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 今日は、平成時代の2007年(平成19)に、国連総会で「先住民族の権利に関する国際連合宣言」が採択された日です。
 先住民族の権利に関する国際連合宣言(United Nations Declaration on the Rights of Indigenous Peoples)は、第61期の国際連合総会において採択された、先住民にすべての人権と基本的自由を保障する国際連合総会決議(賛成143、反対4、棄権11)で、日本も賛成票を投じました。
 宣言では、文化、アイデンティティ、言語、雇用、健康、教育に対する権利を含め、先住民族の個人および集団の権利を規定し、先住民族の制度、文化、伝統を維持、強化し、かつニーズと願望に従って開発を進める先住民族の権利を強調、先住民族に対する差別を禁止し、先住民族に関係するすべての事項について完全かつ効果的に参加できるようにすることとしています。それには、固有の生活様式を守り、かつ経済社会開発に対する自身のビジョンを追及する権利も含められるとしました。
 1982年(昭和57)に、国連の人権小委員会は、先住民に関する作業グループを設置し、「先住民族の権利に関する宣言」の草案を作成します。1992年(平成4)の地球サミットでは、先住民族から彼らの土地、領土、環境が悪化していることに懸念が表明され、国連開発計画(UNDP)、ユニセフ、国際農業開発基金(IFAD)、ユネスコ、世界銀行、世界保健機関(WHO)などの国連のさまざまな機関が先住民の状況を改善するための事業計画を実施しました。そして、国連総会で、1993年(平成5)を「世界の先住民の国際年(International Year of the World's Indigenous People)」とすることとなります。
 それに続く、1995~2004年の10年間が「世界の先住民の国際の10年(International Decade of the World's Indigenous People)」、2005~2014年の10年間が、「第2次世界の先住民族の国際の10年(Second International Decade of the World's Indigenous People)」に指定されました。こうした先住民問題に対する関心の高まりを受けて、2000年(平成12)に、国連の経済社会理事会の補助機関として「先住民問題に関する常設フォーラム(Permanent Forum on Indigenous Issues)」が設置され、さらに、「先住民問題に関する機関間支援グループ」が設置されます。
 その中で、2007年(平成19)に、ニューヨークの国連本部で開催された第61期国際連合総会において、9月13日に「先住民族の権利に関する国際連合宣言(United Nations Declaration on the Rights of Indigenous Peoples)」が採択されました。賛成が143ヶ国、反対は、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、アメリカ合衆国の4ヶ国、棄権はアゼルバイジャン、バングラデシュ、ブータン、ブルンジ、コロンビア、グルジア、ケニア、ナイジェリア、ロシア連邦、サモア、ウクライナの11ヶ国ですが、他に欠席が34ヶ国あります。
 以下に、内閣官房作成の日本語訳を掲載しておきますので、ご参照ください。

〇「先住民族の権利に関する国際連合宣言」2007年(平成19)9月13日国連総会採択

国際連合総会は、
国際連合憲章の目的及び原則並びに各国が同憲章に従って負っている義務の誠実な履行を指針とし、
すべての民族が、他の民族と異なる権利及び自己を異なると考える権利を有すること並びにそのようなものとして尊重される権利を有することを認識しつつ、先住民族が他のすべての民族と平等であることを確認し、
また、すべての民族が、人類の共同の財産である文明及び文化の多様性及び豊かさに貢献していることを確認し、
さらに、国民的出身又は人種、宗教、種族若しくは文化の違いに基づく民族又は個人の優越性を基礎とし、又は主張するすべての理論、政策及び慣行が、人種差別的であり、科学的に誤りであり、法的に無効であり、道義的に非難されるべきであり、かつ、社会的に不正であることを確認し、
先住民族が、その権利の行使に当たり、いかなる差別も受けるべきでないことを再確認し、
先住民族が、特に植民地化並びにその土地、領域及び資源の奪取の結果として歴史的に不正に扱われてきたこと、それによって特に自己のニーズ及び利益に合致する発展の権利を行使することを妨げられていることを懸念し、
先住民族の政治的、経済的及び社会的構造並びに先住民族の文化、精神的伝統、歴史及び哲学から生ずる先住民族の固有の権利(特に、土地、領域及び資源についての権利)を尊重し、及び促進することが緊急に必要であることを認識し、
また、国との条約、協定その他建設的な取決めにおいて確認された先住民族の権利を尊重し、及び促進することが緊急に必要であることを認識し、
先住民族が、政治的、経済的、社会的及び文化的に向上するため、並びにあらゆる形態の差別及び抑圧(発生場所のいかんを問わない。)を終了させるために団結していることを歓迎し、
先住民族並びにその土地、領域及び資源に影響を及ぼす開発の当該先住民族による管理は、先住民族が、その諸制度、文化及び伝統を維持し、及び強化し、並びに自己の願望及びニーズに合致する発展を促進することを可能にすることを確信し、
先住民族の知識、文化及び伝統的慣習の尊重が、持続的で公平な発展及び環境の適切な管理に貢献することを認識し、
先住民族の土地及び領域の非軍事化が、平和、経済的及び社会的な進歩及び発展並びに世界の諸国及び世界の諸民族の間の理解及び友好関係に貢献することを強調し、
特に、先住民族の家族及び社会が、児童の権利に適合する児童の養育、訓練、教育及び福祉についての共同の責任を保持する権利を有することを認識し、
国と先住民族との間の条約、協定その他建設的な取決めにおいて確認された権利は、場合によっては、国際的な懸念、関心、責任及び性質を有する問題であることを考慮し、
また、条約、協定その他建設的な取決め及びそれらが示す関係が、先住民族と国との間の強化された連携のための基礎であることを考慮し、
国際連合憲章、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約及び市民的及び政治的権利に関する国際規約並びにウィーン宣言及び行動計画が、すべての人民の自決の権利の基本的重要性を確認していること並びにこの権利に基づきすべての人民がその政治的地位を自由に決定し、並びにその経済的、社会的及び文化的発展を自由に追求することを認め、
この宣言のいかなる記述も、国際法に従って行使されるいかなる民族の自決の権利も否定することに用いられてはならないことに留意し、
この宣言に掲げる先住民族の権利を認めることは、正義、民主主義、人権の尊重、非差別及び信義誠実の諸原則に基づく国と先住民族との間の調和のとれ、かつ、協力的な関係を強化するものであることを確信し、
国に対し、関係する民族と協議し、及び協力して、国際文書、特に人権に関する国際文書に基づき先住民族について適用されるすべての義務を遵守し、及び効果的に履行するよう奨励し、
先住民族の権利を促進し、及び保護するに当たり、国際連合が果たすべき重要かつ継続的な役割を有することを強調し、
この宣言が、先住民族の権利及び自由を認め、促進し、及び保護し、並びにこの分野における国際連合及びその諸機関の関連する活動を発展させるためのより重要な一歩であることを確信し、
先住民族に属する個人が国際法において認められるすべての人権を差別なく享有すること並びに先住民族がその存在、福祉及び民族としての全体の発展のために不可欠な集団的権利を有することを認識し、及び再確認し、
地域ごと及び国ごとに先住民族の状況が異なること並びに国及び地域の特殊性並びに多様な歴史的及び文化的な背景の重要性が考慮されるべきであることを認識して、
連携及び相互尊重の精神において追求される達成の水準として、先住民族の権利に関する国際連合宣言を次のとおり厳粛に宣言する。
第一条
先住民族は、集団又は個人として、国際連合憲章、世界人権宣言及び国際人権法において認められるすべての人権及び基本的自由を十分に享有する権利を有する。
第二条
先住民族及びこれに属する個人は、自由であり、かつ、他のすべての民族及び個人と平
等であるものとし、その権利の行使に当たり、特に先住民族出身であること又は先住民族に属することに基づくいかなる差別も受けない権利を有する。
第三条
先住民族は、自決の権利を有する。この権利に基づき、先住民族は、その政治的地位を自由に決定し、並びにその経済的、社会的及び文化的発展を自由に追求する。
第四条
先住民族は、その自決の権利を行使するに当たり、その内部及び地域の事項に関する問題並びにその自律的な活動の資金を調達するための方法及び手段について、自治の権利を有する。
第五条
先住民族は、希望する場合には、国の政治的、経済的、社会的及び文化的活動に十分に参加する権利を保持しつつ、その独自の政治的、法的、経済的、社会的及び文化的な制度を維持し、及び強化する権利を有する。
第六条
先住民族に属するすべての個人は、国籍についての権利を有する。
第七条
1.先住民族に属する個人は、生命、身体及び精神の健全性、自由並びに身体の安全についての権利を有する。
2.先住民族は、独自の民族として自由に、平和のうちに及び安全に生活する集団的権利を有するものとし、集団殺害行為その他の暴力行為(集団内の児童の他の集団への強制的移動を含む。)を受けない。
第八条
1.先住民族及びこれに属する個人は、強制的に同化させられ、又はその文化を破壊されない権利を有する。
2.国は、次の行為の防止及びこれらの行為についての救済のための効果的な仕組みを提供する。
(a)先住民族の独自の民族としての一体性又は文化的な価値若しくは民族的帰属意識を奪う目的又は効果を有する行為
(b)先住民族の土地、領域又は資源を奪う目的又は効果を有する行為
(c)先住民族の権利を侵害し、又は損なう目的又は効果を有するあらゆる形態の強制的な住民の移送
(d)あらゆる形態の強制的な同化又は統合
(e)先住民族に対する人種差別又は民族差別を助長し、又は扇動することを意図するあらゆる形態の宣伝
第九条
先住民族及びこれに属する個人は、関係する先住民族の社会又は民族の伝統及び慣習に従って、当該先住民族の社会又は民族に属する権利を有する。このような権利の行使に当たり、いかなる差別も受けないものとする。
第十条
先住民族は、その土地又は領域から強制的に移動させられない。移転は、関係する先住民族の自由な、事前の、かつ、情報に基づく同意が得られ、公正かつ公平な補償についての合意が得られた後であり、かつ、可能な場合には、帰還するとの選択肢を伴うものである場合にのみ、行われる。
第十一条
1.先住民族は、その文化的伝統及び慣習を実践し、及び再活性化させる権利を有する。この権利には、過去、現在及び未来にわたる先住民族の文化の表現(例えば、考古学上の及び歴史的な遺跡、工芸品、意匠、儀式、技術、視覚的芸術、舞台芸術、文学)を維持し、保護し、及び発展させる権利を含む。
2.国は、先住民族の自由な、事前の、かつ、情報に基づく同意なしに、又は先住民族の法、伝統及び慣習に反して奪われた文化的、知的、宗教的及び精神的財産に関し、当該先住民族と連携して設けた効果的な仕組み(原状回復を含む。)を通じた救済を行う。
第十二条
1.先住民族は、その精神的及び宗教的な伝統、慣習及び儀式を明示し、実践し、発展させ、及び教育する権利、その宗教的及び文化的な場所を維持し、及び保護し、並びに干渉を受けることなくこのような場所に立ち入る権利、その儀式用の物を使用し、及び管理する権利並びにその遺体及び遺骨の帰還についての権利を有する。
2.国は、関係する先住民族と連携して設けた公正な、透明性のある、かつ、効果的な仕組みを通じて、自国が保有する儀式用の物並びに遺体及び遺骨へのアクセス又はこれらの返還を可能にするよう努める。
第十三条
1.先住民族は、その歴史、言語、口承による伝統、哲学、表記方法及び文学を再活性化し、使用し、発展させ、及び将来の世代に伝達する権利並びに社会、場所及び個人に固有の名称を付し、及び継続して使用する権利を有する。
2.国は、1に掲げる権利が保護されることを確保し、並びに必要な場合には通訳の提供又は他の適当な手段を通じて、先住民族が政治上、法律上及び行政上の手続を理解し、並びにこのような手続において理解されることを確保するため、効果的な措置をとる。
第十四条
1.先住民族は、その文化に則った教育及び学習の方法に適した方法によって、自己の言語で教育を提供する教育制度及び教育機関を設立し、及び管理する権利を有する。
2.先住民族に属する個人、特に児童は、国によるあらゆる段階及び形態の教育についての権利を差別なく有する。
3.国は、先住民族と連携して、先住民族に属する個人(当該先住民族の社会の外で生活している者を含む。)、特に児童が、可能な場合には、先住民族自身の文化についての及び当該先住民族自身の言語による教育を受ける機会を有するようにするため、効果的な措置をとる。
第十五条
1.先住民族は、その文化、伝統、歴史及び願望の尊厳及び多様性(これらは、教育及び
公衆のための情報において適切に反映される。)についての権利を有する。
2.国は、関係する先住民族と協議し、及び協力して、偏見と戦い、及び差別を撤廃し、並びに先住民族及び社会の他のすべての構成員の間の寛容、理解及び良好な関係を促進するため、効果的な措置をとる。
第十六条
1.先住民族は、自己の言語による自己の報道機関を設立し、及びあらゆる形態の非先住民族の報道機関を差別なく利用する権利を有する。
2.国は、国有の報道機関が先住民族の文化的多様性を正当に反映することを確保するため、効果的な措置をとる。国は、表現の完全な自由の確保を害することなく、民間による所有の報道機関が適切に先住民族の文化的多様性を反映するよう奨励すべきである。
第十七条
1.先住民族に属する個人及び先住民族は、適用のある労働に関する国際法及び国内法に定めるすべての権利を十分に享受する権利を有する。
2.国は、先住民族に属する児童が特に影響を受けやすいこと及び先住民族に属する児童の自律的な力の育成のための教育が重要であることを考慮しつつ、先住民族と協議し、及び協力して、先住民族に属する児童を経済的な搾取から保護し、及び危険となり、若しくは児童の教育の妨げとなり、又は児童の健康若しくは身体的、精神的、道徳的若しくは社会的な発達に有害となるおそれのある労働への従事から保護するため、特別の措置をとる。
3.先住民族に属する個人は、労働、特に雇用又は給料に関して、いかなる差別的条件にも付されない権利を有する。
第十八条
先住民族は、自己の手続に従って自己が選出した代表を通じて、自己の権利に影響を及ぼし得る事項に関する意思決定に参加し、並びに自己の意思決定のための制度を維持し、及び発展させる権利を有する。
第十九条
国は、先住民族に影響を及ぼすおそれのある立法上又は行政上の措置をとり、及び実施する前に、当該先住民族の自由な、事前の、かつ、情報に基づく同意を得るため、当該先住民族自身の代表機関を通じて、当該先住民族と誠実に協議し、及び協力する。
第二十条
1.先住民族は、その政治的、経済的及び社会的制度又は機関を維持し、及び発展させる権利、その生存及び発展のための自己の手段が与えられることが確保される権利並びにそのあらゆる伝統及び他の経済活動に自由に従事する権利を有する。
2.生存及び発展のための手段を奪われた先住民族は、公正かつ公平な救済を受ける権利を有する。
第二十一条
1.先住民族は、その経済的及び社会的状況(特に、教育、雇用、職業訓練及び再訓練、住居、衛生、健康並びに社会保障の分野における状況を含む。)の改善についての権利を
差別なく有する。
2.国は、先住民族の経済的及び社会的状況を継続的に改善することを確保するため、効果的な措置及び適当な場合には特別な措置をとる。先住民族に属する高齢者、女子、青少年、児童及び障害者の権利及び特別のニーズについては、特別の注意を払う。
第二十二条
1.この宣言の実施に当たり、先住民族に属する高齢者、女子、青少年、児童及び障害者の権利及び特別のニーズについては、特別の注意を払う。
2.国は、先住民族と連携して、先住民族に属する女子及び児童があらゆる形態の暴力及び差別に対する十分な保護及び保障を享受することを確保するための措置をとる。
第二十三条
先住民族は、その発展の権利を行使するための優先順位及び戦略を決定し、及び策定する権利を有する。特に、先住民族は、自己に影響を及ぼす健康、住居その他経済的及び社会的計画を策定し、及び決定することに積極的に参加する権利並びに可能な限り自己の機関を通じてこのような計画を実施する権利を有する。
第二十四条
1.先住民族は、その伝統的医療についての権利及びその健康に係る慣行(不可欠な薬用の植物、動物及び鉱物の保存を含む。)を維持する権利を有する。また、先住民族に属する個人は、すべての社会的サービス及び保健サービスを差別なく利用する権利を有する。
2.先住民族に属する個人は、到達可能な最高水準の身体及び精神の健康を享受する平等な権利を有する。国は、この権利の十分な実現を漸進的に達成するため、必要な措置をとる。
第二十五条
先住民族は、自己が伝統的に所有し、又は他の方法で占有し、及び使用してきた土地、領域、水域、沿岸海域その他資源に対するその独自の精神的関係を維持し、及び強化する権利並びにこの点について将来の世代に対する自己の責任を果たす権利を有する。
第二十六条
1.先住民族は、自己が伝統的に所有し、占有し、又は他の方法で使用し、若しくは取得してきた土地、領域及び資源についての権利を有する。
2.先住民族は、自己が伝統的に所有し、他の方法で伝統的に占有し、若しくは使用することにより保有しており、又は他の方法で取得した土地、領域及び資源を所有し、使用し、開発し、及び管理する権利を有する。
3.国は、1及び2に掲げる土地、領域及び資源について、法的に認め、及び保護する。この場合において、関係する先住民族の慣習、伝統及び土地に係る権利についての制度を十分に尊重して認めるものとする。
第二十七条
国は、関係する先住民族と連携して、先住民族の土地、領域及び資源(伝統的に所有し、又は他の方法で占有し、若しくは使用してきたものを含む。)についての当該先住民族の権利を認め、及び決定するために、先住民族の法、伝統、慣習及び土地に係る権利について
の制度に十分に留意しつつ、公正な、独立の、公平な、公開の、かつ、透明性のある手続を定め、及び実施する。先住民族は、この手続に参加する権利を有する。
第二十八条
1.先住民族は、自己が伝統的に所有し、又は他の方法で占有し、若しくは使用してきた土地、領域及び資源であって、自己の自由な、事前の、かつ、情報に基づく同意なしに没収され、奪われ、占有され、使用され、又は損害を被ってきたものについて、原状回復(又はそれが可能でない場合には公正、公平、かつ、衡平な補償)その他の手段によって救済を受ける権利を有する。
2.関係する民族が自由に同意する場合を除くほか、補償については、同等の質、規模及び法的地位を有する土地、領域及び資源という形態、金銭的補償という形態又は他の適当な救済という形態をとる。
第二十九条
1.先住民族は、環境並びに自己の土地又は領域及び資源の生産能力の保全及び保護についての権利を有する。国は、先住民族のためのこのような保全及び保護に関する支援計画を差別なく策定し、及び実施する。
2.国は、有害物質の貯蔵又は処分が、先住民族の自由な、事前の、かつ、情報に基づく同意なしに、当該先住民族の土地又は領域において行われないことを確保するため、効果的な措置をとる。
3.また、国は、必要な場合には、先住民族の健康を監視し、維持し、及び回復させるための計画であって、有害物質の影響を受けた先住民族によって策定され、及び実施されるものが適切に実施されることを確保するため、効果的な措置をとる。
第三十条
1.関連する公共の利益により正当化される場合又は関係する先住民族が自由に同意し、若しくは要請する場合を除くほか、先住民族の土地又は領域において軍事上の活動を行ってはならない。
2.国は、軍事上の活動のために先住民族の土地又は領域を使用する前に、適当な手続、特に当該先住民族の代表機関を通じて、当該先住民族と効果的な協議を行う。
第三十一条
1.先住民族は、その文化遺産、伝統的知識及び伝統的な文化の表現並びに科学、技術及び文化の表現(人的資源、遺伝資源、種子、薬、動植物の特性に関する知識、口承による伝統、文学、意匠、スポーツ、伝統的競技、視覚的芸術及び舞台芸術を含む。)を維持し、管理し、保護し、及び発展させる権利を有する。また、先住民族は、このような文化遺産、伝統的知識及び伝統的な文化の表現に係る自己の知的財産を維持し、管理し、保護し、及び発展させる権利を有する。
2.国は、先住民族と連携して、1に掲げる権利の行使を認め、及び保護するため、効果的な措置をとる。
第三十二条
1.先住民族は、その土地又は領域その他資源の開発又は使用のための優先順位及び戦略を決定し、及び策定する権利を有する。
2.国は、特に、鉱物、水その他の資源の開発、利用又は採掘に関連して、先住民族の土地又は領域その他資源に影響を及ぼす事業を承認する前に、先住民族の自由な、かつ、情報に基づく同意を得るため、当該先住民族自身の代表機関を通じて、当該先住民族と誠実に協議し、及び協力する。
3.国は、このような活動に対し、公正かつ公平な救済のための効果的な仕組みを提供する。環境上、経済上、社会上、文化上又は精神上の悪影響を軽減するため、適当な措置がとられるものとする。
第三十三条
1.先住民族は、その慣習及び伝統に従って、自己の帰属又は構成員を決定する権利を有する。このことは、先住民族に属する個人が、居住する国の市民権を取得する権利を害するものではない。
2.先住民族は、自己の手続に従って、自己の機関の構成を決定し、及び当該機関の構成員を選出する権利を有する。
第三十四条
先住民族は、人権に関する国際的な基準に従い、自己の機関の構成並びに独自の慣習、精神性、伝統、手続、慣行及び、司法上の制度又は慣習が存在する場合には、それらを促進し、発展させ、及び維持する権利を有する。
第三十五条
先住民族は、その社会に対する個人の責任を決定する権利を有する。
第三十六条
1.先住民族、特に国境によって分断された先住民族は、国境を越えて存在する自己の構成員及び他の民族との接触、関係及び協力(精神的、文化的、政治的、経済的及び社会的目的のための活動を含む。)を維持し、及び発展させる権利を有する。
2.国は、先住民族と協議し、及び協力して、1に掲げる権利の行使を促進し、及びその実施を確保するため、効果的な措置をとる。
第三十七条
1.先住民族は、国又はその承継国と締結した条約、協定その他建設的な取決めを認め、遵守し、及び実施する権利並びにこのような条約、協定その他建設的な取決めを国に尊重させる権利を有する。
2.この宣言のいかなる記述も、条約、協定その他建設的な取決めに規定する先住民族の権利を縮小し、又は否定するものと解してはならない。
第三十八条
国は、この宣言の目的を達成するため、先住民族と協議し、及び協力して、立法措置その他の適当な措置をとる。
第三十九条
先住民族は、この宣言に掲げる権利を享受するため、国からの及び国際協力を通じた資金上及び技術上の援助を利用する権利を有する。
第四十条
先住民族は、国又はその他の当事者との紛争を解決するため、公正かつ公平な手続を利用し、及びその手続によって迅速な決定を受ける権利を有し、また、個人的及び集団的権利のあらゆる侵害に対して効果的な救済措置を受ける権利を有する。このような決定に当たっては、関係する先住民族の慣習、伝統、規則及び法制度並びに国際的な人権に十分な考慮を払う。
第四十一条
国際連合、その諸機関及び専門機関並びに他の政府間機関は、特に資金協力及び技術上の援助の実施を通じて、この宣言の十分な実現に貢献する。先住民族に影響を及ぼす問題に関し、先住民族の参加を確保する方法及び手段が定められる。
第四十二条
国際連合、その諸機関(先住問題常設フォーラムを含む。)及び専門機関(国レベルのものを含む。)並びに国は、この宣言の尊重及び十分な適用を促進し、並びにこの宣言の実効性を把握する。
第四十三条
この宣言により認められる権利は、世界の先住民族の生存、尊厳及び福祉のための最低限度の基準を構成する。
第四十四条
この宣言により認められるすべての権利及び自由は、先住民族に属する男性及び女性の個人にひとしく保障される。
第四十五条
この宣言のいかなる記述も、先住民族が現在保有し、又は将来取得し得る権利を縮小し、又は消滅させるものと解してはならない。
第四十六条
1.この宣言のいかなる記述も、国、民族、集団又は個人が、国際連合憲章に反する活動に従事し、又は国際連合憲章に反する行為を行う権利を有することを意味するものと解してはならず、また、主権を有する独立国の領土保全又は政治的な統合を全体又は一部において分割し、又は害するいかなる行為も認め、又は助長するものと解してはならない。
2.この宣言に掲げる権利の行使に当たり、すべての者の人権及び基本的自由は、尊重される。この宣言に掲げる権利の行使については、法によって定められ、かつ、人権に関する国際的な義務に従って課された制限にのみ従う。このような制限は、差別的でないものとし、他の者の権利及び自由を十分認め、及び尊重することを確保する目的並びに民主的社会の公正かつ最も必要な要請に対応するという目的のためにのみ真に必要なものでなければならない。
3.この宣言は、正義、民主主義、人権の尊重、平等、非差別、良い統治及び信義誠実の諸原則に従って解釈される。

  (内閣官房作成)