今日は、平成時代の1990年(平成2)に、長崎県の雲仙普賢岳で198年ぶりの噴火(雲仙普賢岳1990-96年噴火)が始まった日です。
雲仙普賢岳(うんぜんふげんだけ)は、長崎県島原半島にある活火山で、雲仙火山群およびその中央部を占める雲仙岳の主峰(標高1,359m)とされてきました。妙見岳(1,333m)、国見岳(1,347m)、九千部岳(標高1,062m)、絹笠山など多くの山体を総称して雲仙岳と呼ばれています。
雲仙岳は、デイサイトと安山岩からなる複合火山で、約50万年前に活動を開始し、前期には火砕流やマグマ水蒸気爆発を中心とする噴火がおき、その後、溶岩流や溶岩円頂丘(溶岩ドーム)を中心とする噴火活動に移行しました。近世になって、江戸時代の1663年(寛文3)に噴火し、再び起きた1792年(寛政4)の噴火では、山崩れ・大津波により死者約1万5000名を数える、有史以来日本最大といわれる火山災害も起きています。
その後小康状態を保っていたものの、198年ぶりで、1990年(平成2)11月17日から水蒸気爆発が始まり、翌年5月20日に溶岩の噴出が始まりました。溶岩は流動性の悪いデイサイト質で、火口付近に溶岩ドームを形成し、それが崩壊して火砕流が頻発するようになり、同年6月3日には火口から東側に4km流下し、報道関係者、外国人火山学者など43人の命を奪う惨事となり、数千世帯が避難を余儀なくされます。
火砕流は普賢岳の北東側、北側にも発生し、1993年(平成5)6月にも死者1人を出しましたが、溶岩は1995年(平成7)2月半ばに噴出を停止、翌年6月3日に噴火終息宣言が出されました。この噴火により、山頂付近に溶岩円頂丘(標高1,488m)が形成され、島原市と小浜町が 1996年平成新山と名づけ、雲仙岳の新たな最高峰となります。
雲仙岳は、「温泉(うんぜん)岳」とも書き、また「肥前風土記」には「高来峰(たかぎみね)」とも記されていました。温泉の存在は古くから知られていましたが、江戸時代に雲仙温泉古湯が開湯され、明治時代には、外国人向け保養地として新湯が開発されます。
風光明媚で、春のツツジ(ミヤマキリシマ)、冬の霧氷などで知られ、1934年(昭和9)3月には、日本最初の国立公園の一つに指定されました。国見岳から九千部岳の山腹を経て田代原にいたる観光道路が建設され、妙見岳には仁田峠からロープウェーが架設され、キャンプ場、ゴルフ場なども出来、「温泉岳」として国の特別名勝にも指定されて、多くの観光客を迎え入れています。
尚、2009年(平成21)には、普賢岳を含む島原半島全体が「島原半島ジオパーク」として世界ジオパークに認定されました。
〇「活火山」とは?
活動的で近い将来噴火を起こす可能性のある火山のことですが、日本では、おおむね過去1万年以内に噴火した記録があるか、現在活発な噴気活動のある火山とされています。
火山噴火予知連絡会によって、(1)過去1万年間の噴火の頻度、規模、爆発性などを定量化した1万年活動度指数、(2)過去100年間の観測データに基づく100年活動度指数。の2つの尺度が決められ、これによって、活火山はA・B・Cの3段階に分類されました。(ただし、海底火山と北方領土の火山は、データ不足のため評価の対象外)2017年(平成29)7月現在、Aランク(最も活動度が高い)の火山は13、Bランク(活動度は中程度)は36、Cランク(活動度は最も低い)の火山は38、対象外の火山は23で、合計110となっています。
☆日本の活火山一覧(火山噴火予知連絡会、活動度による分類)
<北海道>
・十勝岳(北海道)ランクA
・樽前山(北海道)ランクA
・有珠山(北海道)ランクA
・北海道駒ケ岳(北海道)ランクA
・浅間山(長野県・群馬県)ランクA
・知床硫黄山(北海道)ランクB
・羅臼岳(北海道)ランクB
・摩周(北海道)ランクB
・雌阿寒岳(北海道)ランクB
・恵山(北海道)ランクB
・渡島大島(北海道)ランクB
・アトサヌプリ(北海道)ランクC
・丸山(北海道)ランクC
・大雪山(北海道)ランクC
・利尻山(北海道)ランクC
・恵庭岳(北海道)ランクC
・倶多楽(北海道)ランクC
・羊蹄山(北海道)ランクC
・ニセコ(北海道)ランクC
<東北>
・岩木山(青森県)ランクB
・十和田(青森県・秋田県)ランクB
・恐山(青森県)ランクC
・八甲田山(青森県)ランクC
・秋田焼山(秋田県)ランクB
・岩手山(岩手県)ランクB
・八幡平(岩手県・秋田県)ランクC
・秋田駒ヶ岳(秋田県)ランクB
・鳥海山(秋田県・山形県)ランクB
・栗駒山(宮城県)ランクB
・蔵王山(宮城県・山形県)ランクB
・鳴子(宮城県)ランクC
・肘折(山形県)ランクC
・吾妻山(福島県)ランクB
・安達太良山(福島県)ランクB
・磐梯山(福島県)ランクB
・沼沢(福島県)ランクC
・燧ヶ岳(福島県)ランクC
<関東>
・那須岳(栃木県)ランクB
・高原山(栃木県)ランクC
・男体山(栃木県)ランクC
・日光白根山(栃木県・群馬県)ランクC
・榛名山(群馬県)ランクB
・草津白根山(群馬県)ランクB
・赤城山(群馬県)ランクC
・伊豆大島(東京都)ランクA
・三宅島(東京都)ランクA
・伊豆鳥島(東京都)ランクA
・神津島(東京都)ランクB
・西之島(東京都)ランクB
・硫黄島(東京都)ランクB
・新島(東京都)ランクB
・利島(東京都)ランクC
・御蔵島(東京都)ランクC
・八丈島(東京都)ランクC
・青ヶ島(東京都)ランクC
・箱根山(神奈川県)ランクB
<中部>
・新潟焼山(新潟県)ランクB
・妙高山(新潟県)ランクC
・横岳(長野県)ランクC
・焼岳(長野県・岐阜県)ランクB
・御嶽山(長野県・岐阜県)ランクB
・乗鞍岳(長野県・岐阜県)ランクC
・アカンダナ山(岐阜県)ランクC
・白山(福井県・岐阜県)ランクC
・弥陀ヶ原(富山県)ランクC
・富士山(静岡県・山梨県)ランクB
・伊豆東部火山群(静岡県)ランクB
<中国>
・三瓶山(島根県)ランクC
・阿武火山群(山口県)ランクC
<九州>
・雲仙岳(長崎県)ランクA
・福江火山群(長崎県)ランクC
・阿蘇山(熊本県)ランクA
・九重山(大分県)ランクB
・鶴見岳・伽藍岳(大分県)ランクB
・由布岳(大分県)ランクC
・霧島山(鹿児島県・宮崎県)ランクB
・桜島(鹿児島県)ランクA
・薩摩硫黄島(鹿児島県)ランクA
・諏訪之瀬島(鹿児島県)ランクA
・米丸・住吉池(鹿児島県)ランクC
・池田・山川(鹿児島県)ランクC
・開聞岳(鹿児島県)ランクC
・中之島(鹿児島県)ランクB
・硫黄鳥島(鹿児島県)ランクB
・口之島(鹿児島県)ランクC
・口永良部島(鹿児島県)ランクB
A:100年活動度または1万年活動度が特に高い活火山
B:100年活動度または1万年活動度が高い活火山
C:100年活動度および1万年活動度がともに低い活火山
注:上記以外にデータ不足で対象外となっている北方領土や海底の火山があります
〇同じ日の過去の出来事(以前にブログで紹介した記事)
1951年(昭和26) | 神奈川県鎌倉市に「神奈川県立近代美術館」が開館する | 詳細 |
1986年(昭和61) | 将棋棋士・14世名人木村義雄の命日 | 詳細 |