
「ワシントン条約」(わしんとんじょうやく)は、昭和時代後期の1973年(昭和48)に、アメリカ合衆国のワシントンD.C.で採択された国際条約で、正式名称は、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」と言い、略称はサイテス(CITES)とされました。「野生動植物の一定の種が過度に国際取引に利用されることのないようこれらの種を保護する」(条約前文)ことを目的とし、本文に規制の対象となる動植物のリストが付いていて、「附属書」と呼ばれ、規制が厳しい順に「附属書I」「附属書Ⅱ」「附属書Ⅲ」にわかれ、合計約30,000種の動物を取引制限の対象としています。
1972年(昭和47)の国連人間環境会議(ストックホルム会議)において、「特定の種の野生動植物の輸出、輸入及び輸送に関する条約案を作成し、採択するために、適当な政府又は政府組織の主催による会議を出来るだけ速やかに招集すること」が勧告されました。これを受けて、アメリカ合衆国連邦政府および国際自然保護連合 (IUCN) が中心となって野生動植物の国際取引の規制のための条約作成作業を進めたものです。
1973年(昭和48)3月3日に、アメリカ合衆国のワシントンD.C.で採択され、締結国が10ヶ国になった1975年(昭和50)7月1日に発効しました。日本は、1980年(昭和55)11月4日に締約国となり、1987年(昭和62)に国内法を制定しています。
2023年(令和5)3月現在で締約したのは、183ヶ国とヨーロッパ連合(EU)となりました。締約国は毎年、取引実績報告書を作成し、事務局に提出することを義務づけられています。
以下に、「ワシントン条約」の日本語訳を掲載しておきましたので、ご参照下さい。
1972年(昭和47)の国連人間環境会議(ストックホルム会議)において、「特定の種の野生動植物の輸出、輸入及び輸送に関する条約案を作成し、採択するために、適当な政府又は政府組織の主催による会議を出来るだけ速やかに招集すること」が勧告されました。これを受けて、アメリカ合衆国連邦政府および国際自然保護連合 (IUCN) が中心となって野生動植物の国際取引の規制のための条約作成作業を進めたものです。
1973年(昭和48)3月3日に、アメリカ合衆国のワシントンD.C.で採択され、締結国が10ヶ国になった1975年(昭和50)7月1日に発効しました。日本は、1980年(昭和55)11月4日に締約国となり、1987年(昭和62)に国内法を制定しています。
2023年(令和5)3月現在で締約したのは、183ヶ国とヨーロッパ連合(EU)となりました。締約国は毎年、取引実績報告書を作成し、事務局に提出することを義務づけられています。
以下に、「ワシントン条約」の日本語訳を掲載しておきましたので、ご参照下さい。
〇「ワシントン条約」 1973年4月30日署名、1975年7月1日効力発生 1980年11月4日日本効力発生
絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(仮訳)
絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約をここに公布する。 (総理大臣署名)
絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約締約国は、
美しくかつ多様な形態を有する野生動植物が現在及び将来の世代のために保護されなければならない地球の自然体系のかけがえのない一部をなすものであることを認識し、野生動植物についてはその価値が芸術上、科学上、文化上、レクリエーション上及び経済上の見地から絶えず増大するものであることを意識し、
国民及び国家がそれぞれの国における野生動植物の最良の保護者であり、また、最良の保護者でなければならないことを認識し、更に、野生動植物の一定の種が過度に国際取引に利用されることのないようこれらの種を保護するために国際協力が重要である
ことを認識し、このため、適当な措置を緊急にとる必要があることを確信して、次のとおり協定した。
第1条 定義
この条約の適用上、文脈によって別に解釈される場合を除くほか、
(a) 「種」とは、種若しくは亜種又は種若しくは亜種に係る地理的に隔離された個体群をいう。
(b) 「標本」とは、次のものをいう。
(ⅰ) 生死の別を問わず動物又は植物の個体
(ⅱ) 動物にあっては、附属書Ⅰ若しくは附属書Ⅱに掲げる種の個体の部分若しくは派生物であって容易に識別することができるもの、又は附属書Ⅲに掲げる種の個体の部分若しくは派生物であって容易に識別することができるもののうちそれぞれの種について附属書Ⅲにより特定されるもの
(ⅲ) 植物にあっては、附属書Ⅰに掲げる種の個体の部分若しくは派生物であって容易に識別することができるもの、又は附属書Ⅱ若しくは附属書Ⅲに掲げる種の個体の部分若しくは派生物であって容易に識別することができるもののうちそれぞれの種について附属書Ⅱ若しくは附属書Ⅲにより特定されるもの
(c) 「取引」とは、輸出、再輸出、輸入又は海からの持込みをいう。
(d) 「再輸出」とは、既に輸入されている標本を輸出することをいう。
(e) 「海からの持込み」とは、いずれの国の管轄の下にない海洋環境において捕獲され又は採取された種の標本をいずれかの国へ輸送することをいう。
(f) 「科学当局」とは、第9条の規定により指定される国の科学機関をいう。
(g) 「管理当局」とは、第9条の規定により指定される国の管理機関をいう。
(h) 「締約国」とは、その国についてこの条約が効力を生じている国をいう。
第2条 基本原則
一 附属書Ⅰには、絶滅のおそれのある種であって取引による影響を受けており又は受けることのあるものを掲げる。これらの種の標本の取引は、これらの種の存続を更に脅かすことのないよう特に厳重に規制するものとし、取引が認められるのは、例外的な場合に限る。
二 附属書Ⅱには、次のものを掲げる。
(a) 現在必ずしも絶滅のおそれのある種ではないが、その存続を脅かすこととなる利用がなされないようにするためにその標本の取引を厳重に規制しなければ絶滅のおそれのある種
(b) (a)の種以外の種であって、(a)の種の標本の取引を効果的に取り締まるために規制しなければならない種
三 附属書Ⅲには、いずれかの締約国が、捕獲又は採取を防止し又は制限するための規制を自国の管轄内において行う必要があると認め、かつ、取引の取締りのために他の締約国の協力が必要であると認める種を掲げる。
四 締約国は、この条約に定めるところによる場合を除くほか、附属書Ⅰ、附属書Ⅱ及び附属書Ⅲに掲げる種の標本の取引を認めない。
第3条 附属書Ⅰに掲げる種の標本の取引に対する規制
一 附属書Ⅰに掲げる種の標本の取引は、この条に定めるところにより行う。
二 附属書Ⅰに掲げる種の標本の輸出については、事前に発給を受けた輸出許可書を事前に提出することを必要とする。輸出許可書は、次の条件が満たされた場合にのみ発給される。
(a) 輸出国の科学当局が、標本の輸出が当該標本に係る種の存続を脅かすこととならないと助言したこと。
(b) 輸出国の管理当局が、標本が動植物の保護に関する自国の法令に違反して入手されたものでないと認めること。
(c) 生きている標本の場合には、輸出国の管理当局が、傷を受け、健康を損ね若しくは生育を害し又は虐待される危険性をできる限り小さくするように準備され、かつ、輸送されると認めること。
(d) 輸出国の管理当局が、標本につき輸入許可書の発給を受けていると認めること。
三 附属書Ⅰに掲げる種の標本の輸入については、事前に発給を受けた輸入許可書及び輸出許可書又は輸入許可書及び再輸出証明書を事前に提出することを必要とする。輸入許可書は、次の条件が満たされた場合にのみ発給される。
(a) 輸入国の科学当局が、標本の輸入が当該標本に係る種の存続を脅かす目的のために行われるものでないと助言したこと。
(b) 生きている標本の場合には、輸入国の科学当局が、受領しようとする者がこれを収容し及びその世話をするための適当な設備を有していると認めること。
(c) 輸入国の管理当局が、標本が主として商業的目的のために使用されるものでないと認めること。
四 附属書Ⅰに掲げる種の標本の再輸出については、事前に発給を受けた再輸出証明書を事前に提出することを必要とする。
再輸出証明書は、次の条件が満たされた場合にのみ発給される。
(a) 再輸出国の管理当局が、標本がこの条約に定めるところにより自国に輸入されたと認めること。
(b) 生きている標本の場合には、再輸出国の管理当局が、傷を受け、健康を損ね若しくは生育を害し又は虐待される危険性をできる限り小さくするように準備され、かつ、輸送されると認めること。
(c) 生きている標本の場合には、再輸出国の管理当局が、輸入許可書の発給を受けていると認めること。
五 附属書Ⅰに掲げる種の標本の海からの持込みについては、当該持込みがなされる国の管理当局から事前に証明書の発給を受けていることを必要とする。証明書は、次の条件が満たされた場合にのみ発給される。
(a) 当該持込みがなされる国の科学当局が、標本の持込みが当該標本にかかる種の存続を脅かすこととならないと助言していること。
(b) 生きている標本の場合には、当該持込みがなされる国の管理当局が、受領しようとする者がこれを収容し及びその世話をするための適当な設備を有していると認めること。
(c) 当該持込みがなされる国の管理当局が、標本が主として商業的目的のために使用されるものでないと認めること。
第4条 附属書Ⅱに掲げる種の標本の取引に対する規制
一 附属書Ⅱに掲げる種の標本の取引は、この条に定めるところにより行う。
二 附属書Ⅱに掲げる種の標本の輸出については、事前に発給を受けた輸出許可書を事前に提出することを必要とする。輸出許可書は、次の条件が満たされた場合にのみ発給される。
(a) 輸出国の科学当局が、標本の輸出が当該標本に係る種の存続を脅かすこととならないと助言したこと。
(b) 輸出国の管理当局が、標本の動植物の保護に関する自国の法令に違反して入手されたものでないと認めること。
(c) 生きている標本の場合には、輸出国の管理当局が、傷を受け、健康を損ね若しくは生育を害し又は虐待される危険性をできる限り小さくするように準備され、かつ、輸送されると認めること。
三 締約国の科学当局は、附属書Ⅱに掲げる種の標本に係る輸出許可書の自国による発給及びこれらの標本の実際の輸出について監視する。科学当局は、附属書Ⅱに掲げるいずれかの種につき、その属する生態系における役割を果たすことのできる個体数の水準及び附属書Ⅰに掲げることとなるような当該いずれかの種の個体数の水準よりも十分に高い個体数の水準を当該いずれかの種の分布地域全体にわたって維持するためにその標本の輸出を制限する必要があると決定する場合には、適当な管理当局に対し、その標本に係る輸出許可書の発給を制限するためにとるべき適当な措置を助言する。
四 附属書Ⅱに掲げる種の標本の輸入については、輸出許可書又は再輸出証明書を事前に提出することを必要とする。
五 附属書Ⅱに掲げる種の標本の再輸出については、事前に発給を受けた再輸出証明書を事前に提出することを必要とする。
再輸出証明書は、次の条件が満たされた場合にのみ発給される。
(a) 再輸出国の管理当局が、標本がこの条約に定めるところにより自国に輸入されたと認めること。
(b) 生きている標本の場合には、再輸出国の管理当局が、傷を受け、健康を損ね若しくは生育を害し又は虐待される危険性をできる限り小さくするように準備され、かつ、輸送されると認めること。
六 附属書Ⅱに掲げる種の標本の海からの持込みについては、当該持込みがなされる国の管理当局から事前に証明書の発給を受けていることを必要とする。証明書は、次の条件が満たされた場合にのみ発給される。
(a) 当該持込みがなされる国の科学当局が、標本の持込みが当該標本にかかる種の存続を脅かすこととならないと助言していること。
(b) 生きている標本の場合には、当該持込みがなされる国の管理当局が、傷を受け、健康を損ね若しくは生育を害し又は虐待される危険性をできる限り小さくするように取り扱われると認めること。
七 六の証明書は、科学当局が自国の他の科学機関及び適当な場合には国際科学機関と協議の上行う助言に基づき、1年を超えない期間につきその期間内に持込みが認められる標本の総数に限り発給することができる。
第5条 附属書Ⅲに掲げる種の標本の取引に対する規制
一 附属書Ⅲに掲げる種の標本の取引は、この条に定めるところにより行う。
二 附属書Ⅲに掲げる種の標本の輸出で附属書Ⅲに当該種を掲げた国から行われるものについては、事前に発給を受けた輸出許可書を事前に提出することを必要とする。輸出許可書は、次の条件が満たされた場合にのみ発給される。
(a) 輸出国の管理当局が、標本が動植物の保護に関する自国の法令に違反して入手されたものでないと認めること。
(b) 生きている標本の場合には、輸出国の管理当局が、傷を受け、健康を損ね若しくは生育を害し又は虐待される危険性をできる限り小さくするように準備され、かつ、輸送されると認めること。
三 附属書Ⅲに掲げる種の標本の輸入については、四の規定が適用される場合を除くほか、原産地証明書及びその輸入が附属書Ⅲに当該種を掲げた国から行われるものである場合には輸出許可書を事前に提出することを必要とする。
四 輸入国は、再輸出に係る標本につき、再輸出国内で加工された標本であること又は再輸出される標本であることを証する
再輸出国の管理当局が発給した証明書をこの条約が遵守されている証拠として認容する。
第6条 許可書及び証明書
一 第3条から第5条までの規定に基づく許可書及び証明書の発給及び取扱いは、この条に定めるところにより行う。
二 輸出許可書には、附属書Ⅳのひな形に明示する事項を記載するものとし、輸出許可書は、その発給の日から6箇月以内に行われる輸出についてのみ使用することができる。
三 許可書及び証明書には、この条約の表題、許可書及び証明書を発給する管理当局の名称及び印章並びに管理当局の付する管理番号を表示する。
四 管理当局が発給する許可書及び証明書の写しには写しであることを明示するものとし、写しが原本の代わりに使用されるのは、写しに特記されている場合に限る。
五 許可書又は証明書は、標本の各送り荷について必要とする。
六 輸入国の管理当局は、標本の輸入について提出された輸出許可書又は再輸出証明書及びこれらに対応する輸入許可書を失効させた上で保管する。
七 管理当局は、適当かつ可能な場合には、標本の識別に資するため標本にマークを付することができる。この七の規定の適用上、「マーク」とは、権限のない者による模倣ができないように工夫された標本の識別のための消すことのできない印章、鉛封印その他の適当な方法をいう。
第7条 取引に係る免除等に関する特別規定
一 第3条から第5条までの規定は、標本が締約国の領域を通過し又は締約国の領域において積み替えられる場合には、適用しない。ただし、これらの標本が税関の管理の下にあることを条件とする。
二 第3条から第5条までの規定は、標本につき、この条約が当該標本に適用される前に取得されたものであると輸出国又は再輸出国の管理当局が認める場合において、当該管理当局がその旨の証明書を発給するときは、適用しない。
三 第3条から第5条までの規定は、手回品又は家財である標本については、適用しない。ただし、次の標本(標本の取得がこの条約の当該標本についての適用前になされたと管理当局が認める標本を除く。) については、適用する。
(a) 附属書Ⅰに掲げる種の標本にあっては、その所有者が通常居住する国の外において取得して当該通常居住する国へ輸出するもの
(b) 附属書Ⅱに掲げる種の標本にあっては、(i)その所有者が通常居住する国以外の国(その標本が野生の状態で捕獲され又は採取された国に限る。) において取得し、(ii)当該所有者が通常居住する国へ輸入し、かつ、(iii)その標本が野生の状態で捕獲され又は採取された国においてその輸出につき輸出許可書の事前の発給が必要とされているもの
四 附属書Ⅰに掲げる動物の種の標本であって商業的目的のため飼育により繁殖させたもの又は附属書Ⅰに掲げる植物の種の標本であって商業的目的のため人工的に繁殖させたものは、附属書Ⅱに掲げる種の標本とみなす。
五 動物の種の標本が飼育により繁殖させたものであり若しくは植物の種の標本が人工的に繁殖させたものであり又は動物若しくは植物の種の標本がこれらの繁殖させた標本の部分若しくは派生物であると輸出国の管理当局が認める場合には、当該管理当局によるその旨の証明書は、第3条から第5条までの規定により必要とされる許可書又は証明書に代わるものとして認容される。
六 第3条から第5条までの規定は、管理当局が発給し又は承認したラベルの付されたさく葉標本その他の保存され、乾燥され又は包埋された博物館用の標本及び当該ラベルの付された生きている植物が、管理当局に登録されている科学者又は科学施設の間で商業的目的以外の目的の下に貸与され、贈与され又は交換される場合には、適用しない。
七 管理当局は、移動動物園、サーカス、動物展、植物展その他の移動する展示会を構成する標本の移動について第3条から第5条までの要件を免除し、許可書又は証明書なしにこれらの標本の移動を認めることができる。ただし、次のことを条件とする。
(a) 輸出者又は輸入者が、標本の詳細について管理当局に登録すること。
(b) 標本が二又は五のいずれかに規定する標本に該当するものであること。
(c) 生きている標本の場合には、管理当局が、傷を受け、健康を損ね若しくは生育を害し又は虐待される危険性をできる限り小さくするように輸送され、かつ、世話をされると認めること。
第8条 締約国のとる措置
一 締約国は、この条約を実施するため及びこの条約に違反して行われる標本の取引を防止するため、適当な措置をとる。この措置には、次のことを含む。
(a) 違反に係る標本の取引若しくは所持又はこれらの双方について処罰すること。
(b) 違反に係る標本の没収又はその輸出国への返送に関する規定を設けること。
二 締約国は、一の措置に加え、必要と認めるときは、この条約を適用するためにとられた措置に違反して行われた取引に係る標本の没収の結果負うこととなった費用の国内における求償方法について定めることができる。
三 締約国は、標本の取引上必要な手続が速やかに完了することをできる限り確保する。締約国は、その手続の完了を容易にするため、通関のために標本が掲示される輸出港及び輸入港を指定することができる。締約国は、また、生きている標本につき、通過、保管又は輸送の間に傷を受け、健康を損ね若しくは生育を害し又は虐待される危険性をできる限り小さくするように適切に世話をすることを確保する。
四 一の措置がとられることにより生きている標本が没収される場合には、
(a) 当該標本は、没収した国の管理当局に引き渡される。
(b) (a)の管理当局は、当該標本の輸出国との協議の後、当該標本を、当該輸出国の負担する費用で当該輸出国に返送し又は保護センター若しくは管理当局の適当かつこの条約の目的に沿うと認める他の場所に送る。
(c) (a)の管理当局は、(b)の規定に基づく決定(保護センター又は他の場所の選定に係る決定を含む。)を容易にするため、
科学当局の助言を求めることができるものとし、望ましいと認める場合には、事務局と協議することができる。
五 四にいう保護センターとは、生きている標本、特に、没収された生きている標本の健康を維持し又は生育を助けるために管理当局の指定する施設をいう。
六 締約国は、附属書Ⅰ、附属書Ⅱ及び附属書Ⅲに掲げる種の標本の取引について次の事項に関する記録を保持する。
(a) 輸出者及び輸入者の氏名又は名称及び住所
(b) 発給された許可書及び証明書の数及び種類、取引の相手国、標本の数又は量及び標本の種類、附属書Ⅰ、附属書Ⅱ及び附属書Ⅲに掲げる種の名称並びに可能な場合には標本の大きさ及び性別七 締約国は、この条約の実施に関する次の定期的な報告書を作成し、事務局に送付する。
(a) 六(b)に掲げる事項に関する情報の概要を含む年次報告書
(b) この条約を実施するためにとられた立法措置、規制措置及び行政措置に関する2年ごとの報告書
八 七の報告書に係る情報は、関係締約国の法令に反しない限り公開される。
第9条 管理当局及び科学当局
一 この条約の適用上、各締約国は、次の当局を指定する。
(a) 自国のために許可書又は証明書を発給する権限を有する1又は2以上の管理当局
(b) 1又は2以上の科学当局
二 批准書、受諾書、承認書又は加入書を寄託する国は、これらの寄託の際に、他の締約国及び事務局と連絡する権限を有する一の管理当局の名称及び住所を寄託政府に通報する。
三 締約国は、一の規定による指定及び二の規定による通報に係る変更が他のすべての締約国に伝達されるようにこれらの変更を事務局に通報する。
四 二の管理当局は、事務局又は他の締約国の管理当局から要請があったときは、許可書又は証明書を認証するために使用する印章その他のものの図案を通報する。
第10条 この条約の締約国でない国との取引
締約国は、この条約の締約国でない国との間で輸出、輸入又は再輸出を行う場合においては、当該この条約の締約国でない国の権限のある当局が発給する文書であって、その発給の要件がこの条約の許可書又は証明書の発給の要件と実質的に一致しているものを、この条約にいう許可書又は証明書に代わるものとして認容することができる。
第11条 締約国会議
一 事務局は、この条約の効力発生の後2年以内に、締約国会議を招集する。
二 その後、事務局は、締約国会議が別段の決定を行わない限り少なくとも2年に1回通常会合を招集するものとし、締約国の少なくとも3分の1が書面により要請する場合にはいつでも特別会合を招集する。
三 締約国は、通常会合又は特別会合のいずれにおいてであるかを問わず、この条約の実施状況を検討するものとし、次のことを行うことができる。
(a) 事務局の任務の遂行を可能にするために必要な規則を作成すること及び財政規則を採択すること。
(b) 第15条の規定に従って附属書Ⅰ及び附属書Ⅱの改正を検討し及び採択すること。
(c) 附属書Ⅰ、附属書Ⅱ及び附属書Ⅲに掲げる種の回復及び保存に係る進展について検討すること。
(d) 事務局又は締約国の提出する報告書を受領し及び検討すること。
(e) 適当な場合には、この条約の実効性を改善するための勧告を行うこと。
四 締約国は、通常会合において、二の規定により開催される次回の通常会合の時期及び場所を決定することができる。
五 締約国は、いずれかの会合においても、当該会合のための手続規則を制定することができる。
六 国際連合、その他専門機関及び国際原子力機関並びにこの条約の締約国でない国は、締約国会議の会合にオブザーバーを出席させることができる。オブザーバーは、出席する権利を有するが、投票する権利は有しない。
七 野生動植物の保護、保存又は管理について専門的な能力を有する次の機関又は団体であって、締約国会議の会合にオブザーバーを出席させることを希望する旨事務局に通報したものは当該会合に出席する締約国の少なくとも3分の1が反対しない限りオブザーバーを出席させることを認められる。
(a) 政府間又は非政府のもののいずれであるかを問わず国際機関又は国際団体及び国内の政府機関又は政府団体
(b) 国内の非政府機関又は非政府団体であって、その所在する国によりこの条約の目的に沿うものであると認められたものこれらオブザーバーは、出席することを認められた場合には、出席する権利を有するが、投票する権利は有しない。
第12条 事務局
一 事務局の役務は、この条約の効力発生に伴い、国際連合環境計画事務局長が提供する。同事務局長は、適当と認める程度及び方法で、野生動植物の保護、保存及び管理について専門的な能力を有する政府間の若しくは非政府の適当な国際機関若しくは国際団体又は政府の若しくは非政府の適当な国内の機関若しくは団体の援助を受けることができる。
二 事務局は、次の任務を遂行する。
(a) 締約国の会合を準備し及びその会合のための役務を提供すること。
(b) 第15条及び第16条の規定により与えられる任務を遂行すること。
(c) 締約国会議の承認する計画に従い、この条約の実施に寄与する科学的及び技術的研究(生きている標本につき適切に準備し、輸送するための基準に関する研究及び標本の識別方法に関する研究を含む。)を行うこと。
(d) 締約国の報告書を研究すること及び締約国の報告書に関する追加の情報であって、この条約の実施を確保するために必要と認めるものを当該締約国に要請すること。
(e) この条約の目的に関連する事項について、締約国の注意を喚起すること。
(f) 最新の内容の附属書Ⅰ、附属書Ⅱ及び附属書Ⅲをこれらの附属書に掲げる種の標本の識別を容易にする情報とともに定期的に刊行し、締約国に配布すること。
(g) 締約国の利用に供するため事務局の業務及びこの条約の実施に関する年次報告書を作成し並びに締約国がその会合において要請する他の報告書を作成すること。
(h) この条約の目的を達成し及びこの条約を実施するための勧告を行うこと(科学的及び技術的性格の情報を交換するよう勧告を行うことを含む。)
(i) 締約国の与える他の任務を遂行すること。
第13条 国際的な措置
一 事務局は、受領した情報を参考にして、附属書Ⅰ又は附属書Ⅱに掲げる種がその標本の取引によって望ましくない影響を受けていると認める場合又はこの条約が効果的に実施されていないと認める場合には、当該情報を関係締約国の権限の
ある管理当局に通告する。
二 締約国は、一の通告を受けたときは、関連する事実を自国の法令の認める限度においてできる限り速やかに事務局に通報するものとし、適当な場合には、是正措置を提案する。当該締約国が調査を行うことが望ましいと認めるときは、当該締約
国によって明示的に権限を与えられた者は、調査を行うことができる。
三 締約国会議は、締約国の提供した情報又は二の調査の結果得られた情報につき、次回の会合において検討するものとし、適当と認める勧告を行うことができる。
第14条 国内法令及び国際条約に対する影響
一 この条約は、締約国が次の国内措置をとる権利にいかなる影響も及ぼすものではない。
(a) 附属書Ⅰ、附属書Ⅱ及び附属書Ⅲに掲げる種の標本の取引、捕獲若しくは採取、所持、若しくは輸送の条件に関する一層厳重な国内措置又はこれらの取引捕獲若しくは採取、所持若しくは輸送を完全に禁止する国内措置(b) 附属書Ⅰ、附属書Ⅱ及び附属書Ⅲに掲げる種以外の種の標本の取引、捕獲若しくは採取、所持若しくは輸送を制限し又は禁止する国内措置
二 この条約は、標本の取引、捕獲若しくは採取、所持又は輸送についてこの条約に定めているもの以外のものを定めている条約又は国際協定であって締約国について現在効力を生じており又は将来効力を生ずることのあるものに基づく国内措置又は締約国の義務にいかなる影響も及ぼすものではない。これらの国内措置又は義務には関税、公衆衛生、動植物の検疫の分野に関するものを含む。
三 この条約は、共通の対外関税規制を設定し若しくは維持し、かつ、その構成国間の関税規制を撤廃する同盟若しくは地域的な貿易機構を創設する条約若しくは国際協定であって現在締結されており若しくは将来締結されることのある条約若しくは国際協定の規定のうち又はこれらの条約若しくは国際協定に基づく義務のうち、これらの同盟又は地域的な貿易機構の構成国間の貿易に関するものにいかなる影響も及ぼすものではない。
四 この条約の締約国は、自国がその締約国である他の条約又は国際協定がこの条約の効力発生の時に有効であり、かつ、当該他の条約又は国際協定に基づき附属書Ⅱに掲げる海産の種に対し保護を与えている場合には、自国において登録された船舶が当該他の条約又は国際協定に基づいて捕獲し又は採取した附属書Ⅱに掲げる種の標本の取引についてこの条約に基づく義務を免除される。
五 四の規定により捕獲され又は採取された標本の輸出については、第3条から第5条までの規定にかかわらず、当該標本が四に規定する他の条約又は国際協定に基づいて捕獲され又は採取された旨の持込みがされた国の管理当局の発給する証明書のみを必要とする。
六 この条約のいかなる規定も、国際連合総会決議第2750号C(第25回会期)に基づいて招集される国際連合海洋法会議による海洋法の法典化及び発展を妨げるものではなく、また、海洋法に関し並びに沿岸国及び旗国の管轄権の性質及び範囲に関する現在又は将来におけるいずれの国の主張及び法的見解も害するものではない。
第15条 附属書Ⅰ及び附属書Ⅱの改正
一 締約国会議の会合において附属書Ⅰ及び附属書Ⅱの改正をする場合には、次の規定を適用する。
(a) 締約国は、会合における検討のため、附属書Ⅰ又は附属書Ⅱの改正を提案することができる。改正案は、会合の少なくとも150日前に事務局に通告する。事務局は、改正案の他の締約国への通告及び改正案についての関係団体との協議については、二(b)又は二(c)の規定を準用するものとし、会合の遅くとも30日前に改正案に係る回答をすべての締約国に通告する。
(b) 改正は、出席しかつ投票する締約国の3分の2以上の多数による議決で採択する。この一(b)の規定の適用上、「出席しかつ投票する締約国」とは、出席しかつ賛成票又は反対票を投ずる締約国をいう。投票を棄権する締約国は、改正の採択に必要な3分の2に算入しない。
(c) 会合において採択された改正は、会合の後90日ですべての締約国について効力を生ずる。ただし、三の規定に基づいて留保を付した締約国については、この限りでない。
二 締約国会議の会合と会合との間において附属書Ⅰ及び附属書Ⅱの改正をする場合には、次の規定を適用する。
(a) 締約国は、会合と会合との間における検討のため、この二に定めるところにより、郵便手続による附属書Ⅰ又は附属書Ⅱの改正を提案することができる。
(b) 事務局は、海産の種に関する改正案を受領した場合には、直ちに改正案を締約国に通告する。事務局は、また、当該海産の種に関連を有する活動を行っている政府間団体の提供することができる科学的な資料の入手及び当該政府間団体の実施している保存措置との調整の確保を特に目的として、当該政府間団体と協議する。事務局は、当該政府間団体の表明した見解及び提供した資料を事務局の認定及び勧告とともにできる限り速やかに締約国に通告する。
(c) 事務局は、海産の種以外の種に関する改正案を受領した場合には、直ちに改正案を締約国に通告するものとし、その後できる限り速やかに自己の勧告を締約国に通告する。
(d) 締約国は、事務局が(b)又は(c)の規定に従ってその勧告を締約国に通告した日から60日以内に、関連する科学的な資料及び情報とともに改正案についての意見を事務局に送付することができる。
(e) 事務局は、(d)の規定に基づいて受領した回答を自己の勧告とともにできる限り速やかに締約国に通告する。
(f) 事務局が(e)の規定により回答及び勧告を通告した日から30日以内に改正案に対する異議の通告を受領しない場合には、改正は、その後90日ですべての締約国について効力を生ずる。ただし、三の規定に基づいて留保を付した締約国については、この限りでない。
(g) 事務局がいずれかの締約国による異議の通告を受領した場合には、改正案は、(h)から(i)までの規定により郵便投票に付される。
(h) 事務局は、異議の通告を受領したことを締約国に通報する。
(i) 事務局が(h)の通報の日から60日以内に受領した賛成票、反対票及び棄権票の合計が締約国の総数の2分の1に満たない場合には、改正案は、更に検討の対象とするため締約国会議の次回の会合に付託する。
(j) 受領した票の合計が締約国の総数の2分の1に達した場合には、改正案は、賛成票及び反対票を投じた締約国の3分の2以上の多数による議決で採択される。
(k) 事務局は、投票の結果を締約国に通報する。
(l) 改正案が採択された場合には、改正は、事務局によるその旨の通報の日の後90日ですべての締約国について効力を生ずる。ただし、三の規定に基づいて留保を付した締約国については、この限りでない。
三 いずれの締約国も、一(c)又は二(l)に規定する90日の期間内に寄託政府に対し書面による通告を行うことにより、改正について留保を付することができる。締約国は、留保を撤回するまでの間、留保に明示した種に係る取引につきこの条約の締約国でない国として取り扱われる。
第16条 附属書Ⅲ及びその改正
一 締約国は、いつでも、その種について第2条三にいう規制を自国の管轄内において行う必要があると認める種を記載した表を事務局に提出することができる。附属書Ⅲには、附属書Ⅲに掲げるべき種を記載した表を提出した締約国の国名、これらの種の学名及び第1条(b)の規定の適用上これらの種の個体の部分又は派生物であってそれぞれの種について特定されたものを掲げる。
二 事務局は、一の規定により提出された表を受領した後できる限り速やかに当該表を締約国に送付する。当該表は、その送付の日の後90日で附属書Ⅲの一部として効力を生ずる。締約国は、当該表の受領の後いつでも、寄託政府に対して書面による通告を行うことにより、いずれの種又はいずれの種の個体の部分若しくは派生物についても留保を付することができる。
締約国は、留保を撤回するまでの間、留保に明示した種又は種の個体の部分若しくは派生物に係る取引につきこの条約の締約国でない国として取り扱われる。
三 附属書Ⅲに掲げるべき種を記載した表を提出した締約国は、事務局に対して通報を行うことによりいつでも特定の種の記載を取り消すことができるものとし、事務局は、その取消しをすべての締約国に通告する。取消しは、通告の日の後30日で効力を生ずる。
四 一の規定により表を提出する締約国は、当該表に記載された種の保護について適用されるすべての国内法令の写しを、自国がその提出を適当と認める解釈又は事務局がその提出を要請する解釈とともに事務局に提出する。締約国は、自国の表に記載された種が附属書Ⅲに掲げられている間、当該記載された種に係る国内法令の改正が採択され又は当該国内法令の新しい解釈が採用されるごとにこれらの改正又は解釈を提出する。
第17条 この条約の改正
一 事務局は、締約国の少なくとも3分の1からの書面による要請があるときは、この条約の改正を検討し及び採択するため、締約国会議の特別会合を招集する。改正は、出席しかつ投票する締約国の3分の2以上の多数による議決で採択する。
この一の規定の適用上、「出席しかつ投票する締約国」とは、出席しかつ賛成票又は反対票を投ずる締約国をいう。投票を棄権する締約国は、改正の採択に必要な3分の2に算入しない。
二 事務局は、一の特別会合の少なくとも90日前に改正案を締約国に通告する。
三 改正は、締約国の3分の2が改正の受諾書を寄託政府に寄託した後60日で、改正を受諾した締約国について効力を生ずる。その後、改正は、他の締約国についても、当該他の締約国が改正の受諾書を寄託した後60日で、効力を生ずる。
第18条 紛争の解決
一 締約国はこの条約の解釈又は適用について他の締約国との間に紛争が生じた場合には、当該紛争について当該他の締約国と交渉する。
二 締約国は、一の規定によっても紛争を解決することができなかった場合には、合意により当該紛争を仲裁、特に、ハーグ常設仲裁裁判所の仲裁に付することができる。紛争を仲裁に付した締約国は、仲裁裁定に従うものとする。
第19条 署名
この条約は、1973年4月30日までワシントンにおいて、その後は、1974年12月31日までベルンにおいて、署名のために開放しておく。
第20条 批准、受諾及び承認
この条約は、批准され、受諾され又は承認されなければならない。批准書、受諾書又は承認書は、寄託政府であるスイス連邦政府に寄託する。
第21条 加入
この条約は、加入のため無期限に開放しておく。加入書は、寄託政府に寄託する。
第22条 効力発生
一 この条約は、10番目の批准書、受諾書、承認書又は加入書が寄託政府に寄託された日の後90日で効力を生ずる。
二 この条約は、10番目の批准書、受諾書、承認書又は加入書が寄託された後に批准し、受諾し、承認し又は加入する各国については、その批准書、受諾書、承認書又は加入書が寄託された日の後90日で効力を生ずる。
第23条 留保
一 この条約については、一般的な留保は、付することができない。特定の留保は、本条、第15条及び第16条の規定に基づいて付することができる。
二 いずれの国も、批准書、受諾書、承認書又は加入書を寄託する際に、次のものについて特定の留保を付することができる。
(a) 附属書Ⅰ、附属書Ⅱ又は附属書Ⅲに掲げる種
(b) 附属書Ⅲに掲げる種の個体の部分又は派生物であって附属書Ⅲにより特定されるもの
三 締約国は、この条の規定に基づいて付した留保を撤回するまでの間、留保に明示した特定の種又は特定の種の個体の部分若しくは派生物に係る取引につきこの条約の締約国でない国として取り扱われる。
第24条 廃棄
いずれの締約国も、寄託政府に対して書面による通告を行うことにより、この条約をいつでも廃棄することができる。廃棄は、寄託政府が通告を受領した後12箇月で効力を生ずる。
第25条 寄託政府
一 中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語を等しく正文とするこの条約の原本は、寄託政府に寄託するものとし、寄託政府は、その認証謄本をこの条約に署名し又はこの条約の加入書を寄託したすべての国に送付する。
二 寄託政府は、すべての署名国及び加入国並びに事務局に対し、署名、批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託、この条約の効力発生、この条約の改正、留保及びその撤回並びに廃棄通告を通報する。
三 この条約が効力を生じたときは、寄託政府は、国際連合憲章第102条の規定による登録及び公表のためできる限り速やかにその認証謄本を国際連合事務局に送付する。
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