今日は、明治時代後期の1902年(明治35)に、小説家・児童文学者住井すゑの生まれた日です。
住井すゑ(すみい すえ)は、奈良県磯城郡平野村満田(現在の田原本町)の富裕な家庭に生まれ、田原本技芸女学校在学中に「少女世界」等の雑誌に投稿、田原本高等女学校を卒業しました。1919年(大正8)に17歳で上京して講談社の編集記者となりましたが、翌年に女性社員差別に抗議して辞め、19歳で農民作家犬田卯(しげる)と結婚します。
1921年(大正10)に、長編小説『相剋』を出版(住井すゑ子名義)して作家としてデビュー、1924年(大正13)に夫と共に、農民文芸研究会をつくり、1927年(昭和2)には、農民文芸会に改組しました。1929年(昭和4)に『大地にひらく』が読売新聞創設55周年記念懸賞小説2位に当選、翌年には、無産婦人芸術連盟に参加し、機関誌「婦人戦線」に寄稿を始め、講演「母性は起つ」を行うなど、女性解放・農民文学運動に打ちと込みます。
1931年(昭和6)の満州事変以降、プロレタリア文学運動への弾圧が激しくなり、1935年(昭和10)には、夫の郷里である茨城県稲敷郡牛久村城中(現在の牛久市)に転居、4人の子育てをしながら、農業と執筆活動に従事しました。1940年(昭和15)に『農婦譚』、1941年(昭和16)に『子供の村』、短編小説集『土の女たち』、1942年(昭和17)に『子供日本』、1943年(昭和18)には、長編『大地の倫理』を刊行するなどします。
太平洋戦争後は、児童文学でも活躍し、1952年(昭和27)に『みかん』で第1回小学館児童文化賞、1954年(昭和29)には、『夜あけ朝あけ』で第8回毎日出版文化賞を受賞しました。1957年(昭和32)に夫・犬田卯が亡くなったのを契機に、翌年から被差別者の人間的解放を願った大河小説『橋のない川』に着手、1973年(昭和48)までに第1部から第6部を刊行してロングセラーとなり、1969~70年と1992年の2度にわたって映画化されます。
1978年(昭和53)に自宅敷地内に「抱樸舎」を建て、時事問題や文化などをテーマに、著名人を講師に招いて公開学習会を開催、読者と積極的に交流し続けました。1992年(平成4)に小説『橋のない川』第7部を刊行しましたが、1997年(平成9)6月16日に、茨城県牛久市において、老衰のため95歳で亡くなっています。
〇住井すゑの主要な著作
・小説『相剋』(1921年)
・小説『大地にひらく』(1929年)読売新聞創設55周年記念懸賞小説2位当選
・小説『大地の倫理』(1943年)
・児童文学『みかん』(1952年)第1回小学館文学賞受賞
・児童文学『夜あけ朝あけ』(1954年)第8回毎日出版文化賞受賞
・自伝『愛といのちと』犬田卯との共著(1957年)
・小説『向い風』(1958年)
・小説『橋のない川 第1部』(1961年)
・小説『橋のない川 第2部』(1961年)
・小説『橋のない川 第3部』(1963年)
・小説『橋のない川 第4部』(1964年)
・小説『橋のない川 第5部』(1970年)
・小説『橋のない川 第6部』(1973年)
・小説『野づらは星あかり』(1978年)
・エッセイ『牛久沼のほとり』(1983年)
・小説『橋のない川 第7部』(1992年)
☆住井すゑ関係略年表
・1902年(明治35)1月7日 奈良県磯城郡平野村満田の富裕な家庭に生まれる
・1919年(大正8) 17歳で上京して講談社の編集記者となる
・1920年(大正9) 女性社員差別に抗議して、講談社の編集記者を辞める
・1921年(大正10) 小説『相剋』を出版(住井すゑ子名義)して作家としてデビュー、農民作家犬田卯(しげる)と結婚する
・1924年(大正13) 農民文芸研究会をつくる
・1927年(昭和2) 農民文芸研究会を農民文芸会に改組する
・1929年(昭和4) 小説『大地にひらく』が読売新聞創設55周年記念懸賞小説2位に当選する
・1930年(昭和5) 無産婦人芸術連盟に参加し、機関誌「婦人戦線」に寄稿を始め、講演「母性は起つ」を行う
・1935年(昭和10) 夫の郷里である茨城県稲敷郡牛久村城中(現在の牛久市)に転居する
・1940年(昭和15) 『農婦譚』を刊行する
・1941年(昭和16) 『子供の村』、短編小説集『土の女たち』を刊行する
・1942年(昭和17) 『子供日本』を刊行する
・1943年(昭和18) 長編『大地の倫理』を刊行、小学館の児童雑誌、教育雑誌に童話などを執筆する
・1948年(昭和23) 『飛び立つカル』が、三省堂の国語教科書に掲載される
・1952年(昭和27) 児童文学『みかん』で第1回小学館児童文化賞(文学部門)を受賞する
・1954年(昭和29) 児童文学『夜あけ朝あけ』を刊行、第8回毎日出版文化賞を受賞する
・1957年(昭和32) 夫・犬田卯が亡くなる
・1958年(昭和33) 小説『向い風』を刊行する
・1959年(昭和34) 小説『橋のない川』を部落問題研究所の雑誌「部落」に連載(翌年まで22回)開始する
・1961年(昭和36) 小説『橋のない川』第2部を書き下ろし刊行する
・1963年(昭和38) 小説『橋のない川』第3部を刊行する
・1964年(昭和39) 小説『橋のない川』第4部を刊行する
・1970年(昭和45) 小説『橋のない川』第5部を刊行する
・1973年(昭和48) 小説『橋のない川』第6部を刊行する
・1978年(昭和53) 自宅敷地内に「抱樸舎」を建てる、長編小説『野づらは星あかり』を刊行する
・1982年(昭和57) 河出書房新社より文を執筆した絵本集を刊行する
・1992年(平成4) 日本武道館で講演「九十歳の人間宣言 - いまなぜ人権が問われるのか」を行う、小説『橋のない川』第7部を刊行する
・1997年(平成9)6月16日 茨城県牛久市において、老衰のため95歳で亡くなる
〇同じ日の過去の出来事(以前にブログで紹介した記事)
1490年(延徳2) | 室町幕府第8代将軍足利義政の命日(新暦1月27日) | 詳細 | |||||
1835年(天保6) | 官僚・実業家・男爵前島密の誕生日(新暦2月4日) | 詳細 | |||||
1939年(昭和14) | 戦争経済を支える人的資源の把握の為、「国民職業能力申告令」が公布される | 詳細 |