リクルート事件(リクルートじけん)は、1980年代に、情報サービス会社リクルートが政界、官界、財界の要人に、グループ企業「リクルートコスモス」の未公開株を譲渡し、贈収賄罪に問われた事件でした。
リクルート社は1984年(昭和59)12月に、子会社のリクルートコスモス社の未公開株約125万株を79名に、1986年(昭和61)7~9月には同76万株を65名に譲渡し、同株の店頭公開(1986年10月)直後の値上がりにより受領者側が合計66億7000万円の利益を得たとされます。これは、江副浩正リクルート社会長が自社の政治的財界的地位を高める目的で行われたとされ、1988年(昭和63)6月18日付け朝日新聞紙面で、川崎市助役への株譲渡がスクープされ、その発覚を契機に、政界の実力者への譲渡が次々と表面化しました。
未公開株は中曾根康弘、竹下登、宮沢喜一、安部晋太郎、渡辺美智雄ら、自民党の派閥領袖クラスの政治家をはじめ野党議員もふくめて広い範囲で渡っていたとされ、一大疑獄事件となります。譲渡先は政界、旧労働・文部両省、NTTの4ルートにまたがり、東京地検は藤波孝生元官房長官ら政治家2人を含む計12人を起訴し、いずれも執行猶予付きの有罪判決が確定しました。
この捜査過程で、国民の政治不信が一気に高まり、その責任を取って、1989年(平成元)6月3日に竹下登内閣が総辞職、自民党は同年7月の参議院選で惨敗を喫し、結党以来はじめて参議院での単独過半数割れになります。
贈収賄額はロッキード疑獄(ロッキード事件)の約3倍にのぼり、自民党の金権体質をあらためて露呈すると共に、戦後政治史の転換を示す象徴的な出来事となりました。
〇戦後の政治家がかかわった主要な汚職事件(贈収賄・利益供与など)
・1947年(昭和22) - 炭鉱国管疑獄
・1948年(昭和23) - 昭和電工事件
・1954年(昭和29) - 造船疑獄
・1954年(昭和29) - 日興連汚職事件
・1957年(昭和32) - 売春汚職事件
・1961年(昭和36) - 武州鉄道汚職事件
・1965年(昭和40) - 東京都議会黒い霧事件
・1965年(昭和40) - 九頭竜川ダム汚職事件
・1966年(昭和41) - 田中彰治事件
・1966年(昭和41) - 共和製糖事件
・1967年(昭和42) - 大阪タクシー汚職事件
・1968年(昭和43) - 日通事件
・1976年(昭和51) - ロッキード事件
・1979年(昭和54) - ダグラス・グラマン事件
・1980年(昭和55) - KDD事件
・1986年(昭和61) - 撚糸工連事件
・1988年(昭和63) - リクルート事件
・1991年(平成3) - 共和汚職事件
・1992年(平成4) - 東京佐川急便事件
・1993年(平成5) - ゼネコン汚職事件
・2000年(平成12) - KSD事件
・2000年(平成12) - 若築建設事件
・2001年(平成13) - 中洲カジノバー汚職事件
・2002年(平成14) - 鈴木宗男事件
・2004年(平成16) - 日歯連・中医協汚職事件