夏時刻法(なつじこくほう)は、日本において夏時間(サマータイム)を実施するために、4月(ただし、初年度は5月)第1土曜日午後12時(24時)から9月第2土曜日の翌日の午前0時(25時)までの間だけ、中央標準時に1時間を加えたタイムゾーンを使用するものでした。
太平洋戦争後の占領時において、各種占領行政を行うに際して、連合国関係者が自国と同様の制度を導入する利便性から考案されたとされています。
以後毎年実施されましたが、労働条件の悪化(残業が多くなりすぎるなど)、農業等の生活リズムの混乱などにより、国民には不評でした。そこで、1951年(昭和26)の「サンフランシスコ平和条約」の締結に伴い、翌年4月27日の占領終了に先立って、1952年(昭和27)4月11日の「夏時刻法を廃止する法律」(昭和27年4月11日法律第84号)により、4年間の実施だけで廃止されました。
人間の体の自然のリズムが狂う、寝不足になる、残業が増えて労働強化につながるなどのデメリットがあるとも言われています。
以下に、1948年(昭和23)4月28日公布・施行の「夏時刻法」の全文を掲載しておきますので、ご参照下さい。
〇夏時間(サマータイム)とは?
昼間時間の長い夏季の一定期間、国や地域単位で、標準時を1時間ないし2時間進めた時刻を使用する制度です。明るい時間を有効に利用し、省エネルギーに結びつくとされ、余暇の時間が有効に活用されるなどの結果、経済的効果もあるとされてきました。
現在、アメリカ合衆国、カナダ、メキシコ、ヨーロッパ各国、オーストラリア、ニュージーランドなどで実施されていますが、アルゼンチン、インド、トルコ、ロシア、日本、大韓民国、中華人民共和国などでは一次実施されたものの、廃止されています。
日本でも、2011年(平成23)の東日本大震災以後、省エネの観点等から、また2020年実施予定の東京オリンピックの暑さ対策などで再実施が検討されました。しかし、残業の多い日本のビジネススタイルにおいて有効なのかどうか、また、東西に長い日本で一律に時間を早めることが可能かどうか、生体リズムへの影響が大きいのではないか、時刻に関わるコンピューターシステムの改修により経費がかさむことなど疑問視する意見も多くあり、実施には至っていません。
〇「夏時刻法」(サマータイム法) 昭和23年法律第29号 1948年(昭和23)4月28日公布・施行
第一条 毎年、四月の第一土曜日の午後十二時から九月の第二土曜日の翌日の午前零時までの間は、すべて中央標準時より一時間進めた時刻(夏時刻)を用いるものとする。但し、特に中央標準時によることを定めた場合は、この限りでない。
第二条 四月の第一土曜日の翌日(日曜日)は二十三時間をもつて一日とし、九月の第二土曜日は二十五時間をもつて一日とする。
2 夏時刻の期間中その他の日はすべて二十四時間をもつて一日とする。
第三条 この法律の施行に関し、時間の計算に関する他の法律の規定の適用について必要な事項は、政令で、これを定める。
附 則
1 この法律は、公布の日から、これを施行する。
2 この法律の適用については、昭和二十三年においては、この法律の第一条及び第二条において「四月の第一土曜日」とあるのは、「五月の第一土曜日(五月一日)」とする。
「法令全書」より