
「生活保護法」(せいかつほごほう)は、昭和時代中期の1946年(昭和21)9月9日に公布(施行は同年10月1日)された、それまでの制限扶助主義から一般扶助主義として、無差別平等の保護を定めるとともに、要保護者に対する国家責任による保護を明文化した法律でした。太平洋戦争敗戦後の占領下において、戦災、引揚、離職等により多くの国民の生活が困窮状態に陥りますが、当時は一般的公的扶助法として「救護法」が存在していたものの、他に「軍事扶助法」等の特別法があったため、「救護法」による救済人員は極めて限られています。
その中で、1945年(昭和20)12月8日に、連合国最高司令官指令(SCAPIN)の一つとして、「救済並福祉計画の件」(SCAPIN-404)が発せられ、失業者や生活困窮者救済のために日本政府としての包括的な計画案を求めました。その内容は、①労働能力を有する失業者を救済の対象に含むべきこと、②救済水準と方法は充分なものでなければならないこと、③救護法を含む既存の救済諸法の抜本的な改廃を示唆していることなどとされます。
これに基づき、同月15日に「生活困窮者緊急生活援護要綱」が閣議決定され、戦災者や失業者、その家族を含む生活困窮者について、宿泊、給食などの現物の給付、生業の斡旋等を都道府県の計画に基づき、市町村単位で実施することを規定しました。これによって、国による無差別平等の最低生活の維持が打ち出されることとなり、翌年2月27日の連合国最高司令官指令「社会救済に関する覚書」(SCAPIN-775)を経て、同年9月9日に旧「生活保護法」が公布(10月1日施行)され、5種類の扶助(生活・医療・助産・正業・葬祭)が制度化されます。
しかし、同法は戦前の救貧法的色彩が強く残存しており、1949年(昭和24)9月に、社会保障制度審議会は「生活保護制度の改善強化に関する件」を政府に提出しました。その内容は、①国の保障する最低生活は健康で文化的な生活を営ませる程度のものであること、②生活困窮者の保護請求権の明示及び不服申立を法的に保障すること、③保護の欠格条項の明確化となります。
この勧告も踏まえて国会で審議の上、1950年(昭和25)5月4日に現行の「生活保護法」に全面改正されました。その後も何度かの改正を経て、現在は8種類の扶助(生活・教育・住宅・医療・出産・正業・葬祭・介護)が実施されるようになります。
以下に、1950年(昭和25)に制定当初の「生活保護法」 (昭和25年法律144号)を掲載しておきますので、ご参照下さい。
その中で、1945年(昭和20)12月8日に、連合国最高司令官指令(SCAPIN)の一つとして、「救済並福祉計画の件」(SCAPIN-404)が発せられ、失業者や生活困窮者救済のために日本政府としての包括的な計画案を求めました。その内容は、①労働能力を有する失業者を救済の対象に含むべきこと、②救済水準と方法は充分なものでなければならないこと、③救護法を含む既存の救済諸法の抜本的な改廃を示唆していることなどとされます。
これに基づき、同月15日に「生活困窮者緊急生活援護要綱」が閣議決定され、戦災者や失業者、その家族を含む生活困窮者について、宿泊、給食などの現物の給付、生業の斡旋等を都道府県の計画に基づき、市町村単位で実施することを規定しました。これによって、国による無差別平等の最低生活の維持が打ち出されることとなり、翌年2月27日の連合国最高司令官指令「社会救済に関する覚書」(SCAPIN-775)を経て、同年9月9日に旧「生活保護法」が公布(10月1日施行)され、5種類の扶助(生活・医療・助産・正業・葬祭)が制度化されます。
しかし、同法は戦前の救貧法的色彩が強く残存しており、1949年(昭和24)9月に、社会保障制度審議会は「生活保護制度の改善強化に関する件」を政府に提出しました。その内容は、①国の保障する最低生活は健康で文化的な生活を営ませる程度のものであること、②生活困窮者の保護請求権の明示及び不服申立を法的に保障すること、③保護の欠格条項の明確化となります。
この勧告も踏まえて国会で審議の上、1950年(昭和25)5月4日に現行の「生活保護法」に全面改正されました。その後も何度かの改正を経て、現在は8種類の扶助(生活・教育・住宅・医療・出産・正業・葬祭・介護)が実施されるようになります。
以下に、1950年(昭和25)に制定当初の「生活保護法」 (昭和25年法律144号)を掲載しておきますので、ご参照下さい。
〇「生活保護法」(昭和25年法律144号)1950年(昭和25)5月4日公布・施行
第一章 総則
(この法律の目的)
第一条 この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。
(無差別平等)
第二条 すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護(以下「保護」という。)を、無差別平等に受けることができる。
(最低生活)
第三条 この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。
(保護の補足性)
第四条 保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
2 民法(明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。
3 前二項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない。
(この法律の解釈及び運用)
第五条 前四条に規定するところは、この法律の基本原理であつて、この法律の解釈及び運用は、すべてこの原理に基いてされなければならない。
(用語の定義)
第六条 この法律において「被保護者」とは、現に保護を受けている者をいう。
2 この法律において「要保護者」とは、現に保護を受けているといないとにかかわらず、保護を必要とする状態にある者をいう。
3 この法律において「保護金品」とは、保護として給与し、又は貸与される金銭及び物品をいう。
4 この法律において「金銭給付」とは、金銭の給与又は貸与によつて、保護を行うことをいう。
5 この法律において「現物給付」とは、物品の給与又は貸与、医療の給付、役務の提供その他金銭給付以外の方法で保護を行うことをいう。
第二章 保護の原則
(申請保護の原則)
第七条 保護は、要保護者、その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基いて開始するものとする。但し、要保護者が急迫した状況にあるときは、保護の申請がなくても、必要な保護を行うことができる。
(基準及び程度の原則)
第八条 保護は、厚生大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。
2 前項の基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであつて、且つ、これをこえないものでなければならない
(必要即応の原則)
第九条 保護は、要保護者の年齢別、性別、健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して、有効且つ適切に行うものとする。
(世帯単位の原則)
第十条 保護は、世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとする。但し、これによりがたいときは、個人を単位として定めることができる。
第三章 保護の種類及び範囲
(種類)
第十一条 保護の種類は、左の通りとする。
一 生活扶助
二 教育扶助
三 住宅扶助
四 医療扶助
五 出産扶助
六 生業扶助
七 葬祭扶助
2 前項各号の扶助は、要保護者の必要に応じ、単給又は併給として行われる。
(生活扶助)
第十二条 生活扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、左に掲げる事項の範囲内において行われる。
一 衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの
二 移送
(教育扶助)
第十三条 教育扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、左に掲げる事項の範囲内において行われる。
一 義務教育に伴つて必要な教科書その他の学用品
二 義務教育に伴つて必要な通学用品
三 学校給食その他義務教育に伴つて必要なもの
(住宅扶助)
第十四条 住宅扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、左に掲げる事項の範囲内において行われる。
一 住居
二 補修その他住宅の維持のために必要なもの
(医療扶助)
第十五条 医療扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、左に掲げる事項の範囲内において行われる。
一 診察
二 薬剤又は治療材料
三 医学的処置、手術及びその他の治療並びに施術
四 病院又は診療所への収容
五 看護
六 移送
(出産扶助)
第十六条 出産扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、左に掲げる事項の範囲内において行われる。
一 分べんの介助
二 分べん前及び分べん後の処置
三 脱脂綿、ガーゼその他の衛生材料
(生業扶助)
第十七条 生業扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者又はそのおそれのある者に対して、左に掲げる事項の範囲内において行われる。但し、これによつて、その者の収入を増加させ、又はその自立を助長することのできる見込のある場合に限る。
一 生業に必要な資金、器具又は資料
二 生業に必要な技能の修得
三 就労のために必要なもの
(葬祭扶助)
第十八条 葬祭扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、左に掲げる事項の範囲内において行われる。
一 検案
二 死体の運搬
三 火葬又は埋葬
四 納骨その他葬祭のために必要なもの
2 左に掲げる場合において、その葬祭を行う者があるときは、その者に対して、前項各号の葬祭扶助を行うことができる。
一 被保護者が死亡した場合において、その者の葬祭を行う扶養義務者がないとき。
二 死者に対しその葬祭を行う扶養義務者がない場合において、その遺留した金品で、葬祭を行うに必要な費用を満たすことのできないとき。
第四章 保護の機関及び実施
(実施機関)
第十九条 市町村長(特別区の存する区域においては、都知事とする。以下同じ。)は、要保護者に対して、この法律の定めるところにより、保護を決定し、且つ、実施しなければならない。
2 保護は、要保護者の居住地の市町村長、居住地がないか、又は明かでないときは、現在地の市町村長が行うものとする。
3 要保護者の居住地が明かであつても、その者が急迫した状況にあるときは、その急迫した事由が止むまでは、前項の規定にかかわらず、保護は、その者の現在地の市町村長が、行うものとする。
4 前三項に規定する町村長の行う保護に関する事務は、政令の定めるところにより、他の市町村長に委託して行うことを妨げない。
(指揮及び監督機関)
第二十条 この法律の施行について、厚生大臣は都道府県知事及び市町村長を、都道府県知事は市町村長を、指揮監督する。
2 都道府県知事は、この法律に定めるその職権の一部を、その管理に属する行政庁に委任することができる。
(補助機関)
第二十一条 都道府県及び厚生大臣の指定する市町村は、この法律の施行について、都道府県知事又は市町村長の事務の執行を補助させるため、社会福祉主事を置かなければならない。
2 社会福祉主事は、事務吏員をもつて充て、政令の定める資格を有する者の中から任用しなければならない。
3 社会福祉主事の定数は、政令の定める基準により、都道府県又は市町村の条例で定める。
(協力機関)
第二十二条 民生委員法(昭和二十三年法律第百九十八号)に定める民生委員は、市町村長又は社会福祉主事から求められたときは、市町村長及び社会福祉主事の行う保護事務の執行について、これに協力するものとする。
(事務監査)
第二十三条 厚生大臣は都道府県知事及び市町村長の行うこの法律の施行に関する事務について、都道府県知事は市町村長の行うこの法律の施行に関する事務について、その指定する官吏又は吏員に、その監査を行わせなければならない。
2 前項の規定により指定された官吏又は吏員は、都道府県知事又は市町村長に対し、必要と認める資料の提出若しくは説明を求め、又は必要と認める指示をすることができる。
3 第一項の規定により指定すべき官吏又は吏員の資格については、政令で定める。
(申請による保護の開始及び変更)
第二十四条 市町村長は、保護の開始の申請があつたときは、保護の要否、種類、程度及び方法を決定し、申請者に対して書面をもつて、これを通知しなければならない。
2 前項の書面には、決定の理由を附さなければならない。
3 第一項の通知は、申請のあつた日から十四日以内にしなければならない。但し、扶養義務者の資産状況の調査に日時を要する等特別な理由ある場合には、これを三十日まで延ばすことができる。この場合には、同項の書面にその理由を明示しなければならない。
4 保護の申請をしてから三十日以内に第一項の通知がないときは、申請者は、市町村長が申請を却下したものとみなすことができる。
5 前四項の規定は、第七条に規定する者から保護の変更の申請があつた場合に準用する。
(職権による保護の開始及び変更)
第二十五条 市町村長は、要保護者が急迫した状況にあるときは、すみやかに、職権をもつて保護の種類、程度及び方法を決定し、保護を閉始しなければならない。
2 市町村長は、常に、被保護者の生活状態を調査し、保護の変更を必要とすると認めるときは、すみやかに、職権をもつてその決定を行い、書面をもつて、これを被保護者に通知しなければならない。前条第二項の規定は、この場合に準用する。
(保護の停止及び廃止)
第二十六条 市町村長は、被保護者が保護を必要としなくなつたときは、すみやかに、保護の停止又は廃止を決定し、書面をもつて、これを被保護者に通知しなければならない。第二十八条第四項又は第六十二条第三項の規定により保護の停止又は廃止をするときも、同様とする。
2 第二十四条第二項の規定は、前項の場合に準用する。
(指導及び指示)
第二十七条 市町村長は、被保護者に対して、生活の維持、向上その他保護の目的達成に必要な指導又は指示をすることができる。
2 前項の指導又は指示は、被保護者の自由を尊重し、必要の最少限度に止めなければならない。
3 第一項の規定は、被保護者の意に反して、指導又は指示を強制し得るものと解釈してはならない。
(調査及び検診)
第二十八条 市町村長は、保護の決定又は実施のため必要があるときは、要保護者の資産状況、健康状態その他の事項を調査するために、要保護者について、当該吏員に、その居住の場所に立ち入り、これらの事項を調査させ、又は当該要保護者に対して、市町村長の指定する医師若しくは歯科医師の検診を受けるべき旨を命ずることができる。
2 前項の規定によつて立入調査をうる当該吏員は、厚生省令の定めるところにより、その身分を示す証票を携帯し、且つ、関係人の請求があるときは、これを呈示しなければならない。
3 第一項の規定による立入調査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
4 市町村長は、要保護者が第一項の規定による立入調査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は医師若しくは歯科医師の検診を受けるべき旨の命令に従わないときは、保護の開始若しくは変更の申請を却下し、又は保護の変更、停止若しくは廃止をすることができる。
(調査の嘱託及び報告の請求)
第二十九条 市町村長は、保護の決定又は実施のために必要があるときは、要保護者又はその扶養義務者の資産及び収入の状況につき、官公署に調査を嘱託し、又は銀行、信託会社、要保護者若しくはその扶養義務者の雇主その他の関係人に、報告を求めることができる。
第五章 保護の方法
(生活扶助の方法)
第三十条 生活扶助は、被保護者の居宅において行うものとする。但し、これによることができないとき、これによつては保護の目的を達しがたいとき、又は被保護者が希望したときは、被保護者を養老施設、救護施設、更生施設若しくはその他の適当な施設に収容し、又はこれらの施設若しくは私人の家庭に収容を委託して行うことができる。
2 前項但書の規定は、被保護者の意に反して、収容を強制し得るものと解釈してはならない。
3 市町村長は、被保護者の親権者又は後見人がその権利を適切に行わない場合においては、その異議があつても、家庭裁判所の許可を得て、第一項但書の措置をとることができる。
2 前項の許可は、家事審判法(昭和二十二年法律第百五十二号)の適用に関しては、同法第九条第一項甲類に掲げる事項とみなす。
第三十一条 生活扶助は、金銭給付によつて行うものとする。但し、これによることができないとき、これによることが適当でないとき、その他保護の目的を達するために必要があるときは、現物給付によつて行うことができる。
2 生活扶助のための保護金品は、一月分以内を限度として前渡するものとする。但し、これによりがたいときは、一月分をこえて前渡することができる。
3 居宅において生活扶助を行う揚合の保護金品は、世帯単位に計算し、世帯主又はこれに準ずる者に対して交付するものとする。但し、これによりがたいときは、被保護者に対して個々に交付することができる。
4 収容し、又は収容を委託して生活扶助を行う場合の保護金品は、被保護者又は施設の長若しくは収容の委託を受けた者に対して交付するものとする。
(教育扶助の方法)
第三十二条 数育扶助は、金銭給付によつて行うものとする。但し、これによることができないとき、これによることが適当でないとき、その他保護の目的を達するために必要があるときは、現物給付によつて行うことができる。
2 教育扶助のための保護金品は、被保護者、その親権者若しくは後見人又は被保護者の通学する学校の長に対して交付するものとする。
(住宅扶助の方法)
第三十三条 住宅扶助は、金銭給付によつて行うものとする。但し、これによることができないとき、これによることが適当でないとき、その他保護の目的を達するために必要があるときは、現物給付によつて行うことができる。
2 住宅扶助のうち、住居の現物給付は、宿所提供施設を利用させ、又は宿所提供施設にこれを委託して行うものとする。
3 第三十条第二項の規定は、前項の場合に準用する。
4 住宅扶助のための保護金品は、世帯主又はこれに準ずる者に対して交付するものとする。
(医療扶助の方法)
第三十四条 医療扶助は、現物給付によつて行うものとする。但し、これによることができないとき、これによることが適当でないとき、その他保護の目的を達するために必要があるときは、金銭給付によつて行うことができる。
2 前項に規定する現物給付のうち、医療の給付は、医療保護施設を利用させ、又は医療保護施設若しくは第四十九条の規定により指定を受けた医療機関にこれを委託して行うものとする。
3 前項に規定する医療の給付のうち、あん摩、はり、きゆう、柔道整復等営業法(昭和二十二年法律第二百十七号)の規定によりあん摩師又は柔道整復師(以下「施術者」という。)が行うことのできる範囲の施術については、第五十五条の規定により準用される第四十九条の規定により指定を受けた施術者に委託してその給付を行うことを妨げない。
4 急迫した事情がある場合においては、被保護者は、前二頂の規定にかかわらず、指定を受けない医療機関について医療の給付を受け、又は指定を受けない施術者について施術の給付を受けることができる。
5 医療扶助のための保護金品は、被保護者に対して交付するものとする。
(出産扶助の方法)
第三十五条 出産扶助は、金銭給付によつて行うものとする。但し、これによることができないとき、これによることが適当でないとき、その他保護の目的を達するために必要があるときは、現物給付によつて行うことができる。
2 前項但書に規定する現物給付のうち、助産の給付は、第五十五条の規定により準用される第四十九条の規定により指定を受けた助産婦に委託して行うものとする。
3 前条第四項及び第五項の規定は、出産扶助について準用する。
(生業扶助の方法)
第三十六条 生業扶助は、金銭給付によつて行うものとする。但し、これによることができないとき、これによることが適当でないとき、その他保護の目的を達するために必要があるときは、現物給付によつて行うことができる。
2 前項但書に規定する現物給付のうち、就労のために必要な施設の供用及び生業に必要な技能の授与は、授産施設若しくは訓練を目的とするその他の施設を利用させ、又はこれらの施設にこれを委託して行うものとする。
3 生業扶助のための保護金品は、被保護者に対して交付するものとする。但し、施設の供用又は技能の授与のために必要な金品は、授産施設の長に対して交付することができる。
(葬祭扶助の方法)
第三十七条 葬祭扶助は、金銭給付によつて行うものとする。但し、これによることができないとき、これによることが適当でないとき、その他保護の目的を達するために必要があるときは、現物給付によつて行うことができる。
2 葬祭扶助のための保護金品は、葬祭を行う者に対して交付するものとする。
第六章 保護施設
(種類)
第三十八条 保護施設の種類は、左の通りとする。
一 養老施設
二 救護施設
三 更生施設
四 医療保護施設
五 授産施設
六 宿所提供施設
2 養老施設は、老衰のため独立して日常生活を営むことのできない要保護者を収容して、生活扶助を行うことを目的とする施設とする。
3 救護施設は、身体上又は精神上著しい欠陥があるために独立して日常生活の用を弁ずることのできない要保護者を収容して、生活扶助を行うことを目的とする施設とする。
4 更生施設は、身体上又は精神上の理由により養護及び補導を必要とする要保護者を収容して、生活扶助を行うことを目的とする施設とする。
5 医療保護施設は、医療を必要とする要保護者に対して、医療の給付を行うことを目的とする施設とする。
6 授産施設は、身体上若しくは精神上の理由又は世帯の事情により就業能力の限られている要保護者に対して、就労又は技能の修得のために必要な機会及び便宜を与えて、その自立を助長することを目的とする施設とする。
7 宿所提供施設は、住居のない要保護者の世帯に対して、住宅扶助を行うことを目的とする施設とする。
(保護施設の基準)
第三十九条 保護施設は、その施設の設備及び運営並びにその施設における被保護者の数及びこれとその施設における利用者の総数との割合が厚生大臣の定める最低の基準以上のものでなければならない。
(都道府県及び市町村の保護施設)
第四十条 都道府県は、保護施設を設置することができる。
2 市町村は、保護施設を設置しようとするときは、都道府県知事の認可を受けなければならない。
3 都道府県知事は、前項の認可の申請があつた場合に、その施設が前条の基準に適合するものであるときは、これを認可しなければならない。
4 保護施設を設置した都道府県及び市町村は、現に収容中の被保護者の保護に支障のない限り、その保護施設を廃止し、又はその事業を縮少し、若しくは休止することができる。
5 都道府県及び市町村の行う保護施設の設置及び廃止は、条例で定めなければならない。
(公益法人の保護施設の設置)
第四十一条 都道府県及び市町村の外、保護施設は、民法第三十四条の規定により設立した法人(以下「公益法人」という。)でなければ設置することができない。
2 公益法人は、保護施設を設置しようとするときは、あらかじめ、左に掲げる事項を記載した申請書を都道府県知事に提出して、その認可を受けなければならない。
一 保護施設の名称及び種類
二 設置者たる法人の名称並びに代表者の氏名、住所及び資産状況
三 寄附行為、定款その他の基本約款
四 建物その他の設備の規模及び構造
五 取扱定員
六 事業開始の予定年月日
七 経営の責任者及び保護の実務に当る幹部職員の氏名及び経歴
八 経理の方針
3 都道府県知事は、前項の認可の申請があつた場合に、その施設が第三十九条に規定する基準の外、左の各号の基準に適合するものであるときは、これを認可しなければならない。
一 設置しようとする者の経済的基礎が確実であること。
二 その保護施設の主として利用される地域における要保護者の分布状況からみて、当該保護施設の設置が必要であること。
三 保護の実務に当る幹部職員が厚生大臣の定める資格を有するものであること。
4 第一項の認可をするに当つて、都道府県知事は、その保護施設の存続期間を限り、又は保護の目的を達するために必要と認める条件を附することができる。
5 第二項の認可を受けた公益法人は、同項第一号又は第三号から第八号までに掲げる事項を変更しようとするときは、あらかじめ、都道府県知事の認可を受けなければならない。この認可の申請があつた場合には、第三項の規定を準用する。
(公益法人の保護施設の休止又は廃止)
第四十二条 公益法人は、保護施設を休止し、又は廃止しようとするときは、あらかじめ、その理由、現に収容中の被保護者に対する措置及び財産の処分方法を明かにし、且つ、第七十条、第七十二条又は第七十四条の規定により交付を受けた交付金又は補助金に残余額があるときは、これを返還して、休止又は廃止の時期について都道府県知事の認可を受けなければならない。
(指導)
第四十三条 都道府県知事は、保護施設の運営について、必要な指導をしなければならない。
2 公益法人の設置した保護施設に対する前項の指導については、市町村長が、これを補助するものとする。
(報告の徴収及び立入検査)
第四十四条 都道府県知事は、保護施設の管理者に対して、その業務又は会計の状況その他必要と認める事項の報告を命じ、又は当該吏員に、その施設に立ち入り、その管理者からその設備及び会計書類、診療録その他の帳簿書類の閲覧及び説明を求めさせ、若しくはこれを検査させることができる。
2 第二十八条第二項及び第三項の規定は、前項の規定による立入検査について準用する。
(改善命令等)
第四十五条 厚生大臣は都道府県に対して、都道府県知事は市町村に対して、左に掲げる事由があるときは、その保護施設の設備若しくは運営の改善、その事業の停止若しくは保護施設の廃止を命じ、又は第四十条第二項の認可を取り消すことができる。
一 その保護施設が第三十九条に規定する基準に適合しなくなつたとき。
二 その保護施設が存立の目的を失うに至つたとき。
三 その保護施設がこの法律若しくはこれに基く命令又はこれらに基いてする処分に違反したとき。
2 都道府県知事は、公益法人に対して、左に掲げる事由があるときは、その保護施設の設備若しくは運営の改善若しくはその事業の停止を命じ、又は第四十一条第二項の認可を取り消すことができる。
一 その保護施設が前項各号の一に該当するとき。
二 その保護施設が第四十一条第三項各号に規定する基準に適合しなくなつたとき。
三 その保護施設の経営につき営利を図る行為があつたとき。
四 正当な理由がないのに、第四十一条第二項第六号の予定年月日(同条第五項の規定により変更の認可を受けたときは、その認可を受けた予定年月日)までに事業を開始しないとき。
五 第四十一条第五項の規定に違反したとき。
3 都道府県知事は、前項の規定により、事業の停止を命じ、又は認可を取り消す場合には、当該保護施設の設置者又はその代理人の出頭を求めて、公開による聴聞を行わなければならない。この場合においては、聴聞をしようとする期日の十四日前までに当該処分をすべき理由、聴聞の日時及び場所を当該保護施設の設置者に通告し、且つ、聴聞の期日及び場所を公示しなければならない。
4 聴聞においては、当該保護施設の設置者又はその代理人は、自己又は本人のために釈明し、且つ、有利な証拠を提出することができる。
5 都道府県知事は、当該保護施設の設置者又はその代理人が正当な理由がなくて聴聞に応じなかつたときは、聴聞を行わないで第二項の規定による処分をすることができる。
(管理規程)
第四十六条 保護施設の設置者は、その事業を開始する前に、左に掲げる事項を明示した管理規程を定めなければならない。
一 事業の目的及び方針
二 職員の定数、区分及び職務内容
三 その施設を利用する者に対する処遇方法
四 その施設を利用する者が守るべき規律
五 被収容者に作業を課する場合には、その作業の種類、方法、時間及び収益の処分方法
六 その他施設の管理についての重要事項
2 都道府県以外の者は、前項の管理規程を定めたときは、すみやかに、これを都道府県知事に届け出なければならない。届け出た管理規程を変更しようとするときも、同様とする。
3 都道府県知事は、前項の規定により届け出られた管理規程の内容が、その施設を利用する者に対する保護の目的を達するために適当でないと認めるときは、その管理規程の変更を命ずることができる。
(保護施設の義務)
第四十七条 保護施設は、市町村長から保護のための委託を受けたときは、正当の理由なくして、これを拒んではならない。
2 保護施設は、要保護者の収容又は処遇に当り、人種、信条、社会的身分又は門地により、差別的又は優先的な取扱をしてはならない。
3 保護施設は、これを利用する者に対して、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制してはならない。
4 保護施設は、当該吏員が第四十四条の規定によつて行う立入検査を拒んではならない。
(保護施設の長)
第四十八条 保護施設の長は、常に、その施設を利用する者の生活の向上及び更生を図ることに努めなければならない。
2 保護施設の長は、その施設を利用する者に対して、管理規程に従つて必要な指導をすることができる。
3 都道府県知事は、必要と認めるときは、前項の指導を制限し、又は禁止することができる。
4 保護施設の長は、その施設を利用する被保護者について、保護の変更、停止又は廃止を必要とする事由が生じたと認めるときは、すみやかに、市町村長に、これを届け出なければならない。
第七章 医療機関及び助産機関
(医療機関の指定)
第四十九条 厚生大臣は、国の開設した病院又は診療所についてその主務大臣の同意を得て、都道府県知事は、その他の病院若しくは診療所又は医師、歯科医師若しくは薬剤師について開設者又は本人の同意を得て、この法律による医療扶助のための医療を担当させる機関を指定する。
(指定医療機関の義務)
第五十条 前条の規定により指定を受けた医療機関(以下「指定医療機関」という。)は、厚生大臣の定めるところにより、懇切丁寧に被保護者の医療を担当しなければならない。
2 指定医療機関は、被保護者の医療について、都道府県知事の行う指導に従わなければならない。
(指定の辞退及び取消)
第五十一条 指定医療機関は、三十日以上の予告期間を設けて、その指定を辞退することができる。
2 指定医療機関が、前条の規定に違反したときは、厚生大臣の指定した医療機関については厚生大臣が、都道府県知事の指定した医療機関については都道府県知事が、その指定を取り消すことができる。
3 厚生大臣又は都道府県知事は、前項の規定により指定を取消す場合には、当該医療機関の開設者又は本人に対して弁明の機会を与えなければならない。この場合においては、あらかじめ、書面をもつて、弁明をなすべき日時、場所及び当該処分をなすべき理由を通知しなければならない。
(診療方針及び診療報酬)
第五十二条 指定医療機関の診療方針及び診療報酬は、指定医療機関の所在する市町村(特別区を含む。この条において以下同じ。)に国民健康保険(特別国民健康保険組合又は社団法人の行うものを除く。以下同じ。)が行われているときは、その診療方針及び診療報酬の例により、指定医療機関の所在する市町村に国民健康保険が行われていないときは、健康保険の診療方針及び診療報酬の例によるものとする。
2 前項に規定する診療方針及び診療報酬によることのできないとき、及びこれによることを適当としないときの診療方針及び診療報酬は、厚生大臣の定めるところによる。
(医療費審査)
第五十三条 都道府県知事は、指定医療機関の診療内容及び診療報酬の請求を随時審査し、且つ、指定医療機関が前条の規定によつて請求することのできる診療報酬の額を決定することができる。
2 指定医療機関は、都道府県知事の行う前項の決定に従わなければならない。
3 都道府県知事は、第一項の規定により指定医療機関の請求することのできる診療報酬の額を決定するに当つては、社会保険診療報酬支払基金法(昭和二十三年法律第二十九号)に定める審査委員会又は医療に関する審査機関で厚生省令で定めるものの意見を聴かなければならない。
(報告の徴収及び立入検査)
第五十四条 都道府県知事は、診療内容及び診療報酬を審査するため必要があるときは、指定医療機関の管理者に対して、必要と認める事項の報告を命じ、又は当該吏員に、当該医療機関について実地に、その設備若しくは診療録その他の帳簿書類を検査させることができる。
2 第二十八条第二項及び第三項の規定は、前項の規定による検査について準用する。
(助産機関等への準用)
第五十五条 第四十九条から第五十一条までの規定は、この法律による出産扶助のための助産を担当する助産婦並びにこの法律による医療扶助のための施術を担当するあん摩師及び柔道整復師について、第五十二条及び第五十三条の規定は、医療保護施設について準用する。
第八章 被保護者の権利及び義務
(不利益変更の禁止)
第五十六条 被保護者は、正当な理由がなければ、既に決定された保護を、不利益に変更されることがない。
(公課禁止)
第五十七条 被保護者は、保護金品を標準として租税その他の公課を課せられることがない。
(差押禁止)
第五十八条 被保護者は、既に給与を受けた保護金品又はこれを受ける権利を差し押えられることがない。
(譲渡禁止)
第五十九条 被保護者は、保護を受ける権利を譲り渡すことができない。
(生活上の義務)
第六十条 被保護者は、常に、能力に応じて勤労に励み、支出の節約を図り、その他生活の維持、向上に努めなければならない。
(届出の義務)
第六十一条 被保護者は、収入、支出その他生計の状況について変勧があつたとき、又は居住地若しくは世帯の構成に異動があつたときは、すみやかに、市町村長にその旨を届け出なければならない。
(指示等に従う義務)
第六十二条 被保護者は、市町村長が、第三十条第一項但書の規定により、被保護者を収容し、若しくは収容を委託して保護を行うことを決定したとき、又は第二十七条の規定により、被保護者に対し、必要な指導又は指示をしたときは、これに従わなければならない。
2 保護施設を利用する被保護者は、第四十六条の規定により定められたその保護施設の管理規程に従わなければならない。
3 市町村長は、被保護者が前二項の規定による義務に違反したときは、保護の変更、停止又は廃止をすることができる。
4 市町村長は、前項の規定により保護の変更、停止又は廃止の処分をする場合には、当該被保護者に対して弁明の機会を与えなければならない。この場合においては、あらかじめ、当該処分をしようとする理由、弁明をすべき日時及び場所を通知しなければならない。
(費用返還義務)
第六十三条 被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した市町村に対して、すみやかに、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において市町村長の定める額を返還しなければならない。
第九章 不服の申立
(都道府県知事に対する不服の申立)
第六十四条 被保護者又は保護の開始若しくは変更の申請をした者は、市町村長のした保護に関する処分に対して不服があるときは、その決定のあつた日から三十日以内に、書面をもつて、当該市町村長を経由し、都道府県知事に不服の申立をすることができる。
2 市町村長は、前項の規定による不服の申立があつたときは、不服申立書を受け取つた日から十日以内に、意見書及び関係書類を添えて、これを都道府県知事に送付しなければならない。
3 都道府県知事は、特にやむを得ない理由があると認めたときは、第一項の不服申立の期限を経過した後においてもその申立を受理することができる。
(都道府県知事の決定)
第六十五条 都道府県知事は、前条第二項の規定による不服申立書の送付を受けたときは、必要な審査を行い、不服の申立が理由がないと認めるときは、決定をもつて、これを却下し、不服の申立が理由があると認めるときは、決定をもつて、市町村長のした処分を取り消し、若しくは変更し、又は市町村長に対し期間を定めて必要な保護の決定をすべきことを命じなければならない。
2 前項の都道府県知事の決定は、不服申立書の送付を受けた日から四十日以内に、書面をもつて、不服申立人及び当該市町村長に通知しなければならない。
3 第二十四条第四項の規定は、前項の期間内に決定の通知がなかつた場合に準用する。
(厚生大臣に対する不服の申立)
第六十六条 第六十四条の規定により不服の申立をした者は、前条の決定に対してなお不服があるときは、その決定の通知を受けた日から六十日以内に、書面をもつて、当該都道府県知事を経由し、厚生大臣に不服の申立をすることができる。
2 都道府県知事は、前項の規定による不服の申立があつたときは、不服申立書を受け取つた日から十日以内に、意見書及び関係書類を添えて、これを厚生大臣に送付しなければならない。
3 厚生大臣は、特にやむを得ない理由があると認めたときは、第一項の不服申立の期限を経過した後においてもその申立を受理することができる。
(厚生大臣の裁決)
第六十七条 厚生大臣は、前条第二項の規定による不服申立書の送付を受けたときは、必要な審査を行い、不服の申立が理由がないと認めるときは、裁決をもつて、これを却下し、不服の申立が理由があると認めるときは、裁決をもつて、都道府県知事の決定を取り消し、又は変更すべき点を指示して、事件を都道府県知事に差し戻さなければならない。
2 前項の厚生大臣の裁決は、不服申立書の送付を受けた日から六十日以内に、書面をもつて、不服申立人及び当該都道府県知事に通知しなければならない。
3 第二十四条第四項の規定は、前項の期間内に裁決の通知がなかつた場合に準用する。
(手続)
第六十八条 この章に定める不服の申立、審査、決定及び裁決の手続については、政令で定める。
(訴の提起)
第六十九条 この法律に基く行政庁の決定又は裁決に不服のある者は、その処分に関し行政庁の行つた事実の認定及び法律の適用につき行政事件訴訟特例法(昭和二十三年法律第八十一号)の定めるところにより、裁判所に訴を提起することができる。
第十章 費用
(市町村の支弁)
第七十条 市町村(特別区の存する区域においては、都とする。以下同じ。)は、左の各号に掲げる費用を支弁しなければならない。
一 この法律の施行に伴い必要な市町村の人件費及び事務費(以下「行政費」という。)
二 第二十二条の規定による民生委員の職務執行に対する実費弁償に要する費用(以下「民生委員費」という。)
三 第十九条第二項又は第四項の規定による保護の実施に要する費用(以下「保護費」という。)
四 第三十条第一項但書、第三十三条第二項又は第三十六条第二項の規定により被保護者を保護施設に収容し、若しくは収容を委託し、又は保護施設を利用させ、若しくは保護施設にこれを委託した場合に、これに伴つて必要な保護施設の事務費(以下「保護施設事務費」という。)
五 第三十条第一項但書の規定により被保護者を適当な施設に収容し、又はその収容を適当な施設若しくは私人の家庭に委託した場合に、これに伴つて必要な事務費(以下「委託事務費」という。)
六 第四十条第二項の規定により市町村が設置した保護施設の設備に要する費用(以下「設備費」という。)
(都道府県の支弁)
第七十一条 都道府県は、左の各号に掲げる費用を支弁しなければならない。
一 この法律の施行に伴い必要な都道府県の行政費
二 第四十条第一項の規定により都道府県が設置した保護施設の設備費
(繰替支弁)
第七十二条 市町村は、政令の定めるところにより、その区域内に所在する保護施設、指定医療機関その他これらに準ずる施設で厚生大臣の指定するものに対し、他の市町村が支弁する保護費及び保護施設事務費を、一時繰替支弁しなければならない。
2 第十九条第三項の規定による保護が行われた場合においては、被保護者の居住地の市町村が保護費、保護施設事務費及び委託事務費を支弁し、現在地の市町村が一時これを繰替支弁しなければならない。
(都道府県の負担)
第七十三条 都道府県は、政令の定めるところにより、左の各号に掲げる費用を負担しなければならない。
一 第七十条第二号の民生委員費の四分の一
二 第七十条第三号から第五号まで並びに前条第二項の保護費、保護施設事務費及び委託事務費の十分の二。但し、被保護者が同一市町村に引き続き一年以上居住しているものであるとき、又は現に被保護者と同居しているその者の扶養義務者が現に居住している市町村に引き続き一年以上居住しているものであるときは、その十分の一
三 第七十条第六号の設備費の四分の一
2 前項第二号の期間の計算について必要な事項は、厚生省令で定める。
(都道府県の補助)
第七十四条 都道府県は、左に掲げる場合においては、第四十一条の規定により設置した保護施設の修理、改造、拡張又は整備に要する費用の四分の三以内を補助することができる。
一 その保護施設を利用することがその地域における被保護者の保護のため極めて効果的であるとき。
二 その地域に都道府県又は市町村の設置する同種の保護施設がないか、又はあつてもこれに収容若しくは供用の余力がないとき。
2 第四十三条から第四十五条までに規定するものの外、前項の規定により補助を受けた保護施設に対する監督については、左の各号による。
一 厚生大臣は、その保護施設に対して、その業務又は会計の状況について必要と認める事項の報告を命ずることができる。
二 厚生大臣及び都道府県知事は、その保護施設の予算が、補助の効果を上げるために不適当と認めるときは、その予算について、必要な変更をすべき旨を指示することができる。
三 厚生大臣及び都道府県知事は、その保護施設の職員が、この法律若しくはこれに基く命令又はこれらに基いてする処分に違反したときは、当該職員を解職すべき旨を指示することができる。
(国の負担)
第七十五条 国は、政令の定めるところにより、左の各号に掲げる費用を負担しなければならない。
一 第七十条第二号の民生委員費の二分の一
二 第七十条第三号から第五号まで並びに第七十二条第二項の保護費、保護施設事務費及び委託事務費の十分の八
三 第七十条第六号の設備費の二分の一
四 第七十一条第二号の設備費の二分の一
五 第七十四条第一項の規定により都道府県が補助した設備費の三分の二
(遺留金品の処分)
第七十六条 第十八条第二項の規定により葬祭扶助を行う場合においては、市町村長は、その死者の遺留の金銭及び有価証券を保護費に充て、なお足りないときは、遺留の物品を売却してその代金をこれに充てることができる。
2 市町村は、前項の費用について、その遺留の物品の上に他の債権者の先取特権に対して優先権を有する。
(費用の徴収)
第七十七条 被保護者に対して民法の規定により扶養の義務を履行しなければならない者があるときは、その義務の範囲内において、保護費を支弁した市町村の長は、その費用の全部又は一部を、その者から徴収することができる。
2 前項の場合において、扶養義務者の負担すべき額について、市町村長と扶養義務者の間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、市町村長の申立により家庭裁判所が、これを定める。
3 前項の処分は、家事審判法の適用については、同法第九条第一項乙類に掲げる事項とみなす。
第七十八条 不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせた者があるときは、保護費を支弁した市町村の長は、その費用の全部又は一部を、その者から徴収することができる。
(返還命令)
第七十九条 国又は都道府県は、左に掲げる場合においては、補助金又は負担金の交付を受けた保護施設の設置者に対して、既に交付した補助金又は負担金の全部又は一部の返還を命ずることができる。
一 補助金又は負担金の交付条件に違反したとき。
二 詐偽その他不正な手段をもつて、補助金又は負担金の交付を受けたとき。
三 保護施設の経営について、営利を図る行為があつたとき。
四 保護施設が、この法律若しくはこれに基く命令又はこれらに基いてする処分に違反したとき。
(返還の免除)
第八十条 市町村長は、保護の変更、廃止又は停止に伴い、前渡した保護金品の全部又は一部を返還させるべき場合において、これを消費し、又は喪失した被保護者に、やむを得ない事由があると認めるときは、これを返還させないことができる。
第十一章 雑則
(後見人選任の請求)
第八十一条 被保護者が未成年者又は禁治産者である場合において、親権者及び後見人の職務を行う者がないときは、市町村長は、すみやかに、後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。
(実施命令)
第八十二条 この法律で政令に委任するものを除く外、この法律の実施のための手続その他その執行について必要な細則は、厚生省令で定める。
(罰則)
第八十三条 不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせた者は、三年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。但し、刑法(明治四十年法律第四十五号)に正条があるときは、刑法による。
第八十四条 第四十四条第一項、第五十四条第一項若しくは第七十四条第二項第一号の規定による報告を怠り、若しくは虚偽の報告をし、又は第二十八条第一項(要保護者が違反した場合を除く。)、第四十四条第一項若しくは第五十四条第一項の規定による当該吏員の調査若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、五万円以下の罰金に処する。
2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても前項の刑を科する。但し、法人の役員(理事、取締役その他これに準ずべき者をいう。)又は人(人が無能力者であるときは、その法定代理人とする。)がその法人又は人の代理人又は使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため相当の注意を怠らなかつたことの証明があつたときは、その法人又は人についてはこの限りでない。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行し、昭和二十五年五月一日以降の給付について適用する。
(生活保護法の廃止)
2 生活保護法(昭和二十一年法律第十七号。以下「旧法」という。)は、廃止する。
(経過規定)
3 この法律の施行前においてされた保護の決定は、この法律に基いてされたものとみなす。
4 この法律の施行前において、都道府県の設置した保護施設及び旧法第七条の規定により認可された市町村又は公益法人の設置した保護施設は、この法律に基いて設置され、又は認可された保護施設とみなす。
5 市町村及び公益法人以外の者で、この法律の施行の際現に旧法第七条第二項の規定による認可を受けて保護施設を経営する者が、この法律の施行後引き続きその保護施設を経営するときは、この法律の施行後三月間は、その保護施設は、この法律に基いて認可された保護施設とみなす。
6 この法律の施行前において、生活保護法施行令(昭和二十一年勅令第四百三十八号)第六条又は第七条の規定により厚生大臣の指定した医療施設並びに市町村長の指定した医師、歯科医師、薬剤師及び助産婦は、この法律に基いて厚生大臣又は都道府県知事の指定した医療機関及び助産機関とみなす。
7 この法律の施行前にした違反行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
(社会保険診療報酬支払基金法の一部改正)
8 社会保険診療報酬支払基金法の一部を次のように改正する。
第十三条第二項を次のように改める。
3 基金は、前二項の業務を行う場合には、定款の定めるところにより各保険者(前項の場合においては都道府県知事)とそれぞれ契約を締結するものとする。
第十三条第一項の次に次の一項を加える。
2 基金は、前項に定める業務の外、生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)第五十三条第三項の規定により指定医療機関の請求することのできる診療報酬の額の決定について意見を求められたときは、意見を述べることができる。
第十四条第一項中「前条第一項第三号」の下に「及び第二項」を加える。
第十四条の三第二項の次に次の一項を加える。
3 前二項において診療担当者とあるのは、第十三条第二項の規定において指定医療機関の提出する診療報酬請求書に関する場合においては、当該指定医療機関とする。
第十九条中「各保険者」の下に「(第十三条第二項の場合においては都道府県知事)」を加える。
(登録税法の一部改正)
9 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第十九条第十四号の次に次の一号を加える。
十四ノ二 生活保護法ニヨル保護施設ノ経営ヲ目的トスル法人ガ保護施設ノ用ニ供スル土地及ビ建物ノ権利ノ取得又ハ所有権ノ保存ノ登記
(読替規定)
10 他の法令中に旧法の規定を掲げている場合において、この法律中にこれらの規定に相当する規定があるときは、政令で特別な規定をする場合を除く外、各々この法律中のこれらの規定に相当する規定を指しているものとみなす。
「衆議院ホームページ」より
〇同じ日の過去の出来事(以前にブログで紹介した記事)
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1550年(天文19) | 室町幕府12代将軍足利義晴の命日(新暦5月20日) | 詳細 |
1881年(明治14) | 「小学校教則綱領」が制定される | 詳細 |
1913年(大正2) | 函館大正2年大火で、1,532戸が焼失する | 詳細 |
1949年(昭和24) | GHQにより「国税行政の再編成に関する覚書」 (SCAPIN-2001) が出される | 詳細 |
1976年(昭和51) | 30件の郷土芸能が初の重要無形民俗文化財に指定される | 詳細 |