城山三郎(しろやま さぶろう)は、昭和時代前期の1927年(昭和2)8月18日に、愛知県名古屋市中区で生まれましたが、本名は杉浦英一と言いました。
名古屋市立名古屋商業学校(現在の市立名古屋商業高等学校)を経て、1945年(昭和20)に愛知県立工業専門学校(現在の名古屋工業大学)に入学します。しかし、17歳で海軍特別幹部練習生として志願入隊し、特攻隊員として敗戦を迎えました。
戦後、1946年(昭和21)に東京産業大学(現在の一橋大学)予科へ入学、理論経済学を学び、卒業論文として「ケインズ革命の一考察」を書いて、1952年(昭和27)には、改名された一橋大学を卒業しました。その後帰郷し、愛知学芸大学(現在の愛知教育大学)商業科文部教官助手に就任(後に専任講師)、景気論と経済原論を担当します。
一方で小説を書き始め、経済学の知識を生かした分野を開拓、1957年(昭和32)に『輸出』で文学界新人賞受賞しました。同年末には、神奈川県茅ヶ崎市に転居し、1959年(昭和34)に『総会屋錦城』で第40回直木賞を受賞します。1963年(昭和38)に日本作家代表団としての訪中を機に、愛知学芸大を退職し、以後作家業に専念しました。
田中正造を描いた『辛酸』など、実在の人物をモデルとした伝記小説、軍隊での体験を生かした戦争小説も手掛け、『落日燃ゆ』(1974年)で、吉川英治文学賞、毎日出版文化賞、『もう,きみには頼まない―石坂泰三の世界』(1996年)で菊池寛賞、2002年(平成14)には朝日賞を受賞しましたが、紫綬褒章など国の叙勲は拒否します。
また、映像化された作品も多く、歴史小説『黄金の日日』(1978年)は、NHKの大河ドラマとして放映されました。人間を軸に、苦境の中でも志を貫く姿を描いてきたものの、2007年(平成19)3月22日に、神奈川県茅ヶ崎市内の病院において、79歳で亡くなっています。
〇城山三郎の主要な著作
・『輸出』(1957年)文学界新人賞受賞
・『総会屋錦城(きんじょう)』(1958年)直木賞受賞
・『大義の末』(1959年)
・『小説日本銀行』(1962年)
・『辛酸(しんさん)』(1962年)
・『硫黄島に死す』(1963年)
・『鼠(ねずみ)』(1966年)
・『一歩の距離――小説予科練』(1968年)
・『雄気堂々』(1972年)
・『落日燃ゆ』(1974年)吉川英治文学賞、毎日出版文化賞受賞
・『官僚たちの夏』(1975年)
・『毎日が日曜日』(1976年)
・『黄金の日日』(1978年)
・『もう,きみには頼まない―石坂泰三の世界』(1996年)菊池寛賞受賞
・『指揮官たちの特攻』(2001年)