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 今日は、昭和時代後期の1967年(昭和42)に、「公害対策基本法」が公布・施行された日です。
 「公害対策基本法(こうがいたいさくきほんほう)」は、公害対策の基本となる事項や公害防止に関する責務などを定めた法律でした。日本における公害問題は、1887年(明治20)頃からの足尾銅山の鉱毒事件、1897年(明治30)頃からの別子銅山の煙害事件など、日本の資本主義の発達と共にありましたが、太平洋戦争後の高度経済成長期に、日本4大公害病とされる水俣病、第二水俣病(新潟水俣病)、四日市ぜんそく、イタイイタイ病の発生などによって拡大し、深刻な問題となります。
 そこで、この法律が制定されましたが、その目的は、「事業者、国及び地方公共団体の公害の防止に関する責務を明らかにし、並びに公害の防止に関する施策の基本となる事項を定めることにより、公害対策の総合的推進を図り、もつて国民の健康を保護するとともに、生活環境を保全すること」(第1条)とし、公害を、「事業活動その他の人の活動に伴つて生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁、騒音、振動、地盤の沈下(鉱物の掘採のための土地の掘さくによるものを除く。以下同じ。)及び悪臭によつて、人の健康又は生活環境に係る被害が生ずることをいう」(第2条)と定義しました。続いて、環境基準の設定(第9条)、国および地方公共団体の施策(第10条以下および第18条以下)、公害防止計画の策定(第19条以下)、公害紛争の処理および被害の救済(第21条)、費用負担(第22条)などの施策の基本ないし理念を規定し、最後に、公害対策会議および公害対策審議会について定め(第25条以下および第27条以下)を置いています。
 本法では、当初いわゆる「経済との調和条項」を設けていたものの、このため実効ある公害規制がとりにくく、世論の強い批判を受けて、1970年(昭和45)の第64回臨時国会(いわゆる「公害国会」)において、他の公害対策関連法における調和条項と共に、与野党一致で削除されました。これらの施策の多くは、その実施のために「大気汚染防止法」、「水質汚濁防止法」など個別の法律がつくられています。その後、1993年(平成5)に地球環境問題に対応した「環境基本法」が新たに制定されるに伴い、廃止されました。
 以下に、「公害対策基本法」(昭和42年法律第132号)を全文掲載しておきますので、ご参照下さい。

〇「公害対策基本法」(昭和42年法律第132号)1967年(昭和42)8月3日公布

  第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、事業者、国及び地方公共団体の公害の防止に関する責務を明らかにし、並びに公害の防止に関する施策の基本となる事項を定めることにより、公害対策の総合的推進を図り、もつて国民の健康を保護するとともに、生活環境を保全することを目的とする。
2 前項に規定する生活環境の保全については、経済の健全な発展との調和が図られるようにするものとする。

 (定義)

第二条 この法律において「公害」とは、事業活動その他の人の活動に伴つて生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁、騒音、振動、地盤の沈下(鉱物の掘採のための土地の掘さくによるものを除く。以下同じ。)及び悪臭によつて、人の健康又は生活環境に係る被害が生ずることをいう。
2 この法律にいう「生活環境」には、人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含むものとする。

 (事業者の責務)

第三条 事業者は、その事業活動による公害を防止するために必要な措置を講ずるとともに、国又は地方公共団体が実施する公害の防止に関する施策に協力する責務を有する。
2 事業者は、物の製造、加工等に際して、その製造、加工等に係る製品が使用されることによる公害の発生の防止に資するように努めなければならない。

 (国の責務)

第四条 国は、国民の健康を保護し、及び生活環境を保全する使命を有することにかんがみ、公害の防止に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する。

 (地方公共団体の責務)

第五条 地方公共団体は、住民の健康を保護し、及び生活環境を保全するため、国の施策に準じて施策を講ずるとともに、当該地域の自然的、社会的条件に応じた公害の防止に関する施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する。

 (住民の責務)

第六条 住民は、国又は地方公共団体が実施する公害の防止に関する施策に協力する等公害の防止に寄与するように努めなければならない。

 (年次報告等)

第七条 政府は、毎年、国会に、公害の状況及び政府が公害の防止に関して講じた施策に関する報告を提出しなければならない。
2 政府は、毎年、前項の報告に係る公害の状況を考慮して講じようとする施策を明らかにした文書を作成し、これを国会に提出しなければならない。

 (放射性物質による大気の汚染等の防止)

第八条 放射性物質による大気の汚染及び水質の汚濁の防止のための措置については、原子力基本法(昭和三十年法律第百八十六号)その他の関係法律で定めるところによる。

   第二章 公害の防止に関する基本的施策

    第一節 環境基準

第九条 政府は、大気の汚染、水質の汚濁及び騒音に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護し、及び生活環境を保全するうえで維持されることが望ましい基準を定めるものとする。
2 前項の基準のうち、生活環境に係る基準を定めるにあたつては、経済の健全な発展との調和を図るように考慮するものとする。
3 第一項の基準については、常に適切な科学的判断が加えられ、必要な改定がなされなければならない。
4 政府は、公害の防止に関する施策を総合的かつ有効適切に講ずることにより、第一項の基準が確保されるように努めなければならない。

    第二節 国の施策

 (排出等に関する規制)

第十条 政府は、公害を防止するため、事業者等の遵守すべき基準を定める等により、大気の汚染又は水質の汚濁の原因となる物質の排出等に関する規制の措置を講じなければならない。
2 政府は、公害を防止するため、騒音、振動、地盤の沈下及び悪臭について、前項に準じて必要な措置を講ずるように努めなければならない。

 (土地利用及び施設の設置に関する規制)

第十一条 政府は、公害を防止するため、土地利用に関し、必要な規制の措置を講ずるとともに、公害が著しく、又は著しくなるおそれがある地域について、公害の原因となる施設の設置を規制する措置を講じなければならない。

 (公害防止に関する施設の整備等の推進)

第十二条 政府は、緩衝地帯の設置等公害の防止のために必要な事業及び下水道その他公害の防止に資する公共施設の整備の事業を推進する措置を講じなければならない。

 (監視、測定等の体制の整備)

第十三条 政府は、公害の状況をは握し、及び公害の防止のための規制の措置を適正に実施するために必要な監視、測定、試験及び検査の体制の整備に努めなければならない。

 (調査の実施)

第十四条 政府は、公害の予測に関する調査その他公害の防止のために講ずべき施策の策定に必要な調査を実施しなければならない。

 (科学技術の振興)

第十五条 政府は、公害の防止に資する科学技術の振興を図るため、試験研究の体制の整備、研究開発の推進及びその成果の普及、研究者の養成等必要な措置を講じなければならない。

 (知識の普及等)

第十六条 政府は、公害に関する知識の普及を図るとともに、公害の防止の思想を高めるように努めなければならない。

 (地域開発施策等における公害防止の配慮)

第十七条 政府は、都市の開発、企業の誘導等地域の開発及び整備に関する施策の策定及び実施にあたつては、公害の防止について配慮しなければならない。

    第三節 地方公共団体の施策

第十八条 地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて、前節に定める国の施策に準ずる施策を講ずるほか、当該地域の自然的、社会的条件に応じた公害の防止のために必要なその他の施策を実施するものとする。この場合において、都道府県は、主として、広域にわたる施策の実施及び市町村の行なう施策の総合調整にあたるものとする。

    第四節 特定地域における公害の防止

 (公害防止計画の作成)

第十九条 内閣総理大臣は、次のいずれかに該当する地域について、当該地域において実施されるべき公害の防止に関する施策に係る計画(以下「公害防止計画」という。)の基本方針を示して関係都道府県知事に対し当該計画の策定を指示するものとする。
 一 現に公害が著しく、かつ、公害の防止に関する施策を総合的に講じなければ公害の防止を図ることが著しく困難であると認められる地域
 二 人口及び産業の急速な集中等により公害が著しくなるおそれがあり、かつ、公害の防止に関する施策を総合的に講じなければ公害の防止を図ることが著しく困難になると認められる地域
2 関係都道府県知事は、前項の指示を受けたときは、同項の基本方針に基づき公害防止計画を作成し、内閣総理大臣の承認を受けるものとする。
3 内閣総理大臣は、第一項の指示及び前項の承認を行なうにあたつては、あらかじめ、公害対策会議の議を経なければならない。
4 内閣総理大臣は、第一項の指示を行なうにあたつては、あらかじめ、関係都道府県知事の意見をきかなければならない。

 (公害防止計画の達成の推進)

第二十条 国及び地方公共団体は、公害防止計画の達成に必要な措置を講ずるように努めるものとする。

    第五節 公害に係る紛争の処理及び被害の救済

第二十一条 政府は、公害に係る紛争が生じた場合における和解の仲介、調停等の紛争処理制度を確立するため、必要な措置を講じなければならない。
2 政府は、公害に係る被害に関する救済の円滑な実施を図るための制度を確立するため、必要な措置を講じなければならない。

    第三章 費用負担及び財政措置等

 (費用負担)

第二十二条 事業者は、その事業活動による公害を防止するために国又は地方公共団体が実施する事業について、当該事業に要する費用の全部又は一部を負担するものとする。
2 前項の規定により事業者に同項の費用を負担させる場合における負担の対象となる費用の範囲、費用を負担させる事業者の範囲、各事業者に負担させる額の算出方法その他その負担に関し必要な事項については、別に法律で定める。

 (地方公共団体に対する財政措置)

第二十三条 国は、地方公共団体が公害の防止に関する施策を講ずるために要する費用について、必要な財政上の措置その他の措置を講ずるように努めなければならない。

 (事業者に対する助成)

第二十四条 国又は地方公共団体は、事業者が行なう公害の防止のための施設の整備について、必要な金融上及び税制上の措置その他の措置を講ずるように努めなければならない。
2 前項の措置を講ずるにあたつては、中小企業者に対する特別の配慮がなされなければならない。

   第四章 公害対策会議及び公害対策審議会

    第一節 公害対策会議

 (設置及び所掌事務)

第二十五条 総理府に、附属機関として、公害対策会議(以下「会議」という。)を置く。
2 会議は、次の各号に掲げる事務をつかさどる。
 一 公害防止計画に関し、第十九条第三項に規定する事項を処理すること。
 二 前号に掲げるもののほか、公害の防止に関する基本的かつ総合的な施策の企画に関して審議し、及びその施策の実施を推進すること。
 三 前二号に掲げるもののほか、法令の規定によりその権限に属する事務

 (組織等)

第二十六条 会議は、会長及び委員をもつて組織する。
2 会長は、内閣総理大臣をもつて充てる。
3 委員は、関係行政機関の長のうちから、内閣総理大臣が任命する。
4 会議に、幹事を置く。
5 幹事は、関係行政機関の職員のうちから、内閣総理大臣が任命する。
6 幹事は、会議の所掌事務について、会長及び委員を助ける。
7 会議の庶務は、厚生省環境衛生局において処理する。
8 前各号に定めるもののほか、会議の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。

    第二節 公害対策審議会

 (中央公害対策審議会)

第二十七条 総理府に、附属機関として、中央公害対策審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 審議会は、次の各号に掲げる事務をつかさどる。
 一 内閣総理大臣の諮問に応じ、公害対策に関する基本的事項を調査審議すること。
 二 前号に掲げるもののほか、法令の規定によりその権限に属する事務
3 審議会は、前項に規定する事項に関し、内閣総理大臣に意見を述べることができる。

第二十八条 審議会は、委員二十人以内で組織する。
2 委員は、公害の防止に関し学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が任命する。
3 委員は、非常勤とする。
4 審議会の庶務は、厚生省環境衛生局において処理する。
5 前各項に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。

 (地方公害対策審議会)

第二十九条 地方公共団体は、当該地方公共団体における公害対策に関する基本的事項を調査審議させる等のため、条例で定めるところにより、地方公害対策審議会を置くことができる。

   附 則

1 この法律は、公布の日から施行する。
2 総理府設置法(昭和二十四年法律第百二十七号)の一部を次のように改正する。

  第十五条第一項の表中歴史的風土審議会の項の次に次のように加える。

公害対策会議

公害対策基本法(昭和四十二年法律第百三十二号)第二十五条第二項各号に掲げる事項を行なうこと。 

中央公害対策審議会公害対策基本法第二十七条第二項各号に掲げる事項を行なうこと。

    
3 厚生省設置法(昭和二十四年法律第百五十一号)の一部を次のように改正する。

 第九条の二第一項に次の一号を加える。
 十七 公害対策会議及び中央公害対策審議会の庶務に関すること。
 第九条の二第二項中「第十四号まで」の下に「及び第十七号」を加える。
 第二十九条第一項の表中「公害審議会」を「生活環境審議会」に改める。

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