今日は、明治時代後期の1896年(明治29)に、陸羽地震(マグニチュード7.2)が起こり、死者209人、負傷者779人を出した日です。
陸羽地震(りくうじしん)は、午後5時06分27秒に秋田・岩手県境の山間部で発生したマグニチュード7.2の大地震で、震源は真昼山地の直下(北緯39.5度、東経140.7度)で、深さは10kmより浅いとされました。東北地方の内陸部が震源の地震としては最大規模の内陸直下型地震で、震源地付近で震度6、一部では震度7の揺れがあったと推定され、東北地方中心に揺れを感じ、真昼山地の秋田県側には千屋断層(長さ約30km、最大3.5m変位)、岩手県側には川舟断層がそれぞれ出現しています。
この結果、秋田・岩手両県を中心に大きな被害を出し、死者209人、負傷者779人、家屋全壊5,792戸、半壊3,045戸、山崩れ9,899箇所にも及びました。特に、秋田県仙北郡の千屋、畑屋、飯詰、六郷などの町村では、75%以上の家屋が全半壊し、震源のほぼ真上にあった千屋村では、地盤が液状化を起こし、地割れから泥水が噴出、この村だけで、家屋の全壊は338戸、焼失7戸を数え、34人が死亡しています。
尚、この地震の1ヶ月半ほど前の6月15日にも明治三陸地震(マグニチュード8.2)が起き、大津波によって、三陸地方中心に死者・行方不明者は2万1,959人を出すという、大きな被害が出ていました。
以下に、陸羽地震による惨状を書き留めた『畑屋村震災惨状記』(抜粋)を掲載しておきますので、ご参照下さい。
〇『畑屋村震災惨状記』(抜粋)
明治29年8月31日我が地方に非常に大きな地震があった。我村では21人の即死者141人の重軽傷者を出した。無論四隣町村に於ても惨害を被りたること言ふまでもない。此の惨状を目のあたり見て要点を書きつつで置いたものは本書である。実に亡友耕芸高橋石五郎君の遺著である。
(中略)
此の地震のときは自分は青森歩兵第五連隊第九中隊にあった。此の日戦友等と共に夕食を喫し面桶を洗浄すべく満水の入盥の前に立てありしに大地震で盥の水は東に西に溢し出つるを見た。当時何とも思はなかったが翌日になって秋田仙北の震災を報じて来た。後数日許可を得て臨時帰省して見たらありし我家は全く取り払はれ僅に水屋と土蔵とを利用して家族の住居となしてあつた。附近一円原形を留めてなく、惨状目も当てられぬ有様であった当時厳父慈母の語る処に因れば地震のときは母方の老祖母が来泊されてあった。この突差大地震に老祖母及び母と妹のハル子が通路を失い屋内に喚き叫んで居るうちに家屋は倒潰して了つた。宅地に隅々よりは噴水の如く泥土が湧き出たと云ふ有様である。父は外より呼びつつ漸くにして三人のありかを尋ね当て倒れたる家の欄間より引き辷り出したと云ふことである。幸いに怪我の無かったのは天佑である。斯うした惨話は村内毎戸にありしと思はる。
「『畑屋村震災惨状記』に記された 1896 年陸羽地震の震災の状況と対応について」水田敏彦著より
☆日本付近で明治時代に起きたマグニチュード7.0以上の大地震一覧
・1872年3月14日(明治5年2月6日) 浜田地震(島根県沖) M7.1
・1881年(明治14)10月25日 国後島 M7.0
・1891年(明治24)10月28日 濃尾地震(岐阜県) M8.0
・1983年(明治26)6月4日 色丹島沖地震 M7.7
・1894年(明治27)3月22日 根室半島沖地震 M7.9
・1894年(明治27)6月20日 明治東京地震 M7.0
・1894年(明治27)10月22日 庄内地震 M7.0
・1895年(明治28)1月18日 霞ヶ浦 M7.2
・1896年(明治29)1月9日 茨城県沖 M7.3
・1896年(明治29)6月15日 明治三陸地震 M8.2
・1896年(明治29)6月16日 三陸沖 M7.5
・1896年(明治29)8月31日 陸羽地震 M7.2
・1897年(明治30)2月20日 宮城県沖 M7.4
・1897年(明治30)8月5日 三陸沖 M7.7
・1898年(明治31)4月23日 宮城県沖 M7.2
・1898年(明治31)9月1日 石垣島東方沖 M7.0
・1899年(明治32)3月7日 紀伊大和地震(奈良・三重) M7.0
・1900年(明治33)5月12日 宮城県北部 M7.0
・1901年(明治34)8月9日 青森県東方沖 M7.2
・1901年(明治34)8月10日 青森県東方沖 M7.4
・1902年(明治35)1月30日 青森県三八上北地方地震 M7.0
・1905年(明治38)6月2日 芸予地震(瀬戸内海) M7.2
・1905年(明治38)7月7日 福島県沖 M7.1
・1911年(明治44)6月15日 喜界島地震 M8.0
〇同じ日の過去の出来事(以前にブログで紹介した記事)
1878年(明治11) | 日本画家鏑木清方(かぶらき きよかた)の誕生日 | 詳細 |
1913年(大正2) | お雇い外国人であるドイツ人医師E・von ベルツの命日 | 詳細 |
1970年(昭和45) | 小説家・検察官・弁護士佐賀潜の命日 | 詳細 |