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 今日は、平成時代の1993年(平成5)に、自然遺産として、屋久島、白神山地、文化遺産として、法隆寺、姫路城の計4ヶ所が、日本初の世界遺産に決定した日です。
 世界遺産(せかいいさん)は、昭和時代後期の1972年(昭和47)のユネスコ総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(世界遺産条約)に基づいて世界遺産リストに登録された、遺跡、景観、自然など、人類が共有すべき「顕著な普遍的価値」を持つ物件のことでした。移動が不可能な不動産やそれに準ずるものが対象となっていて、文化遺産、自然遺産、複合遺産の3つの種類があります。
 文化遺産は、顕著な普遍的価値を有する記念物、建造物群、遺跡、文科的景観などで、自然遺産は、顕著な普遍的価値を有する地形や地質、生態系、絶滅のおそれのある動植物の生態・生育地などで、複合遺産は、文化遺産と自然遺産の両方の価値を兼ね備えているものとなっていました。世界遺産リストに登録されるためには、「世界遺産条約履行のための作業指針」で示されている下記の登録基準のいずれか1つ以上に合致するとともに、真実性(オーセンティシティ)や完全性(インテグリティ)の条件を満たし、締約国の国内法によって、適切な保護管理体制がとられていることが必要とされています。
 日本では、1993年(平成5)12月9日に、自然遺産として、屋久島(鹿児島県)と白神山地(青森県、秋田県)、文化遺産として、「法隆寺地域の仏教建造物」(奈良県生駒郡斑鳩町)と「姫路城」(兵庫県姫路市)の4件が登録されたのを最初として、順次増やされていき、現在25件(文化遺産:20件、自然遺産:5件)が登録されました。

〇「世界遺産条約」(せかいいさんじょうやく)とは?

 正式名称を「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約(Convention Concerning the Protection of theWorld Cultural and Natural Heritage)」といい、顕著な普遍的価値を有する文化遺産及び自然遺産の保護を目的とした国際条約とされています。1972年(昭和47)にパリで開催された第17回会期国際連合教育科学文化機関(UNESCO)総会(10月17日~11月21日)において、1972年11月16日に採択され、1975年(昭和50)12月17日に発効しましたが、日本では、1992年(平成4)6月19日に国会承認され、同年9月30日に日本国について発効しました。
 文化遺産及び自然遺産を人類全体のための世界の遺産として損傷、破壊等の脅威から保護し、保存するための国際的な協力及び援助の体制を確立することを目的とし、(1)保護の対象は、記念工作物、建造物群、遺跡、自然の地域等で普遍的価値を有するもの(第1~3条)、(2)締約国は、自国内に存在する遺産を保護する義務を認識し、最善を尽くす(第4条)、また、自国内に存在する遺産については、保護に協力することが国際社会全体の義務であることを認識する(第6条)、(3)「世界遺産委員会」(委員国は締約国から選出)の設置(第8条)、同委員会は、各締約国が推薦する候補物件を審査し、その結果に基づいて「世界遺産一覧表」を作成するほか、締約国の要請に基づき、同一覧表に記載された物件の保護のための国際的援助の供与を決定する。同委員会の決定は、出席しかつ投票する委員国の三分の二以上の多数による議決で行う(第11条,第13条)、(4)締約国の分担金(ユネスコ分担金の1%を超えない額(我が国の場合,2017年は約3,500万円)及び任意拠出金,その他の寄付金等を財源とする、「遺産」のための「世界遺産基金」を設立(第15条,第16条)、(5)「世界遺産委員会」が供与する国際的援助は、調査・研究、専門家派遣、研修、機材供与、資金協力等の形をとる(第22条)、(6)締約国は,自国民が「遺産」を評価し尊重することを強化するための教育・広報活動に努める(第27条)などを規定しました。
 2021年(令和3)7月末現在で、締約国数は194ヶ国で、エジプトのピラミッド、中国の万里の長城、米国のグランドキャニオン国立公園など合計1,154件が世界遺産リストに登録(文化遺産:897件、自然遺産:218件、複合遺産:39件)されています。

☆日本の世界遺産一覧 現在25件(文化遺産:20件、自然遺産:5件)

<文化遺産>​

・法隆寺地域の仏教建造物(1993年登録)奈良県 (1), (2), (4), (6) 
・姫路城(1993年登録)兵庫県 (1), (4) 
・古都京都の文化財(1998年登録)京都府、滋賀県 (2), (4) 
・白川郷、五箇山の合掌造り集落(1995年登録)岐阜県、富山県 (4), (5) 
・原爆ドーム(1996年登録)広島県 (6) 
・厳島神社(1996年登録)広島県 (1), (2), (4), (6) 
・古都奈良の文化財(1998年登録)奈良県 (2), (3), (4), (6) 
・日光の社寺(1999年登録)栃木県 (1), (4), (6) 
・琉球王国のグスク及び関連遺産群(2000年登録)沖縄県 (2), (3), (6) 
・紀伊山地の霊場と参詣道(2004年登録)和歌山県、奈良県、三重県 (2), (3), (4), (6)
・石見銀山遺跡とその文化的景観(2007年登録)島根県 (2), (3), (5)
・平泉―仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群―(2011年登録)岩手県 (2), (6) 
・富士山―信仰の対象と芸術の源泉(2013年登録)静岡県、山梨県 (3), (6) 
・富岡製糸場と絹産業遺産群(2014年登録)群馬県 (2), (4)
・明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業(2015年登録)山口県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、鹿児島県、岩手県、静岡県 (2), (4)
・ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献-(2016年登録)東京都 (1), (2), (6)
・「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群(2017年登録)福岡県 (2), (3) 
・長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産(2018年登録)長崎県、熊本県 (3) 
・百舌鳥・古市古墳群 -古代日本の墳墓群-(2019年登録)大阪府 (3), (4) 
・北海道・北東北の縄文遺跡群(2021年登録)北海道、青森県、岩手県、秋田県 (3), (5) 

<自然遺産>

・屋久島(1993年登録)鹿児島県 (7), (9)
・白神山地(1993年登録)青森県、秋田県 (9)
・知床(2005年登録)北海道 (9), (10)
・小笠原諸島(2011年登録)東京都 (9)
・奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島(2021年登録)鹿児島県、沖縄県 (10)

(登録基準の内容)
(1) 人類の創造的才能を表現する傑作。
(2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
(5) ある文化(または複数の文化)を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例。
(6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの(この基準は他の基準と組み合わせて用いるのが望ましいと世界遺産委員会は考えている)。
(7) ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。
(8) 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などが含まれる。
(9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。
(10) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。

〇同じ日の過去の出来事(以前にブログで紹介した記事)

1159年(平治元)院近臣らの対立により発生した平治の乱が起きる(新暦1160年1月19日)詳細
1916年(大正5)小説家夏目漱石の命日(漱石忌)詳細
1945年(昭和20)GHQが「農地改革に関する覚書」(SCAPIN-411)を指令する詳細
1975年(昭和50)第30回国際連合総会において、「障害者の権利に関する宣言」が採択される(障害者の日)詳細