今日は、昭和時代中期の1955年(昭和30)に、「原子力基本法」(昭和30年法律第186号)が公布(施行は翌年1月1日)された日です。
「原子力基本法(げんしりょくきほんほう)」は、日本の原子力の研究、開発、利用は平和目的のみに限られ、民主・自主・公開のいわゆる原子力三原則に基づいて進められることを明記した法律でした。その中で、原子力委員会、原子力開発機関、原子力鉱物の開発取得、核燃料物質・原子炉の管理、特許・発明等に関する措置、放射線障害防止、補償等に関し規定しています。
1974年(昭和49)の原子力船むつの放射線漏れ事故を受け、1978年(昭和53)には、基本方針に「安全の確保を旨として」の文言を追加し、それまでの原子力委員会の役割のうち安全規制にかかわる機能が分離独立し、原子力安全委員会が創設されました。また、2011年(平成23)3月11日の東日本大震災による、福島第一原発事故を受け、翌年6月に改正され、原子力規制委員会と原子力防災会議が設置され、原子力安全委員会が削除されています。
以下に、現行の「原子力基本法」を掲載しておきますので、ご参照下さい。
〇「原子力基本法」(昭和30年法律第186号) 1955年(昭和30)12月19日公布、1956年(昭和31)1月1日施行
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、原子力の研究、開発及び利用(以下「原子力利用」という。)を推進することによつて、将来におけるエネルギー資源を確保し、学術の進歩と産業の振興とを図り、もつて人類社会の福祉と国民生活の水準向上とに寄与することを目的とする。
(基本方針)
第二条 原子力利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し、進んで国際協力に資するものとする。
2 前項の安全の確保については、確立された国際的な基準を踏まえ、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として、行うものとする。
(定義)
第三条 この法律において次に掲げる用語は、次の定義に従うものとする。
一 「原子力」とは、原子核変換の過程において原子核から放出されるすべての種類のエネルギーをいう。
二 「核燃料物質」とは、ウラン、トリウム等原子核分裂の過程において高エネルギーを放出する物質であつて、政令で定めるものをいう。
三 「核原料物質」とは、ウラン鉱、トリウム鉱その他核燃料物質の原料となる物質であつて、政令で定めるものをいう。
四 「原子炉」とは、核燃料物質を燃料として使用する装置をいう。ただし、政令で定めるものを除く。
五 「放射線」とは、電磁波又は粒子線のうち、直接又は間接に空気を電離する能力をもつもので、政令で定めるものをいう。
第一章の二 原子力規制委員会
第三条の二 原子力利用における安全の確保を図るため、別に法律で定めるところにより、環境省の外局として、原子力規制委員会を置く。
第一章の三 原子力防災会議
(設置)
第三条の三 内閣に、原子力防災会議(以下「会議」という。)を置く。
(所掌事務)
第三条の四 会議は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 原子力災害対策指針(原子力災害対策特別措置法(平成十一年法律第百五十六号)第六条の二第一項に規定する原子力災害対策指針をいう。)に基づく施策の実施の推進その他の原子力事故(原子炉の運転等(原子力損害の賠償に関する法律(昭和三十六年法律第百四十七号)第二条第一項に規定する原子炉の運転等をいう。)に起因する事故をいう。次号において同じ。)が発生した場合に備えた政府の総合的な取組を確保するための施策の実施の推進
二 原子力事故が発生した場合において多数の関係者による長期にわたる総合的な取組が必要となる施策の実施の推進
(組織)
第三条の五 会議は、議長、副議長及び議員をもつて組織する。
2 議長は、内閣総理大臣をもつて充てる。
3 副議長は、内閣官房長官、環境大臣、内閣官房長官及び環境大臣以外の国務大臣のうちから内閣総理大臣が指名する者並びに原子力規制委員会委員長をもつて充てる。
4 議員は、次に掲げる者をもつて充てる。
一 議長及び副議長以外の全ての国務大臣並びに内閣危機管理監
二 内閣官房副長官、環境副大臣若しくは関係府省の副大臣、環境大臣政務官若しくは関係府省の大臣政務官又は国務大臣以外の関係行政機関の長のうちから、内閣総理大臣が任命する者
(事務局)
第三条の六 会議に、その事務を処理させるため、事務局を置く。
2 事務局に、事務局長その他の職員を置く。
3 事務局長は、環境大臣をもつて充てる。
4 事務局長は、議長の命を受け、命を受けた内閣官房副長官補及び内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四条第三項に規定する事務を分担管理する大臣たる内閣総理大臣の協力を得て、局務を掌理する。
(政令への委任)
第三条の七 この法律に定めるもののほか、会議に関し必要な事項は、政令で定める。
第二章 原子力委員会
(設置)
第四条 原子力利用に関する国の施策を計画的に遂行し、原子力行政の民主的な運営を図るため、内閣府に原子力委員会を置く。
(任務)
第五条 原子力委員会は、原子力利用に関する事項(安全の確保のうちその実施に関するものを除く。)について企画し、審議し、及び決定する。
(組織、運営及び権限)
第六条 原子力委員会の組織、運営及び権限については、別に法律で定める。
第三章 原子力の開発機関
(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構)
第七条 原子力に関する基礎的研究及び応用の研究並びに核燃料サイクルを確立するための高速増殖炉及びこれに必要な核燃料物質の開発並びに核燃料物質の再処理等に関する技術の開発並びにこれらの成果の普及等は、第二条に規定する基本方針に基づき、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構において行うものとする。
第四章 原子力に関する鉱物の開発取得
(鉱業法の特例)
第八条 核原料物質に関する鉱業権又は租鉱権に関しては、別に法律をもつて、鉱業法(昭和二十五年法律第二百八十九号)の特例を定めるものとする。
(買取命令及び譲渡命令)
第九条 政府は、別に法律で定めるところにより、その指定する者に対し、核原料物質を買い取るべきことを命じ、又は核原料物質の生産者又は所有者若しくは管理者に対し、政府の指定する者に核原料物質を譲渡すべきことを命ずることができる。
(核原料物質の管理)
第十条 核原料物質の輸入、輸出、譲渡、譲受及び精錬は、別に法律で定めるところにより、政府の指定する者に限つてこれを行わしめるものとする。
(奨励金等)
第十一条 政府は、核原料物質の開発に寄与する者に対し、予算の範囲内において奨励金又は賞金を交付することができる。
第五章 核燃料物質の管理
(核燃料物質に関する規制)
第十二条 核燃料物質を生産し、輸入し、輸出し、所有し、所持し、譲渡し、譲り受け、使用し、又は輸送しようとする者は、別に法律で定めるところにより政府の行う規制に従わなければならない。
(核燃料物質の譲渡命令)
第十三条 政府は、前条に規定する規制を行う場合において、別に法律で定めるところにより、核燃料物質を所有し、又は所持する者に対し、譲渡先及び価格を指示してこれを譲渡すべきことを命ずることができる。
第六章 原子炉の管理
(原子炉の建設等の規制)
第十四条 原子炉を建設しようとする者は、別に法律で定めるところにより政府の行う規制に従わなければならない。これを改造し、又は移動しようとする者も、同様とする。
第十五条 原子炉を譲渡し、又は譲り受けようとする者は、別に法律で定めるところにより政府の行う規制に従わなければならない。
第十六条 前二条に規定する規制に従つて原子炉を建設し、改造し、移動し、又は譲り受けた者は、別に法律で定めるところにより、操作開始前に運転計画を定めて、政府の認可を受けなければならない。
第七章 特許発明等に対する措置
(特許法による措置)
第十七条 政府は、原子力に関する特許発明につき、公益上必要があると認めるときは、特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第九十三条の規定により措置するものとする。
(譲渡制限)
第十八条 原子力に関する特許発明、技術等の国外流出に係る契約の締結は、別に法律で定めるところにより政府の行う規制に従わなければならない。
(奨励金等)
第十九条 政府は、原子力に関する特許出願に係る発明又は特許発明に関し、予算の範囲内において奨励金又は賞金を交付することができる。
第八章 放射線による障害の防止
(放射線による障害の防止措置)
第二十条 放射線による障害を防止し、公共の安全を確保するため、放射性物質及び放射線発生装置に係る製造、販売、使用、測定等に対する規制その他保安及び保健上の措置に関しては、別に法律で定める。
第九章 補償
(補償)
第二十一条 政府又は政府の指定する者は、この法律及びこの法律を施行する法律に基き、核原料物質の開発のためその権限を行う場合において、土地に関する権利、鉱業権又は租鉱権その他の権利に関し、権利者及び関係人に損失を与えた場合においては、それぞれ法律で定めるところにより、正当な補償を行わなければならない。
附 則
この法律は、昭和三十一年一月一日から施行する。
附 則 (昭和四二年七月二〇日法律第七二号)
この法律は、公布の日から施行する。ただし、第七条の改正規定は、公布の日から起算して六月をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。
附 則 (昭和五三年七月五日法律第八六号) 抄
(施行期日)
第一条 この法律は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に掲げる日から施行する。
一 第二条中原子力委員会設置法第十五条を第十二条とし同条の次に二章及び章名を加える改正規定のうち第二十二条(同条において準用する第五条第一項の規定中委員の任命について両議院の同意を得ることに係る部分に限る。)の規定並びに次条第一項及び第三項の規定 公布の日
二 第一条の規定、第二条の規定(前号に掲げる同条中の規定を除く。)、第三条中核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第四条第二項の改正規定、同法第十四条第二項の改正規定、同法第二十三条に一項を加える改正規定及び同法第二十四条第二項の改正規定(「内閣総理大臣」を「主務大臣」に改める部分を除く。)並びに次条第二項、附則第五条から附則第七条まで及び附則第九条の規定 公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日
三 前二号に掲げる規定以外の規定 公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日
附 則 (平成一〇年五月二〇日法律第六二号) 抄
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第二条中動力炉・核燃料開発事業団法第三十一条及び第三十二条第三項を削る改正規定並びに附則第五条及び第六条の規定については、公布の日から施行する。
(核燃料サイクル開発機構への移行)
第二条 動力炉・核燃料開発事業団(以下「事業団」という。)は、この法律の施行の時において、核燃料サイクル開発機構(以下「機構」という。)となるものとする。
(持分の払戻し)
第三条 政府以外の出資者は、機構に対し、この法律の施行の日から起算して一月を経過した日までの間に限り、その持分の払戻しを請求することができる。
2 機構は、前項の規定による請求があったときは、この法律による改正後の核燃料サイクル開発機構法(以下「新法」という。)第七条第一項の規定にかかわらず、当該持分に係る出資額に相当する金額により払戻しをしなければならない。この場合において、機構は、その払戻しをした金額により資本金を減少するものとする。
(名称の使用制限に関する経過措置)
第四条 この法律の施行の際現に核燃料サイクル開発機構という名称を使用している者については、新法第九条の規定は、この法律の施行後六月間は、適用しない。
(事業団の役員に関する経過措置)
第五条 この法律の施行の日の前日において事業団の役員である者の任期は、この法律による改正前の動力炉・核燃料開発事業団法第十四条第一項の規定にかかわらず、その日に満了する。
(基本方針に関する経過措置)
第六条 内閣総理大臣は、この法律の施行の日前において、原子力委員会の議決を経て新法第二十七条第一項の規定による基本方針を定めなければならない。
2 内閣総理大臣は、前項の規定により基本方針を定めようとするときは、あらかじめ、大蔵大臣及び通商産業大臣に協議しなければならない。ただし、通商産業大臣との協議は、新法第二十四条第一項第一号イ、ロ及びニに掲げる業務に係る事項に限られるものとする。
(罰則に関する経過措置)
第七条 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
附 則 (平成一一年七月一六日法律第一〇二号) 抄
(施行期日)
第一条 この法律は、内閣法の一部を改正する法律(平成十一年法律第八十八号)の施行の日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 第一条から第三条までの規定並びに次条及び附則第三十一条から第三十八条までの規定 内閣法の一部を改正する法律の施行前の日で別に法律で定める日
二 附則第十条第一項及び第五項、第十四条第三項、第二十三条、第二十八条並びに第三十条の規定 公布の日
(職員の身分引継ぎ)
第三条 この法律の施行の際現に従前の総理府、法務省、外務省、大蔵省、文部省、厚生省、農林水産省、通商産業省、運輸省、郵政省、労働省、建設省又は自治省(以下この条において「従前の府省」という。)の職員(国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第八条の審議会等の会長又は委員長及び委員、中央防災会議の委員、日本工業標準調査会の会長及び委員並びに これらに類する者として政令で定めるものを除く。)である者は、別に辞令を発せられない限り、同一の勤務条件をもって、この法律の施行後の内閣府、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省若しくは環境省(以下この条において「新府省」という。)又はこれに置かれる部局若しくは機関のうち、この法律の施行の際現に当該職員が属する従前の府省又はこれに置かれる部局若しくは機関の相当の新府省又はこれに置かれる部局若しくは機関として政令で定めるものの相当の職員となるものとする。
(別に定める経過措置)
第三十条 第二条から前条までに規定するもののほか、この法律の施行に伴い必要となる経過措置は、別に法律で定める。
附 則 (平成一六年一二月三日法律第一五五号) 抄
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、附則第十条から第十二条まで、第十四条から第十七条まで、第十八条第一項及び第三項並びに第十九条から第三十二条までの規定は、平成十七年十月一日から施行する。
附 則 (平成二四年六月二七日法律第四七号) 抄
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 第七条第一項(両議院の同意を得ることに係る部分に限る。)並びに附則第二条第三項(両議院の同意を得ることに係る部分に限る。)、第五条、第六条、第十四条第一項、第三十四条及び第八十七条の規定 公布の日
(その他の経過措置の政令への委任)
第八十七条 この附則に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
附 則 (平成二六年六月一三日法律第六七号) 抄
(施行期日)
第一条 この法律は、独立行政法人通則法の一部を改正する法律(平成二十六年法律第六十六号。以下「通則法改正法」という。)の施行の日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 附則第十四条第二項、第十八条及び第三十条の規定 公布の日
(処分等の効力)
第二十八条 この法律の施行前にこの法律による改正前のそれぞれの法律(これに基づく命令を含む。)の規定によってした又はすべき処分、手続その他の行為であってこの法律による改正後のそれぞれの法律(これに基づく命令を含む。以下この条において「新法令」という。)に相当の規定があるものは、法律(これに基づく政令を含む。)に別段の定めのあるものを除き、新法令の相当の規定によってした又はすべき処分、手続その他の行為とみなす。
(罰則に関する経過措置)
第二十九条 この法律の施行前にした行為及びこの附則の規定によりなおその効力を有することとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
(その他の経過措置の政令等への委任)
第三十条 附則第三条から前条までに定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)は、政令(人事院の所掌する事項については、人事院規則)で定める。
「法令全書」より
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