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 今日は、昭和時代後期の1974年(昭和49)に、「日韓大陸棚協定」が締結(発効は1978年6月22日)された日です。
 「日韓大陸棚協定」(にっかんたいりくだなきょうてい)は、日本と韓国との間に存在する大陸棚の石油・天然ガス資源の開発や境界について定めた国際協定で、正式名称は、「日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚の南部の共同開発に関する協定」と言います。
 二つの協定と付属文書より成り、一つは、「北部境界画定協定」(日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚の北部の境界画定に関する協定)で、対馬海峡西水道の日韓間の大陸棚の境界線を35の座標で示しており、この線は、日本側の壱岐、対馬を考慮に入れた日韓の中間線となっていました。もう一つは、「南部共同開発協定」(日本国と大韓民県との間の両国に隣接する大陸棚の南部の共同開発に関する協定)で、東シナ海における石油資源(天然ガスを含む)の日韓の共同開発区域を20の座標で示し、開発の方法、開発に関する協力などを規定しています。
 日本の国会では、承認が難航して、政府は、1977年(昭和52)春の通常国会で自然承認に持込んだものの、関連国内法の成立が遅れ、翌年5月に、ようやく成立するに至りました。しかし、南部大陸棚に関しては、今後に、その大陸棚部分を中国大陸からの自然の延長と主張する中国との間で紛争が生ずる可能性が指摘されています。
 以下に、「北部境界画定協定」、「南部共同開発協定」と付属文書を掲載しておきますので、ご参照ください。

〇「北部境界画定協定」(日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚の北部の境界画定に関する協定)1974年(昭和49)1月30日締結、1978年(昭和53)6月22日発効

<日本語訳>

 日本国と大韓民国は,
 両国の間に存在する友好関係を助長することを希望し,
 鉱物資源の探査及び採掘のために日本国と大韓民国がそれぞれ主権的権利を行使する両国に隣接する大陸棚{前1文字だなとルビ}の北部の境界を画定することを希望して,
 次のとおり協定した。

    第一条

1 両国に隣接する大陸棚の北部において,日本国に属する大陸棚{前1文字だなとルビ}と大韓民国に属する大陸棚{前1文字だなとルビ}の境界線は,次の座標の各点を順次に結ぶ直線とする。
  座標一 北緯三十二度五十七・〇分東経百二十七度四十一・一分
  座標二 北緯三十二度五十七・五分東経百二十七度四十一・九分
  座標三 北緯三十三度一・三分東経百二十七度四十四・〇分
  座標四 北緯三十三度八・七分東経百二十七度四十八・三分
  座標五 北緯三十三度十三・七分東経百二十七度五十一・六分
  座標六 北緯三十三度十六・二分東経百二十七度五十二・三分
  座標七 北緯三十三度四十五・一分東経百二十八度二十一・七分
  座標八 北緯三十三度四十七・四分東経百二十八度二十五・五分
  座標九 北緯三十三度五十・四分東経百二十八度二十六・一分
  座標十 北緯三十四度八・二分東経百二十八度四十一・三分
  座標十一 北緯三十四度十三・〇分東経百二十八度四十七・六分
  座標十二 北緯三十四度十八・〇分東経百二十八度五十二・八分
  座標十三 北緯三十四度十八・五分東経百二十八度五十三・三分
  座標十四 北緯三十四度二十四・五分東経百二十八度五十七・三分
  座標十五 北緯三十四度二十七・六分東経百二十八度五十九・四分
  座標十六 北緯三十四度二十九・二分東経百二十九度〇・二分
  座標十七 北緯三十四度三十二・一分東経百二十九度〇・八分
  座標十八 北緯三十四度三十二・六分東経百二十九度〇・八分
  座標十九 北緯三十四度四十・三分東経百二十九度三・一分
  座標二十 北緯三十四度四十九・七分東経百二十九度十二・一分
  座標二十一 北緯三十四度五十・六分東経百二十九度十三・〇分
  座標二十二 北緯三十四度五十二・四分東経百二十九度十五・八分
  座標二十三 北緯三十四度五十四・三分東経百二十九度十八・四分
  座標二十四 北緯三十四度五十七・〇分東経百二十九度二十一・七分
  座標二十五 北緯三十四度五十七・六分東経百二十九度二十二・六分
  座標二十六 北緯三十四度五十八・六分東経百二十九度二十五・三分
  座標二十七 北緯三十五度一・二分東経百二十九度三十二・九分
  座標二十八 北緯三十五度四・一分東経百二十九度四十・七分
  座標二十九 北緯三十五度六・八分東経百三十度七・五分
  座標三十 北緯三十五度七・〇分東経百三十度十六・四分
  座標三十一 北緯三十五度十八・二分東経百三十度二十三・三分
  座標三十二 北緯三十五度三十三・七分東経百三十度三十四・一分
  座標三十三 北緯三十五度四十二・三分東経百三十度四十二・七分
  座標三十四 北緯三十六度三・八分東経百三十一度八・三分
  座標三十五 北緯三十六度十・〇分東経百三十一度十五・九分
2 境界線をこの協定に附属する地図に表示する。

    第二条

 海底下の鉱物の単一の地質構造が境界線にまたがつて存在し,かつ,当該地質構造のうち境界線の一方の側に存在する部分の全体又は一部を境界線の他方の側から採掘することができる場合には,両締約国は,当該地質構造を最も効果的に採掘するための方法について合意に達するよう努力する。当該地質構造を最も効果的に採掘するための方法に関連して両締約国間で合意することができないすべての問題は,いずれか一方の締約国の要請があつたときは,第三者による仲裁に付託する。この仲裁の決定は,両締約国を拘束する。

    第三条

 この協定は,上部水域又はその上空の法的地位に影響を及ぼすものではない。

    第四条

 この協定は,批准されなければならない。批准書は,できる限り速やかに東京で交換されるものとする。この協定は,批准書の交換の日から効力を生ずる。

 以上の証拠として,下名は,各自の政府から正当に委任を受けて,この協定を署名した。

 千九百七十四年一月三十日にソウルで,英語により本書二通を作成した。

 日本国のために
   後宮虎郎

 大韓民国のために
    金東祚

(附属の地図省略)

   外務省条約局編「主要条約集(昭和五十五年版)」より

〇「南部共同開発協定」(日本国と大韓民県との間の両国に隣接する大陸棚の南部の共同開発に関する協定)1974年(昭和49)1月30日締結、1978年(昭和53)6月22日発効

<日本語訳>

 日本国と大韓民国は,
 両国の間に存在する友好関係を助長することを希望し,
 両国に隣接する大陸棚{前1文字だなとルビ}の南部において共同して石油資源を探査し及び採掘することが両国に共通の利益であることを考慮し,
 その石油資源の開発の問題について最終的な実際的解決に到達することを決意して,
 次のとおり協定した。

    第一条

 この協定の適用上,
 (1) 「天然資源」とは,石油資源(天然ガス資源を含む。)及びこれに付随して産出されるその他の地下の鉱物をいう。
 (2) 「開発権者」とは,いずれか一方の締約国により,当該一方の締約国の法令に基づき,共同開発区域において天然資源を探査し又は採掘することを認可された者をいう。
 (3) 「両締約国の開発権者」とは,共同開発区域内の同一の小区域についてそれぞれ認可された一方の締約国の開発権者及び他方の締約国の開発権者をいう。
 (4) 「事業契約」とは,共同開発区域において天然資源を探査し及び採掘するために両締約郡の開発権者の間で締結される契約をいう。
 (5) 「操業管理者」とは,共同開発区域内の一の小区域につき,事業契約の下で,操業管理者として指定され及び行動する開発権者をいう。

    第二条

1 共同開発区域は,次の座標の各点を順次に結ぶ直線によつて囲まれる大陸棚{前1文字だなとルビ}の区域とする。
  座標一 北緯三十二度五十七・〇分東経百二十七度四十一・一度
  座標二 北緯三十二度五十三・四分東経百二十七度三十六・三分
  座標三 北緯三十二度四十六・二分東経百二十七度二十七・八分
  座標四 北緯三十二度三十三・六分東経百二十七度十三・一分
  座標五 北緯三十二度十・五分東経百二十六度五十一・五分
  座標六 北緯三十度四十六・二分東経百二十五度五十五・五分
  座標七 北緯三十度三十三・三分東経百二十六度〇・八分
  座標八 北緯三十度十八・二分東経百二十六度五・五分
  座標九 北緯二十八度三十六・〇分東経百二十七度三十八・〇分
  座標十 北緯二十九度十九・〇分東経百二十八度〇・〇分
  座標十一 北緯二十九度四十三・〇分東経百二十八度三十八・〇分
  座標十二 北緯三〇度十九・〇分東経百二十九度九・〇分
  座標十三 北緯三十度五十四・〇分東経百二十九度四・〇分
  座標十四 北緯三十一度十三・○分東経百二十八度五十・〇分
  座標十五 北緯三十一度四十七・〇分東経百二十八度五十・〇分
  座標十六 北緯三十一度四十七・〇分東経百二十八度十四・〇分
  座標十七 北緯三十二度十二・〇分東経百二十七度五十・〇分
  座標十八 北緯三十二度二十七・〇分東経百二十七度五十六・〇分
  座標十九 北緯三十二度二十七・〇分東経百二十八度十八・〇分
  座標二十 北緯三十二度五十七・〇分東経百二十八度十八・〇分
2 共同開発区域を囲む直線をこの協定に附属する地図に表示する。

    第三条

l 共同開発区域は,小区域に分割することができる。各小区域においては,両締約国の開発権者が探査及び採掘を行うものとする。
2 各小区域に番号を付し,この協定の付表において地理上の座標によつてその範囲を定める。付表は,両締約国の間の合意により,この協定を改正することなく,修正することができる。

    第四条

1 各締約国は,この協定の効力発生の日の後三箇月以内に,各小区域について一又は二以上の開発権者を認可する。締約国が一の小区域について二以上の開発権者を認可した場合には,それらの開発権者は,分割することができない利益を有するものとし,この協定の適用上,一の開発権者によつて代表される。開発権者又は小区域の変更に際しては,関係締約国は,できる限り速やかに,一又は二以上の新たな開発権者を認可する。
2 各締約国は,他方の締約国に対し,自国の開発権者を遅滞なく通知する。

    第五条

1 両締約国の開発権者は,共同開発区域において天然資源を共同して探査し及び採掘するために,事業契約を締結する。事業契約においては,特に,次の事項について定める。
 (a) 第九条の規定に基づく天然資源の分配及び費用の分担に関する詳細
 (b) 操業管理者の指定
 (c) 単独危険負担操業の取扱い
 (d) 漁業上の利益との調整
 (e) 紛争の解決
2 事業契約及びその修正は,両締約国の承認を得たときに効力を生ずる。両締約国の承認は,事業契約又はその修正が承認を得るため両締約国に提出された後二箇月以内にいずれか一方の締約国が事業契約又はその修正を明示的に否認しない限り,与えられたものとされる。
3 両締約国は,前条1の規定により両締約国の開発権者が認可された後六箇月以内に事業契約が効力を生ずることを確保するよう努力する。

    第六条

1 操業管理者は,両締約国の開発権者の間の合意によつて指定される。両締約国の開発権者がその認可の後三箇月以内に操業管理者の指定について合意に達することができなかつた場合には,両締約国は,操業管理者の指定について協議する。その協議が開始された後二箇月以内に操業管理者が指定されなかつた場合には,両締約国の開発権者は,くじ引によつて操業管理者を決定する。
2 操業管理者は,事業契約に基づくすべての操業の唯一の管理者であり,操業に必要なすべての人員を雇用し,操業に関連して要するすべての費用を支払い及び操業に必要なすべての資産(装置,資材及び需品を含む。)を調達する。

    第七条

 一方の締約国の開発権者は,他方の締約国の法令に従い,共同開発区域における天然資源の探査又は採掘に必要な建物,プラットフォーム,貯蔵庫,パイプライン,終点施設その他の施設を,当該他方の締約国の領域内で取得し,建設し,維持し,使用し又は処分することができる。

    第八条

 一方の締約国の開発権者は,他方の締約国の開発権者が当該他方の締約国の法令に基づく義務を履行する場合において,その義務がこの協定に適合するものである限り,その履行を妨げてはならない。

    第九条

1 両締約国の開発権者は,それぞれ,共同開発区域において採取される天然資源につき等分の分配を受ける権利を有する。
2 1の天然資源の探査及び採掘のために要すると合理的に認められる費用は,両締約国の開発権者の間で等しい割合で分担される。

    第十条

1 この協定に基づく開発権者の権利は,探査権及び採掘権とする。
2 探査権の存続期間は,4(3)の規定が適用される場合を除くほか,事業契約の効力発生の日から八年とする。
3 採掘権の存続期間は,採掘権の設定の日から三十年とする.両締約国の開発権者は,それぞれ自国に対し,更に五年間の期間の延長を申請することができる。この延長の申請は,必要に応じ,何回でも行うことができる。両締約国は,その申請があつたときは,その申請を承認するかどうかを決定するため相互に協議する。
4(1) 探査権の存続期間中に天然資源の商業的発見があつたときは,両締約国の開発権者は,それぞれ自国に対し,採掘権の設定を申請することができる。両締約国は,その申請があつたときは,速やかに協議し,その申請を遅滞なく承認する。
 (2) 両締約国が商業的発見があつたと認めるときは,各締約国は,自国の関係開発権者に対し,採掘権の設定の申請を行うよう要請することができる。当該開発権者は,その要請を受けた後三箇月以内に採掘権の設定の申請を行わなければならない。
 (3) 探査権の存続期間中に採掘権が設定されたときは,探査権の存続期間は,採掘権の設定の日に満了する。
5 一方の締約国の開発権者に変更があつたときは,新たな開発権者の探査権又は採掘権の存続期間は,当初の開発権者の探査権又は採掘権の存続期間の満了の日に満了する。
6 開発権者の探査権又は採掘権は,その開発権者を認可した締約国の承認及び同一の小区域について認可された他方の開発権者の同意を得て,当該小区域の全体について移転することができる。ただし,この協定及び事業契約に基づくその開発権者の権利及び義務が,全体として移転されることを条件とする。

    第十一条

1 両締約国の開発権者は,両締約国の間で行われる別個の取極に従い,探査権の存続期間中に一定の数の坑井を掘さくすることを要する。この場合において,各小区域において掘さくすべきものとされる坑井の最低数は,事業契約の効力発生の日から最初の三年の期間,次の三年の期間及び残余の二年の期間について,それぞれ二を超えないものとする。両締約国は,各小区域において掘さくすべきものとされる坑井の最低数を合意するに当たつては,当該小区域の水深及び大きさを考慮に入れるものとする。
2 両締約国の開発権者がlに規定する期間のいずれかにおいて所定の数を超えて坑井を掘さくした場合には,超過して掘さくされた坑井は,当該期間に続く一又は二の期間において掘さくされたものとみなす。

    第十二条

 両締約国の開発権者は,探査権又は採掘権の設定の日から六箇月以内に操業に着手しなければならず,かつ,引き続き六箇月以上操業を停止してはならない。

    第十三条

1 2の規定に従うことを条件として,両締約国の開発権者は,事業契約の効力発生の日から起算して,三年以内に当初の当該小区域の二十五パーセント,六年以内に当初の当該小区域の五十パーセント,八年以内に当初の当該小区域の七十五パーセントを放棄しなければならない。
2 放棄される区域の大きさ,形状及び位置並びに放棄の時期は,両締約国の開発権者の間の合意によつて決定される。ただし,3の規定が適用される場合を除くほか,七十五平方キロメートルよりも小さい区域に分割して放棄してはならない。
3(1) 両締約国の開発権者が1の規定に従つて放棄すべき区域について合意することができない場合には,両締約国の開発権者は,当該放棄期間の満了の日に,共通して放棄が提案されている区域に加えて,それぞれ放棄が提案されている区域の五十パーセントずつを,放棄される区域が全体として可能な限り単一の区域となるように,放棄する。
 (2) 共通して放棄が提案されている区域がないときは,両締約国の開発権者は,それぞれ放棄が提案されている区域の五十パーセントずつを放棄する。
4 両締約国の開発権者は,2の規定に従うことを条件として,いかなる区域をも任意に放棄することができる。
5 2の規定にかかわらず,一の開発権者は,事業契約の効力発生の日から二年が経過した後は,単独で当該小区域を全体として放棄することができる。

    第十四条

1 いずれの一方の締約国も,自国の開発権者がこの協定又は事業契約に基づく義務を履行しない場合には,他方の締約国と協議した後,自国の法令に定める開発権者の保護に関する手続により,その開発権者の探査権又は採掘権を取り消すことができる。
2 いずれか一方の締約国が自国の法令に従つて自国の開発権者の探査権又は採掘権を取り消そうとする場合には,当該一方の締約国は,lの規定が適用される場合を除くほか,遅くとも取消しの十五日前までに他方の締約国にその意図を通知する。
3 一方の締約国による探査権又は採掘権の取消しは,遅滞なく他方の締約国に通知されるものとする。

    第十五条

1 一方の締約国の開発権者が第十三条5の規定に基づいて小区域を単独で放棄した場合,一方の締約国の開発権者の探査権若しくは採掘権が前条の規定に基づいて取り消された場合又は一方の締約国の開発権者が存在しなくなつた場合(これらの開発権者を以下「前の開発権者」という。)には,残存する開発権者は,当該小区域において,前の開発権者を認可した締約国が新たな開発権者を認可するまての間,その残存する開発権者と前の開発権者とが当事者であつた事業契約の単独危険負担条項の規定及び他の関連する諸規定に従つて,天然資源の探査又は採掘を行うことができる。ただし,前の開発権者を認可した締約国の承認を得ることを条件とする。
2 lの規定の適用上,残存する開発権者は,自己の開発権者としての地位を保持しつつ,開発権者の権利及ぴ義務に関し,前の開発権者を認可した締約国の開発権者とみなされる。ただし,1の規定に基づく天然資源の探査又は採掘から生ずる所得につき残存する開発権者に対して行われる課税については,この限りでない。
3 新たな開発権者が一方の締約国によつて認可されたときは,その新たな開発権者と残存する開発権者は,新たな事業契約が効力を生ずるまでの間,その残存する開発権者と前の開発権者とが当事者であつた事業契約に拘束される。もつとも,1の規定に基づき天然資源の探査又は採掘を開始した残存する開発権者は,その残存する開発権者と前の開発権者とが当事者であつた事業契約の単独危険負担条項の規定に従つて,新たな事業契約が効力を生ずるまての間,その探査又は採掘を継続することができる。

    第十六条

 共同開発区域において採取される天然資源に対する各締約国の法令の適用上,その天然資源のうち第九条の規定に基づき一方の締約国の開発権者が権利を有する部分は,当該一方の締約国が主権的権利を有する大陸棚{前1文字だなとルビ}において採取された天然資源とみなす。

    第十七条

1 いずれの一方の締約国(地方公共団体を含む。)も,他方の締約国の開発権者に対し,
 (a) 共同開発区域における探査活動若しくは採掘活動
 (b) (a)に規定する活動から生ずる所得
 (c) (a)に規定する活動を行うために必要な固定資産の共同開発区域における所有又は
 (d) その者が認可を受けた小区域
 について,租税その他の課徴金を課してはならない。
2 各締約国(地方公共団体を含む。)は,自国の開発権者に対し,
 (a) 共同開発区域における探査活動又は採掘活動
 (b) (a)に規定する活動を行うために必要な固定資産の共同開発区域における所有及び
 (c) その者が認可を受けた小区域
 について,租税その他の課徴金を課することができる。

    第十八条

 各締約国の関税,輸入及び輸出に関する法令の適用上,
(1) 共同開発区域において天然資源を探査し若しくは採掘するために必要な装置,資材その他の物品(以下「装置」という。)の共同開発区域への搬入,装置の共同開発区域におけるその後の使用又は装置の共同開発区域からの搬出は,輸入又は輸出とみなされない。
(2) 一方の締約国の管轄の下にある区域から共同開発区域への装置の搬出は,当該一方の締約国において輸入又は輸出とみなされない。
(3) いずれの一方の締約国も,その管轄の下にある区域から共同開発区域に搬入された装置を共同開発区域内で使用する者に対し,その装置の使用についての報告を提出するよう要求することができる。
(4) (1)の規定にかかわらず,(3)に規定する装置の共同開発区域から当該一方の締約国の管轄の下にある区域以外の区域への搬出は,当該一方の締約国において輸出とみなされる。

    第十九条

 この協定に別段の定めがある場合を除くほか,一方の締約国の法令は,当該一方の締約国が認可した開発権者が操業管理者として指定され及び行動する小区域において,天然資源の探査又は採掘に関連する事項について適用される。

    第二十条

 両締約国は,共同開発区域における天然資源の探査又は採掘に関連する活動から生ずる海洋における衝突の防止並びにそれらの活動から生ずる海洋の汚染の防止及び除去のためにとるべき措置について合意する。

    第二十一条

1 いずれか一方の締約国の国民又はいずれか一方の締約国の領域内に居住する他の者が共同開発区域における天然資源の探査又は採掘によつて生ずる損害を受けた場合には,当該国民又は当該他の者は,その損害の賠償請求の訴えを,(a)その損害が発生した領域が属する一方の締約国の裁判所,(b)当該国民若しくは当該他の者が居住している一方の締約国の裁判所又は(c)その損害の原因となつた事故が発生した小区域において操業管理者として指定され及び行動している開発権者を認可した一方の締約国の裁判所のいずれかに提起することができる。
2 1の規定に基づき1に規定する損害の賠償請求の訴えの提起を受けた一方の締約国の裁判所は,当該一方の締約国の法令を適用する。
3(1) 1に規定する損害が海底及びその下の掘さく又は坑水若しくは廃水の放流によつて生じた場合には,次に掲げる者は,2の規定に基づいて適用される法令に従い,連帯してその損害の賠償の責任を負う。
  (a) その損害の発生の時に当該小区域について探査権又は採掘権を有していた両締約国の開発権者
  (b) その損害の発生の時に当該小区域について探査権又は採掘権を有する開発権者がいなかつたときは,当該小区域について最も近い時期に探査権又は採掘権を有していた双方の開発権者
  (c) その損害の発生の時に当該小区域について一の開発権者のみが探査権又は採掘権を有していたときは,その一の開発権者及び第十五条lに定義する前の開発権者
 (2) (1)の規定の適用上,(1)に規定する損害の発生の後に探査権又は採掘権の譲渡があつた場合には,探査権又は採掘権を譲渡した開発権者及び探査権又は採掘権を譲り受けた開発権者は,連帯して賠償の責任を負う。

    第二十二条

1 各締約国は,共同開発区域における天然資源の探査又は採掘のための固定施設上の無線局に周波数を割り当てるときは,その割当ての前に,できる限り速やかに,周波数,電波発射の型式,空中線電力,無線局の位置その他必要な事項を他方の締約国に通報する。各締約国は,これらの事項のその後の変更についても,同様に他方の締約国に通報する。
2 両締約国は,いずれか一方の締約国の要請があつたときは,これらの事項に関して必要な調整を行うために協議する。

    第二十三条

1 天然資源の単一の地質構造が第二条1に規定する線にまたがつて存在し,かつ,当該地質構造のうちその線の一方の側に存在する部分の全体又は一部をその線の他方の側から採掘することができる場合には,締約国により当該地質構造を採掘することを認可された開発権者及び他の者(以下「開発権者及び他の者」という。)は,協議により,当該地質構造の最も効果的な採掘方法について合意に達するよう努力する。
2(1) 開発権者及び他の者が1に規定する方法について協議を開始した後六箇月以内に合意に達することができなかった場合には,両締約国は,協議により,合理的な期間内にその方法に関する共同提案を開発権者及び他の者に対して行うよう努力する。
 (2) すべての又は一部の開発権者及び他の者の間でlに規定する方法について合意に達した場合には,その合意(その修正を含む。)は,両締約国の承認を得たときに効力を生ずる。その合意においては,3の規定に基づく天然資源の分配及び費用の分担に関する詳細について定める。
3 2(2)に規定する合意に基づく採掘の場合には,当該地質構造から採取される天然資源及びその天然資源の採掘のために要すると合理的に認められる費用は,当該地質構造のうち開発権者及び他の者が締約国から認可を受けたそれぞれの区域に存在する部分の生産可能な埋蔵量に比例して,開発権者及び他の者の間で配分される。
4 1から3までの規定は,共同開発区域内の小区域を囲む線にまたがつて存在する天然資源の単一の地質構造の採掘について準用する。
5(l) 第十六条の規定の適用上,共同開発区域において採取される天然資源のうち,一方の締約国によって認可された者(開発権者を除く。)が3の規定及び2(2)に規定する合意に基づいて権利を有する部分は,当該一方の締約国の開発権者が権利を有する天然資源の部分とみなす。
 (2) 第十七条の規定の適用上,一方の締約国によつて認可された者(開発権者を除く。)であつて2(2)に規定する合意の当事者であるものは,当該一方の締約国の開発権者とみなす。
 (3)いずれの一方の締約国(地方公共団体を含む。)も,他方の締約国の開発権者に対し,
  (a) 2(2)に規定する合意に従つて共同開発区域の外で行う採掘活動
  (b) (a)に規定する活動から生ずる所得又は
  (c) (a)に規定する活動を行うために必要な固定資産の所有について,租税その他の課徴金を課してはならない。

    第二十四条

l 両締約国は,この協定の実施に関する事項について協議するための機関として,日韓共同委員会(以下「委員会」という。)を設置し及び維持する。
2 委員会は,二の国別委員部で構成し,各国別委員部は,それぞれの締約国が任命する二人の委員で構成する。
3 委員会のすべての決議,勧告その他の決定は,国別委員部の間の合意によつてのみ行うものとする。
4 委員会は,その会議の手続規則を採択し,必要があるときは,これを修正することができる。
5 委員会は,毎年少なくとも一回会合し,また,いずれか一方の国別委員部の要請によつて会合する。
6 委員会は,その第一回会議において,議長及び副議長を異なる国別委員部から選定する。議長及ぴ副議長の任期は,一年とする。国別委員部からの議長及び副議長の選定は,それぞれの締約国がそれらの地位に順番に代表されるように行う。
7 委員会の下に,その事務を遂行するため常設の事務局を設置することができる。
8 委員会の公用語は,日本語,韓国語及ぴ英語とする。提案及び資料は,いずれの公用語によつても提出することができる。
9 委員会が共同の経費が必要であると決定したときは,その共同の経費は,委員会が勧告し,かつ,両締約国が承認するところに従つて両締約国が負担する分担金により,委員会が支払う。

    第二十五条

1 委員会は,次の任務を遂行する。
 (a) この協定の運用について検討し並びに,必要と認めるときは,この協定の運用を改善するためにとるべき措置について討議し及び両締約国に勧告すること。
 (b) 開発権者の技術上及び財務上の報告を受領すること。この報告は,両締約国が毎年提出するものとする。
 (c) 開発権者によつては解決することができない紛争を解決するためにとるべき措置について両締約国に勧告すること。
 (d) 操業管理者の操業及び共同開発区域における天然資源の探査又は採掘のための設備その他の施設を視察すること。
 (e) この協定の効力発生の時に予想されなかつた問題(両締約国の法令の適用に関連する問題を含む。)について研究し及び,必要と認めるときは,それらの問題を解決するための適当な措置について締約国に勧告すること。
 (f) 両締約国により公布された法令で共同開発区域における天然資源の探査又は採掘に関連するものに関し,両締約国からの通報を受領すること。
 (g) この協定の実施に関連するその他の事項について討議すること。
2 両締約国は,1の規定に基づいて委員会が行う勧告をできる限り尊重する。

    第二十六条

l この協定の解釈及び実施に関する両締約国間の紛争は,まず,外交上の経路を通じて解決するものとする。
2 1の規定によつて解決することができなかつた紛争は,いずれか一方の締約国が他方の締約国から紛争の仲裁を要請する公文を受領した日から三十日の期間内に各締約国が任命する各一人の仲裁委員と,このようにして選定された二人の仲裁委員がその後の三十日の期間内に合意する第三の仲裁委員又はその二人の仲裁委員が当該期間内に合意する第三国の政府が任命する第三の仲裁委員との三人の仲裁委員から成る仲裁委員会に決定のため付託する。ただし,第三の仲裁委員は,いずれの締約国の国民でもない者とする。
3 各締約国が任命した仲裁委員が2に規定するその後の三十日の期間内に第三の仲裁委員又は第三国について合意しなかつた場合には,両締約国は,国際司法裁判所長に対し,いずれの締約国の国民でもない第三の仲裁委員を任命するよう要請する。
4 いずれか一方の締約国の要請があつたときは,仲裁委員会は,緊急の場合には,裁定を行う前に暫定的な命令を発することができる。両締約国は,その命令を尊重する。
5 両締約国は,この条の規定に基づく仲裁委員会の裁定に服するものとする。

    第二十七条

 共同開発区域における天然資源の探査及び採掘は,共同開発区域及びその上部水域における航行,漁業等の他の正当な活動が不当に影響されることのないように行うものとする。

    第二十八条

 この協定のいかなる規定も,共同開発区域の全部若しくは一部に対する主権的権利の問題を決定し又は大陸棚の境界画定に関する各締約国の立場を害するものとみなしてはならない。

    第二十九条

 両締約国は,いずれか一方の締約国の要請があつたときは,この協定の実施について協議を行う。

    第三十条

 両締約国は,この協定を実施するため,すべての必要な国内的措置をとる。

    第三十一条

l この協定は,批准されなければならない。批准書は,できる限り速やかに東京で交換されるものとする。この協定は,批准書の交換の日から効力を生ずる。
2 この協定は,五十年間効力を有するものとし,その後は,3の規定に従つて終了する時まで効力を存続する。
3 いずれの一方の締約国も,三年前に他方の締約国に対して書面による予告を与えることにより,最初の五十年の期間の終わりに又はその後いつでもこの協定を終了させることができる。
4 2の規定にかかわらず,いずれか一方の締約国が,共同開発区域において天然資源を採掘することが経済上の見地からもはや不可能であると認める場合には,両締約国は,この協定を改正するか又は終了させるかどうかについて協議する。この協定の改正又は終了について合意に達しないときは,この協定は,2に定める期間中効力を存続する。

 以上の証拠として,下名は,各自の政府から正当に委任を受けて,この協定に署名した。

 千九百七十四年一月三十日にソウルで,英語により本書二通を作成した。

 日本国のために
   後宮虎郎

 大韓民国のために
   金東祚

(附属の地図省略)

   外務省条約局編「主要条約集(昭和五十五年版)」より

〇「日韓大陸棚協定」交換公文(韓国との大陸棚南部共同開発協定 交換公文)1974年(昭和49)1月30日交換

<日本語訳>

(掘さく義務に関する交換公文)

(韓国側書簡)

(訳文)

書簡をもつて啓上いたします。本長官は、本日署名された大韓民国と日本国との間の両国に隣接する大陸棚の南部の共同開発に関する協定(以下「協定」という。)第十一条に言及するとともに、大韓民国政府に代わつて、開発権者が探査権の存続期間中に履行すべき掘さく義務に関する次の取極を確認する光栄を有します。
1(1)協定の付表に定める各小区域について認可された両締約国の開発権者は、最初の三年の期間、次の三年の期間及び残余の二年の期間中に、それぞれ、一の坑井を掘さくする。
 (2)(1)の規定の適用上、単独危険負担操業は、両締約国の開発権者によつて行われたものとみなす。
 (3)(1)の規定の適用上、第一小区域及び第九小区域は、単一の小区域を構成するものとみなす。
 (4)(1)の規定にかかわらず、第八小区域について認可された開発楮者は、最初の三年の期間中は(1)の規定に基づく義務を免除されるものとし、第二小区域、第三小区域、第四小区域又は第六小区域について認可された開発権者は、(1)の規定に基づく義務を免除される。
2 この取極は、協定の効力発生の日から適用される。
本長官は、更に、この書簡及び日本国政府に代わって前記の取極を確認する閣下の返簡が両政府間の合意を構成するものとみなすことを提案する光栄を有します。
本長官は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。
千九百七十四年一月三十日にソウルで
外務部長官 金東祚閣下

大韓民国駐在日本国
特命全権大使 後宮虎郎閣下

(日本側書簡)

(訳文)

書簡をもつて啓上いたします。本使は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。

(韓国側書簡)

本使は、更に、日本国政府に代わつて閣下の書簡に盛られた取極を確認するとともに、閣下の書簡及びこの書簡が両政府間の合意を構成するものとみなすことに同意する光栄を有します。
本使は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。
千九百七十四年一月三十日にソウルで

大韓民国駐在日本国
特命全権大使 後宮虎郎
大韓民国外務部長官 金東祚閣下

(海洋における衝突の防止に関する交換公文)

(韓国側書簡)

(訳文)

書簡をもつて啓上いたします。本長官は、本日署名された大韓民国と日本国との間の両国に隣接する大陸棚の南部の共同開発に関する協定(以下「協定」という。)第二十条に言及するとともに、大韓民国政府に代わつて、海洋における衝突の防止に関する次の取極を確認する光栄を有します。

1 いずれの締約国の政府も、自国が認可した開発権者が操業管理者として指定され及び行動する共同開発区域内の小区域において次の措置をとる。
(1)(a)協定に基づく探査が水上航行船舶によりそれらの小区域において行われる場合には、当該政府は、速やかに、その探査活動が行われる海域及び期間を他方の政府及び航海者に通報する。
   (b)航行の危険となるおそれのある固定施設(以下「固定施設」という。)が設置される場合には、当該政府は、速やかに、その固定施設の正確な位置その他航行の安全のために必要な事項(例えば、固定施設の設置中にこれに備え付けられる標識)を他方の政府及び航海者に通報する。当該政府は、固定施設が撤去され又は移転される場合にも、同様の措置をとる。
(2)固定施設であつてその上端が水面より上にあるものが設置された場合には、当該政府は次の措置がとられることを確保する。
   (a)当該固定施設には、夜間は一個以上の白燈を掲げ、そのうち少なくとも一個は周囲から視認することができるようにする。これらの燈火は、平均高潮面上十五メートル以上の高さに掲げられるものとし、モールス符号のUの信号(- - ―)に相当するせん光を最大周期十五秒で発する。これらの燈火の光度は、六千カンデラ以上とする。
   (b)当該固定施設の翼端及び上端には、夜間は三百カンデラ以上の光度を有する紅燈を掲げる。
   (c)当該固定施設には、一個以上の音響信号器を備え、その音響信号が周囲から聴取することができるようにする。これらの音響信号器は、二海里以上の通常音達距離を有するものとし、モールス符号のUの信号(- - ―)に相当する音響信号を三十秒の周期で発する。音響信号器は、気象学的視程が二海里に達しないときに用いる。
   (d)レーダー・レフレクターは、当該固定施設に近づく船舶が、その接近方向のいかんを問わず、少なくとも十海里の距離から、レーダーにより当該固定施設の存在を明確に探知することができるように設置する。
   (e)当該固定施設には、航空機との衝突を防止するため適当な標識を掲げる。
(3)水中抗井、パイプライン等の水中固定施設が設置された場合には、当該政府は、その水中固定施設に適当な標示が掲げられることを確保する。
(4)(a)二以上の固定施設の位置が相互に近接しており、(2)(a)、(b)、(c)及び(d)に規定する信号装置を固定施設のそれぞれに設置しなくとも航行の安全が確保される場合には、それらの固定施設は(2)(a)、(b)、(c)及び(d)の規定の適用上、単一の固定施設を構成するものとみなすことができる。
   (b)固定施設自体が(2)(d)に規定する条件を満たすレーダー反射効果を有する場合には、レーダー・レフレクターの設置を省略することができる。
2 この取極は、協定の效力発生の日から適用される。
3 この取極は、いずれか一方の政府が他方の政府に対し一年前に書面による予告を与えることによつて、終了させることができる。
4 両政府は、この取極が3の規定に従つて終了する前に、将来の取極を決定するために会合する。
本長官は、更に、この書簡及び日本国政府に代わつて前記の取極を確認する閣下の返簡が両政府間の合意を構成するものとみなすことを提案する光栄を有します。
本長官は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。
千九百七十四年一月三十日にソウルで

外務部長官 金東祚
大韓民国駐在日本国
特命全権大使 後宮虎郎閣下

(日本側書簡)

(訳文)

書簡をもつて啓上いたします。本使は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。

(韓国側書簡)

本使は、更に、日本国政府に代わつて閣下の書簡に盛られた取極を確認するとともに、閣下の書簡及びこの書簡が両政府間の合意を構成するものとみなすことに同意する光栄を有します。
本使は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。
千九百七十四年一月三十日にソウルで

大韓民国駐在日本国
特命全権大使 後宮虎郎
大韓民国外務部長官 金東祚

(海洋の汚染の防止及び除去に関する交換公文)

(日本側書簡)

(訳文)

書簡をもつて啓上いたします。本使は、本日署名された日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚の南部の共同開発に関する協定(以下「協定」という。)第二十条に言及するとともに、日本国政府に代わつて、共同開発区域における天然資源の探査又は採掘に関連する活動から生ずる海洋の汚染の防止及び除去に関する次の取極を確認する光栄を有します。

I

いずれの締約国の政府も、(a)自国が認可した開発権者が操業管理者として指定され及び行動する共同開発区域内の小区域における天然資源の探査又は採掘に関連する坑井及び海洋施設並びに(b)自国の国旗を掲げる船舶で共同開発区域における天然資源の探査又は採掘に関連する活動に従事しているもの(以下「船舶」という。)に関して、次の措置がとられることを確保する。

1 噴出防止装置等
(1)(a)堀さく井には、油又は天然ガスの噴出のおそれがある場合には、噴出防止装置を備える。
   (b)(a)の規定は、試油作業又は改修作業を行う場合であつて自噴採収装置を備えたときは、適用しない。
(2)(1)にいう噴出防止装置については、次の要件が満たされなければならない。
   (a)坑口に備える噴出防止装置は、開閉式のものであり、速やかに作動することができる遠隔操作式のものであつて、かつ、専用の動力源を有すること。
   (b)坑口に備える噴出防止装置の非常用の作動装置又は警報装置をドローウォークスを操縦する者の付近に備えること。
   (c)坑口に備える噴出防止装置の払線から流出する油又は天然ガスの量を調節するため、フロービーンその他の装置を備えること。
   (d)掘管、チュービングパイプ又はケーシングパイプの内部からの油又は天然ガスの噴出を防止することができる装置を備えること。
(3)(a)坑井の掘さく作業又は試油作業を行うときは、非常用の泥水又はその材料及び重泥水の作成又は泥水の性質の調整のため必要な材料を掘さく作業現場に準備する。
   (b)(a)の規定は、自噴採収装置を備えたときは、適用しない。
(4)噴出防止装置、自噴採収装置その他の坑口装置は、少なくともこの書簡の付表に定める圧力に耐えることができるものでなければならない。
(5)掘さく作業を行うときは、次の要件が満たされなければならない。
   (a)適当な深度まで坑井の掘さくを行つたときは、速やかにケーシングパイプの挿入及びセメンチングを行うこと。
   (b)セメンチングを行つたときは、加圧その他の方法によりその有効性を確認すること。
   (c)循環泥水タンク内の泥水量の異常な増減を直ちに知ることができる装置を備えておくこと。
(6)噴出防止装置につき、一箇月に少なくとも一回適当な圧力を加えた耐圧試験を行う。
(7)気象状況により掘さく施設の位置を保持することが困難になつたため、又は事故が発生し若しくは発生するおそれがあるため堀さく作業を停止する場合には、噴出防止装置を閉鎖する。
2 油の排出
(1)(a)原油、重油、重ディーゼル油、潤滑油又はこれらの油を含有する混合物(以下「油」という。)を船舶又は海洋施設から排出してはならない。
   (b)(a)の規定は、次の排出については、適用しない。
     (ⅰ)タンカー以外の船舶からの油の排出又はタンカーからのビルジの排出で、次の条件がすべて満たされるもの
      ⅰ)当該船舶又は当該タンカーが航行中であること。
      ⅱ)油分の瞬間排出率が一海里当たり六十リットル以下であること。
      ⅲ)排出する油の油分がその排出量の百万分の百未満であること。
     (ⅱ)タンカーからの油の排出で、次の条件がすべて満たされるもの
      ⅰ)当該タンカーが航行中であること。
      ⅱ)油分の瞬間排出率が一海里当たり六十リットル以下であること。
      ⅲ)一回のバラスト航海において排出される油の総量が総貨物艙積載容積の一万五千分の一以下であること。
      ⅳ)最も近い陸地から当該タンカーまでの距離が五十海里を超えていること。
     (ⅲ)洗浄された貨物油タンクからの水バラストの排出。ただし、その貨物油タンクは、そこからの排水が晴天の日に停止中のタンカーから清浄かつ平穏な海中に排出された場合に視認することができる油膜を海面に生じないほど、十分に洗浄されていることを条件とする。
(2)(1)の規定は、次のものには適用しない。
   (a)船舶若しくは海洋施設の安全を確保し、船舶、海洋施設若しくは船舶の積荷の損傷を防止し又は海上において人命を救助するための油の排出
   (b)船舶若しくは海洋施設の損傷又はやむを得ない漏出に起因する油の流出。ただし、その損傷の発生又は漏出の発見の後に、流出を防止し又は減少させるためすべての適当な措置がとられていることを条件とする。
   (c)海洋施設からの油の排出。ただし、排出する油の油分がその排出量の百万分の十未満であることを条件とする。
   (d)総トン数百五十トン未満のタンカー又はタンカー以外の総トン数五百トン未満の船舶からの油の排出
3 廃棄物の排出
(1)船舶又は海洋施設からの廃棄物を排出してはならない。
(2)(1)の規定は、次の排出については適用しない。
   (a)船舶又は海洋施設内にある者の日常生活に伴い生ずるごみ、ふん尿若しくは汚水又はこれらに類する廃棄物の排出
   (b)海洋の汚染が生ずるおそれがない方法による掘くず又は汚水の排出
   (c)海洋の汚染が生ずるおそれがない方法により、かつ、廃棄物の排出によつて海洋環境の保全が妨げられるおそれがない海域においてする船舶からの廃棄物(掘くず及び汚水を除く。)の排出
   (d)船舶若しくは海洋施設の安全を確保し、船舶、海洋施設若しくは船舶の積荷の損傷を防止し又は海上において人命を救助するための廃棄物の排出
   (e)船舶若しくは海洋施設の損傷に起因する廃棄物の排出又はやむを得ない排出。ただし、その損傷の発生又は排出の発見の後に、排出を防止し又は減少させるためすべての適当な措置がとられていることを条件とする。
4 汚染の防止及び除去
船舶又は海洋施設から大量の油が排出されたときは、汚染のひろがり及び引き続く油の排出を防止し並びに排出された油を除去するため、速やかに、措置をとらなければならない。
5 坑井の廃止
坑井を廃止するときは、坑井からの坑水その他の物質の漏出を防止するため、坑井の密閉その他の措置をとらなければならない。

1 一方の政府は、次のいずれかの事態が発生した場合には、他方の政府に対し、入手することができるすべての情報を速やかに提供しなければならない。
(a)船舶又は海洋施設からの大量の油の排出
(b)海洋施設と船舶又は他の物体との衝突
(c)危険な気象状況その他の緊急事態による海洋施設からの人員の退去
2 1(a)の事態に関する情報を提供するときは、当該政府は、他方の政府に対し、Ⅰ4の規定に従つてとられた措置をも通報する。

1 各政府は、特別な事情があるときは、Ⅰ1(2)(a)、(b)、(c)又は(d)の規定の適用について例外を認めることができる。
2 各政府は、深さ千五百メートルを超える坑井については、Ⅰ1(4)の規定の適用について例外を認めることができる。

いずれの政府も、Ⅰ4の規定に従つて措置がとられなかつた場合又はとられた措置のみによつては海洋の汚染を防止し若しくは除去するために十分ではないと認める場合には、海洋の汚染を防止し又は除去するため、必要な措置をとることができる。

両政府は、この取極の効果的な実施のため緊密に協力する。

1 この取極は、協定の效力発生の日の後六箇月を経過したとき又は両政府間で合意するこれよりも早い日から、適用される。
2 この取極は、いずれか一方の政府が他方の政府に対し一年前に書面による予告を与えることによつて、終了させることができる。
3 両政府は、この取極が2の規定に従つて終了する前に、将来の取極を決定するために会合する。

本使は、更に、この書簡及び大韓民国政府に代わつて前記の取極を確認する閣下の返簡が両政府間の合意を構成するものとみなすことを提案する光栄を有します。
本使は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

千九百七十四年一月三十日にソウルで

大韓民国駐在日本国
特命全権大使 後宮虎郎
大韓民国外務部長官 金東祚閣下

 付表
  圧力
堀さくする油層又は天然ガス層の性質 噴出防止装置 噴出防止装置以外の装置
油層又は遊離形天然ガス層であつて、その圧力が判明しているもの 密閉抗底圧力の一・五倍に相当する圧力 密閉抗口圧力の二倍に相当する圧力 
油層又は遊離形天然ガス層であつて、その圧力が判明していないもの 毎平方センチメートルにつき目的層の深度のメートル数を十で除した数の一・五倍に相当する数値の重量キログラム 密閉抗口圧力の二倍に相当する圧力 
水溶形天然ガス層 毎平方センチメートルにつき目的層の深度のメートル数を十で除した数の〇・五倍に相当する数値の重量キログラム 密閉抗口圧力の二倍に相当する圧力
     
(韓国側書簡)

(訳文)

書簡をもつて啓上いたします。本長官は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。

(日本側書簡)

本長官は、更に、大韓民国政府に代わつて閣下の書簡に盛られた取極を確認するとともに、閣下の書簡及びこの書簡が両政府間の合意を構成するものとみなすことに同意する光栄を有します。
本長官は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

千九百七十四年一月三十日にソウルで

外務部長官 金東祚
大韓民国駐在日本国
特命全権大使 後宮虎郎閣下

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