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 今日は、明治時代前期の1881年(明治14)に、文部省によって「師範学校教則大綱」が制定された日です。
 「師範学校教則大綱(しはんがっこうきょうそくたいこう)」は、1880年(明治13)の「改正教育令」で、師範学校について「各府県ハ小学校教員ヲ養成センカ為ニ師範学校ヲ設置スヘシ」と改定され、それに基づいて、形式・内容・程度について統一するために文部省が制定したものでした。これにより、師範学校を初等師範学科(修業年限1年)、中等師範学科(修業年限2年半)、高等師範学科(修業年限4年)に分け、高等師範学科は小学各等科の教員、中等師範学科は小学中等科および初等科教員、初等師範学科は小学初等科の教員を養成するものと定めます。
 初等師範学科の学科目は修身・読書・習字・算術・地理・物理・教育学・学校管理法・実地授業および唱歌・体操、中等師範学科の学科目は、その他歴史・図画・生理・博物・化学・幾何・簿記を加え、高等師範学科の学科目は、さらに代数・経済・本邦法令・心理を加えました。土地の状況によっては某学科の程度を斟酌し、農業・工業・商業・英語等を加え、女子のためには本邦法令・経済を除き、もしくは某学科の程度を斟酌し、裁縫・家事経済等を加えることができるものとし、学年副学科別の毎週教授時数を示す学科課程表をも掲げています。入学資格は、年齢17歳以上、小学中等科卒業以上の学力ある者と規定し、土地の状況によっては年齢15歳以上としてもさしつかえないとしました。また、卒業証書の有効期間を7年とし、その後は学力試験と品行等の検定の上、合格者に証書を与え高等または中等師範学科の卒業証書を有する者で7年以上勤務し、学力優等、授業練熟、品行端正な者には試験を行なわずに終身有効の証書を与えることとしています。
 以下に、「師範学校教則大綱」を掲載しておきますので、ご参照下さい。

〇師範学校とは?

 明治時代初期から太平洋戦争後の教育改革まで存続した、主に初等教育の教員養成を目的に設けられた旧制の学校です。1872年(明治5)の「学制」公布の際、東京に官立師範学校が創設され、のち次第に各府県に公立師範学校が設けられ、1886年(明治19)に「学校令」の一つ、「師範学校令」により制度として確立されました。
 入学資格は高等小学校卒業以上の学力を有し17歳以上20歳以下の者、修業年限を4年(のち5年)と規程されます。生徒の学資(無月謝・給費制)は学校が支給(地方税負担)することになっていたため、経済的に恵まれない者が多く入学したとされ、その代償措置としての服務義務制(卒業後一定年限、管内の初等学校に奉職する義務)があり、また、全員入寮の寄宿舎制(舎監の厳しい監督のもとで規則に支配され、没個性化・画一化された)などを特徴としました。
 1898年(明治31)4月1日の「師範教育令」の施行により、女子高等師範が独立するとともに、中等学校教員を養成するための高等師範学校と区別して、小学校教員養成のための尋常師範学校を単に師範学校と称することとなります。1907年(明治40)に同本科に二部を置き、従前の高等小学校からの進学のほか、中等学校卒業後に入学する道も開かれました。
 太平洋戦争中の1943年(昭和18)には、専門学校と同程度の教育機関となり、府県立から官立に昇格します。これらによって、強い統制の下で国家主義的教育を行ない、軍国主義教育を行う教師を生み出したとされ、戦後1947年(昭和22)の「学校教育法」により廃止されました。
 そして、1949年(昭和24)以降、新制大学の教育学部または学芸大学に再編されています。

〇「師範学校教則大綱」(明治十四年八月十九日達第二十九号)

師範学校教則ノ大綱別冊ノ通可相心得此旨相達候事

師範学校教則大綱

第一条 師範学校ハ小学校教員タルニ必須ノ学科ヲ授クル所トス

第二条 師範学科ヲ分テ初等中等高等ノ三等トス

第三条 初等師範学科ハ修身、読書、習字、算術、地理、物理、教育学学校管理法、実地授業及唱歌、体操トス

但唱歌ハ教授法等ノ整フヲ待テ之ヲ設クヘシ以下之ニ傚フ

第四条 中等師範学科ハ修身、読書、習字、算術、地理、歴史、図画、生理、博物、物理、化学、幾何、記簿、教育学学校管理法、実地授業及唱歌、体操トス

第五条 高等師範学科ハ修身、読書、習字、算術、地理、歴史、図画、生理、博物、物理、化学、幾可、代数、経済、記簿、本邦法令、心理、教育学学校管理法、実地授業及唱歌、体操トス

第六条 師範学校ニ於テハ土地ノ情況ニ因リ某学科ノ程度ヲ斟酌シ農業、工業、商業等ヲ加フルヲ得殊ニ女子ノ為ニハ本邦法令、経済等ヲ除キ若クハ某学科ノ程度ヲ斟酌シテ裁縫、家事経済等ヲ加フヘシ

第七条 高等師範学科卒業ノ者ハ小学各等科ノ教員タルヲ得ヘク中等師範学科卒業ノ者ハ小学中等科及初等科ノ教員タルヲ得ヘク初等師範学科卒業ノ者ハ小学初等科ノ教員タルヲ得ヘキモノトス

第八条 師範学科ヲ修メントスル生徒ハ品行端正、体質強健、年齢十七年以上ニシテ小学中等科卒業以上ノ学力アル者タルヘシ

但年齢ハ土地ノ情況ニ因リ十五年以上トスルモ妨ケナシ又初等中等学科卒業ノ者ハ高等師範学科第四年級ニ入ルコトヲ得

第九条 師範学校ノ修業年限ハ初等師範学科ヲ一箇年トシ中等師範学科ヲ二箇年半トシ高等師範学科ヲ四箇年トス

第十条 師範学校ノ授業時限ハ一年三十六週一週二十八時ヲ以テ度トス

第十一条 師範学科卒業ノ者ニハ其学修セシ所ニ随ヒ初等若クハ中等若クハ高等師範学科ノ卒業証書ヲ与フヘシ

第十二条 師範学校ニ於テハ本校ニ入学セスト雖モ卒業証書ヲ請フ者アラハ現ニ施行スル所ノ教則ニ拠リ其ノ学力ヲ試験シ且其品行等検定ノ上合格ノ者ニハ卒業証書ヲ与フヘシ

第十三条 師範学科卒業証書ハ七箇年間其効ヲ有スルモノトス

但師範学校ニ於テハ本文七箇年ノ後卒業証書ヲ請フ者アルトキハ現ニ施行スル所ノ教則ニ拠リ更ニ其学力ヲ試験シ其品行等検定ノ上合格ノ者ニ卒業証書ヲ与フヘキハ勿論タルヘシ

第十四条 高等若クハ中等師範学科卒業証書ヲ有スル者ニシテ七箇年以上小学校教員ノ職ニ従事シ学力優等、授業練熟、品行端正ノ証跡アル者ニハ試験ヲ須ヒス終身有効ノ卒業証書ヲ与フヘシ

第十五条 師範学科卒業証書ヲ有スル者ニシテ品行不正ノ証跡アルトキハ其卒業証書ヲ没収スヘシ

右掲クル所ノ各等師範学科毎週授業時間ノ一例ヲ示スコト左表ノ如シ

 表略

     「文部科学省」ホームページより

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