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 今日は、昭和時代中期の1961年(昭和36)に、小説家・劇作家・評論家長与善郎の亡くなった日です。
 長与善郎(ながよ よしろう)は、明治時代前期の1888年(明治21)8月6日に、東京市麻布区宮村町(現在の東京都港区)において、医学者長與專齋の五男として生まれました。学習院高等科在学中思想書・文学書に接し、1911年(明治44)に志賀直哉や武者小路実篤らの同人誌『白樺』に参加します。
 同年、東京帝国大学文学部英文科へ入学しましたが、翌年退学しました。その後、自らの失恋体験に即した『盲目の川』(1914年)、結婚の経緯を描いた『彼等の運命』(1915~16年)などの自伝小説や戯曲『項羽と劉邦』(1916~17年)で人道主義的作家として認められます。
 以後、戯曲『夜の戯曲』(1920年)、小説『青銅の基督 (キリスト) 』(1923年)などを書いて高く評価されました。1923年(大正)の関東大震災で『白樺』が廃刊になった後は、翌年に『不二』を主宰し、同誌に思想小説『竹沢先生と云(い)ふ人』(1924~25年)を連載して広く世に迎えられます。
 大正時代末に病を得て、数年創作から離れた後に、1933年(昭和8)に明治大学講師として東洋思想を講じ、1935年(昭和10)から2年ほど満鉄嘱託として満州、中国を旅行しました。その中で、東洋の思想・美術への関心を深め、『大帝康煕』、『文化の問題』(ともに1938年)、『東洋の道と美』(1943年)、『東洋芸術の諸相』(1944年)などを刊行します。
 太平洋戦争後も幅広く活躍し、1948年(昭和23)に芸術院会員となり、1959年(昭和34)には、自伝的大作『わが心の遍歴』で第11回読売文学賞・評論伝記賞を受賞しました。しかし、1961年(昭和36)10月29日に、東京都世田谷区の自宅において、73歳で亡くなっています。

〇長与善郎の主要な著作

・小説『盲目の川』(1914年)
・小説『彼等の運命』(1915~16年)
・戯曲『項羽と劉邦』(1916~17年)
・小説『陸奥(むつ)直二郎』(1918年)
・戯曲『夜の戯曲』(1920年)
・小説『青銅の基督 (キリスト) 』(1923年)
・小説『竹沢先生と云(い)ふ人』(1924~25年)
・『大帝康煕(こうき)』(1938年)
・『文化の問題』(1938年)
・『韓非子』(1942年)
・『東洋の道と美』(1943年)
・『東洋芸術の諸相』(1944年)
・小説『野性の誘惑』(1947年)
・小説『その夜』(1948~51年)
・小説『押し花帖(ちょう)』(1954年)
・自伝『わが心の遍歴』(1957~59年)読売文学賞受賞

〇同じ日の過去の出来事(以前にブログで紹介した記事)

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