ガウスの歴史を巡るブログ(その日にあった過去の出来事)

 学生時代からの大の旅行好きで、日本中を旅して回りました。その中でいろいろと歴史に関わる所を巡ってきましたが、日々に関わる歴史上の出来事や感想を紹介します。Yahooブログ閉鎖に伴い、こちらに移動しました。

タグ:世界人権宣言

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 今日は、平成時代の2011年(平成23)に、「平泉―仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群―」の世界遺産(文化遺産)への登録が決定した日です。
 「平泉―仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群―」(ひらいずみ―ぶっこくどをあらわすけんちく・ていえん及びこうこがくてきいせきぐん―)は、平成時代の2011年(平成23)6月に登録された世界遺産(文化遺産)です。中尊寺・毛越寺・観自在王院跡・無量光院跡・金鶏山の5件が構成要素となっていて、その拠点に存在する4つの庭園は、奥州藤原氏により、現世における仏国土(浄土)の象徴的な表現、つまり池泉・樹林・金鶏山頂と関連して仏堂を周到に配置することにより実体化した理想郷の光景として造営されました。さらに、重厚に金箔を貼った中尊寺の仏堂(金色堂)は、12世紀から残る唯一のものであり、奥州藤原氏の巨大な富を反映しています。

〇世界遺産(せかいいさん)とは?

 世界遺産は、1972年(昭和47)のユネスコ総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(世界遺産条約)に基づいて世界遺産リストに登録された、遺跡、景観、自然など、人類が共有すべき「顕著な普遍的価値」を持つ物件のことで、移動が不可能な不動産やそれに準ずるものが対象となっていて、文化遺産、自然遺産、複合遺産の3つの種類があります。文化遺産は、顕著な普遍的価値を有する記念物、建造物群、遺跡、文科的景観などで、自然遺産は、顕著な普遍的価値を有する地形や地質、生態系、絶滅のおそれのある動植物の生態・生育地などで、複合遺産は、文化遺産と自然遺産の両方の価値を兼ね備えているものとなっています。
 世界遺産リストに登録されるためには、「世界遺産条約履行のための作業指針」で示されている下記の登録基準のいずれか1つ以上に合致するとともに、真実性(オーセンティシティ)や完全性(インテグリティ)の条件を満たし、締約国の国内法によって、適切な保護管理体制がとられていることが必要とされています。

☆日本の世界遺産一覧(25件)

<文化遺産> 
・法隆寺地域の仏教建造物(奈良県生駒郡斑鳩町) 登録基準①②④⑥―1993年(平成5)12月登録 
【構成遺産】法隆寺、法起寺 
・姫路城(兵庫県姫路市) 登録基準①④―1993年(平成5)12月登録 
【構成遺産】姫路城 
・古都京都の文化財(京都府、滋賀県)登録基準②④―1994年(平成6)12月登録 
【構成遺産】賀茂別雷神社(上賀茂神社)、賀茂御祖神社(下鴨神社)、教王護国寺(東寺)、清水寺、延暦寺、醍醐寺、仁和寺(別称・御室御所)、平等院、宇治上神社、高山寺、西芳寺(別称・苔寺)、天龍寺、鹿苑寺(相国寺塔頭、別称・金閣寺)、慈照寺(相国寺塔頭、別称・銀閣寺)、龍安寺(妙心寺塔頭)、西本願寺(本願寺)、二条城 
・白川郷・五箇山の合掌造り集落(富山県、岐阜県)登録基準④⑤―1995年(平成7)12月登録 
【構成遺産】白川郷荻町集落、五箇山相倉集落、五箇山菅沼集落 
・原爆ドーム(広島県広島市) 登録基準⑥―1996年(平成8)12月 
【構成遺産】原爆ドーム 
・厳島神社(広島県廿日市市) 登録基準①②④⑥―1996年(平成8)12月登録 
【構成遺産】厳島神社 
・古都奈良の文化財(奈良県奈良市) 登録基準②③④⑥―1998年(平成10)12月登録 
【構成遺産】東大寺、興福寺、春日大社、元興寺、薬師寺、唐招提寺、平城宮跡、春日山原始林 
・日光の社寺(栃木県日光市) 登録基準①④⑥―1999年(平成11)12月登録 
【構成遺産】日光東照宮、日光二荒山神社(別宮本宮神社、別宮滝尾神社を含む)、日光山輪王寺 
・琉球王国のグスク及び関連遺産群(沖縄県) 登録基準②③⑥―2000年(平成12)12月登録 
【構成遺産】今帰仁城跡、座喜味城跡、勝連城跡、中城城跡、首里城跡、園比屋武御嶽石門、玉陵、識名園、斎場御嶽 
・紀伊山地の霊場と参詣道(和歌山県、奈良県、三重県) 登録基準②③④⑥―2004年(平成16)7月登録 
【構成遺産】吉野・大峯(吉野山、吉野水分神社、金峯神社、金峯山寺、吉水神社、大峰山寺)、熊野三山(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社、青岸渡寺、那智大滝、那智原始林、補陀洛山寺)、高野山(丹生都比売神社、金剛峯寺、慈尊院、丹生官省符神社)、参詣道(大峯奥駈道、熊野参詣道、高野山町石道) 
・石見銀山遺跡とその文化的景観(島根県大田市) 登録基準②③⑤―2007年(平成19)6月登録 
【構成遺産】銀鉱山跡と鉱山町(銀山柵内、代官所跡、矢滝城跡、矢筈城跡、 石見城跡、大森銀山伝統的重要建造物群保存地区、宮ノ前地区、重要文化財 熊谷家住宅、羅漢寺五百羅漢、佐毘売山神社)、石見銀山街道(鞆ヶ浦道、温泉津沖泊道)、港と港町(鞆ヶ浦、沖泊、温泉津重要伝統的建造物群保存地区)、その他周辺(石見銀山処刑場、千人壷、胴地蔵、人切岩) 
・平泉―仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群―(岩手県西磐井郡平泉町) 登録基準②⑥―2011年(平成23)6月登録 
【構成遺産】中尊寺、毛越寺、観自在王院跡、無量光院跡、金鶏山 
・富士山―信仰の対象と芸術の源泉(静岡県、山梨県) 登録基準③⑥―2013年(平成25)6月登録 
【構成遺産】富士山域(山頂の信仰遺跡群、大宮・村山口登山道、須山口登山道、須走口登山道、吉田口登山道、北口本宮冨士浅間神社、西湖、精進湖、本栖湖、青木ヶ原樹海)、富士山本宮浅間大社、山宮浅間神社、村山浅間神社、須山浅間神社、冨士浅間神社(須走浅間神社)、河口浅間神社 、冨士御室浅間神社、御師住宅(旧外川家住宅)、御師住宅(小佐野家住宅)、山中湖、河口湖、忍野八海(出口池)、忍野八海(お釜池)、忍野八海(底抜池)、忍野八海(銚子池)、忍野八海(湧池)、忍野八海(濁池)、忍野八海(鏡池)、忍野八海(菖蒲池)、船津胎内樹型、吉田胎内樹型、人穴富士講遺跡、白糸ノ滝、三保松原 
・富岡製糸場と絹産業遺産群(群馬県) 登録基準②④―2014年(平成26)6月登録 
【構成遺産】富岡製糸場、田島弥平旧宅、高山社跡、荒船風穴 
・明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業(山口県、鹿児島県、静岡県、岩手県他) 登録基準②④―2015年(平成27)7月登録 
【構成遺産】萩反射炉・恵美須ヶ鼻造船所跡・大板山たたら製鉄遺跡・萩城下町・松下村塾(山口県萩市)、旧集成館・寺山炭窯跡・関吉の疎水溝(鹿児島県鹿児島市)、韮山反射炉(静岡県伊豆の国市)、橋野鉄鉱山(岩手県釜石市)、三重津海軍所跡(佐賀県佐賀市)、小菅修船場、三菱長崎造船所 第三船渠・長崎造船所 ジャイアントカンチレバークレーン・長崎造船所旧木型場・長崎造船所 占勝閣・高島炭鉱・端島炭鉱・旧グラバー住宅(長崎県長崎市)、三角西(旧)港(熊本県宇城市)、三池炭鉱 三池港(福岡県・熊本県)、官営八幡製鐵所(福岡県北九州市)、遠賀川水源地ポンプ室(福岡県中間市) 
・ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献-(東京都台東区) 登録基準①②⑥―2016年(平成28)7月登録 
【構成遺産】国立西洋美術館本館 
・「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群(福岡県宗像市、福津市)登録基準②③―2017年(平成29)7月登録
【構成遺産】沖ノ島、小屋島、御門柱、天狗岩、宗像大社沖津宮遙拝所、宗像大社中津宮、宗像大社辺津宮(福岡県宗像市)、新原・奴山古墳群(福岡県福津市)
・長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産(長崎県、熊本県) 登録基準③―2018年(平成30)6月登録 
【構成遺産】大浦天主堂・外海の出津集落・外海の大野集落(長崎県長崎市)、原城跡(長崎県南島原市)、黒島の集落(長崎県佐世保市)、平戸島の聖地と集落=安満岳と春日集落・中江ノ島(長崎県平戸市)、野崎島の集落跡(長崎県北松浦郡小値賀町)、頭ヶ島の集落(長崎県南松浦郡新上五島町)、久賀島の集落・奈留島の江上集落(長崎県五島市)、天草の﨑津集落(熊本県天草市) 
・百舌鳥・古市古墳群 -古代日本の墳墓群(大阪府堺市、羽曳野市、藤井寺市)登録基準②④―2019年(平成31)7月登録
【構成遺産】大仙陵古墳、田出井山古墳、長塚古墳、永山古墳、丸保山古墳、銭塚古墳、大安寺山古墳、竜佐山古墳、収塚古墳、茶山古墳、孫太夫山古墳、菰山塚古墳、七観音古墳、塚廻古墳、銅亀山古墳、源右衛門山古墳(大阪府堺市堺区)、上石津ミサンザイ古墳、寺山南山古墳(大阪府堺市西区)、ニサンザイ古墳、御廟山古墳、いたすけ古墳、旗塚古墳、善右ヱ門山古墳(大阪府堺市北区)、誉田御廟山古墳、墓山古墳、白鳥陵古墳、二ツ塚古墳、峯ヶ塚古墳、向墓山古墳、誉田丸山古墳、西馬塚古墳、栗塚古墳、東馬塚古墳(大阪府羽曳野市)、仲ツ山古墳、岡ミサンザイ古墳、市ノ山古墳、津堂城山古墳、古室山古墳、大鳥塚古墳、はざみ山古墳、鍋塚古墳、浄元寺山古墳、青山古墳、鉢塚古墳、東山古墳、八島塚古墳、中山塚古墳、野中古墳、助太山古墳(大阪府藤井寺市)
・北海道・北東北の縄文遺跡群(北海道、青森県、岩手県、秋田県)登録基準③⑤―2021年(令和3)7月登録
【構成遺産】キウス周堤墓群(北海道千歳市)、北黄金貝塚(北海道伊達市)、入江・高砂貝塚(北海道洞爺湖町)、大船遺跡(北海道函館市)、垣ノ島遺跡(北海道函館市)、三内丸山遺跡(青森県青森市)、小牧野遺跡(青森県青森市)、是川遺跡(青森県八戸市)、亀ヶ岡石器時代遺跡(青森県つがる市)、田小屋野貝塚(青森県つがる市)、大森勝山遺跡(青森県弘前市)、二ツ森貝塚(青森県七戸町)、大平山元I遺跡(青森県外ヶ浜町)、御所野遺跡(岩手県一戸町)、大湯環状列石(秋田県鹿角市)、伊勢堂岱遺跡(秋田県北秋田市)

<自然遺産>  
・屋久島(鹿児島県熊毛郡屋久島町) 登録基準⑦⑨―1993年(平成5)12月登録 
・白神山地(青森県、秋田県) 登録基準⑨―1993年(平成5)12月登録 
・知床(北海道) 登録基準⑨⑩―2005年(平成17)7月登録 
・小笠原諸島(東京都小笠原村) 登録基準⑨―2011年(平成23)6月登録 
・奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島(鹿児島県、沖縄県) 登録基準⑩―2021年(令和3)7月登録

(登録基準の内容)
① 人類の創造的才能を表現する傑作。
② ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
③ 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
④ 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
⑤ ある文化(または複数の文化)を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例。
⑥ 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの(この基準は他の基準と組み合わせて用いるのが望ましいと世界遺産委員会は考えている)。
⑦ ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。
⑧ 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などが含まれる。
⑨ 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。
⑩ 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。

〇同じ日の過去の出来事(以前にブログで紹介した記事)

1734年(享保19)読本作者・歌人・国学者上田秋成の誕生日(新暦7月25日)詳細
1884年(明治17)岡倉天心とフェノロサが法隆寺夢殿の救世観音を調査詳細
1894年(明治27)「(第1次)高等学校令」が公布(施行は同年9月11日)される詳細
1941年(昭和16)第33回大本営政府連絡会議で、「南方施策促進に関する件」が決定され、同日に上奏裁可される詳細
1943年(昭和18)「学徒戦時動員体制確立要綱」が閣議決定される詳細
1956年(昭和31)作曲家・箏曲家宮城道雄の命日詳細
1993年(平成5)「ウィーン宣言及び行動計画」が世界人権会議により採択される詳細
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 今日は、昭和時代中期の1966年(昭和41)に、国際連合総会で「国際人権規約」が採択された日です。
 「国際人権規約」(こくさいじんけんきやく)は、昭和時代後期の1966年(昭和41)12月16日に国連総会で採択された基本的人権の保護に関する条約で、社会権についてのA規約「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」、自由権についてのB規約「市民的及び政治的権利に関する国際規約」及び、B規約に付属する選択議定書があり、1976年(昭和51)に発効しました。また、1989年(平成元)12月15日、「自由権規約の第2選択議定書」(死刑廃止議定書)も採択され、1991年(平成3)7月11日に発効、さらに、社会権規約の個人通報制度を規定する社会権規約選択議定書も2008年(平成20)に採択され、2013年(平成25)に発効しています。
 これらは、1948年(昭和23)に国連で採択された「世界人権宣言」が、人権に関し諸国家が達成すべき共通の基準を示したにすぎなかったものの、それを国際的に法制化しようとするもので、これによって民族自決権や個人的人権が国際的に保障されるよう定められました。日本では、1979年(昭和54)6月6日に、A・B両規約のみ(選択議定書を除く)国会で批准、6月21日に批准書を寄託し、9月21日に加盟国となりましたが、中等教育の無償化(2012年9月11日に受諾)、労働者への休日の報酬の支払い、公務員のストライキ権の保障については国内法との関係から留保、及び、社会権規約・自由権規約の「警察職員」には消防吏員も含まれると解釈宣言を行っています。
 尚、2019年(令和元)8月現在で、A規約については、署名国数71/締約国数170、B規約については、署名国数74/締約国数173となりました。
 以下に、A・B両規約を掲載しておきますので、ご参照下さい。

〇「国際人権規約」 1966年(昭和41)12月16日に国際連合総会で採択

経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)

 この規約の締約国は、
 国際連合憲章において宣明された原則によれば、人類社会のすべての構成員の固有の尊厳及び平等のかつ奪い得ない権利を認めることが世界における自由、正義及び平和の基礎をなすものであることを考慮し、
 これらの権利が人間の固有の尊厳に由来することを認め、
 世界人権宣言によれば、自由な人間は恐怖及び欠乏からの自由を享受することであるとの理想は、すべての者がその市民的及び政治的権利とともに経済的、社会的及び文化的権利を享有することのできる条件が作り出される場合に初めて達成されることになることを認め、
 人権及び自由の普遍的な尊重及び遵守を助長すべき義務を国際連合憲章に基づき諸国が負っていることを考慮し、
 個人が、他人に対し及びその属する社会に対して義務を負うこと並びにこの規約において認められる権利の増進及び擁護のために努力する責任を有することを認識して、
 次のとおり協定する。

第一部

第一条
1 すべての人民は、自決の権利を有する。この権利に基づき、すべての人民は、その政治的地位を自由に決定し並びにその経済的、社会的及び文化的発展を自由に追求する。
2 すべて人民は、互恵の原則に基づく国際的経済協力から生ずる義務及び国際法上の義務に違反しない限り、自己のためにその天然の富及び資源を自由に処分することができる。人民は、いかなる場合にも、その生存のための手段を奪われることはない。
3 この規約の締約国(非自治地域及び信託統治地域の施政の責任を有する国を含む。)は、国際連合憲章の規定に従い、自決の権利が実現されることを促進し及び自決の権利を尊重する。

第二部

第二条
1 この規約の各締約国は、立法措置その他のすべての適当な方法によりこの規約において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成するため、自国における利用可能な手段を最大限に用いることにより、個々に又は国際的な援助及び協力、特に、経済上及び技術上の援助及び協力を通じて、行動をとることを約束する。
2 この規約の締約国は、この規約に規定する権利が人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生又は他の地位によるいかなる差別もなしに行使されることを保障することを約束する。
3 開発途上にある国は、人権及び自国の経済の双方に十分な考慮を払い、この規約において認められる経済的権利をどの程度まで外国人に保障するかを決定することができる。

第三条
 この規約の締約国は、この規約に定めるすべての経済的、社会的及び文化的権利の享有について男女に同等の権利を確保することを約束する。

第四条
 この規約の締約国は、この規約に合致するものとして国により確保される権利の享受に関し、その権利の性質と両立しており、かつ、民主的社会における一般的福祉を増進することを目的としている場合に限り、法律で定める制限のみをその権利に課すことができることを認める。

第五条
1 この規約のいかなる規定も、国、集団又は個人が、この規約において認められる権利若しくは自由を破壊し若しくはこの規約に定める制限の範囲を超えて制限することを目的とする活動に従事し又はそのようなことを目的とする行為を行う権利を有することを意味するものと解することはできない。
2 いずれかの国において法律、条約、規則又は慣習によって認められ又は存する基本的人権については、この規約がそれらの権利を認めていないこと又はその認める範囲がより狭いことを理由として、それらの権利を制限し又は侵すことは許されない。

第三部

第六条
1 この規約の締約国は、労働の権利を認めるものとし、この権利を保障するため適当な措置をとる。この権利には、すべての者が自由に選択し又は承諾する労働によって生計を立てる機会を得る権利を含む。
2 この規約の締約国が1の権利の完全な実現を達成するためとる措置には、個人に対して基本的な政治的及び経済的自由を保障する条件の下で着実な経済的、社会的及び文化的発展を実現し並びに完全かつ生産的な雇用を達成するための技術及び職業の指導及び訓練に関する計画、政策及び方法を含む。

第七条
 この規約の締約国は、すべての者が公正かつ良好な労働条件を享受する権利を有することを認める。この労働条件は、特に次のものを確保する労働条件とする。
(a) すべての労働者に最小限度次のものを与える報酬
  (i) 公正な賃金及びいかなる差別もない同一価値の労働についての同一報酬。特に、女子については、同一の労働についての同一報酬とともに男子が享受する労働条件に劣らない労働条件が保障されること。
  (ii) 労働者及びその家族のこの規約に適合する相応な生活
(b) 安全かつ健康的な作業条件
(c) 先任及び能力以外のいかなる事由も考慮されることなく、すべての者がその雇用関係においてより高い適当な地位に昇進する均等な機会
(d) 休息、余暇、労働時間の合理的な制限及び定期的な有給休暇並びに公の休日についての報酬

第八条
1 この規約の締約国は、次の権利を確保することを約束する。
(a) すべての者がその経済的及び社会的利益を増進し及び保護するため、労働組合を結成し及び当該労働組合の規則にのみ従うことを条件として自ら選択する労働組合に加入する権利。この権利の行使については、法律で定める制限であって国の安全若しくは公の秩序のため又は他の者の権利及び自由の保護のため民主的社会において必要なもの以外のいかなる制限も課することができない。
(b) 労働組合が国内の連合又は総連合を設立する権利及びこれらの連合又は総連合が国際的な労働組合団体を結成し又はこれに加入する権利
(c) 労働組合が、法律で定める制限であって国の安全若しくは公の秩序のため又は他の者の権利及び自由の保護のため民主的社会において必要なもの以外のいかなる制限も受けることなく、自由に活動する権利
(d) 同盟罷業をする権利。ただし、この権利は、各国の法律に従って行使されることを条件とする。
2 この条の規定は、軍隊若しくは警察の構成員又は公務員による1の権利の行使について合法的な制限を課することを妨げるものではない。
3 この条のいかなる規定も、結社の自由及び団結権の保護に関する千九百四十八年の国際労働機関の条約の締約国が、同条約に規定する保障を阻害するような立法措置を講ずること又は同条約に規定する保障を阻害するような方法により法律を適用することを許すものではない。

第九条
 この規約の締約国は、社会保険その他の社会保障についてのすべての者の権利を認める。

第十条
 この規約の締約国は、次のことを認める。
1 できる限り広範な保護及び援助が、社会の自然かつ基礎的な単位である家族に対し、特に、家族の形成のために並びに扶養児童の養育及び教育について責任を有する間に、与えられるべきである。婚姻は、両当事者の自由な合意に基づいて成立するものでなければならない。
2 産前産後の合理的な期間においては、特別な保護が母親に与えられるべきである。働いている母親には、その期間において、有給休暇又は相当な社会保障給付を伴う休暇が与えられるべきである。
3 保護及び援助のための特別な措置が、出生の他の事情を理由とするいかなる差別もなく、すべての児童及び年少者のためにとられるべきである。児童及び年少者は、経済的及び社会的な搾取から保護されるべきである。児童及び年少者を、その精神若しくは健康に有害であり、その生命に危険があり又はその正常な発育を妨げるおそれのある労働に使用することは、法律で処罰すべきである。また、国は年齢による制限を定め、その年齢に達しない児童を賃金を支払って使用することを法律で禁止しかつ処罰すべきである。

第十一条
1 この規約の締約国は、自己及びその家族のための相当な食糧、衣類及び住居を内容とする相当な生活水準についての並びに生活条件の不断の改善についてのすべての者の権利を認める。締約国は、この権利の実現を確保するために適当な措置をとり、このためには、自由な合意に基づく国際協力が極めて重要であることを認める。
2 この規約の締約国は、すべての者が飢餓から免れる基本的な権利を有することを認め、個々に及び国際協力を通じて、次の目的のため、具体的な計画その他の必要な措置をとる。
(a) 技術的及び科学的知識を十分に利用することにより、栄養に関する原則についての知識を普及させることにより並びに天然資源の最も効果的な開発及び利用を達成するように農地制度を発展させ又は改革することにより、食糧の生産、保存及び分配の方法を改善すること。
(b) 食糧の輸入国及び輸出国の双方の問題に考慮を払い、需要との関連において世界の食糧の供給の衡平な分配を確保すること。
第十二条
1 この規約の締約国は、すべての者が到達可能な最高水準の身体及び精神の健康を享受する権利を有することを認める。
2 この規約の締約国が1の権利の完全な実現を達成するためにとる措置には、次のことに必要な措置を含む。
(a) 死産率及び幼児の死亡率を低下させるための並びに児童の健全な発育のための対策
(b) 環境衛生及び産業衛生のあらゆる状態の改善
(c) 伝染病、風土病、職業病その他の疾病の予防、治療及び抑圧
(d) 病気の場合にすべての者に医療及び看護を確保するような条件の創出

第十三条
1 この規約の締約国は、教育についてのすべての者の権利を認める。締約国は、教育が人格の完成及び人格の尊厳についての意識の十分な発達を指向し並びに人権及び基本的自由の尊重を強化すべきことに同意する。更に、締約国は、教育が、すべての者に対し、自由な社会に効果的に参加すること、諸国民の間及び人種的、種族的又は宗教的集団の間の理解、寛容及び友好を促進すること並びに平和の維持のための国際連合の活動を助長することを可能にすべきことに同意する。
2 この規約の締約国は、1の権利の完全な実現を達成するため、次のことを認める。
(a) 初等教育は、義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとすること。
(b) 種々の形態の中等教育(技術的及び職業的中等教育を含む。)は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、一般的に利用可能であり、かつ、すべての者に対して機会が与えられるものとすること。
(c) 高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること。
(d) 基礎教育は、初等教育を受けなかった者又はその全課程を修了しなかった者のため、できる限り奨励され又は強化されること。
(e) すべての段階にわたる学校制度の発展を積極的に追求し、適当な奨学金制度を設立し及び教育職員の物質的条件を不断に改善すること。
3 この規約の締約国は、父母及び場合により法定保護者が、公の機関によって設置される学校以外の学校であって国によって定められ又は承認される最低限度の教育上の基準に適合するものを児童のために選択する自由並びに自己の信念に従って児童の宗教的及び道徳的教育を確保する自由を有することを尊重することを約束する。
4 この条のいかなる規定も、個人及び団体が教育機関を設置し及び管理する自由を妨げるものと解してはならない。ただし、常に、1に定める原則が遵守されること及び当該教育機関において行なわれる教育が国によって定められる最低限度の基準に適合することを条件とする。

第十四条
 この規約の締約国となる時にその本土地域又はその管轄の下にある他の地域において無償の初等義務教育を確保するに至っていない各締約国は、すべての者に対する無償の義務教育の原則をその計画中に定める合理的な期間内に漸進的に実施するための詳細な行動計画を二年以内に作成しかつ採用することを約束する。

第十五条
1 この規約の締約国は、すべての者の次の権利を認める。
(a) 文化的な生活に参加する権利
(b) 科学の進歩及びその利用による利益を享受する権利
(c) 自己の科学的、文学的又は芸術的作品により生ずる精神的及び物質的利益が保護されることを享受する権利
2 この規約の締約国が1の権利の完全な実現を達成するためにとる措置には、科学及び文化の保存、発展及び普及に必要な措置を含む。
3 この規約の締約国は、科学研究及び創作活動に不可欠な自由を尊重することを約束する。
4 この規約の締約国は、科学及び文化の分野における国際的な連絡及び協力を奨励し及び発展させることによって得られる利益を認める。

第四部

第十六条
1 この規約の締約国は、この規約において認められる権利の実現のためにとった措置及びこれらの権利の実現についてもたらされた進歩に関する報告をこの部の規定に従って提出することを約束する。
2
(a) すべての報告は、国際連合事務総長に提出するものとし、同事務総長は、この規約による経済社会理事会の審議のため、その写しを同理事会に送付する。
(b) 国際連合事務総長は、また、いずれかの専門機関の加盟国であるこの規約の締結によって提出される報告又はその一部が当該専門機関の基本文書によりその任務の範囲内にある事項に関連を有するものである場合には、それらの報告又は関係部分の写しを当該専門機関に送付する。

第十七条
1 この規約の締約国は、経済社会理事会が締約国及び関係専門機関との協議の後この規約の効力発生の後一年以内に作成する計画に従い、報告を段階的に提出する。
2 報告には、この規約に基づく義務の履行程度に影響を及ぼす要因及び障害を記載することができる。
3 関連情報がこの規約の締約国により国際連合又はいずれかの専門機関に既に提供されている場合には、その情報については、再び提供の必要はなく、提供に係る情報について明確に言及することで足りる。

第十八条
 経済社会理事会は、人権及び基本的自由の分野における国際連合憲章に規定する責任に基づき、いずれかの専門機関の任務の範囲内にある事項に関するこの規約の規定の遵守についてもたらされた進歩に関し当該専門機関が同理事会に報告することにつき、当該専門機関と取極を行うことができる。報告には、当該専門機関の権限のある機関がこの規約の当該規定の実施に関して採択した決定及び勧告についての詳細を含ませることができる。

第十九条
 経済社会理事会は、第十六条及び第十七条の規定により締約国が提出する人権に関する報告並びに前条の規定により専門機関が提出する人権に関する報告を、検討及び一般的な性格を有する勧告のため又は適当な場合には情報用として、人権委員会に送付することができる。

第二十条
 この規約の締約国及び関係専門機関は、前条にいう一般的な性格を有する勧告に関する意見又は人権委員会の報告において若しくはその報告で引用されている文書において言及されている一般的な性格を有する勧告に関する意見を、経済社会理事会に提出することができる。

第二十一条
 経済社会理事会は、一般的な性格を有する勧告を付した報告、並びにこの規約の締約国及び専門機関から得た情報であってこの規約において認められる権利の実現のためにとられた措置及びこれらの権利の実現についてもたらされた進歩に関する情報の概要を、総会に随時提出することができる。

第二十二条
 経済社会理事会は、技術援助の供与に関係を有する国際連合の他の機関及びこれらの補助機関並びに専門機関に対し、この部に規定する報告により提起された問題であって、これらの機関がそれぞれの権限の範囲内でこの規約の効果的かつ漸進的な実施に寄与すると認められる国際的措置をとることの適否の決定に当たって参考となるものにつき、注意を喚起することができる。

第二十三条
 この規約の締約国は、この規約において認められる権利の実現のための国際的措置には条約の締結、勧告の採択、技術援助の供与並びに関係国の政府との連携により組織される協議及び検討のための地域会議及び専門家会議の開催のような措置が含まれることに同意する。

第二十四条
 この規約のいかなる規定も、この規約に規定されている事項につき、国際連合の諸機関及び専門機関の任務をそれぞれ定めている国際連合憲章及び専門機関の基本文書の規定の適用を妨げるものと解してはならない。

第二十五条
 この規約のいかなる規定も、すべての人民がその天然の富及び資源を十分かつ自由に享受し及び利用する固有の権利を害するものと解してはならない。

第五部

第二十六条
1 この規約は、国際連合又はいずれかの専門機関の加盟国、国際司法裁判所規程の当事国及びこの規約の締約国となるよう国際連合総会が招請する他の国による署名のために開放しておく。
2 この規約は、批准されなければならない。批准書は、国際連合事務総長に寄託する。
3 この規約は、1に規程する国による加入のために開放しておく。
4 加入は、加入書を国際連合事務総長に寄託することによって行う。
5 国際連合事務総長は、この規約に署名し又は加入したすべての国に対し、各批准書又は各加入書の寄託を通報する。

第二十七条
1 この規約は、三十五番目の批准書又は加入書が国際連合事務総長に寄託された日の後三箇月で効力を生ずる。
2 この規約は、三十五番目の批准書又は加入書が寄託された後に批准し又は加入する国については、その批准書又は加入書が寄託された日の後三箇月で効力を生ずる。

第二十八条
 この規約は、いかなる制限又は例外もなしに連邦国家のすべての地域について適用する。

第二十九条
1 この規約のいずれの締約国も、改正を提案し及び改正案を国際連合事務総長に提出することができる。同事務総長は、直ちに、この規約の締約国に対し、改正案を送付するものとし、締約国による改正案の審議及び投票のための締約国会議の開催についての賛否を同事務総長に通告するよう要請する。締約国の三分の一以上が会議の開催に賛成する場合には、同事務総長は、国際連合の主催の下に会議を招集する。会議において出席しかつ投票する締約国の過半数によって採択された改正案は、承認のため、国際連合総会に提出する。
2 改正は、国際連合総会が承認し、かつ、この規約の締約国の三分の二以上の多数がそれぞれの国の憲法上の手続に従って受諾したときに、効力を生ずる。
3 改正は、効力を生じたときは、改正を受諾した締約国を拘束するものとし、他の締約国は、改正前のこの規約の規定(受諾した従前の改正を含む。)により引き続き拘束される。

第三十条
 第二十六条5の規定により行われる通報にかかわらず、国際連合事務総長は、同条1に規定するすべての国に対し、次の事項を通報する。
(a) 第二十六条の規定による署名、批准及び加入
(b) 第二十七条の規定に基づきこの規約が効力を生ずる日及び前条の規定により改正が効力を生ずる日
第三十一条
1 この規約は、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語をひとしく正文とし、国際連合に寄託される。
2 国際連合事務総長は、この規約の認証謄本を第二十六条に規定するすべての国に送付する。

 以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けて、千九百六十六年十二月十九日にニューヨークで署名のために開放されたこの規約に署名した。

  (署名欄は省略)

市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)

 この規約の締約国は、
 国際連合憲章において宣明された原則によれば、人類社会のすべての構成員の固有の尊厳及び平等のかつ奪い得ない権利を認めることが世界における自由、正義及び平和の基礎をなすものであることを考慮し、
 これらの権利が人間の固有の尊厳に由来することを認め、
 世界人権宣言によれば、自由な人間は市民的及び政治的自由並びに恐怖及び欠乏からの自由を享受するものであるとの理想は、すべての者がその経済的、社会的及び文化的権利とともに市民的及び政治的権利を享有することのできる条件が作り出される場合に初めて達成されることになることを認め、
 人権及び自由の普遍的な尊重及び遵守を助長すべき義務を国際連合憲章に基づき諸国が負っていることを考慮し、
 個人が、他人に対し及びその属する社会に対して義務を負うこと並びにこの規約において認められる権利の増進及び擁護のために努力する責任を有することを認識して、
 次のとおり協定する。

第一部

第一条
1 すべての人民は、自決の権利を有する。この権利に基づき、すべての人民は、その政治的地位を自由に決定し並びにその経済的、社会的及び文化的発展を自由に追求する。
2 すべての人民は、互恵の原則に基づく国際的経済協力から生ずる義務及び国際法上の義務に違反しない限り、自己のためにその天然の富及び資源を自由に処分することができる。人民は、いかなる場合にも、その生存のための手段を奪われることはない。
3 この規約の締約国(非自治地域及び信託統治地域の施政の責任を有する国を含む。)は、国際連合憲章の規定に従い、自決の権利が実現されることを促進し及び自決の権利を尊重する。

第二部

第二条
1 この規約の各締約国は、その領域内にあり、かつ、その管轄の下にあるすべての個人に対し、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生又は他の地位等によるいかなる差別もなしにこの規約において認められる権利を尊重し及び確保することを約束する。
2 この規約の各締約国は、立法措置その他の措置がまだとられていない場合には、この規約において認められる権利を実現するために必要な立法措置その他の措置をとるため、自国の憲法上の手続及びこの規約の規定に従って必要な行動をとることを約束する。
3 この規約の各締約国は、次のことを約束する。
 (a) この規約において認められる権利又は自由を侵害された者が、公的資格で行動する者によりその侵害が行われた場合にも、効果的な救済措置を受けることを確保すること。
 (b) 救済措置を求める者の権利が権限のある司法上、行政上若しくは立法上の機関又は国の法制で定める他の権限のある機関によって決定されることを確保すること及び司法上の救済措置の可能性を発展させること。
 (c) 救済措置が与えられる場合に権限のある機関によって執行されることを確保すること。

第三条
 この規約の締約国は、この規約に定めるすべての市民的及び政治的権利の享有について男女に同等の権利を確保することを約束する。

第四条
1 国民の生存を脅かす公の緊急事態の場合においてその緊急事態の存在が公式に宣言されているときは、この規約の締約国は、事態の緊急性が真に必要とする限度において、この規約に基づく義務に違反する措置をとることができる。ただし、その措置は、当該締約国が国際法に基づき負う他の義務に抵触してはならず、また、人種、皮膚の色、性、言語、宗教又は社会的出身のみを理由とする差別を含んではならない。
2 一の規定は、第六条、第七条、第八条1及び2、第十一条、第十五条、第十六条並びに第十八条の規定に違反することを許すものではない。
3 義務に違反する措置をとる権利を行使するこの規約の締約国は、違反した規定及び違反するに至った理由を国際連合事務総長を通じてこの規約の他の締約国に直ちに通知する。更に、違反が終了する日に、同事務総長を通じてその旨通知する。

第五条
1 この規約のいかなる規定も、国、集団又は個人が、この規約において認められる権利及び自由を破壊し若しくはこの規約に定める制限の範囲を超えて制限することを目的とする活動に従事し又はそのようなことを目的とする行為を行う権利を有することを意味するものと解することはできない。
2 この規約のいずれかの締約国において法律、条約、規則又は慣習によって認められ又は存する基本的人権については、この規約がそれらの権利を認めていないこと又はその認める範囲がより狭いことを理由として、それらの権利を制限し又は侵してはならない。

第三部

第六条
1 すべての人間は、生命に対する固有の権利を有する。この権利は、法律によって保護される。何人も、恣意的にその生命を奪われない。
2 死刑を廃止していない国においては、死刑は、犯罪が行われた時に効力を有しており、かつ、この規約の規定及び集団殺害犯罪の防止及び処罰に関する条約の規定に抵触しない法律により、最も重大な犯罪についてのみ科することができる。この刑罰は、権限のある裁判所が言い渡した確定判決によってのみ執行することができる。
3 生命の剥奪が集団殺害犯罪を構成する場合には、この条のいかなる想定も、この規約の締約国が集団殺害犯罪の防止及び処罰に関する条約の規定に基づいて負う義務を方法のいかんを問わず免れることを許すものではないと了解する。
4 死刑を言い渡されたいかなる者も、特赦又は減刑を求める権利を有する。死刑に対する大赦、特赦又は減刑はすべての場合に与えることができる。
5 死刑は、十八歳未満の者が行った犯罪について科してはならず、また、妊娠中の女子に対して執行してはならない。
6 この条のいかなる規定も、この規約の締約国により死刑の廃止を遅らせ又は妨げるために援用されてはならない。

第七条
 何人も、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けない。特に、何人も、その自由な同意なしに医学的又は科学的実験を受けない。

第八条
1 何人も、奴隷の状態に置かれない。あらゆる形態の奴隷制度及び奴隷取引は、禁止する。
2 何人も、隷属状態に置かれない。
3
(a) 何人も、強制労働に服することを要求されない。
(b) (a)の規定は、犯罪に対する刑罰として強制労働を伴う拘禁刑を科することができる国において、権限のある裁判所による刑罰の言渡しにより強制労働をさせることを禁止するものと解してはならない。
(c) この三の適用上、「強制労働」には、次のものを含まない。
(i) 作業又は役務であって、(b)の規定において言及されておらず、かつ、裁判所の合法的な命令によって抑留されている者又はその抑留を条件付きで免除されている者に通常要求されるもの
(ii) 軍事的性質の役務及び、良心的兵役拒否が認められている国においては、良心的兵役拒否者が法律によって要求される国民的役務
(iii) 社会の存立又は福祉を脅かす緊急事態又は災害の場合に要求される役務
(iv) 市民としての通常の義務とされる作業又は役務

第九条
1 すべての者は、身体の自由及び安全についての権利を有する。何人も、恣意的に逮捕され又は抑留されない。何人も、法律で定める理由及び手続によらない限り、その自由を奪われない。
2 逮捕される者は、逮捕の時にその理由を告げられるものとし、自己に対する被疑事実を速やかに告げられる。
3 刑事上の罪に問われて逮捕され又は抑留された者は、裁判官又は司法権を行使することが法律によって認められている他の官憲の面前に速やかに連れて行かれるものとし、妥当な期間内に裁判を受ける権利又は釈放される権利を有する。裁判に付される者を抑留することが原則であってはならず、釈放に当たっては、裁判その他の司法上の手続のすべての段階における出頭及び必要な場合における判決の執行のための出頭が保証されることを条件とすることができる。
4 逮捕又は抑留によって自由を奪われた者は、裁判所がその抑留が合法的であるかどうかを遅滞なく決定すること及びその抑留が合法的でない場合にはその釈放を命ずることができるように、裁判所において手続をとる権利を有する。
5 違法に逮捕され又は抑留された者は、賠償を受ける権利を有する。

第十条
1 自由を奪われたすべての者は、人道的にかつ人間の固有の尊厳を尊重して、取り扱われる。
2
(a) 被告人は、例外的な事情がある場合を除くほか有罪の判決を受けた者とは分離されるものとし、有罪の判決を受けていない者としての地位に相応する別個の取扱いを受ける。
(b) 少年の被告人は、成人とは分離されるものとし、できる限り速やかに裁判に付される。
3 行刑の制度は、被拘禁者の矯正及び社会復帰を基本的な目的とする処遇を含む。少年の犯罪者は、成人とは分離されるものとし、その年齢及び法的地位に相応する取扱いを受ける。

第十一条
 何人も、契約上の義務を履行することができないことのみを理由として拘禁されない。

第十二条
1 合法的にいずれかの国の領域内にいるすべての者は、当該領域内において、移動の自由及び居住の自由についての権利を有する。
2 すべての者は、いずれの国(自国を含む。)からも自由に離れることができる。
3 1及び2の権利は、いかなる制限も受けない。ただし、その制限が、法律で定められ、国の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳又は他の者の権利及び自由を保護するために必要であり、かつ、この規約において認められる他の権利と両立するものである場合は、この限りでない。
4 何人も、自国に戻る権利を恣意的に奪われない。

第十三条
 合法的にこの規約の締約国の領域内にいる外国人は、法律に基づいて行われた決定によってのみ当該領域から追放することができる。国の安全のためのやむを得ない理由がある場合を除くほか、当該外国人は、自己の追放に反対する理由を提示すること及び権限のある機関又はその機関が特に指名する者によって自己の事案が審査されることが認められるものとし、この為にその機関又はその者に対する代理人の出頭が認められる。

第十四条
1 すべての者は、裁判所の前に平等とする。すべての者は、その刑事上の罪の決定又は民事上の権利及び義務の争いについての決定のため、法律で設置された、権限のある、独立の、かつ、公平な裁判所による公正な公開審理を受ける権利を有する。報道機関及び公衆に対しては、民主的社会における道徳、公の秩序若しくは国の安全を理由として、当事者の私生活の利益のため必要な場合において又はその公開が司法の利益を害することとなる特別な状況において裁判所が真に必要があると認める限度で、裁判の全部又は一部を公開しないことができる。もっとも、刑事訴訟又は他の訴訟において言い渡される判決は、少年の利益のために必要がある場合又は当該手続が夫婦間の争い若しくは児童の後見に関するものである場合を除くほか、公開する。
2 刑事上の罪に問われているすべての者は、法律に基づいて有罪とされるまでは、無罪と推定される権利を有する。
3 すべての者は、その刑事上の罪の決定について、十分平等に、少なくとも次の保障を受ける権利を有する。
(a) その理解する言語で速やかにかつ詳細にその罪の性質及び理由を告げられること。
(b) 防御の準備のために十分な時間及び便益を与えられ並びに自ら選任する弁護人と連絡すること。
(c) 不当に遅延することなく裁判を受けること。
(d) 自ら出席して裁判を受け及び、直接に又は自ら選任する弁護人を通じて、防御すること。弁護人がいない場合には、弁護人を持つ権利を告げられること。司法の利益のために必要な場合には、十分な支払手段を有しないときは自らその費用を負担することなく、弁護人を付されること。
(e) 自己に不利な証人を尋問し又はこれに対し尋問させること並びに自己に不利な証人と同じ条件で自己のための証人の出席及びこれに対する尋問を求めること。
(f) 裁判所において使用される言語を理解すること又は話すことができない場合には、無料で通訳の援助を受けること。
(g) 自己に不利益な供述又は有罪の自白を強要されないこと。
4 少年の場合には、手続は、その年齢及びその更生の促進が望ましいことを考慮したものとする。
5 有罪の判決を受けたすべての者は、法律に基づきその判決及び刑罰を上級の裁判所によって再審理される権利を有する。
6 確定判決によって有罪と決定された場合において、その後に、新たな事実又は新しく発見された事実により誤審のあったことが決定的に立証されたことを理由としてその有罪の判決が破棄され又は赦免が行われたときは、その有罪の判決の結果刑罰に服した者は、法律に基づいて補償を受ける。ただし、その知られなかった事実が適当な時に明らかにされなかったことの全部又は一部がその者の責めに帰するものであることが証明される場合は、この限りでない。
7 何人も、それぞれの国の法律及び刑事手続に従って既に確定的に有罪又は無罪の判決を受けた行為について再び裁判され又は処罰されることはない。

第十五条
1 何人も、実行の時に国内法又は国際法により犯罪を構成しなかった作為又は不作為を理由として有罪とされることはない。何人も、犯罪が行われた時に適用されていた刑罰よりも重い刑罰を科されない。犯罪が行われた後により軽い刑罰を科する規定が法律に設けられる場合には、罪を犯した者は、その利益を受ける。
2 この条のいかなる規定も、国際社会の認める法の一般原則により実行の時に犯罪とされていた作為又は不作為を理由として裁判しかつ処罰することを妨げるものでない。

第十六条
 すべての者は、すべての場所において、法律の前に人として認められる権利を有する。

第十七条
1 何人も、その私生活、家族、住居若しくは通信に対して恣意的に若しくは不法に干渉され又は名誉及び信用を不法に攻撃されない。
2 すべての者は、1の干渉又は攻撃に対する法律の保護を受ける権利を有する。

第十八条
1 すべての者は、思想、良心及び宗教の自由についての権利を有する。この権利には、自ら選択する宗教又は信念を受け入れ又は有する自由並びに、単独で又は他の者と共同して及び公に又は私的に、礼拝、儀式、行事及び教導によってその宗教又は信念を表明する自由を含む。
2 何人も、自ら選択する宗教又は信念を受け入れ又は有する自由を侵害するおそれのある強制を受けない。
3 宗教又は信念を表明する自由については、法律で定める制限であって公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳又は他の者の基本的な権利及び自由を保護するために必要なもののみを課することができる。
4 この規約の締約国は父母及び場合により法定保護者が、自己の信念に従って児童の宗教的及び道徳的教育を確保する自由を有することを尊重することを約束する。

第十九条
1 すべての者は、干渉されることなく意見を持つ権利を有する。
2 すべての者は、表現の自由についての権利を有する。この権利には、口頭、手書き若しくは印刷、芸術の形態又は自ら選択する他の方法により、国境とのかかわりなく、あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む。
3 2の権利の行使には、特別の義務及び責任を伴う。したがって、この権利の行使については、一定の制限を課すことができる。ただし、その制限は、法律によって定められ、かつ、次の目的のために必要とされるものに限る。
(a) 他の者の権利又は信用の尊重
(b) 国の安全、公の秩序又は公衆の健康若しくは道徳の保護

第二十条
1 戦争のためのいかなる宣伝も、法律で禁止する。
2 差別、敵意又は暴力の扇動となる国民的、人種的又は宗教的憎悪の唱道は、法律で禁止する。

第二十一条
 平和的な集会の権利は、認められる。この権利の行使については、法律で定める制限であって国の安全若しくは公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳の保護又は他の者の権利及び自由の保護のため民主的社会において必要なもの以外のいかなる制限も課することができない。

第二十二条
1 すべての者は、結社の自由についての権利を有する。この権利には、自己の利益の保護のために労働組合を結成し及びこれに加入する権利を含む。
2 1の権利の行使については、法律で定める制限であって国の安全若しくは公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳の保護又は他の者の権利及び自由の保護のため民主的社会において必要なもの以外のいかなる制限も課することができない。この条の規定は、1の権利の行使につき、軍隊及び警察の構成員に対して合法的な制限を課することを妨げるものではない。
3 この条のいかなる規定も、結社の自由及び団結権の保護に関する千九百四十八年の国際労働機関の条約の締約国が、同条約に規定する保障を阻害するような立法措置を講ずること又は同条約に規定する保障を阻害するような方法により法律を適用することを許すものではない。

第二十三条
1 家族は、社会の自然かつ基礎的な単位であり、社会及び国による保護を受ける権利を有する。
2 婚姻をすることができる年齢の男女が婚姻をしかつ家族を形成する権利は、認められる。
3 婚姻は、両当事者の自由かつ完全な合意なしには成立しない。
4 この規約の締約国は、婚姻中及び婚姻の解消の際に、婚姻に係る配偶者の権利及び責任の平等を確保するため、適当な措置をとる。その解消の場合には、児童に対する必要な保護のため、措置がとられる。

第二十四条
1 すべての児童は、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、国民的若しくは社会的出身、財産又は出生によるいかなる差別もなしに、未成年者としての地位に必要とされる保護の措置であって家族、社会及び国による措置について権利を有する。
2 すべての児童は、出生の後直ちに登録され、かつ、氏名を有する。
3 すべての児童は、国籍を取得する権利を有する。

第二十五条
 すべての市民は、第二条に規定するいかなる差別もなく、かつ、不合理な制限なしに、次のことを行う権利及び機会を有する。
(a) 直接に、又は自由に選んだ代表者を通じて、政治に参与すること。
(b) 普通かつ平等の選挙権に基づき秘密投票により行われ、選挙人の意思の自由な表明を保障する真正な定期的選挙において、投票し及び選挙されること。
(c) 一般的な平等条件の下で自国の公務に携わること。

第二十六条
 すべての者は、法律の前に平等であり、いかなる差別もなしに法律による平等の保護を受ける権利を有する。このため、法律は、あらゆる差別を禁止し及び人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生又は他の地位等のいかなる理由による差別に対しても平等のかつ効果的な保護をすべての者に保障する。

第二十七条
 種族的、宗教的又は言語的少数民族が存在する国において、当該少数民族に属する者は、その集団の他の構成員とともに自己の文化を享有し、自己の宗教を信仰しかつ実践し又は自己の言語を使用する権利を否定されない。

第四部

第二十八条
1 人権委員会(以下「委員会」という。)を設置する。委員会は、十八人の委員で構成するものとして、この部に定める任務を行う。
2 委員会は、高潔な人格を有し、かつ、人権の分野において能力を認められたこの規約の締約国の国民で構成する。この場合において、法律関係の経験を有する者の参加が有益であることに考慮を払う。
3 委員会の委員は、個人の資格で、選挙され及び職務を遂行する。

第二十九条
1 委員会の委員は、前条に定める資格を有し、かつ、この規約の締約国により選挙のために指名された者の名簿の中から秘密投票により選出される。
2 この規約の各締約国は、一人又は二人を指名することができる。指名される者は、指名する国の国民とする。
3 いずれの者も、再指名される資格を有する。

第三十条
1 委員会の委員の最初の選挙は、この規約の効力発生の日の後六箇月以内に行う。
2 第三十四条の規定に従って空席(第三十三条の規定により宣言された空席をいう。)を補充するための選挙の場合を除くほか、国際連合事務総長は、委員会の委員の選挙の日の遅くとも四箇月前までに、この規約の締約国に対し、委員会の委員に指名された者の氏名を三箇月以内に提出するよう書面で要請する。
3 国際連合事務総長は、2にいう指名された者のアルファベット順による名簿(これらの者を指名した締約国名を表示した名簿とする。)を作成し、名簿を各選挙の日の遅くとも一箇月前までにこの規約の締約国に送付する。
4 委員会の委員の選挙は、国際連合事務総長により国際連合本部に招集されるこの規約の締約国の会合において行う。この会合は、この規約の締約国の三分の二をもって定足数とする。この会合においては、出席しかつ投票する締約国の代表によって投じられた票の最多数で、かつ、過半数の票を得た指名された者をもって委員会に選出された委員とする。

第三十一条
1 委員会は、1の国の国民を二人以上含むことができない。
2 委員会の選挙に当たっては、委員の配分が地理的に衡平に行われること並びに異なる文明形態及び主要な法体系が代表されることを考慮に入れる。

第三十二条
1 委員会の委員は、四年の任期で選出される。委員は、再指名された場合には、再選される資格を有する。ただし、最初の選挙において選出された委員のうち九人の委員の任期は、二年で終了するものとし、これらの九人の委員は、最初の選挙の後直ちに、第三十条4に規定する会合において議長によりくじ引で選ばれる。
 任期満了の際の選挙は、この部の前諸条の規定に従って行う。

第三十三条
1 委員会の委員が一時的な不在以外の理由のためその職務を遂行することができなくなったことを他の委員が一致して認める場合には、委員会の委員長は国際連合事務総長にその旨を通知するものとし、同事務総長は、当該委員の職が空席となったことを宣言する。
2 委員会の委員が死亡し又は辞任した場合には、委員長は、直ちに国際連合事務総長にその旨を通知するものとし、同事務総長は、死亡し又は辞任した日から当該委員の職が空席となったことを宣言する。

第三十四条
1 前条の規定により空席が宣言された場合において、当該宣言の時から六箇月以内に交代される委員の任期が満了しないときは、国際連合事務総長は、この規約の各締約国にその旨を通知する。各締約国は、空席を補充するため、二箇月以内に第二十九条の規定により指名された者の氏名を提出することができる。
2 国際連合事務総長は、1にいう指名された者のアルファベット順による名簿を作成し、この規約の締約国に送付する。空席を補充するための選挙は、この部の関連規定に従って行う。
3 前条の規定により宣言された空席を補充するために選出された委員会の委員は、同条の規定により委員会における職が空席となった委員の残余の期間在任する。

第三十五条
 委員会の委員は、国際連合総会が委員会の任務の重要性を考慮して決定する条件に従い、同総会の承認を得て、国際連合の財源から報酬を受ける。

第三十六条
 国際連合事務総長は、委員会がこの規約に定める任務を効果的に遂行するために必要な職員及び便益を提供する。

第三十七条
1 国際連合事務総長は、委員会の最初の会合を国際連合本部に招集する。
2 委員会は、最初の会合の後は、手続規則に定める時期に会合する。
3 委員会は、通常、国際連合本部又はジュネーブにある国際連合事務所において会合する。

第三十八条

 委員会のすべての委員は、職務の開始に先立ち、公開の委員会において、職務を公平かつ良心的に遂行する旨の厳粛な宣誓を行う。

第三十九条

1 委員会は、役員を二年の任期で選出する。役員は、再選されることができる。

2 委員会は、手続規則を定める。この手続規則には、特に次のことを定める。

(a) 十二人の委員をもって定足数とすること。
(b) 委員会の決定は、出席する委員が投ずる票の過半数によって行うこと。
第四十条
1 この規約の締約国は、(a)当該締約国についてこの規約が効力を生ずる時から一年以内に、(b)その後は委員会が要請するときに、この規約において認められる権利の実現のためにとった措置及びこれらの権利の享受についてもたらされた進歩に関する報告を提出することを約束する。
2 すべての報告は、国際連合事務総長に提出するものとし、同事務総長は、検討のため、これらの報告を委員会に送付する。報告には、この規約の実施に影響を及ぼす要因及び障害が存在する場合には、これらの要因及び障害を記載する。
3 国際連合事務総長は、委員会との協議の後、報告に含まれるいずれかの専門機関の権限の範囲内にある事項に関する部分の写しを当該専門機関に送付することができる。
4 委員会は、この規約の締約国の提出する報告を検討する。委員会は、委員会の報告及び適当と認める一般的な性格を有する意見を締約国に送付しなければならず、また、この規約の締約国から受領した報告の写しとともに当該一般的な性格を有する意見を経済社会理事会に送付することができる。
5 この規約の締約国は、四の規定により送付される一般的な性格を有する意見に関する見解を委員会に提示することができる。

第四十一条
1 この規約の締約国は、この規約に基づく義務が他の締約国によって履行されていない旨を主張するいずれかの締約国からの通報を委員会が受理しかつ検討する権限を有することを認めることを、この条の規定に基づいていつでも宣言することができる。この条の規定に基づく通報は、委員会の当該権限を自国について認める宣言を行った締約国による通報である場合に限り、受理しかつ検討することができる。委員会は、宣言を行っていない締約国についての通報を受理してはならない。この条の規定により受理される通報は、次の手続に従って取り扱う。
(a) この規約の締約国は、他の締約国がこの規約を実施していないと認める場合には、書面による通知により、その事態につき当該他の締約国の注意を喚起することができる。通知を受領する国は、通知の受領の後三箇月以内に、当該事態について説明する文書その他の文書を、通知を送付した国に提供する。これらの文書は、当該事態について既にとられ、現在とっており又は将来とることができる国内的な手続及び救済措置に、可能かつ適当な範囲において、言及しなければならない。
(b) 最初の通知の受領の後六箇月以内に当該事案が関係締約国の双方の満足するように調整されない場合には、いずれの一方の締約国も、委員会及び他方の締約国に通告することにより当該事案を委員会に付託する権利を有する。
(c) 委員会は、付託された事案について利用し得るすべての国内的な救済措置がとられかつ尽くされたことを確認した後に限り、一般的に認められた国際法の原則に従って、付託された事案を取り扱う。ただし、救済措置の実施が不当に遅延する場合は、この限りでない。
(d) 委員会は、この条の規定により通報を検討する場合には、非公開の会合を開催する。
(e) (c)の規定に従うことを条件として、委員会は、この規約において認められる人権及び基本的自由の尊重を基礎として事案を友好的に解決するため、関係締約国に対してあっ旋を行う。
(f) 委員会は、付託されたいずれの事案についても、(b)にいう関係締約国に対し、あらゆる関連情報を提供するよう要請することができる。
(g) (b)にいう関係締約国は、委員会において事案が検討されている間において代表を出席させる権利を有するものとし、また、口頭又は書面により意見を提出する権利を有する。
(h) 委員会は、(b)の通告を受領した日の後十二箇月以内に、報告を提出する。報告は、各事案ごとに、関係締約国に送付する。
(i) (e)の規定により解決に到達した場合には、委員会は、事実及び到達した解決について簡潔に記述したものを報告する。
(ii) (e)の規定により解決に到達しない場合には、委員会は、事実について簡潔に記述したものを報告するものとし、当該報告に関係締約国の口頭による意見の記録及び書面による意見を添付する。
2 この条の規定は、この規約の十の締約国が1の規定に基づく宣言を行った時に効力を生ずる。宣言は、締約国が国際連合事務総長に寄託するものとし、同事務総長は、その写しを他の締約国に送付する。宣言は、同事務総長に対する通告によりいつでも撤回することができる。撤回は、この条の規定に従って既に送付された通報におけるいかなる事案の検討をも妨げるものではない。宣言を撤回した締約国による新たな通報は、同事務総長がその宣言の撤回の通告を受領した後は、当該締約国が新たな宣言を行わない限り、受理しない。

第四十二条
1
(a) 前条の規定により委員会に付託された事案が関係締約国の満足するように解決されない場合には、委員会は、関係締約国の事前の同意を得て、特別調停委員会(以下「調停委員会」という。)を設置することができる。調停委員会は、この規約の尊重を基礎として当該事案を友好的に解決するため、関係締約国に対してあっ旋を行う。
(b) 調停委員会は、関係締約国が容認する五人の者で構成する。調停委員会の構成について三箇月以内に関係締約国が合意に達しない場合には、合意が得られない調停委員会の委員については、委員会の秘密投票により、三分の二以上の多数による議決で、委員会の委員の中から選出する。
2 調停委員会の委員は、個人の資格で、職務を遂行する。委員は、関係締約国、この規約の締約国でない国又は前条の規定に基づく宣言を行っていない締約国の国民であってはならない。
3 調停委員会は、委員長を選出し及び手続規則を採択する。
4 調停委員会の会合は、通常、国際連合本部又はジュネーブにある国際連合事務所において開催する。もっとも、この会合は、調停委員会が国際連合事務総長及び関係締約国との協議の上決定する他の適当な場所において開催することができる。
5 第三十六条の規定により提供される事務局は、また、この条の規定に基づいて設置される調停委員会のために役務を提供する。
6 委員会が受領しかつ取りまとめる情報は、調停委員会の利用に供しなければならず、また、調停委員会は、関係締約国に対し、他のあらゆる関連情報を提供するよう要請することができる。
7 調停委員会は、事案を十分に検討した後に、かつ、検討のため事案を取り上げた後いかなる場合にも十二箇月以内に、関係締約国に通知するため、委員会の委員長に報告を提出する。
(a) 十二箇月以内に事案の検討を終了することができない場合には、調停委員会は、事案の検討状況について簡潔に記述したものを報告する。
(b) この規約において認められる人権の尊重を基礎として事案の友好的な解決に到達した場合には、調停委員会は、事実及び到達した解決について簡潔に記述したものを報告する。
(c) (b)に規定する解決に到達しない場合には、調停委員会の報告には、関係締約国間の係争問題に係るすべての事実関係についての調査結果及び当該事案の友好的な解決の可能性に関する意見を記載するとともに関係締約国の口頭による意見の記録及び書面による意見を添付する。
(d) (c)の規定により調停委員会の報告が提出される場合には、関係締約国は、その報告の受領の後三箇月以内に、委員会の委員長に対し、調停委員会の報告の内容を受諾するかどうかを通告する。
8 この条の規定は、前条の規定に基づく委員会の任務に影響を及ぼすものではない。
9 関係締約国は、国際連合事務総長が作成する見積りに従って、調停委員会の委員に係るすべての経費を平等に分担する。
10 国際連合事務総長は、必要なときは、9の規定による関係締約国の経費の分担に先立って調停委員会の委員の経費を支払う権限を有する。

第四十三条
 委員会の委員及び前条の規定に基づいて設置される調停委員会の委員は、国際連合の特権及び免除に関する条約の関連規定に規定する国際連合のための職務を行う専門家の便益、特権及び免除を享受する。

第四十四条
 この規約の実施に関する規定は、国際連合及び専門機関の基本文書並びに国際連合及び専門機関において作成された諸条約により又はこれらの基本文書及び諸条約に基づき人権の分野に関し定められた手続を妨げることなく適用するものとし、この規約の締約国の間で効力を有する一般的な又は特別の国際取極による紛争の解決のため、この規約の締約国が他の手続を利用することを妨げるものではない。

第四十五条
 委員会は、その活動に関する年次報告を経済社会理事会を通じて国際連合総会に提出する。

第五部

第四十六条
 この規約のいかなる規定も、この規約に規定されている事項につき、国際連合の諸機関及び専門機関の任務をそれぞれ定めている国際連合憲章及び専門機関の基本文書の規定の適用を妨げるものと解してはならない。

第四十七条
 この規約のいかなる規定も、すべての人民がその天然の富及び資源を十分かつ自由に享受し及び利用する固有の権利を害するものと解してはならない。

第六部

第四十八条
1 この規約は、国際連合又はいずれかの専門機関の加盟国、国際司法裁判所規程の当事国及びこの規約の締約国となるよう国際連合総会が招請する他の国による署名のために開放しておく。
2 この規約は、批准されなければならない。批准書は、国際連合事務総長に寄託する。
3 この規約は、1に規定する国による加入のために開放しておく。
4 加入は、加入書を国際連合事務総長に寄託することによって行う。
5 国際連合事務総長は、この規約に署名し又は加入したすべての国に対し、各批准書又は各加入書の寄託を通報する。

第四十九条
1 この規約は、三十五番目の批准書又は加入書が国際連合事務総長に寄託された日の後三箇月で効力を生ずる。
2 この規約は、三十五番目の批准書又は加入書が寄託された後に批准し又は加入する国については、その批准書又は加入書が寄託された日の後三箇月で効力を生ずる。

第五十条
 この規約は、いかなる制限又は例外もなしに、連邦国家のすべての地域について適用する。

第五十一条
1 この規約のいずれの締約国も、改正を提案し及び改正案を国際連合事務総長に提出することができる。同事務総長は、直ちに、この規約の締約国に対し、改正案を送付するものとし、締約国による改正案の審議及び投票のための締約国会議の開催についての賛否を同事務総長に通告するよう要請する。締約国の三分の一以上が会議の開催に賛成する場合には、同事務総長は、国際連合の主催の下に会議を招集する。会議において出席しかつ投票する締約国の過半数によって採択された改正案は、承認のため、国際連合総会に提出する。
2 改正は、国際連合総会が承認し、かつ、この規約の締約国の三分の二以上の多数がそれぞれの国の憲法上の手続に従って受諾したときに、効力を生ずる。
3 改正は、効力を生じたときは、改正を受諾した締約国を拘束するものとし、他の締約国は、改正前のこの規約の規定(受諾した従前の改正を含む。)により引き続き拘束される。

第五十二条
 第四十八条五の規定により行われる通報にかかわらず、国際連合事務総長は、同条1に規定するすべての国に対し、次の事項を通報する。
(a) 第四十八条の規定による署名、批准及び加入
(b) 第四十九条の規定に基づきこの規約が効力を生ずる日及び前条の規定により改正が効力を生ずる日
第五十三条
1 この規約は、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語をひとしく正文とし、国際連合に寄託される。
2 国際連合事務総長は、この規約の認証謄本を第四十八条に規定するすべての国に送付する。

 以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けて、千九百六十六年十二月十九日にニューヨークで署名のために開放されたこの規約に署名した。

 (署名欄は省略)

      「ウィキソース」より

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1890年(明治23)東京市内と横浜市内の間で日本初の電話事業が開始する(電話創業の日)詳細
1907年(明治40)洋画家浅井忠の命日詳細
1932年(昭和7)東京市日本橋で白木屋大火災が起きる詳細
1971年(昭和46)全国4番目の地下鉄の札幌市営地下鉄初の北二四条駅~真駒内駅間(南北線)が開業する詳細
1972年(昭和47)全国5番目の地下鉄の横浜市営地下鉄初の伊勢佐木長者町駅~上大岡駅間(1号線)が開業する詳細
1988年(昭和63)洋画家小磯良平の命日詳細

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kokurensoukai001
 今日は、昭和時代後期の1976年(昭和51)に、「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」が発効した日です。
 「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(けいざいてき、しゃかいてきおよびぶんかてきけんりにかんするこくさいきやく)は、社会権を中心とする人権の国際的な保障に関する多国間条約で、英語では、International Covenant on Economic, Social and Cultural Rights、(ICESCR)と言いました。1948年(昭和23)に、第3回国連総会で「世界人権宣言」が採択されましたが、同宣言は通常は法的拘束力を欠くものと考えられるため、その条約化を行ないいっそう詳細な規定を設けることを目的として作成され、1966年(昭和41)12月16日に、第21回国際連合総会で採択されます。
 その内容は、社会権的基本権に関して当事国に権利保障を義務づけ、漸進的にその実現を求める方式をとり、各当事国は、これらの権利の実現のためにとった措置および達成された進歩について定期的に報告する義務を負うようにされました。同年12月19日に、ニューヨークで署名のため開放され、1976年(昭和51)1月3日に効力を発生しましたが、2021年(令和3)12月現在、署名国は71ヶ国、締約国は171ヶ国となっています。
 尚、日本は、1978年(昭和53)5月30日に署名し、1979年(昭和54)6月21日に批准、それにより、同年9月21日に日本について効力を生じました。
 以下に、「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」の日本語訳を掲載しておきますので、ご参照下さい。

〇「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」1966年(昭和41)12月16日採択、1976年(昭和51)1月3日発効

<日本語訳>

前文
この規約の締約国は、
国際連合憲章において宣明された原則によれば、人類社会のすべての構成員の固有の尊厳及び平等のかつ奪い得ない権利を認めることが世界における自由、正義及び平和の基礎をなすものであることを考慮し、
これらの権利が人間の固有の尊厳に由来することを認め、
世界人権宣言によれば、自由な人間は恐怖及び欠乏からの自由を享受することであるとの理想は、すべての者がその市民的及び政治的権利とともに経済的、社会的及び文化的権利を享有することのできる条件が作り出される場合に初めて達成されることになることを認め、
人権及び自由の普遍的な尊重及び遵守を助長すべき義務を国際連合憲章に基づき諸国が負っていることを考慮し、
個人が、他人に対し及びその属する社会に対して義務を負うこと並びにこの規約において認められる権利の増進及び擁護のために努力する責任を有することを認識して、
次のとおり協定する。

第1部

第1条
すべての人民は、自決の権利を有する。この権利に基づき、すべての人民は、その政治的地位を自由に決定し並びにその経済的、社会的及び文化的発展を自由に追求する。
すべて人民は、互恵の原則に基づく国際的経済協力から生ずる義務及び国際法上の義務に違反しない限り、自己のためにその天然の富及び資源を自由に処分することができる。人民は、いかなる場合にも、その生存のための手段を奪われることはない。
この規約の締約国(非自治地域及び信託統治地域の施政の責任を有する国を含む。)は、国際連合憲章の規定に従い、自決の権利が実現されることを促進し及び自決の権利を尊重する。

第2部

第2条
この規約の各締約国は、立法措置その他のすべての適当な方法によりこの規約において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成するため、自国における利用可能な手段を最大限に用いることにより、個々に又は国際的な援助及び協力、特に、経済上及び技術上の援助及び協力を通じて、行動をとることを約束する。
この規約の締約国は、この規約に規定する権利が人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生又は他の地位によるいかなる差別もなしに行使されることを保障することを約束する。
開発途上にある国は、人権及び自国の経済の双方に十分な考慮を払い、この規約において認められる経済的権利をどの程度まで外国人に保障するかを決定することができる。

第3条
この規約の締約国は、この規約に定めるすべての経済的、社会的及び文化的権利の享有について男女に同等の権利を確保することを約束する。

第4条
この規約の締約国は、この規約に合致するものとして国により確保される権利の享受に関し、その権利の性質と両立しており、かつ、民主的社会における一般的福祉を増進することを目的としている場合に限り、法律で定める制限のみをその権利に課すことができることを認める。

第5条
この規約のいかなる規定も、国、集団又は個人が、この規約において認められる権利若しくは自由を破壊し若しくはこの規約に定める制限の範囲を超えて制限することを目的とする活動に従事し又はそのようなことを目的とする行為を行う権利を有することを意味するものと解することはできない。
いずれかの国において法律、条約、規則又は慣習によって認められ又は存する基本的人権については、この規約がそれらの権利を認めていないこと又はその認める範囲がより狭いことを理由として、それらの権利を制限し又は侵すことは許されない。

第3部

第6条
この規約の締約国は、労働の権利を認めるものとし、この権利を保障するため適当な措置をとる。この権利には、すべての者が自由に選択し又は承諾する労働によって生計を立てる機会を得る権利を含む。
この規約の締約国が1の権利の完全な実現を達成するためとる措置には、個人に対して基本的な政治的及び経済的自由を保障する条件の下で着実な経済的、社会的及び文化的発展を実現し並びに完全かつ生産的な雇用を達成するための技術及び職業の指導及び訓練に関する計画、政策及び方法を含む。

第7条
この規約の締約国は、すべての者が公正かつ良好な労働条件を享受する権利を有することを認める。この労働条件は、特に次のものを確保する労働条件とする。
(a) すべての労働者に最小限度次のものを与える報酬
(i) 公正な賃金及びいかなる差別もない同一価値の労働についての同一報酬。特に、女子については、同一の労働についての同一報酬とともに男子が享受する労働条件に劣らない労働条件が保障されること。
(ii) 労働者及びその家族のこの規約に適合する相応な生活
(b) 安全かつ健康的な作業条件
(c) 先任及び能力以外のいかなる事由も考慮されることなく、すべての者がその雇用関係においてより高い適当な地位に昇進する均等な機会
(d) 休息、余暇、労働時間の合理的な制限及び定期的な有給休暇並びに公の休日についての報酬

第8条
この規約の締約国は、次の権利を確保することを約束する。
(a)すべての者がその経済的及び社会的利益を増進し及び保護するため、労働組合を結成し及び当該労働組合の規則にのみ従うことを条件として自ら選択する労働組合に加入する権利。この権利の行使については、法律で定める制限であって国の安全若しくは公の秩序のため又は他の者の権利及び自由の保護のため民主的社会において必要なもの以外のいかなる制限も課することができない。
(b) 労働組合が国内の連合又は総連合を設立する権利及びこれらの連合又は総連合が国際的な労働組合団体を結成し又はこれに加入する権利
(c) 労働組合が、法律で定める制限であって国の安全若しくは公の秩序のため又は他の者の権利及び自由の保護のため民主的社会において必要なもの以外のいかなる制限も受けることなく、自由に活動する権利
(d) 同盟罷業をする権利。ただし、この権利は、各国の法律に従って行使されることを条件とする。
この条の規定は、軍隊若しくは警察の構成員又は公務員による1の権利の行使について合法的な制限を課することを妨げるものではない。
この条のいかなる規定も、結社の自由及び団結権の保護に関する千九百四十八年の国際労働機関の条約の締約国が、同条約に規定する保障を阻害するような立法措置を講ずること又は同条約に規定する保障を阻害するような方法により法律を適用することを許すものではない。

第9条
この規約の締約国は、社会保険その他の社会保障についてのすべての者の権利を認める。

第10条
この規約の締約国は、次のことを認める。
できる限り広範な保護及び援助が、社会の自然かつ基礎的な単位である家族に対し、特に、家族の形成のために並びに扶養児童の養育及び教育について責任を有する間に、与えられるべきである。婚姻は、両当事者の自由な合意に基づいて成立するものでなければならない。
産前産後の合理的な期間においては、特別な保護が母親に与えられるべきである。働いている母親には、その期間において、有給休暇又は相当な社会保障給付を伴う休暇が与えられるべきである。
保護及び援助のための特別な措置が、出生の他の事情を理由とするいかなる差別もなく、すべての児童及び年少者のためにとられるべきである。児童及び年少者は、経済的及び社会的な搾取から保護されるべきである。児童及び年少者を、その精神若しくは健康に有害であり、その生命に危険があり又はその正常な発育を妨げるおそれのある労働に使用することは、法律で処罰すべきである。また、国は年齢による制限を定め、その年齢に達しない児童を賃金を支払って使用することを法律で禁止しかつ処罰すべきである。

第11条
この規約の締約国は、自己及びその家族のための相当な食糧、衣類及び住居を内容とする相当な生活水準についての並びに生活条件の不断の改善についてのすべての者の権利を認める。締約国は、この権利の実現を確保するために適当な措置をとり、このためには、自由な合意に基づく国際協力が極めて重要であることを認める。
この規約の締約国は、すべての者が飢餓から免れる基本的な権利を有することを認め、個々に及び国際協力を通じて、次の目的のため、具体的な計画その他の必要な措置をとる。
(a) 技術的及び科学的知識を十分に利用することにより、栄養に関する原則についての知識を普及させることにより並びに天然資源の最も効果的な開発及び利用を達成するように農地制度を発展させ又は改革することにより、食糧の生産、保存及び分配の方法を改善すること。
(b) 食糧の輸入国及び輸出国の双方の問題に考慮を払い、需要との関連において世界の食糧の供給の衡平な分配を確保すること。

第12条
この規約の締約国は、すべての者が到達可能な最高水準の身体及び精神の健康を享受する権利を有することを認める。
この規約の締約国が1の権利の完全な実現を達成するためにとる措置には、次のことに必要な措置を含む。
(a) 死産率及び幼児の死亡率を低下させるための並びに児童の健全な発育のための対策
(b) 環境衛生及び産業衛生のあらゆる状態の改善
(c) 伝染病、風土病、職業病その他の疾病の予防、治療及び抑圧
(d) 病気の場合にすべての者に医療及び看護を確保するような条件の創出

第13条
この規約の締約国は、教育についてのすべての者の権利を認める。締約国は、教育が人格の完成及び人格の尊厳についての意識の十分な発達を指向し並びに人権及び基本的自由の尊重を強化すべきことに同意する。更に、締約国は、教育が、すべての者に対し、自由な社会に効果的に参加すること、諸国民の間及び人種的、種族的又は宗教的集団の間の理解、寛容及び友好を促進すること並びに平和の維持のための国際連合の活動を助長することを可能にすべきことに同意する。
この規約の締約国は、1の権利の完全な実現を達成するため、次のことを認める。
(a) 初等教育は、義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとすること。
(b) 種々の形態の中等教育(技術的及び職業的中等教育を含む。)は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、一般的に利用可能であり、かつ、すべての者に対して機会が与えられるものとすること。
(c) 高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること。
(d) 基礎教育は、初等教育を受けなかった者又はその全課程を修了しなかった者のため、できる限り奨励され又は強化されること。
(e) すべての段階にわたる学校制度の発展を積極的に追求し、適当な奨学金制度を設立し及び教育職員の物質的条件を不断に改善すること。
この規約の締約国は、父母及び場合により法定保護者が、公の機関によって設置される学校以外の学校であって国によって定められ又は承認される最低限度の教育上の基準に適合するものを児童のために選択する自由並びに自己の信念に従って児童の宗教的及び道徳的教育を確保する自由を有することを尊重することを約束する。
この条のいかなる規定も、個人及び団体が教育機関を設置し及び管理する自由を妨げるものと解してはならない。ただし、常に、1に定める原則が遵守されること及び当該教育機関において行なわれる教育が国によって定められる最低限度の基準に適合することを条件とする。

第14条
この規約の締約国となる時にその本土地域又はその管轄の下にある他の地域において無償の初等義務教育を確保するに至っていない各締約国は、すべての者に対する無償の義務教育の原則をその計画中に定める合理的な期間内に漸進的に実施するための詳細な行動計画を二年以内に作成しかつ採用することを約束する。

第15条
この規約の締約国は、すべての者の次の権利を認める。
(a) 文化的な生活に参加する権利
(b) 科学の進歩及びその利用による利益を享受する権利
(c) 自己の科学的、文学的又は芸術的作品により生ずる精神的及び物質的利益が保護されることを享受する権利
この規約の締約国が1の権利の完全な実現を達成するためにとる措置には、科学及び文化の保存、発展及び普及に必要な措置を含む。
この規約の締約国は、科学研究及び創作活動に不可欠な自由を尊重することを約束する。
この規約の締約国は、科学及び文化の分野における国際的な連絡及び協力を奨励し及び発展させることによって得られる利益を認める。

第4部

第16条
この規約の締約国は、この規約において認められる権利の実現のためにとった措置及びこれらの権利の実現についてもたらされた進歩に関する報告をこの部の規定に従って提出することを約束する。
(a) すべての報告は、国際連合事務総長に提出するものとし、同事務総長は、この規約による経済社会理事会の審議のため、その写しを同理事会に送付する。
(b) 国際連合事務総長は、また、いずれかの専門機関の加盟国であるこの規約の締結によって提出される報告又はその一部が当該専門機関の基本文書によりその任務の範囲内にある事項に関連を有するものである場合には、それらの報告又は関係部分の写しを当該専門機関に送付する。

第17条
この規約の締約国は、経済社会理事会が締約国及び関係専門機関との協議の後この規約の効力発生の後一年以内に作成する計画に従い、報告を段階的に提出する。
報告には、この規約に基づく義務の履行程度に影響を及ぼす要因及び障害を記載することができる。
関連情報がこの規約の締約国により国際連合又はいずれかの専門機関に既に提供されている場合には、その情報については、再び提供の必要はなく、提供に係る情報について明確に言及することで足りる。

第18条
経済社会理事会は、人権及び基本的自由の分野における国際連合憲章に規定する責任に基づき、いずれかの専門機関の任務の範囲内にある事項に関するこの規約の規定の遵守についてもたらされた進歩に関し当該専門機関が同理事会に報告することにつき、当該専門機関と取極を行うことができる。報告には、当該専門機関の権限のある機関がこの規約の当該規定の実施に関して採択した決定及び勧告についての詳細を含ませることができる。

第19条
経済社会理事会は、第16条及び第17条の規定により締約国が提出する人権に関する報告並びに前条の規定により専門機関が提出する人権に関する報告を、検討及び一般的な性格を有する勧告のため又は適当な場合には情報用として、人権委員会に送付することができる。

第20条
この規約の締約国及び関係専門機関は、前条にいう一般的な性格を有する勧告に関する意見又は人権委員会の報告において若しくはその報告で引用されている文書において言及されている一般的な性格を有する勧告に関する意見を、経済社会理事会に提出することができる。

第21条
経済社会理事会は、一般的な性格を有する勧告を付した報告、並びにこの規約の締約国及び専門機関から得た情報であってこの規約において認められる権利の実現のためにとられた措置及びこれらの権利の実現についてもたらされた進歩に関する情報の概要を、総会に随時提出することができる。

第22条
経済社会理事会は、技術援助の供与に関係を有する国際連合の他の機関及びこれらの補助機関並びに専門機関に対し、この部に規定する報告により提起された問題であって、これらの機関がそれぞれの権限の範囲内でこの規約の効果的かつ漸進的な実施に寄与すると認められる国際的措置をとることの適否の決定に当たって参考となるものにつき、注意を喚起することができる。

第23条
この規約の締約国は、この規約において認められる権利の実現のための国際的措置には条約の締結、勧告の採択、技術援助の供与並びに関係国の政府との連携により組織される協議及び検討のための地域会議及び専門家会議の開催のような措置が含まれることに同意する。

第24条
この規約のいかなる規定も、この規約に規定されている事項につき、国際連合の諸機関及び専門機関の任務をそれぞれ定めている国際連合憲章及び専門機関の基本文書の規定の適用を妨げるものと解してはならない。

第25条
この規約のいかなる規定も、すべての人民がその天然の富及び資源を十分かつ自由に享受し及び利用する固有の権利を害するものと解してはならない。

第5部

第26条
この規約は、国際連合又はいずれかの専門機関の加盟国、国際司法裁判所規程の当事国及びこの規約の締約国となるよう国際連合総会が招請する他の国による署名のために開放しておく。
この規約は、批准されなければならない。批准書は、国際連合事務総長に寄託する。
この規約は、1に規程する国による加入のために開放しておく。
加入は、加入書を国際連合事務総長に寄託することによって行う。
国際連合事務総長は、この規約に署名し又は加入したすべての国に対し、各批准書又は各加入書の寄託を通報する。

第27条
この規約は、三十五番目の批准書又は加入書が国際連合事務総長に寄託された日の後三箇月で効力を生ずる。
この規約は、三十五番目の批准書又は加入書が寄託された後に批准し又は加入する国については、その批准書又は加入書が寄託された日の後三箇月で効力を生ずる。

第28条
この規約は、いかなる制限又は例外もなしに連邦国家のすべての地域について適用する。

第29条
この規約のいずれの締約国も、改正を提案し及び改正案を国際連合事務総長に提出することができる。同事務総長は、直ちに、この規約の締約国に対し、改正案を送付するものとし、締約国による改正案の審議及び投票のための締約国会議の開催についての賛否を同事務総長に通告するよう要請する。締約国の三分の一以上が会議の開催に賛成する場合には、同事務総長は、国際連合の主催の下に会議を招集する。会議において出席しかつ投票する締約国の過半数によって採択された改正案は、承認のため、国際連合総会に提出する。
改正は、国際連合総会が承認し、かつ、この規約の締約国の三分の二以上の多数がそれぞれの国の憲法上の手続に従って受諾したときに、効力を生ずる。
改正は、効力を生じたときは、改正を受諾した締約国を拘束するものとし、他の締約国は、改正前のこの規約の規定(受諾した従前の改正を含む。)により引き続き拘束される。

第30条
第26条5の規定により行われる通報にかかわらず、国際連合事務総長は、同条1に規定するすべての国に対し、次の事項を通報する。
(a) 第26条の規定による署名、批准及び加入
(b) 第27条の規定に基づきこの規約が効力を生ずる日及び前条の規定により改正が効力を生ずる日

第31条
この規約は、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語をひとしく正文とし、国際連合に寄託される。
国際連合事務総長は、この規約の認証謄本を第26条に規定するすべての国に送付する。

以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けて、千九百六十六年十二月十九日にニューヨークで署名のために開放されたこの規約に署名した。

〔署名欄省略〕

     「ウィキソース」より

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sekaijinkensengen45shyuunen
 今日は、平成時代の1993年(平成5)に、「ウィーン宣言及び行動計画」が世界人権会議により採択された日です。
 「ウィーン宣言及び行動計画」(ウィーンせんげんおよびこうどうけいかく)は、世界人権会議(於:ウィーン)で採択された世界のあらゆる人権蹂躙に対処するための、国際人権法や国際人道法に関する原則や国際連合の役割、全ての国々に対する要求を総括した宣言及び行動計画でした。「世界人権宣言」45周年を記念し、「世界先住民族年」を踏まえて、1993年(平成5)6月14日からウィーンで開催された世界人権会議には、171ヵ国とNGOも参加します。
 「世界人権宣言」の実現を図ることを目的とするものでしたが、会議では、人権(基本的人権)は普遍的だとする先進諸国と各国・地域の特殊性や歴史・文化・宗教的背景を考慮すべきだとする発展途上国の主張が対立しました。この結果、最終文書(ウィーン宣言)には双方の主張を妥協させ、人権の促進と保護を国際社会の最優先課題としながらも国家や地域の特殊性や歴史的・文化的・宗教的な背景へ留意することも盛り込まれます。
 また、発展途上国の「発展の権利」についても普遍的な権利として認め、その他女性や子供の権利擁護、少数民族の人権保護を掲げ、国連総会に対し、国連人権センターの強化並びに人権高等弁務官の設置を勧告しました。この会議時に、NGOフォーラムも同時開催され、非政府組織NGO935団体の代表2万5,000人も参加しています。
 その後、この宣言及び行動計画は、同年7月12日に国際連合総会において承認され、国連人権高等弁務官事務所 (OHCHR) が設置されることとなりました。
 以下に、「ウィーン宣言及び行動計画」日本語訳(抄文)を掲載しておきますので、ご参照下さい。

〇「ウィーン宣言及び行動計画」日本語訳(抄文)1993年(平成5)6月25日世界人権会議で採択

第I部〔宣言〕 I

1 〔国家の誓約〕 世界人権会議は、国際連合憲章、その他の人権文書及び国際法に従つて、 すべての者のためにすべての人権及び基本的自由の普遍的な尊重及び遵守並びに保護を促進する義務を履行するという、 すべての国家の厳粛な誓約を再確認する。これらの権利及び自由の普遍的性格は、疑うことができない。
 この枠組の中で、人権の分野における国際協力の強化は、国際連合の目的を完全に実現するために不可欠である。
 人権及び基本的自由は、すべての人間の生まれながらの権利であり、それらの保護及び助長は諸政府の第一次的責任である。

2 〔自決権〕 すべての人民は、自決の権利を有する。この権利に基づき、すべての人民は、その政治的地位を自由に決定し並びにその経済的、 社会的及び文化的発展を自由に追求する。
 世界人権会議は、植民地又はその他の形態の外国支配若しくは外国の占領のもとにある人民の特別の状況を考慮して、 不可譲の自決権を実現するために国際連合憲章に従つてすべての正当な行動を取る人民の権利を承認する。世界人権会議は、 自決権の否定を人権の侵害とみなし、この権利の効果的な実現の重要性を強調する。
 「国際連合憲章に従つた諸国家間の友好関係と協力に関する国際法の諸原則についての宣言」に従つて、上記のことは、 人民の同権及び自決の原則を遵守して行動し、 したがつていかなる種類の差別もなしにその領域に属するすべての人民を代表する政府を有する、 独立主権国家の領土保全又は政治的統一の全部又は一部を解体し若しくは毀損するいかなる行動をも、 許可し又は奨励するものと解釈してはならない。

3 〔外国の占領下の人民の保護〕 外国の占領下にある人民に関して、人権基準の実施を保障し監視するための効果的な国際的措置が取られるべきであり、 人権規範及び国際法、とりわけ戦時における文民の保護に関する1949年8月12日のジュネーヴ条約その他の適用可能な人道法規範に従つて、 彼らの人権の侵害に対する効果的な法的保護が与えられるべきである。

4 〔国際連合の優先的目的〕 人権及び基本的自由の助長並びに保護は、国際連合の目的及び原則、とりわけ国際協力の目的に従つて、 国際連合の優先的目的とみなされなければならない。これらの目的及び原則の枠内において、 すべての人権の助長及び保護は国際社会の正当な関心事項である。したがつて、人権にかかわる機関及び専門機関は、 国際人権文書の一貫した客観的な適用を基礎として、それらの諸活動の調整をさらに向上させるべきである。

5 〔すべての人権の相互依存性〕 すべての人権は普遍的であり、不可分かつ相互依存的であつて、相互に連関している。国際社会は、公平かつ平等な方法で、 同じ基礎に基づき、同一の強調をもつて、人権を全地球的に扱わなければならない。国家的及び地域的独自性の意義、 並びに多様な歴史的、文化的及び宗教的背景を考慮にいれなければならないが、すべての人権及び基本的自由を助長し保護することは、 政治的、経済的及び文化的な体制のいかんを問わず、国家の義務である。

6 〔国際連合システムの努力〕 すべての者のための人権及び基本的自由の普遍的な尊重及び遵守に向けた国際連合システムの努力は、 諸国間の平和的かつ友好的な関係に必要な安定及び福祉、並びに国際連合憲章に従つた平和及び安全並びに社会的及び経済的発展のための条件の改善に、 貢献するものである。

7 〔国際連合憲章の目的及び原則等の遵守〕 人権を助長し保護するプロセスは、国際連合憲章の目的及び原則並びに国際法に従つて実施されるべきである。

8 〔民主主義、発展及び人権尊重の相互依存性〕 民主主義、発展並びに人権及び基本的自由の尊重は、相互依存的であり相互に強め合うものである。民主主義は、自らの政治的、 経済的及び文化的体制を決定するための自由に表明された人民の意思、 並びに生活のすべての側面における人民の完全な参加に基礎をおく。この文脈において、 国家的及び国際的レベルにおける人権並びに基本的自由の助長及び保護は、普遍的にかつ条件を付することなく行われるべきである。 国際社会は、全世界における民主主義、発展並びに人権及び基本的自由の尊重の強化及び助長を支持すべきである。

9 〔後発発展途上国への支援〕 世界人権会議は、多くはアフリカに位置する後発発展途上国であつて民主化及び経済改革に取り組むことを誓約したものが、 民主化及び経済発展への移行に成功するように国際社会の支援を受けるべきことを再確認する。

10〔発展の権利〕 世界人権会議は、「発展の権利に関する宣言」において確立された発展の権利は、普遍的かつ不可譲の権利であつて、 基本的人権の不可分の一部をなすものであることを再確認する。
「発展の権利に関する宣言」が述べるように、人間が発展の中心的な主体である。
発展はすべての人権の享受を促進するものであるが、 発展の欠如を国際的に承認された人権の制約を正当化するために援用してはならない。
国家は、発展を確保し発展への障害を除去するために相互に協力すべきである。国際社会は、 発展の権利を実現し発展への障害を除去するために、効果的な国際協力を助長すべきである。
発展の権利の実施に向けての永続的な進歩は、 国家レベルにおける効果的な発展政策、並びに国際レベルにおける公正な経済関係及び好ましい経済環境を必要とする。

11〔危険な廃棄物の投棄等の規制〕 発展の権利は、現在及び将来の世代の発展及び環境における必要性に公正に適合するように実現されるべきである。 世界人権会議は、有毒で危険な物質及び廃棄物の違法な投棄が、 すべての者の生命及び健康に対する人権への重大な脅威となる可能性があることを承認する。
 したがつて世界人権会議は、有毒で危険な産品及び廃棄物の投棄に関する現行の条約に参加しかつこれらを厳格に実施すること、 及び違法な投棄の防止に協力することを、すべての国家に呼びかける。
 すべての者は、科学の進歩及びその応用の利益を享受する権利を有する。世界人権会議は、とりわけ生医学、 生命科学及び情報技術におけるある種の進歩が、個人の人格、尊厳及び人権に悪影響を及ぼす可能性があることに留意し、 世界的に関心を呼んでいるこの分野において、人権及び人間の尊厳の完全な尊重が確保されるよう、国際協力を呼びかける。

12〔対外債務〕 世界人権会議は、発展途上国の政府がその人民の経済的、社会的及び文化的権利の完全な実現を達成する努力を補完する目的で、 これら諸国の対外債務負担を軽減することを助けるためにあらゆる努力を行うよう、国際社会に呼びかける。

13〔人権享受の条件の創出〕 同家及び国際機構は、人権の完全かつ効果的な享受を確保する目的で、非政府機構と協力して、国家的、 地域的及び国際的レベルにおける好ましい条件を創出する必要がある。国家は、すべての人権侵害及びその原因、 並びに人権享受への障害を除去すべきである。

14〔極端な貧困の除去〕 極端な貧困の広範な存在は、人権の完全かつ効果的な享受を妨げているので、これを直ちに緩和し究極的に除去することは、 国際社会にとつて引き続き高度の優先事項でなければならない。

15〔あらゆる形態の差別の除去〕 いかなる種類の差別もなしに人権及び基本的自由を尊重することは、国際人権法の基本規則である。あらゆる形態の人種主義、 人種差別、外国人排斥及び関連する不寛容を速やかにかつ包括的に除去することは、国際社会の優先的な任務である。諸政府は、 これらを防止しかつこれらと闘うために、効果的な措置を取るべきである。集団、団体、政府間及び非政府間の機構、 並びに個人は、これらの悪に反対する行動において協力しかつ調整して、彼らの努力を強化することを要請される。

16〔アパルトヘイトの解体〕 世界人権会議は、アパルトヘイトの解体における進展を歓迎し、 国際社会及び国際連合システムに対してこの進展を支援するように呼びかける。
 世界人権会議はまた、アパルトヘイトの平和的解体の追求を妨げることを目的とした、 暴力行為の継続を非難する。

17〔テロリズムの防止〕 あらゆる形態及び表現におけるテロリズムの行為、方法及び慣行、並びに若干の諸国における麻薬取引への関与は、 人権、基本的自由及び民主主義を破壊することを目的とし、国家の領土保全及び安全を脅かし、 正統に組織された政府を不安定化する行為である。国際社会は、テロリズムを防止しかつこれと闘うための協力を促進するために、 必要な措置を取るべきである。

18〔女性の人権〕 女性及び少女の人権は、普遍的人権の不可譲かつ不可分の一部である。国家的、地域的及び国際的レベルにおける政治的、市民的、 経済的、社会的及び文化的生活への女性の完全かつ平等な参加、並びに性を理由とするあらゆる形態の差別の除去は、 国際社会の優先的な目的である。
 性差を理由とする暴力及び、あらゆる形態のセクシュアルハラスメント並びに搾取は、 文化的偏見及び国際的売買から生じるものを含めて、人間の尊厳及び価値と両立せず、除去されなければならない。このことは、 経済的及び社会的発展、教育、安全な母性及び健康看護並びに社会的扶助のような分野における、法的措置により、 並びに国家的行動及び国際協力を通じて、達成することができる。
 女性の人権は、女性に関するすべての人権文書の奨励を含めて、国際連合の人権活動の不可分の一部を構成すべきものである。
 世界人権会議は、政府、団体、政府間及び非政府間の機構に対して、 女性及び少女の人権の保護及び助長のための努力を強化するように、要請する。

19〔少数者の権利〕 少数者に属する人の権利の助長及び保護が重要であること、並びにこのような助長及び保護が彼らが居住する国家の政治的及び社会的安定に貢献することを考慮して、
 世界人権会議は、「民族的又は人種的、宗教的及び言語的少数者に属する人の権利に関する宣言」に従つて、 少数者に属する人がいかなる差別もなしにかつ法のもとにおいて完全に平等に、 すべての人権及び基本的自由を完全かつ効果的に行使することができるように確保する、国家の義務を再確認する。
 少数者に属する人は、自由にかつ介入又はいかなる形態の差別もなしに、自らの文化を享受し、自らの宗教を告白しかつ実践し、 並びに私的に及び公的に自らの言語を使用する権利を有する。

20〔先住民の権利〕 世界人権会議は、先住民の固有の尊厳、及び社会の発展並びに多様性への先住民の独特の貢献を承認し、彼らの経済的、 社会的及び文化的福祉並びに持続的発展の成果の彼らによる享受への、国際社会の誓約を強く再確認する。国家は、 社会のすべての側面、とくに彼らの関心事項への、先住民の完全かつ自由な参加を確保すべきである。 先住民の権利の助長及び保護が重要であること、並びにこのような助長及び保護が彼らが居住する国家の政治的及び社会的安定に貢献することを考慮して、 国家は、国際法に従つて、先住民の人権及び基本的自由を平等にかつ差別なく尊重することを確保するために協調した積極的な措置を取り、 及び彼らの独特のアイデンティティー、文化並びに社会組織の価値及び多様性を承認すべきである。

21〔児童の権利〕 世界人権会議は、多数の国家が児童の権利に関する条約を早期に批准したことを歓迎し、 児童のための世界サミットが採択した「児童の生存、保護及び発展に関する世界宣言及び行動計画」が児童の人権を承認したことに留意して、 1995年までにすべての国がこの条約を批准すること、及び、必要な立法、行政及びその他の措置を取り、 また利用可能な資源を最大限に配分することによつて、締約国がこの条約を効果的に実施することを、要請する。 児童に関するすべての行動においては、無差別と児童の最善の利益とが第一に考慮されるべきであり、 児童の見解に妥当な考慮が払われるべきである。児童の防護及び保護のために、国家的及び国際的な機構並びに計画が強化されるべきである。 このような防護及び保護の対象には、とりわけ少女、遺棄された児童、家のない児童、児童ポルノ、 児童売春又は臓器売却によるものを含む経済的及び性的に搾取された児童、後天性免疫不全症候群を含む疾病の犠牲者である児童、 難民及び避難民である児童、拘禁中の児童、武力紛争にまきこまれた児童、並びに飢饉、旱ばつその他の緊急事態の犠牲者である児童が含まれる。 児童の権利に関する条約の実施を支援するために国際協力及び連帯が助長されるべきであり、 児童の権利は人権に関する国際連合システム全体の行動において優先されるべきである。
 世界人権会議はまた、児童は個性の完全かつ調和の取れた発展のためには家庭環境の中で成長すべきであり、 したがつて家庭環境はより広範な保護に値すると強調する。

22〔障害者の権利〕 障害者の差別禁止、並びに、社会のすべての側面への積極的な参加を含む、 すべての人権及び基本的自由の平等な享受を確保するために、特別の注意を払う必要がある。

23〔難民及び避難民の保護〕 世界人権会議は、すべての者がいかなる差別もなしに、他国において迫害からの庇護を求めかつ受ける権利、 及び自国に帰る権利を有することを再確認する。この点に関して世界人権会議は、世界人権宣言、難民の地位に関する1951年条約、 その1967年議定書及び地域的文書の重要性を強調する。会議は、 その領域に引き続き多数の難民を受け入れかつ生活させている国家に対して、及び国際連合難民高等弁務官事務所の任務への献身に対して、 感謝を表明する。会議はまた、近東における国際連合パレスチナ難民救済事業機関に対しても、感謝を表明する。
 世界人権会議は、武力紛争を含む人権の重大な侵害が、人民の避難を発生させる多様かつ複雑な要因の一つであることを承認する。
 世界人権会議は、世界的な難民危機の複雑さにかんがみ、かつ国際連合憲章、関連国際文書及び国際連帯に従つて、 並びに負担配分の精神において、国際社会が、国際連合難民高等弁務官事務所の任務に留意しつつ、 関係国及び関連ある機構と調整しかつ協力して、包括的アプローチを取る必要があることを承認する。このようなアプローチは、 難民その他の避難民の根本原因及び移動の結果に対処するための戦略の発展、緊急準備及び対策のための機構の強化、 女性及び児童の特別の必要性を考慮した効果的な保護及び援助の供与、並びに、国際難民会議が採択した解決を含めて、 何よりも尊厳かつ安全な自発的帰国という好ましい解決を通じての持続的な解決を含むべきである。世界人権会議は、国家の責任、とりわけ出身国にかかわる責任を強調する。
 世界人権会議は、包括的アプローチにてらして、自発的かつ安全な帰還及び社会復帰を含む国内避難民にかかわる問題に、 政府間機構及び人道的機構を通じるものを含めて特別の注意を払い、並びに永続的な解決を見出すことの重要性を強調する。
 世界人権会議はさらに、国際連合憲章及び人道法の諸原則に従つて、 すべての自然災害及び人的災害の被害者に対する人道的援助の重要性及び必要性を強調する。

24〔弱者の権利〕 移住労働者を含む弱者の立場におかれた集団に属する者の人権の助長及び保護、彼らに対するあらゆる形態の差別の除去、 並びに現行の人権文書の強化及びより効果的な実施を、特別に重視する必要がある。国家は、 住民のうちの弱者に属する者の権利の助長及び保護のために、とくに教育、保健及び社会的扶助の分野において、 国家レベルの適切な措置を創出し維持する義務、及び弱者に属する者で自らの問題に解決を見出すことに関心を有する者の参加を確保する義務を有する。

25〔もつとも貧困な者の人権〕 世界人権会議は、極端な貧困及び社会的な疎外は人間の尊厳を侵害するものであり、もつとも貧困な者の人権を助長し、 極端な貧困と社会的疎外を終わらせ、及び社会進歩の成果の享受を助長するために、極端な貧困、 及び発展の問題にかかわるものを含むその原因に関するよりよい理解を達成するために、緊急の措置が必要であることを確認する。 国家が、もつとも貧困な人々が居住するコミュニティーの政策決定過程、人権の助長、及び極端な貧困と闘うための努力への、 彼らの参加を促進することは不可欠である。

26〔人権文書の法典化〕 世界人権会議は、動的かつ発展的過程である人権文書の法典化においてなされた進歩を歓迎し、 国際人権条約の普遍的批准を強く求める。すべての国家がこれらの国際文書に加入すること、 及びすべての国家ができるだけ留保を行わないことが奨励される。

27〔人権侵害の救済〕 すべての国家は、人権にかかわる苦情及び人権侵害を救済するために、効果的な救済手続を提供すべきである。 法適用及び訴追機関を含む司法の運営、とりわけ国際人権文書が含む適用可能な基準に完全に従つた独立した司法部及び法律職は、 人権の完全かつ無差別の実現にとつてきわめて重要であり、民主主義及び持続的発展の過程にとつて不可欠である。 この文脈において、司法の運営に携わる機関は十分な資金を有すべきであり、 国際社会は技術的及び財政的援助の水準を向上させるべきである。強力かつ独立した司法の運営を達成するために、 助言サービスの特別計画を優先的に利用することは、国際連合の義務である。

28〔武力紛争時における人権の大規模な侵害〕 世界人権会議は、難民及び避難民の大量流出をもたらしている、戦争状態における人権の大規模な侵害、とりわけジェノサイド、 「民族浄化」及び女性の制度化されたレイプの形態における人権の大規模な侵害に対して、驚愕を表明する。会議は、 そのような嫌悪すべき慣行を強く非難するとともに、そのような犯罪の加害者が処罰され、 そのような慣行は直ちに終わらせられるようにという呼びかけを繰り返す。

29〔武力紛争時における人権の保護〕 世界人権会議は、国際人権文書及び国際人道法に含まれた基準を無視して、世界のあらゆる部分で人権侵害が継続していること、 及び被害者に対する十分かつ効果的な救済が欠如していることに、重大な憂慮を表明する。
 世界人権会議は、武力紛争時における文民たる住民に対する人権侵害、とりわけ女性、児童、 老齢者及び障害者に対する人権侵害を深く憂慮する。したがつて会議は、国家及び武力紛争のすべての当事者に対して、 1949年のジュネーヴ諸条約及びその他の国際法の規則と原則が規定する国際人道法、 並びに国際条約が規定する人権保護の最低基準を厳格に遵守するように呼びかける。
 世界人権会議は、1949年のジュネーヴ諸条約及びその他の関連ある国際人道法文書が規定するように、被害者は、 人道的団体の援助を受ける権利を有することを再確認し、このような援助への安全かつ時宜をえたアクセスを要請する。

30〔人権の大規模かつ体系的な侵害〕 世界人権会議はまた、世界のさまざまな部分において、すべての人権の完全な享受にとつて重大な障害をなす大規模かつ体系的な侵害及び事態が引き続き生じていることに、 驚愕と非難を表明する。このような侵害及び事態には、以下のものが含まれる。拷問及び残虐な、 非人道的な並びに品位を傷つける取扱い又は刑罰。略式の及び恣意的な処刑。失踪。恣意的な拘禁。すべての形態の人種主義、 人種差別及びアパルトヘイト。外国の占領及び外国人支配。外国人排斥。貧困、飢餓その他の経済的、社会的及び文化的権利の否定。 宗教的不寛容。テロリズム。女性に対する差別。及び法の支配の欠如。

31〔人権享受を妨げる貿易上の一方的措置〕 世界人権会議は、国際法及び国際連合憲章と合致しない措置であつて、国家間の貿易関係に障害をもたらし、 世界人権宣言及び国際人権文書が規定する人権、とりわけ、食糧及び医療、住居及び必要な社会的サービスを含めて、 健康及び福祉にとつて十分な生活水準を享受するすべての者の権利の完全な実現を妨げる、いかなる一方的措置をも慎むように、 諸国家に呼びかける。世界人権会議は、食糧は政治的圧力の手段として用いられるべきではないことを確認する。

32〔人権問題の普遍的な検討〕 世界人権会議は、人権問題の検討に当つては、普遍性、客観性及び非選択性を確保することが重要であることを、再確認する。

33〔人権教育〕 世界人権会議は、世界人権宣言、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約並びにその他の国際人権文書が規定するように、 国家は教育が人権及び基本的自由の尊重の強化を目的とするように確保する義務を有することを再確認する。世界人権会議は、 人権の主題を教育プログラムに組み入れることの重要性を強調し、そうすることを諸国家に呼びかける。教育は、 諸国民及びすべての人種的又は宗教的集団の間の理解、寛容、平和及び友好関係を助長し、 これらの目的を追求するに当つての国際連合の活動の発展を奨励すべきである。したがつて、 理論的及び実践的な人権教育及び適切な情報の普及は、人種、性、言語又は宗教のようないかなる種類の差別もなしに、 すべての個人に関する人権の助長及び尊重において、重要な役割を果たすものであり、 これらは国家レベル及び国際レベルにおける教育政策に組み入れられるべきである。世界人権会議は、 資源の制約及び制度の不十分さがこれらの目的の即時実現にとつて障害となりうることに留意する。

34〔人権享受のための援助〕 すべての個人が普遍的人権及び基本的自由を享受しうる条件をつくりだすため、要請を行う国を援助する努力が強化されるべきである。 政府、国際連合システム並びにその他の多数国間機構は、 以下のものの確立及び強化を目的とするプログラムへの資源配分を相当程度増大させることを要請される。 法の支配及び民主主義を支持する国の立法、制度及び関連インフラストラクチュア。 選挙への援助。訓練、 指導及び教育を通じた人権意識の向上。人民参加及び市民社会。
 人権センターの助言サービス及び技術協力のプログラムは、強化され、並びにより効果的かつ透明なものとされて、 人権尊重を改善するための重要な貢献となるべきである。諸国家は、国際連合の通常予算からの配分の増大を助長すること、 及び自発的拠金を行うことによつて、これらのプログラムへの寄与を増大させることを要請される。

35〔国際連合の人権活動〕 人権の助長及び保護のための国際連合の活動の完全かつ効果的な実施は、国際連合憲章が人権に与えた高度の重要性、 及び加盟国が国際連合の人権活動に委託した要求を反映しなければならない。この目的のために、 国際連合の人権活動には一層多くの資源が配分されるべきである。

36〔人権助長のための国内制度〕 世界人権会議は、人権の助長及び保護のために国内制度が果たす重要かつ建設的な役割、とりわけ、権限ある当局に対する助言能力、 人権侵害の救済、人権情報の普及及び人権教育における役割を再確認する。
 世界人権会議は、「国内制度の地位に関する原則」に留意し、 及び国内レベルにおける独自の必要性にもつとも適した枠組を選択することはすべての国家の権利であることを承認して、 国内制度の設立及び強化を奨励する。

37〔人権助長のための地域的取決め〕 地域的取決めは、人権の助長及び保護において基本的な役割を果たす。地域的取決めは、 国際人権文書に含まれた普遍的人権基準とそれらの保護を強化すべきである。世界人権会議は、 これらの取決めを強化しその実効性を高めるために行われている努力を支持し、 同時に国際連合の人権活動との協力の重要性を強調する。
 世界人権会議は、人権の助長及び保護のための地域的及び小地域的取決めがいまだに存在していない場所において、 これらを設立する可能性を検討することが必要であると繰り返す。

38〔非政府機構〕 世界人権会議は、国家的、地域的及び国際的レベルにおける人権の助長並びに人道的活動において、 非政府機構が果たす重要な役割を承認する。世界人権会議は、人権問題に関する公衆の意識の向上、この分野における教育、 訓練及び研究の実施、並びにすべての人権及び基本的自由の助長及び保護における、非政府機構の貢献を評価する。会議は、 基準設定の第一次的責任は国家にあることを認めるものであるが、この過程における非政府機構の貢献をも評価するものである。 この点に関して、世界人権会議は、諸政府と非政府機構との間の継続的な対話及び協力が重要であることを強調する。 人権の分野に誠実に関与している非政府機構及びその参加者は、 世界人権宣言が認める権利及び自由並びに国内法の保護を享受すべきである。これらの権利及び自由は、 国際連合の目的及び原則に反して行使されてはならない。非政府機構は、国内法及び世界人権宣言の枠内において、 人権活動の実施に当つて干渉を受けることなく自由でなければならない。

39〔メディアの役割〕 世界人権会議は、人権及び人道問題に関する客観的で責任ある偏らない情報の重要性を強調し、メディアの関与の増大を奨励する。 メディアに対しては、国内法の枠内で自由及び保護が保障されるべきである。

第II部〔行動計画〕(抜粋)  

A.国際連合システム内の人権に関する調整の拡充(省略)

B.平等.尊厳及び莫容(抜粋)

25.世界人樺会議は、人権委員会に対し、民族的又は種族的、宗教的及び言語的マイノリティに属する人々の権利に関する宣言で定義されているマイノリティに属する人々の権利を実効的に伸長及び保護するための手段及び方策を検討することを要請する。この文脈において、世界人権会議は、人権センターに対し、関係政府の要請に応じて、且つ助言サービス及び専門的援助の事業計画の一環として、マイノリティに関する現実の又は潜在的な状況を支援するため、マイノリティ問題及び人権、並びに紛争の防止及び解決に関する適切な専門的知識を提供することを要請する。

26.世界人権会議は、国家と国際社会に対し、民族的又は種族的、宗教的及び言語的マイノリティに属する人々の権利に関する宣言に従って、民族的又は種族的、宗教的及び言語的マイノリティに属する人々の権利を伸長し且つ保護することを求める。

27.講じられるべき措置には、適切な場合には、社会における政治的、経済的、社会的、宗教的及び言語的生活のあらゆる側面、並びに自国経済の進展及び発展への十分な参加を促進することも含めるべきである。

C.協力、発展、及び人権の強化(省略)

D.人権教育

78.世界人権会議は、人権に関する教育、訓練及び広報が、社会の安定的且つ調和的な関係を促進及び達成し、並びに相互の理解、寛容及び平和を促進するために不可欠なものであると考える。

79.国家は、非識字者をなくすため努力し、人間性を十分に発展させ、並びに人権及び基本的自由の尊重を強化する方向で教育を推進しなければならない。世界人権会議は、すべての公的及び私的教育機関の教育課程に科目として、人権、人道法、民主主義及び法の支配を含めるよう、すべての国家と機関に求める。

80.人権教育は、人権への普遍的な信念の強化にかんがみて、共通の理解及び意識を達成するために、国際的及び地域的人権文書に明記される平和、民主主義、発展、及び社会正義を含むものでなければならない。

81.国際連合教育科学文化機関の人権及び民主主義教育に関する国際会議が1993年3月に採択した人権及び民主主義のための教育に関する世界行動計画、並びにその他の人権文書を考慮して、世界人権会議は、各国に対し、とりわけ女性にとっての人権の必要性を考慮して、最も幅広い人権教育及び情報の広報を確保するため、特別な事業計画及び戦略を策定するよう勧告する。

82.政府は、政府間機構、国内機関及びNGOの支援のもと、人権意識の一層の向上と相互の寛容を促進しなければならない。世界人権会議は、国際連合によって実行された世界広報キャンペーンの強化の重要性を強調する。政府は、人権に関する教育を主導及び支持し、この分野における情報を実効的に普及させなければならない。国際連合システムの助言サービス及び専門的援助事業計画は、人権の分野における教育及び訓練活 動、並びに国際人権文書及び人道法に含まれている基準や軍隊、法執行官、警察官及び保健要員のような特別な集団への基準の適用に関する特別教育に関する各国からの要請に直ちに対応できるものでなければならない。人権分野における教育活動を促進し、奨励し、及びこれに焦点をあてるために、人権教育のための国際連合の10年の宣言が検討されなければならない。

E.実施及び監視方法

83.世界人権会議は政府に対し、国際的人権文書に含まれている基準を国内法に編入し、人権を伸長及び保護する役割を果たす国内体制、社会の制度及び機関を強化することを求める。

84.世界人権会議は、人権の伸長及び保護のため自国の国内制度を設立し又は強化することを望む国家による援助の要請に対応するため、国際連合の事業活動及び計画の強化を勧告する。

85.世界人権会議はまた、特に情報及び経験の交換、並びに地域的機構と国際連合との協力を通じて、人権の伸長及び保護に携わる国内諸機構の間の協力の強化を奨励する。

86.世界人権会議は、この点に関して、人権の伸長及び保譲に関する国内機構の代表者が人権センターの後援のもとに、機構の改善及び経験の共有の方法及び手段を検討するため定期的会合を招集することを強く勧告する。

87.世界人権会議は、人権条約機関、条約機関議長会議及び締約国会議に対して、それぞれの人権条約に基づく国家報告の準備のための多様な報告の要件及びガイドラインの調整を目指して引き続き措置をとり、並びに各国が条約義務に関する単一の包括的報告を提出すれば、これらの手続はより実効的なものとなり、その効果を増すという提案を引き続き検討することを勧告する。

88.世界人権会議は、国際人権条約の締約国、国際連合総会及び経済社会理事会に対して、任務及び職務の不必要な重複を避ける必要を考慮して、様々な部、機関及び手続のよりよい調整を通じて、より大きな効率性と実効性を促す観点から、現存する人権条約機関並びに様々なテーマ別機関及び手続の研究を考慮することを勧告する。

89.世界人権会議は、この点に関してなされた多様な提案、とりわけ条約機関自体及び条約機関議長会議によってなされた提案を考慮して、監視活動を含む、条約機関の機能の縦統的な改善作業を勧告する。子どもの権利に関する委員会が採用している包括的な国内的アプローチも奨励されなければならない。

90.世界人権会議は、人権諸条約の締約国に対し、利用しうる選択的な通報手続の受容を検討するよう勧告する。

91.世界人権会議は、人権侵害の加害者が処罰されない事態に懸念を表明し、人権委員会及び差別防止及び少数者保護小委員会がこの問題のすべての側面を検討する努力を支持する。

92.世界人権会議は、人権委員会に対し、国際及び地域レベルにおいて、現存する人権条約のよりよい実施の可能性を検討することを勧告し、また国際法委員会に対し、国際刑事裁判所に関する作業を継続するよう勧告する。

93.世界人権会議は、1949年8月12日のジュネーブ条約及び追加議定書への未加入国に対しこれらに加入すること、並びにその完全な実施のため、立法措置を含むあらゆる適切な国内措置をとることを要請する。

94.世界人権会議は、普遍的に認知された人権及び基本的自由を伸長し保護するための個人、集団及び機関の社会における権利と責任に関する宣言草案の迅速な完成と採択を勧告する。

95.世界人権会議は、人権委員会及び差別防止及び少数者保護小委員会の特別手続の報告者、代表者、専門家及び作業部会が、世界のすべての国々においてその任務の遂行を可能にするために、これらの制度を維持し強化すること、並びに必要な人的及び財政的資滑を提供することの重要性を強調する。諸手続及び諸機関は、定期的会合を通じて作業を調和させ且つ合理化しなければならない。すべての国は、これらの手続及び機関と完全に協力することが求められる。

96.世界人権会議は、国際連合が憲章の目的及び原則に従って、武力紛争下のすべての状況において国際人道法の完全な尊重を確実にするために、人権の伸長及び保護に関してより積極的な役割を引き受けることを勧告する。

97.世界人権会議は、国際連合のいくつかの平和維持活動に関する特別な取極で設置された人権部門の重要な役割を認識しつつ、事務総長が国際連合憲章に従って、人権センター及び人権保障機構の報告、経験及び能力を考慮に入れることを勧告する。

98.経済的、社会的及び文化的権利の享受を強化するために、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約に規定された権利の実現の進捗状況についての指針に関するシステムのような、追加的手段が検討されるべきである。経済的、社会的及び文化的権利の承認を国内、地域、及び国際レベルで確保するための協調的努力がなされなければならない。

F.世界人権会議のフォローアツプ

99.世界人権会議は、総会、人権委員会及び国際連合システム内のその他の人権関連機関に対し、国際連合人権の10年宣言の可能性を含むこの会議の最終文書に含まれる勧告を遅滞なく完全に実施するための措置を検討することを勧告する。世界人権会議は、人権委員会がこの目的に向けての進展を毎年検討することを、さらに勧告する。

100.世界人権会議は、世界人権宣言50周年記念の機会に、すべての国家及び国際連合システム内のすべての人権関連機関が、この会議の最終文書の実施についての進捗状況を事務総長に報告するよう求めるとともに、人権委員会及び経済社会理事会を通じて、総会第53回会期に報告書を提出することを、国際連合事務総長に対し要請する。同様に、地域的人権機構、適切な場合には、国内人権機構、並びにNGOは、この会議の最終文書の実施面でなされた進展に関して、国際連合事務総長に意見を述べることができる。国際連合システムの枠組みの中で採択された国際的人権条約及び議定書の普遍的な批准という目標に向かっての進展の評価に関し、特別な注意が払われなければならない。

   「国連広報センター」ホームページより

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kokusaijinkenkiyaku01

 今日は、昭和時代後期の1979年(昭和54)に、日本が「国際人権規約」の批准を国会で承認した日です。
 「国際人権規約(こくさいじんけんきやく)」は、1966年(昭和41)12月16日に国連総会で採択された基本的人権の保護に関する条約で、社会権についてのA規約「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」、自由権についてのB規約「市民的及び政治的権利に関する国際規約」及び、B規約に付属する選択議定書があり、1976年(昭和51)に発効しました。また、1989年(平成元)12月15日、「自由権規約の第2選択議定書」(死刑廃止議定書)も採択され、1991年(平成3)7月11日に発効、さらに、社会権規約の個人通報制度を規定する社会権規約選択議定書も2008年(平成20)に採択され、2013年(平成25)に発効しています。
 これらは、1948年(昭和23)に国連で採択された「世界人権宣言」が、人権に関し諸国家が達成すべき共通の基準を示したにすぎなかったものの、それを国際的に法制化しようとするもので、これによって民族自決権や個人的人権が国際的に保障されるよう定められました。日本では、1979年(昭和54)6月6日に、A・B両規約のみ(選択議定書を除く)国会で批准、6月21日に批准書を寄託し、9月21日に加盟国となりましたが、中等教育の無償化(2012年9月11日に受諾)、労働者への休日の報酬の支払い、公務員のストライキ権の保障については国内法との関係から留保、及び、社会権規約・自由権規約の「警察職員」には消防吏員も含まれると解釈解釈宣言をしています。
 尚、2019年(令和元)8月現在で、A規約については、署名国数71/締約国数170、B規約については、署名国数74/締約国数173となりました。
 以下に、A・B両規約を掲載しておきますので、ご参照下さい。

〇「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(A規約)

前文

この規約の締約国は、国際連合憲章において宣明された原則によれば、人類社会のすべての構成員の固有の尊厳及び平等のかつ奪い得ない権利を認めることが世界における自由、正義及び平和の基礎をなすものであることを考慮し、これらの権利が人間の固有の尊厳に由来することを認め、世界人権宣言によれば、自由な人間は恐怖及び欠乏からの自由を享受することであるとの理想は、すべての者がその市民的及び政治的権利とともに経済的、社会的及び文化的権利を享有することのできる条件が作り出される場合に初めて達成されることになることを認め、人権及び自由の普遍的な尊重及び遵守を助長すべき義務を国際連合憲章に基づき諸国が負っていることを考慮し、個人が、他人に対し及びその属する社会に対して義務を負うこと並びにこの規約において認められる権利の増進及び擁護のために努力する責任を有することを認識して、次のとおり協定する。

第1部

第1条
1.すべての人民は、自決の権利を有する。この権利に基づき、すべての人民は、その政治的地位を自由に決定し並びにその経済的、社会的及び文化的発展を自由に追求する。
2.すべて人民は、互恵の原則に基づく国際的経済協力から生ずる義務及び国際法上の義務に違反しない限り、自己のためにその天然の富及び資源を自由に処分することができる。人民は、いかなる場合にも、その生存のための手段を奪われることはない。
3.この規約の締約国(非自治地域及び信託統治地域の施政の責任を有する国を含む。)は、国際連合憲章の規定に従い、自決の権利が実現されることを促進し及び自決の権利を尊重する。

第2部

第2条
1.この規約の各締約国は、立法措置その他のすべての適当な方法によりこの規約において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成するため、自国における利用可能な手段を最大限に用いることにより、個々に又は国際的な援助及び協力、特に、経済上及び技術上の援助及び協力を通じて、行動をとることを約束する。
2.この規約の締約国は、この規約に規定する権利が人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生又は他の地位によるいかなる差別もなしに行使されることを保障することを約束する。
3.開発途上にある国は、人権及び自国の経済の双方に十分な考慮を払い、この規約において認められる経済的権利をどの程度まで外国人に保障するかを決定することができる。

第3条
この規約の締約国は、この規約に定めるすべての経済的、社会的及び文化的権利の享有について男女に同等の権利を確保することを約束する。

第4条
この規約の締約国は、この規約に合致するものとして国により確保される権利の享受に関し、その権利の性質と両立しており、かつ、民主的社会における一般的福祉を増進することを目的としている場合に限り、法律で定める制限のみをその権利に課すことができることを認める。

第5条
1.この規約のいかなる規定も、国、集団又は個人が、この規約において認められる権利若しくは自由を破壊し若しくはこの規約に定める制限の範囲を超えて制限することを目的とする活動に従事し又はそのようなことを目的とする行為を行う権利を有することを意味するものと解することはできない。
2.いずれかの国において法律、条約、規則又は慣習によって認められ又は存する基本的人権については、この規約がそれらの権利を認めていないこと又はその認める範囲がより狭いことを理由として、それらの権利を制限し又は侵すことは許されない。

第3部

第6条
1.この規約の締約国は、労働の権利を認めるものとし、この権利を保障するため適当な措置をとる。この権利には、すべての者が自由に選択し又は承諾する労働によって生計を立てる機会を得る権利を含む。
2.この規約の締約国が1の権利の完全な実現を達成するためとる措置には、個人に対して基本的な政治的及び経済的自由を保障する条件の下で着実な経済的、社会的及び文化的発展を実現し並びに完全かつ生産的な雇用を達成するための技術及び職業の指導及び訓練に関する計画、政策及び方法を含む。

第7条
この規約の締約国は、すべての者が公正かつ良好な労働条件を享受する権利を有することを認める。この労働条件は、特に次のものを確保する労働条件とする。
(a) すべての労働者に最小限度次のものを与える報酬 (i) 公正な賃金及びいかなる差別もない同一価値の労働についての同一報酬。特に、女子については、同一の労働についての同一報酬とともに男子が享受する労働条件に劣らない労働条件が保障されること。(ii) 労働者及びその家族のこの規約に適合する相応な生活(b) 安全かつ健康的な作業条件(c) 先任及び能力以外のいかなる事由も考慮されることなく、すべての者がその雇用関係においてより高い適当な地位に昇進する均等な機会(d) 休息、余暇、労働時間の合理的な制限及び定期的な有給休暇並びに公の休日についての報酬

第8条
1.この規約の締約国は、次の権利を確保することを約束する。 (a)すべての者がその経済的及び社会的利益を増進し及び保護するため、労働組合を結成し及び当該労働組合の規則にのみ従うことを条件として自ら選択する労働組合に加入する権利。この権利の行使については、法律で定める制限であって国の安全若しくは公の秩序のため又は他の者の権利及び自由の保護のため民主的社会において必要なもの以外のいかなる制限も課することができない。(b) 労働組合が国内の連合又は総連合を設立する権利及びこれらの連合又は総連合が国際的な労働組合団体を結成し又はこれに加入する権利(c) 労働組合が、法律で定める制限であって国の安全若しくは公の秩序のため又は他の者の権利及び自由の保護のため民主的社会において必要なもの以外のいかなる制限も受けることなく、自由に活動する権利(d) 同盟罷業をする権利。ただし、この権利は、各国の法律に従って行使されることを条件とする。
2.この条の規定は、軍隊若しくは警察の構成員又は公務員による1の権利の行使について合法的な制限を課することを妨げるものではない。
3.この条のいかなる規定も、結社の自由及び団結権の保護に関する千九百四十八年の国際労働機関の条約の締約国が、同条約に規定する保障を阻害するような立法措置を講ずること又は同条約に規定する保障を阻害するような方法により法律を適用することを許すものではない。

第9条
この規約の締約国は、社会保険その他の社会保障についてのすべての者の権利を認める。

第10条
この規約の締約国は、次のことを認める。
1.できる限り広範な保護及び援助が、社会の自然かつ基礎的な単位である家族に対し、特に、家族の形成のために並びに扶養児童の養育及び教育について責任を有する間に、与えられるべきである。婚姻は、両当事者の自由な合意に基づいて成立するものでなければならない。
2.産前産後の合理的な期間においては、特別な保護が母親に与えられるべきである。働いている母親には、その期間において、有給休暇又は相当な社会保障給付を伴う休暇が与えられるべきである。
3.保護及び援助のための特別な措置が、出生の他の事情を理由とするいかなる差別もなく、すべての児童及び年少者のためにとられるべきである。児童及び年少者は、経済的及び社会的な搾取から保護されるべきである。児童及び年少者を、その精神若しくは健康に有害であり、その生命に危険があり又はその正常な発育を妨げるおそれのある労働に使用することは、法律で処罰すべきである。また、国は年齢による制限を定め、その年齢に達しない児童を賃金を支払って使用することを法律で禁止しかつ処罰すべきである。

第11条
1.この規約の締約国は、自己及びその家族のための相当な食糧、衣類及び住居を内容とする相当な生活水準についての並びに生活条件の不断の改善についてのすべての者の権利を認める。締約国は、この権利の実現を確保するために適当な措置をとり、このためには、自由な合意に基づく国際協力が極めて重要であることを認める。
2.この規約の締約国は、すべての者が飢餓から免れる基本的な権利を有することを認め、個々に及び国際協力を通じて、次の目的のため、具体的な計画その他の必要な措置をとる。 (a) 技術的及び科学的知識を十分に利用することにより、栄養に関する原則についての知識を普及させることにより並びに天然資源の最も効果的な開発及び利用を達成するように農地制度を発展させ又は改革することにより、食糧の生産、保存及び分配の方法を改善すること。(b) 食糧の輸入国及び輸出国の双方の問題に考慮を払い、需要との関連において世界の食糧の供給の衡平な分配を確保すること。

第12条
1.この規約の締約国は、すべての者が到達可能な最高水準の身体及び精神の健康を享受する権利を有することを認める。
2.この規約の締約国が1の権利の完全な実現を達成するためにとる措置には、次のことに必要な措置を含む。 (a) 死産率及び幼児の死亡率を低下させるための並びに児童の健全な発育のための対策(b) 環境衛生及び産業衛生のあらゆる状態の改善(c) 伝染病、風土病、職業病その他の疾病の予防、治療及び抑圧(d) 病気の場合にすべての者に医療及び看護を確保するような条件の創出

第13条
1.この規約の締約国は、教育についてのすべての者の権利を認める。締約国は、教育が人格の完成及び人格の尊厳についての意識の十分な発達を指向し並びに人権及び基本的自由の尊重を強化すべきことに同意する。更に、締約国は、教育が、すべての者に対し、自由な社会に効果的に参加すること、諸国民の間及び人種的、種族的又は宗教的集団の間の理解、寛容及び友好を促進すること並びに平和の維持のための国際連合の活動を助長することを可能にすべきことに同意する。
2.この規約の締約国は、1の権利の完全な実現を達成するため、次のことを認める。 (a) 初等教育は、義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとすること。(b) 種々の形態の中等教育(技術的及び職業的中等教育を含む。)は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、一般的に利用可能であり、かつ、すべての者に対して機会が与えられるものとすること。(c) 高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること。(d) 基礎教育は、初等教育を受けなかった者又はその全課程を修了しなかった者のため、できる限り奨励され又は強化されること。(e) すべての段階にわたる学校制度の発展を積極的に追求し、適当な奨学金制度を設立し及び教育職員の物質的条件を不断に改善すること。
3.この規約の締約国は、父母及び場合により法定保護者が、公の機関によって設置される学校以外の学校であって国によって定められ又は承認される最低限度の教育上の基準に適合するものを児童のために選択する自由並びに自己の信念に従って児童の宗教的及び道徳的教育を確保する自由を有することを尊重することを約束する。
4.この条のいかなる規定も、個人及び団体が教育機関を設置し及び管理する自由を妨げるものと解してはならない。ただし、常に、1に定める原則が遵守されること及び当該教育機関において行なわれる教育が国によって定められる最低限度の基準に適合することを条件とする。

第14条
この規約の締約国となる時にその本土地域又はその管轄の下にある他の地域において無償の初等義務教育を確保するに至っていない各締約国は、すべての者に対する無償の義務教育の原則をその計画中に定める合理的な期間内に漸進的に実施するための詳細な行動計画を二年以内に作成しかつ採用することを約束する。

第15条
1.この規約の締約国は、すべての者の次の権利を認める。 (a) 文化的な生活に参加する権利(b) 科学の進歩及びその利用による利益を享受する権利(c) 自己の科学的、文学的又は芸術的作品により生ずる精神的及び物質的利益が保護されることを享受する権利
2.この規約の締約国が1の権利の完全な実現を達成するためにとる措置には、科学及び文化の保存、発展及び普及に必要な措置を含む。
3.この規約の締約国は、科学研究及び創作活動に不可欠な自由を尊重することを約束する。
4.この規約の締約国は、科学及び文化の分野における国際的な連絡及び協力を奨励し及び発展させることによって得られる利益を認める。

第4部

第16条
1.この規約の締約国は、この規約において認められる権利の実現のためにとった措置及びこれらの権利の実現についてもたらされた進歩に関する報告をこの部の規定に従って提出することを約束する。
2.(a) すべての報告は、国際連合事務総長に提出するものとし、同事務総長は、この規約による経済社会理事会の審議のため、その写しを同理事会に送付する。(b) 国際連合事務総長は、また、いずれかの専門機関の加盟国であるこの規約の締結によって提出される報告又はその一部が当該専門機関の基本文書によりその任務の範囲内にある事項に関連を有するものである場合には、それらの報告又は関係部分の写しを当該専門機関に送付する。

第17条
1.この規約の締約国は、経済社会理事会が締約国及び関係専門機関との協議の後この規約の効力発生の後一年以内に作成する計画に従い、報告を段階的に提出する。
2.報告には、この規約に基づく義務の履行程度に影響を及ぼす要因及び障害を記載することができる。
3.関連情報がこの規約の締約国により国際連合又はいずれかの専門機関に既に提供されている場合には、その情報については、再び提供の必要はなく、提供に係る情報について明確に言及することで足りる。

第18条
経済社会理事会は、人権及び基本的自由の分野における国際連合憲章に規定する責任に基づき、いずれかの専門機関の任務の範囲内にある事項に関するこの規約の規定の遵守についてもたらされた進歩に関し当該専門機関が同理事会に報告することにつき、当該専門機関と取極を行うことができる。報告には、当該専門機関の権限のある機関がこの規約の当該規定の実施に関して採択した決定及び勧告についての詳細を含ませることができる。

第19条
経済社会理事会は、第16条及び第17条の規定により締約国が提出する人権に関する報告並びに前条の規定により専門機関が提出する人権に関する報告を、検討及び一般的な性格を有する勧告のため又は適当な場合には情報用として、人権委員会に送付することができる。

第20条
この規約の締約国及び関係専門機関は、前条にいう一般的な性格を有する勧告に関する意見又は人権委員会の報告において若しくはその報告で引用されている文書において言及されている一般的な性格を有する勧告に関する意見を、経済社会理事会に提出することができる。

第21条
経済社会理事会は、一般的な性格を有する勧告を付した報告、並びにこの規約の締約国及び専門機関から得た情報であってこの規約において認められる権利の実現のためにとられた措置及びこれらの権利の実現についてもたらされた進歩に関する情報の概要を、総会に随時提出することができる。

第22条
経済社会理事会は、技術援助の供与に関係を有する国際連合の他の機関及びこれらの補助機関並びに専門機関に対し、この部に規定する報告により提起された問題であって、これらの機関がそれぞれの権限の範囲内でこの規約の効果的かつ漸進的な実施に寄与すると認められる国際的措置をとることの適否の決定に当たって参考となるものにつき、注意を喚起することができる。

第23条
この規約の締約国は、この規約において認められる権利の実現のための国際的措置には条約の締結、勧告の採択、技術援助の供与並びに関係国の政府との連携により組織される協議及び検討のための地域会議及び専門家会議の開催のような措置が含まれることに同意する。

第24条
この規約のいかなる規定も、この規約に規定されている事項につき、国際連合の諸機関及び専門機関の任務をそれぞれ定めている国際連合憲章及び専門機関の基本文書の規定の適用を妨げるものと解してはならない。

第25条
この規約のいかなる規定も、すべての人民がその天然の富及び資源を十分かつ自由に享受し及び利用する固有の権利を害するものと解してはならない。

第5部

第26条
1.この規約は、国際連合又はいずれかの専門機関の加盟国、国際司法裁判所規程の当事国及びこの規約の締約国となるよう国際連合総会が招請する他の国による署名のために開放しておく。
2.この規約は、批准されなければならない。批准書は、国際連合事務総長に寄託する。
3.この規約は、1に規程する国による加入のために開放しておく。
4.加入は、加入書を国際連合事務総長に寄託することによって行う。
5.国際連合事務総長は、この規約に署名し又は加入したすべての国に対し、各批准書又は各加入書の寄託を通報する。

第27条
1.この規約は、三十五番目の批准書又は加入書が国際連合事務総長に寄託された日の後三箇月で効力を生ずる。
2.この規約は、三十五番目の批准書又は加入書が寄託された後に批准し又は加入する国については、その批准書又は加入書が寄託された日の後三箇月で効力を生ずる。

第28条
この規約は、いかなる制限又は例外もなしに連邦国家のすべての地域について適用する。

第29条
1.この規約のいずれの締約国も、改正を提案し及び改正案を国際連合事務総長に提出することができる。同事務総長は、直ちに、この規約の締約国に対し、改正案を送付するものとし、締約国による改正案の審議及び投票のための締約国会議の開催についての賛否を同事務総長に通告するよう要請する。締約国の三分の一以上が会議の開催に賛成する場合には、同事務総長は、国際連合の主催の下に会議を招集する。会議において出席しかつ投票する締約国の過半数によって採択された改正案は、承認のため、国際連合総会に提出する。
2.改正は、国際連合総会が承認し、かつ、この規約の締約国の三分の二以上の多数がそれぞれの国の憲法上の手続に従って受諾したときに、効力を生ずる。
3.改正は、効力を生じたときは、改正を受諾した締約国を拘束するものとし、他の締約国は、改正前のこの規約の規定(受諾した従前の改正を含む。)により引き続き拘束される。

第30条
第26条5の規定により行われる通報にかかわらず、国際連合事務総長は、同条1に規定するすべての国に対し、次の事項を通報する。
(a) 第26条の規定による署名、批准及び加入(b) 第27条の規定に基づきこの規約が効力を生ずる日及び前条の規定により改正が効力を生ずる日

第31条
1.この規約は、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語をひとしく正文とし、国際連合に寄託される。
2.国際連合事務総長は、この規約の認証謄本を第26条に規定するすべての国に送付する。

以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けて、千九百六十六年十二月十九日にニューヨークで署名のために開放されたこの規約に署名した。

〔署名欄省略〕

〇「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(B規約)

前文

この規約の締約国は、国際連合憲章において宣明された原則によれば、人類社会のすべての構成員の固有の尊厳及び平等のかつ奪い得ない権利を認めることが世界における自由、正義及び平和の基礎をなすものであることを考慮し、これらの権利が人間の固有の尊厳に由来することを認め、世界人権宣言によれば、自由な人間は市民的及び政治的自由並びに恐怖及び欠乏からの自由を享受するものであるとの理想は、すべての者がその経済的、社会的及び文化的権利とともに市民的及び政治的権利を享有することのできる条件が作り出される場合に初めて達成されることになることを認め、人権及び自由の普遍的な尊重及び遵守を助長すべき義務を国際連合憲章に基づき諸国が負っていることを考慮し、個人が、他人に対し及びその属する社会に対して義務を負うこと並びにこの規約において認められる権利の増進及び擁護のために努力する責任を有することを認識して、次のとおり協定する。

第1部

第1条
1.すべての人民は、自決の権利を有する。この権利に基づき、すべての人民は、その政治的地位を自由に決定し並びにその経済的、社会的及び文化的発展を自由に追求する。
2.すべての人民は、互恵の原則に基づく国際的経済協力から生ずる義務及び国際法上の義務に違反しない限り、自己のためにその天然の富及び資源を自由に処分することができる。人民は、いかなる場合にも、その生存のための手段を奪われることはない。
3.この規約の締約国(非自治地域及び信託統治地域の施政の責任を有する国を含む。)は、国際連合憲章の規定に従い、自決の権利が実現されることを促進し及び自決の権利を尊重する。

第2部

第2条
1.この規約の各締約国は、その領域内にあり、かつ、その管轄の下にあるすべての個人に対し、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生又は他の地位等によるいかなる差別もなしにこの規約において認められる権利を尊重し及び確保することを約束する。
2.この規約の各締約国は、立法措置その他の措置がまだとられていない場合には、この規約において認められる権利を実現するために必要な立法措置その他の措置をとるため、自国の憲法上の手続及びこの規約の規定に従って必要な行動をとることを約束する。
3.この規約の各締約国は、次のことを約束する。 (a) この規約において認められる権利又は自由を侵害された者が、公的資格で行動する者によりその侵害が行われた場合にも、効果的な救済措置を受けることを確保すること。(b) 救済措置を求める者の権利が権限のある司法上、行政上若しくは立法上の機関又は国の法制で定める他の権限のある機関によって決定されることを確保すること及び司法上の救済措置の可能性を発展させること。(c) 救済措置が与えられる場合に権限のある機関によって執行されることを確保すること。

第3条
この規約の締約国は、この規約に定めるすべての市民的及び政治的権利の享有について男女に同等の権利を確保することを約束する。

第4条
1.国民の生存を脅かす公の緊急事態の場合においてその緊急事態の存在が公式に宣言されているときは、この規約の締約国は、事態の緊急性が真に必要とする限度において、この規約に基づく義務に違反する措置をとることができる。ただし、その措置は、当該締約国が国際法に基づき負う他の義務に抵触してはならず、また、人種、皮膚の色、性、言語、宗教又は社会的出身のみを理由とする差別を含んではならない。
2.1の規定は、第6条、第7条、第8条1及び2、第11条、第15条、第16条並びに第18条の規定に違反することを許すものではない。
3.義務に違反する措置をとる権利を行使するこの規約の締約国は、違反した規定及び違反するに至った理由を国際連合事務総長を通じてこの規約の他の締約国に直ちに通知する。更に、違反が終了する日に、同事務総長を通じてその旨通知する。

第5条
1.この規約のいかなる規定も、国、集団又は個人が、この規約において認められる権利及び自由を破壊し若しくはこの規約に定める制限の範囲を超えて制限することを目的とする活動に従事し又はそのようなことを目的とする行為を行う権利を有することを意味するものと解することはできない。
2.この規約のいずれかの締約国において法律、条約、規則又は慣習によって認められ又は存する基本的人権については、この規約がそれらの権利を認めていないこと又はその認める範囲がより狭いことを理由として、それらの権利を制限し又は侵してはならない。

第3部

第6条
1.すべての人間は、生命に対する固有の権利を有する。この権利は、法律によって保護される。何人も、恣意的にその生命を奪われない。
2.死刑を廃止していない国においては、死刑は、犯罪が行われた時に効力を有しており、かつ、この規約の規定及び集団殺害犯罪の防止及び処罰に関する条約の規定に抵触しない法律により、最も重大な犯罪についてのみ科することができる。この刑罰は、権限のある裁判所が言い渡した確定判決によってのみ執行することができる。
3.生命の剥奪が集団殺害犯罪を構成する場合には、この条のいかなる想定も、この規約の締約国が集団殺害犯罪の防止及び処罰に関する条約の規定に基づいて負う義務を方法のいかんを問わず免れることを許すものではないと了解する。
4.死刑を言い渡されたいかなる者も、特赦又は減刑を求める権利を有する。死刑に対する大赦、特赦又は減刑はすべての場合に与えることができる。
5.死刑は、十八歳未満の者が行った犯罪について科してはならず、また、妊娠中の女子に対して執行してはならない。
6.この条のいかなる規定も、この規約の締約国により死刑の廃止を遅らせ又は妨げるために援用されてはならない。

第7条
何人も、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けない。特に、何人も、その自由な同意なしに医学的又は科学的実験を受けない。

第8条
1.何人も、奴隷の状態に置かれない。あらゆる形態の奴隷制度及び奴隷取引は、禁止する。
2.何人も、隷属状態に置かれない。
3.(a) 何人も、強制労働に服することを要求されない。(b) (a)の規定は、犯罪に対する刑罰として強制労働を伴う拘禁刑を科することができる国において、権限のある裁判所による刑罰の言渡しにより強制労働をさせることを禁止するものと解してはならない。(c) この3の適用上、「強制労働」には、次のものを含まない。 (i) 作業又は役務であって、(b)の規定において言及されておらず、かつ、裁判所の合法的な命令によって抑留されている者又はその抑留を条件付きで免除されている者に通常要求されるもの(ii) 軍事的性質の役務及び、良心的兵役拒否が認められている国においては、良心的兵役拒否者が法律によって要求される国民的役務(iii) 社会の存立又は福祉を脅かす緊急事態又は災害の場合に要求される役務(iv) 市民としての通常の義務とされる作業又は役務

第9条
1.すべての者は、身体の自由及び安全についての権利を有する。何人も、恣意的に逮捕され又は抑留されない。何人も、法律で定める理由及び手続によらない限り、その自由を奪われない。
2.逮捕される者は、逮捕の時にその理由を告げられるものとし、自己に対する被疑事実を速やかに告げられる。
3.刑事上の罪に問われて逮捕され又は抑留された者は、裁判官又は司法権を行使することが法律によって認められている他の官憲の面前に速やかに連れて行かれるものとし、妥当な期間内に裁判を受ける権利又は釈放される権利を有する。裁判に付される者を抑留することが原則であってはならず、釈放に当たっては、裁判その他の司法上の手続のすべての段階における出頭及び必要な場合における判決の執行のための出頭が保証されることを条件とすることができる。
4.逮捕又は抑留によって自由を奪われた者は、裁判所がその抑留が合法的であるかどうかを遅滞なく決定すること及びその抑留が合法的でない場合にはその釈放を命ずることができるように、裁判所において手続をとる権利を有する。
5.違法に逮捕され又は抑留された者は、賠償を受ける権利を有する。

第10条
1.自由を奪われたすべての者は、人道的にかつ人間の固有の尊厳を尊重して、取り扱われる。
2.(a) 被告人は、例外的な事情がある場合を除くほか有罪の判決を受けた者とは分離されるものとし、有罪の判決を受けていない者としての地位に相応する別個の取扱いを受ける。(b) 少年の被告人は、成人とは分離されるものとし、できる限り速やかに裁判に付される。
3.行刑の制度は、被拘禁者の矯正及び社会復帰を基本的な目的とする処遇を含む。少年の犯罪者は、成人とは分離されるものとし、その年齢及び法的地位に相応する取扱いを受ける。

第11条
何人も、契約上の義務を履行することができないことのみを理由として拘禁されない。

第12条
1.合法的にいずれかの国の領域内にいるすべての者は、当該領域内において、移動の自由及び居住の自由についての権利を有する。
2.すべての者は、いずれの国(自国を含む。)からも自由に離れることができる。
3.1及び2の権利は、いかなる制限も受けない。ただし、その制限が、法律で定められ、国の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳又は他の者の権利及び自由を保護するために必要であり、かつ、この規約において認められる他の権利と両立するものである場合は、この限りでない。
4.何人も、自国に戻る権利を恣意的に奪われない。

第13条
合法的にこの規約の締約国の領域内にいる外国人は、法律に基づいて行われた決定によってのみ当該領域から追放することができる。国の安全のためのやむを得ない理由がある場合を除くほか、当該外国人は、自己の追放に反対する理由を提示すること及び権限のある機関又はその機関が特に指名する者によって自己の事案が審査されることが認められるものとし、この為にその機関又はその者に対する代理人の出頭が認められる。

第14条
1.すべての者は、裁判所の前に平等とする。すべての者は、その刑事上の罪の決定又は民事上の権利及び義務の争いについての決定のため、法律で設置された、権限のある、独立の、かつ、公平な裁判所による公正な公開審理を受ける権利を有する。報道機関及び公衆に対しては、民主的社会における道徳、公の秩序若しくは国の安全を理由として、当事者の私生活の利益のため必要な場合において又はその公開が司法の利益を害することとなる特別な状況において裁判所が真に必要があると認める限度で、裁判の全部又は一部を公開しないことができる。もっとも、刑事訴訟又は他の訴訟において言い渡される判決は、少年の利益のために必要がある場合又は当該手続が夫婦間の争い若しくは児童の後見に関するものである場合を除くほか、公開する。
2.刑事上の罪に問われているすべての者は、法律に基づいて有罪とされるまでは、無罪と推定される権利を有する。
3.すべての者は、その刑事上の罪の決定について、十分平等に、少なくとも次の保障を受ける権利を有する。 (a) その理解する言語で速やかにかつ詳細にその罪の性質及び理由を告げられること。(b) 防御の準備のために十分な時間及び便益を与えられ並びに自ら選任する弁護人と連絡すること。(c) 不当に遅延することなく裁判を受けること。(d) 自ら出席して裁判を受け及び、直接に又は自ら選任する弁護人を通じて、防御すること。弁護人がいない場合には、弁護人を持つ権利を告げられること。司法の利益のために必要な場合には、十分な支払手段を有しないときは自らその費用を負担することなく、弁護人を付されること。(e) 自己に不利な証人を尋問し又はこれに対し尋問させること並びに自己に不利な証人と同じ条件で自己のための証人の出席及びこれに対する尋問を求めること。(f) 裁判所において使用される言語を理解すること又は話すことができない場合には、無料で通訳の援助を受けること。(g) 自己に不利益な供述又は有罪の自白を強要されないこと。
4.少年の場合には、手続は、その年齢及びその更生の促進が望ましいことを考慮したものとする。
5.有罪の判決を受けたすべての者は、法律に基づきその判決及び刑罰を上級の裁判所によって再審理される権利を有する。
6.確定判決によって有罪と決定された場合において、その後に、新たな事実又は新しく発見された事実により誤審のあったことが決定的に立証されたことを理由としてその有罪の判決が破棄され又は赦免が行われたときは、その有罪の判決の結果刑罰に服した者は、法律に基づいて補償を受ける。ただし、その知られなかった事実が適当な時に明らかにされなかったことの全部又は一部がその者の責めに帰するものであることが証明される場合は、この限りでない。
7.何人も、それぞれの国の法律及び刑事手続に従って既に確定的に有罪又は無罪の判決を受けた行為について再び裁判され又は処罰されることはない。

第15条
1.何人も、実行の時に国内法又は国際法により犯罪を構成しなかった作為又は不作為を理由として有罪とされることはない。何人も、犯罪が行われた時に適用されていた刑罰よりも重い刑罰を科されない。犯罪が行われた後により軽い刑罰を科する規定が法律に設けられる場合には、罪を犯した者は、その利益を受ける。
2.この条のいかなる規定も、国際社会の認める法の一般原則により実行の時に犯罪とされていた作為又は不作為を理由として裁判しかつ処罰することを妨げるものでない。

第16条
すべての者は、すべての場所において、法律の前に人として認められる権利を有する。

第17条
1.何人も、その私生活、家族、住居若しくは通信に対して恣意的に若しくは不法に干渉され又は名誉及び信用を不法に攻撃されない。
2.すべての者は、1の干渉又は攻撃に対する法律の保護を受ける権利を有する。

第18条
1.すべての者は、思想、良心及び宗教の自由についての権利を有する。この権利には、自ら選択する宗教又は信念を受け入れ又は有する自由並びに、単独で又は他の者と共同して及び公に又は私的に、礼拝、儀式、行事及び教導によってその宗教又は信念を表明する自由を含む。
2.何人も、自ら選択する宗教又は信念を受け入れ又は有する自由を侵害するおそれのある強制を受けない。
3.宗教又は信念を表明する自由については、法律で定める制限であって公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳又は他の者の基本的な権利及び自由を保護するために必要なもののみを課することができる。
4.この規約の締約国は父母及び場合により法定保護者が、自己の信念に従って児童の宗教的及び道徳的教育を確保する自由を有することを尊重することを約束する。

第19条
1.すべての者は、干渉されることなく意見を持つ権利を有する。
2.すべての者は、表現の自由についての権利を有する。この権利には、口頭、手書き若しくは印刷、芸術の形態又は自ら選択する他の方法により、国境とのかかわりなく、あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む。
3.2の権利の行使には、特別の義務及び責任を伴う。したがって、この権利の行使については、一定の制限を課すことができる。ただし、その制限は、法律によって定められ、かつ、次の目的のために必要とされるものに限る。 (a) 他の者の権利又は信用の尊重(b) 国の安全、公の秩序又は公衆の健康若しくは道徳の保護

第20条
1.戦争のためのいかなる宣伝も、法律で禁止する。
2.差別、敵意又は暴力の扇動となる国民的、人種的又は宗教的憎悪の唱道は、法律で禁止する。

第21条
平和的な集会の権利は、認められる。この権利の行使については、法律で定める制限であって国の安全若しくは公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳の保護又は他の者の権利及び自由の保護のため民主的社会において必要なもの以外のいかなる制限も課することができない。

第22条
1.すべての者は、結社の自由についての権利を有する。この権利には、自己の利益の保護のために労働組合を結成し及びこれに加入する権利を含む。
2.1の権利の行使については、法律で定める制限であって国の安全若しくは公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳の保護又は他の者の権利及び自由の保護のため民主的社会において必要なもの以外のいかなる制限も課することができない。この条の規定は、1の権利の行使につき、軍隊及び警察の構成員に対して合法的な制限を課することを妨げるものではない。
3.この条のいかなる規定も、結社の自由及び団結権の保護に関する千九百四十八年の国際労働機関の条約の締約国が、同条約に規定する保障を阻害するような立法措置を講ずること又は同条約に規定する保障を阻害するような方法により法律を適用することを許すものではない。

第23条
1.家族は、社会の自然かつ基礎的な単位であり、社会及び国による保護を受ける権利を有する。
2.婚姻をすることができる年齢の男女が婚姻をしかつ家族を形成する権利は、認められる。
3.婚姻は、両当事者の自由かつ完全な合意なしには成立しない。
4.この規約の締約国は、婚姻中及び婚姻の解消の際に、婚姻に係る配偶者の権利及び責任の平等を確保するため、適当な措置をとる。その解消の場合には、児童に対する必要な保護のため、措置がとられる。

第24条
1.すべての児童は、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、国民的若しくは社会的出身、財産又は出生によるいかなる差別もなしに、未成年者としての地位に必要とされる保護の措置であって家族、社会及び国による措置について権利を有する。
2.すべての児童は、出生の後直ちに登録され、かつ、氏名を有する。
3.すべての児童は、国籍を取得する権利を有する。

第25条
すべての市民は、第2条に規定するいかなる差別もなく、かつ、不合理な制限なしに、次のことを行う権利及び機会を有する。
(a) 直接に、又は自由に選んだ代表者を通じて、政治に参与すること。(b) 普通かつ平等の選挙権に基づき秘密投票により行われ、選挙人の意思の自由な表明を保障する真正な定期的選挙において、投票し及び選挙されること。(c) 一般的な平等条件の下で自国の公務に携わること。

第26条
すべての者は、法律の前に平等であり、いかなる差別もなしに法律による平等の保護を受ける権利を有する。このため、法律は、あらゆる差別を禁止し及び人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生又は他の地位等のいかなる理由による差別に対しても平等のかつ効果的な保護をすべての者に保障する。

第27条
種族的、宗教的又は言語的少数民族が存在する国において、当該少数民族に属する者は、その集団の他の構成員とともに自己の文化を享有し、自己の宗教を信仰しかつ実践し又は自己の言語を使用する権利を否定されない。

第4部

第28条
1.人権委員会(以下「委員会」という。)を設置する。委員会は、十八人の委員で構成するものとして、この部に定める任務を行う。
2.委員会は、高潔な人格を有し、かつ、人権の分野において能力を認められたこの規約の締約国の国民で構成する。この場合において、法律関係の経験を有する者の参加が有益であることに考慮を払う。
3.委員会の委員は、個人の資格で、選挙され及び職務を遂行する。

第29条
1.委員会の委員は、前条に定める資格を有し、かつ、この規約の締約国により選挙のために指名された者の名簿の中から秘密投票により選出される。
2.この規約の各締約国は、一人又は二人を指名することができる。指名される者は、指名する国の国民とする。
3.いずれの者も、再指名される資格を有する。

第30条
1.委員会の委員の最初の選挙は、この規約の効力発生の日の後六箇月以内に行う。
2.第34条の規定に従って空席(第33条の規定により宣言された空席をいう。)を補充するための選挙の場合を除くほか、国際連合事務総長は、委員会の委員の選挙の日の遅くとも四箇月前までに、この規約の締約国に対し、委員会の委員に指名された者の氏名を三箇月以内に提出するよう書面で要請する。
3.国際連合事務総長は、2にいう指名された者のアルファベット順による名簿(これらの者を指名した締約国名を表示した名簿とする。)を作成し、名簿を各選挙の日の遅くとも一箇月前までにこの規約の締約国に送付する。
4.委員会の委員の選挙は、国際連合事務総長により国際連合本部に招集されるこの規約の締約国の会合において行う。この会合は、この規約の締約国の三分の二をもって定足数とする。この会合においては、出席しかつ投票する締約国の代表によって投じられた票の最多数で、かつ、過半数の票を得た指名された者をもって委員会に選出された委員とする。

第31条
1.委員会は、一の国の国民を二人以上含むことができない。
2.委員会の選挙に当たっては、委員の配分が地理的に衡平に行われること並びに異なる文明形態及び主要な法体系が代表されることを考慮に入れる。

第32条
1.委員会の委員は、四年の任期で選出される。委員は、再指名された場合には、再選される資格を有する。ただし、最初の選挙において選出された委員のうち九人の委員の任期は、二年で終了するものとし、これらの九人の委員は、最初の選挙の後直ちに、第30条4に規定する会合において議長によりくじ引で選ばれる。
2.任期満了の際の選挙は、この部の前諸条の規定に従って行う。

第33条
1.委員会の委員が一時的な不在以外の理由のためその職務を遂行することができなくなったことを他の委員が一致して認める場合には、委員会の委員長は国際連合事務総長にその旨を通知するものとし、同事務総長は、当該委員の職が空席となったことを宣言する。
2.委員会の委員が死亡し又は辞任した場合には、委員長は、直ちに国際連合事務総長にその旨を通知するものとし、同事務総長は、死亡し又は辞任した日から当該委員の職が空席となったことを宣言する。

第34条
1.前条の規定により空席が宣言された場合において、当該宣言の時から六箇月以内に交代される委員の任期が満了しないときは、国際連合事務総長は、この規約の各締約国にその旨を通知する。各締約国は、空席を補充するため、二箇月以内に第29条の規定により指名された者の氏名を提出することができる。
2.国際連合事務総長は、1にいう指名された者のアルファベット順による名簿を作成し、この規約の締約国に送付する。空席を補充するための選挙は、この部の関連規定に従って行う。
3.前条の規定により宣言された空席を補充するために選出された委員会の委員は、同条の規定により委員会における職が空席となった委員の残余の期間在任する。

第35条
委員会の委員は、国際連合総会が委員会の任務の重要性を考慮して決定する条件に従い、同総会の承認を得て、国際連合の財源から報酬を受ける。

第36条
国際連合事務総長は、委員会がこの規約に定める任務を効果的に遂行するために必要な職員及び便益を提供する。

第37条
1.国際連合事務総長は、委員会の最初の会合を国際連合本部に招集する。
2.委員会は、最初の会合の後は、手続規則に定める時期に会合する。
3.委員会は、通常、国際連合本部又はジュネーブにある国際連合事務所において会合する。

第38条
委員会のすべての委員は、職務の開始に先立ち、公開の委員会において、職務を公平かつ良心的に遂行する旨の厳粛な宣誓を行う。

第39条
1.委員会は、役員を二年の任期で選出する。役員は、再選されることができる。
2.委員会は、手続規則を定める。この手続規則には、特に次のことを定める。 (a) 十二人の委員をもって定足数とすること。(b) 委員会の決定は、出席する委員が投ずる票の過半数によって行うこと。

第40条
1.この規約の締約国は、(a)当該締約国についてこの規約が効力を生ずる時から一年以内に、(b)その後は委員会が要請するときに、この規約において認められる権利の実現のためにとった措置及びこれらの権利の享受についてもたらされた進歩に関する報告を提出することを約束する。
2.すべての報告は、国際連合事務総長に提出するものとし、同事務総長は、検討のため、これらの報告を委員会に送付する。報告には、この規約の実施に影響を及ぼす要因及び障害が存在する場合には、これらの要因及び障害を記載する。
3.国際連合事務総長は、委員会との協議の後、報告に含まれるいずれかの専門機関の権限の範囲内にある事項に関する部分の写しを当該専門機関に送付することができる。
4.委員会は、この規約の締約国の提出する報告を検討する。委員会は、委員会の報告及び適当と認める一般的な性格を有する意見を締約国に送付しなければならず、また、この規約の締約国から受領した報告の写しとともに当該一般的な性格を有する意見を経済社会理事会に送付することができる。
5.この規約の締約国は、4の規定により送付される一般的な性格を有する意見に関する見解を委員会に提示することができる。

第41条
1.この規約の締約国は、この規約に基づく義務が他の締約国によって履行されていない旨を主張するいずれかの締約国からの通報を委員会が受理しかつ検討する権限を有することを認めることを、この条の規定に基づいていつでも宣言することができる。この条の規定に基づく通報は、委員会の当該権限を自国について認める宣言を行った締約国による通報である場合に限り、受理しかつ検討することができる。委員会は、宣言を行っていない締約国についての通報を受理してはならない。この条の規定により受理される通報は、次の手続に従って取り扱う。 (a) この規約の締約国は、他の締約国がこの規約を実施していないと認める場合には、書面による通知により、その事態につき当該他の締約国の注意を喚起することができる。通知を受領する国は、通知の受領の後三箇月以内に、当該事態について説明する文書その他の文書を、通知を送付した国に提供する。これらの文書は、当該事態について既にとられ、現在とっており又は将来とることができる国内的な手続及び救済措置に、可能かつ適当な範囲において、言及しなければならない。(b) 最初の通知の受領の後六箇月以内に当該事案が関係締約国の双方の満足するように調整されない場合には、いずれの一方の締約国も、委員会及び他方の締約国に通告することにより当該事案を委員会に付託する権利を有する。(c) 委員会は、付託された事案について利用し得るすべての国内的な救済措置がとられかつ尽くされたことを確認した後に限り、一般的に認められた国際法の原則に従って、付託された事案を取り扱う。ただし、救済措置の実施が不当に遅延する場合は、この限りでない。(d) 委員会は、この条の規定により通報を検討する場合には、非公開の会合を開催する。(e) (c)の規定に従うことを条件として、委員会は、この規約において認められる人権及び基本的自由の尊重を基礎として事案を友好的に解決するため、関係締約国に対してあっ旋を行う。(f) 委員会は、付託されたいずれの事案についても、(b)にいう関係締約国に対し、あらゆる関連情報を提供するよう要請することができる。(g) (b)にいう関係締約国は、委員会において事案が検討されている間において代表を出席させる権利を有するものとし、また、口頭又は書面により意見を提出する権利を有する。(h) 委員会は、(b)の通告を受領した日の後十二箇月以内に、報告を提出する。報告は、各事案ごとに、関係締約国に送付する。 (i) (e)の規定により解決に到達した場合には、委員会は、事実及び到達した解決について簡潔に記述したものを報告する。(ii) (e)の規定により解決に到達しない場合には、委員会は、事実について簡潔に記述したものを報告するものとし、当該報告に関係締約国の口頭による意見の記録及び書面による意見を添付する。
2.この条の規定は、この規約の十の締約国が1の規定に基づく宣言を行った時に効力を生ずる。宣言は、締約国が国際連合事務総長に寄託するものとし、同事務総長は、その写しを他の締約国に送付する。宣言は、同事務総長に対する通告によりいつでも撤回することができる。撤回は、この条の規定に従って既に送付された通報におけるいかなる事案の検討をも妨げるものではない。宣言を撤回した締約国による新たな通報は、同事務総長がその宣言の撤回の通告を受領した後は、当該締約国が新たな宣言を行わない限り、受理しない。

第42条
1.(a) 前条の規定により委員会に付託された事案が関係締約国の満足するように解決されない場合には、委員会は、関係締約国の事前の同意を得て、特別調停委員会(以下「調停委員会」という。)を設置することができる。調停委員会は、この規約の尊重を基礎として当該事案を友好的に解決するため、関係締約国に対してあっ旋を行う。(b) 調停委員会は、関係締約国が容認する五人の者で構成する。調停委員会の構成について三箇月以内に関係締約国が合意に達しない場合には、合意が得られない調停委員会の委員については、委員会の秘密投票により、三分の二以上の多数による議決で、委員会の委員の中から選出する。
2.調停委員会の委員は、個人の資格で、職務を遂行する。委員は、関係締約国、この規約の締約国でない国又は前条の規定に基づく宣言を行っていない締約国の国民であってはならない。
3.調停委員会は、委員長を選出し及び手続規則を採択する。
4.調停委員会の会合は、通常、国際連合本部又はジュネーブにある国際連合事務所において開催する。もっとも、この会合は、調停委員会が国際連合事務総長及び関係締約国との協議の上決定する他の適当な場所において開催することができる。
5.第36条の規定により提供される事務局は、また、この条の規定に基づいて設置される調停委員会のために役務を提供する。
6.委員会が受領しかつ取りまとめる情報は、調停委員会の利用に供しなければならず、また、調停委員会は、関係締約国に対し、他のあらゆる関連情報を提供するよう要請することができる。
7.調停委員会は、事案を十分に検討した後に、かつ、検討のため事案を取り上げた後いかなる場合にも十二箇月以内に、関係締約国に通知するため、委員会の委員長に報告を提出する。 (a) 十二箇月以内に事案の検討を終了することができない場合には、調停委員会は、事案の検討状況について簡潔に記述したものを報告する。(b) この規約において認められる人権の尊重を基礎として事案の友好的な解決に到達した場合には、調停委員会は、事実及び到達した解決について簡潔に記述したものを報告する。(c) (b)に規定する解決に到達しない場合には、調停委員会の報告には、関係締約国間の係争問題に係るすべての事実関係についての調査結果及び当該事案の友好的な解決の可能性に関する意見を記載するとともに関係締約国の口頭による意見の記録及び書面による意見を添付する。(d) (c)の規定により調停委員会の報告が提出される場合には、関係締約国は、その報告の受領の後三箇月以内に、委員会の委員長に対し、調停委員会の報告の内容を受諾するかどうかを通告する。
8.この条の規定は、前条の規定に基づく委員会の任務に影響を及ぼすものではない。
9.関係締約国は、国際連合事務総長が作成する見積りに従って、調停委員会の委員に係るすべての経費を平等に分担する。
10.国際連合事務総長は、必要なときは、9の規定による関係締約国の経費の分担に先立って調停委員会の委員の経費を支払う権限を有する。

第43条
委員会の委員及び前条の規定に基づいて設置される調停委員会の委員は、国際連合の特権及び免除に関する条約の関連規定に規定する国際連合のための職務を行う専門家の便益、特権及び免除を享受する。

第44条
この規約の実施に関する規定は、国際連合及び専門機関の基本文書並びに国際連合及び専門機関において作成された諸条約により又はこれらの基本文書及び諸条約に基づき人権の分野に関し定められた手続を妨げることなく適用するものとし、この規約の締約国の間で効力を有する一般的な又は特別の国際取極による紛争の解決のため、この規約の締約国が他の手続を利用することを妨げるものではない。

第45条
委員会は、その活動に関する年次報告を経済社会理事会を通じて国際連合総会に提出する。

第5部

第46条
この規約のいかなる規定も、この規約に規定されている事項につき、国際連合の諸機関及び専門機関の任務をそれぞれ定めている国際連合憲章及び専門機関の基本文書の規定の適用を妨げるものと解してはならない。

第47条
この規約のいかなる規定も、すべての人民がその天然の富及び資源を十分かつ自由に享受し及び利用する固有の権利を害するものと解してはならない。

第6部

第48条
1.この規約は、国際連合又はいずれかの専門機関の加盟国、国際司法裁判所規程の当事国及びこの規約の締約国となるよう国際連合総会が招請する他の国による署名のために開放しておく。
2.この規約は、批准されなければならない。批准書は、国際連合事務総長に寄託する。
3.この規約は、1に規定する国による加入のために開放しておく。
4.加入は、加入書を国際連合事務総長に寄託することによって行う。
5.国際連合事務総長は、この規約に署名し又は加入したすべての国に対し、各批准書又は各加入書の寄託を通報する。

第49条
1.この規約は、三十五番目の批准書又は加入書が国際連合事務総長に寄託された日の後三箇月で効力を生ずる。
2.この規約は、三十五番目の批准書又は加入書が寄託された後に批准し又は加入する国については、その批准書又は加入書が寄託された日の後三箇月で効力を生ずる。

第50条
この規約は、いかなる制限又は例外もなしに、連邦国家のすべての地域について適用する。

第51条
1.この規約のいずれの締約国も、改正を提案し及び改正案を国際連合事務総長に提出することができる。同事務総長は、直ちに、この規約の締約国に対し、改正案を送付するものとし、締約国による改正案の審議及び投票のための締約国会議の開催についての賛否を同事務総長に通告するよう要請する。締約国の三分の一以上が会議の開催に賛成する場合には、同事務総長は、国際連合の主催の下に会議を招集する。会議において出席しかつ投票する締約国の過半数によって採択された改正案は、承認のため、国際連合総会に提出する。
2.改正は、国際連合総会が承認し、かつ、この規約の締約国の三分の二以上の多数がそれぞれの国の憲法上の手続に従って受諾したときに、効力を生ずる。
3.改正は、効力を生じたときは、改正を受諾した締約国を拘束するものとし、他の締約国は、改正前のこの規約の規定(受諾した従前の改正を含む。)により引き続き拘束される。

第52条
第48条5の規定により行われる通報にかかわらず、国際連合事務総長は、同条1に規定するすべての国に対し、次の事項を通報する。
(a) 第48条の規定による署名、批准及び加入(b) 第49条の規定に基づきこの規約が効力を生ずる日及び前条の規定により改正が効力を生ずる日
第53条[編集]
1.この規約は、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語をひとしく正文とし、国際連合に寄託される。
2.国際連合事務総長は、この規約の認証謄本を第48条に規定するすべての国に送付する。
以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けて、千九百六十六年十二月十九日にニューヨークで署名のために開放されたこの規約に署名した。

〔署名欄は省略〕

      「ウィキソース」より

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