aikokuirohakaruta-re
 今日は、昭和時代前期の太平洋戦争下、1943年(昭和18)に、東条英機内閣によって、「大東亜要員錬成要綱」が閣議決定された日です。
 「大東亜要員錬成要綱」(だいとうあよういんれんせいようこう)は、大東亜共栄圏の地域(日本国内および既存の支配地、満州国や新たな占領下地域含む)において、新秩序を建設するための人材育成方針でした。そのための大東亜要員に対して、錬成を実施するとしています。
 錬成は、心身・技術などを鍛えて立派なものにすることですが、ナチス‐ドイツにならって皇国民を鍛え上げることを主眼にしたもので、1941年(昭和16)3月1日の「国民学校令」公布によって、第一条に「国民学校ハ皇国ノ道二則リテ初等普通教育ヲ施シ国民ノ基礎的錬成ヲ為スヲ以テ目的トス」と定められました。その内容は、①国民精神を体認し、国体に対する確固たる信念を有し、皇国の使命に対する自覚を有していること、②透徹せる理知的能力を有し、合理創造の精神を体得し、もって国運の進展に貢献しうること、③かっ達剛健な心身と献身奉公の実践力とを有していること、④高雅な情操と芸術的、技能的な表現力を有し、国民生活を充実する力を有すること、⑤産業の国家的意義を明らかにし、勤労を愛好し、職業報国の実践力を有していること。とされています。
 また、大東亜共栄圏の新たな占領地では、皇民化教育と称して、日本人以外の民族に対して同化教育を行い、言語統制、日本語標準語の公用語化、教育現場においては方言や各民族語の使用は控えられ、教育勅語の「奉読」、奉安殿の設置等による教育、国旗掲揚や国歌斉唱などを通じた日本人意識の涵養が実施され、外地における神社(台湾神社、朝鮮神宮等)の建立や参拝奨励など、国家神道と宗教政策(日本の宗教参照)の推進、その他、軍人への敬礼や宮城遥拝等も行われました。
 以下に、「大東亜要員錬成要綱」を全文掲載しておきますので、ご参照下さい。

〇「大東亜要員錬成要綱」1943年(昭和18)2月5日閣議決定

一、方針
大東亜要員ノ錬成ハ肇国ノ大精神ニ基キ大東亜ニ新秩序ヲ建設スル為之ガ礎石タル人材ヲ養成スルコトヲ目途トス

二、要領
(一)大東亜要員ノ練成ニ当リテハ大東亜新秩序建設ノ真義ニ徹セシメ之ヲ顕現スルニ必要ナル不抜ノ実践力ト不撓ノ敢闘精神ヲ涵養スルト共ニ現地民ノ悦服ヲカチ得ル人格ノ陶冶ニソノ重点ヲ指向スルモノトス
(二)大東亜要員ノ錬成ハ左ノモノニ対シ実施スルモノトス
 (イ)新ニ大東亜地域ニ進出セントスル者
 (ロ)現ニ大東亜地域ニ進出シアル者
 (ハ)日本国内ニ於テ大東亜建設ニ直接関係アル業務ニ従事スル者
(三)大東亜要員ノ錬成ハ左ニ依リ之ヲ行フ
 (イ)日本国内
  一、大東亜要員就中中堅指導者ニ対シテハ国家的施設(興亜錬成所又ハ興南錬成所)ニ於テ之ガ錬成ニ任ズル者トス
  二、前号ニ依ル錬成ヲ受ケザル者ニ対シテハ大東亜省指導ノ下ニ公私錬成機関ヲシテ所要ノ錬成ヲ為サシムルモノトス
 (ロ)大東亜地域内(満洲国及南方占領地ヲ除ク) 
  一、各界ノ中堅指導者ニ対シテハ大東亜省現地機関ニ於テ現地主要地点ニ錬成機関ヲ設置シ之ガ錬成ニ任ズルモノトス
  二、前号ニ依ル錬成ヲ受ケザルニ対シテハ大東亜省現地機関指導ノ下ニ公私錬成機関ヲシテ所要ノ錬成ヲ為サシムルモノトス
 (ハ)満洲国内ニ於テハ差当リ満洲国側ニ於テ既存ノ錬成組織ニヨリ錬成ヲ行フモノトス
 (ニ)南方占領地ニ於テハ差当リ軍ニ於テ軍所属錬成施設ニ依ル錬成ヲ行フモノトス

三、措置
(一)大東亜省以外ノ官庁ニ於テ直接若シクハ間接ニ経営スル大東亜要員錬成施設ハ可成速ニ大東亜省ニ移管スルモノトス
(二)公私団体又ハ他人ノ経営ニ属スル錬成施設ニシテ大東亜要員ノ錬成ヲ主タル目的トスルモノニ対シテハ大東亜省ニ於テ指導シ別途調整乃至統合方攻究スルモノトス

    「国立国会図書館リサーチ・ナビ」より

〇同じ日の過去の出来事(以前にブログで紹介した記事)

1898年(明治31)小説家尾崎士郎の誕生日詳細
1913年(大正2) 第30帝国議会衆議院本会議において、尾崎行雄の桂首相弾劾演説が行われる詳細
1920年(大正8)八幡製鉄所で職工2万4千人がストライキに入る(八幡製鉄所争議)詳細
1936年(昭和11)日本職業野球聯盟が設立される(プロ野球の日)詳細
1981年(昭和56)恒久的輸送機関として初めての新交通システムとなる神戸新交通ポートアイランド線が開業する詳細