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 今日は、江戸時代後期の1823年(文政6)に、写真業創始者・写真家・画家下岡蓮杖の生まれた日ですが、新暦では3月24日となります。
 下岡蓮杖(しもおか れんじょう)は、伊豆国下田中原町(現在の静岡県下田市)で、下田問屋六十三軒衆の一人だった父・桜田与惣右衛門の三男として生まれましたが、通称は久之助と言いました。幼い頃から絵を好み、1835年(天保6)の13歳の時、江戸に出て日本橋横山町の足袋問屋に丁稚奉公をしたものの、3年で辞め、下田へ帰ります。
 1843年(天保14)に父のコネで、下田奉行所の臨時下田御台場附足軽の職につきましたが、翌年頃には江戸へ行き、絵師狩野董川(とうせん)に弟子入り、玄関番などを勤めつつ絵師を志しました。偶然オランダ船のもたらしたダゲレオタイプを見る機会を得て写真に開眼、外国人に近づこうと、伯父を頼り浦賀奉行の足軽として浦賀平根山台場の御番所警衛係の職を得ましたが、うまくいかずに下田へ戻ります。
 そこで、「漂民欠乏所」の足軽として外使への給仕役として勤め、写真術を学ぶ機会を窺い、1856年(安政3)に横浜開港の談判のために来日したタウンゼント・ハリスの通訳であるヘンリー・ヒュースケンから、写真術の原理や基本概要を学びました。1859年(安政6)に下田開港場は閉鎖されお役御免になり、江戸へ出ましたが、翌年頃には横浜へ移り、アメリカ人商人ラファエル・ショイヤーのもとで働きつつ、かたわらショイヤーの妻から西洋風のパノラマ油彩画の技法を学びます。
 また、アメリカの写真家ジョン・ウィルソンの写真術を学び、写真機材一式を入手、1862年(文久2)に横浜野毛に日本最初の営業写真館を開業しました。外国人中心に写真撮影を行っていましたが、1864年(元治元)に来日し、石版の技術を有していたアメリカ人の建築技師リチャード・ブリジェンスと親しくなり、石版印刷を学びます。
 1867年(慶応3年)頃に、横浜馬車道の太田町に「全楽堂」の名称で、富士山の大看板を掲げた新築店舗を構え、一方で、馬車を輸入し東京・横浜間で乗合馬車事業を興し、日本初の石版印刷業、牛乳搾取業を始めるなど、文明開化期の様々な新事業にも手を染めました。それらが陰りを見せ始めると、1882年(明治15)には、浅草第五区に写真館を移したものの、写真業から遠ざかり、油絵茶屋などを開き、電車の模型を作ったりして晩年を過ごします。
 門下からは、横山松三郎、鈴木真一、江崎礼二、中島待乳ら、明治期に活躍した高名な写真師を輩出し、日本の商業写真の開祖の一人とされますが、1914年(大正3)3月3日に、東京・浅草において、92歳で亡くなりました。

〇下岡蓮杖関係略年表(明治5年以前の日付は旧暦です)

・1823年(文政6年2月12日) 伊豆国下田中原町(現在の静岡県下田市)で、桜田与惣右衛門の三男として生まれる
・1835年(天保6年) 13歳の時、江戸に出て日本橋横山町の足袋問屋に丁稚奉公をする
・1838年(天保9年) 丁稚奉公を辞め、下田へ帰る
・1843年(天保14年) 父のコネで、下田奉行所の臨時下田御台場附足軽の職につく
・1844年(弘化元年)頃 江戸の絵師狩野董川(とうせん)に弟子入り、玄関番などを勤めつつ絵師を志す
・1856年(安政3年) 横浜開港の談判のために来日したタウンゼント・ハリスの通訳であるヘンリー・ヒュースケンから、写真術の原理や基本概要を学ぶ
・1859年(安政6年12月) 下田開港場は閉鎖され蓮杖もお役御免になり、江戸へ出る
・1860年(万延元年)頃 横浜へ移り、アメリカ人商人ラファエル・ショイヤーのもとで働きつつ、かたわらショイヤーの妻から西洋風のパノラマ油彩画の技法を学ぶ
・1862年(文久2年) 横浜野毛に日本最初の営業写真館を開業する
・1864年(元治元年) 来日し、石版の技術を有していたアメリカ人の建築技師リチャード・ブリジェンスと親しくなり、そこで石版印刷を学ぶ
・1867年(慶応3年)頃 横浜馬車道の太田町に「全楽堂」の名称で、富士山の大看板を掲げた新築店舗を構える
・1876年(明治9年) 写真師としては第一線から退き、東京・浅草へ転居、浅草公園にパノラマ館を開設する
・1878年(明治11年) 蒸気機関車の模型や空に上がると音を出すアドバルーンなどの話を、読売新聞に書く
・1882年(明治15年) 浅草第5区で営業する
・1914年(大正3年)3月3日 東京・浅草において、92歳で亡くなる

〇同じ日の過去の出来事(以前にブログで紹介した記事)

729年(神亀6)長屋王が謀叛の疑いで邸宅を包囲され自害する(新暦3月16日)詳細
1889年(明治22)黒田清隆内閣総理大臣が鹿鳴館において、地方長官らに対し超然主義演説をする詳細
1996年(平成8)小説家司馬遼太郎の命日詳細