今日は、いわゆる「学校令」の一つとして、「中学校令」（明治19年4月10日勅令第15号）が公布された日です。
　「中学校令（ちゅうがっこうれい）」は、明治時代前期の1886年（明治19）に、いわゆる「学校令」の一つとして、「師範学校令」（明治19年勅令第13号）、「小学校令」（明治19年勅令第14号）と同日に発布された中等教育に関する勅令でした。中学校の性質を「実業ニ就カント欲シ又ハ高等ノ学校ニ入ラント欲スルモノニ須要ナル教育ヲ為ス所」とし、その編制に関してはこれを高等・尋常の二等に分けます。その内の高等中学校は文部大臣の管理に属し、全国に五校設置するものとし、その経費は「経費ハ国庫ヨリ之ヲ支弁シ又ハ国庫ト該学校設置区域内ニ在ル府県ノ地方税トニ依リ之ヲ支弁スルコトアルヘシ」としました。また、尋常中学校は各府県において便宜これを設置することができるとしましたが、「其地方税ノ支弁又ハ補助ニ係ルモノハ各府県一箇所ニ限ルヘシ」とし、さらに「区町村費ヲ以テ設置スルコトヲ得ス」と規定しています。
　これに基づき、同年6月22日に文部省令として「尋常中学校ノ学科及其程度」が出され、「修業年限ハ五箇年トス」（第2条）、「五級ヲ設ケ毎級ノ授業期限ヲ一年トシ一年内一一於テハ凡四十週授業スヘキモノトス」（第3条）、入学資格については、「品行端正身体健康年齢満十二年以上ニシテ中学予備ノ小学校又ハ其他ノ学校ニ於テ該級ノ課程ヲ修ムルニ堪フヘキ学力ヲ得タルモノトス」（第6条）としました。また学科編成は、倫理・国語及漢文・第一外国語・第二外国語・農業・地理・歴史・数学・代数・幾何・三角法・博物・植物・動物・物理・化学・習字・図画・唱歌とし、その内の第二外国語と農業を選択科目としています。また、地方の事情によっては文部大臣の認可により、商業・工業の科を設置することができるとしました。
　その後、1891年（明治24）の改正で、尋常中学校の設置条件を緩和し、農業・工業・商業等の専修科を設置することができるとし、高等女学校を尋常中学校の一種と明文化しています。
　1899年（明治32）2月7日に、新たに「中学校令」（明治32年勅令第28号）が制定（第2次中学校令とも呼ばれる）され、尋常中学校の名称を中学校に改称し、目的を「男子に必要な高等普通教育を行うこと」と規定、修業年限を5年とし、1年以内の補習科を設置することができ、入学資格は12歳以上で高等小学校第2学年課程を修了した者としました。設置に関しては、各府県に対して「1校以上の中学校を設置しなければならない」として設置が義務づけられます。
　それからも何度か改正されましたが、1943年（昭和18）の「中等学校令」によって高等女学校、実業学校と一括規定されるまで存続しました。
　以下に、「中学校令」（明治19年4月10日勅令第15号）と「尋常中学校ノ学科及其程度」（明治19年6月22日文部省令第14号）を全文掲載しておきますので、ご参照下さい。

〇「中学校令」（明治十九年四月十日勅令第十五号）

　第一条　中学校ハ実業ニ就カント欲シ又ハ高等ノ学校ニ入ラント欲スルモノニ須要ナル教育ヲ為ス所トス

　第二条　中学校ヲ分チテ高等尋常ノ二等トス高等中学校ハ文部大臣ノ管理ニ属ス

　第三条　高等中学校ハ法科医科工科文科理科農業商業等ノ分科ヲ設クルコトヲ得

　第四条　高等中学校ハ全国北海道沖縄県ヲ除クヲ五区ニ分画シ毎区二一箇所ヲ設置ス其区域ハ文部大臣ノ定ムル所ニ依ル

　第五条　高等中学校ノ経費ハ国庫ヨリ之ヲ支弁シ又ハ国庫ト該学校設置区域内ニ在ル府県ノ地方税トニ依リ之ヲ支弁スルコトアルヘシ但此場合ニ於テハ其管理及経費分担ノ方法等ハ外ニ之ヲ定ムヘシ

　第六条　尋常中学校ハ各府県ニ於テ便宜之ヲ設置スルコトヲ得但其地方税ノ支弁又ハ補助ニ係ルモノハ各府県一箇所ニ限ルヘシ

　第七条　中学校ノ学科及其程度ハ文部大臣ノ定ムル所ニ依ル

　第八条　中学校ノ教科書ハ文部大臣ノ検定シタルモノニ限ルヘシ

　第九条　尋常中学校ハ区町村費ヲ以テ設置スルコトヲ得ス

〇「尋常中学校ノ学科及其程度」（明治十九年六月二十二日文部省令第十四号）

　勅令第十五号中学校令第七条ニ基キ尋常中学校ノ学科及其程度ヲ定ムルコト左ノ如シ

　尋常中学校ノ学科及其程度

　第一条　尋常中学校ノ学科ハ倫理国語漢文第一外国語第二外国語農業地理歴史数学博物物理化学習字図画唱歌及体操トス第一外国語ハ通常英語トシ第二外国語ハ通常独語若クハ仏語トス但第二外国語ト農業トハ其一ヲ欠クコトヲ得又唱歌ハ当分之ヲ欠クモ妨ケナシ

　第二条　尋常中学校ノ修業年限ハ五箇年トス

　第三条　尋常中学校ニ於テハ五級ヲ設ケ毎級ノ授業期限ヲ一年トシ一年内一一於テハ凡四十週授業スヘキモノトス

　第四条　尋常中学校ノ各学科授業ノ時数凡左ノ如シ

　第二外国語ト農業トヲ並へ置クトキハ其一ヲ生徒ニ課スルモノトス

　第五条　尋常中学校ノ各学科ノ程度左ノ如シ

　倫理　入倫道徳ノ要旨

　国語及漢文　漢字交リ文及漢文ノ講読書取作文

　第一外国語　読方訳解講読書取会話文法作文翻訳

　第二外国語　読方訳解書取会話作文

　農業　農業初歩及実業

　地理　地文及政治地理

　歴史　日本及外国ノ歴史

　数学　算術比例及利息算

　諸則ノ理由

　代数　釈義整数四則之数一次方程式自乗開平開立指数根数二次方程式準二次方程式比例等差級数等比級数調和級数順列組合二項法対数

　幾何　定義公理直線直線形円積平面立体角角錐角堤球円錐円堤

　三角法角度三角法比対数表用法三角形距離等ノ測法球面三角

　博物　通常ノ動植鉱物ノ示教

　植物　観察解析記述分類大意及植物ノ生活上緊要ナル現象

　動物　観察記述分類大意諸部類ノ相互及外物ノ関係　人体ノ生理及衛生

　物理　物理上ノ緊要ナル現象及定律

　化学　普通ノ化学上ノ現象緊要ナル元素及無機化合物ノ性質

　習字　楷行草三体ノ書写及細字ノ速写

　図画　自在画法及用器画法

　唱歌　単音及複音唱歌

　体操　普通及兵式体操

　第六条　尋常中学校ノ第五級ニ入ルコトヲ得ヘキモノハ品行端正身体健康年齢満十二年以上ニシテ中学予備ノ小学校又ハ其他ノ学校ニ於テ該級ノ課程ヲ修ムルニ堪フヘキ学力ヲ得タルモノトス

　其他ノ級ニ入ルコトヲ得ヘキモノハ前項ノ例ヨリ推シテ相当ノ年齢ニ達シ其課程ヲ修メ得ヘキ学力ヲ有シ且品行端正身体健康ナルモノトス

　第七条　尋常中学校ニ於テハ土地ノ情況ニ因リ文部大臣ノ認可ヲ経テ商業工業ノ科ヲ置クコトヲ得

尋常中学校ノ学科及其程度

　（表省略）

　　　　　「文部科学省ホームページ」より
〇同じ日の過去の出来事（以前にブログで紹介した記事）