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 今日は、昭和時代中期の1956年(昭和31)に、「売春防止法」が公布(施行は1957年4月1日)された日です。
 売春防止法(ばいしゅんぼうしほう)は、売春を助長する行為等を処罰するとともに、売春を行うおそれのある女子に対する補導処分・保護更生の措置を定めることによって、売春の防止を図ることを目的とする法律(昭和31年法律第118号)でした。この法律は、売春が人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗を乱すものであるという観点に基づいて、「この法律で「売春」とは、対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう。」(第2条)と定義し、「何人も、売春をし、又はその相手方となつてはならない」(第3条)と規定しています。
 処罰の対象とされているのは、売春の勧誘、周旋、売春目的の前貸し、場所の提供、管理売春など、売春を助長する行為であり、最高刑は懲役10年とされました。また、売春の勧誘などをした20歳以上の女性に対しては婦人補導院に収容する補導処分、売春を行うおそれのある「要保護女子」に対しては保護更生の措置を講じることを規定しています。
 以下に、「売春防止法」を掲載しておきましたので、ご参照下さい。

〇「売春防止法」(昭和31年法律第118号)1956年(昭和31)5月24日公布 翌年4月1日施行

第1章 総則

(目的)

第1条 この法律は、売春が人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗をみだすものであることにかんがみ、売春を助長する行為等を処罰するとともに、性行又は環境に照して売春を行うおそれのある女子に対する補導処分及び保護更生の措置を講
ずることによつて、売春の防止を図ることを目的とする。

(定義)

第2条 この法律で「売春」とは、対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう。

(売春の禁止)

第3条 何人も、売春をし、又はその相手方となつてはならない。

(適用上の注意)

第4条 この法律の適用にあたつては、国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。

第2章 刑事処分

(勧誘等)

第5条 売春をする目的で、次の各号の一に該当する行為をした者は、六月以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
一 公衆の目にふれるような方法で、人を売春の相手方となるように勧誘すること。
二 売春の相手方となるように勧誘するため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。
三 公衆の目にふれるような方法で客待ちをし、又は広告その他これに類似する方法により人を売春の相手方となるように誘引すること。

(周旋等)

第6条 売春の周旋をした者は、二年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
2 売春の周旋をする目的で、次の各号の一に該当する行為をした者の処罰も、前項と同様とする。
一 人を売春の相手方となるように勧誘すること。
二 売春の相手方となるように勧誘するため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。
三 広告その他これに類似する方法により人を売春の相手方となるように誘引すること。

(困惑等による売春)

第7条 人を欺き、若しくは困惑させてこれに売春をさせ、又は親族関係による影響力を利用して人に売春をさせた者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
2 人を脅迫し、又は人に暴行を加えてこれに売春をさせた者は、三年以下の懲役又は三年以下の懲役及び十万円以下の罰金に処する。
3 前二項の未遂罪は、罰する。

(対償の収受等)

第8条 前条第一項又は第二項の罪を犯した者が、その売春の対償の全部若しくは一部を収受し、又はこれを要求し、若しくは約束したときは、五年以下の懲役及び二十万円以下の罰金に処する。
2 売春をした者に対し、親族関係による影響力を利用して、売春の対償の全部又は一部の提供を要求した者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

(前貸等)

第9条 売春をさせる目的で、前貸その他の方法により人に金品その他の財産上の利益を供与した者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

(売春をさせる契約)

第10条 人に売春をさせることを内容とする契約をした者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
2 前項の未遂罪は、罰する。

(場所の提供)

第11条 情を知つて、売春を行う場所を提供した者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
2 売春を行う場所を提供することを業とした者は、七年以下の懲役及び三十万円以下の罰金に処する。

(売春をさせる業)

第12条 人を自己の占有し、若しくは管理する場所又は自己の指定する場所に居住させ、これに売春をさせることを業とした者は、十年以下の懲役及び三十万円以下の罰金に処する。

(資金等の提供)

第13条 情を知つて、第十一条第二項の業に要する資金、土地又は建物を提供した者は、五年以下の懲役及び二十万円以下の罰金に処する。
2 情を知つて、前条の業に要する資金、土地又は建物を提供した者は、七年以下の懲役及び三十万円以下の罰金に処する。

(両罰)

第14条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第九条から前条までの罪を犯したときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。

(併科)

第15条 第六条、第七条第一項、第八条第二項、第九条、第十条又は第十一条第一項の罪を犯した者に対しては、懲役及び罰金を併科することができる。第七条第一項に係る同条第三項の罪を犯した者に対しても、同様とする。

(刑の執行猶予の特例)

第16条 第五条の罪を犯した者に対し、その罪のみについて懲役の言渡をするときは、刑法(明治四十年法律第四十五号)第二十五条第二項ただし書の規定を適用しない。同法第五十四条第一項の規定により第五条の罪の刑によつて懲役の言渡をするときも、同様とする。

第3章 補導処分

(補導処分)

第17条 第五条の罪を犯した満二十歳以上の女子に対して、同条の罪又は同条の罪と他の罪とに係る懲役又は禁錮につきその執行を猶予するときは、その者を補導処分に付することができる。
2 補導処分に付された者は、婦人補導院に収容し、その更生のために必要な補導を行う。

(補導処分の期間)

第18条 補導処分の期間は、六月とする。

(保護観察との関係)

第19条 第五条の罪のみを犯した者を補導処分に付するときは、刑法第二十五条の二第一項の規定を適用しない。同法第五十四条第一項の規定により第五条の罪の刑によつて処断された者についても、同様とする。

(補導処分の言渡)

第20条 裁判所は、補導処分に付するときは、刑の言渡と同時に、判決でその言渡をしなければならない。

(勾留状の効力)

第21条 補導処分に付する旨の判決の宣告があつたときは、刑事訴訟法 (昭和二十三年法律第百三十一号)第三百四十三条から第三百四十五条までの規定を適用しない。

(収容)

第22条 補導処分に付する旨の裁判が確定した場合において、収容のため必要があるときは、検察官は、収容状を発することができる。
2 収容状には、補導処分の言渡を受けた者の氏名、住居、年齢、収容すべき婦人補導院その他収容に必要な事項を記載し、これに裁判書又は裁判を記載した調書の謄本又は抄本を添えなければならない。
3 収容状は、検察官の指揮によつて、検察事務官、警察官又は婦人補導院若しくは監獄の職員が執行する。収容状を執行したときは、これに執行の日時、場所その他必要な事項を記載しなければならない。
4 収容状については、刑事訴訟法第七十一条、第七十三条第一項及び第三項並びに第七十四条の規定を準用する。
5 収容状によつて身体の拘束を受けた日数は、補導処分の期間に算入する。
6 検察官は、収容状を発したときは、補導処分に付する旨の裁判の執行を指揮することを要しない。

(補導処分の競合)

第23条 補導処分に付する旨の二以上の裁判が同時に又は時を異にして確定した場合において、二以上の確定裁判があることとなつた日以後に一の補導処分について執行(執行以外の身体の拘束でその日数が補導処分の期間に算入されるものを含む。)が行われた
ときは、その日数は、他の補導処分の期間に算入する。

(在院者の環境調整)

第24条 保護観察所の長は、婦人補導院に収容されている者の社会復帰を円滑にするため、必要があると認めるときは、その者の環境の調整に関する措置を講ずることができる。
2 前項の措置については、犯罪者予防更生法(昭和二十四年法律第百四十二号。以下「予防更生法」という。)第五十二条 の規定を準用する。

(仮退院の許可)

第25条 地方更生保護委員会(以下「地方委員会」という。)は、補導処分に付された者に対し、婦人補導院の長の申請又は職権により、相当と認めるときは、仮に退院を許すことができる。
2 婦人補導院の長は、補導処分に付された者が収容されたときは、すみやかに、これを地方委員会に通告しなければならない。
3 第一項の仮退院については、予防更生法第二十九条から第三十二条までの規定を準用する。この場合において、同法第二十九条第二項 中「前条」とあるのは、「売春防止法第二十五条第二項」と読み替えるものとする。

(仮退院中の保護観察)

第26条 仮退院を許された者は、補導処分の残期間中、保護観察に付する。
2 前項の保護観察については、予防更生法第二条、第三十四条から第三十七条まで及び第三十九条から第四十一条の二までの規定を準用する。この場合において、同法第三十四条第二項 中「第三十一条第三項 」とあるのは、「売春防止法第二十五条第三項において準用する第三十一条第三項」と、第四十一条第七項中「第四十五条第一項」とあるのは、「売春防止法第二十七条第二項において準用する第四十五条第一項」と読み替えるものとする。

(仮退院の取消)

第27条 仮退院中の者が遵守すべき事項を遵守しなかつたときは、地方委員会は、仮退院の取消をすることができる。
2 前項の仮退院の取消については、予防更生法第四十四条第一項及び第二項並びに第四十五条第一項 、第二項 、第五項 及び第六項 の規定を準用する。この場合において、同法第四十五条第一項 中「第四十一条第二項 」とあるのは、「売春防止法第二十六条
第二項において準用する第四十一条第二項」と読み替えるものとする。
3 仮退院中の者が前項の規定において準用する予防更生法第四十五条第二項の規定により留置されたときは、その留置の日数は、補導処分の期間に算入する。
4 仮退院が取り消されたときは、検察官は、収容のため再収容状を発することができる。
5 再収容状には、仮退院を取り消された者の氏名、住居、年齢、収容すべき婦人補導院その他収容に必要な事項を記載しなければならない。
6 再収容状については、第二十二条第三項から第五項までの規定を準用する。ただし、再収容状の執行は、同条第三項に規定する者のほか、保護観察官もすることができる。

(行政手続法の適用除外)

第27条の2 第二十四条から前条まで及び第二十九条の規定による処分及び行政指導については、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二章から第四章までの規定は、適用しない。

(審査請求)

第28条 第二十七条第一項の規定による地方委員会の処分に不服がある者は、中央更生保護審査会に対して審査請求をすることができる。
2 前項の審査請求については、予防更生法第五十条 から第五十一条の二 までの規定を、同項に規定する処分の取消しの訴えについては、同法第五十一条の三の規定を準用する。この場合において、同法第五十条第一項中「監獄又は少年院」とあるのは「婦人
補導院」と、同法第五十一条の二中「六十日」とあるのは「三十日」と読み替えるものとする。

(予防更生法雑則の準用)

第29条 仮退院の許可、仮退院中の保護観察、仮退院の取消し及び処分の審査については、第二十五条から前条までに定めるもののほか、予防更生法第五十五条から第五十九条まで及び第六十条第一項の規定を準用する。

(仮退院の効果)

第30条 仮退院を許された者が、仮退院を取り消されることなく、補導処分の残期間を経過したときは、その執行を受け終つたものとする。

(更生緊急保護)

第31条 婦人補導院から退院した者及び前条の規定により補導処分の執行を受け終わつたとされた者については、予防更生法第四十八条の二第一項第一号 に掲げる者とみなし、予防更生法第四十八条の二 から第四十八条の四 まで及び第六十条 の規定を適用する。
この場合において、予防更生法第四十八条の二第一項及び第四項中「刑事上の手続による身体の拘束」とあるのは「補導処分による身体の拘束」と、第四十八条の三第二項中「監獄の長」とあるのは「婦人補導院の長」と、「刑事上の手続による身体の拘束」とあるのは「補導処分による身体の拘束」と、同条第三項中「監獄の長」とあるのは「婦人補導院の長」と、「仮出獄」とあるのは「仮退院」とする。

(執行猶予期間の短縮)

第32条 婦人補導院から退院した者及び第三十条の規定により補導処分の執行を受け終つたとされた者については、退院の時又は補導処分の執行を受け終つたとされた時において刑の執行猶予の期間を経過したものとみなす。
2 第五条の罪と他の罪とにつき懲役又は禁錮に処せられ、補導処分に付された者については、刑法第五十四条第一項の規定により第五条の罪の刑によつて処断された場合を除き、前項の規定を適用しない。

(補導処分の失効)

第33条 刑の執行猶予の期間が経過し、その他刑の言渡がその効力を失つたとき、又は刑の執行猶予の言渡が取り消されたときは、補導処分に付する旨の言渡は、その効力を失う。

第4章 保護更生

(婦人相談所)

第34条 都道府県は、婦人相談所を設置しなければならない。
2 婦人相談所は、性行又は環境に照して売春を行うおそれのある女子(以下「要保護女子」という。)の保護更生に関する事項について、主として次の各号の業務を行うものとする。
一 要保護女子に関する各般の問題につき、相談に応ずること。
二 要保護女子及びその家庭につき、必要な調査並びに医学的、心理学的及び職能的判定を行い、並びにこれらに附随して必要な指導を行うこと。
三 要保護女子の一時保護を行うこと。
3 婦人相談所に、所長その他所要の職員を置く。
4 婦人相談所には、要保護女子を一時保護する施設を設けなければならない。
5 前各項に定めるもののほか、婦人相談所に関し必要な事項は、政令で定める。

(婦人相談員)

第35条 都道府県知事は、社会的信望があり、かつ、第三項に規定する職務を行うに必要な熱意と識見を持つている者のうちから、婦人相談員を委嘱するものとする。
2 市長は、社会的信望があり、かつ、次項に規定する職務を行うに必要な熱意と識見を持つている者のうちから、婦人相談員を委嘱することができる。
3 婦人相談員は、要保護女子につき、その発見に努め、相談に応じ、必要な指導を行い、及びこれらに附随する業務を行うものとする。
4 婦人相談員は、非常勤とする。

(婦人保護施設)

第36条 都道府県は、要保護女子を収容保護するための施設(以下「婦人保護施設」という。)を設置することができる。

(民生委員等の協力)

第37条 民生委員法 (昭和二十三年法律第百九十八号)に定める民生委員、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)に定める児童委員、保護司法(昭和二十五年法律第二百四号)に定める保護司、更生保護事業法平成七年法律第八十六号)に定める更生
保護事業を営むもの及び人権擁護委員法(昭和二十四年法律第百三十九号)に定める人権擁護委員は、この法律の施行に関し、婦人相談所及び婦人相談員に協力するものとする。

(都道府県及び市の支弁)

第38条 都道府県は、次の各号に掲げる費用を支弁しなければならない。
一 婦人相談所に要する費用(第五号に掲げる費用を除く。)
二 都道府県知事の委嘱する婦人相談員に要する費用
三 都道府県の設置する婦人保護施設の設備に要する費用
四 都道府県の行う収容保護(市町村、社会福祉法人その他適当と認める者に委託して行う場合を含む。)及びこれに伴い必要な事務に要する費用五婦人相談所の行う一時保護に要する費用2 市は、その長が委嘱する婦人相談員に要する費用を支弁しなければならない。

(都道府県の補助)

第39条 都道府県は、市町村又は社会福祉法人の設置する婦人保護施設の設備に要する費用の四分の三以内を補助することができる。

(国の負担及び補助)

第40条 国は、政令の定めるところにより、都道府県が第三十八条第一項の規定により支弁した費用のうち、同項第一号及び第五号に掲げるものについては、その十分の五を負担するものとする。
2 国は、予算の範囲内において、次の各号に掲げる費用の十分の五以内を補助することができる。
一 都道府県が第三十八条第一項の規定により支弁した費用のうち、同項第二号から第四号までに掲げるもの
二 市が第三十八条第二項の規定により支弁した費用
3 国は、予算の範囲内において、都道府県が前条の規定により補助した金額の三分の二以内を補助することができる。

附則(略)

  「法令全書」より

☆明治時代以降の売春に関する法的規制の推移(明治5年以前の日付は旧暦です)

・1872年(明治5年10月2日) 明治新政府が「芸娼妓解放令」(太政官布告第295号)を出す
・1900年(明治33)10月2日 「娼妓取締規則」(内務省令第44号)が発布され、公娼制度を認める前提で一定の規制を行なう
・1908年(明治41) 非公認の売淫を取り締まることになる
・1946年(昭和21)1月4日 連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)から「公務従事に適しない者の公職からの除去に関する件」(SCAPIN-550)が出され、公娼制度廃止が要求される
・1946年(昭和21)2月2日 「娼妓取締規則」が廃止される
・1947年(昭和22)1月15日 ポツダム命令として、「婦女に売淫をさせた者等の処罰に関する勅令」(昭和22年勅令第9号)が出され、公娼制度は名目的には廃止されるが、事実上の公娼制度は以降も存続する
・1948年(昭和23) 第2回国会において、「売春等処罰法案」が提出されるが、厳格すぎるとして審議未了、廃案となる
・1953年(昭和28)~1955年(昭和30) 女性議員によって、議員立法として同旨の法案が繰り返し提出されたが、いずれも廃案となる
・1955年(昭和30)10月7日 最高裁判所において、酌婦業務を前提とした前借金契約を公序良俗違反として無効であるとの判例変更がなされる
・1956年(昭和31)5月2日 「売春防止法案」が国会へ提出される
・1956年(昭和31)5月21日 「売春防止法」が国会で可決される
・1956年(昭和31)5月24日 「売春防止法」が公布される
・1957年(昭和32)4月1日 「売春防止法」が施行される
・1958年(昭和33)4月1日 1年間の猶予期間が設けられていた刑事処分が適用されるようになる

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