ガウスの歴史を巡るブログ(その日にあった過去の出来事)

 学生時代からの大の旅行好きで、日本中を旅して回りました。その中でいろいろと歴史に関わる所を巡ってきましたが、日々に関わる歴史上の出来事や感想を紹介します。Yahooブログ閉鎖に伴い、こちらに移動しました。

タグ:ウィーン宣言及び行動計画

chyuson0
 今日は、平成時代の2011年(平成23)に、「平泉―仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群―」の世界遺産(文化遺産)への登録が決定した日です。
 「平泉―仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群―」(ひらいずみ―ぶっこくどをあらわすけんちく・ていえん及びこうこがくてきいせきぐん―)は、平成時代の2011年(平成23)6月に登録された世界遺産(文化遺産)です。中尊寺・毛越寺・観自在王院跡・無量光院跡・金鶏山の5件が構成要素となっていて、その拠点に存在する4つの庭園は、奥州藤原氏により、現世における仏国土(浄土)の象徴的な表現、つまり池泉・樹林・金鶏山頂と関連して仏堂を周到に配置することにより実体化した理想郷の光景として造営されました。さらに、重厚に金箔を貼った中尊寺の仏堂(金色堂)は、12世紀から残る唯一のものであり、奥州藤原氏の巨大な富を反映しています。

〇世界遺産(せかいいさん)とは?

 世界遺産は、1972年(昭和47)のユネスコ総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(世界遺産条約)に基づいて世界遺産リストに登録された、遺跡、景観、自然など、人類が共有すべき「顕著な普遍的価値」を持つ物件のことで、移動が不可能な不動産やそれに準ずるものが対象となっていて、文化遺産、自然遺産、複合遺産の3つの種類があります。文化遺産は、顕著な普遍的価値を有する記念物、建造物群、遺跡、文科的景観などで、自然遺産は、顕著な普遍的価値を有する地形や地質、生態系、絶滅のおそれのある動植物の生態・生育地などで、複合遺産は、文化遺産と自然遺産の両方の価値を兼ね備えているものとなっています。
 世界遺産リストに登録されるためには、「世界遺産条約履行のための作業指針」で示されている下記の登録基準のいずれか1つ以上に合致するとともに、真実性(オーセンティシティ)や完全性(インテグリティ)の条件を満たし、締約国の国内法によって、適切な保護管理体制がとられていることが必要とされています。

☆日本の世界遺産一覧(25件)

<文化遺産> 
・法隆寺地域の仏教建造物(奈良県生駒郡斑鳩町) 登録基準①②④⑥―1993年(平成5)12月登録 
【構成遺産】法隆寺、法起寺 
・姫路城(兵庫県姫路市) 登録基準①④―1993年(平成5)12月登録 
【構成遺産】姫路城 
・古都京都の文化財(京都府、滋賀県)登録基準②④―1994年(平成6)12月登録 
【構成遺産】賀茂別雷神社(上賀茂神社)、賀茂御祖神社(下鴨神社)、教王護国寺(東寺)、清水寺、延暦寺、醍醐寺、仁和寺(別称・御室御所)、平等院、宇治上神社、高山寺、西芳寺(別称・苔寺)、天龍寺、鹿苑寺(相国寺塔頭、別称・金閣寺)、慈照寺(相国寺塔頭、別称・銀閣寺)、龍安寺(妙心寺塔頭)、西本願寺(本願寺)、二条城 
・白川郷・五箇山の合掌造り集落(富山県、岐阜県)登録基準④⑤―1995年(平成7)12月登録 
【構成遺産】白川郷荻町集落、五箇山相倉集落、五箇山菅沼集落 
・原爆ドーム(広島県広島市) 登録基準⑥―1996年(平成8)12月 
【構成遺産】原爆ドーム 
・厳島神社(広島県廿日市市) 登録基準①②④⑥―1996年(平成8)12月登録 
【構成遺産】厳島神社 
・古都奈良の文化財(奈良県奈良市) 登録基準②③④⑥―1998年(平成10)12月登録 
【構成遺産】東大寺、興福寺、春日大社、元興寺、薬師寺、唐招提寺、平城宮跡、春日山原始林 
・日光の社寺(栃木県日光市) 登録基準①④⑥―1999年(平成11)12月登録 
【構成遺産】日光東照宮、日光二荒山神社(別宮本宮神社、別宮滝尾神社を含む)、日光山輪王寺 
・琉球王国のグスク及び関連遺産群(沖縄県) 登録基準②③⑥―2000年(平成12)12月登録 
【構成遺産】今帰仁城跡、座喜味城跡、勝連城跡、中城城跡、首里城跡、園比屋武御嶽石門、玉陵、識名園、斎場御嶽 
・紀伊山地の霊場と参詣道(和歌山県、奈良県、三重県) 登録基準②③④⑥―2004年(平成16)7月登録 
【構成遺産】吉野・大峯(吉野山、吉野水分神社、金峯神社、金峯山寺、吉水神社、大峰山寺)、熊野三山(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社、青岸渡寺、那智大滝、那智原始林、補陀洛山寺)、高野山(丹生都比売神社、金剛峯寺、慈尊院、丹生官省符神社)、参詣道(大峯奥駈道、熊野参詣道、高野山町石道) 
・石見銀山遺跡とその文化的景観(島根県大田市) 登録基準②③⑤―2007年(平成19)6月登録 
【構成遺産】銀鉱山跡と鉱山町(銀山柵内、代官所跡、矢滝城跡、矢筈城跡、 石見城跡、大森銀山伝統的重要建造物群保存地区、宮ノ前地区、重要文化財 熊谷家住宅、羅漢寺五百羅漢、佐毘売山神社)、石見銀山街道(鞆ヶ浦道、温泉津沖泊道)、港と港町(鞆ヶ浦、沖泊、温泉津重要伝統的建造物群保存地区)、その他周辺(石見銀山処刑場、千人壷、胴地蔵、人切岩) 
・平泉―仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群―(岩手県西磐井郡平泉町) 登録基準②⑥―2011年(平成23)6月登録 
【構成遺産】中尊寺、毛越寺、観自在王院跡、無量光院跡、金鶏山 
・富士山―信仰の対象と芸術の源泉(静岡県、山梨県) 登録基準③⑥―2013年(平成25)6月登録 
【構成遺産】富士山域(山頂の信仰遺跡群、大宮・村山口登山道、須山口登山道、須走口登山道、吉田口登山道、北口本宮冨士浅間神社、西湖、精進湖、本栖湖、青木ヶ原樹海)、富士山本宮浅間大社、山宮浅間神社、村山浅間神社、須山浅間神社、冨士浅間神社(須走浅間神社)、河口浅間神社 、冨士御室浅間神社、御師住宅(旧外川家住宅)、御師住宅(小佐野家住宅)、山中湖、河口湖、忍野八海(出口池)、忍野八海(お釜池)、忍野八海(底抜池)、忍野八海(銚子池)、忍野八海(湧池)、忍野八海(濁池)、忍野八海(鏡池)、忍野八海(菖蒲池)、船津胎内樹型、吉田胎内樹型、人穴富士講遺跡、白糸ノ滝、三保松原 
・富岡製糸場と絹産業遺産群(群馬県) 登録基準②④―2014年(平成26)6月登録 
【構成遺産】富岡製糸場、田島弥平旧宅、高山社跡、荒船風穴 
・明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業(山口県、鹿児島県、静岡県、岩手県他) 登録基準②④―2015年(平成27)7月登録 
【構成遺産】萩反射炉・恵美須ヶ鼻造船所跡・大板山たたら製鉄遺跡・萩城下町・松下村塾(山口県萩市)、旧集成館・寺山炭窯跡・関吉の疎水溝(鹿児島県鹿児島市)、韮山反射炉(静岡県伊豆の国市)、橋野鉄鉱山(岩手県釜石市)、三重津海軍所跡(佐賀県佐賀市)、小菅修船場、三菱長崎造船所 第三船渠・長崎造船所 ジャイアントカンチレバークレーン・長崎造船所旧木型場・長崎造船所 占勝閣・高島炭鉱・端島炭鉱・旧グラバー住宅(長崎県長崎市)、三角西(旧)港(熊本県宇城市)、三池炭鉱 三池港(福岡県・熊本県)、官営八幡製鐵所(福岡県北九州市)、遠賀川水源地ポンプ室(福岡県中間市) 
・ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献-(東京都台東区) 登録基準①②⑥―2016年(平成28)7月登録 
【構成遺産】国立西洋美術館本館 
・「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群(福岡県宗像市、福津市)登録基準②③―2017年(平成29)7月登録
【構成遺産】沖ノ島、小屋島、御門柱、天狗岩、宗像大社沖津宮遙拝所、宗像大社中津宮、宗像大社辺津宮(福岡県宗像市)、新原・奴山古墳群(福岡県福津市)
・長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産(長崎県、熊本県) 登録基準③―2018年(平成30)6月登録 
【構成遺産】大浦天主堂・外海の出津集落・外海の大野集落(長崎県長崎市)、原城跡(長崎県南島原市)、黒島の集落(長崎県佐世保市)、平戸島の聖地と集落=安満岳と春日集落・中江ノ島(長崎県平戸市)、野崎島の集落跡(長崎県北松浦郡小値賀町)、頭ヶ島の集落(長崎県南松浦郡新上五島町)、久賀島の集落・奈留島の江上集落(長崎県五島市)、天草の﨑津集落(熊本県天草市) 
・百舌鳥・古市古墳群 -古代日本の墳墓群(大阪府堺市、羽曳野市、藤井寺市)登録基準②④―2019年(平成31)7月登録
【構成遺産】大仙陵古墳、田出井山古墳、長塚古墳、永山古墳、丸保山古墳、銭塚古墳、大安寺山古墳、竜佐山古墳、収塚古墳、茶山古墳、孫太夫山古墳、菰山塚古墳、七観音古墳、塚廻古墳、銅亀山古墳、源右衛門山古墳(大阪府堺市堺区)、上石津ミサンザイ古墳、寺山南山古墳(大阪府堺市西区)、ニサンザイ古墳、御廟山古墳、いたすけ古墳、旗塚古墳、善右ヱ門山古墳(大阪府堺市北区)、誉田御廟山古墳、墓山古墳、白鳥陵古墳、二ツ塚古墳、峯ヶ塚古墳、向墓山古墳、誉田丸山古墳、西馬塚古墳、栗塚古墳、東馬塚古墳(大阪府羽曳野市)、仲ツ山古墳、岡ミサンザイ古墳、市ノ山古墳、津堂城山古墳、古室山古墳、大鳥塚古墳、はざみ山古墳、鍋塚古墳、浄元寺山古墳、青山古墳、鉢塚古墳、東山古墳、八島塚古墳、中山塚古墳、野中古墳、助太山古墳(大阪府藤井寺市)
・北海道・北東北の縄文遺跡群(北海道、青森県、岩手県、秋田県)登録基準③⑤―2021年(令和3)7月登録
【構成遺産】キウス周堤墓群(北海道千歳市)、北黄金貝塚(北海道伊達市)、入江・高砂貝塚(北海道洞爺湖町)、大船遺跡(北海道函館市)、垣ノ島遺跡(北海道函館市)、三内丸山遺跡(青森県青森市)、小牧野遺跡(青森県青森市)、是川遺跡(青森県八戸市)、亀ヶ岡石器時代遺跡(青森県つがる市)、田小屋野貝塚(青森県つがる市)、大森勝山遺跡(青森県弘前市)、二ツ森貝塚(青森県七戸町)、大平山元I遺跡(青森県外ヶ浜町)、御所野遺跡(岩手県一戸町)、大湯環状列石(秋田県鹿角市)、伊勢堂岱遺跡(秋田県北秋田市)

<自然遺産>  
・屋久島(鹿児島県熊毛郡屋久島町) 登録基準⑦⑨―1993年(平成5)12月登録 
・白神山地(青森県、秋田県) 登録基準⑨―1993年(平成5)12月登録 
・知床(北海道) 登録基準⑨⑩―2005年(平成17)7月登録 
・小笠原諸島(東京都小笠原村) 登録基準⑨―2011年(平成23)6月登録 
・奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島(鹿児島県、沖縄県) 登録基準⑩―2021年(令和3)7月登録

(登録基準の内容)
① 人類の創造的才能を表現する傑作。
② ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
③ 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
④ 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
⑤ ある文化(または複数の文化)を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例。
⑥ 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの(この基準は他の基準と組み合わせて用いるのが望ましいと世界遺産委員会は考えている)。
⑦ ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。
⑧ 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などが含まれる。
⑨ 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。
⑩ 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。

〇同じ日の過去の出来事(以前にブログで紹介した記事)

1734年(享保19)読本作者・歌人・国学者上田秋成の誕生日(新暦7月25日)詳細
1884年(明治17)岡倉天心とフェノロサが法隆寺夢殿の救世観音を調査詳細
1894年(明治27)「(第1次)高等学校令」が公布(施行は同年9月11日)される詳細
1941年(昭和16)第33回大本営政府連絡会議で、「南方施策促進に関する件」が決定され、同日に上奏裁可される詳細
1943年(昭和18)「学徒戦時動員体制確立要綱」が閣議決定される詳細
1956年(昭和31)作曲家・箏曲家宮城道雄の命日詳細
1993年(平成5)「ウィーン宣言及び行動計画」が世界人権会議により採択される詳細
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

sekaijinkensengen45shyuunen
 今日は、平成時代の1993年(平成5)に、「ウィーン宣言及び行動計画」が世界人権会議により採択された日です。
 「ウィーン宣言及び行動計画」(ウィーンせんげんおよびこうどうけいかく)は、世界人権会議(於:ウィーン)で採択された世界のあらゆる人権蹂躙に対処するための、国際人権法や国際人道法に関する原則や国際連合の役割、全ての国々に対する要求を総括した宣言及び行動計画でした。「世界人権宣言」45周年を記念し、「世界先住民族年」を踏まえて、1993年(平成5)6月14日からウィーンで開催された世界人権会議には、171ヵ国とNGOも参加します。
 「世界人権宣言」の実現を図ることを目的とするものでしたが、会議では、人権(基本的人権)は普遍的だとする先進諸国と各国・地域の特殊性や歴史・文化・宗教的背景を考慮すべきだとする発展途上国の主張が対立しました。この結果、最終文書(ウィーン宣言)には双方の主張を妥協させ、人権の促進と保護を国際社会の最優先課題としながらも国家や地域の特殊性や歴史的・文化的・宗教的な背景へ留意することも盛り込まれます。
 また、発展途上国の「発展の権利」についても普遍的な権利として認め、その他女性や子供の権利擁護、少数民族の人権保護を掲げ、国連総会に対し、国連人権センターの強化並びに人権高等弁務官の設置を勧告しました。この会議時に、NGOフォーラムも同時開催され、非政府組織NGO935団体の代表2万5,000人も参加しています。
 その後、この宣言及び行動計画は、同年7月12日に国際連合総会において承認され、国連人権高等弁務官事務所 (OHCHR) が設置されることとなりました。
 以下に、「ウィーン宣言及び行動計画」日本語訳(抄文)を掲載しておきますので、ご参照下さい。

〇「ウィーン宣言及び行動計画」日本語訳(抄文)1993年(平成5)6月25日世界人権会議で採択

第I部〔宣言〕 I

1 〔国家の誓約〕 世界人権会議は、国際連合憲章、その他の人権文書及び国際法に従つて、 すべての者のためにすべての人権及び基本的自由の普遍的な尊重及び遵守並びに保護を促進する義務を履行するという、 すべての国家の厳粛な誓約を再確認する。これらの権利及び自由の普遍的性格は、疑うことができない。
 この枠組の中で、人権の分野における国際協力の強化は、国際連合の目的を完全に実現するために不可欠である。
 人権及び基本的自由は、すべての人間の生まれながらの権利であり、それらの保護及び助長は諸政府の第一次的責任である。

2 〔自決権〕 すべての人民は、自決の権利を有する。この権利に基づき、すべての人民は、その政治的地位を自由に決定し並びにその経済的、 社会的及び文化的発展を自由に追求する。
 世界人権会議は、植民地又はその他の形態の外国支配若しくは外国の占領のもとにある人民の特別の状況を考慮して、 不可譲の自決権を実現するために国際連合憲章に従つてすべての正当な行動を取る人民の権利を承認する。世界人権会議は、 自決権の否定を人権の侵害とみなし、この権利の効果的な実現の重要性を強調する。
 「国際連合憲章に従つた諸国家間の友好関係と協力に関する国際法の諸原則についての宣言」に従つて、上記のことは、 人民の同権及び自決の原則を遵守して行動し、 したがつていかなる種類の差別もなしにその領域に属するすべての人民を代表する政府を有する、 独立主権国家の領土保全又は政治的統一の全部又は一部を解体し若しくは毀損するいかなる行動をも、 許可し又は奨励するものと解釈してはならない。

3 〔外国の占領下の人民の保護〕 外国の占領下にある人民に関して、人権基準の実施を保障し監視するための効果的な国際的措置が取られるべきであり、 人権規範及び国際法、とりわけ戦時における文民の保護に関する1949年8月12日のジュネーヴ条約その他の適用可能な人道法規範に従つて、 彼らの人権の侵害に対する効果的な法的保護が与えられるべきである。

4 〔国際連合の優先的目的〕 人権及び基本的自由の助長並びに保護は、国際連合の目的及び原則、とりわけ国際協力の目的に従つて、 国際連合の優先的目的とみなされなければならない。これらの目的及び原則の枠内において、 すべての人権の助長及び保護は国際社会の正当な関心事項である。したがつて、人権にかかわる機関及び専門機関は、 国際人権文書の一貫した客観的な適用を基礎として、それらの諸活動の調整をさらに向上させるべきである。

5 〔すべての人権の相互依存性〕 すべての人権は普遍的であり、不可分かつ相互依存的であつて、相互に連関している。国際社会は、公平かつ平等な方法で、 同じ基礎に基づき、同一の強調をもつて、人権を全地球的に扱わなければならない。国家的及び地域的独自性の意義、 並びに多様な歴史的、文化的及び宗教的背景を考慮にいれなければならないが、すべての人権及び基本的自由を助長し保護することは、 政治的、経済的及び文化的な体制のいかんを問わず、国家の義務である。

6 〔国際連合システムの努力〕 すべての者のための人権及び基本的自由の普遍的な尊重及び遵守に向けた国際連合システムの努力は、 諸国間の平和的かつ友好的な関係に必要な安定及び福祉、並びに国際連合憲章に従つた平和及び安全並びに社会的及び経済的発展のための条件の改善に、 貢献するものである。

7 〔国際連合憲章の目的及び原則等の遵守〕 人権を助長し保護するプロセスは、国際連合憲章の目的及び原則並びに国際法に従つて実施されるべきである。

8 〔民主主義、発展及び人権尊重の相互依存性〕 民主主義、発展並びに人権及び基本的自由の尊重は、相互依存的であり相互に強め合うものである。民主主義は、自らの政治的、 経済的及び文化的体制を決定するための自由に表明された人民の意思、 並びに生活のすべての側面における人民の完全な参加に基礎をおく。この文脈において、 国家的及び国際的レベルにおける人権並びに基本的自由の助長及び保護は、普遍的にかつ条件を付することなく行われるべきである。 国際社会は、全世界における民主主義、発展並びに人権及び基本的自由の尊重の強化及び助長を支持すべきである。

9 〔後発発展途上国への支援〕 世界人権会議は、多くはアフリカに位置する後発発展途上国であつて民主化及び経済改革に取り組むことを誓約したものが、 民主化及び経済発展への移行に成功するように国際社会の支援を受けるべきことを再確認する。

10〔発展の権利〕 世界人権会議は、「発展の権利に関する宣言」において確立された発展の権利は、普遍的かつ不可譲の権利であつて、 基本的人権の不可分の一部をなすものであることを再確認する。
「発展の権利に関する宣言」が述べるように、人間が発展の中心的な主体である。
発展はすべての人権の享受を促進するものであるが、 発展の欠如を国際的に承認された人権の制約を正当化するために援用してはならない。
国家は、発展を確保し発展への障害を除去するために相互に協力すべきである。国際社会は、 発展の権利を実現し発展への障害を除去するために、効果的な国際協力を助長すべきである。
発展の権利の実施に向けての永続的な進歩は、 国家レベルにおける効果的な発展政策、並びに国際レベルにおける公正な経済関係及び好ましい経済環境を必要とする。

11〔危険な廃棄物の投棄等の規制〕 発展の権利は、現在及び将来の世代の発展及び環境における必要性に公正に適合するように実現されるべきである。 世界人権会議は、有毒で危険な物質及び廃棄物の違法な投棄が、 すべての者の生命及び健康に対する人権への重大な脅威となる可能性があることを承認する。
 したがつて世界人権会議は、有毒で危険な産品及び廃棄物の投棄に関する現行の条約に参加しかつこれらを厳格に実施すること、 及び違法な投棄の防止に協力することを、すべての国家に呼びかける。
 すべての者は、科学の進歩及びその応用の利益を享受する権利を有する。世界人権会議は、とりわけ生医学、 生命科学及び情報技術におけるある種の進歩が、個人の人格、尊厳及び人権に悪影響を及ぼす可能性があることに留意し、 世界的に関心を呼んでいるこの分野において、人権及び人間の尊厳の完全な尊重が確保されるよう、国際協力を呼びかける。

12〔対外債務〕 世界人権会議は、発展途上国の政府がその人民の経済的、社会的及び文化的権利の完全な実現を達成する努力を補完する目的で、 これら諸国の対外債務負担を軽減することを助けるためにあらゆる努力を行うよう、国際社会に呼びかける。

13〔人権享受の条件の創出〕 同家及び国際機構は、人権の完全かつ効果的な享受を確保する目的で、非政府機構と協力して、国家的、 地域的及び国際的レベルにおける好ましい条件を創出する必要がある。国家は、すべての人権侵害及びその原因、 並びに人権享受への障害を除去すべきである。

14〔極端な貧困の除去〕 極端な貧困の広範な存在は、人権の完全かつ効果的な享受を妨げているので、これを直ちに緩和し究極的に除去することは、 国際社会にとつて引き続き高度の優先事項でなければならない。

15〔あらゆる形態の差別の除去〕 いかなる種類の差別もなしに人権及び基本的自由を尊重することは、国際人権法の基本規則である。あらゆる形態の人種主義、 人種差別、外国人排斥及び関連する不寛容を速やかにかつ包括的に除去することは、国際社会の優先的な任務である。諸政府は、 これらを防止しかつこれらと闘うために、効果的な措置を取るべきである。集団、団体、政府間及び非政府間の機構、 並びに個人は、これらの悪に反対する行動において協力しかつ調整して、彼らの努力を強化することを要請される。

16〔アパルトヘイトの解体〕 世界人権会議は、アパルトヘイトの解体における進展を歓迎し、 国際社会及び国際連合システムに対してこの進展を支援するように呼びかける。
 世界人権会議はまた、アパルトヘイトの平和的解体の追求を妨げることを目的とした、 暴力行為の継続を非難する。

17〔テロリズムの防止〕 あらゆる形態及び表現におけるテロリズムの行為、方法及び慣行、並びに若干の諸国における麻薬取引への関与は、 人権、基本的自由及び民主主義を破壊することを目的とし、国家の領土保全及び安全を脅かし、 正統に組織された政府を不安定化する行為である。国際社会は、テロリズムを防止しかつこれと闘うための協力を促進するために、 必要な措置を取るべきである。

18〔女性の人権〕 女性及び少女の人権は、普遍的人権の不可譲かつ不可分の一部である。国家的、地域的及び国際的レベルにおける政治的、市民的、 経済的、社会的及び文化的生活への女性の完全かつ平等な参加、並びに性を理由とするあらゆる形態の差別の除去は、 国際社会の優先的な目的である。
 性差を理由とする暴力及び、あらゆる形態のセクシュアルハラスメント並びに搾取は、 文化的偏見及び国際的売買から生じるものを含めて、人間の尊厳及び価値と両立せず、除去されなければならない。このことは、 経済的及び社会的発展、教育、安全な母性及び健康看護並びに社会的扶助のような分野における、法的措置により、 並びに国家的行動及び国際協力を通じて、達成することができる。
 女性の人権は、女性に関するすべての人権文書の奨励を含めて、国際連合の人権活動の不可分の一部を構成すべきものである。
 世界人権会議は、政府、団体、政府間及び非政府間の機構に対して、 女性及び少女の人権の保護及び助長のための努力を強化するように、要請する。

19〔少数者の権利〕 少数者に属する人の権利の助長及び保護が重要であること、並びにこのような助長及び保護が彼らが居住する国家の政治的及び社会的安定に貢献することを考慮して、
 世界人権会議は、「民族的又は人種的、宗教的及び言語的少数者に属する人の権利に関する宣言」に従つて、 少数者に属する人がいかなる差別もなしにかつ法のもとにおいて完全に平等に、 すべての人権及び基本的自由を完全かつ効果的に行使することができるように確保する、国家の義務を再確認する。
 少数者に属する人は、自由にかつ介入又はいかなる形態の差別もなしに、自らの文化を享受し、自らの宗教を告白しかつ実践し、 並びに私的に及び公的に自らの言語を使用する権利を有する。

20〔先住民の権利〕 世界人権会議は、先住民の固有の尊厳、及び社会の発展並びに多様性への先住民の独特の貢献を承認し、彼らの経済的、 社会的及び文化的福祉並びに持続的発展の成果の彼らによる享受への、国際社会の誓約を強く再確認する。国家は、 社会のすべての側面、とくに彼らの関心事項への、先住民の完全かつ自由な参加を確保すべきである。 先住民の権利の助長及び保護が重要であること、並びにこのような助長及び保護が彼らが居住する国家の政治的及び社会的安定に貢献することを考慮して、 国家は、国際法に従つて、先住民の人権及び基本的自由を平等にかつ差別なく尊重することを確保するために協調した積極的な措置を取り、 及び彼らの独特のアイデンティティー、文化並びに社会組織の価値及び多様性を承認すべきである。

21〔児童の権利〕 世界人権会議は、多数の国家が児童の権利に関する条約を早期に批准したことを歓迎し、 児童のための世界サミットが採択した「児童の生存、保護及び発展に関する世界宣言及び行動計画」が児童の人権を承認したことに留意して、 1995年までにすべての国がこの条約を批准すること、及び、必要な立法、行政及びその他の措置を取り、 また利用可能な資源を最大限に配分することによつて、締約国がこの条約を効果的に実施することを、要請する。 児童に関するすべての行動においては、無差別と児童の最善の利益とが第一に考慮されるべきであり、 児童の見解に妥当な考慮が払われるべきである。児童の防護及び保護のために、国家的及び国際的な機構並びに計画が強化されるべきである。 このような防護及び保護の対象には、とりわけ少女、遺棄された児童、家のない児童、児童ポルノ、 児童売春又は臓器売却によるものを含む経済的及び性的に搾取された児童、後天性免疫不全症候群を含む疾病の犠牲者である児童、 難民及び避難民である児童、拘禁中の児童、武力紛争にまきこまれた児童、並びに飢饉、旱ばつその他の緊急事態の犠牲者である児童が含まれる。 児童の権利に関する条約の実施を支援するために国際協力及び連帯が助長されるべきであり、 児童の権利は人権に関する国際連合システム全体の行動において優先されるべきである。
 世界人権会議はまた、児童は個性の完全かつ調和の取れた発展のためには家庭環境の中で成長すべきであり、 したがつて家庭環境はより広範な保護に値すると強調する。

22〔障害者の権利〕 障害者の差別禁止、並びに、社会のすべての側面への積極的な参加を含む、 すべての人権及び基本的自由の平等な享受を確保するために、特別の注意を払う必要がある。

23〔難民及び避難民の保護〕 世界人権会議は、すべての者がいかなる差別もなしに、他国において迫害からの庇護を求めかつ受ける権利、 及び自国に帰る権利を有することを再確認する。この点に関して世界人権会議は、世界人権宣言、難民の地位に関する1951年条約、 その1967年議定書及び地域的文書の重要性を強調する。会議は、 その領域に引き続き多数の難民を受け入れかつ生活させている国家に対して、及び国際連合難民高等弁務官事務所の任務への献身に対して、 感謝を表明する。会議はまた、近東における国際連合パレスチナ難民救済事業機関に対しても、感謝を表明する。
 世界人権会議は、武力紛争を含む人権の重大な侵害が、人民の避難を発生させる多様かつ複雑な要因の一つであることを承認する。
 世界人権会議は、世界的な難民危機の複雑さにかんがみ、かつ国際連合憲章、関連国際文書及び国際連帯に従つて、 並びに負担配分の精神において、国際社会が、国際連合難民高等弁務官事務所の任務に留意しつつ、 関係国及び関連ある機構と調整しかつ協力して、包括的アプローチを取る必要があることを承認する。このようなアプローチは、 難民その他の避難民の根本原因及び移動の結果に対処するための戦略の発展、緊急準備及び対策のための機構の強化、 女性及び児童の特別の必要性を考慮した効果的な保護及び援助の供与、並びに、国際難民会議が採択した解決を含めて、 何よりも尊厳かつ安全な自発的帰国という好ましい解決を通じての持続的な解決を含むべきである。世界人権会議は、国家の責任、とりわけ出身国にかかわる責任を強調する。
 世界人権会議は、包括的アプローチにてらして、自発的かつ安全な帰還及び社会復帰を含む国内避難民にかかわる問題に、 政府間機構及び人道的機構を通じるものを含めて特別の注意を払い、並びに永続的な解決を見出すことの重要性を強調する。
 世界人権会議はさらに、国際連合憲章及び人道法の諸原則に従つて、 すべての自然災害及び人的災害の被害者に対する人道的援助の重要性及び必要性を強調する。

24〔弱者の権利〕 移住労働者を含む弱者の立場におかれた集団に属する者の人権の助長及び保護、彼らに対するあらゆる形態の差別の除去、 並びに現行の人権文書の強化及びより効果的な実施を、特別に重視する必要がある。国家は、 住民のうちの弱者に属する者の権利の助長及び保護のために、とくに教育、保健及び社会的扶助の分野において、 国家レベルの適切な措置を創出し維持する義務、及び弱者に属する者で自らの問題に解決を見出すことに関心を有する者の参加を確保する義務を有する。

25〔もつとも貧困な者の人権〕 世界人権会議は、極端な貧困及び社会的な疎外は人間の尊厳を侵害するものであり、もつとも貧困な者の人権を助長し、 極端な貧困と社会的疎外を終わらせ、及び社会進歩の成果の享受を助長するために、極端な貧困、 及び発展の問題にかかわるものを含むその原因に関するよりよい理解を達成するために、緊急の措置が必要であることを確認する。 国家が、もつとも貧困な人々が居住するコミュニティーの政策決定過程、人権の助長、及び極端な貧困と闘うための努力への、 彼らの参加を促進することは不可欠である。

26〔人権文書の法典化〕 世界人権会議は、動的かつ発展的過程である人権文書の法典化においてなされた進歩を歓迎し、 国際人権条約の普遍的批准を強く求める。すべての国家がこれらの国際文書に加入すること、 及びすべての国家ができるだけ留保を行わないことが奨励される。

27〔人権侵害の救済〕 すべての国家は、人権にかかわる苦情及び人権侵害を救済するために、効果的な救済手続を提供すべきである。 法適用及び訴追機関を含む司法の運営、とりわけ国際人権文書が含む適用可能な基準に完全に従つた独立した司法部及び法律職は、 人権の完全かつ無差別の実現にとつてきわめて重要であり、民主主義及び持続的発展の過程にとつて不可欠である。 この文脈において、司法の運営に携わる機関は十分な資金を有すべきであり、 国際社会は技術的及び財政的援助の水準を向上させるべきである。強力かつ独立した司法の運営を達成するために、 助言サービスの特別計画を優先的に利用することは、国際連合の義務である。

28〔武力紛争時における人権の大規模な侵害〕 世界人権会議は、難民及び避難民の大量流出をもたらしている、戦争状態における人権の大規模な侵害、とりわけジェノサイド、 「民族浄化」及び女性の制度化されたレイプの形態における人権の大規模な侵害に対して、驚愕を表明する。会議は、 そのような嫌悪すべき慣行を強く非難するとともに、そのような犯罪の加害者が処罰され、 そのような慣行は直ちに終わらせられるようにという呼びかけを繰り返す。

29〔武力紛争時における人権の保護〕 世界人権会議は、国際人権文書及び国際人道法に含まれた基準を無視して、世界のあらゆる部分で人権侵害が継続していること、 及び被害者に対する十分かつ効果的な救済が欠如していることに、重大な憂慮を表明する。
 世界人権会議は、武力紛争時における文民たる住民に対する人権侵害、とりわけ女性、児童、 老齢者及び障害者に対する人権侵害を深く憂慮する。したがつて会議は、国家及び武力紛争のすべての当事者に対して、 1949年のジュネーヴ諸条約及びその他の国際法の規則と原則が規定する国際人道法、 並びに国際条約が規定する人権保護の最低基準を厳格に遵守するように呼びかける。
 世界人権会議は、1949年のジュネーヴ諸条約及びその他の関連ある国際人道法文書が規定するように、被害者は、 人道的団体の援助を受ける権利を有することを再確認し、このような援助への安全かつ時宜をえたアクセスを要請する。

30〔人権の大規模かつ体系的な侵害〕 世界人権会議はまた、世界のさまざまな部分において、すべての人権の完全な享受にとつて重大な障害をなす大規模かつ体系的な侵害及び事態が引き続き生じていることに、 驚愕と非難を表明する。このような侵害及び事態には、以下のものが含まれる。拷問及び残虐な、 非人道的な並びに品位を傷つける取扱い又は刑罰。略式の及び恣意的な処刑。失踪。恣意的な拘禁。すべての形態の人種主義、 人種差別及びアパルトヘイト。外国の占領及び外国人支配。外国人排斥。貧困、飢餓その他の経済的、社会的及び文化的権利の否定。 宗教的不寛容。テロリズム。女性に対する差別。及び法の支配の欠如。

31〔人権享受を妨げる貿易上の一方的措置〕 世界人権会議は、国際法及び国際連合憲章と合致しない措置であつて、国家間の貿易関係に障害をもたらし、 世界人権宣言及び国際人権文書が規定する人権、とりわけ、食糧及び医療、住居及び必要な社会的サービスを含めて、 健康及び福祉にとつて十分な生活水準を享受するすべての者の権利の完全な実現を妨げる、いかなる一方的措置をも慎むように、 諸国家に呼びかける。世界人権会議は、食糧は政治的圧力の手段として用いられるべきではないことを確認する。

32〔人権問題の普遍的な検討〕 世界人権会議は、人権問題の検討に当つては、普遍性、客観性及び非選択性を確保することが重要であることを、再確認する。

33〔人権教育〕 世界人権会議は、世界人権宣言、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約並びにその他の国際人権文書が規定するように、 国家は教育が人権及び基本的自由の尊重の強化を目的とするように確保する義務を有することを再確認する。世界人権会議は、 人権の主題を教育プログラムに組み入れることの重要性を強調し、そうすることを諸国家に呼びかける。教育は、 諸国民及びすべての人種的又は宗教的集団の間の理解、寛容、平和及び友好関係を助長し、 これらの目的を追求するに当つての国際連合の活動の発展を奨励すべきである。したがつて、 理論的及び実践的な人権教育及び適切な情報の普及は、人種、性、言語又は宗教のようないかなる種類の差別もなしに、 すべての個人に関する人権の助長及び尊重において、重要な役割を果たすものであり、 これらは国家レベル及び国際レベルにおける教育政策に組み入れられるべきである。世界人権会議は、 資源の制約及び制度の不十分さがこれらの目的の即時実現にとつて障害となりうることに留意する。

34〔人権享受のための援助〕 すべての個人が普遍的人権及び基本的自由を享受しうる条件をつくりだすため、要請を行う国を援助する努力が強化されるべきである。 政府、国際連合システム並びにその他の多数国間機構は、 以下のものの確立及び強化を目的とするプログラムへの資源配分を相当程度増大させることを要請される。 法の支配及び民主主義を支持する国の立法、制度及び関連インフラストラクチュア。 選挙への援助。訓練、 指導及び教育を通じた人権意識の向上。人民参加及び市民社会。
 人権センターの助言サービス及び技術協力のプログラムは、強化され、並びにより効果的かつ透明なものとされて、 人権尊重を改善するための重要な貢献となるべきである。諸国家は、国際連合の通常予算からの配分の増大を助長すること、 及び自発的拠金を行うことによつて、これらのプログラムへの寄与を増大させることを要請される。

35〔国際連合の人権活動〕 人権の助長及び保護のための国際連合の活動の完全かつ効果的な実施は、国際連合憲章が人権に与えた高度の重要性、 及び加盟国が国際連合の人権活動に委託した要求を反映しなければならない。この目的のために、 国際連合の人権活動には一層多くの資源が配分されるべきである。

36〔人権助長のための国内制度〕 世界人権会議は、人権の助長及び保護のために国内制度が果たす重要かつ建設的な役割、とりわけ、権限ある当局に対する助言能力、 人権侵害の救済、人権情報の普及及び人権教育における役割を再確認する。
 世界人権会議は、「国内制度の地位に関する原則」に留意し、 及び国内レベルにおける独自の必要性にもつとも適した枠組を選択することはすべての国家の権利であることを承認して、 国内制度の設立及び強化を奨励する。

37〔人権助長のための地域的取決め〕 地域的取決めは、人権の助長及び保護において基本的な役割を果たす。地域的取決めは、 国際人権文書に含まれた普遍的人権基準とそれらの保護を強化すべきである。世界人権会議は、 これらの取決めを強化しその実効性を高めるために行われている努力を支持し、 同時に国際連合の人権活動との協力の重要性を強調する。
 世界人権会議は、人権の助長及び保護のための地域的及び小地域的取決めがいまだに存在していない場所において、 これらを設立する可能性を検討することが必要であると繰り返す。

38〔非政府機構〕 世界人権会議は、国家的、地域的及び国際的レベルにおける人権の助長並びに人道的活動において、 非政府機構が果たす重要な役割を承認する。世界人権会議は、人権問題に関する公衆の意識の向上、この分野における教育、 訓練及び研究の実施、並びにすべての人権及び基本的自由の助長及び保護における、非政府機構の貢献を評価する。会議は、 基準設定の第一次的責任は国家にあることを認めるものであるが、この過程における非政府機構の貢献をも評価するものである。 この点に関して、世界人権会議は、諸政府と非政府機構との間の継続的な対話及び協力が重要であることを強調する。 人権の分野に誠実に関与している非政府機構及びその参加者は、 世界人権宣言が認める権利及び自由並びに国内法の保護を享受すべきである。これらの権利及び自由は、 国際連合の目的及び原則に反して行使されてはならない。非政府機構は、国内法及び世界人権宣言の枠内において、 人権活動の実施に当つて干渉を受けることなく自由でなければならない。

39〔メディアの役割〕 世界人権会議は、人権及び人道問題に関する客観的で責任ある偏らない情報の重要性を強調し、メディアの関与の増大を奨励する。 メディアに対しては、国内法の枠内で自由及び保護が保障されるべきである。

第II部〔行動計画〕(抜粋)  

A.国際連合システム内の人権に関する調整の拡充(省略)

B.平等.尊厳及び莫容(抜粋)

25.世界人樺会議は、人権委員会に対し、民族的又は種族的、宗教的及び言語的マイノリティに属する人々の権利に関する宣言で定義されているマイノリティに属する人々の権利を実効的に伸長及び保護するための手段及び方策を検討することを要請する。この文脈において、世界人権会議は、人権センターに対し、関係政府の要請に応じて、且つ助言サービス及び専門的援助の事業計画の一環として、マイノリティに関する現実の又は潜在的な状況を支援するため、マイノリティ問題及び人権、並びに紛争の防止及び解決に関する適切な専門的知識を提供することを要請する。

26.世界人権会議は、国家と国際社会に対し、民族的又は種族的、宗教的及び言語的マイノリティに属する人々の権利に関する宣言に従って、民族的又は種族的、宗教的及び言語的マイノリティに属する人々の権利を伸長し且つ保護することを求める。

27.講じられるべき措置には、適切な場合には、社会における政治的、経済的、社会的、宗教的及び言語的生活のあらゆる側面、並びに自国経済の進展及び発展への十分な参加を促進することも含めるべきである。

C.協力、発展、及び人権の強化(省略)

D.人権教育

78.世界人権会議は、人権に関する教育、訓練及び広報が、社会の安定的且つ調和的な関係を促進及び達成し、並びに相互の理解、寛容及び平和を促進するために不可欠なものであると考える。

79.国家は、非識字者をなくすため努力し、人間性を十分に発展させ、並びに人権及び基本的自由の尊重を強化する方向で教育を推進しなければならない。世界人権会議は、すべての公的及び私的教育機関の教育課程に科目として、人権、人道法、民主主義及び法の支配を含めるよう、すべての国家と機関に求める。

80.人権教育は、人権への普遍的な信念の強化にかんがみて、共通の理解及び意識を達成するために、国際的及び地域的人権文書に明記される平和、民主主義、発展、及び社会正義を含むものでなければならない。

81.国際連合教育科学文化機関の人権及び民主主義教育に関する国際会議が1993年3月に採択した人権及び民主主義のための教育に関する世界行動計画、並びにその他の人権文書を考慮して、世界人権会議は、各国に対し、とりわけ女性にとっての人権の必要性を考慮して、最も幅広い人権教育及び情報の広報を確保するため、特別な事業計画及び戦略を策定するよう勧告する。

82.政府は、政府間機構、国内機関及びNGOの支援のもと、人権意識の一層の向上と相互の寛容を促進しなければならない。世界人権会議は、国際連合によって実行された世界広報キャンペーンの強化の重要性を強調する。政府は、人権に関する教育を主導及び支持し、この分野における情報を実効的に普及させなければならない。国際連合システムの助言サービス及び専門的援助事業計画は、人権の分野における教育及び訓練活 動、並びに国際人権文書及び人道法に含まれている基準や軍隊、法執行官、警察官及び保健要員のような特別な集団への基準の適用に関する特別教育に関する各国からの要請に直ちに対応できるものでなければならない。人権分野における教育活動を促進し、奨励し、及びこれに焦点をあてるために、人権教育のための国際連合の10年の宣言が検討されなければならない。

E.実施及び監視方法

83.世界人権会議は政府に対し、国際的人権文書に含まれている基準を国内法に編入し、人権を伸長及び保護する役割を果たす国内体制、社会の制度及び機関を強化することを求める。

84.世界人権会議は、人権の伸長及び保護のため自国の国内制度を設立し又は強化することを望む国家による援助の要請に対応するため、国際連合の事業活動及び計画の強化を勧告する。

85.世界人権会議はまた、特に情報及び経験の交換、並びに地域的機構と国際連合との協力を通じて、人権の伸長及び保護に携わる国内諸機構の間の協力の強化を奨励する。

86.世界人権会議は、この点に関して、人権の伸長及び保譲に関する国内機構の代表者が人権センターの後援のもとに、機構の改善及び経験の共有の方法及び手段を検討するため定期的会合を招集することを強く勧告する。

87.世界人権会議は、人権条約機関、条約機関議長会議及び締約国会議に対して、それぞれの人権条約に基づく国家報告の準備のための多様な報告の要件及びガイドラインの調整を目指して引き続き措置をとり、並びに各国が条約義務に関する単一の包括的報告を提出すれば、これらの手続はより実効的なものとなり、その効果を増すという提案を引き続き検討することを勧告する。

88.世界人権会議は、国際人権条約の締約国、国際連合総会及び経済社会理事会に対して、任務及び職務の不必要な重複を避ける必要を考慮して、様々な部、機関及び手続のよりよい調整を通じて、より大きな効率性と実効性を促す観点から、現存する人権条約機関並びに様々なテーマ別機関及び手続の研究を考慮することを勧告する。

89.世界人権会議は、この点に関してなされた多様な提案、とりわけ条約機関自体及び条約機関議長会議によってなされた提案を考慮して、監視活動を含む、条約機関の機能の縦統的な改善作業を勧告する。子どもの権利に関する委員会が採用している包括的な国内的アプローチも奨励されなければならない。

90.世界人権会議は、人権諸条約の締約国に対し、利用しうる選択的な通報手続の受容を検討するよう勧告する。

91.世界人権会議は、人権侵害の加害者が処罰されない事態に懸念を表明し、人権委員会及び差別防止及び少数者保護小委員会がこの問題のすべての側面を検討する努力を支持する。

92.世界人権会議は、人権委員会に対し、国際及び地域レベルにおいて、現存する人権条約のよりよい実施の可能性を検討することを勧告し、また国際法委員会に対し、国際刑事裁判所に関する作業を継続するよう勧告する。

93.世界人権会議は、1949年8月12日のジュネーブ条約及び追加議定書への未加入国に対しこれらに加入すること、並びにその完全な実施のため、立法措置を含むあらゆる適切な国内措置をとることを要請する。

94.世界人権会議は、普遍的に認知された人権及び基本的自由を伸長し保護するための個人、集団及び機関の社会における権利と責任に関する宣言草案の迅速な完成と採択を勧告する。

95.世界人権会議は、人権委員会及び差別防止及び少数者保護小委員会の特別手続の報告者、代表者、専門家及び作業部会が、世界のすべての国々においてその任務の遂行を可能にするために、これらの制度を維持し強化すること、並びに必要な人的及び財政的資滑を提供することの重要性を強調する。諸手続及び諸機関は、定期的会合を通じて作業を調和させ且つ合理化しなければならない。すべての国は、これらの手続及び機関と完全に協力することが求められる。

96.世界人権会議は、国際連合が憲章の目的及び原則に従って、武力紛争下のすべての状況において国際人道法の完全な尊重を確実にするために、人権の伸長及び保護に関してより積極的な役割を引き受けることを勧告する。

97.世界人権会議は、国際連合のいくつかの平和維持活動に関する特別な取極で設置された人権部門の重要な役割を認識しつつ、事務総長が国際連合憲章に従って、人権センター及び人権保障機構の報告、経験及び能力を考慮に入れることを勧告する。

98.経済的、社会的及び文化的権利の享受を強化するために、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約に規定された権利の実現の進捗状況についての指針に関するシステムのような、追加的手段が検討されるべきである。経済的、社会的及び文化的権利の承認を国内、地域、及び国際レベルで確保するための協調的努力がなされなければならない。

F.世界人権会議のフォローアツプ

99.世界人権会議は、総会、人権委員会及び国際連合システム内のその他の人権関連機関に対し、国際連合人権の10年宣言の可能性を含むこの会議の最終文書に含まれる勧告を遅滞なく完全に実施するための措置を検討することを勧告する。世界人権会議は、人権委員会がこの目的に向けての進展を毎年検討することを、さらに勧告する。

100.世界人権会議は、世界人権宣言50周年記念の機会に、すべての国家及び国際連合システム内のすべての人権関連機関が、この会議の最終文書の実施についての進捗状況を事務総長に報告するよう求めるとともに、人権委員会及び経済社会理事会を通じて、総会第53回会期に報告書を提出することを、国際連合事務総長に対し要請する。同様に、地域的人権機構、適切な場合には、国内人権機構、並びにNGOは、この会議の最終文書の実施面でなされた進展に関して、国際連合事務総長に意見を述べることができる。国際連合システムの枠組みの中で採択された国際的人権条約及び議定書の普遍的な批准という目標に向かっての進展の評価に関し、特別な注意が払われなければならない。

   「国連広報センター」ホームページより

〇同じ日の過去の出来事(以前にブログで紹介した記事)

1734年(享保19)読本作者・歌人・国学者上田秋成の誕生日(新暦7月25日)詳細
1884年(明治17)岡倉天心とフェノロサが法隆寺夢殿の救世観音を調査詳細
1894年(明治27)「(第1次)高等学校令」が公布(施行は同年9月11日)される詳細
1941年(昭和16)第33回大本営政府連絡会議で、「南方施策促進に関する件」が決定され、同日に上奏裁可される詳細
1943年(昭和18)「学徒戦時動員体制確立要綱」が閣議決定される詳細
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

↑このページのトップヘ