この法律は、1957年(昭和32)6月1日に公布、同年10月1日に施行され、時々の状況に合わせて何度か改正されていますが、「優れた自然の風景地を保護するとともに、その利用の増進を図ることにより、国民の保健、休養及び教化に資するとともに、生物の多様性の確保に寄与することを目的とする」(第1条)としたものです。
自然公園審議会の設置、国立公園・国定公園・都道府県立自然公園(以上3種を自然公園という)の指定、その保護と利用、公園の事業費用の負担などについて規定し、それまで国立公園を規定していた、1931年(昭和6)制定の「国立公園法」にかわる法律として制定されました。
〇国立公園とは?
国立公園は、世界中にありますが、日本では、1957年(昭和32)に公布・施行された「自然公園法」の中で、「我が国の風景を代表するに足りる傑出した自然の風景地(海域の景観地を含む。次章第六節及び第七十四条を除き、以下同じ。)であつて、環境大臣が第五条第一項の規定により指定するものをいう。」(第2条2項)と規定している地域性公園です。
歴史的に見ると、昭和時代前期の1931年(昭和6)に制定された「国立公園法」によって、1934年(昭和9)3月16日に初めて瀬戸内海国立公園、霧島国立公園、雲仙国立公園の 3つの国立公園が指定されたのに始まります。その後、「自然公園法」に受け継がれ、徐々に指定が増えていき、2017年(平成29)3月7日に、奄美群島国立公園が指定されて、合計34ヶ所になりました。
これ等の公園は、国自らが管理していて、総面積で2,189,804ha(2017年3月31日現在)あり、国土面積に対する割合は約5.8%で、その面積の約60%が国有地となり、年間利用者数は3億5,218万人(2014年度)です。国立公園の保護区分は、大きく分けて普通地域、特別地域、特別保護地区、海域公園地区の4つがあり、その状況に応じて風致景観の維持が図られてきました。
公園の利用施設については、道路、園地、ビジターセンター、自然研究路、公衆便所、避難小屋などの基幹的な公共施設が、国費または国庫補助をもって整備が進められています。
〇国定公園とは?
日本では、1957年(昭和32)に公布・施行された「自然公園法」の中で、「国立公園に準ずる優れた自然の風景地であつて、環境大臣が第五条第二項の規定により指定するものをいう。 」(第2条3項)と規定している地域性公園です。
歴史的に見ると、昭和時代中期の1950年(昭和25)の「国立公園法」の改正によって国立公園に準ずる地域を指定する制度が設けられ、同年7月の琵琶湖国定公園、佐渡弥彦国定公園、耶馬日田英彦山国定公園の3ヶ所が指定されたのに始まります。
その後、「自然公園法」に受け継がれ、徐々に指定が増えていきましたが、中には国立公園に昇格したり、編入されたりしたものもあり、2016年(平成28)3月25日に、京都丹波高原国定公園が指定されて、差し引きして計56ヶ所になりました。
これ等の公園は、国が指定し、所在の都道府県が管理ていて、総面積で1,409,725ha(2017年3月31日現在)あり、国土面積に対する割合は約3.7%で、年間利用者数は2億7,730万人(2014年度)です。
国定公園の保護区分は、大きく分けて普通地域、特別地域、特別保護地区、海域公園地区の4つがあり、その状況に応じて風致景観の維持が図られてきました。
〇都道府県立自然公園とは?
日本では、1957年(昭和32)に公布・施行された「自然公園法」の中で、「優れた自然の風景地であつて、都道府県が第七十二条の規定により指定するものをいう。 」(第2条4項)と規定していて、都道府県が条例によつて指定することとなっている地域性公園です。
歴史的に見ると、明治時代前期の1873年(明治6)の太政官布告「社寺其ノ他ノ名区勝跡ヲ公園ト定ムル件」により、県の設置による営造物公園が整備され始めたことが端緒となりました。その後、1931年(昭和6)に制定された地域制を旨とする「国立公園法」に刺激されて、県の条例によって地域性の県立自然公園を指定する動きが出てきたのです。そして、徐々に増加していき、1957年(昭和32)に公布・施行された「自然公園法」によって、国立公園、国定公園、都道府県立自然公園と3本立てによって、地域性自然公園が体系化されて、さらに整備されることになりました。
それからは、各都道府県(群馬県を除く)で自然公園条例が制定され、指定が増えていきましたが、中には国立公園や国定公園に昇格・編入されたり、また廃止されたりしたものもあり、現在では、差し引きで合計311ヶ所になっています。
これ等の公園は、都道府県が管理していて、総面積で1,967,323ha(2017年3月31日現在)あり、国土面積に対する割合は約5.2%で、年間利用者数は2億4,243万人(2014年度)でした。
都道府県立自然公園の保護区分は、それぞれの条例で定められますが、大きく分けて普通地域、特別地域(風致の維持に重要な地域が指定され、その重要度により第一種から第三種までの区分がある)、特別保護地区、海域公園地区の4つがあり、その状況に応じて風致景観の維持が図られています。
☆「自然公園法」(抄文)昭和32年6月1日法律第161号 最終改正 平成26年6月13日法律第69号
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、優れた自然の風景地を保護するとともに、その利用の増進を図ることにより、国民の保健、休養及び教化に資するとともに、生物の多様性の確保に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 自然公園 国立公園、国定公園及び都道府県立自然公園をいう。
二 国立公園 我が国の風景を代表するに足りる傑出した自然の風景地(海域の景観地を含む。次章第六節及び第七十四条を除き、以下同じ。)であつて、環境大臣が第五条第一項の規定により指定するものをいう。
三 国定公園 国立公園に準ずる優れた自然の風景地であつて、環境大臣が第五条第二項の規定により指定するものをいう。
四 都道府県立自然公園 優れた自然の風景地であつて、都道府県が第七十二条の規定により指定するものをいう。
五 公園計画 国立公園又は国定公園の保護又は利用のための規制又は事業に関する計画をいう。
六 公園事業 公園計画に基づいて執行する事業であつて、国立公園又は国定公園の保護又は利用のための施設で政令で定めるものに関するものをいう。
七 生態系維持回復事業 公園計画に基づいて行う事業であつて、国立公園又は国定公園における生態系の維持又は回復を図るものをいう。
(国等の責務)
第三条 国、地方公共団体、事業者及び自然公園の利用者は、環境基本法 (平成五年法律第九十一号)第三条 から第五条 までに定める環境の保全についての基本理念にのつとり、優れた自然の風景地の保護とその適正な利用が図られるように、それぞれの立場において努めなければならない。
2 国及び地方公共団体は、自然公園に生息し、又は生育する動植物の保護が自然公園の風景の保護に重要であることにかんがみ、自然公園における生態系の多様性の確保その他の生物の多様性の確保を旨として、自然公園の風景の保護に関する施策を講ずるものとする。
(財産権の尊重及び他の公益との調整)
第四条 この法律の適用に当たつては、自然環境保全法 (昭和四十七年法律第八十五号)第三条 で定めるところによるほか、関係者の所有権、鉱業権その他の財産権を尊重するとともに、国土の開発その他の公益との調整に留意しなければならない。
第二章 国立公園及び国定公園
第一節 指定
(指定)
第五条 国立公園は、環境大臣が、関係都道府県及び中央環境審議会(以下「審議会」という。)の意見を聴き、区域を定めて指定する。
2 国定公園は、環境大臣が、関係都道府県の申出により、審議会の意見を聴き、区域を定めて指定する。
3 環境大臣は、国立公園又は国定公園を指定する場合には、その旨及びその区域を官報で公示しなければならない。
4 国立公園又は国定公園の指定は、前項の公示によつてその効力を生ずる。
(指定の解除及び区域の変更)
第六条 環境大臣は、国立公園の指定を解除し、又はその区域を変更しようとするときは、関係都道府県及び審議会の意見を聴かなければならない。
2 環境大臣は、国定公園の指定を解除し、又はその区域を変更しようとするときは、関係都道府県及び審議会の意見を聴かなければならない。ただし、その区域を拡張するには、関係都道府県の申出によらなければならない。
3 前条第三項及び第四項の規定は、国立公園又は国定公園の指定の解除及びその区域の変更について準用する。
第二節 公園計画
(公園計画の決定)
第七条 国立公園に関する公園計画は、環境大臣が、関係都道府県及び審議会の意見を聴いて決定する。
2 国定公園に関する公園計画は、環境大臣が、関係都道府県の申出により、審議会の意見を聴いて決定する。
3 環境大臣は、公園計画を決定したときは、その概要を官報で公示し、かつ、その公園計画を一般の閲覧に供しなければならない。
(公園計画の廃止及び変更)
第八条 環境大臣は、国立公園に関する公園計画を廃止し、又は変更しようとするときは、関係都道府県及び審議会の意見を聴かなければならない。
2 環境大臣は、国定公園に関する公園計画を廃止し、又は変更しようとするときは、関係都道府県及び審議会の意見を聴かなければならない。ただし、その公園計画を追加するには、関係都道府県の申出によらなければならない。
3 前条第三項の規定は、環境大臣が公園計画を廃止し、又は変更したときについて準用する。
(以下略)
「法令全書」より