この条約は、日本と大韓民国との国交正常化のための条約です。正式には「日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約」といい、同年の12月18日に、大韓民国のソウルで批准書が交換されて、発効しました。
前文と本文7ヶ条から成り、その内容は、前文で両国が国際連合憲章の原則に適合して緊密に協力することが重要であるとし、本文では、(1)国交正常化、(2)戦前の諸条約の無効の確認、(3)大韓民国を朝鮮における唯一の合法政府と認める、(4)両国は相互の関係で国連憲章の原則を指針とする、(5)貿易、海運、その他の通商関係に関する条約・協定締結のため、速やかに交渉を開始する、(6)民間航空運送に関する協定の締結のため、速やかに交渉を開始する、(7)批准書の速やかな交換を規定しています。また、この条約と共に、「日韓漁業協定」、「日韓請求権並びに経済協力協定」、「在日韓国人の法的地位協定」、「文化財及び文化協力に関する協定」、「紛争解決に関する交換公文」など多くの合意が両国間で署名されました。
尚、賠償金については交渉の末、無償3億ドル、政府借款2億ドル、民間借款3億ドル以上の援助資金と引き換えに、韓国側は請求権を放棄することになったのです。
しかし、この条約の不備が指摘され、南北分断の固定化、対韓経済侵略、軍事同盟志向の強化なども批判されて、日韓両国ともに国内での反対運動が巻き起こりました。
以下に、「日韓基本条約」の全文を掲載しておきます。
〇「日韓基本条約」(全文)
日韓基本条約(日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約)
日本国及び大韓民国は、
両国民間の関係の歴史的背景と、善隣関係及び主権の相互尊重の原則に基づく両国間の関係の正常化に対する相互の希望とを考慮し、
両国の相互の福祉及び共通の利益の増進のため並びに国際の平和及び安全の維持のために、両国が国際連合憲章の原則に適合して緊密に協力することが重要であることを認め、
千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約の関係規定及び千九百四十八年十二月十二日に国際連合総会で採択された決議第百九十五号(III)を想起し、
この基本関係に関する条約を締結することに決定し、よつて、その全権委員として次のとおり任命した。
日本国
日本国外務大臣 椎名悦三郎
高杉晋一
大韓民国
大韓民国外務部長官 李東元
大韓民国特命全権大使 金東祚
これらの全権委員は、互いにその全権委任状を示し、それが良好妥当であると認められた後、次の諸条を協定した。
第一条
両締約国間に外交及び領事関係が開設される。両締約国は、大使の資格を有する外交使節を遅滞なく交換するものとする。また、両締約国は、両国政府により合意される場所に領事館を設置する。
第二条
千九百十年八月二十二日以前に大日本帝国と大韓帝国との間で締結されたすべての条約及び協定は、もはや無効であることが確認される。
第三条
大韓民国政府は、国際連合総会決議第百九十五号(III)に明らかに示されているとおりの朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認される。
第四条
(a)両締約国は、相互の関係において、国際連合憲章の原則を指針とするものとする。
(b)両締約国は、その相互の福祉及び共通の利益を増進するに当たつて、国際連合憲章の原則に適合して協力するものとする。
第五条
両締約国は、その貿易、海運その他の通商の関係を安定した、かつ、友好的な基礎の上に置くために、条約又は協定を締結するための交渉を実行可能な限りすみやかに開始するものとする。
第六条
両締約国は、民間航空運送に関する協定を締結するための交渉を実行可能な限りすみやかに開始するものとする。
第七条
この条約は、批准されなければならない。批准書は、できる限りすみやかにソウルで交換されるものとする。この条件は、批准書の交換の日に効力を生ずる。
以上の証拠として、それぞれの全権委員は、この条約に署名調印した。
千九百六十五年六月二十二日に東京で、ひとしく正文である日本語、韓国語及び英語により本書二通を作成した。解釈に相違がある場合には、英語の本文による。
日本国のために
椎名悦三郎
高杉晋一
大韓民国のために
李東元
金東祚
日本外務省編「日本外交主要文書・年表(2)」より