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 今日は、昭和時代前期の1937年(昭和12)に、国民精神総動員中央連盟が発足し、国民精神総動員運動が始まった日です。
 国民精神総動員運動(こくみんせいしんそうどういんうんどう)は、昭和時代前期の1937年(昭和12)7月7日の日中全面戦争突入(盧溝橋事件)以後、第一次近衛内閣により行われた国民を戦争に協力させるための運動でした。8月24日に「国民精神総動員実施要綱」が閣議決定され、10月12日 に挙国一致・尽忠報国・堅忍持久を3目標として、国民精神総動員中央連盟が発足して、国民精神総動員運動が始まります。
 翌年までに帝国在郷軍人会、全国神職会、全国市長会、日本労働組合会議など多くの団体が参加するようになりました。最初は、精神運動の性格が強かったのですが、次第に献金、献品など物的協力に転換していき、貯蓄増加や国債消化の奨励、金属類回収などが展開されます。1939年(昭和14)3月には文部大臣を委員長とする国民精神総動員中央委員会が設置され、道府県には主務課が設けられました。
 同年8月には興亜奉公日(同年9月1日より毎月1日)が設定され、さらに翌年4月には、従来の組織を解消して、首相を会長とする国民精神総動員本部が設けられ、中央連盟を吸収します。しかし、同本部も同年10月には大政翼賛会に吸収されて、運動が引き継がれていきました。 

〇「国民精神総動員実施要綱」1937年(昭和12)8月24日 閣議決定

一、趣旨
挙国一致堅忍不抜ノ精神ヲ以テ現下ノ時局ニ対処スルト共ニ今後持続スベキ時艱ヲ克服シテ愈々皇運ヲ扶翼シ奉ル為此ノ際時局ニ関スル宣伝方策及国民教化運動方策ノ実施トシテ官民一体トナリテ一大国民運動ヲ起サントス

二、名称
「国民精神総動員」

三、指導方針
(一)「挙国一致」「尽忠報国」ノ精神ヲ鞏ウシ事態ガ如何ニ展開シ如何ニ長期ニ亘ルモ「堅忍持久」総ユル困難ヲ打開シテ所期ノ目的ヲ貫徹スベキ国民ノ決意ヲ固メシメルコト
(二)右ノ国民ノ決意ハ之ヲ実践ニ依ツテ具現セシムルコト
(三)指導ノ細目ハ思想戦、宣伝戦、経済戦、国力戦ノ見地ヨリ判断シテ随時之ヲ定メ全国民ヲシテ国策ノ遂行ヲ推進セシムルコト
(四)実施ニ当リテハ対象トナルベキ人、時期及地方ノ情況ヲ考慮シ最モ適当ナル実施計画ヲ定ムルコト

四、実施機関
(一)本運動ハ情報委員会、内務省及文部省ヲ計画主務庁トシ各省総掛リニテ之ガ実施ニ当ルコト
(二)本運動ノ趣旨達成ヲ図ル為中央ニ民間各方面ノ有力ナル団体ヲ網羅シタル外廓団体ノ結成ヲ図ルコト
(三)道府県ニ於テハ地方長官ヲ中心トシ官民合同ノ地方実行委員会ヲ組織スルコト
(四)市町村二於テハ市町村長中心トナリ各種団体等ヲ総合的ニ総動員シ更二部落町内又ハ職場ヲ単位トシテ其ノ実行ニ当ラシムルコト

五、実施方法
(一)内閣及各省ハ夫々其ノ所管ノ事務及施設ニ関連シテ実行スルコト
(二)広ク内閣及各省関係団体ヲ動員シテ夫々其ノ事業ニ関連シテ適当ナル協力ヲ為サシムルコト
(三)道府県ニ於テハ地方実行委員会ト協力シテ具体的実施計画ヲ樹立実施スルコト
(四)市町村ニ於テハ総合的ニ且部落又ハ町内毎ニ実施計画ヲ樹立シテ其ノ実行ニ努メ各家庭ニ至ル迄滲透セシムルコト
(五)諸会社、銀行、工場、商店等ノ職場ニ就キテハ其ノ責任者ニ於テ実施計画ヲ樹立シ且実行スルコト
(六)各種言語機関ニ対シテハ本運動ノ趣旨ヲ懇談シテ其ノ積極的協力ヲ求ムルコト
(七)ラヂオノ利用ヲ図ルコト
(八)文芸、音楽、演芸、映画等関係者ノ協力ヲ求ムルコト

六、実施上ノ注意
(一)本運動ハ実践ヲ旨トシテ国民生活ノ現実ニ滲透セシムルコト
(二)従来都市ニ於ケル知識階級ニ対シテハ徹底ヲ欠ク憾アリシヲ此ノ点ニ留意スルコト
(三)社会ノ指導的地位ニ在ル者二対シ其ノ率先躬行ヲ求ムルコト

  「国家総動員史 資料編」第4 石川準吉著(国家総動員史刊行会)より 

<現代語訳>

 一、国民精神総動員実施要綱

一、趣旨
挙国一致して堅忍不抜の精神を以て現在の時局に対処すると共に、今後も持続するつらいことを克服して、いよいよ皇室の運を浮かび上がらせるために、官民一体となって一大国民運動を起こすものとする。
二、名称
「国民精神総動員」
三、運動の目標
「挙国一致」、「尽忠報国」の精神を堅持して、事態がどのように展開し、いかに長期にわたっても、「堅忍持久」あらゆる困難を打開して、所期の目的を貫き通すように国民の決意を固め、このため必要な国民の実践の徹底を期するものとする。
実践事項は右の目標に基づいて、日本精神の発揚による挙国一致を具体的に実現し、並びに非常時財政経済に対する全国的協力の実行を主としてこれを定め、事態の推移並びに地方の実情等を考慮して、適切にほどよく処理するものとする。
四、実施機関
(一)本運動は情報委員会、内務省及び文部省を計画主務庁として、各省総掛かりでこれの実施に当たること。
(二)本運動の趣旨達成を図るために、中央に有力な外郭団体の結成を図ること。
(三)道府県に於ては地方長官を中心として、官民合同の地方実行委員会を組織すること。
(四)市町村に於ては市町村長が中心となって、各種団体等を総合的に総動員し、さらに集落町内または職場を単位として、その実行に当たること。
五、実施方法
(一)内閣及び各省は、それぞれその所管の事務及び施設に関連して実行すること。
(二)広く内閣及び各省関係団体に対して、それぞれその事業に関連して適切な協力を求めること。
(三)道府県に於ては、地方実行委員会と協力して具体的な実施計画を樹立して実行すること。
(四)市町村に於ては、総合的に集落または町内ごとに実施計画を樹立してその実行に努め、各家庭に至るまで浸透するように努めること。
(五)諸会社、銀行、工場、商店等に於ては、それぞれ実施計画を樹立して実行するように協力を求めること。
(六)各種言論機関に対しては、その協力を求めること。
(七)ラジオの利用を図ること。
(八)文芸、音楽、演芸、映画等関係者の協力を求めること。

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