものを含む。)も検討する。会議は、締約国が提起し又は執行理事会が注意を喚起するこの条約の範囲内のいかなる問題又は事項についても、勧告及び決定を行うことができる。
25 会議は、この条約の実施を監督し、その遵守状況を検討し、並びにその趣旨及び目的を推進するために行動する。会議は、執行理事会及び技術事務局の活動も監督するものとし、これらのいずれに対してもその任務の遂行のために指針を与えることができる。
26 会議は、次のことを行う。
⒜ 執行理事会が提出するこの条約の実施に関する機関の報告並びに機関の年次計画及び年次予算を検討し及び採択し並びに他の報告を検討すること。
⒝ 9の規定に従って締約国が支払う分担金の率について決定すること。
⒞ 執行理事会の理事国を選出すること。
⒟ 技術事務局の事務局長(以下「事務局長」という。)を任命すること。
⒠ 執行理事会が提出する執行理事会の手続規則を検討し及び承認すること。
⒡ この条約の運用に影響を及ぼし得る科学及び技術の進歩を検討すること。このため、会議は、事務局長がその任務の遂行に当たって会議、執行理事会又は締約国に対してこの条約に関連する科学及び技術の分野における専門的な助言を行うことができるようにするために、科学諮問委員会を設置することを事務局長に指示することができる。この場合において、科学諮問委員会は、個人の資格において職務を遂行し、かつ、会議が採択する付託事項に従いこの条約の実施に関連する特定の科学の分野における専門的知識及び経験に基づいて任命される独立した専門家で構成される。
⒢ 第五条の規定に従いこの条約の遵守を確保し並びにこの条約に違反する事態を是正し及び改善するために必要な措置をとること。
⒣ 第一回会期において、準備委員会が作成し及び勧告する協定案、取決め案、規則案、手続案、運用手引書案、指針案その他の文書を検討し及び承認すること。
⒤ 執行理事会が38⒣の規定に従って機関に代わって締結する協定又は取決めであって技術事務局が締約国、締約国以外の国又は国際機関との間で交渉したものを検討し及び承認すること。
⒥ この条約に従って自己の任務を遂行するために必要と認める補助機関を設置すること。
⒦ 適当な場合には23の規定に従ってこの条約の附属書一を変更すること。
C 執行理事会
構成、手続及び意思決定
27 執行理事会は、五十一の理事国によって構成される。締約国は、この条の規定に従い、理事国としての任務を遂行する権利を有する。
28 衡平な地理的配分の必要性に考慮を払い、執行理事会の構成は、次のとおりとする。
⒜ 十のアフリカの締約国
⒝ 七の東欧の締約国
⒞ 九のラテン・アメリカ及びカリブの締約国
⒟ 七の中東及び南アジアの締約国
⒠ 十の北アメリカ及び西欧の締約国
⒡ 八の東南アジア、太平洋及び極東の締約国
これらの各地理的地域に属するすべての国は、この条約の附属書一に褐げる。この条約の附属書一については、適当な場合には、23及び26⒦の規定に従って会議が変更する。この条約の附属書一は、第七条に定める手続による改正又は修正の対象とされない。
29 執行理事会の理事国は、会議によって選出される。その選出のために、各地理的地域は、当該各地理的地域に属する締約国のうちから次のとおり締約国を指名する。
⒜ 各地理的地域に割り当てられる議席の少なくとも三分の一は、政治上及び安全保障上の利益に考慮を払い、国際的な資料によって決定されるこの条約に関連する原子力能力及び当該各地理的地域において決定される優先順位による次の基準の全部又は一部に基づいて指名される当該各地理的地域の締約国によって占められるものとする。
(ⅰ) 国際監視制度の監視施設の数
(ⅱ) 監視技術についての専門的知識及び経験
(ⅲ) 機関の年次予算に対する分担金
⒝ 各地理的地城に割り当てられる議席の一は、輪番制により、当該各地理的地域に属する締約国の中で締約国となった時からの期間(執行理事会の理事国として選出されたことがある締約国については、その直前の任期か終了した時からの期間いが最も長い締約国のうち英語のアルファベット順による最初の締約国によって占められるものとする。そのような基準に従って指名された締約国は、その議席の放棄を決定することができる。この場合において、その決定を行った締約国は、事務局長に対し議席を放棄する旨の書簡を提出するものとし、当該議席は、この⒝の規定に従って次の順位となる締約国によって占められるものとする。
⒞ 各地理的地域に割り当てられる残余の議席は、当該各地理的地域に属するすべての締約国の中から輪番制又は選挙によって指名される締約国によって占められるものとする。
30 執行理事会の各理事国は、執行理事会において一人の代表を有するものとし、代表は、代表代理及び随員を伴うことができる。
31 執行理事会の各理事国は、自国が選出された会議の会期の終了の時からその後二回目に行われる会議の年次通常会期の終了の時まで在任する。ただし、執行理事会の理事国を最初に選出するに当たっては、選出される理事国のうち28に規定する定められた理事国の数の割合に十分な考慮を払って決定される二十六の理事国の任期を三回目に行われる会議の年次通常会期の終了の時までとする。
32 執行理事会は、その手続規則を作成し、承認のためにこれを会議に提出する。
33 執行理事会は、その議長を理事国より選出する。
34 執行理事会は、通常会期として会合するほか、通常会期と通常会期との間においては、その権限及び任務の遂行のために必要に応して会合する。
35 執行理事会の各理事国は、一の票を有する。
36 執行理事会は、すべての理事国の過半数による議決で手続事項についての決定を行う。執行理事会は、この条約に別段の定めがある場合を除くほか、すべての理事国の三分の二以上の多数による議決で実質事項についての決定を行う。実質事項であるか否かについて問題が生ずる事項については、実質事項についての決定に必要な多数による議決で別段の決定が行われない限り、実質事項として取り扱う。
権限及び任務
37 執行理事会は、機関の執行機関である。執行理事会は、会議に対して責任を負う。執行理事会は、この条約によって与えられる権限及び任務を遂行する。執行理事会は、これらを遂行するに当たり、会議による勧告、決定及び指針に従って行動し、並びにこれらの勧告、決定及び指針の継続的かつ適切な実施を確保する。
38 執行理事会は、次のことを行う。
⒜ この条約の効果的な実施及び遵守を促進すること。
⒝ 技術事務局の活動を監督すること。
⒞ この条約の趣旨及び目的を推進するための新たな提案の検討のために必要に応じて会議に勧告すること。
⒟ 締約国の国内当局と協力すること。
⒠ 機関の年次計画案及び年次予算案、この条約の実施に関する機関の報告案、執行理事会の活動に関する報告並びに執行理事会が必要と認め又は会議か要請するその他の報告を検討し及び会議に提出すること。
⒡ 会議の会期のための準備(議題案の作成を含む。)を行うこと。
⒢ 第七条の規定に従い、運営上の又は技術的な性質の事項についての議定書又はその附属書の修正案を検討し及びその採択について締約国に勧告すること。
⒣ 会議が事前に承認することを条件として機関に代わって締約国、締約国以外の国又は国際機関と協定又は取決め(⒤の協定及び取決めを除く。)を締結し及びその実施を監督すること。
⒤ 検証活動の実施に関する締約国又は締約国以外の国との間の協定又は取決めを承認し及びその運用を監督すること。
⒥ 技術事務局が提案する新たな運用手引書及び現行の運用手引書の変更を承認すること。
39 執行理事会は、会議の特別会期の会合の開催を要請することができる。
40 執行理事会は、次のことを行う。
⒜ 情報交換を通じてこの条約の実施についての締約国間及び締約国と技術事務局との間の協力を容易にすること。
⒝ 第四条の規定に従って締約国間の協議及び説明を容易にすること。
⒞ 第四条の規定に従って現地査察の要請及び報告を受領し及び検討し並びにこれらについて措置をとること。
41 執行理事会は、この条約の違反の可能性及びこの条約に基づく権利の濫用についての締約国が提起する懸念を検討する。その検討に当たり、執行理事会は、関係締約国と協議し及び、適当な場合には、当該懸念を提起された締約国に対し一定の期間内に事態を是正するための措置をとるよう要請する。執行理事会は、更に行動が必要であると認める場合には、特に、次の一又は二以上の措置をとる。
⒜ すべての締約国に対して問題又は事項を通報すること。
⒝ 問題又は事項について会議の注憲を喚起すること。
⒞ 第五条の規定に従い、事態を是正し及びこの条約の遵守を確保するための措置に関し、会議に対して勧告を行い及び適当な場合には措置をとること。
D 技術事務局
42 技術事務局は、この条約の実施について締約国を援助する。技術事務局は、会議及び執行理事会が任務を遂行するに当たり、会議及び執行理事会を補佐する。技術事務局は、この条約によって与えられる検証その他の任務及びこの条約に従って会議又は執行理事会によって委任される任務を遂行する。技術事務局には、その不可欠な一部分としての国際データセンターを含む。
43 この条約の遵守の検証に関する技術事務局の任務には、第四条の規定及び議定書に従って、特に、次のことを含むものとする。
⒜ 国際監視制度の運用を監督し及び調整することについて責任を負うこと。
⒝ 国際データセンターを運用すること。
⒞ 通常の活動として国際監視制度によって得られるデータを受領し、処理し、分析し及びこれについて報告すること。
⒟ 監視観測所の設置及び運用について技術上の援助及び支援を行うこと。
⒠ 執行理事会か締約国間の協議及び説明を容易にするに当たってこれを補佐すること。
⒡ 現地査察の要請を受領し及び処理し、執行理事会が当該要請を検討することを容易にし、現地査察の実施のための準備を行い、現地査察が行われている間技術上の支援を行い並びに執行理事会に報告すること。
⒢ 締約国、締約国以外の国又は国際機関との間で協定又は取決めについて交渉し及び、執行理事会が事前に承認することを条件として、締約国又は締約国以外の国と検証活動に関する協定又は取決めを締結すること。
⒣ この条約に規定する検証に関するその他の事項につき国内当局を通じて締約国を援助するここと。
44 技術事務局は、第四条の規定及び議定書に従い、執行理事会が承認することを条件として、検証制度の種々の構成要素の運用の指針とするための運用手引書を作成し及び維持する。運用手引書は、この条約又は議定書の不可分の一部を成さないものとし、執行理事会が承認することを条件として、技術事務局によって変更されることができる。技術事務局は、運用手引書の変更を締約国に対して速やかに通報する。
45 運営上の事項に関する技術事務局の任務には、次のことを含むものとする。
⒜ 機関の計画案及び予算案を作成し及び執行理事会に提出すること。
⒝ この条約の実施に関する機関の報告案及び会議又は執行理事会が要請する場合には他の報告を作成し及び執行理事会に提出すること。
⒞ 会議、執行理事会その他補助機関に対して運営上及び技術上の援助を行うこと。
⒟ この条約の実施に関し機関に代わって通報を行い及び受領すること。
⒠ 機関と他の国際機関との間の協定に関する運営上の任務を遂行すること。
46 締約国が機関に対して行うすべての要請及び通報は、当該締約国の国内当局を通じて事務局長に送付される。当該要請及び通報は、この条約の言語の一で行われる。当該要請及び通報に対応するに当たり、事務局長は、当該要請及び通報において使用された言語を使用する。
47 技術事務局は、機関の計画案及び予算案を作成し及び執行理事会に提出する任務の遂行に当たり、国際監視制度の一部として設置された各施設に要するすべての費用についての明確な会計処理の原則を決定し及び継続して適用する。機関の他のすべての活動についても、同様に取り扱う。
48 技術事務局は、その任務の遂行に関連して生じた問題であって、その活動の実施に当たって知るに至りかつ関係締約国との間の協議を通じて解決することができなかったものを執行理事会に対して速やかに通報する。
49 技術事務局は、その長でありかつ首席行政官である事務局長及び科学要員、技術要員その他の必要な人員によって構成される。事務局長は、執行理事会の勧告に基づき四年の任期で会議によって任命される。その任期については、一回に限り更新することかできる。最初の事務局長については、準備委員会の勧告に基づき会議がその第一回会期において任命する。
50 事務局長は、技術事務局の職員の任命、組織及び任務の遂行につき会議及び執行理事会に対して責任を負う。職員の雇用及び勤務条件の決定に当たっては、最高水準の専門的知識、経験、能率、能力及び誠実性を確保することの必要性に最大の考慮を払う。締約国の国民のみが、事務局長、査察員並びに専門職員及び事務職員となる。できる限り広範な地理的基礎に基づいて職員を採用することが重要であることについて、十分な考慮を払う。職員の採用に当たっては、技術事務局の任務を適切に遂行するために必要な最小限度に職員を保つという原則を指針とする。
51 事務局長は、適当な場合には、執行理事会との協議の後、特定の同題について勧告を行うための科学の専門家の臨時の作業部会を設置することができる。
52 事務局長、査察員、査察補及び技術事務局の職員は、その任務の遂行に当たって、いかなる政府からも又は機関外のいかなるところからも指示を求め又は受けてはならない。これらの者は、機関に対してのみ責任を有する国際公務員としての立場に望ましくない影響を及ぽすおそれのあるいかなる行動も差し控えなければならない。事務局長は、査察団の活動について責任を負う。
53 締約国は、事務局長、査察員、査察補及び技術事務局の職員の任務の専ら国際的な性質を尊重するものとし、これらの者が任務を遂行するに当たってこれらの者を左右しようとしてはならない。
E 特権及び免除
54 機関は、締約国の領域内又はその管轄若しくは管理の下にあるその他の場所において、機関の任務の遂行のために必要な法律上の能力並びに特権及び免除を享受する。
55 締約国の代表、その代表代理及び随員、執行理事会に選出された理事国の代表、その代表代理及び随員並びに事務局長、査察員、査察補及び機関の職員は、機関に関連する自己の任務を独立して遂行するために必要な特権及び免除を享受する。
56 この条に規定する法律上の能力、特権及び免除については、機関と締約国との間の協定及び機関と機関が所在する国との間の協定で定める。これらの協定は、26の⒣及び⒤の規定に従って検討され及び承認される。
57 54び55の規定にかかわらず、検証活動が行われている間事務局長、査察員、査察補及び技術事務局の職員が享受する特権及び免除は、議定書に定める。

第三条 国内の実施措置
1 締約国は、自国の憲法上の手続に従いこの条約に基づく自国の義務を履行するために必要な措置をとる。締約国は、特に、次のことのために必要な措置をとる。
⒜ 自国の領域内のいかなる場所又は国際法によって認められる自国の管轄の下にあるその他のいかなる場所においても、自然人及び法人がこの条約によって締約国に対して禁止されている活動を行うことを禁止すること。
⒝ 自然人及び法人が自国の管理の下にあるいかなる場所においても国の活動を行うことを禁止すること。
⒞ 自国の国籍を有する自然人がいかなる場所においても⒜の活動を行うことを国際法に従って禁止すること。
2 締約国は、1の規定に基づく義務の履行を容易にするため、他の締約国と協力しい及び適当な形態の法律上の援助を与える。
3 締約国は、この条の規定に従ってとる措置を機関に通報する。
4 締約国は、この条約に基づく自国の義務を履行するため、国内当局を指定し又は設置し及び、この条約が自国について効力を生じたときは、その指定又は設置について機関に通報する。国内当局は、機関及び他の締約国との連絡のための国内の連絡先となる。

第四条 検証
A 一般規定
1 この条約の遵守について検証するために、次のものから成る検証制度を設ける。当該検証制度は、この条約が効力を生ずる時に検証についてこの条約が定める要件を満たすことができるものとする。
⒜ 国際監視制度
⒝ 協議及び説明
⒞ 現地査察
⒟ 信頼の醸成についての措置
2 検証活動については、客観的な情報に基づくものとし、この条約の対象である事項に限定し、並びに締約国の主権を十分に尊重することを基礎として並びにできる限り干渉の程度か低く、かつ、当該検証活動の目的の効果的な及び適時の遂行に合致する方法で実施する。締約国は、検証についての権利の濫用を差し控える。
3 締約国は、この条約の遵守についての検証を容易にするために、この条約に従って、前条4の規定に従って設置する国内当局を通じて特に次のことによって機関及び他の締約国と協力することを約束する。
⒜ 当該検証のための措置に参加するために必要な施設及び通信手段を設置すること。
⒝ 国際監視制度の一部を成す国内の観測所から得られたデータを提供すること。
⒞ 適当な場合には協議及び説明の手続に参加すること。
⒟ 現地査察の実施を認めること。
⒠ 適当な場合には信頼の醸成についての措置に参加すること。
4 すべての締約国は、技術的及び財政的な能力のいかんを問わず、検証についての平等の権利を有し、及び検証を受け入れる平等の義務を負う。
5 この条約の適用上、いかなる締約国も、一般的に認められている国際法の原則六国の主権の尊重の原則を含むごに適合する方法で国内の検証技術によって得た情報を使用することを妨げられない。
6 締約国は、この条約の検証制度又は5の規定による国内の検証技術の運用を妨げてはならない。ただし、この条約に関係しない機微に係る設備、活動又は場所を保護する締約国の権利を害するものではない。
7 締約国は、この条約に関係しない機微に係る設備を保護し並びにこの条約に関係しない秘密の情報及び資料の開示を防止するための措置をとる権利を有する。
8 更に、非軍事上及び軍事上の活動及び施設に関する情報であって検証活勤の間に得られたものの秘密を保護するためのすべての必要な措置がとられるものとする。
9 機関がこの条約によって設けられた検証制度を通じて得た情報については、8の規定に従うことを条件として、この条約及び議定書の関連規定に従ってすべての締約国が利用することができる。
10 この条約は、科学的な目的のために行われる資料の国際的な交換を制限するものと解してはならない。
11 締約国は、適当な場合にはこの条約の検証制度の効率及び費用対効果を高めることとなる特定の措置を開発するため、検証制度を改善し及び追加的な監視技術(電磁衝撃波監視及び衛星による監視を含む。)の潜在的な検証能力を検討することについて機関及び他の締約国と協力することを約束する。そのような特定の措置は、合意される場合には、第七条の規定に従ってこの条約の現行の規定若しくは議定書に若しくは議定書の追加的な規定として含められ又は、適当な場合には、第二条44の規定に従って運用手引書に反映される。
12 締約国は、すべての締約国が国内における検証措置の実施を強化し及びこの条約の検証制度において使用される技術の平和的目的のための応用から利益を受けることを可能にするために、当該技術についての交流を可能な最大限度まで行うことを容易にし及びその交流に参加することについての相互間の協力を促進することを約束する。
13 この条約は、平和的目的のための原子力の応用を一層発展させるための締約国の経済的及び技術的な発展を妨げないような態様で実施する。
技術事務局の検証の分野における任務
14 技術事務局は、この条約の目的のため、この条約及び議定書に規定する検証の分野における任務を遂行するに当たり、締約国と協力して次のことを行う。
⒜ この条約に従ってこの条約の検証に関連するデータ及び報告のために作成された資料を受領し及び配布するための措置並びにそのために必要な世界的規模の通信基盤を維持するための措置をとること。
⒝ 技術事務局内において原則としてデータの保管及び処理の中心となる国際データセンターを通じ通常の活動として次のことを行うこと。
(ⅰ) 国際監視制度によって得られるデータについて要請を受領し及び要請を行うこと。
(ⅱ) 適当な場合には、協議及び説明の手続、現地査察並びに信頼の醸成についての措置の結果得られたデータを受領すること。
(ⅲ) この条約及び議定書に従って締約国及び国際機関からその他の関連するデータを受領すること。
⒞ 関連する運用手引書に従って国際監視制度、その構成要素及び国際データセンターの運用を監督し、調整し及び確保すること。
⒟ この条約についての国際的な検証が効果的に行われることを可能にし及びこの条約の遵守についての懸念の早期の解決に資するため、合意される手続に従い通常の活動として国際監視制度によって得られるデータを処理し及び分析し並びにこれについて報告すること。
⒠ すべてのデータ(未処理のもの及び処理済みのもの)及び報告のために作成された資料をすべての締約国が利用することができるようにすること。もっとも、締約国は、第二条7並びにこの条の8及び13の規定に従って国際監視制度によって得られるデータの利用について責任を負う。
⒡ すべての締約国に対し保管されているすべてのデータへの平等の、開かれた、利用しやすい、かつ、適時のアクセスを認めること。
⒢ すべてのデータ(未処理のもの及び処理済みのもの)及び報告のために作成された資料を保管すること。
⒣ 国際監視制度によって追加的なデータを得ることについての要請を調整し及び容易にすること。
⒤ 追加的なデータについての一の締約国から他の締約国に対する要請を調整すること。
⒥ 関係国が必要とする場合には、監視施設及びその通信手段の設置及び運用について技術上の援助及び支援を行うこと。
⒦ 検証制度によって得られるデータを取りまとめ、保管し、処理し及び分析し並びにこれについて報告するに当たって技術事務局及び国際データセンターが使用する技術を締約国の要請に応じ当該締約国が利用することができるようにすること。
⒧ 国際監視制度の運用及び国際データセンターの任務の遂行の全般を監視し及び評価し並びにこれについて報告すること。
15 技術事務局が14及び議定書に規定する検証の分野における任務の遂行に当たって使用する合意された手続は、関連する運用手引書で定める。
B 国際監視制度
16 国際監視制度は、地震学的監視施設、放射性核種監視施設(公認された実験施設を含む。)、水中音波監視施設及び微気圧振動監視施設並びにその各通信手段によって構成され、並びに技術事務局の国際データセンターの支援を受ける。
17 国際監視制度は、技術事務局の権限の下に置かれる。国際監視制度のすべての監視施設については、議定書に従い、当該監視施設を受け入れ又はその他の方法によってこれについて責任を負う国が所有し及び運用する。
18 締約国は、データの国際的な交換に参加し及び国際データセンターが利用し得るすべてのデータへのアクセスが認められる権利を有する。締約国は、自国の国内当局を通じて国際データセンターと協力する。
国際監視制度についての費用負担
19 機関は、国際監視制度に含められる施設であって議定書の附属書一の表の1A、2A、3及び4に掲げるもの並びにその運用につき、これらの施設が議定書及び関連する運用手引書で定める技術上の要件に従って国際データセンターにデータを提供することについて関係国及び機関が合意する場合には、議定書第一部4に規定する協定又は取決めに従って次のことに係る費用を負担する。
⒜ 新たな施設を設置し及び既存の施設の水準を高めること。ただし、これらの施設について責任を負う国がその費用を負担する場合は、この限りでない。
⒝ 国際監視制度の施設を運用し及び維持することへ適当な場合には、施設の安全を確保することを含むぶ並びにデータが改変されないことを確保するための合意された手続を適用すること。
⒞ 利用可能な手段で最も直接的な及び最も費用対効果の高いもの(必要な場合には、適当な通信の分岐点を経由するものを含む。)によって監視施設、実験施設、分析施設若しくは国内のデータセンターから国際データセンターへ国際監視制度によって得られるデータ(未処理のもの及び処理済みのもの)を送付し又は監視施設から実験施設及び分析施設へ当該データ(適当な場合には、試料を含む。)を送付すること。
⒟ 機関に代わって試料の分析を行うこと。
20 機関は、議定書の附属書一の表1Bに掲げる補助的な地震学的監視観測所網につき、議定書第一部4に規定する協定又は取決めに従って次のことに係る費用のみを負担する。
⒜ 国際データセンターヘデータを送付すること。
⒝ 補助的な地震学的監視観測所についてそのデータが改変されないことを確保すること。
⒞ 観測所の水準を必要とされる技術的基準に合致するよう高めること。ただし、当該観測所について責任を負う国がその費用を負担する場合は、この限りでない。
⒟ 適当な既存の施設がない場合において必要なときは、この条約の目的のために新たな観測所を設置すること。ただし、当該観測所について責任を負う国がその費用を負担する場合は、この限りでない。
⒠ その他の費用であって機関が関連する運用手引書に従って要請するデータの提供に係るもの
21 機関は、議定書第一部Fに規定する標準的な範囲内において国際データセンターが作成する資料及び提供するサービスのうち締約国が要請において選択したものを当該締約国に提供することに係る費用も負担する。追加的なデータの入手及び送付又は追加的な資料の作成及び送付に係る費用については、要請する締約国が負担する。
22 国際監視制度の施設を受け入れ又はその他の方法によってこれについて責任を負う締約国又は締約国以外の国との間で締結される協定又は適当な場合の取決めには、これに係る費用の負担についての規定を含める。当該規定には、締約国が受け入れ又は責任を負う施設に係る費用で19⒜並びに20の⒞及び⒟に規定するものを当該締約国が立て替え並びに当該締約国が機関に対する自国の分担金における適当な控除により弁済を受ける方法を含めることができる。当該控除は、締約国の年次分担金の額の五十パーセントを超えてはならないが、翌年以降に繰り越すことができる。締約国は、他の締約国との間の協定又は取決めによって及び執行理事会の同意を得て、当該他の締約国と共に当該控除を受けることができる。この22に規定する協定又は取決めは、第二条の26⒣及び38⒤の規定に従って承認される。
国際監視制度の変更
23 11に規定する措置であって監視技術の追加又は除外によって国際監視制度に影響を及ぼすものについては、合意される場合には、第七条の1から6までの規定に従ってこの条約及び議定書に含める。
24 国際監視制度の次の変更は、直接影響を受ける国の同意を条件として、第七条の7及び8に規定する運営上の又は技術的な性質の事項とみなされる。執行理事会は、同条8⒟の規定に従って当該変更が採択されるよう勧告する場合には、原則として、同条8⒢の規定に従い当該変更がその承認に関する事務局長の通報の時に効力を生ずることについても勧告する。
⒜ いずれかの監視技術のための施設の数で議定書に定めるものの変更
⒝ 特定の施設についてのその他の詳細(特に、施設について責任を負う国、施設の所在地、施設の名称、施設の形式及び主要な地震学的監視観測所網又は補助的な地震学的監視観測所網のいずれに帰属させるかを含む。)の変更であって議定書の附属書一の表に反映されるもの
25 事務局長は、24に規定する修正案につき、第七条8⒣の規定に従って執行理事会及び締約国に対して情報及び評価を提出するに当たって次の事項を含める。
⒜ 当該修正案についての技術上の評価
⒝ 当該修正案の運営上及び財政上の影響についての記述
⒞ 当該修正案によって直接影響を受ける国との協議についての報告(当該国の同意についての記述を含む。)
暫定的措置
26 事務局長は、議定轡の附属書一の表に掲げる監視施設の重大若しくは回復不可能な故障が生じた場合には、又は監視が及ぶ範囲のその他の一時的な縮小に対応するため、直接影響を受ける国と協議し及びその同意を得て並びに執行理事会の承認を得た上、一年を超えない期間の暫定的措置をとる。もっとも、必要な場合には、執行理事会及び直接影響を受ける国の同意を得て、一年間延長することができる。当該暫定的措置については、国際監視制度の稼働中の施設の数が関連する観測所網について定められる数を超えるものであってはならず、当該観測所網についての運用手引書で定める技術上及び運用上の要件をできる限り満たすものとし、並びに機関の予算の範囲内において実施する。事務局長は、更に、事態を是正するための措置をとり及びその恒久的な解決のための提案を行う。事務局長は、この26の規定に従って行った決定をすべての締約国に通報する。
国内の協力施設
27 締約国は、国際監視制度の枠内でのデータの提供とは別個に、国際監視制度の一部を構成しない国内の監視観測所によって得られる補足的なデータを国際データセンターが利用することができるように機関との間で協力についての取決めを作成することができる。
28 27の協力についての取決めについては、次のとおり作成することができる。
⒜ 技術事務局は、締約国の要請により及び当該締約国の費用で、特定の監視施設が国際監視制度の施設のための関連する運用手引書で定める技術上及び運用上の要件を満たしていることを証明するために必要な措置並びに当該特定の監視施設についてそのデータが改変されないことを確保するための措置をとった上、執行理事会の同意を条件として、当該特定の監視施設を国内の協力施設として正式に指定する。技術事務局は、適当な場合には、当該要件を満たしていることの証明を更新するために必要な措置をとる。
⒝ 技術事務局は、国内の協力施設の最新の一覧表を保持し、及びこれをすべての締約国に配布する。
⒞ 締約国の要請がある場合には、国際データセンターは、協議及び説明を容易にし並びに現地査察の要請についての検討を容易にするために国内の協力施設によって得られるデータを要請する。もっとも、当該データの送付に係る費用については、当該締約国が負担する。
国内の協力施設によって得られる補足的なデータを利用可能とし及び国際データセンターが補足的なデータの追加的若しくは迅速な送付又は説明を要請することができるための条件は、それぞれの監視観測所網のための運用手引書で定める。
C 協議及び説明
29 締約国は、可能なときはいつでも、この条約の基本的義務の違反の可能性について懸念を引き起こす問題を、まず、締約国間で、機関との間で又は機関を通じて、明らかにし及び解決するためにあらゆる努力を払うべきである。もっとも、すべての締約国の現地査察を要請する権利は害されない。
30 この条約の基本的義務の違反の可能性について懸念を引き起こす問題を明らかにし及び解決するよう29の規定によって他の締約国から直接要請された締約国は、できる限り速やかに、いかなる場合にもその要請の後四十八時間以内に、その要請を行った締約国に対して説明を行う。その要請を行った締約国及びその要請を受けた締約国は、執行理事会及び事務局長に対してその要請及びこれへの対応について通報することができる。
31 締約国は、この条約の基本的義務の違反の可能性について懸念を引き起こす問題を明らかにするに当たって援助するよう事務局長に要請する権利を有する。事務局長は、このような懸念に関連する適当な情報で技術事務局が保有するものを提供する。事務局長は、その援助を要請した締約国が要請する場合には、執行理事会に対しその援助の要請及びこれに応じて提供した情報について通報する。
32 締約国は、この条約の基本的義務の違反の可能性について懸念を引き起こす問題を明らかにするための説明を他の締約国から得るよう執行理事会に要請する権利を有する。この場合において、次の規定を適用する。
⒜ 執行理事会は、事務局長を通じ、その要請を受領した後二十四時間以内に、当該他の締約国に対してこれを送付する。
⒝ 当該他の締約国は、できる限り速やかに、いかなる場合にもその要請を受領した後四十八時間以内に、執行理事会に対して説明を行う。
⒞ 執行理事会は、⒝の規定に従って行われた説明に留意し、当該説明を受領した後二十四時間以内に、その要請を行った締約国に対してこれを送付する。
⒟ その要請を行った締約国は、⒝の規定に従って行われた説明が十分でないと認める場合には、当該他の締約国から更に説明を得るよう執行理事会に要請する権利を有する。
執行理事会は、この32に規定する説明の要請及び当該他の締約国の対応についてその他のすべての締約国に対して遅滞なく通報する。
33 32⒟の規定に基づいて要請を行った締約国は、その得た説明が十分でないと認める場合には、執行理事会の理事国でない関係締約国が参加することができる執行理事会の会合の開催を要請する権利を有する。執行理事会は、当該会合において、この問題を検討し、及び次条の規定に基づく措置を勧告することができる。
D 現地査察
現地査察の要請
34 締約国は、この条及び議定書第二部の規定に基づき、いかなる締約国の領域内若しくはいかなる締約国の管轄若しくは管理の下にあるその他の場所についても又はいずれの国の管轄若しくは管理の下にもない場所について現地査察を要請する権利を有する。
35 現地査察の唯一の目的は、核兵器の実験的爆発又は他の核爆発が第一条の規定に違反して実施されたか否かを明らかにし及び違反した可能性のある者の特定に資する事実を可能な限り収集することとする。
36 要請締約国は、現地査察の要請をこの条約の範囲内で行い、及び37の規定に従って当該要請において情報を提供する義務を負う。要請締約国は、根拠がない又は濫用にわたる査察の要請を差し控える。
37 現地査察の要請は、国際監視制度によって収集された情報若しくは一般的に認められている国際法の原則に適合する方法で国内の検証技術によって得られた関連する技術上の情報又はこれらの組合せに基づくものとする。当該要請には、議定書第二部41に規定する事項を含める。
38 要請締約国は、執行理事会に対して現地査察の要請を行い、及び事務局長が速やかに手続を開始することができるよう同時に事務局長に対して当該要請を提出する。
現地査察の要請を提出した後の措置
39 執行理事会は、現地査察の要請を受領したときは、直ちにその検討を開始する。
40 事務局長は、現地査察の要請を受領した後、二時間以内に要請締約国に対して当該要請の受領を確認し、六時間以内に当該要請を査察が行われることが求められている締約国に通報する。事務局長は、当該要請が議定書第二部41に定める要件を満たしていることを確認し、必要な場合には要請締約国が当該要件に従って当該要請を行うことを援助し、並びに当該要請を受領した後二十四時間以内に執行理事会及び他のすべての締約国に対して当該要請を通報する。
41 技術事務局は、現地査察の要請が40の要件を満たしている場合には、現地査察のための準備を遅滞なく開始する。
42 事務局長は、いずれかの締約国の管轄又は管理の下にある査察区域に係る現地査察の要請を受領したときは、査察が行われることが求められている締約国に対し、当該要請において提起された懸念について明らかにされ及びこれが解決されるように直ちに説明を求める。
43 42の規定によって説明の求めを受領する締約国は、当該説明の求めを受領した後できる限り速やかに、遅くとも七十二時間以内に、事務局長に対して、説明を行い及び利用可能な他の関連する情報を提供する。
44 事務局長は、執行理事会が現地査察の要請について決定する前に、当該要請において特定される事象に関する利用可能な追加の情報であって国際監視制度によって得られるもの又は締約国が提供するもの(42及び43の規定に従って行われる説明を含む。)及び事務局長が関連すると認め又は執行理事会が要請する技術事務局内のその他の情報を執行理事会に対して直ちに送付する。
45 執行理事会は、要請締約国が現地査察の要請において提起した懸念が解決されたと認めて当該要請を撤回する場合を除くほか、46の規定に従って当該要請について決定する。
執行理事会の決定
46 執行理事会は、要請締約国から現地査察の要請を受領した後九十六時間以内に当該要諸について決定する。現地査察を承認する決定は、執行理事会の理事国の三十以上の賛成票による議決で行われる。執行理事会が当該現地査察を承認しなかった場合には、そのための準備は終了し、及び当該要請に基づく新たな措置はとられない。
47 査察団は、46の規定による現地査察の承認の後二十五日以内に、査察の経過報告を事務局長を通じて執行理事会に提出する。査察の継続は、執行理事会が当該経過報告を受領した後七十二時間以内にそのすべての理事国の過半数による議決で査察を継続しないことを決定する場合を除くほか、承認されたものとされる。執行理事会が査察を継続しないことを決定する場合には、査察は、終了し、査察団は、議定書第二部の109及び110の規定に従って査察区域及び被査察締約国の領域からできる限り速やかに退去する。
48 査察団は、現地査察が行われている間掘削の実施についての提案を事務局長を通じて執行理事会に提出することができる。執行理事会は、当該提案を受領した後七十二時間以内に当該提案について決定する。掘削を承認する決定は、執行理事会のすべての理事国の過半数による議決で行われる。
49 査察団は、その査察命令を遂行することができるようにするために査察期間の延長が不可欠であると認める場合には、事務局長を通じて執行理事会に対し、議定書第二部4に定める六十日の期間を超えて最長七十日の査察期間の延長を要請することができる。査察団は、その要請において、議定書第二部69に規定する活動及び技術であって延長された期間中に実施し又は使用しようとするものを明示する。執行理事会は、その要請を受領した後七十二時間以内にこれについて決定する。査察期間の延長を承認する決定は、執行理事会のすべての理事国の過半数による議決で行われる。
50 査察団は、47の規定に従って現地査察の継続が承認された後いつでも、事務局長を通じて執行理事会に対し査察を終了させるための勧告を提出することができる。当該勧告は、執行理事会がこれを受領した後七十二時間以内にそのすべての理事国の三分の二以上の多数による議決で査察の終了を承認しないと決定する場合を除くほか、承認されたものとされる。査察団は、査察が終了する場合には、議定書第二部の109及び110の規定に従って査察区域及び被査察締約国の領域からできる限り速やかに退去する。
51 要請締約国及び査察が行われることが求められている締約国は、現地査察の要請に関する執行理事会の審議に投票権なしで参加することができる。要請締約国及び被査察締約国は、その後の当該現地査察に関する執行理事会の審議にも投票権なしで参加することができる。
52 事務局長は、46から50までの規定に従って行われた執行理事会の決定並びに執行理事会に対する報告、提案、要請及び勧告を二十四時間以内にすべての締約国に通報する。
執行理事会が現地査察を承認した後の措置
53 執行理事会が承認した現地査察は、この条約及び議定書に従い事務局長が選定した査察団によって遅滞なく実施される。査察団は、執行理事会が要請締約国から現地査察の要請を受領した後六日以内に入国地点に到着する。
54 事務局長は、現地査察の実施のための査察命令を発する。査察命令には、議定書第二部42に規定する事項を含める。
55 事務局長は、議定書第二部43の規定に従い、査察団の入国地点への到着予定時刻の二十四時間前までに、被査察締約国に対して査察を通告する。
現地査察の実施
56 締約国は、自国の領域内又は自国の管轄若しくは管理の下にある場所において機関がこの条約及び識定書に従って現地査察を実施することを認める。ただし、いかなる締約国も、自国の領域内又は自国の管轄若しくは管理の下にある場所における二以上の現地査察を同時に受け入れることを要しない。
57 被査察締約国は、この条約及び議定書によって、次の権利を有し、及び次の義務を負う。
⒜ この条約の遵守を証明するためにあらゆる合理的な努力を払う権利及び義務並びにこのために査察団がその査察命令を遂行することができるようにする権利及び義務
⒝ 国家の安全保障上の利益を保護し及び査察の目的に関係しない秘密の情報の開示を防止するために必要と認める措置をとる権利
⒞ ⒝の規定並びに財産権又は捜索及び押収に関する自国の憲法上の義務を考慮して、査察の目的に関連する事実を確定するための査察区域内へのアクセスを認める義務
⒟ 第一条に規定する義務の違反を隠すためにこの57又は議定書第二部88の規定を援用しない義務
⒠ 査察団がこの条約及び議定書に従って査察区域内を移動し及び査察活動を実施することを妨げない義務
現地査察に関する規定において「アクセス」とは、査察団及び査察のための装置の査察区域への物理的なアクセス並びに当該査察区域内における査察活動の実施の双方をいう。
58 現地査察は、議定書に定める手続に従い、できる限り干渉の程度が低く、かつ、査察命令の効果的な及び適時の遂行に合致する方法で実施される。査察団は、できる限り、最も干渉の程度が低い手続からとり、その後、この条約の違反の可能性の懸念について明らかにするための十分な情報を収集するために必要と認める場合にのみ、より干渉の程度が高い手続に移行する。査察員は、査察の目的のために必要な情報及び資料のみを求め、並びに被査察締約国における正常な活動を妨げることを最小限にするよう努める。
59 被査察締約国は、現地査察が行われている間を通じて査察団を援助し、及びその任務の遂行を容易にする。
60 被査察締約国は、議定書第二部の86から96までの規定に基づいて査察区域内のアクセスを制限する場合には、査察団との協議の上、代替的な手段によってこの条約の遵守を証明するためにあらゆる合理的な努力を払う。
オブザーバー
61 オブザーバーについては、次の規定を適用する。
⒜ 各要請締約国は、被査察締約国の同意を得て、自国又は第三の締約国のいずれか一方の国民である一人の代表者を現地査察の実施に立ち会わせるために派遣することができる。
⒝ 被査察締約国は、事務局長に対し、執行理事会が現地査察を承認した後十二時間以内に、提案されたオブザーバーを受け入れるか否かを通告する。
⒞ 被査察締約国は、提案されたオブザーバーを受け入れる場合には、議定書に従ってそのオブザーバーに対してアクセスを認める。
⒟ 被査察締約国は、原則として、提案されたオブザーバーを受け入れる。もっとも、被査察締約国がその受入れを拒否する場合には、その事実は、査察報告に記録される。オブザーバーの合計は、三人を超えてはならない。
現地査察についての報告
62 査察報告には、次の事項を含める。
⒜ 査察団が行った活動についての記述
⒝ 査察の目的に関連する査察団による事実関係の調査結果
⒞ 現地査察の間与えられた協力についての記述
⒟ 現地査察の間認められたアクセス(査察団に提供された代替的な手段を含める。)の範囲及び程度に関する事実関係についての記述
⒠ 査察の目的に関連するその他の詳細
異なる見解を有する査察員がある場合には、当該見解を査察報告に付することができる。
63 事務局長は、被査察締約国に対して査察報告案を利用可能にする。被査察締約国は、四十八時間以内に事務局長に対して意見を述べ及び説明を提供する権利並びに査察の目的に関係せず技術事務局の外部に送付されるべきではないと認める情報及び資料を特定する権利を有する。事務局長は、当該査察報告案の変更について被査察締約国が行う提案を検討し、及び可能な限りこれを採用するものとし、被査察締約国が述べた意見及び提供した説明を査察報告に付加する。
64 事務局長は、要請締約国、被査察締約国、執行理事会及び他のすべての締約国に対して査察報告を速やかに送付する。事務局長は、更に、執行理事会及び当該他のすべての締約国に対し、指定された実験施設における試料の分析の結果を議定書第二部104の規定に従って速やかに送付し、並びに国際監視制度によって得られた関連するデータ、要請締約国及び被査察締約国による査察についての評価並びに事務局長が関連すると認めるその他の情報を速やかに送付する。もっとも、47に規定する査察の経過報告については、47に定める時間的な枠組みの範囲内で執行理事会に送付する。
65 執行理事会は、その権限及び任務に従い、64の規定に従って送付された査察報告及び資料を検討し、並びに次の問題を検討する。
⒜ この条約の違反があったか否か。
⒝ 現地査察を要請する権利が濫用されたか否か。
66 執行理事会は、その権限及び任務に従い65の規定に関して更に措置が必要となるとの結論に達する場合には、次条の規定に基づいて適当な措置をとる。
根拠がない又は濫用された現地査察の要請
67 執行理事会は、現地査察の要請の根拠がないということ若しくは現地査察の要請が濫用されたということを根拠として現地査察を承認しない場合又はこれらの理由により査察が終了する場合には、事態を是正するための適当な措置をとるか否かについて検討し及び決定する。当該措置には、次のことを含む。
⒜ 技術事務局が行った準備に係る費用を支払うよう要請締約国に対して要求すること。
⒝ 執行理事会が決定する一定の期間要請締約国の現地査察を要請する権利を停止すること。
⒞ 一定の期間要請締約国の執行理事会の理事国としての任務を遂行する権利を停止すること。
E 信頼の醸成についての措置
68 締約国は、次のことのため、議定書第三部に規定する関連する措置を実施するに当たり、機関及び他の締約国と協力することを約束する。
⒜ 化学的爆発に関連する検証のためのデータを誤って解釈することから生ずるこの条約の遵守についての懸念を適時に解決することに貢献すること。
⒝ 国際監視制度の観測所網の一部である観測所の特性を把握することについて援助すること。

第五条 事態を是正し及びこの条約の遵守を確保するための措置(制裁を含む。)
1 会議は、特に執行理事会の勧告を考慮して、この条約の遵守を確保し並びにこの条約に違反する事態を是正し及び改善するため、2及び3に規定する必要な措置をとる。
2 締約国が自国によるこの条約の遵守に関して問題を引き起こしている事態を是正することを会議又は執行理事会によって要請され、かつ、一定の期間内に当該要請に応じなかった場合には、会議は、特に、当該締約国がこの条約に基づく権利及び特権を行使することを、別段の決定を行うまでの間制限し又は停止することを決定することができる。
3 この条約の基本的義務の違反によってこの条約の趣旨及び目的に対する障害が生ずる可能性のある場合には、会議は、締約国に対して国際法に適合する集団的措置を勧告することができる。
4 会議又は事態が緊急である場合には執行理事会は、問題(関連する情報及び判断を含む。)について国際連合の注意を喚起することができる。

第六条 紛争の解決
1 この条約の適用又は解釈に関して生ずる紛争については、この条約の関連規定に従って及び国際連合憲章の規定によって解決する。
2 この条約の適用又は解釈に関して二以上の締約国間で又は一若しくは二以上の締約国と機関との間で紛争が生ずる場合には、関係当事者は、交渉又は当該関係当事者が選択するその他の平和的手段(この条約に規定する適当な内部機関に対して提起すること及び合意により国際司法裁判所規程に従って国際司法裁判所に付託することを含む。)によって紛争を速やかに解決するため、協議する。関係当事者は、いかなる措置がとられるかについて常時執行理事会に通報する。
3 執行理事会は、適当と認める手段(あっせんを提供すること、紛争当事国である締約国に対し当該締約国が選択する手続を通じて解決を求めるよう要請すること、問題について会議の注意を喚起すること及び合意された手続に従って解決するための期限を勧告することを含む。)により、この条約の適用又は解釈に関して生ずる紛争の解決に貢献することができる。
4 会議は、締約国が提起し又は執行理事会が注意を喚起する紛争に関係する問題を検討する。会議は、必要と認める場合には、第二条26⒥の規定に従い、これらの紛争の解決に関連して補助機関を設置し又は補助機関に任務を委託する。
5 会議及び執行理事会は、それぞれ、国際連合総会が許可することを条件として、機関の活動の範囲内において生ずる法律問題について勧告的意見を与えるよう国際司法裁判所に要請する権限を与えられる。このため、第二条38⒣の規定に従って機関と国際連合との間の協定を締結する。
6 この条の規定は、前二条の規定を害するものではない。

第七条 改正
1 いずれの締約国も、この条約が効力を生じた後いつでもこの条約、議定書又は議定書の附属書の改正を提案することができるものとし、7の規定に従って識定書又はその附属書の修正を提案することができる。改正のための提案は、2から6までに定める手続に従う。7に規定する修正のための提案は、8に定める手続に従う。
2 改正案は、改正会識においてのみ検討され及び採択される。
3 改正のための提案については、事務局長に通報するものとし、事務局長は、当該改正のための提案をすべての締約国及び寄託者に対して回章に付し、当該改正のための提案を検討するために改正会議を開催するべきか否かについての締約国の見解を求める。事務局長は、締約国の過半数が当該改正のための提案を更に検討することを支持する旨を当該改正のための提案の回章の後三十日以内に事務局長に通報する場合には、すべての締約国が招請される改正会議を招集する。
4 改正会議は、その開催を支持するすべての締約国が一層早期の開催を要請する場合を除くほか、会議の通常会期の後直ちに開催される。いかなる場合にも、改正会議は、改正案の回章の後六十日を経過するまでは開催されない。
5 改正は、改正会議において、いかなる締約国も反対票を投ずることなく締約国の過半数が賛成票を投ずることによって採択される。
6 改正は、改正会議において賛成票を投じたすべての締約国が批准書又は受諾書を寄託した後三十日で、すべての締約国について効力を生ずる。
7 この条約の実行可能性及び実効性を確保するため、議定書の第一部及び第三部並びに議定書の附属書一及び附属書二の規定は、修正案が運営上の又は技術的な性質の事項にのみ関連する場合には、8の規定に従って行われる修正の対象とされる。議定書及びその附属書のその他のすべての規定は、8の規定に従って行われる修正の対象とされない。
8 7に規定する修正については、次の手続に従って行う。
⒜ 修正案については、必要な情報と共に事務局長に送付する。すべての締約国及び事務局長は、当該修正案を評価するための追加の情報を提供することができる。事務局長は、すべての締約国、執行理事会及び寄託者に対して当該修正案及び情報を速やかに通報する。
⒝ 事務局長は、修正案を受領した後六十日以内に、この条約及びその実施に及ぼし得るすべての影響を把握するために当該修正案を評価するものとし、その結果についての情報をすべての締約国及び執行理事会に通報する。
⒞ 執行理事会は、すべての入手可能な情報に照らして修正案を検討する(当該修正案が7に定める要件を満たしているか否かについて検討することを含む。)。執行理事会は、当該修正案を受領した後九十日以内に、適当な説明を付して、執行理事会の勧告を検討のためにすべての締約国に通報する。締約国は、十日以内に当該勧告の受領を確認する。
⒟ 修正案が採択されるよう執行理事会がすべての締約国に勧告する場合において、いずれの締約国もその勧告を受領した後九十日以内に異議を申し立てないときは、当該修正案は、承認されたものとみなされる。修正案が拒否されるよう執行理事会が勧告する場合において、いずれの締約国もその勧告を受領した後九十日以内に異議を申し立てないときは、当該修正案は、拒否されたものとみなされる。
⒠ 執行理事会の勧告が⒟の規定に従って受け入れられない場合には、会議は、次の会期において修正案についての決定(当該修正案が7に定める要件を満たしているか否かについての決定を含む。)を実質事項として行う。
⒡ 事務局長は、この8に規定する決定をすべての締約国及び寄託者に通報する。
⒢ この8に定める手続に従って承認された修正は、他の期間を執行理事会が勧告し又は会議が決定する場合を除くほか、すべての締約国につき、事務局長がその承認を通報した日の後百八十日で効力を生ずる。

第八条 この条約の検討
1 締約国の過半数による議決で別段の決定を行う場合を除くほか、前文の趣旨及び目的の実現並びにこの条約の遵守を確保するようにこの条約の運用及び実効性を検討するため、この条約の効力発生の十年後に締約国会議を開催する。その検討に際しては、この条約に関連するすべての科学及び技術の進歩を考慮する。検討会議は、締約国の要請に基づき平和的目的のための地下における核爆発の実施を認める可能性について検討する。検討会議は、コンセンサス方式により当該地下における核爆発を認めることができることを決定する場合には、この条約の適当な改正であって当該地下における核爆発によって軍事上の利益が生ずることを排除するものを締約国に勧告するために遅滞なく作業を開始する。その改正案については、いずれかの締約国が事務局長に通報し、及び前条の規定に従って取り扱う。
2 その後十年ごとに、会議がその前年に手続事項として決定する場合には、同様の目的をもって更に検討会議を開催することができる。会議が実質事項として決定する場合には、十年よりも短い間隔でそのような検討会議を開催することができる。
3 検討会議は、通常、第二条に規定する会議の年次通常会期の後直ちに開催される。

第九条 有効期間及び脱退
1 この条約の有効期間は、無期限とする。
2 締約国は、この条約の対象である事項に関係する異常な事態が自国の至高の利益を危うくしていると認める場合には、その主権を行使してこの条約から脱退する権利を有する。
3 脱退は、他のすべての締約国、執行理事会、寄託者及び国際連合安全保障理事会に対してその六箇月前に通告することによって行う。脱退の通告には、締約国が自国の至高の利益を危うくしていると認める異常な事態についても記載する。

第十条 議定書及び附属書の地位
この条約の附属書、議定書及び議定書の附属書は、この条約の不可分の一部を成す。「この条約」というときは、この条約の附属書、議定書及び議定書の附属書を含めていうものとする。

第十一条 署名
この条約は、効力を生ずる前は署名のためにすべての国に開放しておく。

第十二条 批准
この条約は、署名国により、それぞれ自国の憲法上の手続に従って批准されなければならない。

第十三条 加入
この条約が効力を生ずる前にこの条約に署名しない国は、その後はいつでもこの条約に加入することができる。

第十四条 効力発生
1 この条約は、その附属書二に掲げるすべての国の批准書が寄託された日の後百八十日で効力を生ずる。ただし、いかなる場合にも、署名のための開放の後二年を経過するまで効力を生じない。
2 この条約がその署名のための開放の日の後三年を経過しても効力を生じない場合には、寄託者は、既に批准書を寄託している国の過半数の要請によってこれらの国の会議を招集する。この会議は、1に定める要件が満たされている程度について検討し並びに、この条約が早期に効力を生ずることを容易にするため、批准の過程を促進するため国際法に適合するいかなる措置をとることができるかについて検討し及びコンセンサス方式によって決定する。
3 2に定める手続は、2に規定する会議又はその後のそのような会議が別段の決定を行わない限り、この条約が効力を生ずるまで、その後のこの条約の署名のための開放の日に対応する各年の日について繰り返し適用される。
4 すべての署名国は、2に規定する会議及び3に規定するその後の会議にオブザーバーとして出席するよう招請される。
5 この条約は、その効力を生じた後に批准書又は加入書を寄託する国については、その批准書又は加入書の寄託の日の後三十日目の日に効力を生ずる。

第十五条 留保
この条約の各条の規定及びこの条約の附属書については、留保を付することができない。この条約の議定書及びその附属書については、この条約の趣旨及び目的と両立しない留保を付することができない。

第十六条 寄託者
1 この条約の寄託者は、国際連合事務総長とするものとし、同事務総長は、署名を受け付け並びに批准書及び加入書を受領する。
2 寄託者は、すべての署名国及び加入国に対して、各署名の日、各批准書又は各加入書の寄託の日、この条約並びにこの条約の改正及び修正の効力発生の日並びにその他の事項に係る通告の受領を速やかに通報する。
3 寄託者は、この条約の認証謄本を署名国政府及び加入国政府に送付する。
4 この条約は、寄託者が国際連合憲章第百二条の規定に従つて登録する。

第十七条 正文
この条約は、アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語をひとしく正文とし、国際連合事務総長に寄託する。

条約の附属書 (略)

   「ウィキソース」より

〇同じ日の過去の出来事(以前にブログで紹介した記事)

1744年(延享元)江戸時代中期の思想家・石門心学の祖石田梅岩の命日(新暦10月29日)詳細
1877年(明治10)薩摩藩士・軍人・政治家西郷隆盛が西南戦争に敗れ、城山で自刃する詳細
1901年(明治34)歴史学者服部之総の誕生日詳細
1945年(昭和20)GHQが「政府からの報道の分離の件」(SCAPIN-51)を出す詳細
1966年(昭和41)熊本県の天草五橋(パールライン)が開通した日詳細
1971年(昭和46)「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(昭和45年12月25日公布)が施行される(清掃の日)詳細
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SDGs0001
 今日は、平成時代の2015年(平成27)に、第70回国連総会で「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が全会一致で採択された日です。
 「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(じぞくかのうなかいはつのための2030あじぇんだ)は、2015年(平成27)9月25日の国連総会で採択された国際社会共通の目標・行動計画(アジェンダ)でした。貧困の撲滅などを目指し、2001年(平成13)にまとめられた「ミレニアム開発目標」(Millennium Development Goals: MDGs)が、2015年(平成27)に未達成の分野を残したまま期限となったことから、その後継として、貧困や不平等のない、気候変動に対応した持続可能な社会実現のため、向こう15年間(2030年まで)の新たな「持続可能な開発」(Sustainable Development Goals: SDGs) の指針として策定されたものです。
 内容は、17の目標(①貧困をなくそう、②飢餓をゼロに、③すべての人に健康と福祉を、④質の高い教育をみんなに、⑤ジェンダー平等を実現しよう、⑥安全な水とトイレを世界中に、⑦エネルギーをみんなに・そしてクリーンに、⑧働きがいも経済成長も、⑨産業と技術革新の基盤をつくろう、⑩人や国の不平等をなくそう、⑪住み続けられるまちづくりを、⑫つくる責任・つかう責任、⑬気候変動に具体的な対策を、⑭海の豊かさを守ろう、⑮陸の豊かさも守ろう、⑯平和と公正をすべての人に、⑰パートナーシップで目標を達成しよう)と169の具体的目標からなっていました。国際連合に加盟する全193カ国が合意し、2016年(平成28)に正式に発効し、翌年には、国連総会で、ターゲットの進ちょく状況を測定するための具体的な数値などを示した全244(重複を除くと232)からなる指標枠組みが承認されています。
 以下に、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(仮訳)を掲載しておきますので、ご参照下さい。

〇「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(仮訳) 2015年9月25日第70回国連総会で採択 

前文
このアジェンダは、人間、地球及び繁栄のための行動計画である。これはまた、より大きな自由における普遍的な平和の強化を追求ものでもある。我々は、極端な貧困を含む、あらゆる形態と側面の貧困を撲滅することが最大の地球規模の課題であり、持続可能な開発のための不可欠な必要条件であると認識する。
すべての国及びすべてのステークホルダーは、協同的なパートナーシップの下、この計画を実行する。我々は、人類を貧困の恐怖及び欠乏の専制から解き放ち、地球を癒やし安全にすることを決意している。我々は、世界を持続的かつ強靱(レジリエント)な道筋に移行させるために緊急に必要な、大胆かつ変革的な手段をとることに決意している。我々はこの共同の旅路に乗り出すにあたり、誰一人取り残さないことを誓う。
今日我々が発表する17の持続可能な開発のための目標(SDGs)と、169のターゲットは、この新しく普遍的なアジェンダの規模と野心を示している。これらの目標とターゲットは、ミレニアム開発目標(MDGs)を基にして、ミレニアム開発目標が達成できなかったものを全うすることを目指すものである。これらは、すべての人々の人権を実現し、ジェンダー平等とすべての女性と女児のエンパワーメントを達成することを目指す。これらの目標及びターゲットは、統合され不可分のものであり、持続可能な開発の三側面、すなわち経済、社会及び環境の三側面を調和させるものである。
これらの目標及びターゲットは、人類及び地球にとり極めて重要な分野で、向こう15年間にわたり、行動を促進するものになろう。
人間
我々は、あらゆる形態及び側面において貧困と飢餓に終止符を打ち、すべての人間が尊厳と平等の下に、そして健康な環境の下に、その持てる潜在能力を発揮することができることを確保することを決意する。
地球
我々は、地球が現在及び将来の世代の需要を支えることができるように、持続可能な消費及び生産、天然資源の持続可能な管理並びに気候変動に関する緊急の行動をとることを含めて、地球を破壊から守ることを決意する。
繁栄
我々は、すべての人間が豊かで満たされた生活を享受することができること、また、経済的、社会的及び技術的な進歩が自然との調和のうちに生じることを確保することを決意する。
平和
我々は、恐怖及び暴力から自由であり、平和的、公正かつ包摂的な社会を育んでいくことを決意する。平和なくしては持続可能な開発はあり得ず、持続可能な開発なくして平和もあり得ない。
パートナーシップ
我々は、強化された地球規模の連帯の精神に基づき、最も貧しく最も脆弱な人々の必要に特別の焦点をあて、全ての国、全てのステークホルダー及び全ての人の参加を得て、再活性化された「持続可能な開発のためのグローバル・パートナーシップ」を通じてこのアジェンダを実施するに必要とされる手段を動員することを決意する。
持続可能な開発目標の相互関連性及び統合された性質は、この新たなアジェンダ(以後「新アジェンダ」と呼称)の目的が実現されることを確保する上で極めて重要である。もし我々がこのアジェンダのすべての範囲にわたり自らの野心を実現することができれば、すべての人々の生活は大いに改善され、我々の世界はより良いものへと変革されるであろう。

宣言 (注:各パラ冒頭のカッコ書きは仮訳用に便宜上付したもの)
導入部
1.我々、国家元首、政府の長その他の代表は、国連が70周年を迎えるにあたり、2015年9月25日から27日までニューヨークの国連本部で会合し、今日、新たな地球規模の持続可能な開発目標を決定した。
2.(総論)我々の国民に代わり、我々は、包括的、遠大かつ人間中心な一連の普遍的かつ変革的な目標とターゲットにつき、歴史的な決定を行った。我々は、このアジェンダを2030年までに完全に実施するために休みなく取り組むことにコミットする。我々は、極端な貧困を含む、あらゆる形態と様相の貧困を撲滅することが最も大きな地球規模の課題であり、持続可能な開発のための不可欠な必要条件であると認識する。我々は、持続可能な開発を、経済、社会及び環境というその三つの側面において、バランスがとれ統合された形で達成することにコミットしている。我々はまた、ミレニアム開発目標の達成を基にして、その未完の課題に取り組むことを追求する。
3.(取り組むべき課題)我々は、2030年までに以下のことを行うことを決意する。あらゆる貧困と飢餓に終止符を打つこと。国内的・国際的な不平等と戦うこと。平和で、公正かつ包摂的な社会をうち立てること。人権を保護しジェンダー平等と女性・女児のエンパワーメントを進めること。地球と天然資源の永続的な保護を確保すること。そしてまた、我々は、持続可能で、包摂的で持続的な経済成長、共有された繁栄及び働きがいのある人間らしい仕事のための条件を、各国の発展段階の違い及び能力の違いを考慮に入れた上で、作り出すことを決意する。
4.(誰一人取り残さない)この偉大な共同の旅に乗り出すにあたり、我々は誰も取り残されないことを誓う。人々の尊厳は基本的なものであるとの認識の下に、目標とターゲットがすべての国、すべての人々及び社会のすべての部分で満たされることを望む。そして我々は、最も遅れているところに第一に手を伸ばすべく努力する。
5.(新アジェンダの特徴)このアジェンダは前例のない範囲と重要性を持つものである。このアジェンダは、各国の現実、能力及び発展段階の違いを考慮に入れ、かつ各国の政策及び優先度を尊重しつつ、すべての国に受け入れられ、すべての国に適用されるものである。これらは、先進国、開発途上国も同様に含む世界全体の普遍的な目標とターゲットである。これらは、統合され不可分のものであり、持続可能な開発の三側面をバランスするものである。
6.(これまでの経緯)最も貧しく最も脆弱なところからの声に特別な注意を払いながら市民社会及びその他のステークホルダーとの間で行われた2年以上にわたる公開のコンサルテーション及び関与の結果、この目標とターゲットができた。このコンサルテーションは、持続可能な開発に関する公開作業部会及び国連による重要な作業を含むものであり、事務総長は2014年12月に統合報告書を提出している。
我々のビジョン
7.(目指すべき世界像)これらの目標とターゲットにおいて、我々は最高に野心的かつ変革的なビジョンを設定している。我々は、すべての人生が栄える、貧困、飢餓、病気及び欠乏から自由な世界を思い描く。我々は、恐怖と暴力から自由な世界を思い描く。すべての人が読み書きできる世界。すべてのレベルにおいて質の高い教育、保健医療及び社会保護に公平かつ普遍的にアクセスできる世界。身体的、精神的、社会的福祉が保障される世界。安全な飲料水と衛生に関する人権を再確認し、衛生状態が改善している世界。十分で、安全で、購入可能、また、栄養のある食料がある世界。住居が安全、強靱(レジリエント)かつ持続可能である世界。そして安価な、信頼でき、持続可能なエネルギーに誰もがアクセスできる世界。
8.(目指すべき世界像)我々は、人権、人の尊厳、法の支配、正義、平等及び差別のないことに対して普遍的な尊重がなされる世界を思い描く。人種、民族及び文化的多様性に対して尊重がなされる世界。人間の潜在力を完全に実現し、繁栄を共有することに資することができる平等な機会が与えられる世界。子供たちに投資し、すべての子供が暴力及び搾取から解放される世界。すべての女性と女児が完全なジェンダー平等を享受し、そのエンパワーメントを阻む法的、社会的、経済的な障害が取り除かれる世界。そして、最も脆弱な人々のニーズが満たされる、公正で、衡平で、寛容で、開かれており、社会的に包摂的な世界。
9.(目指すべき世界像)我々は、すべての国が持続的で、包摂的で、持続可能な経済成長と働きがいのある人間らしい仕事を享受できる世界を思い描く。消費と生産パターン、そして空気、土地、河川、湖、帯水層、海洋といったすべての天然資源の利用が持続可能である世界。民主主義、グッド・ガバナンス、法の支配、そしてまたそれらを可能にする国内・国際環境が、持続的で包摂的な経済成長、社会開発、環境保護及び貧困・飢餓撲滅を含めた、持続可能な開発にとってきわめて重要である世界。技術開発とその応用が気候変動に配慮しており、生物多様性を尊重し、強靱(レジリエント)なものである世界。人類が自然と調和し、野生動植物その他の種が保護される世界。
我々の共有する原則と約束
10.(主要原則)新アジェンダは、国際法の尊重を含め、国連憲章の目的と原則によって導かれる。世界人権宣言、国際人権諸条約、ミレニアム宣言及び2005年サミット成果文書にも基礎を置く。また、「発展の権利に関する宣言」などその他の合意も参照される。
11.(関連する主要国連会議)我々は、持続可能な開発のための確固たる基礎を築き、この新アジェンダを形作るのを助けたすべての主要な国連会議及びサミットの成果を再確認する。これらは、「環境と開発に関するリオ宣言」、「持続可能な開発に関する世界首脳会議」、「世界社会開発サミット」、「国際人口・開発会議(ICPD)行動計画」、「北京行動綱領」(第4回世界女性会議)、「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」を含む。我々はまた、「第4回後発開発途上国(LDCs)会議」、「第3回小島嶼開発途上国(SIDS)会議」、「第2回内陸開発途上国(LLDCs)会議」及び「第3回国連防災世界会議」を含め、これらの会議のフォローアップを再確認する。
12.(共通だが差異のある責任)我々は、「環境と開発に関するリオ宣言」のすべての原則、とりわけ、その第7原則にあるように共通だが差異ある責任の原則を再確認する。
13.(統合されたアプローチの重要性)これらの主要な会議及びサミットの課題並びにコミットメントは、相互に関連しており、統合された解決が必要である。これらに効果的に対処するために、新たなアプローチが必要である。持続可能な開発が意味するところでは、すべての形態及び側面の貧困撲滅、国内的・国際的不平等との戦い、地球の維持、持続的・包摂的・持続可能な経済成長を作り出すこと、並びに社会的包摂性を生み出すことは、お互いに関連し合っており、相互に依存している。
今日の世界
14.(直面する課題)我々は、持続可能な開発に対する大きな課題に直面している。依然として数十億人の人々が貧困のうちに生活し、尊厳のある生活を送れずにいる。国内的、国際的な不平等は増加している。機会、富及び権力の不均衡は甚だしい。ジェンダー平等は依然として鍵となる課題である。失業、とりわけ若年層の失業は主たる懸念である。地球規模の健康の脅威、より頻繁かつ甚大な自然災害、悪化する紛争、暴力的過激主義、テロリズムと関連する人道危機及び人々の強制的な移動は、過去数十年の開発の進展の多くを後戻りさせる恐れがある。天然資源の減少並びに、砂漠化、干ばつ、土壌悪化、淡水の欠乏及び生物多様性の喪失を含む環境の悪化による影響は、人類が直面する課題を増加し、悪化させる。我々の時代において、気候変動は最大の課題の一つであり、すべての国の持続可能な開発を達成するための能力に悪影響を及ぼす。世界的な気温の上昇、海面上昇、海洋の酸性化及びその他の気候変動の結果は、多くの後発開発途上国、小島嶼開発途上国を含む沿岸地帯及び低地帯の国々に深刻な影響を与えている。多くの国の存続と地球の生物維持システムが存続の危機に瀕している。
15.(チャンス)しかしながら、大きな機会の時でもある。多くの開発の課題に対応するために重要な進展があった。過去の世代において、数百万人の人が極度の貧困から脱した。教育へのアクセスは少年少女いずれに対しても大きく増加した。ICTと地球規模の接続性は人間の進歩を加速化させ、デジタルデバイドを埋め、知識社会を発展させる大きな潜在力があり、医学やエネルギーのように多様な幅広い分野において科学技術イノベーションが持つ潜在力もまた同様である。
16.(MDGsで残された課題への対応)およそ15年前、ミレニアム開発目標(MDGs)が合意された。これらは、開発のための重要な枠組みを与え、多くの分野で重要な進展が見られた。しかしながら、進展にはばらつきがあり、それはアフリカ、後発開発途上国、内陸開発途上国、小島嶼開発途上国で特にそうである。いくつかの目標、特に母子保健及び性と生殖に関する健康の目標は依然として達成に向けての軌道に乗っていない。我々は、このような外れた目標を含めて、すべてのMDGsの完全な達成に向けて、とりわけ後発開発途上国など重視すべき国に対して焦点をあてて拡大した支援を、適切な支援プログラムに沿って供与することを再度約束する。新アジェンダはミレニアム開発目標を基礎として、ミレニアム開発目標が達成できなかったもの、とりわけ最も脆弱な部分に取り組むことにより、これを完遂することを目指す。
17.(MDGsを超える課題への対応)我々が今日発表する枠組みは、そのスコープにおいてミレニアム開発目標を遙かに越えるものである。貧困撲滅、保健、教育及び食料安全保障と栄養といった継続的な開発分野の優先項目に加えて、この枠組みは、幅広い経済・社会・環境の目的を提示している。また、より平和かつ包摂的な社会も約束している。さらに重要なことは、実施手段も提示している。我々が決定した統合的なアプローチを反映して、新たな目標とターゲットには、深い相互関連性とクロスカッティングな要素がある。
新アジェンダ
18.(総論)本日、我々が発表する17の持続可能な開発目標と169の関連づけられたターゲットは、統合され不可分のものである。このような広範でユニバーサルな政策目標について、世界の指導者が共通の行動と努力を表明したことは未だかつてなかった。持続可能な開発に向けた道を進むにあたって、すべての国や地域に進展をもたらすウィン・ウィンの協力と地球規模の開発のために我々が一つとなって身を費やすことを決めた。すべての国はその固有の財産、自然資源及び経済活動に対して恒久の主権を有しており、またその権利を自由に行使することを確認する。我々は現在及び将来の世代の益のためのこのアジェンダを実施する。そのために、我々は国際法に対するコミットメントを確認するとともに、新たな開発目標は、国際法の下での権利と義務に整合する形で実施することを確認する。
19.(人権)我々は、世界人権宣言及びその他の人権に関する国際文書並びに国際法の重要性を確認する。我々は、すべての国が国連憲章に則り、人種、肌の色、性別、言語、宗教、政治若しくは信条、国籍若しくは社会的出自、貧富、出生、障害等の違いに関係なく、すべての人の人権と基本的な自由の尊重、保護及び促進責任を有することを強調する。
20.(ジェンダー)ジェンダー平等の実現と女性・女児のエンパワーメントは、すべての目標とターゲットにおける進展において死活的に重要な貢献をするものである。人類の潜在力の開花と持続可能な開発の達成は、人類の半数に上る(女性)の権利と機会が否定されている間は達成することができない。女性と女児は、質の高い教育、経済的資源への公平なアクセス、また、あらゆるレベルでの政治参加、雇用、リーダーシップ、意思決定において男性と同等の機会を享受するべきである。我々は、ジェンダー・ギャップを縮めるための投資を顕著に増加するために努力するとともに国、地域及びグローバルの各レベルにおいてジェンダー平等と女性のエンパワーメントを推進する組織への支援を強化する。女性と女児に対するあらゆる形態の暴力は男性及び男子の参加も得てこれを廃絶していく。新たなアジェンダの実施において、ジェンダーの視点をシステマティックに主流化していくことは不可欠である。
21.(差別化)新たな目標とターゲットは2016年1月から効力を持ち、向こう15年間における我々の決定をガイドする。我々は、各国の各々の現実、能力、開発段階、政策、優先課題を考慮に入れながら、国、地域、グローバル・レベルで新目標を実施する。我々は、関連する国際規範やコミットメントと整合性を維持しつつ、持続的で包摂的かつ持続可能な経済開発を目指していくための各国の政策余地を尊重する。また、我々は持続可能な開発における、地域の側面、地域経済統合及び連結性の重要性をも認識する。地域レベルでの枠組みは、国レベルで持続可能な開発政策の具体的な実施を後押しすることにつながる。
22.(特別な課題を持つ国々)各々の国は、持続可能な開発を実現していく上で特有の課題に直面している。最も脆弱な国々、特にアフリカ諸国、後発開発途上国、内陸開発途上国、小島嶼開発途上国は、紛争下や紛争後国と同様に特別な配慮を必要としている。同様に、多くの中所得国にも深刻な課題を抱えている。
23.(脆弱な人々)脆弱な人々はエンパワーメントがなされなければならない。新アジェンダに反映されている脆弱な人々とは、子供、若者、障害者(その内80%以上が貧困下にある)、HIV/エイズと共に生きる人々、高齢者、先住民、難民、国内避難民、移民を含む。また、我々は複合的な人道危機の影響を受けた地域に住む人々及びテロの影響を受けた人々が直面する困難や苦難を取り除き、脆弱な人々の特別なニーズに対する支援を強化すべく、国際法に照らしながら、更なる有効な措置及び行動をとる。
24.(食料安全保障)我々は、2030年までに極度の貧困を撲滅することを含む、すべての形態の貧困の終結にコミットする。すべての人々は社会保護制度を通じてすべての人が基礎的な生活水準を享受するべきである。また我々は、優先事項として飢餓を撲滅し、食料安全保障を実現するとともに、あらゆる形態の栄養不良を解消することを決意する。この観点から、我々は世界食料安全保障委員会の重要な役割と包摂的な性格を再確認するとともに「栄養に関するローマ宣言」及び「行動枠組」を歓迎する。我々は開発途上国、特に後発開発途上国における小自作農や女性の農民、遊牧民、漁業民への支援を通じて農村開発及び持続可能な農業・漁業発展のために資源を注ぎ込む。
25.(教育)我々は就学前から初等、中等、高等、技術、職業訓練等のすべてのレベルにおける包摂的で公正な質の高い教育を提供することにコミットする。性、年齢、人種、民族、に関係なくすべての人々が、また障害者、移民、先住民、子供、青年、脆弱な状況下にある人々が社会への十全な参加の機会を確保するために必要とされる技能や知識を獲得するめの生涯学習の機会を有するべきである。安全な学校及び結束力のある地域社会や家族等を通じ、国が人口ボーナスを享受できるようにすることにより、我々は、子供や若者に彼らの権利と能力を完全に実現するための育成環境を提供するよう努める。
26.(保健UHC)身体的及び精神的な健康と福祉の増進並びにすべての人々の寿命の延長のために、我々はユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)と質の高い保健医療へのアクセスを達成しなければならない。誰一人として取り残されてはならない。我々は、2030年までにこのような防ぐことのできる死をなくすことによって、新生児、子供、妊産婦の死亡を削減するために今日までに実現した進歩を加速することを約束する。家族計画、情報、教育を含む、性と生殖に関するサービスへの普遍的なアクセスを確保することに全力で取り組む。我々は、開発途上国においてはびこる薬剤耐性や対応されていない病気に関する問題への取組を含め、マラリア、HIV/エイズ、結核、肝炎、エボラ出血熱及びその他の感染病や伝染病に対して示された進歩の速度を等しく加速する。我々は、持続可能な開発に対する大きな挑戦の一つとなっている行動・発達・神経学的障害を含む非感染性疾患の予防や治療に取り組む。
27.(経済基盤)我々は、すべての国のために強固な経済基盤を構築するよう努める。包摂的で持続可能な経済成長の継続は、繁栄のために不可欠である。これは、富の共有や不平等な収入への対処を通じて可能となる。我々は、すべての人々のための働きがいのある人間らしい仕事をはじめとして若者の雇用促進、女性の経済的エンパワーメントの促進を通じダイナミックかつ持続可能な革新、人間中心の経済構築を目指す。我々は、強制労働や人身取引及びすべての形態の児童労働を根絶する。すべての国々は、生産性と職務を達成するために必要とされる知識や技能、社会に参入できる能力を備えた、健全で優れた教育を受けた労働人口を有する立場にある。我々は、後発開発途上国のあらゆるセクターにおける生産性向上のために構造改革を含む取組を行う。我々は、生産能力・生産性・生産雇用の増大、金融包摂、持続可能な農業・畜産・漁業開発、持続可能な工業開発、手頃で信頼できる持続可能な近代的エネルギー供給へのユニバーサルなアクセス、持続可能な輸送システム、質の高い強靱(レジリエント)なインフラにおいて、生産能力、生産性、生産雇用を増大させる政策を採用する。
28.(持続可能な消費・生産)我々は、社会における生産や消費、サービスのあり方について根本的な変革をすることにコミットする。政府、国際機関、企業、その他の非政府主体や個人は、開発途上国における持続可能な消費と生産を促進するための科学、技術、革新能力を獲得するための財政的、技術的支援等を通じてより持続可能な消費・生産パターンへの移行に貢献しなければならない。我々は、「持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組み」の実施を促進する。開発途上国の発展と能力を踏まえつつ、先進国がリードの下で、すべての国々が実行をする。
29.(移民)我々は、包括的成長と持続可能な開発に対する移民の積極的な貢献を認識している。また、他国への移住は、送出、通過、目的地となる各々の国の発展に大きく関連している多面的な実態の現実であり、首尾一貫した包括的な対応を必要とするということを認識する。我々は、移民に対し、その地位、難民及び避難民を問わず、人権の尊重や人道的な扱いを含む安全で秩序だった正規の移住のための協力を国際的に行う。このような協力は、特に開発途上国において難民を受け入れているコミュニティの強靱性(レジリエンス)を強化することにも注力すべきである。我々は、移民が市民権のある国へ帰国するための移民の権利を強調し、国家は帰国する自国民が正当に受け入れられることを保証しなければならないということを想起する。
30.(一方的経済措置の禁止)各国は、特に開発途上国において経済及び社会の発展を阻害し、国際法と国連憲章に合致しないような一方的経済・財政・貿易措置の公布及び適用を行うことを慎むよう強く求められている。
31.(気候変動)我々は、気候変動枠組条約が、気候変動に対する地球規模の対応を交渉するための主要な国際的、政府間フォーラムであるということを認める。我々は、気候変動や環境破壊によって引き起こされた脅威に対し断固として取り組む決意である。地球規模の気候変動の特徴を踏まえ、世界の温室効果ガス排出削減を加速し、気候変動による負の影響に対する適応を促進するための可能な限り広い国際協力が求められる。我々は、2020年までの世界の年間温室効果ガス排出に関する締約国の緩和約束の総体的効果と、世界の平均気温の上昇を産業革命以前と比べて2又は1.5℃以内に抑える可能性が高い総体的な排出の道筋との間に大きな隔たりがあることについて深刻な懸念をもって留意する。
32.(気候変動)12月のパリにおける第21回締約国会合を見据え、我々は、野心的で世界共通の気候合意にむけて取り組むというすべての国のコミットメントを強調する。我々は気候変動枠組条約の下で全ての締約国に適用される議定書、他の法的文書又は法的効力を有する合意成果は、均衡のとれた態様、とりわけ、緩和、適応、資金、技術開発・移転、能力構築、行動と支援に関する透明性等を扱うものとすることを再度確認する。
33.(天然資源、海洋、生物多様性等)我々は、社会的・経済的発展の鍵は、地球の天然資源の持続可能な管理にあると認識している。よって我々は、大洋、海、湖の他、森林や山、陸地を保存し、持続的に使用すること及び生物多様性、生態系、野生動物を保護することを決意する。また、我々は、持続可能な観光事業、水不足・水質汚染への取組を促進し、砂漠化、砂塵嵐、浸食作用、干ばつ対策を強化し、強靱性(レジリエンス)の構築と災害のリスク削減にむけた取組を強化する。この観点から我々は、2016年にメキシコで開催される生物多様性条約第13回締約国会議に期待を寄せている。
34.(都市発展、化学物質等)我々は、持続可能な都市開発とその管理は、我々の国民の生活の質を確保する上で欠くことができないことであるということを認識する。我々は、地域社会のつながりと安全の確保の他、イノベーションと雇用を促進するための都市や人間の居住地の更新、計画を実施するために地方政府やコミュニティと協働する。我々は、化学物質の環境上適正な管理と安全な使用、廃棄物の削減と再生利用、水とエネルギーのより有効な活用等を通じ、都市活動や人の健康と環境に有害な化学物質の負のインパクトを減らす。こうして、我々は、地球気候システムに対する都市の影響を最小化するよう努力する。また、我々は、国家・農村・都市の開発計画を策定する際に、人口動態と将来推計を踏まえて検討を行う。我々は、エクアドルの首都キトで開催が予定されている「人間居住と持続可能な都市開発に関する国連会議」に期待している。
35.(平和と安全)持続可能な開発は、平和と安全なくしては実現できない。同時に、平和と安全は、持続可能な開発なくしては危機に瀕するだろう。新アジェンダは、司法への平等なアクセスを提供し、(発展の権利を含む)人権の尊重、効果的な法の支配及び全てのレベルでのグッド・ガバナンス並びに透明、効果的かつ責任ある制度に基礎をおいた平和で、公正かつ、包摂的な社会を構築する必要性を認める。新アジェンダにおいては、不平等さ、腐敗、貧弱な統治、不正な資金や武器の取引といった暴力、不安及び不正義を引き起こす要因に焦点が当てられている。我々は、平和構築及び国家建設において女性が役割を担うことを確保することも含めて紛争の解決又は予防、及び紛争後の国々の支援のための努力を倍加しなければならない。我々は、経済的・社会的発展及び環境の面でも悪影響を及ぼし続けている植民地下及び外国占領下にある人民の自決の権利の完全な実現への障害を除去するために、国際法に合致する更なる効果的な手段と行動を求める。
36.(文化)我々は、文化間の理解、寛容、相互尊重、グローバル・シチズンシップとしての倫理、共同の責任を促進することを約束する。我々は、世界の自然と文化の多様性を認め、すべての文化・文明は持続可能な開発に貢献するばかりでなく、重要な成功への鍵であると認識する。
37.(スポーツ)スポーツもまた、持続可能な開発における重要な鍵となるものである。我々は、スポーツが寛容性と尊厳を促進することによる、開発及び平和への寄与、また、健康、教育、社会包摂的目標への貢献と同様、女性や若者、個人やコミュニティのエンパワーメントに寄与することを認識する。
38.(領土保全及び政治的独立)我々は、国連憲章に従って、国の領土保全及び政治的独立が尊重される必要があることを再確認する。
実施手段
39.新アジェンダの規模と野心は、その実施を確保するために活性化された「グローバル・パートナーシップ」を必要とする。我々は、全面的にこれにコミットする。このパートナーシップは、世界的連帯、特に、貧しい人々や脆弱な状況下にある人々に対する連帯の精神の下で機能する。それは、政府や民間セクター、市民社会、国連機関、その他の主体及び動員可能なあらゆる資源を動員して全ての目標とターゲットの実施のために地球規模レベルでの集中的な取組を促進する。
40.(実施手段、アディスアベバ行動目標との関係)目標17とそれぞれのSDG下における実施手段は、我々のアジェンダを実現する鍵であり、その他の目標とターゲットの重要さに匹敵する。SDGsを含むアジェンダは、持続可能な開発のための活性化されたグローバル・パートナーシップの枠組みの下で実現され、2015年7月13~16日、アディスアベバで開催された第3回開発資金国際会議成果文書に記載されている具体的な政策と行動によって支えられる。我々は、持続可能な開発のための2030アジェンダの不可欠な部分であるアディスアベバ行動目標が国連総会においてエンドースされたことを歓迎する。我々は、アディスアベバ行動目標の十分な実施は、持続可能な開発の目標とターゲットの実現に不可欠であることを認める。
41.(国家、民間セクターの役割)我々は、それぞれの国が自国の経済・社会発展のための第一義的な責任を有するということを認識する。新アジェンダは、その目標とターゲットの実施に必要とされる手段も含んでいる。これらの実施手段は財政的なリソースの動員をはじめとして、相互に同意された譲許的優遇的な条件で開発途上国に対し行われる環境に優しい技術の移転、能力構築を含むものであることを認める。国内及び国際社会による公的資金は、不可欠なサービスと公共財の供給及び他の資金源を呼び込む上できわめて重要な役割を果たす。我々は、小規模企業から多国籍企業、協同組合、市民社会組織や慈善団体等多岐にわたる民間部門が新アジェンダの実施における役割を有することを認知する。
42.(各種行動計画、アフリカ関連イニシアティブ、紛争)我々は、「イスタンブール宣言及び行動計画」、「サモア・パスウェー(SAMOApathway)」、「ウィーン行動計画」等の関連ある戦略及びプログラムの実施を支持する。また、新アジェンダにおいて不可欠であるアフリカ連合の「2063アジェンダ」と「アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)」のプログラムを支持することの重要性を再確認する。我々は、紛争下や紛争後の国々が永続的な平和と持続可能な開発を達成するための大きな課題を有していることを認識する。
43.(ODAの役割、コミットメントの再確認)我々は、国際的な公的資金が、国内、とりわけ限られた国内資源しかない最貧国や脆弱な国において、公的資源を国内的に動員するための取組を補完する上で重要な役割を果たすということを強調する。ODAを含む国際的な公的資金の重要な活用は、公的及び民間の他の資源からの追加的な資源を動員する触媒となるものである。ODA供与国は、開発途上国に対するODAをGNI比0.7%に、後発開発途上国に対するODAをGNI比0.15~0.2%にするという目標を達成するとの多くの先進国によるコミットメントを含め、それぞれのコミットメントを改めて確認する。
44.(国際金融機関の役割)我々は、国際金融機関が、特に開発途上国に対し、それぞれのマンデート及び各々の国の政策スペースに従って支援を行う重要性を認める。我々は、国際的な経済上の決定や国際的な経済面のガバナンスや規範に関する意思決定において、アフリカ諸国、後発開発途上国、内陸開発途上国、小島嶼開発途上国、中所得国も含む開発途上国の声と参入を普及し強化することにコミットする。
45.(国会議員、政府、公的機関の役割)我々は、新アジェンダのために必要とされる予算の可決と我々のコミットメントの効果的な実施に関する説明責任を確実なものとするために、国会議員が果たす不可欠な役割についても認識している。また、政府と公共団体は、地方政府、地域組織、国際機関、学究組織、慈善団体、ボランティア団体、その他の団体と密接に実施に取り組む。
46.(経社理、国連開発システム)我々は、SDGsと持続可能な開発の達成を支援するために、十分に資源に恵まれ、適切に、首尾一貫した、有効で効果的な国連システムが有する重要な役割を強調する。国レベルでのより強化されたオーナーシップ及びリーダーシップの重要性を強調する一方で、我々は、本アジェンダの文脈における経済社会理事会での「国連開発システムの長期的ポジショニングに関する対話」を支持する。
フォローアップとレビュー
47.次の15年に向けた目標とターゲットを実行する進歩に関し、各国政府が、国、地域、世界レベルでのフォローアップとレビューの第一義的な責任を有する。国民への説明責任を果たすため、我々は、本アジェンダ及びアディスアベバ行動目標に記されているとおり様々なレベルにおける体系的なフォローアップとレビューを行う。また、国連総会及び経済社会理事会の下で開催される「ハイレベル政治フォーラム」が、世界レベルのフォローアップとレビューを監督する主要な役割を持つ。
48.(本件アジェンダを達成するための)指標は、こうした(フォローアップ)活動を支援するために整備される。誰一人も取り残さないよう進捗を測定するためには、高品質で、アクセス可能、時宜を得た細分化されたデータが必要である。このようなデータは、政策決定の鍵となる。現存する報告メカニズムからのデータと情報は、可能な限り活用されるべきである。アフリカ諸国、後発開発途上国、内陸開発途上国、小島嶼開発途上国、中所得国をはじめとする開発途上国における、統計能力の強化のための努力を強化することに我々は合意する。我々は進捗を測定するために、GDP指標を補完する、より包括的な手法を開発することにコミットする。
我々の世界を変える行動の呼びかけ
49.(国連とそれを支える価値観)70年前、以前の世代の指導者たちが集まり、国際連合を作った。彼らは、戦争の灰と分裂から、国連とそれを支える価値、すなわち平和、対話と国際協力を作り上げた。これらの価値の最高の具体化が国連憲章である。
50.(新アジェンダの歴史的意義)今日我々もまた、偉大な歴史的重要性を持つ決定をする。我々は、すべての人々のためによりよい未来を作る決意である。人間らしい尊厳を持ち報われる生活を送り、潜在力を発揮するための機会が否定されている数百万という人々を含む全ての人々を対象とした決意である。我々は、貧困を終わらせることに成功する最初の世代になり得る。同様に、地球を救う機会を持つ最後の世代にもなるかも知れない。我々がこの目的に成功するのであれば2030年の世界はよりよい場所になるであろう。
51.(新アジェンダの歴史的意義)今日我々が宣言するものは、向こう15年間の地球規模の行動のアジェンダであるが、これは21世紀における人間と地球の憲章である。子供たち、若人たちは、変化のための重要な主体であり、彼らはこの目標に、行動のための無限の能力を、また、よりよい世界の創設にむける土台を見いだすであろう。
52.(人々を中心に据えたアジェンダ)「われら人民は」というのは国連憲章の冒頭の言葉である。今日2030年への道を歩き出すのはこの「われら人民」である。我々の旅路は、政府、国会、国連システム、国際機関、地方政府、先住民、市民社会、ビジネス・民間セクター、科学者・学会、そしてすべての人々を取り込んでいくものである。数百万の人々がすでにこのアジェンダに関与し、我が物としている。これは、人々の、人々による、人々のためのアジェンダであり、そのことこそが、このアジェンダを成功に導くと信じる。
53.(結語)人類と地球の未来は我々の手の中にある。そしてまた、それは未来の世代にたいまつを受け渡す今日の若い世代の手の中にもある。持続可能な開発への道を我々は記した。その道のりが成功し、その収穫が後戻りしないことを確かなものにすることは、我々すべてのためになるのである。
持続可能な開発目標(SDGs)とターゲット
54.(SDGs公開作業部会報告書)包摂的な政府間交渉プロセスを経て、且つ持続可能な開発に関する公開作業部会の提案、その中には同提案の背景を説明するシャポー1を含む、を踏まえ、下記の事項が、我々が合意した目標とターゲットである。
1 A68/970 ‘Report of the Open Working Group of the General Assembly on Sustainable Development Goals’を参照(同じくA 68/970 Add. 1も参照ありたい)
55.(各国の状況を踏まえた差別化)持続可能な開発目標(SDGs)とターゲットは、各国の置かれたそれぞれの現状、能力、発展段階、政策や優先課題を踏まえつつ、一体のもので分割できないものである。また、地球規模且つすべての国に対応が求められる性質のものである。ターゲットは、地球規模レベルでの目標を踏まえつつ、各国の置かれた状況を念頭に、各国政府が定めるものとなる。また、各々の政府は、これら高い目標を掲げるグローバルなターゲットを具体的な国家計画プロセスや政策、戦略に反映していくことが想定されている。持続可能な開発が経済、社会、環境分野の進行中のプロセスとリンクしていることをよく踏まえておくことが重要である。
56.(特別な課題を持つ国々)これらの目標とターゲットを決定するに当たって、我々は各国が持続可能な開発を達成するために特有の課題に直面していることを認識し、最も脆弱な国々、特にアフリカ諸国、後発開発途上国、内陸開発途上国、小島嶼開発途上国が直面している特別な課題とともに、中所得国が直面している特有の課題を強調する。また、紛争下にある国々も特別な配慮を必要としている。
57.(データ収集のための能力構築)我々は、いくつかのターゲットについては、基準データが入手困難であるということを認識し、まだ確立されていない国及び地球規模レベルの基準データを整備するための加盟国レベルでの能力構築及びデータ収集強化の支援を強く求める。我々は、以下のターゲットの内、特に明確な数値目標が掲げられていないものについて、その進捗をより的確に把握するために適切な対応をとることにコミットする。
58.(他のプロセスとの関係)我々のアジェンダの実施の妨げとなり得る課題に関する他のフォーラムでの各国の取組を歓迎する、また一方で、それらのプロセスの独自性も尊重する。我々は、本アジェンダ及びその実施が、他のプロセスやそこでの決定に対しこれに貢献することはあっても侵害することのないようにする。
59.(各国の差別化)我々は、持続可能な開発の達成に向け、それぞれの国が置かれた状況及び優先事項に基づき各々に違ったアプローチ、ビジョン、モデルや利用可能な手段が変わってくることを認識する。そして、我々は、地球という惑星及びその生態系が我々の故郷であり、「母なる地球」が多くの国及び地域において共通した表現であるということを再確認する。

持続可能な開発目標 ※公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)作成による仮訳をベースに編集
目標1. あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる
目標2. 飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する
目標3. あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する
目標4. すべての人々への包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する
目標5. ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児のエンパワーメントを行う
目標6. すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する
目標7. すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する
目標8. 包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する
目標9. 強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る
目標10. 各国内及び各国間の不平等を是正する
目標11. 包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する
目標12. 持続可能な生産消費形態を確保する
目標13. 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる*
目標14. 持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
目標15. 陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する
目標16. 持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する
目標17. 持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する
*国連気候変動枠組条約(UNFCCC)が、気候変動への世界的対応について交渉を行う基本的な国際的、政府間対話の場であると認識している。
目標1. あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる
1.1 2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。
1.2 2030年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、すべての年齢の男性、女性、子どもの割合を半減させる。
1.3 各国において最低限の基準を含む適切な社会保護制度及び対策を実施し、2030年までに貧困層及び脆弱層に対し十分な保護を達成する。
1.4 2030年までに、貧困層及び脆弱層をはじめ、すべての男性及び女性が、基礎的サービスへのアクセス、土地及びその他の形態の財産に対する所有権と管理権限、相続財産、天然資源、適切な新技術、マイクロファイナンスを含む金融サービスに加え、経済的資源についても平等な権利を持つことができるように確保する。
1.5 2030年までに、貧困層や脆弱な状況にある人々の強靱性(レジリエンス)を構築し、気候変動に関連する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境的ショックや災害に対する暴露や脆弱性を軽減する。
1.a あらゆる次元での貧困を終わらせるための計画や政策を実施するべく、後発開発途上国をはじめとする開発途上国に対して適切かつ予測可能な手段を講じるため、開発協力の強化などを通じて、さまざまな供給源からの相当量の資源の動員を確保する。
1.b 貧困撲滅のための行動への投資拡大を支援するため、国、地域及び国際レベルで、貧困層やジェンダーに配慮した開発戦略に基づいた適正な政策的枠組みを構築する。
目標2. 飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する
2.1 2030年までに、飢餓を撲滅し、すべての人々、特に貧困層及び幼児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料を十分得られるようにする。
2.2 5歳未満の子どもの発育阻害や消耗性疾患について国際的に合意されたターゲットを2025年までに達成するなど、2030年までにあらゆる形態の栄養不良を解消し、若年女子、妊婦・授乳婦及び高齢者の栄養ニーズへの対処を行う。
2.3 2030年までに、土地、その他の生産資源や、投入財、知識、金融サービス、市場及び高付加価値化や非農業雇用の機会への確実かつ平等なアクセスの確保などを通じて、女性、先住民、家族農家、牧畜民及び漁業者をはじめとする小規模食料生産者の農業生産性及び所得を倍増させる。
2.4 2030年までに、生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。
2.5 2020年までに、国、地域及び国際レベルで適正に管理及び多様化された種子・植物バンクなども通じて、種子、栽培植物、飼育・家畜化された動物及びこれらの近縁野生種の遺伝的多様性を維持し、国際的合意に基づき、遺伝資源及びこれに関連する伝統的な知識へのアクセス及びその利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分を促進する。
2.a 開発途上国、特に後発開発途上国における農業生産能力向上のために、国際協力の強化などを通じて、農村インフラ、農業研究・普及サービス、技術開発及び植物・家畜のジーン・バンクへの投資の拡大を図る。
2.b ドーハ開発ラウンドの決議に従い、すべての形態の農産物輸出補助金及び同等の効果を持つすべての輸出措置の並行的撤廃などを通じて、世界の農産物市場における貿易制限や歪みを是正及び防止する。
2.c 食料価格の極端な変動に歯止めをかけるため、食料市場及びデリバティブ市場の適正な機能を確保するための措置を講じ、食料備蓄などの市場情報への適時のアクセスを容易にする。
目標3. あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する
3.1 2030年までに、世界の妊産婦の死亡率を出生10万人当たり70人未満に削減する。
3.2 すべての国が新生児死亡率を少なくとも出生1,000件中12件以下まで減らし、5歳以下死亡率を少なくとも出生1,000件中25件以下まで減らすことを目指し、2030年までに、新生児及び5歳未満児の予防可能な死亡を根絶する。
3.3 2030年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する。
3.4 2030年までに、非感染性疾患による若年死亡率を、予防や治療を通じて3分の1減少させ、精神保健及び福祉を促進する。
3.5 薬物乱用やアルコールの有害な摂取を含む、物質乱用の防止・治療を強化する。
3.6 2020年までに、世界の道路交通事故による死傷者を半減させる。
3.7 2030年までに、家族計画、情報・教育及び性と生殖に関する健康の国家戦略・計画への組み入れを含む、性と生殖に関する保健サービスをすべての人々が利用できるようにする。
3.8 すべての人々に対する財政リスクからの保護、質の高い基礎的な保健サービスへのアクセス及び安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。
3.9 2030年までに、有害化学物質、ならびに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる。
3.a すべての国々において、たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約の実施を適宜強化する。
3.b 主に開発途上国に影響を及ぼす感染性及び非感染性疾患のワクチン及び医薬品の研究開発を支援する。また、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)及び公衆の健康に関するドーハ宣言に従い、安価な必須医薬品及びワクチンへのアクセスを提供する。同宣言は公衆衛生保護及び、特にすべての人々への医薬品のアクセス提供にかかわる「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」の柔軟性に関する規定を最大限に行使する開発途上国の権利を確約したものである。
3.c 開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国において保健財政及び保健人材の採用、能力開発・訓練及び定着を大幅に拡大させる。
3.d すべての国々、特に開発途上国の国家・世界規模な健康危険因子の早期警告、危険因子緩和及び危険因子管理のための能力を強化する。
目標4. すべての人々への、包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する
4.1 2030年までに、すべての女児及び男児が、適切かつ効果的な学習成果をもたらす、無償かつ公正で質の高い初等教育及び中等教育を修了できるようにする。
4.2 2030年までに、すべての女児及び男児が、質の高い乳幼児の発達支援、ケア及び就学前教育にアクセスすることにより、初等教育を受ける準備が整うようにする。
4.3 2030年までに、すべての女性及び男性が、手頃な価格で質の高い技術教育、職業教育及び大学を含む高等教育への平等なアクセスを得られるようにする。
4.4 2030年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。
4.5 2030年までに、教育におけるジェンダー格差を無くし、障害者、先住民及び脆弱な立場にある子どもなど、脆弱層があらゆるレベルの教育や職業訓練に平等にアクセスできるようにする。
4.6 2030年までに、すべての若者及び大多数(男女ともに)の成人が、読み書き能力及び基本的計算能力を身に付けられるようにする。
4.7 2030年までに、持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル、人権、男女の平等、平和及び非暴力的文化の推進、グローバル・シチズンシップ、文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする。
4.a 子ども、障害及びジェンダーに配慮した教育施設を構築・改良し、すべての人々に安全で非暴力的、包摂的、効果的な学習環境を提供できるようにする。
4.b 2020年までに、開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国、ならびにアフリカ諸国を対象とした、職業訓練、情報通信技術(ICT)、技術・工学・科学プログラムなど、先進国及びその他の開発途上国における高等教育の奨学金の件数を全世界で大幅に増加させる。
4.c 2030年までに、開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国における教員養成のための国際協力などを通じて、資格を持つ教員の数を大幅に増加させる。
目標5. ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児のエンパワーメントを行う
5.1 あらゆる場所におけるすべての女性及び女児に対するあらゆる形態の差別を撤廃する。
5.2 人身売買や性的、その他の種類の搾取など、すべての女性及び女児に対する、公共・私的空間におけるあらゆる形態の暴力を排除する。
5.3 未成年者の結婚、早期結婚、強制結婚及び女性器切除など、あらゆる有害な慣行を撤廃する。
5.4 公共のサービス、インフラ及び社会保障政策の提供、ならびに各国の状況に応じた世帯・家族内における責任分担を通じて、無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価する。
5.5 政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する。
5.6 国際人口・開発会議(ICPD)の行動計画及び北京行動綱領、ならびにこれらの検証会議の成果文書に従い、性と生殖に関する健康及び権利への普遍的アクセスを確保する。
5.a 女性に対し、経済的資源に対する同等の権利、ならびに各国法に従い、オーナーシップ及び土地その他の財産、金融サービス、相続財産、天然資源に対するアクセスを与えるための改革に着手する。
5.b 女性のエンパワーメント促進のため、ICTをはじめとする実現技術の活用を強化する。
5.c ジェンダー平等の促進、ならびにすべての女性及び女子のあらゆるレベルでのエンパワーメントのための適正な政策及び拘束力のある法規を導入・強化する。
目標6. すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する
6.1 2030年までに、すべての人々の、安全で安価な飲料水の普遍的かつ平等なアクセスを達成する。
6.2 2030年までに、すべての人々の、適切かつ平等な下水施設・衛生施設へのアクセスを達成し、野外での排泄をなくす。女性及び女子、ならびに脆弱な立場にある人々のニーズに特に注意を向ける。
6.3 2030年までに、汚染の減少、投棄廃絶と有害な化学物質や物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減及び再生利用と安全な再利用の世界的規模での大幅な増加させることにより、水質を改善する。
6.4 2030年までに、全セクターにおいて水の利用効率を大幅に改善し、淡水の持続可能な採取及び供給を確保し水不足に対処するとともに、水不足に悩む人々の数を大幅に減少させる。
6.5 2030年までに、国境を越えた適切な協力を含む、あらゆるレベルでの統合水資源管理を実施する。
6.6 2020年までに、山地、森林、湿地、河川、帯水層、湖沼などの水に関連する生態系の保護・回復を行う。
6.a 2030年までに、集水、海水淡水化、水の効率的利用、排水処理、リサイクル・再利用技術など、開発途上国における水と衛生分野での活動や計画を対象とした国際協力と能力構築支援を拡大する。
6.b 水と衛生に関わる分野の管理向上への地域コミュニティの参加を支援・強化する。
目標7. すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する
7.1 2030年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する。
7.2 2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。
7.3 2030年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。
7.a 2030年までに、再生可能エネルギー、エネルギー効率及び先進的かつ環境負荷の低い化石燃料技術などのクリーンエネルギーの研究及び技術へのアクセスを促進するための国際協力を強化し、エネルギー関連インフラとクリーンエネルギー技術への投資を促進する。
7.b 2030年までに、各々の支援プログラムに沿って開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国、内陸開発途上国のすべての人々に現代的で持続可能なエネルギーサービスを供給できるよう、インフラ拡大と技術向上を行う。
目標8. 包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する
8.1 各国の状況に応じて、一人当たり経済成長率を持続させる。特に後発開発途上国は少なくとも年率7%の成長率を保つ。
8.2 高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する。
8.3 生産活動や適切な雇用創出、起業、創造性及びイノベーションを支援する開発重視型の政策を促進するとともに、金融サービスへのアクセス改善などを通じて中小零細企業の設立や成長を奨励する。
8.4 2030年までに、世界の消費と生産における資源効率を漸進的に改善させ、先進国主導の下、持続可能な消費と生産に関する10カ年計画枠組みに従い、経済成長と環境悪化の分断を図る。
8.5 2030年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならび同一価値の労働についての同一賃金を達成する。
8.6 2020年までに、就労、就学及び職業訓練のいずれも行っていない若者の割合を大幅に減らす。
8.7 強制労働を根絶し、現代の奴隷制、人身売買を終らせるための緊急かつ効果的な措置の実施、最悪な形態の児童労働の禁止及び撲滅を確保する。2025年までに児童兵士の募集と使用を含むあらゆる形態の児童労働を撲滅する。
8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、すべての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。
8.9 2030年までに、雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業を促進するための政策を立案し実施する。
8.10 国内の金融機関の能力を強化し、すべての人々の銀行取引、保険及び金融サービスへのアクセスを促進・拡大する。
8.a 後発開発途上国への貿易関連技術支援のための拡大統合フレームワーク(EIF)などを通じた支援を含む、開発途上国、特に後発開発途上国に対する貿易のための援助を拡大する。
8.b 2020年までに、若年雇用のための世界的戦略及び国際労働機関(ILO)の仕事に関する世界協定の実施を展開・運用化する。
目標9. 強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る
9.1 すべての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラを開発する。
9.2 包摂的かつ持続可能な産業化を促進し、2030年までに各国の状況に応じて雇用及びGDPに占める産業セクターの割合を大幅に増加させる。後発開発途上国については同割合を倍増させる。
9.3 特に開発途上国における小規模の製造業その他の企業の、安価な資金貸付などの金融サービスやバリューチェーン及び市場への統合へのアクセスを拡大する。
9.4 2030年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。すべての国々は各国の能力に応じた取組を行う。
9.5 2030年までにイノベーションを促進させることや100万人当たりの研究開発従事者数を大幅に増加させ、また官民研究開発の支出を拡大させるなど、開発途上国をはじめとするすべての国々の産業セクターにおける科学研究を促進し、 技術能力を向上させる。
9.a アフリカ諸国、後発開発途上国、内陸開発途上国及び小島嶼開発途上国への金融・テクノロジー・技術の支援強化を通じて、開発途上国における持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラ開発を促進する。
9.b 産業の多様化や商品への付加価値創造などに資する政策環境の確保などを通じて、開発途上国の国内における技術開発、研究及びイノベーションを支援する。
9.c 後発開発途上国において情報通信技術へのアクセスを大幅に向上させ、2020年までに普遍的かつ安価なインターネット・アクセスを提供できるよう図る。
目標10. 各国内及び各国間の不平等を是正する
10.1 2030年までに、各国の所得下位40%の所得成長率について、国内平均を上回る数値を漸進的に達成し、持続させる。
10.2 2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、すべての人々のエンパワーメント及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。
10.3 差別的な法律、政策及び慣行の撤廃、ならびに適切な関連法規、政策、行動の促進などを通じて、機会均等を確保し、成果の不平等を是正する。
10.4 税制、賃金、社会保障政策をはじめとする政策を導入し、平等の拡大を漸進的に達成する。
10.5 世界金融市場と金融機関に対する規制とモニタリングを改善し、こうした規制の実施を強化する。
10.6 地球規模の国際経済・金融制度の意思決定における開発途上国の参加や発言力を拡大させることにより、より効果的で信用力があり、説明責任のある正当な制度を実現する。
10.7 計画に基づき良く管理された移住政策の実施などを通じて、秩序のとれた、安全で規則的かつ責任ある移住や流動性を促進する。
10.a 世界貿易機関(WTO)協定に従い、開発途上国、特に後発開発途上国に対する特別かつ異なる待遇の原則を実施する。
10.b 各国の国家計画やプログラムに従って、後発開発途上国、アフリカ諸国、小島嶼開発途上国及び内陸開発途上国を始めとする、ニーズが最も大きい国々への、政府開発援助(ODA)及び海外直接投資を含む資金の流入を促進する。
10.c 2030年までに、移住労働者による送金コストを3%未満に引き下げ、コストが5%を越える送金経路を撤廃する。
目標11. 包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する
11.1 2030年までに、すべての人々の、適切、安全かつ安価な住宅及び基本的サービスへのアクセスを確保し、スラムを改善する。
11.2 2030年までに、脆弱な立場にある人々、女性、子ども、障害者及び高齢者のニーズに特に配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、すべての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する。
11.3 2030年までに、包摂的かつ持続可能な都市化を促進し、すべての国々の参加型、包摂的かつ持続可能な人間居住計画・管理の能力を強化する。
11.4 世界の文化遺産及び自然遺産の保護・保全の努力を強化する。
11.5 2030年までに、貧困層及び脆弱な立場にある人々の保護に焦点をあてながら、水関連災害などの災害による死者や被災者数を大幅に削減し、世界の国内総生産比で直接的経済損失を大幅に減らす。
11.6 2030年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。
11.7 2030年までに、女性、子ども、高齢者及び障害者を含め、人々に安全で包摂的かつ利用が容易な緑地や公共スペースへの普遍的アクセスを提供する。
11.a 各国・地域規模の開発計画の強化を通じて、経済、社会、環境面における都市部、都市周辺部及び農村部間の良好なつながりを支援する。
11.b 2020年までに、包含、資源効率、気候変動の緩和と適応、災害に対する強靱さ(レジリエンス)を目指す総合的政策及び計画を導入・実施した都市及び人間居住地の件数を大幅に増加させ、仙台防災枠組2015-2030に沿って、あらゆるレベルでの総合的な災害リスク管理の策定と実施を行う。
11.c 財政的及び技術的な支援などを通じて、後発開発途上国における現地の資材を用いた、持続可能かつ強靱(レジリエント)な建造物の整備を支援する。
目標12. 持続可能な生産消費形態を確保する
12.1 開発途上国の開発状況や能力を勘案しつつ、持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組み(10YFP)を実施し、先進国主導の下、すべての国々が対策を講じる。
12.2 2030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。
12.3 2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる。
12.4 2020年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物資やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。
12.5 2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。
12.6 特に大企業や多国籍企業などの企業に対し、持続可能な取り組みを導入し、持続可能性に関する情報を定期報告に盛り込むよう奨励する。
12.7 国内の政策や優先事項に従って持続可能な公共調達の慣行を促進する。
12.8 2030年までに、人々があらゆる場所において、持続可能な開発及び自然と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持つようにする。
12.a 開発途上国に対し、より持続可能な消費・生産形態の促進のための科学的・技術的能力の強化を支援する。
12.b 雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業に対して持続可能な開発がもたらす影響を測定する手法を開発・導入する。
12.c 開発途上国の特別なニーズや状況を十分考慮し、貧困層やコミュニティを保護する形で開発に関する悪影響を最小限に留めつつ、税制改正や、有害な補助金が存在する場合はその環境への影響を考慮してその段階的廃止などを通じ、各国の状況に応じて、市場のひずみを除去することで、浪費的な消費を奨励する、化石燃料に対する非効率な補助金を合理化する。
目標13. 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる*
13.1 すべての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応力を強化する。
13.2 気候変動対策を国別の政策、戦略及び計画に盛り込む。
13.3 気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する。
13.a 重要な緩和行動の実施とその実施における透明性確保に関する開発途上国のニーズに対応するため、2020年までにあらゆる供給源から年間1,000億ドルを共同で動員するという、UNFCCCの先進締約国によるコミットメントを実施し、可能な限り速やかに資本を投入して緑の気候基金を本格始動させる。
13.b 後発開発途上国及び小島嶼開発途上国において、女性や青年、地方及び社会的に疎外されたコミュニティに焦点を当てることを含め、気候変動関連の効果的な計画策定と管理のための能力を向上するメカニズムを推進する
*国連気候変動枠組条約(UNFCCC)が、気候変動への世界的対応について交渉を行う基本的な国際的、政府間対話の場であると認識している。
目標14. 持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
14.1 2025年までに、海洋堆積物や富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する。
14.2 2020年までに、海洋及び沿岸の生態系に関する重大な悪影響を回避するため、強靱性(レジリエンス)の強化などによる持続的な管理と保護を行い、健全で生産的な海洋を実現するため、海洋及び沿岸の生態系の回復のための取組を行う。
14.3 あらゆるレベルでの科学的協力の促進などを通じて、海洋酸性化の影響を最小限化し、対処する。
14.4 水産資源を、実現可能な最短期間で少なくとも各資源の生物学的特性によって定められる最大持続生産量のレベルまで回復させるため、2020年までに、漁獲を効果的に規制し、過剰漁業や違法・無報告・無規制(IUU)漁業及び破壊的な漁業慣行を終了し、科学的な管理計画を実施する。
14.5 2020年までに、国内法及び国際法に則り、最大限入手可能な科学情報に基づいて、少なくとも沿岸域及び海域の10パーセントを保全する。
14.6 開発途上国及び後発開発途上国に対する適切かつ効果的な、特別かつ異なる待遇が、世界貿易機関(WTO)漁業補助金交渉の不可分の要素であるべきことを認識した上で、2020年までに、過剰漁獲能力や過剰漁獲につながる漁業補助金を禁止し、違法・無報告・無規制(IUU)漁業につながる補助金を撤廃し、同様の新たな補助金の導入を抑制する2。
2 現在進行中の世界貿易機関(WTO)交渉およびWTOドーハ開発アジェンダ、ならびに香港閣僚宣言のマンデートを考慮。
14.7 2030年までに、漁業、水産養殖及び観光の持続可能な管理などを通じ、小島嶼開発途上国及び後発開発途上国の海洋資源の持続的な利用による経済的便益を増大させる。
14.a 海洋の健全性の改善と、開発途上国、特に小島嶼開発途上国および後発開発途上国の開発における海洋生物多様性の寄与向上のために、海洋技術の移転に関するユネスコ政府間海洋学委員会の基準・ガイドラインを勘案しつつ、科学的知識の増進、研究能力の向上、及び海洋技術の移転を行う。
14.b 小規模・沿岸零細漁業者に対し、海洋資源及び市場へのアクセスを提供する。
14.c 「我々の求める未来」のパラ158において想起されるとおり、海洋及び海洋資源の保全及び持続可能な利用のための法的枠組みを規定する海洋法に関する国際連合条約(UNCLOS)に反映されている国際法を実施することにより、海洋及び海洋資源の保全及び持続可能な利用を強化する。
目標15. 陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する
15.1 2020年までに、国際協定の下での義務に則って、森林、湿地、山地及び乾燥地をはじめとする陸域生態系と内陸淡水生態系及びそれらのサービスの保全、回復及び持続可能な利用を確保する。
15.2 2020年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し、劣化した森林を回復し、世界全体で新規植林及び再植林を大幅に増加させる。
15.3 2030年までに、砂漠化に対処し、砂漠化、干ばつ及び洪水の影響を受けた土地などの劣化した土地と土壌を回復し、土地劣化に荷担しない世界の達成に尽力する。
15.4 2030年までに持続可能な開発に不可欠な便益をもたらす山地生態系の能力を強化するため、生物多様性を含む山地生態系の保全を確実に行う。
15.5 自然生息地の劣化を抑制し、生物多様性の損失を阻止し、2020年までに絶滅危惧種を保護し、また絶滅防止するための緊急かつ意味のある対策を講じる。
15.6 国際合意に基づき、遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を推進するとともに、遺伝資源への適切なアクセスを推進する。
15.7 保護の対象となっている動植物種の密猟及び違法取引を撲滅するための緊急対策を講じるとともに、違法な野生生物製品の需要と供給の両面に対処する。
15.8 2020年までに、外来種の侵入を防止するとともに、これらの種による陸域・海洋生態系への影響を大幅に減少させるための対策を導入し、さらに優先種の駆除または根絶を行う。
15.9 2020年までに、生態系と生物多様性の価値を、国や地方の計画策定、開発プロセス及び貧困削減のための戦略及び会計に組み込む。
15.a 生物多様性と生態系の保全と持続的な利用のために、あらゆる資金源からの資金の動員及び大幅な増額を行う。
15.b 保全や再植林を含む持続可能な森林経営を推進するため、あらゆるレベルのあらゆる供給源から、持続可能な森林経営のための資金の調達と開発途上国への十分なインセンティブ付与のための相当量の資源を動員する。
15.c 持続的な生計機会を追求するために地域コミュニティの能力向上を図る等、保護種の密猟及び違法な取引に対処するための努力に対する世界的な支援を強化する。
目標16. 持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する
16.1 あらゆる場所において、すべての形態の暴力及び暴力に関連する死亡率を大幅に減少させる。
16.2 子どもに対する虐待、搾取、取引及びあらゆる形態の暴力及び拷問を撲滅する。
16.3 国家及び国際的なレベルでの法の支配を促進し、すべての人々に司法への平等なアクセスを提供する。
16.4 2030年までに、違法な資金及び武器の取引を大幅に減少させ、奪われた財産の回復及び返還を強化し、あらゆる形態の組織犯罪を根絶する。
16.5 あらゆる形態の汚職や贈賄を大幅に減少させる。
16.6 あらゆるレベルにおいて、有効で説明責任のある透明性の高い公共機関を発展させる。
16.7 あらゆるレベルにおいて、対応的、包摂的、参加型及び代表的な意思決定を確保する。
16.8 グローバル・ガバナンス機関への開発途上国の参加を拡大・強化する。
16.9 2030年までに、すべての人々に出生登録を含む法的な身分証明を提供する。
16.10 国内法規及び国際協定に従い、情報への公共アクセスを確保し、基本的自由を保障する。
16.a 特に開発途上国において、暴力の防止とテロリズム・犯罪の撲滅に関するあらゆるレベルでの能力構築のため、国際協力などを通じて関連国家機関を強化する。
16.b 持続可能な開発のための非差別的な法規及び政策を推進し、実施する。
目標17. 持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する
資金
17.1 課税及び徴税能力の向上のため、開発途上国への国際的な支援なども通じて、国内資源の動員を強化する。
17.2 先進国は、開発途上国に対するODAをGNI比0.7%に、後発開発途上国に対するODAをGNI比0.15~0.20%にするという目標を達成するとの多くの国によるコミットメントを含むODAに係るコミットメントを完全に実施する。ODA供与国が、少なくともGNI比0.20%のODAを後発開発途上国に供与するという目標の設定を検討することを奨励する。
17.3 複数の財源から、開発途上国のための追加的資金源を動員する。
17.4 必要に応じた負債による資金調達、債務救済及び債務再編の促進を目的とした協調的な政策により、開発途上国の長期的な債務の持続可能性の実現を支援し、重債務貧困国(HIPC)の対外債務への対応により債務リスクを軽減する。
17.5 後発開発途上国のための投資促進枠組みを導入及び実施する。
技術
17.6 科学技術イノベーション(STI)及びこれらへのアクセスに関する南北協力、南南協力及び地域的・国際的な三角協力を向上させる。また、国連レベルをはじめとする既存のメカニズム間の調整改善や、全世界的な技術促進メカニズムなどを通じて、相互に合意した条件において知識共有を進める。
17.7 開発途上国に対し、譲許的・特恵的条件などの相互に合意した有利な条件の下で、環境に配慮した技術の開発、移転、普及及び拡散を促進する。
17.8 2017年までに、後発開発途上国のための技術バンク及び科学技術イノベーション能力構築メカニズムを完全運用させ、情報通信技術(ICT)をはじめとする実現技術の利用を強化する。
能力構築
17.9 すべての持続可能な開発目標を実施するための国家計画を支援するべく、南北協力、南南協力及び三角協力などを通じて、開発途上国における効果的かつ的をしぼった能力構築の実施に対する国際的な支援を強化する。
貿易
17.10 ドーハ・ラウンド(DDA)交渉の結果を含めたWTOの下での普遍的でルールに基づいた、差別的でない、公平な多角的貿易体制を促進する。
17.11 開発途上国による輸出を大幅に増加させ、特に2020年までに世界の輸出に占める後発開発途上国のシェアを倍増させる。
17.12 後発開発途上国からの輸入に対する特恵的な原産地規則が透明で簡略的かつ市場アクセスの円滑化に寄与するものとなるようにすることを含む世界貿易機関(WTO)の決定に矛盾しない形で、すべての後発開発途上国に対し、永続的な無税・無枠の市場アクセスを適時実施する。
体制面
政策・制度的整合性
17.13 政策協調や政策の首尾一貫性などを通じて、世界的なマクロ経済の安定を促進する。
17.14 持続可能な開発のための政策の一貫性を強化する。
17.15 貧困撲滅と持続可能な開発のための政策の確立・実施にあたっては、各国の政策空間及びリーダーシップを尊重する。
マルチステークホルダー・パートナーシップ
17.16 すべての国々、特に開発途上国での持続可能な開発目標の達成を支援すべく、知識、専門的知見、技術及び資金源を動員、共有するマルチステークホルダー・パートナーシップによって補完しつつ、持続可能な開発のためのグローバル・パートナーシップを強化する。
17.17 さまざまなパートナーシップの経験や資源戦略を基にした、効果的な公的、官民、市民社会のパートナーシップを奨励・推進する。
データ、モニタリング、説明責任
17.18 2020年までに、後発開発途上国及び小島嶼開発途上国を含む開発途上国に対する能力構築支援を強化し、所得、性別、年齢、人種、民族、居住資格、障害、地理的位置及びその他各国事情に関連する特性別の質が高く、タイムリーかつ信頼性のある非集計型データの入手可能性を向上させる。
17.19 2030年までに、持続可能な開発の進捗状況を測るGDP以外の尺度を開発する既存の取組を更に前進させ、開発途上国における統計に関する能力構築を支援する。
実施手段とグローバル・パートナーシップ
60.(グローバル・パートナーシップ)我々は、この新アジェンダの完全な実施のための強いコミットメントを再確認する。我々は、活性化され強化されたグローバル・パートナーシップ及び同程度に野心的な実施手段無しには、この野心的な目標とターゲットは達成できないということを認識する。活性化されたグローバル・パートナーシップは、政府、市民社会、民間セクター、国連機関、その他の主体を集結させるとともに、あらゆる利用可能な資源を動員し、すべての目標とターゲットの実施を支援するための全世界の強い関与を促進する。
61.(実施手段)アジェンダの目標とターゲットは、我々の集合的な野心を実現するために必要な実施手段も取り上げている。それぞれのSDGのターゲット及び目標17で取り上げられている実施手段は、上述したように我々のアジェンダを実現するための鍵であり、その他の目標とターゲット同様に重要である。(これらの実施手段関連目標・ターゲットは)その他の目標の実施努力と、これらの進捗をモニターする枠組みの双方において同等のプライオリティーをもって扱う。
62.(アディスアベバ行動目標との関係)
SDGsを含むこのアジェンダは、持続可能な開発のための活性化されたグローバル・パートナーシップの枠組みにおいて実現されるものであり、持続可能な開発のための2030アジェンダと不可欠な部分を成すアディスアベバ行動目標の具体的な政策と行動によってサポートされるものである。アディスアベバ行動目標は、2030アジェンダのターゲットの実施手段を具体的な文脈に置くとともに、それを補足する助けとなるものである。これらは、国内のリソース、国内外の民間資金、国際開発協力、開発の牽引力としての国際貿易、負債及び債務持続性、体制的な課題、科学技術イノベーション、能力構築、データ、モニタリング及びフォローアップのすべてに関連してくるものである。
63.(各国と国際社会の役割)
統合的な国家財政の枠組みによって支えられた国家の持続可能な開発戦略は、我々の取組の要となる。我々は、各国が自国の経済・社会開発に対して第一義的な責任があること、国家政策と開発戦略の役割は過小評価できないことを改めて表明したい。我々は、関連の国際的なルール及びコミットメントと合致する限りにおいて、各国がそれぞれの貧困撲滅や持続可能な開発のための政策を実施するための政策スペースやリーダーシップを尊重する。同時に、一国の開発努力はそれを可能とする国際的な経済環境によって支援されなければならず、そうした環境とは、首尾一貫した、互恵的な国際貿易、通貨・金融システム及びより発達した地球規模の経済ガバナンスである。また、能力構築だけでなく、地球規模での適切な知識と技術の利用可能性を高め、促進するプロセスの構築が重要である。我々は、あらゆるレベルにおけるすべての主体によって、持続可能な開発のための政策一貫性及び環境整備の追求及び持続可能な開発のためのグローバル・パートナーシップを再活性化することにコミットする。
64.(各種行動計画、アフリカ関連イニシアティブ、紛争)
我々は、「イスタンブール宣言及び行動計画」、「サモア・パスウェー(SAMOApathway)」、「ウィーン行動計画」等の関連ある戦略及びプログラムの実施を支持する。また、新アジェンダにおいて不可欠であるアフリカ連合の「2063アジェンダ」と「アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)」のプログラムを支持することの重要性を再確認する。我々は、紛争下や紛争後の国々が永続的な平和と持続可能な開発を達成するための大きな課題を有していることを認識する。
65.(中所得国の課題)
我々は、中所得国も持続可能な開発を達成するために困難な課題に直面していることを認識する。今日までに達成された努力の成果を持続させるためには、様々な経験の共有、よりよい調整、国連開発システム、国際金融機関、地域機関及びその他のステークホルダーによる支援を通じてこれらの課題への取組を強化するべきである。
66.(国内資金の動員、各国のオーナーシップ)
我々は、すべての国にとって、ナショナル・オーナーシップの原則の下で強調されている公共政策及び国内リソースの動員と有効な活用は、SDGsの達成を含む持続可能な開発に向けた我々の取組の中心に置かれるものであるということを強調する。我々は、国内リソースは、あらゆるレベルでの整備された環境の下、経済成長によって生み出されるということを認識する。
67.(民間企業活動)民間企業の活動・投資・イノベーションは、生産性及び包摂的な経済成長と雇用創出を生み出していく上での重要な鍵である。我々は、小企業から協同組合、多国籍企業までを包含する民間セクターの多様性を認める。我々は、こうした民間セクターに対し、持続可能な開発における課題解決のための創造性とイノベーションを発揮することを求める。「ビジネスと人権に関する指導原則と国際労働機関の労働基準」、「児童の権利条約」及び主要な多国間環境関連協定等の締約国において、これらの取り決めに従い労働者の権利や環境、保健基準を遵守しつつ、ダイナミックかつ十分に機能する民間セクターの活動を促進する。
68.国際貿易は、包摂的な経済成長や貧困削減のための牽引車であり、持続可能な開発の促進に貢献する。我々は、世界貿易機関(WTO)の下、普遍的でルールに基づいた、開かれて、透明性があり予測可能性がある公平・無差別で包摂的な多角的貿易体制の促進及び意義のある貿易の自由化に向けた努力を続ける。我々は、すべての世界貿易機関(WTO)加盟国に対し、ドーハ・ラウンド交渉を迅速に終結するための努力を以前にも増して取り組むことを求める。我々は、開発途上国、とりわけアフリカ諸国、後発開発途上国、内陸開発途上国、小島嶼開発途上国、中所得国に対し、地域経済の統合と相互接続性の促進を含む貿易関連の能力構築を促進するための支援の重要性を強調する。
69.(債務)我々は、開発途上国が長期的な債務持続性を有することができるように、債権金融、債務救済、債務リストラ及びその他の債務管理等を適切に組み合わせて取り組む必要性を認識する。多くの国々は債務危機に対して脆弱であり、特に後発開発途上国、小島嶼開発途上国の他、幾つかの先進国も危機の渦中にいる。我々は改めて、債務国と債権国が、持続不可能な債務を防ぎ、この解決に取り組まなければならないということを確認する。持続可能な債務のレベルを維持するのは、借入国の責任である。しかしながら、我々は、貸し手にも、一国の債務持続性を損なわない形で貸し出すという責任があるということを認識する。我々は、債務救済を受け、持続可能な債務を達成した国々の債務持続性の管理を支援する。
70.(技術促進メカニズム)我々は、持続可能な開発目標を支持するために、アディスアベバ行動目標で合意された技術促進メカニズム(TFM)を立ち上げる。TFMは、加盟国や市民社会、民間セクター、科学団体、国連やその他のマルチ・ステークホルダー間の協力に基づいている。また、その構成は、SDGsのための科学技術イノベーションに関する国連機関間タスクチーム(以下、国連機関間タスクチーム)、オンライン・プラットフォーム、SDGsのための科学技術イノベーションに関するマルチ・ステークホルダー・フォーラム(以下、マルチ・ステークホルダー・フォーラム)から成っている。
・国連機関間タスクチームは、能力構築取組分野におけるシナジーと効率性を高め、科学技術イノベーションにおける国連システム間の協力、一貫性、調整力を高めることが期待されている。タスクチームは、現存資源を活用しながら、マルチ・ステークホルダー・フォーラムやオンライン・プラットフォームのモダリティーに関するプロポーザルの作成からこれらの運用・実施の準備のために、市民社会、民間セクター、科学者の各分野から構成される10人の代表者と協力してこれを行う。10人の代表者は、2年の任期で、国連事務総長によって任命される。タスクチームは、国連のすべての機関、基金、プログラムの他、経済社会理事会の下に設けられている機能委員会のいずれも参加できるが、最初のメンバーはTFMに関する非公式作業部会に関わってきた機関、すなわち、国連経済社会局(UNDESA)、国連環境計画(UNEP)、国連工業開発機関(UNIDO)、国連教育科学文化機関(UNESCO)、国連貿易開発会議(UNCTAD)、国際電気通信連合(ITU)、世界知的所有権機関(WIPO)、世界銀行から構成される。
・オンライン・プラットフォームは、国連内外にある既存の科学技術イノベーション関連メカニズム、プログラムのマッピング及びこれら情報・サービスへのゲートウェイの構築を行う。同プラットフォームは、科学、技術及びイノベーションに関する各種情報、成功例や教訓等へのアクセスを促進する他、公開されている科学情報の普及に貢献する。同プラットフォームの開発にあたっては、既存の科学技術イノベーション・プラットフォームへのアクセスや情報等を提供し、重複を避け相乗効果を強化するために、国連の内外で蓄積されてきた教訓も踏まえつつ、独立した技術的な調査を行い開発するものとする。
・マルチ・ステークホルダー・フォーラムは、年1回、2日間の会期で様々なステークホルダーを招集し、持続可能な開発の実施を巡る科学技術イノベーション協力に関するテーマ別の議論を行う。このフォーラムでは、科学技術イノベーション協力及び能力構築に関するものを含め、技術ニーズとギャップを埋めるための様々なマッチメーキング、協力、能力構築等の機会が提供される。フォーラムは経済社会理事会議長によって招集され、経済社会理事会による年次「ハイレベル政治フォーラム」会合の前に開催されるか、テーマ等の関連性があれば他のフォーラム、会議等に関連づけて開催することができる。このフォーラムは2つの国連加盟国からなる共同議長の下で開催される。そして、その成果はポスト2015年開発アジェンダ実施のフォローアップ・レビューの観点から経済社会理事会「ハイレベル政治フォーラム」へのインプットがなされる。
・「ハイレベル政治フォーラム」の会議では、マルチ・ステークホルダー・フォーラムの成果がインプットされる。また、その翌年のフォーラムのテーマについては、上記国連機関間タスクチームの専門的インプットを得て決定される。
71.(普遍性、不可分性、関連性)我々は、実施手段を含む本アジェンダ及び持続可能な開発目標とターゲットは、普遍的で、不可分、相互に関連していることを再度強調する。
フォローアップとレビュー
72.(フォローアップ・レビュー)我々は、次の15年に向けた本アジェンダの実施に関する組織的なフォローアップ・レビューへの関与にコミットする。力強く、自発的、効果的、参加型、透明かつ統合的なフォローアップ・レビューの枠組みは、実施への貢献に不可欠である。また、こうしたフォローアップ・レビューは、各国が誰一人も取り残さない進展を図るために、本アジェンダの実施を最大化し、その進捗をしっかりと把握することを支援する。
73.(各レベルでの必要性)国内、地域的、全世界の各レベルでの活動にあたっては、この枠組みが国民への説明責任を促進し、本アジェンダを達成するための効果的な国際協力を支援し、成功例の交換や相互学習を促進する。また、共通の課題や新たに対応が必要とされる課題への対処のための支援を動員する。本アジェンダはユニバーサルであるが故に、すべての国家間の相互信頼と理解は重要である。
74.(基本原則)すべてのレベルにおけるフォローアップとレビュー(FUR)のプロセスは、次の原則によって導かれる。
a.これらのプロセスは、自主的で、国主導であり、多様な国の現実、能力、開発レベルを考慮し、政策スペースと優先事項を尊重する。国家のオーナーシップは、持続可能な開発を達成するための鍵である。よって、グローバル・レビューが各国の公的データ・ソースを基に行われることを踏まえると、国家レベルのプロセスによる成果は、地域及び全世界レベルでのレビューのための土台となるものである。
b.これらは、ユニバーサルで、統合され、相互に関連しており、且つ3つの側面を有する持続可能な開発の性質を尊重した方法で、すべての国において、実施手段を含むユニバーサルな目標とターゲットを実施し、その進捗を計る。
c.これらは、各国がしっかりとした情報に基づく政策を選択できるよう、長期的な方向性、達成度合い、課題、ギャップ、死活的に重要な成功の要素を見出し、各国への支援を行う。また、必要な実施手段とパートナーシップを動員し、解決策や成功例を導き出すとともに、国際開発システムの連携と有効性を高める。
d.これらは、すべての人々にとって開かれて、包摂的で、参加型の、透明性を持ち、すべてのステークホルダーによる報告をサポートする。
e.これらは、人間中心で、ジェンダーに配慮し、人権を尊重し、特に、貧困で脆弱な最も取り残された人々に焦点を当てたものとする。
f.これらは、既存のプラットフォーム及びプロセスを活用し重複を避けて行われる。また、各国の状況、能力、必要性、優先事項に対応したものとする。新たな問題や新しい方法論の開発を考慮して改良を加えるとともに、各国の行政府における報告の負担を最小限にする。
g.これらは、各国の主導で行われる評価やデータに基づく正確で根拠のあるものである。各国が行う評価やデータは、高品質で、アクセス可能、時宜を得た、細分化されたデータに基づくものであり、具体的には、収入、性別、年齢、人種、民族的属性、移住者の法律上の地位、障害、地理的属性及びその他各々の国内での状況に関連のある特徴等を踏まえたデータである。
h.これらは、特に、アフリカ諸国、後発開発途上国、小島嶼開発途上国、内陸開発途上国、中所得国等の開発途上国における国家資料システム及び評価事業の強化を含む能力開発の拡大を必要とする。
i.これらは、国連システムと多国間機関による積極的な支援によって支えられる。
75.(指標)目標とターゲットは、グローバルな指標によってフォローアップされる。これらは、国レベルや全世界レベルでのベースライン・データの欠如を埋める取組とともに、各国や地域レベルで策定される指標によって補完されるものである。国連統計委員会の下に設けられた「SDG指標に関する機関間専門家グループ(IAEG)」が策定するグローバル指標の枠組みは、2016年3月に国連統計委員会で合意され、既存のマンデートに基づき国連経済社会理事会及び総会で採択される。この枠組みは、実施手段を含むすべての目標とターゲットに対応したもので、SDGsに込められた政治的なバランス、野心のレベルを適切に反映したシンプルでありながらも妥協のないものである。
76.(能力開発)我々は、開発途上国、とりわけアフリカ諸国、後発開発途上国、小島嶼開発途上国、内陸開発途上国に対し、高品質で、時宜を得た、細分化されたデータへのアクセスを確実にするため、統計局及びデータ・システムのエンパワーメントのための支援を行う。我々は、地球観測や地理空間情報等を含む幅広いデータの活用を追求するために、各国のオーナーシップを前提としつつ、支援と進捗管理における透明性と説明責任を明確にした形での官民連携の拡大を促進する。
77.(各レベルでのレビュー)我々は、地方、国、地域、全世界レベルでの定期的且つ包摂的なレビューの実施に取り組むことにコミットする。我々は、既存のフォローアップ・レビューの機関及びメカニズムを最大限活用する。国レベルの報告は、地域及び全世界レベルでの進捗と課題を特定することを可能とする。地域レベルの対話と全世界レベルでのレビューと併せ、様々なレベルにおけるフォローアップのための勧告を提供する。
国内レベル
78.(各国の対応)我々は、すべての国連加盟国が本アジェンダ全体の実施に関する実務的で野心的な対応に早急に着手するよう促す。これらは、既存の国家開発、持続可能な開発戦略等をふまえて、SDGsの移行を支援するものとする。
79.(国内での実施)また我々は、加盟国が、国及び地域レベルにおいて、各々の国のイニシアティブで行われる定期的で包摂的な進捗に関するレビューを行うことを促す。かかるレビューは、各国の現状や政策、優先課題を踏まえつつ、先住民、市民社会、民間セクター及び他のステークホルダーからの貢献を得つつ行われるべきである。また、国会やその他の機関もこうしたプロセスを支援する。
地域レベル
80.(役割)地域レベルでのフォローアップ・レビューは、自発的なレビューを含む相互の学び、共通のターゲットに関する成功例と議論を共有する有益な機会となり得る。この観点からは、地域委員会及び地域組織の協力を歓迎する。包摂的な地域プロセスは、「持続可能な開発のためのハイレベル政治フォーラム」を含む、全世界レベルでのフォローアップとレビューに貢献するものである。
81.(適切な地域フォーラムの特定)既存の地域レベルでのフォローアップ・レビュー・メカニズムを踏まえたものとするために、我々はすべての加盟国に対し最も適切な地域フォーラムを特定することを求める。国連地域委員会は、この観点から加盟国への支援を継続することが期待されている。
全世界レベル
82.(ハイレベル政治フォーラム)「ハイレベル政治フォーラム(HLPF)」は、そのマンデートの定めるところに従い、総会、経済社会理事会、その他関連機関及びフォーラムとの一貫性を確保しつつ、全世界レベルでのフォローアップ・レビュー・プロセス・ネットワークの監督において中心的な役割を果たす。同フォーラムは、成功、課題、教訓を含む経験の共有を促進し、フォローアップのための政治的リーダーシップ、指導、助言を提供し、持続可能な開発政策に関するシステム全体としての一貫性と調整を促進する。また、本アジェンダ自体がその意義を失わず野心的なものであり続けるようにし、その進捗や、先進国及び開発途上国が直面している課題に焦点をあてなければならない。さらに、後発開発途上国、小島嶼開発途上国、内陸開発途上国に関するものを含む、関連する全ての国連の会合フォローアップ・レビュー活動との効果的なリンケージが構築される。
83.(事務総長報告書)「ハイレベル政治フォーラム」におけるフォローアップ・レビューにおいては、国連システムの協力の下、グローバルな指標枠組み及び各国の統計・情報システムによって作成されたデータに基づき、事務総長が毎年作成する「年次SDG進捗報告(annualSDGProgressReport)」が提出される。またこの他に、「グローバル持続可能開発報告(GlobalSustainableDevelopmentReport)も活用されることになっており、この報告は、各国の政策立案者が科学的な裏付けをもって貧困撲滅及び持続可能な開発を促進していけるようにするために科学と政策間の橋渡しを強化することを目指している。我々は、経済社会理事会議長に対し、「グローバル持続可能開発報告」について、そのスコープ、方法論、作成の頻度及び「年次SDG進捗報告」との関係あり方についての協議プロセスを招集し、そのプロセスの結果を、2016年の「ハイレベル政治フォーラム」会期での閣僚宣言に反映する。
84.(ステークホルダーの関与)経済社会理事会主催による「ハイレベル政治フォーラム」では、国連総会決議67/290を踏まえて定期的なレビューを実施する。同フォーラムでのレビューは、先進国、開発途上国の他、関連する国連機関、市民社会・民間セクターなどのステークホルダーに対し報告を促しているが、あくまで自発的な性格のものである。レビューは、閣僚やその他のハイレベル参加者が関与した国家主導のプロセスである。レビューは、メジャー・グループ及び関連したステークホルダーの参加を通して、パートナーシップのためのプラットフォームを提供する。
85.(テーマ別レビュー)さらに、「ハイレベル政治フォーラム」では持続可能な開発目標の進捗に関するテーマ別レビューも開催する。こうしたテーマ別レビューは、各目標間の相互関連性を踏まえつつ、経済社会理事会の各種機能委員会及びその他政府間機関、フォーラム等によるサポートを受ける。こうしたテーマ別レビューはすべてのステークホルダーを関与しつつ、「ハイレベル政治フォーラム」の実施サイクルに統合されていく。
86.(アディスアベバ行動目標との関係)アディスアベバ行動目標にて言及されているとおり、我々は、開発資金(会議)の成果に対するフォローアップ・レビューと本アジェンダのフォローアップ・レビューの枠組みに統合されているSDGsの全ての実施手段を歓迎する。開発資金に関する年次経済社会理事会フォーラムにおいて政府間合意の下で得られた結論及び提言については、「ハイレベル政治フォーラム」における本アジェンダ実施に関する全体のフォローアップ・レビューに役立てられる。
87.(総会主催HLPF)総会主催の下で4年に1回行われる「ハイレベル政治フォーラム」は、本アジェンダの実施、進捗及び課題の特定、さらなる実施促進のための動員を行う上でハイレベルでの政治的ガイダンスを与えるものである。国連総会の下で開催される次回ハイレベル政治フォーラムは2019年に開催され、以降、「四ケ年包括政策レビュー(QCPR)」プロセスとの一貫性を最大化するために開催時期を調整することにする。
88.(国連開発システム)また、我々は、国連開発システムによる新たなアジェンダの実施に対して首尾一貫した集約された支援を確実にするために、システム全体で整合性のとれた戦略計画、実施、報告体制の重要性を強調する。関連する統治組織は、実施支援のレビュー及び進捗と支障を報告しなければならない。(こうした各々の国連開発システムの)監督機関は、そうした支援の内容についてレビューを行いその進捗と障害について報告を行わなければならない。我々は経済社会理事会における「国連開発システムの長期的ポジショニングに関する対話」を歓迎し、適切な対応が取られることを期待する。
89.(メジャー・グループ)「ハイレベル政治フォーラム」は、国連総会決議67/290に沿って、メジャー・グループ及び関連したステークホルダーによるフォローアップ・レビューのプロセスへの参加を支持する。我々は、これらの関係者に対し、アジェンダの実施に対する彼らの貢献について報告することを呼びかける。
90.(HLPFに向けた事務総長報告書)2016年に開催される「ハイレベル政治フォーラム」の準備に向けて、我々は事務局長に対し第70回国連総会での検討に付すための報告書の作成を求める。具体的には、全世界レベルでの首尾一貫した、効率的で、包摂的なフォローアップ・レビューに向けた重要なマイルストーンを示す内容の報告書を求める。この報告書は、経済社会理事会の下で開催される「ハイレベル政治フォーラム」における各国によるレビューのための組織アレンジに関する提言を含むものとする。また、同報告は組織の責任を明確にし、各年テーマ、テーマ別レビューの結果、「ハイレベル政治フォーラム」に関する定期的レビューについてガイダンスを示すものとする。
91.(結語)2030年までに、より良い世界へと変えるため、本アジェンダを十分活用し、達成するための揺るぎないコミットメントを、我々は改めて確認する。

  「ウィキソース」より

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 今日は、平成時代の2007年(平成19)に、国連総会で「先住民族の権利に関する国際連合宣言」が採択された日です。
 先住民族の権利に関する国際連合宣言(United Nations Declaration on the Rights of Indigenous Peoples)は、第61期の国際連合総会において採択された、先住民にすべての人権と基本的自由を保障する国際連合総会決議(賛成143、反対4、棄権11)で、日本も賛成票を投じました。
 宣言では、文化、アイデンティティ、言語、雇用、健康、教育に対する権利を含め、先住民族の個人および集団の権利を規定し、先住民族の制度、文化、伝統を維持、強化し、かつニーズと願望に従って開発を進める先住民族の権利を強調、先住民族に対する差別を禁止し、先住民族に関係するすべての事項について完全かつ効果的に参加できるようにすることとしています。それには、固有の生活様式を守り、かつ経済社会開発に対する自身のビジョンを追及する権利も含められるとしました。
 1982年(昭和57)に、国連の人権小委員会は、先住民に関する作業グループを設置し、「先住民族の権利に関する宣言」の草案を作成します。1992年(平成4)の地球サミットでは、先住民族から彼らの土地、領土、環境が悪化していることに懸念が表明され、国連開発計画(UNDP)、ユニセフ、国際農業開発基金(IFAD)、ユネスコ、世界銀行、世界保健機関(WHO)などの国連のさまざまな機関が先住民の状況を改善するための事業計画を実施しました。そして、国連総会で、1993年(平成5)を「世界の先住民の国際年(International Year of the World's Indigenous People)」とすることとなります。
 それに続く、1995~2004年の10年間が「世界の先住民の国際の10年(International Decade of the World's Indigenous People)」、2005~2014年の10年間が、「第2次世界の先住民族の国際の10年(Second International Decade of the World's Indigenous People)」に指定されました。こうした先住民問題に対する関心の高まりを受けて、2000年(平成12)に、国連の経済社会理事会の補助機関として「先住民問題に関する常設フォーラム(Permanent Forum on Indigenous Issues)」が設置され、さらに、「先住民問題に関する機関間支援グループ」が設置されます。
 その中で、2007年(平成19)に、ニューヨークの国連本部で開催された第61期国際連合総会において、9月13日に「先住民族の権利に関する国際連合宣言(United Nations Declaration on the Rights of Indigenous Peoples)」が採択されました。賛成が143ヶ国、反対は、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、アメリカ合衆国の4ヶ国、棄権はアゼルバイジャン、バングラデシュ、ブータン、ブルンジ、コロンビア、グルジア、ケニア、ナイジェリア、ロシア連邦、サモア、ウクライナの11ヶ国ですが、他に欠席が34ヶ国あります。
 以下に、内閣官房作成の日本語訳を掲載しておきますので、ご参照ください。

〇「先住民族の権利に関する国際連合宣言」2007年(平成19)9月13日国連総会採択

国際連合総会は、
国際連合憲章の目的及び原則並びに各国が同憲章に従って負っている義務の誠実な履行を指針とし、
すべての民族が、他の民族と異なる権利及び自己を異なると考える権利を有すること並びにそのようなものとして尊重される権利を有することを認識しつつ、先住民族が他のすべての民族と平等であることを確認し、
また、すべての民族が、人類の共同の財産である文明及び文化の多様性及び豊かさに貢献していることを確認し、
さらに、国民的出身又は人種、宗教、種族若しくは文化の違いに基づく民族又は個人の優越性を基礎とし、又は主張するすべての理論、政策及び慣行が、人種差別的であり、科学的に誤りであり、法的に無効であり、道義的に非難されるべきであり、かつ、社会的に不正であることを確認し、
先住民族が、その権利の行使に当たり、いかなる差別も受けるべきでないことを再確認し、
先住民族が、特に植民地化並びにその土地、領域及び資源の奪取の結果として歴史的に不正に扱われてきたこと、それによって特に自己のニーズ及び利益に合致する発展の権利を行使することを妨げられていることを懸念し、
先住民族の政治的、経済的及び社会的構造並びに先住民族の文化、精神的伝統、歴史及び哲学から生ずる先住民族の固有の権利(特に、土地、領域及び資源についての権利)を尊重し、及び促進することが緊急に必要であることを認識し、
また、国との条約、協定その他建設的な取決めにおいて確認された先住民族の権利を尊重し、及び促進することが緊急に必要であることを認識し、
先住民族が、政治的、経済的、社会的及び文化的に向上するため、並びにあらゆる形態の差別及び抑圧(発生場所のいかんを問わない。)を終了させるために団結していることを歓迎し、
先住民族並びにその土地、領域及び資源に影響を及ぼす開発の当該先住民族による管理は、先住民族が、その諸制度、文化及び伝統を維持し、及び強化し、並びに自己の願望及びニーズに合致する発展を促進することを可能にすることを確信し、
先住民族の知識、文化及び伝統的慣習の尊重が、持続的で公平な発展及び環境の適切な管理に貢献することを認識し、
先住民族の土地及び領域の非軍事化が、平和、経済的及び社会的な進歩及び発展並びに世界の諸国及び世界の諸民族の間の理解及び友好関係に貢献することを強調し、
特に、先住民族の家族及び社会が、児童の権利に適合する児童の養育、訓練、教育及び福祉についての共同の責任を保持する権利を有することを認識し、
国と先住民族との間の条約、協定その他建設的な取決めにおいて確認された権利は、場合によっては、国際的な懸念、関心、責任及び性質を有する問題であることを考慮し、
また、条約、協定その他建設的な取決め及びそれらが示す関係が、先住民族と国との間の強化された連携のための基礎であることを考慮し、
国際連合憲章、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約及び市民的及び政治的権利に関する国際規約並びにウィーン宣言及び行動計画が、すべての人民の自決の権利の基本的重要性を確認していること並びにこの権利に基づきすべての人民がその政治的地位を自由に決定し、並びにその経済的、社会的及び文化的発展を自由に追求することを認め、
この宣言のいかなる記述も、国際法に従って行使されるいかなる民族の自決の権利も否定することに用いられてはならないことに留意し、
この宣言に掲げる先住民族の権利を認めることは、正義、民主主義、人権の尊重、非差別及び信義誠実の諸原則に基づく国と先住民族との間の調和のとれ、かつ、協力的な関係を強化するものであることを確信し、
国に対し、関係する民族と協議し、及び協力して、国際文書、特に人権に関する国際文書に基づき先住民族について適用されるすべての義務を遵守し、及び効果的に履行するよう奨励し、
先住民族の権利を促進し、及び保護するに当たり、国際連合が果たすべき重要かつ継続的な役割を有することを強調し、
この宣言が、先住民族の権利及び自由を認め、促進し、及び保護し、並びにこの分野における国際連合及びその諸機関の関連する活動を発展させるためのより重要な一歩であることを確信し、
先住民族に属する個人が国際法において認められるすべての人権を差別なく享有すること並びに先住民族がその存在、福祉及び民族としての全体の発展のために不可欠な集団的権利を有することを認識し、及び再確認し、
地域ごと及び国ごとに先住民族の状況が異なること並びに国及び地域の特殊性並びに多様な歴史的及び文化的な背景の重要性が考慮されるべきであることを認識して、
連携及び相互尊重の精神において追求される達成の水準として、先住民族の権利に関する国際連合宣言を次のとおり厳粛に宣言する。
第一条
先住民族は、集団又は個人として、国際連合憲章、世界人権宣言及び国際人権法において認められるすべての人権及び基本的自由を十分に享有する権利を有する。
第二条
先住民族及びこれに属する個人は、自由であり、かつ、他のすべての民族及び個人と平
等であるものとし、その権利の行使に当たり、特に先住民族出身であること又は先住民族に属することに基づくいかなる差別も受けない権利を有する。
第三条
先住民族は、自決の権利を有する。この権利に基づき、先住民族は、その政治的地位を自由に決定し、並びにその経済的、社会的及び文化的発展を自由に追求する。
第四条
先住民族は、その自決の権利を行使するに当たり、その内部及び地域の事項に関する問題並びにその自律的な活動の資金を調達するための方法及び手段について、自治の権利を有する。
第五条
先住民族は、希望する場合には、国の政治的、経済的、社会的及び文化的活動に十分に参加する権利を保持しつつ、その独自の政治的、法的、経済的、社会的及び文化的な制度を維持し、及び強化する権利を有する。
第六条
先住民族に属するすべての個人は、国籍についての権利を有する。
第七条
1.先住民族に属する個人は、生命、身体及び精神の健全性、自由並びに身体の安全についての権利を有する。
2.先住民族は、独自の民族として自由に、平和のうちに及び安全に生活する集団的権利を有するものとし、集団殺害行為その他の暴力行為(集団内の児童の他の集団への強制的移動を含む。)を受けない。
第八条
1.先住民族及びこれに属する個人は、強制的に同化させられ、又はその文化を破壊されない権利を有する。
2.国は、次の行為の防止及びこれらの行為についての救済のための効果的な仕組みを提供する。
(a)先住民族の独自の民族としての一体性又は文化的な価値若しくは民族的帰属意識を奪う目的又は効果を有する行為
(b)先住民族の土地、領域又は資源を奪う目的又は効果を有する行為
(c)先住民族の権利を侵害し、又は損なう目的又は効果を有するあらゆる形態の強制的な住民の移送
(d)あらゆる形態の強制的な同化又は統合
(e)先住民族に対する人種差別又は民族差別を助長し、又は扇動することを意図するあらゆる形態の宣伝
第九条
先住民族及びこれに属する個人は、関係する先住民族の社会又は民族の伝統及び慣習に従って、当該先住民族の社会又は民族に属する権利を有する。このような権利の行使に当たり、いかなる差別も受けないものとする。
第十条
先住民族は、その土地又は領域から強制的に移動させられない。移転は、関係する先住民族の自由な、事前の、かつ、情報に基づく同意が得られ、公正かつ公平な補償についての合意が得られた後であり、かつ、可能な場合には、帰還するとの選択肢を伴うものである場合にのみ、行われる。
第十一条
1.先住民族は、その文化的伝統及び慣習を実践し、及び再活性化させる権利を有する。この権利には、過去、現在及び未来にわたる先住民族の文化の表現(例えば、考古学上の及び歴史的な遺跡、工芸品、意匠、儀式、技術、視覚的芸術、舞台芸術、文学)を維持し、保護し、及び発展させる権利を含む。
2.国は、先住民族の自由な、事前の、かつ、情報に基づく同意なしに、又は先住民族の法、伝統及び慣習に反して奪われた文化的、知的、宗教的及び精神的財産に関し、当該先住民族と連携して設けた効果的な仕組み(原状回復を含む。)を通じた救済を行う。
第十二条
1.先住民族は、その精神的及び宗教的な伝統、慣習及び儀式を明示し、実践し、発展させ、及び教育する権利、その宗教的及び文化的な場所を維持し、及び保護し、並びに干渉を受けることなくこのような場所に立ち入る権利、その儀式用の物を使用し、及び管理する権利並びにその遺体及び遺骨の帰還についての権利を有する。
2.国は、関係する先住民族と連携して設けた公正な、透明性のある、かつ、効果的な仕組みを通じて、自国が保有する儀式用の物並びに遺体及び遺骨へのアクセス又はこれらの返還を可能にするよう努める。
第十三条
1.先住民族は、その歴史、言語、口承による伝統、哲学、表記方法及び文学を再活性化し、使用し、発展させ、及び将来の世代に伝達する権利並びに社会、場所及び個人に固有の名称を付し、及び継続して使用する権利を有する。
2.国は、1に掲げる権利が保護されることを確保し、並びに必要な場合には通訳の提供又は他の適当な手段を通じて、先住民族が政治上、法律上及び行政上の手続を理解し、並びにこのような手続において理解されることを確保するため、効果的な措置をとる。
第十四条
1.先住民族は、その文化に則った教育及び学習の方法に適した方法によって、自己の言語で教育を提供する教育制度及び教育機関を設立し、及び管理する権利を有する。
2.先住民族に属する個人、特に児童は、国によるあらゆる段階及び形態の教育についての権利を差別なく有する。
3.国は、先住民族と連携して、先住民族に属する個人(当該先住民族の社会の外で生活している者を含む。)、特に児童が、可能な場合には、先住民族自身の文化についての及び当該先住民族自身の言語による教育を受ける機会を有するようにするため、効果的な措置をとる。
第十五条
1.先住民族は、その文化、伝統、歴史及び願望の尊厳及び多様性(これらは、教育及び
公衆のための情報において適切に反映される。)についての権利を有する。
2.国は、関係する先住民族と協議し、及び協力して、偏見と戦い、及び差別を撤廃し、並びに先住民族及び社会の他のすべての構成員の間の寛容、理解及び良好な関係を促進するため、効果的な措置をとる。
第十六条
1.先住民族は、自己の言語による自己の報道機関を設立し、及びあらゆる形態の非先住民族の報道機関を差別なく利用する権利を有する。
2.国は、国有の報道機関が先住民族の文化的多様性を正当に反映することを確保するため、効果的な措置をとる。国は、表現の完全な自由の確保を害することなく、民間による所有の報道機関が適切に先住民族の文化的多様性を反映するよう奨励すべきである。
第十七条
1.先住民族に属する個人及び先住民族は、適用のある労働に関する国際法及び国内法に定めるすべての権利を十分に享受する権利を有する。
2.国は、先住民族に属する児童が特に影響を受けやすいこと及び先住民族に属する児童の自律的な力の育成のための教育が重要であることを考慮しつつ、先住民族と協議し、及び協力して、先住民族に属する児童を経済的な搾取から保護し、及び危険となり、若しくは児童の教育の妨げとなり、又は児童の健康若しくは身体的、精神的、道徳的若しくは社会的な発達に有害となるおそれのある労働への従事から保護するため、特別の措置をとる。
3.先住民族に属する個人は、労働、特に雇用又は給料に関して、いかなる差別的条件にも付されない権利を有する。
第十八条
先住民族は、自己の手続に従って自己が選出した代表を通じて、自己の権利に影響を及ぼし得る事項に関する意思決定に参加し、並びに自己の意思決定のための制度を維持し、及び発展させる権利を有する。
第十九条
国は、先住民族に影響を及ぼすおそれのある立法上又は行政上の措置をとり、及び実施する前に、当該先住民族の自由な、事前の、かつ、情報に基づく同意を得るため、当該先住民族自身の代表機関を通じて、当該先住民族と誠実に協議し、及び協力する。
第二十条
1.先住民族は、その政治的、経済的及び社会的制度又は機関を維持し、及び発展させる権利、その生存及び発展のための自己の手段が与えられることが確保される権利並びにそのあらゆる伝統及び他の経済活動に自由に従事する権利を有する。
2.生存及び発展のための手段を奪われた先住民族は、公正かつ公平な救済を受ける権利を有する。
第二十一条
1.先住民族は、その経済的及び社会的状況(特に、教育、雇用、職業訓練及び再訓練、住居、衛生、健康並びに社会保障の分野における状況を含む。)の改善についての権利を
差別なく有する。
2.国は、先住民族の経済的及び社会的状況を継続的に改善することを確保するため、効果的な措置及び適当な場合には特別な措置をとる。先住民族に属する高齢者、女子、青少年、児童及び障害者の権利及び特別のニーズについては、特別の注意を払う。
第二十二条
1.この宣言の実施に当たり、先住民族に属する高齢者、女子、青少年、児童及び障害者の権利及び特別のニーズについては、特別の注意を払う。
2.国は、先住民族と連携して、先住民族に属する女子及び児童があらゆる形態の暴力及び差別に対する十分な保護及び保障を享受することを確保するための措置をとる。
第二十三条
先住民族は、その発展の権利を行使するための優先順位及び戦略を決定し、及び策定する権利を有する。特に、先住民族は、自己に影響を及ぼす健康、住居その他経済的及び社会的計画を策定し、及び決定することに積極的に参加する権利並びに可能な限り自己の機関を通じてこのような計画を実施する権利を有する。
第二十四条
1.先住民族は、その伝統的医療についての権利及びその健康に係る慣行(不可欠な薬用の植物、動物及び鉱物の保存を含む。)を維持する権利を有する。また、先住民族に属する個人は、すべての社会的サービス及び保健サービスを差別なく利用する権利を有する。
2.先住民族に属する個人は、到達可能な最高水準の身体及び精神の健康を享受する平等な権利を有する。国は、この権利の十分な実現を漸進的に達成するため、必要な措置をとる。
第二十五条
先住民族は、自己が伝統的に所有し、又は他の方法で占有し、及び使用してきた土地、領域、水域、沿岸海域その他資源に対するその独自の精神的関係を維持し、及び強化する権利並びにこの点について将来の世代に対する自己の責任を果たす権利を有する。
第二十六条
1.先住民族は、自己が伝統的に所有し、占有し、又は他の方法で使用し、若しくは取得してきた土地、領域及び資源についての権利を有する。
2.先住民族は、自己が伝統的に所有し、他の方法で伝統的に占有し、若しくは使用することにより保有しており、又は他の方法で取得した土地、領域及び資源を所有し、使用し、開発し、及び管理する権利を有する。
3.国は、1及び2に掲げる土地、領域及び資源について、法的に認め、及び保護する。この場合において、関係する先住民族の慣習、伝統及び土地に係る権利についての制度を十分に尊重して認めるものとする。
第二十七条
国は、関係する先住民族と連携して、先住民族の土地、領域及び資源(伝統的に所有し、又は他の方法で占有し、若しくは使用してきたものを含む。)についての当該先住民族の権利を認め、及び決定するために、先住民族の法、伝統、慣習及び土地に係る権利について
の制度に十分に留意しつつ、公正な、独立の、公平な、公開の、かつ、透明性のある手続を定め、及び実施する。先住民族は、この手続に参加する権利を有する。
第二十八条
1.先住民族は、自己が伝統的に所有し、又は他の方法で占有し、若しくは使用してきた土地、領域及び資源であって、自己の自由な、事前の、かつ、情報に基づく同意なしに没収され、奪われ、占有され、使用され、又は損害を被ってきたものについて、原状回復(又はそれが可能でない場合には公正、公平、かつ、衡平な補償)その他の手段によって救済を受ける権利を有する。
2.関係する民族が自由に同意する場合を除くほか、補償については、同等の質、規模及び法的地位を有する土地、領域及び資源という形態、金銭的補償という形態又は他の適当な救済という形態をとる。
第二十九条
1.先住民族は、環境並びに自己の土地又は領域及び資源の生産能力の保全及び保護についての権利を有する。国は、先住民族のためのこのような保全及び保護に関する支援計画を差別なく策定し、及び実施する。
2.国は、有害物質の貯蔵又は処分が、先住民族の自由な、事前の、かつ、情報に基づく同意なしに、当該先住民族の土地又は領域において行われないことを確保するため、効果的な措置をとる。
3.また、国は、必要な場合には、先住民族の健康を監視し、維持し、及び回復させるための計画であって、有害物質の影響を受けた先住民族によって策定され、及び実施されるものが適切に実施されることを確保するため、効果的な措置をとる。
第三十条
1.関連する公共の利益により正当化される場合又は関係する先住民族が自由に同意し、若しくは要請する場合を除くほか、先住民族の土地又は領域において軍事上の活動を行ってはならない。
2.国は、軍事上の活動のために先住民族の土地又は領域を使用する前に、適当な手続、特に当該先住民族の代表機関を通じて、当該先住民族と効果的な協議を行う。
第三十一条
1.先住民族は、その文化遺産、伝統的知識及び伝統的な文化の表現並びに科学、技術及び文化の表現(人的資源、遺伝資源、種子、薬、動植物の特性に関する知識、口承による伝統、文学、意匠、スポーツ、伝統的競技、視覚的芸術及び舞台芸術を含む。)を維持し、管理し、保護し、及び発展させる権利を有する。また、先住民族は、このような文化遺産、伝統的知識及び伝統的な文化の表現に係る自己の知的財産を維持し、管理し、保護し、及び発展させる権利を有する。
2.国は、先住民族と連携して、1に掲げる権利の行使を認め、及び保護するため、効果的な措置をとる。
第三十二条
1.先住民族は、その土地又は領域その他資源の開発又は使用のための優先順位及び戦略を決定し、及び策定する権利を有する。
2.国は、特に、鉱物、水その他の資源の開発、利用又は採掘に関連して、先住民族の土地又は領域その他資源に影響を及ぼす事業を承認する前に、先住民族の自由な、かつ、情報に基づく同意を得るため、当該先住民族自身の代表機関を通じて、当該先住民族と誠実に協議し、及び協力する。
3.国は、このような活動に対し、公正かつ公平な救済のための効果的な仕組みを提供する。環境上、経済上、社会上、文化上又は精神上の悪影響を軽減するため、適当な措置がとられるものとする。
第三十三条
1.先住民族は、その慣習及び伝統に従って、自己の帰属又は構成員を決定する権利を有する。このことは、先住民族に属する個人が、居住する国の市民権を取得する権利を害するものではない。
2.先住民族は、自己の手続に従って、自己の機関の構成を決定し、及び当該機関の構成員を選出する権利を有する。
第三十四条
先住民族は、人権に関する国際的な基準に従い、自己の機関の構成並びに独自の慣習、精神性、伝統、手続、慣行及び、司法上の制度又は慣習が存在する場合には、それらを促進し、発展させ、及び維持する権利を有する。
第三十五条
先住民族は、その社会に対する個人の責任を決定する権利を有する。
第三十六条
1.先住民族、特に国境によって分断された先住民族は、国境を越えて存在する自己の構成員及び他の民族との接触、関係及び協力(精神的、文化的、政治的、経済的及び社会的目的のための活動を含む。)を維持し、及び発展させる権利を有する。
2.国は、先住民族と協議し、及び協力して、1に掲げる権利の行使を促進し、及びその実施を確保するため、効果的な措置をとる。
第三十七条
1.先住民族は、国又はその承継国と締結した条約、協定その他建設的な取決めを認め、遵守し、及び実施する権利並びにこのような条約、協定その他建設的な取決めを国に尊重させる権利を有する。
2.この宣言のいかなる記述も、条約、協定その他建設的な取決めに規定する先住民族の権利を縮小し、又は否定するものと解してはならない。
第三十八条
国は、この宣言の目的を達成するため、先住民族と協議し、及び協力して、立法措置その他の適当な措置をとる。
第三十九条
先住民族は、この宣言に掲げる権利を享受するため、国からの及び国際協力を通じた資金上及び技術上の援助を利用する権利を有する。
第四十条
先住民族は、国又はその他の当事者との紛争を解決するため、公正かつ公平な手続を利用し、及びその手続によって迅速な決定を受ける権利を有し、また、個人的及び集団的権利のあらゆる侵害に対して効果的な救済措置を受ける権利を有する。このような決定に当たっては、関係する先住民族の慣習、伝統、規則及び法制度並びに国際的な人権に十分な考慮を払う。
第四十一条
国際連合、その諸機関及び専門機関並びに他の政府間機関は、特に資金協力及び技術上の援助の実施を通じて、この宣言の十分な実現に貢献する。先住民族に影響を及ぼす問題に関し、先住民族の参加を確保する方法及び手段が定められる。
第四十二条
国際連合、その諸機関(先住問題常設フォーラムを含む。)及び専門機関(国レベルのものを含む。)並びに国は、この宣言の尊重及び十分な適用を促進し、並びにこの宣言の実効性を把握する。
第四十三条
この宣言により認められる権利は、世界の先住民族の生存、尊厳及び福祉のための最低限度の基準を構成する。
第四十四条
この宣言により認められるすべての権利及び自由は、先住民族に属する男性及び女性の個人にひとしく保障される。
第四十五条
この宣言のいかなる記述も、先住民族が現在保有し、又は将来取得し得る権利を縮小し、又は消滅させるものと解してはならない。
第四十六条
1.この宣言のいかなる記述も、国、民族、集団又は個人が、国際連合憲章に反する活動に従事し、又は国際連合憲章に反する行為を行う権利を有することを意味するものと解してはならず、また、主権を有する独立国の領土保全又は政治的な統合を全体又は一部において分割し、又は害するいかなる行為も認め、又は助長するものと解してはならない。
2.この宣言に掲げる権利の行使に当たり、すべての者の人権及び基本的自由は、尊重される。この宣言に掲げる権利の行使については、法によって定められ、かつ、人権に関する国際的な義務に従って課された制限にのみ従う。このような制限は、差別的でないものとし、他の者の権利及び自由を十分認め、及び尊重することを確保する目的並びに民主的社会の公正かつ最も必要な要請に対応するという目的のためにのみ真に必要なものでなければならない。
3.この宣言は、正義、民主主義、人権の尊重、平等、非差別、良い統治及び信義誠実の諸原則に従って解釈される。

  (内閣官房作成)

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