今日は、昭和時代中期の1962年(昭和37)に、国際労働機関(ILO)総会で「労働時間の短縮に関する勧告」(ILO第116号勧告)が採択された日です。
「労働時間の短縮に関する勧告」(ろうどうじかんのたんしゅくにかんするじょうやく)は、1962年(昭和37)の国際労働機関(ILO)総会において採択された、労働時間に関する既存国際文書を補足し、その実施を容易にすること、さらに労働時間の漸進的な短縮を達成するための実際的な方策を示すことを目的に採択された勧告でした。1935年(昭和10)6月22日に国際労働機関(ILO)総会で採択され、1957年(昭和32)6月23日に発効した、「労働時間を1週40時間に短縮することに関する条約」(ILO第47号条約) の定める週40時間労働の原則を、達成すべき社会的基準としています。
そのために、「労働時間の短縮に際しては、労働者の賃金を減少させないこと。」、「所定労働時間の漸進的短縮という原則の採用を、国内条件や慣行、また産業の条件に適した方法で促進するため、国家政策を設定し、かつ遂行すべきこと。」、「所定の労働時間が、現に1週48時間以上のところでは、48時間の水準まで短縮するための措置を直ちに取るべきこと。」、「権限ある機関は、この勧告の適用に関する諸問題について、最も代表的な労使団体と協議する慣行を作るべきこと。」などを規定していますが、農業、海運及び海上漁業には適用されないとされました。それ以外にも、恒常的(理髪店、病院、ホテル、レストラン、会社のお抱え運転手など断続的な仕事やライフラインを守る電気・ガス・水道など公共の利益に必要な場合など)、一時的(事故の発生、機械設備に関わる緊急措置、停電・災害時など)、定期的(決算期や棚卸し、観光業など季節的な要因など)な例外や超過勤務についても規定しています。しかし、日本は、採択にあたって棄権しました。
以下に、「労働時間の短縮に関する勧告」(ILO第116号勧告)の日本語訳を掲載しておきますので、ご参照下さい。
そのために、「労働時間の短縮に際しては、労働者の賃金を減少させないこと。」、「所定労働時間の漸進的短縮という原則の採用を、国内条件や慣行、また産業の条件に適した方法で促進するため、国家政策を設定し、かつ遂行すべきこと。」、「所定の労働時間が、現に1週48時間以上のところでは、48時間の水準まで短縮するための措置を直ちに取るべきこと。」、「権限ある機関は、この勧告の適用に関する諸問題について、最も代表的な労使団体と協議する慣行を作るべきこと。」などを規定していますが、農業、海運及び海上漁業には適用されないとされました。それ以外にも、恒常的(理髪店、病院、ホテル、レストラン、会社のお抱え運転手など断続的な仕事やライフラインを守る電気・ガス・水道など公共の利益に必要な場合など)、一時的(事故の発生、機械設備に関わる緊急措置、停電・災害時など)、定期的(決算期や棚卸し、観光業など季節的な要因など)な例外や超過勤務についても規定しています。しかし、日本は、採択にあたって棄権しました。
以下に、「労働時間の短縮に関する勧告」(ILO第116号勧告)の日本語訳を掲載しておきますので、ご参照下さい。
〇「労働時間の短縮に関する勧告」(ILO第116号勧告) 1962年(昭和37)6月26日採択
<日本語訳>
国際労働機関の総会は、
理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百六十二年六月六日にその第四十六回会期として会合し、
この会期の議事日程の第九議題である労働時間に関する提案の採択を決定し、
これらの提案が、
各国間における経済的及び社会的条件の差異並びに労働時間その他の労働条件の規制に関する国内慣行の差異を考慮して労働時間の漸進的短縮のための実際的な方策を示すことにより、
この実際的な方策を適用する方法を大まかに示すことにより、
千九百三十五年の週四十時間条約に掲げる原則である週四十時間の基準を、必要があれば段階的に到達すべき社会的基準として示し、かつ、千九百十九年の労働時間(工業)条約に従い所定の労働時間に最高限度を定めることにより、
労働時間に関する現行の国際文書を補足し、かつ、その実施を容易にすることを目的とする勧告の形式をとるべきであることを決定したので、
次の勧告(引用に際しては、千九百六十二年の労働時間短縮勧告と称することができる。)を千九百六十二年六月二十六日に採択する。
I 一般原則
1 各加盟国は、4の規定による所定の労働時間の漸進的短縮の原則の採用を国内の条件及び慣行並びに各産業の条件に適した方法で促進するための国内政策を設定し、かつ、実施すべきである。
2 各加盟国は、4の規定による所定の労働時間の漸進的短縮の原則の適用を、労働時間の規制のために現に用いられており又は将来採用される方法に適した手段によつて促進し、かつ、国内の条件及び慣行と両立する限り確保すべきである。
3 所定の労働時間の漸進的短縮の原則は、国内の条件及び活動の各分野の必要に最もよく適合するように、法令、労働協約若しくは仲裁裁定により、これらの各手段の組合せにより、又は国内の慣行と両立するその他の方法により実施することができる。
4 所定の労働時間は、適当なときは、労働時間の短縮が行なわれた時における労働者の賃金を減少させることなくこの勧告の前文に示す社会的基準に到達することを目標として漸進的に短縮すべきである。
5 所定の週労働時間が四十八時間をこえている場合には、労働時間の短縮が行なわれた時における労働者の賃金を減少させることなく当該労働時間をその水準まで短縮するための措置をすみやかに執るべきである。
6 所定の週労働時間が四十八時間以下である場合には、4の規定による労働時間の漸進的短縮のための方策は、各国の国内事情及び経済活動の各部門の条件に応じた方法で立案し、かつ、実施すべきである。
7 前記の方策は、次に掲げる事項を考慮すべきである。
(a) 達成された経済発展の水準並びに当該国が、総生産高又は生産性を低下させることなく、経済成長、新産業の発展又は国際貿易における競争的地位を危うくすることなく、かつ、労働者の実質所得を結局は減少させることとなるインフレーションの圧力を発生させることなく、労働時間を短縮することができる程度
(b) 最新の産業技術、オートメーション及び経営技術の適用により生産性の向上について達成された進歩及び達成される進歩
(c) 発展の途上にある国については、国民の生活水準の向上の必要
(d) 労働時間を短縮する方法について当該活動の各分野の使用者団体及び労働者団体が行なう選択
8(1) 4にいう所定の労働時間の漸進的短縮の原則は、段階的に適用することができ、その方法は、国際的に定めることを要しない。
(2) 前記の方法には、次のものを含めることができる。
(a) 時間的間隔を置いて段階的に短縮する方法
(b) 労働時間を短縮する国民経済の分野又は部門を漸進的に拡大していく方法
(c) 前記の二方法の組合せ
(d) 国内の事情及び経済活動の各部門の条件に最もよく適合するその他の方法
9 労働時間を漸進的に短縮する方策の実施にあたつては、関係労働者に特に重い肉体的若しくは精神的負担又は健康上の危険をもたらす産業及び職業に対し、その労働者がおもに女子及び年少者からなるときは特に、優先順位を与えるべきである。
10 各加盟国は、この勧告の諸規定の適用上得られた結果に関する情報を、理事会が要求するすべての細目とともに適当な間隔を置いて国際労働事務局長に送付すべきである。
II 適用の方法
A 定義
11 この勧告の適用上、所定の労働時間とは、各国で法令、労働協約若しくは仲裁裁定により又はこれらに基づいて定められる時間数をいい、そのように定められていないときは、時間数で、これを超過して労働した時間について超過勤務賃金率で賃金が支払われ又はその超過時間が関係事業所若しくは関係工程について承認された規則若しくは慣習に対する例外をなすものをいう。
B 労働時間の決定
12(1) 所定の労働時間は、特定の活動分野の特殊事情又は技術的必要により正当とされるときは、一週をこえる期間を平均して算定することが許容されるべきである。
(2) 各国の権限のある機関又は団体は、平均労働時間を算定する期間の最長限度を定めるべきである。
13(1) 性質上交替制労働により連続的に行なわなければならない工程に関しては、特別の規定を設けることができる。
(2) 前記の特別の規定は、連続する工程における所定の労働時間の平均が当該経済活動について定められた所定の労働時間をいかなる場合にもこえないように設けるべきである。
C 例外
14 各国の権限のある機関又は団体は、
(a) 恒常的に
(ⅰ) 本質的に断続的な作業について
(ⅱ) 公共の利益のために必要な特定の例外的な場合において
(ⅲ) 技術上の理由により、事業、事業の一部又は一交替の一般的操業について定められた時間の限度をこえて行なわなければならない作業について
(b) 一時的に
(ⅰ) 事故が現に発生し又は発生するおそれがある場合において
(ⅱ) 機械又は工場設備に対し緊急の処置を執るべき場合において
(ⅲ) 不可抗力の場合において
(ⅳ) 異常に繁忙な場合において
(ⅴ) 原材料の瑕疵(かし)、動力供給の中断、天候不順、原材料又は輸送施設の不足及び災害に起因する作業の全般的停止により失われた時間を埋め合わせるため
(ⅵ) 国の緊急の場合において
(c) 定期的に
(ⅰ) 年次財産目録及び年次貸借対照表の作成のため
(ⅱ) 特定の季節的業務のため
所定の労働時間に対する例外が許容される状況及び限度について定めるべきである。
15 所定の労働時間が週四十八時間をこえている場合には、権限のある機関又は団体は、14(a)(i)及び(iii)、(b)(iv)及び(v)並びに(c)(i)及び(ii)に掲げる場合において例外を許容するに先だち、その例外が真に必要であるかどうかを特に慎重に検討すべきである。
D 超過勤務
16 所定の時間をこえて労働した時間は、慣習に従つて報酬決定の際に考慮されない限り、超過勤務とみなすべきである。
17 各国の権限のある機関又は団体は、不可抗力の場合を除くほか、一定期間内に許容される総超過勤務時間数の限度を定めるべきである。
18 超過勤務を行なわせるにあたつては、十八歳未満の年少者、妊娠中の女子、授乳中の母及び身体障害者の特殊事情を十分に考慮すべきである。
19(1) 超過勤務に対しては、所定の労働時間に対するよりも高い一又は二以上の賃金率で賃金を支払うべきである。
(2) 超過勤務に対する賃金率は、各国の権限のある機関又は団体が決定すべきである。ただし、この率は、いかなる場合にも、千九百十九年の労働時間(工業)条約第六条2に定める率より低くてはならない。
E 使用者及び労働者との協議
20(1) 権限のある機関は、この勧告の適用に関する問題について最も代表的な使用者団体及び労働者団体と協議することを慣行とすべきである。
(2) 特に、次に掲げる事項については、それが各国の権限のある機関の決定にゆだねられている限り、前記の協議を行なうべきである。
(a) 8の規定に関して執るべき措置
(b) 12の規定に従つて平均労働時間を算定する期間の最長限度
(c) 13の規定に従い、交替制労働により連続的に行なわなければならない工程に関して設けることができる規定
(d) 14に定める例外
(e) 17及び19に定める超過勤務の限度及びこれに対する賃金
F 監督
21 4及び5の規定に従い労働時間を漸進的に短縮するため執る方策の効果的実施のため、
(a) 適当な監督その他の方法により労働時間に関する規定の適正な運用を確保する適当な措置を執るべきである。
(b) 使用者に対し、事業所における掲示により又は権限のある機関が承認するその他の方法により次の事項を関係労働者に周知させるよう要求すべきである。
(ⅰ) 作業の開始及び終了の時刻
(ⅱ) 作業が交替制で行なわれる場合には、各交替の開始及び終了の時刻
(ⅲ) 所定の労働時間に含まれない休憩時間
(ⅳ) 一週中の労働日
(c) 使用者に対し、権限のある機関の認める形式により、各労働者の労働時間、賃金及び超過勤務の記録を作成し、請求があつたときはその記録を検査のため提示するよう要求すべきである。
(d) この勧告の規定の実施方法に適した制裁に関して措置を執るべきである。
G 一般規定
22 この勧告は、労働者に一層有利な条件を確保し又は確保することを目的とする法令、裁定、慣習、協約又は使用者と労働者との間の協定に影響を及ぼすものではない。
23 この勧告は、農業、海上輸送及び海上漁業には適用しない。これらの経済活動の分野については、特別の規定を設けるべきである。
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