この条約は、英語でConvention on Biological Diversity(CBD)といい、野生生物を生息環境とともに保全し、生物の多様性の維持をはかる国際条約で、「生物多様性条約」とも略されてきました。
環境保護団体の要請を受け、1987年(昭和62)から国連環境計画(UNEP)が準備を開始、1992年(平成4)5月22日に、ケニアのナイロビで開催された合意テキスト採択会議においてコンセンサス採択され、同年6月にブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催された「環境と開発に関する国連会議(地球サミット)」において、日本を含む180ヶ国によって調印されます。
1993年(平成5)5月に日本が条約を締結、同年12月29日に条約が発効し、現在では、193ヶ国とEUが締約(アメリカ合衆国は未締結)しました。
この条約の目的は、\己の多様性の保全、∪己多様性の構成要素の持続可能な利用、0篥岨餮擦陵?僂ら生ずる利益の公正で衡平な配分とされ、その達成のため、2000年(平成12)1月には「バイオセーフティに関するカルタヘナ議定書」が採択され、2004年(平成16)に発効しています。
また、2002年(平成14)のCOP6(ハーグ)では、「2010年目標」が採択されました。さらに、2010年(平成22)に第10回締約国会議(於:愛知県名古屋市)において、条約の戦略計画である「愛知目標」が採択され、5つの分野にわたり20の目標が設定され、それにあわせて、2011年から2020年までは「国連生物多様性の10年」と定められています。
尚、議定書により課された任務を遂行するなどのため、条約事務局がカナダのモントリオールに置かれました。
参考のために、以下に「生物多様性条約」の前文のみ掲載しておきます。
〇生物多様性条約(前文のみ)
「生物の多様性に関する条約」
前文
締約国は、生物の多様性が有する内在的な価値並びに生物の多様性及びその構成要素が有する生態学上、遺伝上、社会上、経済上、科学上、教育上、文化上、レクリエーション上及び芸術上の価値を意識し、生物の多様性が進化及び生物圏における生命保持の機構の維持のため重要であることを意識し、生物の多様性の保全が人類の共通の関心事であることを確認し、諸国が自国の生物資源について主権的権利を有することを再確認し、諸国が、自国の生物の多様性の保全及び自国の生物資源の持続可能な利用について責任を有することを再確認し、生物の多様性がある種の人間活動によって著しく減少していることを懸念し、生物の多様性に関する情報及び知見が一般的に不足していること並びに適当な措置を計画し及び実施するための基本的な知識を与える科学的、技術的及び制度的能力を緊急に開発する必要があることを認識し、生物の多様性の著しい減少又は喪失の根本原因を予想し、防止し及び取り除くことが不可欠であることに留意し、生物の多様性の著しい減少又は喪失のおそれがある場合には、科学的な確実性が十分にないことをもって、そのようなおそれを回避し又は最小にするための措置をとることを延期する理由とすべきではないことに留意し、更に、生物の多様性の保全のための基本的な要件は、生態系及び自然の生息地の生息域内保全並びに存続可能な種の個体群の自然の生息環境における維持及び回復であることに留意し、更に、生息域外における措置も重要な役割を果たすこと及びこの措置は原産国においてとることが望ましいことに留意し、伝統的な生活様式を有する多くの原住民の社会及び地域社会が生物資源に緊密にかつ伝統的に依存していること並びに生物の多様性の保全及びその構成要素の持続可能な利用に関して伝統的な知識、工夫及び慣行の利用がもたらす利益を衡平に配分することが望ましいことを認識し、生物の多様性の保全及び持続可能な利用において女子が不可欠の役割を果たすことを認識し、また、生物の多様性の保全のための政策の決定及び実施のすべての段階における女子の完全な参加が必要であることを確認し、生物の多様性の保全及びその構成要素の持続可能な利用のため、国家、政府間機関及び民間部門の間の国際的、地域的及び世界的な協力が重要であること並びにそのような協力の促進が必要であることを強調し、新規のかつ追加的な資金の供与及び関連のある技術の取得の適当な機会の提供が生物の多様性の喪失に取り組むための世界の能力を実質的に高めることが期待できることを確認し、更に、開発途上国のニーズに対応するため、新規のかつ追加的な資金の供与及び関連のある技術の取得の適当な機会の提供を含む特別な措置が必要であることを確認し、この点に関して後発開発途上国及び島嶼(しょ)国の特別な事情に留意し、生物の多様性を保全するため多額の投資が必要であること並びに当該投資から広範な環境上、経済上及び社会上の利益が期待されることを確認し、経済及び社会の開発並びに貧困の撲滅が開発途上国にとって最優先の事項であることを認識し、生物の多様性の保全及び持続可能な利用が食糧、保健その他増加する世界の人口の必要を満たすために決定的に重要であること、並びにこの目的のために遺伝資源及び技術の取得の機会の提供及びそれらの配分が不可欠であることを認識し、生物の多様性の保全及び持続可能な利用が、究極的に、諸国間の友好関係を強化し、人類の平和に貢献することに留意し、生物の多様性の保全及びその構成要素の持続可能な利用のための既存の国際的な制度を強化し及び補完することを希望し、現在及び将来の世代のため生物の多様性を保全し及び持続可能であるように利用することを決意して、次のとおり協定した。
(以下略)
「環境省ホームページ」より