
日中貿易協定(にっちゅうぼうえききょうてい)は、貿易関係を発展させるために、日本国政府と中華人民共和国政府の間で結ばれた協定で、正式名称は、「日本国と中華人民共和国との間の貿易に関する協定」と言いました。1972年(昭和47)の日中国交樹立以後初の政府間実務協定で、中国の北京に於いて、日本側が大平正芳外務大臣、中国側が姫鵬飛外交部長が代表して署名し、同年6月22日に発効しています。
主要な内容は、関税その他での最恵国待遇の双方確認、円または元での両国間の支払い方法のあり方、技術交流および展示会の開催促進、商事仲裁機関利用の奨励、混合委員会の設置などとなっていました。
太平洋戦争後の1949年(昭和24)の新中国成立以降の日中間貿易は、両国間に協定もなく、1950年(昭和25)6月の朝鮮戦争勃発後、アメリカの対中国輸出禁示、国連の中国・北朝鮮向け戦略物資禁輸勧告と続いて、日本の対中貿易は微々たるものとなります。1952年(昭和27)の朝鮮戦争終結後、6月に「第1次日中民間貿易協定」、翌年10月には「第2次日中民間貿易協定」、1955年(昭和30)5月に「第3次日中民間貿易協定」が調印されました。
さらに、1957年(昭和32)4月には広州において第1回の交易会(広州交易会)が開催され、中国の第1次五ヵ年計画(1953~57年)の順調な発展に伴って日中貿易は急速に伸びていきます。しかし、1958年(昭和33)5月に、長崎で開かれた中国切手剪紙展で中国の国旗が日本の右翼により引き下ろされた事件(いわゆる長崎国旗事件)が起こると、中国は貿易関係の打切りを通告し、実質的に日中貿易は中断しました。
その後、1959年(昭和34)9月に石橋湛山元首相が周恩来総理と会見、共同コミュニケを発表し、政経不可分の原則を認め合います。続いて、1962年(昭和37)11月からLT貿易が始まり、同年12月に中国国際貿易促進委員会と「日中貿易拡大に関する議定書」に調印しました。
さらに、1968年(昭和43)3月に周恩来総理が国貿促6団体代表団と会見し、LT貿易からMT貿易へと発展、1970年(昭和45)4月には、周恩来総理が国貿促7団体と会見し、「四項目の条件」が提示されます。そして、1972年(昭和47)9月29日、中国の北京において、日中両国政府により「日中共同声明」が発出され、日中国交樹立へと至り、その後初の政府間実務協定として、この協定が締結されました。
以下に、「日中貿易協定」の日本語版と中国語版の全文を掲載しておきますので、ご参照下さい。
主要な内容は、関税その他での最恵国待遇の双方確認、円または元での両国間の支払い方法のあり方、技術交流および展示会の開催促進、商事仲裁機関利用の奨励、混合委員会の設置などとなっていました。
太平洋戦争後の1949年(昭和24)の新中国成立以降の日中間貿易は、両国間に協定もなく、1950年(昭和25)6月の朝鮮戦争勃発後、アメリカの対中国輸出禁示、国連の中国・北朝鮮向け戦略物資禁輸勧告と続いて、日本の対中貿易は微々たるものとなります。1952年(昭和27)の朝鮮戦争終結後、6月に「第1次日中民間貿易協定」、翌年10月には「第2次日中民間貿易協定」、1955年(昭和30)5月に「第3次日中民間貿易協定」が調印されました。
さらに、1957年(昭和32)4月には広州において第1回の交易会(広州交易会)が開催され、中国の第1次五ヵ年計画(1953~57年)の順調な発展に伴って日中貿易は急速に伸びていきます。しかし、1958年(昭和33)5月に、長崎で開かれた中国切手剪紙展で中国の国旗が日本の右翼により引き下ろされた事件(いわゆる長崎国旗事件)が起こると、中国は貿易関係の打切りを通告し、実質的に日中貿易は中断しました。
その後、1959年(昭和34)9月に石橋湛山元首相が周恩来総理と会見、共同コミュニケを発表し、政経不可分の原則を認め合います。続いて、1962年(昭和37)11月からLT貿易が始まり、同年12月に中国国際貿易促進委員会と「日中貿易拡大に関する議定書」に調印しました。
さらに、1968年(昭和43)3月に周恩来総理が国貿促6団体代表団と会見し、LT貿易からMT貿易へと発展、1970年(昭和45)4月には、周恩来総理が国貿促7団体と会見し、「四項目の条件」が提示されます。そして、1972年(昭和47)9月29日、中国の北京において、日中両国政府により「日中共同声明」が発出され、日中国交樹立へと至り、その後初の政府間実務協定として、この協定が締結されました。
以下に、「日中貿易協定」の日本語版と中国語版の全文を掲載しておきますので、ご参照下さい。
〇「日中貿易協定」(日本国と中華人民共和国との間の貿易に関する協定)1974年(昭和49)1月5日締結
<日本語版>
日本国政府及び中華人民共和国政府は,
千九百七十二年九月二十五日に北京で発出された両国政府の共同声明に基づいて,
従来の民間の貿易関係によつて積み上げられてきた成果を尊重し,
両国間の貿易を平等互恵の原則の基礎の上に一層発展させ,両国間の経済関係を強化することを希望し,
友好的な協議を経て,
次のとおり協定した。
第一条
1 両締約国は,輸出入物品に関するすべての種類の関税,内国税その他の課徴金及びこれらの税その他の課徴金の徴収の方法並びに通関に関連する規則及び手続について,相互に最恵国待遇を与える。
2 lの規定を適用する場合の物品に関する要件は,各締約国が第三国に最恵国待遇を与える場合の要件と同一のものとする。
3 1の規定は,いずれか一方の締約国が国境貿易を容易にするため隣接国に与える特別の利益には適用しない。
第二条
各締約国は,一時的にその領域に持ち込まれ,かつ,その領域から持ち出される他方の締約国の次の物品に対し,関係国内法令に従い,関税,内国税その他の課徴金の免除に関して最恵国待遇を与える。
(1)商品見本(ただし,貿易慣例上一般に商品見本として通用する数量に限る。)
(2)試験用及び実験用の物品
(3)展覧会,見本市及び共進会に出品される物品
(4)組立工が設備の組立て及び取付けに用いる器具
(5)加工され又は修理される物品及び加工又は修理に必要な材料
(6)輸出され又は輸入される貨物の容器
第三条
いずれの一方の締約国も,他方の締約国の物品が当該一方の締約国の領域を通過して第三国の領域に運送される際,通過に関連するすべての種類の関税,内国税その他の課徴金並びに規則及び手続に関し,当該運送中の物品に対し,最恵国待遇を与える。
第四条
1 両締約国間のすべての支払は,それぞれの締約国の外国為替菅理に関する法律,規則及び命令に従い,日本円,人民幣又は両国において認められている交換可能な通貨で行うものとする。
2 両締約国は,1に規定する日本円又は人民幣による支払が行われる際,両国の関係銀行間の決済業務に関する取極が,それぞれの締約国の関係法令に従つて,有効に運用されることを歓迎する。
3 いずれの一方の締約国の法人(外国貿易機構を含む。)及び自然人も,両締約国の領域の間における支払,送金及び資金又は金銭証券の移転に関して,並びに他方の締約国の領域と第三国の領域との間における支払,送金及び資金又は金銭証券の移転に関して,いかなる第三国の法人(外国貿易機構を含む。)及び自然人に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。
第五条
両締約国間の貿易は,日本国の法令に基づき外国貿易を行うことができる法人又は自然人と中華人民共和国の法令に基づき外国貿易を行うことができる外国貿易機構との間で平等互恵の原則に従い,かつ,適正な国際市場価格を基礎として締結される契約に基づいて行われるものとする。
第六条
両締約国は,両国間の経済貿易関係を一層発展させるため,平等互恵の原則に従い,産業に関する技術交流を積極的に促進する。
第七条
両締約国は,両国の間で相互に貿易に関連する展覧会が開催されることを奨励する。各締約国は,自国におけるそれらの展覧会の開催につき,関係国内法令に従い,できる限りの支持を与える。
第八条
1 両締約国は,日本国の法人又は自然人と中華人民共和国の外国貿易機構との間に締結された商事契約から又はこれに関連して生ずる紛争については,まず当事者間で友好的な協議によつて解決するよう奨励するものとする。
2 紛争を協議によつて解決することができない場合には,当事者は,仲裁条項に基づき,仲裁に付することができる。仲裁条項は,契約の双方の当事者により,契約自体に又は契約に関連する別個の約定に規定される。
3 両締約国は,当事者による両国の仲裁機関の利用をあらゆる可能な方法によつて奨励するものとする。
4 両締約国は,仲裁判断について,その執行が求められる国の法律が定める条件に従い,関係機関によつて,これを執行する義務を負う。
第九条
両締約国は,この協定の実施状況及び両国間の貿易に関連する問題の検討(両国間の貿易関係の見通しについての意見交換を含む。)を行うこと及び,必要な場合には,両締約国の政府に対し適当な勧告を行うことを目的として,両締約国の政府の代表から成る混合委員会を設置する。混合委員会は,少なくとも毎年一回,東京又は北京で交互に会合する。
第十条
l この協定は,その効力発生のために国内法上必要とされる手続がそれぞれの国において完了したことを確認する旨の通告が交換された日から三十日目の日に効力を生ずる。この協定は,三年間効力を有するものとし,その後は,2の規定に定めるところによつて終了するまて効力を存続する。
2 いずれの一方の締約国も,三箇月前に他方の締約国に対して文書による予告を与えることにより,最初の三年の期間の満了の際又はその後いつでもこの協定を終了させることができる。
千九百七十四年一月五日に北京で,ひとしく正文である日本語及ぴ中国語により本書二通を作成した。
日本国政府のために
大平正芳
中華人民共和国政府のために
姫鵬飛
「日本外交主要文書・年表(3)」より
<中国語版>
中华人民共和国和日本国贸易协定
中华人民共和国政府和日本国政府根据1972年9月29日在北京发表的两国政府联合声明,尊重已有民间贸易关系所积累的成果,本着在平等互利的原则基础上进一步发展两国间的贸易和加强两国间的经济关系的愿望,经过友好协商,达成协议如下:
第 一 条
一、缔约双方在有关进出口物品的一切关税、国内捐税和其他税费,以及上述各种税费的征收方法、海关规章、手续方面,相互给予最惠国待遇。
二、第一款规定所适用的物品的条件,应与缔约各方向第三国提供最惠国待遇的条件相同。
三、第一款规定不适用于缔约双方的一方为方便边境贸易给予毗邻国家的优惠。
第 二 条
缔约一方依照国内有关法令,对下列临时运入和运出其领土的缔约另一方的物品,在免征关税、国内捐税和其他税费方面,给予最惠国待遇。
(一)货样(但限于在贸易习惯上作为一般货样的通用数量);
(二)用于试验和实验的物品;
(三)用于展览会、商品展览会及比赛展出的物品;
(四)安装工人用于设备的安装及装配的用具及工具;
(五)用于加工或修理的物品以及加工或修理用的材料;
(六)为输出或输入货物用的包皮。
第 三 条
缔约任何一方,在缔约另一方物品经过该缔约一方的领土运往第三国领土时,在有关边境的一切关税、国内捐税和其他税费以及规章、手续方面,对该运输途中的物品,给予最惠国待遇。
第 四 条
一、缔约双方之间的一切支付,应按照缔约国各自有关外汇管理法令、规章,以人民币、日元或两国承认的可兑换货币办理。
二、按第一款规定以人民币或日元进行支付时,缔约双方欢迎两国有关银行的结算业务协议依照缔约国各自有关法令进行有效的运用。
三、缔约任何一方的法人(包括对外贸易机构)和自然人,在缔约双方领土间的支付、汇款和资金或有价证券的转让方面,以及在缔约另一方的领土同第三国领土之间的支付、汇款和资金或有价证券的转让方面,应享有不低于任何第三国法人(包括对外贸易机构)和自然人所享有的待遇。
第 五 条
缔约双方之间的贸易,由根据中华人民共和国的法令得以进行对外贸易的对外贸易机构,同根据日本国法令得以进行对外贸易的法人或自然人,根据平等互利的原则,并在合理的国际市场价格的基础上签订合同进行。
第 六 条
缔约双方为了进一步发展两国间的经济贸易关系,根据平等互利的原则,积极促进有关产业的技术交流。
第 七 条
缔约双方鼓励在两国间互办有关贸易的展览会。缔约各方在本国举办的上述展览会,按照国内有关法令尽量予以支持。
第 八 条
一、中华人民共和国对外贸易机构和日本国法人或自然人之间签订的贸易合同所引起的或与其有关的争议,缔约双方应鼓励当事人首先通过友好协商解决。
二、如争议经过协商不能解决时,当事人可根据仲裁条款提交仲裁。仲裁条款由合同双方当事人在合同或与合同有关的其他协议中加以规定。
三、缔约双方应采取一切可能的方法鼓励当事人利用两国的仲裁机构。
四、缔约双方有义务由有关机构按照被申请执行仲裁裁决国家法律的规定,执行仲裁裁决。
第 九 条
缔约双方设立由缔约双方政府代表组成的混合委员会,其任务是研究本协定的执行情况和有关两国间的贸易问题(包括就两国间贸易关系的前景交换意见),并在必要时向缔约双方政府提出适当的建议。混合委员会每年至少开会一次,在北京和东京轮流举行。
第 十 条
一、本协定在各自国家履行为生效所必要的国内法律手续并交换确认通知之日起的第30天开始生效。本协定有效期为3年,3年之后,在根据第二款的规定宣布终止之前,继续有效。
二、缔约任何一方在最初3年期满时或在其后,可以在3个月以前,以书面预先通知缔约另一方,随时终止本协定。
本协定于1974年1月5日在北京签订,共两份,每份都用中文和日文写成,两种文本具有同等效力。
中华人民共和国政府代表 日本国政府代表
姬 鹏 飞 大平正芳
(签字) (签字)