今日は、昭和時代中期の占領下の1950年(昭和25)に、皇居前広場(通称:人民広場)でデモ隊と占領軍が衝突し、8名が逮捕される「人民広場事件」が起きた日です。
人民広場事件(じんみんひろばじけん)は、皇居前広場(通称:人民広場)において、民主民族戦線東京準備会主催で、5万人規模(主催者発表)の人民決起大会が開催されたおり、私服警官が集会に紛れ込んでいたのを追及したのを機に警備をしていた占領軍との衝突に発展し、8名の労働者・学生が逮捕された事件でした。これは、5日後に控えていた参議院選挙投票に対するGHQの政治活動抑圧のアッピールとも考えられ、6月2日には、警視庁が皇居前広場と日比谷公園のデモ・集会使用を永久禁止する方針を発表、さらに3日には、異例の速さで実施された占領軍の軍事裁判で、人民広場事件逮捕者に重労働10年などの有罪判決が下されています。
その後、7月18日にマッカーサー(連合国軍最高司令官)が、日本共産党機関紙『アカハタ』の無期限発行停止を指令、7月24日にGHQが新聞協会代表に共産党員と同調者の追放を勧告し、レッドパージが開始されました。続いて、8月30日にGHQが全労連の解散を指令、9月1日に閣議が公務員のレッドパージ方針を決定、9月21日に映画界のレッドパージ始まり、10月23日に私鉄36社が516人をレッドパージ、11月13日には国鉄のレッドパージ開始で、470人に解雇通告されるなどレッドパージの嵐が吹き荒れることとなり、政府やGHQを批判する労働運動や政治活動に大きなダメージを与えます。
この一方で、公職追放されていた軍国主義者の追放解除、警察予備隊(現在の自衛隊の前身)の結成、学校行事への「日の丸・君が代」の復活、道徳教育の開始など当時軍国主義の復活ではないかとされ、「逆コース」と呼ばれた一連の動きが進められました。
〇戦後占領下での大衆運動、政治運動と「逆コース」の推移
<1947年(昭和22)>
・1月1日 吉田首相が年頭ラジオ放送で労働運動指導者を「不逞の輩」と呼んで問題となる
・1月31日 マッカーサー連合国軍最高司令官が「二・一ゼネスト」の中止を命令する
<1948年(昭和23)>
・4月8日 東宝争議が始まる(東宝は、経営不振を理由に270人の解雇を通告し、労働組合側は拒否)
・6月7日 国労が手当などを要求し鶴見線で終日ストを決行する
・7月31日 政令201号が公布され、公務員労働者から、団体交渉権を厳しく制限し、争議権を奪う
・10月19日 東宝争議が終結し、解雇通告の撤回と引き換えに、山本薩夫ら組合幹部20人が退社する
・11月29日 海員組合が48時間ストに突入し、全船舶が停船する
<1949年(昭和24)>
・4月4日 「団体等規制令」が公布され、主に左翼政治団体が取り締まりの対象とされる
・5月12日 東京三田の職業安定所で、自由労働者が「仕事よこせ闘争」を開始し、全国へ波及する
・5月14日 炭労740組合42万人が48時間ストに突入する
・5月31日 「行政機関職員定員法」の公布により、285,124人が整理の対象となる
・7月1日 政府が国鉄労組に9万5千余人の整理通告をする
・7月4日 マッカーサー連合国軍最高司令官が、「日本は共産主義進出阻止の防壁」と声明する
・7月6日 常磐線北千住~綾瀬駅間で国鉄総裁下山定則が汽車に轢断された遺体で発見される(下山事件)
・7月15日 中央本線三鷹駅構内で、無人列車が暴走して車止めに激突する事故(三鷹事件) が発生する
・7月19日 民間情報教育局(CIE)教育顧問イールズ、共産主義教授を追放せよと演説する
・8月17日 東北本線松川~金谷川駅間で列車転覆事故(松川事件)が発生する
・9月17日 東京都が都職員の人員整理を断行し、千百余人に辞令が出される
・9月28日 全国教育長会議が「赤色教員」追放を決議、各県で教員レッドパージが広まる
・10月2日 全労連などが反ファッショ平和擁護大会を開催する
・10月5日 日産自動車が組合に2,000人の整理通告をする
・10月20日 「東京都公安条例」が公布・施行され、これによりデモが届け出制となる
・12月25日 マッカーサーが戦犯で4年以下の刑で服役中のBC級46人に特赦令を出す
<1950年(昭和25)>
・2月10日 GHQが沖縄に「恒久的な基地」を建設すると発表する
・2月13日 東京都教育庁がレッドパージにより教員246人に退職を勧告する
・3月3日 自由労働者が完全就労要求し、東京八王子の職安に座りこみで68人が検束される
・3月7日 GHQが戦犯の仮釈放制度を制定と発表する
・3月25日 炭労の全国360組合31万人がストへ突入する
・5月2日 東北大学でのイールズ講演会に学生が抗議し、流会となる
・5月30日 皇居前広場(通称:人民広場)でデモ隊と占領軍が衝突し、8名が逮捕される(人民広場事件)
・6月2日 警視庁が皇居前広場と日比谷公園のデモ・集会使用永久禁止の方針を発表する
・6月3日 占領軍の軍事裁判で人民広場事件逮捕者に重労働10年等の有罪判決が下される
・6月13日 文部省が「学生が学外での政治集会やデモに参加することを禁止する」文相談話を発表する
・7月8日 マッカーサー連合国軍最高司令官が、警察予備隊の創設と海上保安庁保安員の増員を指令する
・7月18日 マッカーサー連合国軍最高司令官が『アカハタ』の無期限発行停止を指令する
・7月24日 GHQが新聞協会代表に共産党員と同調者の追放を勧告しレッドパージが始まる
・8月9日 レッドパージの被解雇者ら中心に、言論弾圧反対同盟が結成される
・8月23日 警察予備隊が第1次合格者約7,000人の入隊をもって発足する
・8月30日 GHQが全労連の解散を指令、全日本学生自治会総連合(全学連)がレッドパージ反対闘争を始める
・9月1日 閣議が公務員のレッドパージ方針を決定する
・9月21日 映画界のレッドパージ始まる
・10月13日 政府が戦犯覚書該当者を除く解除訴願中の10,090人の公職追放解除を発表する
・10月17日 文部省が学校行事に「日の丸・君が代」復活との天野貞祐文相談話を通達する
・10月23日 私鉄36社が516人をレッドパージする
・11月13日 国鉄のレッドパージ開始で、470人に通告される
・12月13日 「地方公務員法」が公布され、地方公務員の争議行為禁止が規定される
<1951年(昭和26)>
・2月7日 三井・北炭など4労組が無期限ストに突入する
・4月11日 トルーマン米国大統領が国連軍最高司令官・連合国軍最高司令官マッカーサーを解任する
・4月26日 文部省が教師用の「道徳教育手引要綱」を発表する
・8月16日 旧陸海軍将校1万1,185人の追放を解除する
・9月8日 「サンフランシスコ講和条約」と「日米安全保障条約」(旧)が調印される
〇同じ日の過去の出来事(以前にブログで紹介した記事)
1890年(明治23) | 俳人杉田久女の誕生日 | 詳細 |
1950年(昭和25) | 「文化財保護法」が公布される(文化財保護法公布記念日) | 詳細 |
1968年(昭和43) | 「消費者保護基本法」(現在の「消費者基本法」)が公布・施行される | 詳細 |
2006年(平成18) | 映画監督・脚本家今村昌平の命日 | 詳細 |