『尋常小学唱歌』(じんじょうしようがくしょうか)は、1911年(明治44)5月8日から1914年(大正3)6月18日にかけて文部省が編集・発行した尋常小学校の各学年別の唱歌の教科書(全6冊)でした。
1907年(明治40)の「小学校令」改正により、初めて小学校における唱歌が必修教科として位置づけられますが、その最初の教科書として、1910年(明治43)に文部省著作『尋常小学読本唱歌』(全3編)が出版されました。しかし、それと別に並行する形で、文部省が東京音楽学校に編纂を依頼し、編纂委員会における合議により作詞、作曲され文部省著作として、各学年用(全6冊)が順次発行されたものです。
その特徴は、すべての作品が日本人の作詞・作曲によるものであり、歌詞と旋律が調和した美しい歌曲が系統的に配列され、日本の自然や情景を織り込んだものが多い中で、天皇家や故事に関係するもの、戦争・軍人についてのものも取り入れられていることです。一部変更された歌もありますが、多くが太平洋戦争が終わるまで、小学校で唱歌指導されました。
中には、「春がきた」、「春の小川」、「茶摘」、「故郷」など現在まで歌い継がれている曲もあり、国民に大きな影響を与えています。
以下に、『尋常小学唱歌』(全6冊)初版に収録されていた曲を一覧にしておきましたので、ご参照下さい。
〇『尋常小学唱歌』(全6冊)初版の収録曲一覧
・第1学年用(20曲) 1911年(明治44)5月8日発行
1.日の丸の旗 (現在では「ひのまる」)
2.鳩
3.おきやがりこぼし
4.人形
5.ひよこ
6.かたつむり
7.牛若丸
8.夕立
9.桃太郎
10.朝顔
11.池の鯉
12.親の恩
13.烏
14.菊の花
15.月
16.木の葉
17.兎
18.紙鳶の歌
19.犬
20.花咲爺
・第2学年用(20曲)1911年(明治44)6月28日発行
1.桜
2.二宮金次郎
3.よく学びよく遊べ
4.雲雀
5.小馬
6.田植
7.雨
8.蝉
9.蛙と蜘蛛
10.浦島太郎
11.案山子
12.富士山
13.仁田四郎
14.紅葉
15.天皇陛下
16.時計の歌
17.雪
18.梅に鴬
19.母の心
20.那須与一
・第3学年用(20曲)1912年(明治45)3月30日発行
1.春が来た
2.かがやく光
3.茶摘
4.青葉
5.友だち
6.汽車
7.虹
8.虫のこゑ
9.村祭
10.鵯越
11.日本の国
12.雁
13.取入れ
14.豊臣秀吉
15.皇后陛下
16.冬の夜
17.川中島
18.おもひやり
19.港
20.かぞへ歌
・第4学年用(20曲)1913年(大正元)12月15日発行
1.春の小川
2.桜井のわかれ
3.ゐなかの四季
4.靖国神社
5.蚕
6.藤の花
7.曽我兄弟
8.家の紋
9.雲
10.漁船
11.何事も精神
12.広瀬中佐
13.たけがり
14.霜
15.八幡太郎
16.村の鍛冶屋
17.雪合戦
18.近江八景
19.つとめてやまず
20.橘中佐
・第5学年用(21曲)1914年(大正2)5月28日発行
1.八岐の大蛇
2.舞へや歌へや
3.鯉のぼり
4.運動会の歌
5.加藤清正
6.海
7.納涼
8.忍耐
9.鳥と花
10.菅公
11.三才女
12.日光山
13.冬景色
14.入営を送る
15.水師営の会見
16.斎藤実盛
17.朝の歌
18.大塔宮
19.卒業生を送る歌
20.みがかずば
21.金剛石・水は器
・第6学年用(19曲)1915年(大正3)6月18日発行
1.明治天皇御製
2.児島高徳
3.朧月夜
4.我は海の子
5.故郷
6.出征兵士
7.蓮池
8.燈台
9.秋
10.開校記念日
11.同胞すべて六千万
12.四季の雨
13.日本海海戰
14.鎌倉
15.新年
16.国産の歌
17.夜の梅
18.天照大神
19.卒業の歌