今日は、昭和時代前期の太平洋戦争敗戦後の連合国軍占領下、1945年(昭和20)に、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)によって、「日本に与うる放送遵則(ラジオコード)」(SCAPIN-43)が発令された日です。
「日本に与うる放送遵則(ラジオコード)」は、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)によって発令された、ラジオ放送についての具体的な行動基準を示した、連合国最高司令官指令第43号(SCAPIN-43)のことで、「ラジオコード」とも呼ばれてきました。
これに先立って9月10日に、GHQによって、「言論及ビ新聞ノ自由ニ関スル覚書」(SCAPIN-16)が発せられ、占領下の日本のマス・メディアの一般的な行動基準を示し、事後検閲を開始していますが、言論の自由はGHQ及び連合国批判にならずまた太平洋戦争の被害に言及しない制限付きで奨励されます。そして、9月19日には、ほぼ同趣旨のプレスコード(日本新聞遵則)が連合国最高司令官指令第33号(SCAPIN-33)として発せられました。
それに続いて、「日本に与うる放送遵則(ラジオコード)」はその行動基準をラジオ放送についてより具体的に示したもので、放送は絶対に真実に即すること、直接又は間接に公安を害するようなものを掲載してはならないこと、連合国に関し虚偽的又は破壊的批評を加えてはならないこと、放送内容は宣伝目的の色を着けてはならないことなどを規定しています。
以下に、「日本に与うる放送遵則(ラジオコード)」の英語版と日本語訳を掲載しておきますので、ご参照下さい。
〇「日本に与うる放送遵則(ラジオコード)」(SCAPIN-43) 1945年9月22日にGHQ指令
OFFICE OF THE SUPREME COMMANDER
FOR THE ALLIED POWERS
AG 000.77 (22 Sep 45) CI 22 September 1945
(SCAPIN-43)
MEMORANDUM FOR:THE IMPERIAL JAPANESE GOVERNMENT
THROUGH:Central Liaison Office, Tokyo
SUBJECT:Radio Code for Japan
1. News Broadcasts
a. Newscasts must adhere strictly to the truth.
b. Nothing shall be broadcast which might, directly or indirectly, disturb public tranquility.
c There shall be no false or destructive criticism of the Allied Powers.
d. There shall be no destructive criticism of the Allied Forces of Occupation and nothing which might invite mistrust or resentment of those troops.
e. No announcement shall be made concerning movement of Allied troops unless such movements have been officially released.
f. Newscasts must be factual and completely devoid of editorial opinion.
g. Newscasts shall not be colored to conform to any propaganda line.
h. Minor details of a newscast must not be over emphasized to stress or develop any propaganda line.
i. No newscast shall be distorted by the omission of pertinent facts or details.
j. Presentation of news items in newscasts shall not be so arranged as to give undue prominence to an item for the purpose of establishing or developing any propaganda line.
k. News commentary, analysis and interpreting of the news shall strictly conform to the above requirements.
2. Entertainment Programs
Programs of entertainment which include plays, skits, dramatizations, poetry, variety shows, comedy, etc, shall conform to the requirements set forth in paragraph 1-A on News Broadcasts with particular emphasis on the following:
a. Theme shall not be used which may be construed as fostering any propoganda line.
b. Themes shall not be used which, directly or indirectly disparage the Armed Forces or peoples of the Allied Powers; nor will themes be permitted which would tend, directly or indirectly to ridicule those Allied Forces and peoples.
3. Programs of Information and Education.
Programs of Information and Education, which include lectures and talks on subjects such as agriculture, forestry, mining, banking, etc.; lectures and talks on subjects such as history and geography; announcements of an informative nature from governmental agencies; and other allied types of programs, shall conform to the following:
a. Material shall be strictly factual and all interpreting and editorializing shall be founded in fact.
b. Material shall be free from any propagandizing.
c. Remarks or statements that would tend to disturb public tranquility are prohibited.
d. Material shall not be used which can be construed as detrimental to relationships between Allied Powers, or which places any one of the Allied Powers in disrepute.
4. Commercial Programs
In the event that commercial firms use the radio for advertising purposes, the script prepared by these firms shall conform strictly to the policies set forth above.
FOR THE SUPREME COMMANDER:
/s/ Harold Fair,
/t/ HAROLD FAIR,
Lt. Colonel, A.G.D.,
Asst. Adjutant General.
<日本語訳>
日本ラジオ規則ニ關スル覺書
一九四五年九月二二日
一、 ニユース放送
イ ニユース放送ハ嚴格ニ眞實ニ符合スルモノタルベシ。
ロ 直接又ハ間接ニ公安ヲ害スル惧アル放送ヲ爲スコトヲ得ズ。
ハ 聯合國ニ對スル虛僞又ハ破壞的批評ヲ行ハザルベシ。
ニ 聯合國占領軍ニ對スル破壞的批評及軍隊ノ不信若ハ憤激ヲ招ク惧アル放送ヲ爲サザルベシ。
ホ 聯合國軍隊ノ動靜ニ關シテハ公式ニ發表セラレタルモノ以外ハ其ノ報道ヲ爲スコトヲ得ズ。
ヘ ニユース放送ハ事實ニ卽シ編輯上ノ意見ハ完全ニ之ヲ避クベシ。
ト ニユース放送ハ宣傳的意圖ヲ以テ着色スルコトヲ得ズ。
チ ニユース放送ニ當リ宣傳的意圖ヲ强調若ハ擴大スル目的ヲ以テ微細ノ事項ヲ過度ニ强調スルコトヲ得ズ。
リ ニユース放送ニ當リ關係事實又ハ細目ヲ省略スルコトニ依リ之ヲ歪曲スルコトヲ得ズ。
ヌ ニユース放送ノ爲種々ノニユースヲ選擇スルニ當リ宣傳的意圖ヲ設定若ハ展開スル目的ヲ以テ或ルニユースヲ不當ニ誇張スルガ如キ編輯ヲ爲スコトヲ得ズ。
ル ニユースノ論評、分析、ニユースノ解說ハ上記ノ要求ニ嚴格ニ適應スルモノナルコトヲ要ス、
二、 娛樂番組
芝居、諷刺劇、戱曲、詩、寄席、茶番其ノ他ヲ含ム娛樂番組ハニユース放送ニ關スル第一項ニ揭ゲラレタル條件二適應スルモノナルコトヲ要シ、特ニ右ノ點ヲ重視スベキモノトス。
イ 宣傳的意圖ヲ助成スルモノト看做サルルガ如キ如何ナル題材ヲモ使用セラレザルベシ。
ロ 聯合國軍隊若ハ國民ヲ直接又ハ間接ニ非難スルガ如キ題材ヲ使用セラレザルベシ、又聯合國軍若ハ聯合國國民ヲ直接又ハ間接ニ嘲弄スルガ如キ題材モ許可セラレザルベシ。
三、 知識及敎育ニ關スル番組
農業、林業、鑛業、銀行業其ノ他ニ關スル講演若ハ講話、歷史、地理等ニ關スル講演者ハ談話、知識的性質ヲ有スル政府機關ノ發表其他此等ニ關聯セル番組ヲ含ム知識及敎育ニ關スル放送ハ次ノ如キ要件ニ適應スルモノナルコトヲ要ス。
イ 材料ハ嚴重ニ事實ニ卽シ、凡ユル解說、論評ハ事實ニ基クモノタルベシ。
ロ 材料ハ宣傳的制約ヲ受ケザルモノナルコトヲ要ス。
ハ 公安ヲ害スル惧アル言說若ハ意見ハ禁止セラルベシ。
ニ 聯合國內ノ關係ニ有害ナリト看做サルル材料若ハ聯合諸國ノ何レカノ名譽ヲ毀損スルガ如キ材料ハ使用セラレザルベシ。
四、 商業上ノ番組
一般商社ガ廣吿ノ目的ヲ以テラジオヲ使用スル場合ニ於テハ此等商社ノ作成スル放送原稿ハ以上ニ列記セル方針ニ嚴格ニ適應スルモノナルコトヲ要ス。
『日本管理法令研究』第2巻より
<現代語訳>
連合国最高司令官官房
1945年9月22日
AG 000.77(1945年9月22日)CI
(SCAPIN-43)
覚書:大日本帝国政府
経由:東京中央連絡事務所
件名:日本のラジオコード
1.ニュース放送
a. ニュース放送は真実を厳守しなければならない。
b. 直接的または間接的に、公安を妨げる可能性のあるものは放送されないものとする。
c. 連合国に対する虚偽のまたは破壊的な批判があってはならない。
d. 連合国の占領軍に対する破壊的な批判があってはならず、それらの軍隊に対し不信や恨みを招くようなものはあってはならない。
e. 連合国軍隊の動向に関し、正式に発表されない限り、報道を行わないものとする。
f. ニュース放送は事実に基づいて行われ、編集者の意見を加えてはならない。
g. ニュース放送は、宣伝の目的を以て、色付けしてはならない。
h. ニュース放送の細部の強調によって、報道内容を強調し過ぎたり、発展させたりしてはならない。
i. 関連する事実や詳細の省略によって、ニュース放送が歪められることがあってはならない。
j. ニュース放送でのニュース項目の提示は、宣伝方針を確立または発展させるる目的で項目を過度に目立たせるように配置されてはならない。
k. ニュースの解説、分析、およびニュースの解釈は、上記の要件に厳密に準拠するものとする。
2.娯楽プログラム
演劇、(風刺的またはこっけいな)寸劇、ドラマ、詩、バラエティ番組、コメディーなどを含む娯楽番組は、ニュース放送の1-aの節に記載されている要件に準拠し、特に以下に重点を置くものとする。
a. 政治的意図のもとに主義や思想を強調する宣伝を助長すると解釈される可能性のあるテーマは使用してはならない。
b. 直接的または間接的に、軍隊または連合国の人々を軽蔑するテーマは使用されないものとする。また、直接的または間接的に、それらの連合軍および人々を嘲笑する傾向があるテーマは許可されない。
3.情報と教育のプログラム
農業、林業、鉱業、銀行などの主題に関する講義と講演を含む情報教育プログラム。歴史や地理などのテーマに関する講義や講演。政府機関からの有益な性質の発表。およびその他の関連する種類のプログラムは、以下に準拠するものとする。
a. 資料は厳密に事実に基づくものとし、すべての通訳および編集は事実に基づいて行われるものとする。
b. 材料はいかなる宣伝もしてはならない。
c. 公安を乱す傾向のある意見や声明は禁止される。
d. 連合国間の関係に有害であると解釈される可能性のある、または連合国のいずれかを不評にするような資料は使用してはならない。
4.商業プログラム
商業会社が広告目的でラジオを使用する場合、これらの会社によって作成された台本は、上記の方針に厳密に準拠するものとする。
最高司令官に代り、
/S/ハロルド・フェア
/t/ハロルドフェア
陸軍大佐 高級副官邸
高級副補佐官
※英語原文から筆者が訳しました。
〇同じ日の過去の出来事(以前にブログで紹介した記事)
1311年(応長元) | 鎌倉幕府第10代執権北條師時の命日(新暦11月3日) | 詳細 |
1868年(明治元) | 戊辰戦争で鶴ヶ城が開城され、会津藩が新政府軍に降伏する(新暦11月6日) | 詳細 |
1968年(昭和43) | 第3宮古島台風により宮古島で最大瞬間風速79.8mを記録する | 詳細 |
1980年(昭和55) | 文芸評論家・音楽評論家河上徹太郎の命日 | 詳細 |