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 今日は、明治時代前期の1872年(明治5)に、東京・湯島の昌平黌講堂(旧湯島聖堂)跡に日本初の公共図書館である書籍館が開設された日ですが、新暦では9月3日となります。
 書籍館(しょじゃくかん)は、日本における近代的図書館の最初で、東京の湯島旧聖堂内の大講堂に創設され、現在の国立国会図書館の前身の一つとなりました。幕末明治維新期の1869年(明治2)に、明治新政府は徳川幕府の開成所・昌平坂学問所・医学館などの文教施設を併合して大学校を設立、それと同時に、紅葉山文庫をはじめとする旧幕府の書籍類を接収して、紅葉山文庫本は太政官へ、昌平坂学問所本は大学へ、医学館本は大学東校へ、蕃書調所本は大学南校へとそれぞれ引き継ぎます。
 幕末に渡欧した福沢諭吉は、著書『西洋事情』の中で大英博物館図書室をはじめ、諸外国の納本制度を報告、それを参考にした市川清流は、1872年(明治5年5月)に明治政府に幕府の遣欧使節団の経験を活かした「書籍院建設ノ儀」という建白書を提出しました。それらを勘案した文部大丞・町田久成の大博物館構想の下で、同年8月1日に、東京の湯島旧聖堂内の大講堂内に日本初の公共図書館とされる書籍館が開館されます。
 これにともない、各官庁に継承された書籍類を1ヶ所に集め一般公開されましたが、開館時には、東西10間(約18m)、南北8間(約14.4m)の建物の2階に閲覧所が設けられ、蔵書は、約1万3千部、約13万冊を超えていました。1875年(明治8)に新たに「東京書籍館」が設立され、「東京府書籍館」を経て、1880年(明治13)に「東京図書館」となり、1885年(明治18)に上野公園内に移転、1897年(明治30)には「帝国図書館」に発展します。
 太平洋戦争後の1947年(昭和22)に「国立図書館」と改称され、1949年(昭和24)に「国立国会図書館支部上野図書館」となりました。
 以下に、「書籍院建設ノ儀ニ付文部省出仕市川清流建白書」を掲載しておきましたので、ご参照下さい。

〇「書籍院建設ノ儀ニ付文部省出仕市川清流建白書」 1872年(明治5年5月)

三代聖王ノ天下ヲ治ムルヤ 人才ヲ擧ル汲々トシテ夢寐措ク無シ
即 索メテ胥徒釣叟ニ及ブ所以ナリ 今ヤ我国庶政一新 文明日ニ盛ンニ 
内ハ学校ヲ府県ニ設ケ 外ハ生徒ヲ欧、米、清、ニ学ハシメ 
将ニ大ニ他日ニ期スル所有ントス 加之 近者 都下ニ博覧場ヲ開キ 
衆人ニ縦観爾爾セシムル等 皆是人才育ノ方ニ非ル無シ 
然リ而シテ今日尚ホ一層ノ文化ヲ進ルノ擧ハ 書籍院ノ設ケニ如クハ莫カルベシ 
其方府内ニ於テ 市街ニ接近セサル高爽ノ地ヲ擇ミ 一大書院ヲ建造シ 室内ノ四周ニハ 皆数層ノ架ヲ設ケ 所有群籍を蒐輯シ 部分類別シテ架上ニ収メ 普ク諸人ニ此処ニ来テ繙閲スルヲ許シ 博ク考古徴今ノ資ニ供シ 或ハ著述編輯ノ便ニ充ベシ 是即人材培養ノ本 国益増殖ノ源 宋大宗ノ開巻有益ノ語 以テ證ト為ヘシ 嘗テ聞ク 楓山御文庫中ニハ多年収蔵スル所ノ群籍無慮数萬巻 従来 高閣ニ堆積シテ敢テ世人ニ視スヲ許サス 
徒ニ蠹魚ノ腹ヲ肥シムルノミナリト 仰キ冀クハ 今 其群籍ヲ以テ前条ノ院ニ移シ 普ク世人ノ縦観スルヲ許サルレハ 上ハ以テ天物ヲ廃棄セス 下ハ以テ人材を開達ス 実ニ千古ノ盛典タルベク 天下ノ鴻幸ナランカ 
微臣辱ク文林ノ末ニ班スルヲ以テ 敢テ昧死シテ鄙見ヲ陳シ 
又嘗テ英都「龍動」ニ於テ目観スル所ノ書籍院建設ノ大意ヲ附記シ 謹テ之ヲ閣下ニ呈ス 伏テ希クハ唯獻芹ノ愚悃ヲ憫ンテ其言ノ罪ヲ問ハレズンハ幸甚
英都「龍動」ニ建設スル所ノ書籍院ハ 圓形穹窿造リノ最宏壮ナル結構ニテ 
室内周廻ニ三層ノ椽ヲ環ラシ 其周圍ニ数層ノ架を施シ 無数ノ群籍ヲ収メ置キ 
其繙閲ヲ希フ者ハ當人並ニ戸長両名ヨリ院長エ願書ヲ出シ 其許可を得テ此處ニ入リ 
群書目録ニ因テ某部某号某書ヲ借覧致シ度旨 院ノ小吏ニ嘱スレハ輙其書ヲ取来リ交附ス 
讀了後亦之ヲ小吏ニ環附シ 敢テ借覧人ノ縦ニ出納スルヲ許サス 而テ日々来テ看讀シ 
又鈔録スルモ妨ナシ 特巻冊ヲ院外ニ出スヲ禁セリ 尤其年歯廿歳以上ノ者ニ非レハ此請ヲ許サズ 盖シ此借覧ヲ希フ
ハ学業頗ル成リシ者ノ博ク考古徴今 或ハ著述等ノ資ニ供スルカ為ニ設ケタル處ナレハナリ
書院中借覧人外 他ノ闌入放観等ヲ許サス 但シ此處ノ續キノ別局ニ地図並ニ画図類及ヒ我カ東京ノ地本ト稱スル如キノ書類数種ヲ陳列シ置テ 衆人ノ縦観ニ供スル所アリ
右書院建設ノ起原ハ 今ヨリ数世前ノ国王其志学問ニ篤ウシテ 
畢生蒐輯スル所ノ書籍数萬巻アリシニ因テ此擧ニ及ヒシニ 
爾後国民ノ寄附シ来ル者有テ歳月増加シ 既ニ数年前検スル所ニ據ニ三十六萬巻ノ多キニ及ヒ 
遂ニ今日ノ如キ盛大ヲ極ムルニ至ルト云

 明治5年5月『新聞雑誌』第45号附録より

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