
「日中長期貿易取り決め」(にっちゅうちょうきぼうえきとりきめ)は、日中長期貿易協議委員会委員長稲山嘉寛と劉希文中日長期貿易協議委員会主任との間で調印された、日中間の長期間の貿易に関する取り決めです。1972年(昭和47)9月29日の「日中共同声明」が出されて以後、周恩来総理、稲山嘉寛経団連副会長、財団法人日中経済協会会長をはじめとする関係者の間で「中国から石油と石炭を日本へ輸出し、日本から設備、資材を中国へ輸出する」という長期協定構想を打診・検討され、1977年(昭和42)10月に日本側・中国側でそれぞれ日中長期貿易取決め推進委員会、中日長期貿易協議委員会が設立され、翌年1月には、日中長期貿易取決め推進委員会の総会が開催され、取決め文案が承認されると共に、推進委員会を改組し、日中長期貿易協議委員会(当時委員長:稲山嘉寛)が発足しました。
それに基づいて、同年2月16日に中国の北京で調印されたのが、この取り決めで、1985年までの8年間有効とされます。内容は、日本から中国に技術及びプラント並びに建設用資材・機材を輸出し、中国から日本に原油と石炭(原料炭、一般炭)を輸出することとなっていました。
この取決めに基づき、日本は中国の石油・石炭の資源開発に協力し、長期安定的なエネルギー資源の供給を受け、中国は石油・石炭の輸出拡大を通じて外貨を獲得し、経済発展に必要な技術、プラント及び建設用資材の輸入に充当することとなります。その後、1990年(平成2)12月18日に、「日中長期貿易延長取り決め(五年延長)」(第2次取決め)が調印され、それ以降現在に至るまで5年毎に更新延長がなされてきました。
以下に、「日中長期貿易取り決め」(第1次取決め)と「日中長期貿易延長取り決め(五年延長)」(第2次取決め)の日本語版を掲載しておきましたから、ご参照下さい。
それに基づいて、同年2月16日に中国の北京で調印されたのが、この取り決めで、1985年までの8年間有効とされます。内容は、日本から中国に技術及びプラント並びに建設用資材・機材を輸出し、中国から日本に原油と石炭(原料炭、一般炭)を輸出することとなっていました。
この取決めに基づき、日本は中国の石油・石炭の資源開発に協力し、長期安定的なエネルギー資源の供給を受け、中国は石油・石炭の輸出拡大を通じて外貨を獲得し、経済発展に必要な技術、プラント及び建設用資材の輸入に充当することとなります。その後、1990年(平成2)12月18日に、「日中長期貿易延長取り決め(五年延長)」(第2次取決め)が調印され、それ以降現在に至るまで5年毎に更新延長がなされてきました。
以下に、「日中長期貿易取り決め」(第1次取決め)と「日中長期貿易延長取り決め(五年延長)」(第2次取決め)の日本語版を掲載しておきましたから、ご参照下さい。
〇「日中長期貿易取り決め」関係略年表
・1972年(昭和47)9月29日 「日中共同声明」が出される
・1972年(昭和47) 周恩来総理、稲山嘉寛経団連副会長、財団法人日中経済協会会長をはじめとする関係者の間で「中国から石油と石炭を日本へ輸出し、日本から設備、資材を中国へ輸出する」という長期協定構想を打診・検討する
・1977年(昭和42)10月 日本側・中国側でそれぞれ日中長期貿易取決め推進委員会、中日長期貿易協議委員会が設立される
・1978年(昭和43)1月 日中長期貿易取決め推進委員会の総会が開催され、取決め文案が承認されると共に、推進委員会を改組し、日中長期貿易協議委員会(当時委員長:稲山嘉寛)が発足する
・1978年(昭和43)2月16日 「日中長期貿易取り決め」(第1次取決め)が調印される
・1978年(昭和43)8月12日 「日中平和友好条約」が調印される
・1986年(昭和61) 実質的な更新延長の取決めが調印される(第2次取決め)
・1990年(平成2)12月18日 第3次取決めに調印(有効期間:1991~1995年)する
・1995年(平成7)9月 第4次取決めに調印(有効期間:1996~2000年)する
・2000年(平成12)12月 第5次取決めに調印(有効期間:2001年~2005年)する
・2005年(平成17)12月 第6次取決めに調印(有効期間:2006~2010年)する
・2011年(平成23)1月 第7次取決めに調印(有効期間:2011~2015年)する
・2016年(平成28)11月 第8次覚書に調印(有効期間:2016~2020年)する
※文書名が今次より「日中長期貿易取決め」から「日中長期貿易協議に関する協力覚書」に改名
・2021年(令和3)3月 第9次覚書に調印(有効期間:2021~2025年)する
☆「日中長期貿易取り決め」(第1次取決め) 1978年(昭和43)2月16日調印
日本日中長期貿易協議委員会と中国中日長期貿易協議委員会は、日中両国政府の共同声明及び貿易協定の精神に基づき、平等互恵、有無相通及び輸出入均衡の基礎の上に、両国の経済・貿易関係を長期的かつ安定的に発展させるため、友好的に協議を行い、それぞれの政府の支持を受けて、日本から中国に技術及びプラント並びに建設用資材・機材を輸出し、中国から日本に原油と石炭を輸出する長期貿易の取り決めを日中両国間の貿易の一部として、以下のとおり締結する。
第一条 本取り決めの有効期間は、一九七八年から一九八五年までの八年間とする。
本取り決めの有効期間内における双方の輸出総金額は、それぞれ百億米ドル前後とする。
第二条 本取り決めの第一年度(一九七八年)から第五年度(一九八二年)までの日本側から中国側に輸出する技術及びプラントは約七十億乃至八十億米ドル、建設用資材・機材は約二十億乃至三十億米ドルとする。
双方は、毎年締結する契約金額をもって確定金額とすることに同意する。
本取り決めの第一年度(一九七八年)から第五年度(一九八二年)までの中国側から日本側に輸出する商品及び数量は下記のとおりである。
年度 | 数量単位 | 原油 | 原料炭 | 一般炭 |
一九七八 | 万トン | 七〇〇 | 一五〜三〇 | 一五〜二〇 |
一九七九 | 万トン | 七六〇 | 五〇 | 一五〜二〇 |
一九八〇 | 万トン | 八〇〇 | 一〇〇 | 五〇〜六〇 |
一九八一 | 万トン | 九五〇 | 一五〇 | 一〇〇〜一二〇 |
一九八二 | 万トン | 一、五〇〇 | 二〇〇 | 一五〇〜一七〇 |
双方は、本取り決めの第六年度(一九八三年)から第八年度(一九八五年)までの中国側から日本側に輸出する商品及び数量について、一九八一年内に協議し、確定することに同意する。取り決めの最後の三年間における、中国側から日本側に輸出する原油及び石炭の数量は、本取り決めの第五年度の数量を基礎にして、逐年増加するものとする。
第三条 双方は、原則として延払い方式で日本側から中国側に技術及びプラント並びに建設用資材・機材を輸出することに同意する。
第四条 本取り決めに基づく取引は、日本側当事者と中国側関係輸出入総公司との個別契約を締結することによって行うものとする。
双方は、合理的な国際価格と国際貿易の慣例に基づいて取引を行うことに同意する。
第五条 双方は、本取り決めを実行し、日中両国の経済交流を拡大するため、必要な科学技術分野において技術協力を行うことに同意する。
第六条 双方は、本取り決めに基づく取引上の決済の進捗状況を把握するため、それぞれ外国為替銀行一行を選定し、所要の統計作業を担当させることに同意する。
日本側は東京銀行とし、中国側は中国銀行とする。
両行は必要な統計をとり、相互に連絡を行うものとする。
第七条 本取り決めに基づく取引契約書、信用状、為替手形及び保証状にはすべて下記の符号を付することとする。第一年度分に対してはLT−1、第二年度分に対してはLT−2(以下同様)とする。
第八条 双方は、本取り決めを実行するため、それぞれ事務局を設置し、連絡及び関係事務の処理を行うものとする。
日本側は、日本日中長期貿易協議委員会事務局を東京に設け、中国側は、中国中日長期貿易協議委員会弁事処を北京に設けるものとする。
第九条 双方は、本取り決めの実行及び本取り決めに関する問題を協議するため、双方の代表が毎年交互に東京と北京で会談を行うことに同意する。
第十条 本取り決めは、双方の同意なしに破棄することができないものとする。
本取り決めに基づき締結した契約は、双方の契約当事者の同意なしに破棄することができないものとする。
第十一条 本取り決めの有効期間は、調印した日から一九八五年十二月三十一日までとする。
本取り決めは、双方協議し、同意の上、これを修正することができるものとする。
第十二条 本取り決め書は、一九七八年二月十六日北京において調印し、日中両国語により各二通を作成し、双方それぞれ一通を保有する。
両国語の取り決め書は同等の効力をもつ。
日本日中長期貿易協議委員会 委員長 稲山嘉寛
中国中日長期貿易協議委員会 主任 劉希文
「日中関係基本資料集」より
☆「日中長期貿易延長取り決め(五年延長)」(第2次取決め) 1990年(平成2)12月18日調印
日本日中長期貿易協議委員会と中国中日長期貿易協議委員会は、日中両国政府の共同声明、日中平和友好条約、日中関係四原則及び日中貿易協定の精神に基づき、両国の経済・貿易関係を更に長期的かつ安定的に発展させるため、一九七八年双方が調印した日中長期貿易取決めの成果の基礎の上に、友好的に協議を行い、それぞれの政府の支持を受けて、日本から中国に技術・プラント設備及び建設資機材を輸出し、中国から日本に原油と石炭を輸出する長期貿易の取決めを、日中両国間貿易の一部として、以下のとおり締結する。
第一条 本取決めの有効期間は、一九九一年から一九九五年までの五年間とする。
2、本取決めの有効期間内における双方の輸出総金額は、それぞれ八十億米ドル前後とする。
第二条 本取決めの第一年度(一九九一年)から第五年度(一九九五年)までに、中国側から日本側に毎年、原油を八百八十万ないし九百三十万トン、原料炭を百四十万ないし百八十万トン、一般炭を二百五十万ないし三百五十万トン輸出する。
2、前項の原油、原料炭及び一般炭の対日輸出については、中国側は関係公司に対し、契約通り荷渡期日を遵守し、品質を保証するようにさせるものとする。
第三条 本取決めの第一年度(一九九一年)から第五年度(一九九五年)までに、日本側が中国側に輸出する技術・プラント設備及び建設資機材(主な品目リスト別添のとおり)の金額を八十億米ドル前後とする。
2、技術・プラント設備及び建設資機材の対中輸出については、日本側は日本政府に対し、輸出承認手続き、貿易保険の付保等が円滑に進むよう働きかけるものとする。
第四条 本取決めに基づく取引は、日本の関係輸出入企業と中国の関係輸出入公司との個別契約を締結することによって行うものとする。
2、双方は、合理的な国際価格と国際貿易の慣例に基づいて取引を行うことに同意する。
3、双方は、取決めの数量、金額を達成するよう努力するものとし、毎年締結する契約金額をもって取決めの金額とすることに同意する。
第五条 双方は、本取決めを実行し、日中両国の経済交流を拡大するため、必要な科学技術分野において技術協力を行うことに同意する。
第六条 双方は、本取決めに基づく取引上の決済の進捗状況を把握するため、それぞれ外国為替銀行一行を選定し、必要な統計作業を担当させることに同意する。
2、日本側は東京銀行とし、中国側は中国銀行とする。両行は必要な統計措置をとり、相互に連絡を行うものとする。
第七条 本取決めに基づく取引の契約、信用状、為替手形及び保証状にはすべて次項の符号を付することとする。
2、第一年度分に対してはLT−II−1、第二年度分に対してはLT−II−2(以下同様)とする。
第八条 双方は、本取決めを実行するため、日本側は日中長期貿易協議委員会事務局、中国側は中日長期貿易協議委員会弁事処を通じ、連絡及び関連業務を行うものとする。
第九条 本取決めの実行及び本取決めに関する問題を協議するため、双方の代表は、毎年一回交互に東京と北京で会談を行う。
第十条 本取決めは、双方協議し、同意の上、これを修正又は延長することができるものとする。
2、本取決めに基づき締結した契約は、双方の契約当事者の同意なしに破棄することができないものとする。
第十一条 本取決め書は、一九九〇年十二月十八日東京において調印し、日中両国語により各二通を作成し、双方それぞれ一通を保有する。両国語の取決め文書は同等の効力を持つ。
日本日中長期貿易協議委員会 委員長 河合 良一
中国中日長期貿易協議委員会 主任 沈覚人
(別添)
日中長期貿易取決めに基づき日本側が中国側に輸出する主な技術・プラント設備及び建設資機材の商品リスト
一、エネルギー及びその関連
1、発電設備及び同関連設備
2、省エネルギー・公害防止設備技術
3、油田開発、炭鉱開発設備技術機械(含輸送設備)
4、都市ガス関係設備技術
二、農業開発関係
1、農業基盤整備関連機械技術
2、農業機械技術
三、輸送通信関係
1、交通輸送システム関係設備機械
2、通信設備技術機械
3、輸送車両等製造設備技術
四、重要原材料等生産設備
1、石油化学工場設備
2、製鉄所設備
3、セメントエ場設備
4、化学肥料工場設備
五、電子関係
1、機械電子設備
2、大容量集積回路
3、ファインケミカル
六、技術改造関係
1、輸出企業技術改造
2、重点企業技術改造
七、その他
特定建設に必要な建設資機材
「日中関係基本資料集」より
〇同じ日の過去の出来事(以前にブログで紹介した記事)
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