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 今日は、昭和時代前期の1941年(昭和16)に、「国家総動員法」第20条に基づき、「新聞紙等掲載制限令」(昭和16年勅令第37号)が公布・施行された日です。
 「新聞紙等掲載制限令」(しんぶんしとうけいさいせいげんれい)は、「国家総動員法」第20条(政府は勅令で新聞紙その他の出版物の掲載禁止・制限・差押えができる)に基づき、国策の遂行に重大な支障を生じるおそれのある事項などを掲載した新聞は、内大臣が発売禁止、原版も含めて差し押さえができることとした勅令(昭和16年勅令第37号)でした。本条令の第2条で、官庁の機密や軍事上の秘密事項などの掲載が禁止され、第3条で、内閣総理大臣の掲載制限や禁止の権限が明文化されています。
 これによって、総動員業務に関する官庁の機密、「軍機保護法」規定による軍事上の秘密、「軍用資源秘密保護法」の規定による資源の秘密の掲載が禁止されると共に、総理大臣に「外交に関し重大なる支障を生ずるおそれある事項」(新聞紙法第27条の強化)、「外国に対し秘匿することを要する事項」「財政経済政策の遂行に重大なる支障を生ずるおそれある事項」の制限・禁止権が与えられ、実質的には情報局がその取締権を握ることになりました。これによって、政府に都合の悪いことは書けなくなったとされます。
 さらに、同年12月13日の「新聞事業令」(昭和16年勅令1107号)公布・施行により、国策のための統制団体の設立が命じられ、同年12月19日には、「言論・出版・集会・結社等臨時取締法」を発布し、届出制だった新聞の発行を許可制に改悪しました。これらによって、政府統制下に表現の自由を抑圧し、違反行為には厳罰をもって臨むものとなります。
 本令は、太平洋戦争敗戦後の1945年(昭和20)10月6日に出された、「新聞事業令等廃止ノ件」(昭和20年勅令第562号)により、「新聞事業令」等と共に廃止されました。
 以下に、「新聞紙等掲載制限令」(昭和16年勅令第37号)を掲載しておきますので、ご参照下さい。

〇「新聞紙等掲載制限令」(昭和16年勅令第37号) 1941年(昭和16)1月11日公布・施行

第一条 国家総動員法(昭和十三年勅令第三百十七号ニ於テ依ル場合ヲ含ム以下同ジ)第二十条第一項ノ規定ニ基ク新聞紙其ノ他ノ出版物ノ掲載ニ付テノ制限又ハ禁止、同条第二項ノ規定ニ基ク新聞紙其ノ他ノ出版物ノ発売及頒布ノ禁止並ニ其ノ差押及其ノ原版ノ差押ニ付テハ本令ノ定ムル所ニ依ル

第二条 左ノ各号ノ一ニ該当スル事項ハ之ヲ新聞紙其ノ他ノ出版物ニ掲載スルコトヲ禁ズ
 一 国家総動員法第四十四条ノ規定ニ依リ当該官庁ノ指定シタル総動員業務ニ関スル官庁ノ機密
 二 軍機保護法ノ規定ニ依ル軍事上ノ秘密
 三 軍用資源秘密保護法ノ規定ニ依ル軍用資源秘密

第三条 内閣総理大臣ハ左ノ各号ノ一ニ該当スル事項ニ付示達ヲ以テ新聞紙其ノ他ノ出版物ニ対スル掲載事項ノ制限又ハ禁止ヲ為スコトヲ得
 一 外交ニ関シ重大ナル支障ヲ生ズル虞アル事項
 二 外国ニ対シ秘匿スルコトヲ要スル事項
 三 財政経済政策ノ遂行ニ重大ナル支障ヲ生ズル虞アル事項
 四 其ノ他国策ノ遂行ニ重大ナル支障ヲ生ズル虞アル事項

第四条 前二条ノ制限又ハ禁止ニ違反シタル新聞紙其ノ他ノ出版物ノ発売及頒布ノ禁止並ニ其ノ差押及其ノ原版ノ差押ハ内閣総理大臣之ヲ行フ

第五条 本令中内閣総理大臣トアルハ朝鮮、台湾、樺太又ハ南洋群島ニ在リテハ各朝鮮総督、台湾総督、樺太庁長官又ハ南洋庁長官トス

  附 則

本令ハ公布ノ日ヨリ施行ス

   「官報」より

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