今日は、昭和時代中期の1947年(昭和22)に、「職業安定法」が公布(施行は同年12月1日)された日です。
「職業安定法」(しょくぎょうあんていほう)は、「日本国憲法」に規定された国民の労働する権利を保障するため、各人に能力に応じた適当な職業に就く機会を与えることによって就職や転職の円滑化を図ることを目的にした法律でした。公共職業安定所その他の職業紹介、職業指導、労働者の募集、労働者供給事業などについて規定しています。
「雇用保険法」や「職業訓練法(現在の職業能力開発促進法)」とあいまって労働者の雇用保障の実現を目ざすものとなります。労働権(日本国憲法27条)や職業選択の自由(日本国憲法22条)を保障する観点から、求職者に適切な就労の機会を与えることを重視してきました。
以下に、「職業安定法」(昭和22年法律第141号)の制定当初の条文を全文掲載しておきますので、ご参照下さい。
「雇用保険法」や「職業訓練法(現在の職業能力開発促進法)」とあいまって労働者の雇用保障の実現を目ざすものとなります。労働権(日本国憲法27条)や職業選択の自由(日本国憲法22条)を保障する観点から、求職者に適切な就労の機会を与えることを重視してきました。
以下に、「職業安定法」(昭和22年法律第141号)の制定当初の条文を全文掲載しておきますので、ご参照下さい。
〇「職業安定法」(昭和22年法律第141号) ※制定当初の条文
第一章 総則
(法律の目的)
第一条 この法律は、公共に奉仕する公共職業安定所その他の職業安定機関が、関係行政庁又は関係団体の協力を得て、各人に、その有する能力に適当な職業に就く機会を与えることによつて、工業その他の産業に必要な労働力を充足し、以て職業の安定を図るとともに、経済の興隆に寄与することを目的とする。
(職業選択の自由)
第二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、職業を自由に選択することができる。
(均等待遇)
第三条 何人も、人種、国籍、信条、性別、社会的身分、門地、従前の職業、労働組合の組合員であること等を理由として、職業紹介、職業補導等について、差別的取扱を受けることがない。但し、労働組合法の規定によつて、雇用主と労働組合との間に締結された労働協約に別段の定のある場合は、この限りでない。
(政府の行う業務)
第四条 政府は、第一条の目的を達成するために、左の業務を行う。
一 国民の労働力の需要供給の適正な調整を図ること及び国民の労働力を最も有効に発揮させるために必要な計画を樹立すること。
二 政府以外の者の行う職業紹介、労働者の募集又は労働者供給事業を労働者及び公共の利益を増進するように、指導監督すること。
三 求職者に対し、迅速に、その能力に適当な職業に就くことをあつ旋すること。
四 求職者に対し、必要な職業指導又は職業補導を行うこと。
五 労働力の需要供給に関する情報その他の資料を集め、又はこれを周知させること。
六 個人、団体、学校又は関係行政庁の協力を得て、公共職業安定所の業務の運営の改善向上を図ること。
七 失業保険法の規定によつて、給付を受けるべき者について、職業紹介、職業指導又は職業補導を行い、失業保険制度の健全な運用を図ること。
(定義)
第五条 この法律で職業紹介とは、求人及び求職の申込を受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあつ旋することをいう。
この法律で職業指導とは、職業に就こうとする者に対し、その者に適当な職業の選択を容易にさせ、及びその職業に対する適応性を大ならしめるために必要な実習、指示、助言その他の指導を行うことをいう。
この法律で職業補導とは、特別の知識技能を要する職業に就こうとする者に対し、その職業に就くことを容易にさせるために必要な知識技能を授けることをいう。
この法律で労働者の募集とは、労働者を雇用しようとする者が、自ら又は他人をして、労働者となろうとする者に対し、その被用者となることを勧誘することをいう。
この法律で労働者供給とは、供給契約に基いて労働者を他人に使用させることをいう。
第二章 政府の行う職業紹介、職業指導及び職業補導
第一節 通則
(職業安定局及び職業安定事務所)
第六条 労働省職業安定局長は、労働大臣の指揮監督を受け、この法律の施行に関する事項について、職業安定事務所長及び都道府県知事を指揮監督するとともに、公共職業安定所の指揮監督に関する基準の制定、重要産業に対する労働者募集計画の樹立及び実施、失業対策の企画及び実施、労働力の需給供給を調整するための主要労働力需要供給圏の決定、職業指導及び職業補導に関する政策の樹立その他この法律の施行に関し必要な事務を掌り、所属の職員を指揮監督する。
労働大臣は、必要があると認めるときは、職業安定事務所を設置し、二以上の都道府県にわたる業務の連絡に当らせ、又は公共職業安定所関係の事務に従事する都道府県の職員に対し、その技術に関する事務について、適当な指示若しくは助言をさせることができる。
(都道府県知事の権限)
第七条 都道府県知事は、労働大臣の指揮監督を受け、この法律の施行に関し、公共職業安定所の業務の連絡統一に関する業務を掌り、所部の職員及び公共職業安定所長を指揮監督する。
(公共職業安定所)
第八条 政府は、職業紹介、職業指導、職業補導、失業保険その他この法律の目的を達成するために必要な事項を行わせるために、無料で公共に奉仕する公共職業安定所を設置する。
公共職業安定所は、労働大臣の管理に属する。
公共職業安定所長は、都道府県知事の指揮監督を受けて、所務を掌理し、所属の職員を指揮監督する。
公共職業安定所の位置、名称、管轄区域、事務取扱の範囲、職員の定員その他公共職業安定所について必要な事項は、労働大臣がこれを定める。
(職員の任用その他の人事)
第九条 公共職業安定所その他の職業安定機関の行う業務を効果あらしめるために、国、都道府県又は公共職業安定所において、専らこの法律を施行する業務に従事する官吏その他の職員は、労働大臣の定める資格又は経験を有する者でなければならない。
前項に規定する官吏その他の職員については、職業安定機関に通ずる一定の基準によつて、勤続年数の計算及び補職、給与その他の人事を行い、並びにその意に反して、職業安定機関以外の機関の職に転じさせることはないものとする。
第一項に規定する国の官吏その他の職員は、労働大臣がこれを任命し、同項に規定する都道府県及び公共職業安定所の二級官である官吏は、都道府県知事の内申に基いて、労働大臣がこれを任命し、同項に規定する都道府県及び公共職業安定所の三級官である官吏その他の職員は、都道府県知事がこれを任命する。
(連絡委員)
第十条 公共職業安定所の業務を補助させるために、連絡委員を置く。
前項の連絡委員は、都道府県知事が、これを命ずる。
前二項に定めるものの外、連絡委員について必要な事項は、命令でこれを定める。
(市町村長の職務)
第十一条 市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)は、公共職業安定所長の指示に従い、左の事務を行う。
一 公共職業安定所に直接申し込むことのできない求人又は求職の申込について、これを公共職業安定所に取り次ぐこと。
二 求人者又は求職者の身元等の調査に関し、公共職業安定所から照会があつた場合これを調査すること。
三 公共職業安定所からの求人又は求職に関する通報について、これを周知させること。
(職業安定委員会)
第十二条 公共職業安定所の業務その他この法律の施行に関する重要事項を審議させるために、中央職業安定委員会、都道府県職業安定委員会及び特別地区職業安定委員会を置く。
労働大臣は、前項に規定する職業安定委員会の外、関係都道府県知事の申請に基いて必要があると認めるときは、都道府県内の一部を管轄区域とする地区職業安定委員会を置くことができる。
中央職業安定委員会は、労働大臣の諮問に、特別地区職業安定委員会は、労働大臣又は関係都道府県知事の諮問に、都道府県及び地区職業安定委員会は、関係都道府県知事の諮問に応じて第一項に規定する事項を調査審議する外、必要に応じ、関係行政庁に建議することができる。
公共職業安定所長は、関係がある特別地区職業安定委員会及び地区職業安定委員会に対し、意見を求めることができる。
職業安定委員会は、労働者を代表する者、雇用主を代表する者及び公益を代表する者、各々同数でこれを組織する。
職業安定委員会の委員のうち一名以上は、女子でなければならない。
中央職業安定委員会の委員は、労働大臣がこれを命じ、都道府県職業安定委員会、特別地区職業安定委員会及び地区職業安定委員会の委員は、関係都道府県知事が推薦した者について、労働大臣がこれを命ずる。
都道府県職業安定委員会、特別地区職業安定委員会及び地区職業安定委員会は、一箇月に一回以上、中央職業安定委員会は、三箇月に一回以上、これを招集しなければならない。
職業安定委員会は、必要があると認めるときは、その業務に関する事項について、関係行政庁に、報告を求めることができる。
職業安定委員会の委員には、旅費、日当及び宿泊料を支給するものとする。
前項の旅費、日当及び宿泊料の金額は、両議院の労働委員会の合同審査会の議を経て、国会の議決を得なければならない。その金額を変更するときも同様とする。
前各項に定めるものの外、職業安定委員会について必要な事項は、命令でこれを定める。
(業務報告の様式)
第十三条 職業安定局長は、都道府県及び公共職業安定所が、この法律の規定によつてなす業務報告の様式を定めなければならない。
都道府県及び公共職業安定所の業務報告は、前項の様式に従つて、これをしなければならない。
(労働力の需給に関する調査)
第十四条 職業安定局長は、郡道府県及び公共職業安定所の労働力の需要供給に関する調査報告により、雇用及び失業の状況に関する資料を集め、その研究調査の結果を公表するとともに、研究調査の結果に基いて、労働力の需要供給の調整を図り、以て雇用量を増大することに努めなければならない。
(職業調査及び産業に対する奉仕)
第十五条 職業安定局長は、労働者の募集、選考、配置転換等に関する問題の処理について、雇用主から指導を求められた場合においては、職業に関する調査の結果に基いて、その処理に必要な資料、方法及び基準を指示し、以て産業の進展に奉仕することに努めなければならない。
職業安定局長は、公共職業安定所に共通して使用されるべき標準職業名を定め、職業解説及び職業分類表を作成しなければならない。
第二節 職業紹介
(求人の申込)
第十六条 公共職業安定所は、いかなる求人の申込も、これを受理しなければならない。但し、その申込の内容が法令に違反するとき、又はその申込の内容をなす賃金、労働時間その他の労働条件が、通常の労働条件と比べて、著しく不適当であると認めるときは、その申込を受理しないことができる。
公共職業安定所は、必要があると認めるときは、求人者に対し、その求人数、労働条件その他求人の条件について、指導することができる。
(求職の申込)
第十七条 公共職業安定所は、いかなる求職の申込についても、これを受理しなければならない。但し、その申込の内容が法令に違反するときは、その申込を受理しないことができる。
公共職業安定所は、必要があると認めるときは、求職者に対し、その就職先、労働条件、就職地その他求職の条件について、指導することができる。
公共職業安定所は、特殊な業務に対する求職者の適否を決定するため必要があると認めるときは、試問及び技能の検査を行うことができる。
(労働条件等の明示)
第十八条 求人者は、求人の申込に当り、公共職業安定所に対し、公共職業安定所は、紹介に当り、求職者に対し、その従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。
(紹介の原則)
第十九条 公共職業安定所は、求職者をその能力に適合する職業に紹介するように努めなければならない。
公共職業安定所は、求職者に対し、できるだけその住所又は居所の変更を必要としない就職先に、これを紹介するよう努めなければならない。
公共職業安定所が、その管轄区域内において、求人者の希望する求職者又は求人数を充足することができないときは、近接する公共職業安定所に連絡し、その公共職業安定所において、充足が困難なときは、他の公共職業安定所に連絡しなければならない。
公共職業安定所間の連絡に関する手続について必要な事項は、命令でこれを定める。
(労働争議に対する不介入)
第二十条 公共職業安定所は、労働争議に対する中立の立場を維持するため、同盟罷業又は作業所閉鎖の行われている事業所に、求職者を紹介してはならない。
前項に規定する場合の外、労働委員会が公共職業安定所に対し、事業所において、同盟罷業又は作業所閉鎖に至る虞の多い争議が発生していること及び求職者を無制限に紹介することによつて、当該争議の解決が妨げられることを通報した場合においては、公共職業安定所は当該事業所に対し、求職者を紹介してはならない。但し、当該争議の発生前、通常使用されていた労働者の員数を維持するため必要な限度まで労働者を紹介する場合は、この限りでない。
(施行規定)
第二十一条 職業紹介の手続その他職業紹介に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第三節 職業指導
(職業指導の原則)
第二十二条 公共職業安定所は、身体に障害のある者、あらたに職業に就こうとする者その他職業に就くについて特別の指導を加えることを必要とする者に対し、職業指導を行わなければならない。
(適性検査)
第二十三条 公共職業安定所は、必要があると認めるときは、職業指導を受ける者について、適性検査を行うことができる。
(学校に対する協力)
第二十四条 公共職業安定所は、学校を卒業する者に対し学校の行う職業指導に、協力しなければならない。
(施行規定)
第二十五条 職業指導の方法その他職業指導に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第四節 職業補導
(職業補導の原則)
第二十六条 職業補導は、労働力の需要供給の状況に応じて、必要な職業種目について行わなければならない。身体に障害のある者その他特別の職業補導を加えることを必要とする者については、その者の能力に適するよう補導の種目及び方法が選定されなければならない。
職業補導には、共同作業施設及び共同作業特別施設における作業の訓練を含むものとする。
(職業補導所の設置)
第二十七条 都道府県知事は、前条の職業補導を行うため、職業補導所を設置して、自らこれを経営し、又は公共団体その他の者に、その経営を委託することができる。
労働大臣は、都道府県において職業補導事業を行うことが必要であると認める場合において、当該都道府県知事がその職業補導事業を行わないときその他特別の事情があるときは、職業補導所を設置して、自らこれを経営し、又は公共団体その他の者に、その経営を委託することができる。
(補助金等)
第二十八条 政府は、都道府県知事が設置する職業補導施設の経営に要する費用について、その全部又は一部を補助することができる。
政府は、職業補導所において職業補導を受ける者に対して、手当を支給することができる。
(職業補導の基準の制定等)
第二十九条 労働大臣は、公共団体その他の者の行う職業補導事業に関し、職業補導所の規模、補導種目、補導内容及び補導期間に関し必要な基準を定め、教科書の編さん、設備又は資材の確保その他職業補導所の経営に関し必要な事項について、これを援助しなければならない。
公共職業安定所は、前項の職業補導所において補導を受けるべき者の選考及びあつ旋を行わなければならない。
(都道府県知事の行う援助)
第三十条 都道府県知事は、工場事業場等が、労働基準法に規定する技能者養成以外の作業の訓練計画を実施しようとするときは、これに対し、必要な技術につき、援助をしなければならない。
(施行規定)
第三十一条 前五条に定めるものの外、職業補導事業に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第三章 政府以外の者の行う職業紹介、労働者の募集及び労働者供給事業
第一節 職業紹介
(有料、営利職業紹介事業)
第三十二条 何人も、有料で又は営利を目的として職業紹介事業を行つてはならない。但し、美術、音楽、演芸その他特別の技術を必要とする職業に従事する者の職業をあつ旋することを目的とする職業紹介事業について、労働大臣の許可を得て行う場合は、この限りでない。
労働大臣が、前項の許可をなすには、予め中央職業安定委員会に諮問しなければならない。
有料で又は営利を目的として職業紹介事業を行う者は、労働大臣の許可を受けた金額を超える手数料その他の報償金を受けてはならない。
第一項の許可の有効期間は、一年とする。
第一項の許可の申請の手続その他有料で又は営利を目的として行う職業紹介事業に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
(無料職業紹介事業)
第三十三条 無料の職業紹介事業を行わうとする者は、労働大臣の許可を受けなければならない。
労働大臣が前項の許可をなすには、予め中央職業安定委員会に諮問しなければならない。但し、労働組合法による労働組合に対し許可となす場合には、この限りでない。
第一項の許可の有効期間は、二年とする。
第一項の許可の申請手続その他無料の職業紹介事業に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
(帳簿書類の作成等)
第三十四条 第十六条から第十八条まで、第十九条第一項及び第二十条の規定は、政府以外の者の行う職業紹介事業について、これを準用する。
前二条の規定によつて職業紹介事業を行う者は、その業務に関して、命令で定める帳簿書類を作成し、その事務所に備えて置かなければならない。
第二節 労働者の募集
(文書による募集)
第三十五条 新聞紙、雑誌その他の刊行物に掲載する広告又は文書の掲出若しくは頒布による労働者の募集は、自由にこれを行うことができる。但し、通常通勤することができる地域以外の地域から、労働者を募集しようとする場合においては、募集を行う者は、募集の内容を、公共職業安定所長に通報しなければならない。
(文書以外の方法による募集)
第三十六条 労働者を雇用しようとする者が、前条に規定する方法以外の方法で、自ら労働者を募集し、又はその被用者をして労働者を募集させようとするときは、労働大臣の許可を受けなければならない。但し、通常通勤をすることができる地域から、労働者を募集する場合は、この限りでない。
(委託募集)
第三十七条 労働者を雇用しようとする者が、その被用者以外の者をして労働者の募集を行わせようとするときは、労働大臣の許可を受けなければならない。
被用者以外の者をして労働者の募集を行わせようとする者が、その被用者以外の者に報償金を与えようとするときは、労働大臣の許可を受けなければならない。
(募集の制限)
第三十八条 公共職業安定所長は、労働力の需要供給を調整するため必要があるときは、第三十五条の規定による募集に関し、募集地域又は募集時期について、文書による理由を附して制限することができる。
労働大臣は、前二条の規定によつて労働者の募集を許可する場合においては、労働者の募集を行わうとする者に対し、募集地域、募集人員その他募集方法に関し必要な指示をなすことができる。
(募集地域の原則)
第三十九条 労働者の募集を行わうとする者は、通常通勤することができる地域から、労働者を募集し、その地域から、労働者を募集することが困難なときは、その地域に近接する地域から、労働者を募集するように努めなければならない。
(報償受領の禁止)
第四十条 募集を行う者又は第三十六条若しくは第三十七条第一項の規定によつて労働者の募集に従事する者は、募集に応じた労働者から、第三十二条第三項の手数料その他の報償金の外、その募集に関し、いかなる名義でも、財物又は利益を受けてはならない。
(財物等の給与の禁止)
第四十一条 労働者の募集を行う者は、第三十六条又は第三十七条第一項の規定によつて労働者の募集に従事する者に対し、同条第二項の規定によつて労働大臣の許可を受けた報償金又は実費弁償その他被用者に支給する賃金若しくは給料及びこれらに準ずるものを除いては、財物又は利益を与えてはならない。
(労働条件等の明示、労働争議に対する不介入)
第四十二条 第十八条及び第二十条の規定は、労働者の募集について、これを準用する。
(施行規定)
第四十三条 労働者の募集に関する許可の申請手続その他労働者の募集に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第三節 労働者供給事業
(労働者供給事業の禁止)
第四十四条 何人も、第四十五条に規定する場合を除くの外、労働者供給事業を行つてはならない。
(労働者供給事業の許可)
第四十五条 労働組合法による労働組合が、労働大臣の許可を受けた場合は、無料の労働者供給事業を行うことができる。
(労働条件等の明示、労働争議に対する不介入)
第四十六条 第十八条及び第二十条の規定は、前条の労働組合の行う労働者供給事業について、これを準用する。
(施行規定)
第四十七条 労働者供給事業に関する許可の申請手続その他労働者供給事業に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第四章 雑則
(報告の請求)
第四十八条 行政庁は、必要があると認めるときは、労働者を雇用する者から、労働者の雇入又は離職の状況、賃金その他の労働条件等職業安定に関し必要な報告をさせることができる。
(検査)
第四十九条 行政庁は、許可を受けて職業紹介事業、労働者の募集又は労働者供給事業を行う者に対し、事業又は業務に関する報告をさせ、当該官吏をして、その事業所又は事務所に臨検し、事業若しくは業務の状況又は帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
前項に規定する検査を行う場合において、当該官吏は、その身分を証明する証票を携帯しなければならない。
(事業の停止又は許可の取消)
第五十条 労働大臣は、許可を受けて職業紹介事業、労働者の募集又は労働者供給事業を行う者が、法令若しくはこれに基く行政庁の処分に違反し、又はその事業若しくは業務が公益を害する虞があると認めるときは、その事業若しくは業務を停止し、又は許可を取り消すことができる。
(秘密の厳守)
第五十一条 公共職業安定所の業務又は政府以外の者の行う職業紹介、労働者の募集若しくは労働者供給事業に関して、労働者、雇用主その他の者から知り得た労働者又は雇用主の個人的な情報は、すべて秘密とし、これを他に漏らしてはならない。但し、職業安定局長の指示に基いて公表する場合は、この限りでない。
(職員の教養訓練)
第五十二条 政府は、その行う職業紹介、職業指導、職業補導その他この法律の施行に関する事務に従事する職員を教養し、及びその訓練を行うため、計画を樹立し、必要な施設を設けなければならない。
(官庁間の連絡)
第五十三条 政府は、この法律に規定する職業紹介、職業指導、職業補導、労働力の需要供給に関する調査又は労働者の募集について、関係官庁の事務の調整を図り、及び国民の労働力を最も有効に発揮させる方法を協議するため必要があると認めるときは、連絡委員会を設置することができる。
(雇入方法等の指導)
第五十四条 労働大臣は、労働者の雇入方法を改善し、及び労働力を事業に定着させることによつて生産の能率を向上させることについて、工場事業場等を指導することができる。
(費用の支出)
第五十五条 政府は、公共職業安定所その他の職業安定機関がこの法律を施行するために必要な経費を支出しなければならない。
労働大臣は、前項の規定によつて都道府県に配賦すべき同項の経費の配賦基準を定め、都道府県知事の申請により、その基準に基いて、これを配賦しなければならない。
都道府県知事又は市町村長は、この法律の規定によつて行うその業務の改善向上を図るため、前項の規定によつて配賦を受けた国の経費の外必要な経費を支出することができる。
(都道府県知事に対する監督)
第五十六条 労働大臣は、都道府県知事のした処分が、この法律若しくはこの法律の規定に基いて発する命令又はこれらに基いてなす処分に違反すると認めるときは、文書を以て、当該都道府県知事にその旨を通告し、且つ、その文書を受領した後三十日以内に当該違反の事項を是正すべきことを命令しなければならない。その文書には、当該都道府県知事の違反事項を明記しなければならない。
第五十七条 前条の命令を受けた都道府県知事が、同条に規定する期間内に当該違反事項を是正しないときは、労働大臣は、当該都道府県を管轄する高等裁判所に対し、当該都道府県知事に違反事項の是正を命ずべきことを請求することができる。
労働大臣は、高等裁判所に対し、前項の規定による請求をしたときは、直ちに文書を以て、これを当該都府県知事に通告するとともに、高等裁判所に対し、その通告をした日時、場所及び方法を通知しなければならない。
高等裁判所は、第一項の規定による請求を受けたときは、審理の期日に当事者を呼び出さなければならない。審理の期日は、第一項の規定による請求を受けた日から、二十日以内とする。
高等裁判所は、労働大臣の請求が理由があると認めるときは、当該都道府県知事に対し、二十日以内に、当該違反事項を是正すべきことを命ずる旨の裁判をしなければならない。
第五十八条 都道府県知事が、前条第四項の裁判に従い違反の事項を是正しないときは、労働大臣は、同条第一項の高等裁判所に対し、その事実の確認の裁判を求めることができる。
労働大臣は、前項の確認の裁判があつた後、必要があると認めるときは、この法律の規定により、当該都道府内に設置された公共職業安定所その他の職業安定機関を直接に指揮監督するとともに、所属の官吏をして、都道府県知事に代わつて、この法律の規定によりその行うべき職務を行わせることができる。
前条第四項の裁判を受けた都道府県知事は、同条第一項の高等裁判所に対し、当該裁判に従い違反の事項を是正したことを証明して、前項の規定による労働大臣の権限を消滅させることを請求することができる。
第五十九条 前二条の規定による裁判に対しては、最高裁判所の定めるところにより、上訴することができる。
前項の規定による上訴は、執行停止の効力を有しない。
前二条に規定する最高裁判所の審理及び裁判の手続は、最高裁判所がこれを定める。
第六十条 前三条に規定する手続については、労働大臣は、必要があると認めるときは、司法大臣に協力及び援助を求めることができる。
(権限の委任)
第六十一条 この法律に規定する労働大臣の権限は、命令の定めるところによつて、これを行政庁に委任することができる。
(船員に対する適用除外)
第六十二条 この法律は、船員法第一条に規定する船員については、これを適用しない。
第五章 罰則
第六十三条 左の各号の一に該当する者は、これを一年以上十年以下の懲役又は二千円以上三万円以下の罰金に処する。
一 暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行つた者又はこれらに従事した者
二 公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行つた者又はこれらに従事した者
第六十四条 左の各号の一に該当する者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
一 第三十二条第一項本文の規定に違反した者又は同項但書の規定に違反して労働大臣の許可を受けず有料で若しくは営利を目的として職業紹介事業を行つた者
二 第三十三条第一項の規定に違反した者
三 第三十六条又は第三十七条第一項の規定に違反した者
四 第四十四条の規定に違反した者
五 第四十五条の規定に違反して主務大臣の許可を受けず、又は有料で労働者供給事業を行つた者
第六十五条 左の各号の一に該当する者は、これを六箇月以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。
一 第三十七条第二項の規定に違反した者
二 第三十八条の規定による制限又は指示に従わなかつた者
三 第四十条又は第四十一条の規定に違反した者
四 虚偽の広告をなし、又は虚偽の条件を呈示して、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行つた者又はこれらに従事した者
五 労働条件が法令に違反する工場事業場等のために、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行つた者、又はこれに従事した者
第六十六条 左の各号の一に該当する者は、これを五千円以下の罰金に処する。
一 第三十四条第二項の帳簿書類を作成せず、若しくは備えて置かなかつた者又は虚偽の帳簿書類を作成した者
二 第四十八条の規定に違反して、故なく報告をせず、又は虚偽の報告をした者
三 第四十九条第一項の規定に違反して、故なく報告せず、若しくは虚偽の報告をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
第六十七条 この法律の違反行為をした者が、法人又は人の事業又は業務について、当該法人又は人のために行為をした代理人又は被用者である場合においては、行為者を罰する外、当該法人の代表者又は人が普通の注意を払えば、その違反行為を知ることができるべきときは、その法人の代表者又は人に対しても各本条の罰金刑を科する。
法人又は人が違反の計画を知り、その防止に必要な措置を講じなかつた場合、違反行為を知り、その是正に必要な措置を講じなかつた場合又は違反を教唆した場合においては、当該法人の代表者又は人も行為者として、これを罰する。
附 則
この法律は、昭和二十二年十二月一日から、これを施行する。
この法律施行の際、現に行政庁の許可を受けて、職業紹介事業又は労働者供給事業を行う者は、この法律施行後三箇月を限り、引き続きその事業を行うことができる。
職業紹介法は、これを廃止する。
(内務・大蔵・司法・文部・運輪・労働・内閣総理大臣署名)