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 今日は、明治時代中頃の1891年(明治24)に、刑法学者・弁護士小野清一郎の生まれた日です。
 小野清一郎(おの せいいちろう)は、岩手県盛岡市で、盛岡小野組の一族であった、父・小野房二郎の長男として生まれました。盛岡中学校(盛岡一高の前身)を経て、旧制第一高校(東京大学教養学部の前身)を卒業し、東京帝国大学法科大学独法科へ進みます。
 在学中に、主観的犯罪論にたつ牧野英一から教えを受け、1917年(大正6)に首席で卒業後、補東京地方裁判所検事の検事職、予備検事となりました。1919年(大正8)に司法官補に任命され、東京帝国大学法科大学助教授を兼ね、1922年(大正11)には、東京帝国大学法学部教授に昇任します。
 刑法および刑事訴訟法を講じましたが、客観主義の刑法学者として、主観主義刑法学を唱える恩師の牧野英一と対峙しました。道義的責任の観念を重視し、旧派の刑法理論を体系的に展開し、日本特有の法理を説きます。
 1933年(昭和8)に博士論文「刑法に於ける名誉の保護」によって、東京帝国大学より法学博士を得、欧米留学へ出発、1936年(昭和11)に帰国しました。太平洋戦争後の1946年(昭和21)に戦時下の言論活動のため、公職追放により免官、教職不適格教授指定を受け、翌年に弁護士登録して、1948年(昭和23)の極東国際軍事裁判(東京裁判)では、海軍側被告人の弁護人を務めます。
 1955年(昭和30)に東京第一弁護士会会長となり、1956年(昭和31)には、法務省特別顧問、刑法改正準備会会長ともなりました。1957年(昭和32)に愛知学院大学教授となり、1958年(昭和33)には、東京大学名誉教授、日本学士院会員ともなります。
 1965年(昭和40)に勲一等瑞宝章、1971年(昭和46)に仏教伝道文化賞、1972年(昭和47)には、文化勲章を受章するなど数々の栄誉にも輝きました。1974年(昭和49)に、法制審議会刑事法特別部会で「改正刑法草案」を答申しますが、立法化には至っていません。
 一方で、仏教や民俗学にも造詣が深く、『仏教と現代思想』(1926年)、『歎異抄講話』(1975年)などの著作も成しましたが、1986年(昭和61)3月9日に、東京において、95歳で亡くなり、正三位、勲一等旭日大綬章を追贈されました。

〇小野清一郎の主要な著作

・『刑事訴訟法講義』(1924年)
・『仏教と現代思想』(1926年)
・『刑法講義各論』(1928年)
・『法理学と“文化”の概念』(1928年)
・『刑事訴訟法』(1928年)
・『刑法講義総論』(1932年)
・『刑法に於ける名誉の保護』(1934年) 
・『日本法理の自覚的展開』(1942年) 
・『刑法概論』(1952年)
・『犯罪構成要件の理論』(1953年)
・『刑法と法哲学』(1971年)
・『歎異抄講話』(1975年)

☆小野清一郎関係略年表

・1891年(明治24)1月10日 岩手県盛岡市で、小野房二郎の長男として生まれる
・1917年(大正6) 東京帝国大学法科大学独法科を首席で卒業し、補東京地方裁判所検事の検事職、予備検事となる
・1919年(大正8) 久札田益喜や岸井寿郎と共に司法官補に任命され、東京帝国大学法科大学助教授を兼ねる
・1922年(大正11) 東京帝国大学法学部教授となる
・1933年(昭和8) 博士論文「刑法に於ける名誉の保護」によって、東京帝国大学より法学博士を得、欧米留学へ出発する
・1936年(昭和11) 欧米留学から帰国する
・1946年(昭和21) 公職追放により免官、教職不適格教授指定を受ける
・1947年(昭和22) 弁護士登録する
・1948年(昭和23) 極東国際軍事裁判(東京裁判)では、海軍側被告人の弁護人を務める
・1951年(昭和26) 公職追放が解除される
・1955年(昭和30) 東京第一弁護士会会長となる
・1956年(昭和31) 法務省特別顧問、刑法改正準備会会長となる
・1957年(昭和32) 愛知学院大学教授となる
・1958年(昭和33) 東京大学名誉教授、日本学士院会員となる
・1965年(昭和40) 勲一等瑞宝章を受章する
・1971年(昭和46) 仏教伝道文化賞を受賞する
・1972年(昭和47) 文化勲章を受章する
・1974年(昭和49) 法制審議会刑事法特別部会で改正刑法草案を答申する
・1977年(昭和52) 愛知学院大学教授を辞める
・1980年(昭和55) 刑法改正準備会会長を辞める
・1986年(昭和61)3月9日 東京において、95歳でなくなり、正三位、勲一等旭日大綬章を追贈される

〇同じ日の過去の出来事(以前にブログで紹介した記事)

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