今日は、昭和時代中期の1951年(昭和26)に、「産業教育振興法」が公布された日です。
「産業教育振興法(さんぎょうきょういくしんこうほう)」は、産業教育の振興をはかることを目的として制定された法律(昭和 26年法律228号)で、「教育基本法」(昭和22年法律第25号)の精神にのつとり、産業教育を通じて、勤労に対する正しい信念を確立し、産業技術を習得させるとともに工夫創造の能力を養い、もつて経済自立に貢献する有為な国民を育成するため、産業教育の振興を図ることを目的としていました。
この法律では、都道府県および市町村に地方産業教育審議会をおくこと、公立、私立の中学校、高等学校、大学に対する産業教育設備費の国庫負担および補助などについて定めています。その後、産業や教育の変化によって、何度か改正されて今日に至りました。
以下に、「産業教育振興法」(昭和26年法律第228号)を掲載しておきますので、ご参照下さい。
〇産業教育とは?
広義には、農業・工業・商業など職業に就こうとする者に必要な知識・技能・態度を習得させるための職業予備教育をいい、職業教育または、太平洋戦争敗戦までの実業教育の内容がだいたいこれに相当し、職業訓練や企業内で行われる教育訓練も含まれます。
しかし狭義には、1951年(昭和26)の「産業教育振興法」の制定後は、中学校の技術・家庭科(1958年までは職業・家庭科)、高等学校の工業、農業、商業、水産、家庭、衛生看護の各学科の教育を総称するものとされてきました。
歴史的には、明治維新後の殖産興業政策の中で、欧米の産業教育が紹介され、実業教育として取り入れられるようになります。1893年(明治26)の「実業補習学校規程」を初めとして、日本資本主義の発展のもとで急激に発達しはじめ、1899年(明治32)の「実業学校令」および1903年(明治36)の「専門学校令」の制定により体系的に整備されました。
太平洋戦争後は、実業教育と呼ばれることは少なくなり、産業教育(または職業教育)と称されるようになります。
〇産業教育振興法 (昭和26年法律第228号)
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、産業教育がわが国の産業経済の発展及び国民生活の向上の基礎であることにかんがみ、教育基本法(平成十八年法律第百二十号)の精神にのつとり、産業教育を通じて、勤労に対する正しい信念を確立し、産業技術を習得させるとともに工夫創造の能力を養い、もつて経済自立に貢献する有為な国民を育成するため、産業教育の振興を図ることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律で「産業教育」とは、中学校(義務教育学校の後期課程、中等教育学校の前期課程及び特別支援学校の中学部を含む。以下同じ。)、高等学校(中等教育学校の後期課程及び特別支援学校の高等部を含む。以下同じ。)、大学又は高等専門学校が、生徒又は学生等に対して、農業、工業、商業、水産業その他の産業に従事するために必要な知識、技能及び態度を習得させる目的をもつて行う教育(家庭科教育を含む。)をいう。
(国の任務)
第三条 国は、この法律及び他の法令の定めるところにより、産業教育の振興を図るように努めるとともに、地方公共団体が左の各号に掲げるような方法によつて産業教育の振興を図ることを奨励しなければならない。
一 産業教育の振興に関する総合計画を樹立すること。
二 産業教育に関する教育の内容及び方法の改善を図ること。
三 産業教育に関する施設又は設備を整備し、及びその充実を図ること。
四 産業教育に従事する教員又は指導者の現職教育又は養成の計画を樹立し、及びその実施を図ること。
五 産業教育の実施について、産業界との協力を促進すること。
(実験実習により生ずる収益)
第四条 地方公共団体は、その設置する学校が行う産業教育に関する実験実習によつて収益が生じたときは、これを当該実験実習に必要な経費に増額して充てるように努めなければならない。
(教員の資格等)
第五条 産業教育に従事する教員の資格、定員及び待遇については、産業教育の特殊性に基き、特別の措置が講ぜられなければならない。
(教科用図書)
第六条 産業教育に関する教科用図書の編修、検定及び発行に関しては、産業教育の特殊性に基き、特別の措置が講ぜられなければならない。
第七条 削除
第八条 削除
第九条 削除
第十条 削除
第二章 地方産業教育審議会
(設置)
第十一条 都道府県及び市町村(市町村の組合及び特別区を含む。以下同じ。)の教育委員会に、条例の定めるところにより、地方産業教育審議会を置くことができる。
(所掌事務)
第十二条 地方産業教育審議会(以下「地方審議会」という。)は、それぞれ、当該都道府県又は市町村の区域内で行われる産業教育に関し、第三条各号に掲げるような事項その他産業教育に関する重要事項について、都道府県の教育委員会若しくは知事又は市町村の教育委員会の諮問に応じて調査審議し、及びこれらの事項に関して都道府県の教育委員会若しくは知事又は市町村の教育委員会に建議する。
(委員)
第十三条 地方審議会の委員は、産業教育に関し学識経験のある者及び関係行政機関の職員のうちから、それぞれ、都道府県又は市町村の教育委員会が任命する。
2 前項の委員の任命に当たつては、あらかじめ都道府県の教育委員会にあつては知事の意見を、市町村の教育委員会にあつては市町村長の意見を聴かなければならない。
3 委員は、非常勤とする。
4 委員は、その職務を行うために要する費用の弁償を受けることができる。
5 前項の費用は、それぞれ、都道府県又は市町村の負担とする。
6 委員の定数並びに費用弁償の額及びその支給方法は、条例で定める。
(教育委員会規則への委任)
第十四条 地方審議会に関し必要な事項は、この法律に規定するものを除くほか、それぞれ、当該都道府県又は市町村の教育委員会規則で定める。
2 前項の規則の制定に当つては、あらかじめ都道府県の教育委員会は知事と、市町村の教育委員会は市町村長と協議しなければならない。
第三章 国の補助
第一節 公立学校
(国の補助)
第十五条 国は、公立学校(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第六十八条第一項に規定する公立大学法人(次条において「公立大学法人」という。)が設置する学校を含む。次項において同じ。)の設置者が次に掲げる施設又は設備であつて、審議会等(国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第八条に規定する機関をいう。次条において同じ。)で政令で定めるものの議を経て政令で定める基準に達していないものについて、これを当該基準にまで高めようとする場合においては、これに要する経費の全部又は一部を、当該設置者に対し、予算の範囲内において補助することができる。
一 中学校における産業教育のための実験実習の施設又は設備
二 中学校又は高等学校が産業教育のため共同して使用する実験実習の施設
三 中学校における職業指導のための施設又は設備
四 産業教育に従事する教員又は指導者の現職教育又は養成を行う大学における当該現職教育又は養成のための実験実習の施設又は設備
2 前項に規定するもののほか、国は、公立学校に関する次に掲げる経費の全部又は一部を、当該学校の設置者に対し、予算の範囲内において補助することができる。
一 国又は地方の産業の発展のために必要と認められる産業教育を行う高等学校、短期大学又は高等専門学校で、文部科学大臣が高等学校にあつては都道府県の教育委員会の推薦に基づいて、短期大学又は高等専門学校にあつてはその設置者の申請により指定するものが当該教育を行うために必要な実験実習の施設又は設備の充実に要する経費
二 地方の産業教育及びこれに関する研究の中心施設として文部科学大臣が都道府県の教育委員会の推薦に基づいて指定する中学校又は高等学校が当該教育又は研究を行うために必要な実験実習の施設又は設備に要する経費及び当該研究を行うために必要なその他の経費
三 産業教育に従事する教員及び指導者の現職教育に必要な経費
四 その他産業教育の奨励のために特に必要と認められる経費
(短期の産業教育)
第十六条 国は、公立の中学校又は高等学校(公立大学法人が設置する中学校又は高等学校を含む。以下この条において同じ。)が中学校卒業後産業に従事し、又は従事しようとする青少年のために地方の実情に応じた技能教育を主とする短期の教育(別科における教育及び学校において社会教育として行うものを含む。)を行う場合においては、当該教育に必要な施設又は設備及びその運営に要する経費について、前条第一項の政令で定める審議会等の議を経て政令で定める基準に従い、その全部又は一部を、当該中学校又は高等学校の設置者に対し、予算の範囲内において補助することができる。
(補助金の返還等)
第十七条 文部科学大臣は、補助金の交付を受けた者が次の各号のいずれかに該当するに至つたときは、当該年度におけるその後の補助金の交付をやめるとともに、既に交付した当該年度の補助金を返還させるものとする。
一 この法律又はこの法律に基づく政令の規定に違反したとき。
二 補助金の交付の条件に違反したとき。
三 虚偽の報告によつて補助金の交付を受けたことが明らかになつたとき。
(政令への委任)
第十八条 この節に定めるものを除くほか、補助金の交付に関し必要な事項は、政令で定める。
第二節 私立学校
(私立学校に関する補助)
第十九条 私立学校に関する国の補助については、第十五条から前条までの規定を準用する。この場合において、第十五条第一項第一号中「中学校」とあるのは「中学校又は高等学校」と、同項第二号中「施設」とあるのは「施設又は設備」と、同条第二項第一号及び第二号中「都道府県の教育委員会」とあるのは「都道府県知事」と読み替えるものとする。
2 前項の規定により国が私立学校の設置者に対し補助をする場合においては、私立学校振興助成法(昭和五十年法律第六十一号)第十一条から第十三条まで並びにこれらの規定に係る同法附則第二条第一項及び第二項の規定の適用があるものとする。
附 則 (略)
「法令全書」より