今日は、昭和時代前期の1933年(昭和8)に、「米穀統制法」(昭和8年法律第24号)が公布(施行は9月20日)された日です。
米穀統制法(べいこくとうせいほう)は、米価の大幅な変動を抑制するため、米の数量と価格を調節し、その流通を統制するため、政府による米価基準の設定、輸出入制限などを定めた法律でした。
大正時代初期までは、米価は自由放任でしたが、1918年(大正7)の米騒動、および第一次世界大戦終結により、米価は不安定な状態となり、原敬内閣時に植民地米増産を中心とする食糧自給政策と1921年(大正10)の「米穀法」による価格調節・安定策が実施されます。これが、満州事変が始まる中で、1931年(昭和6)に改正され、売買に際し米価の最高価格及び最低価格が定められるようになりました。
さらに、公定した最高価格・最低価格に基づき買入・売渡を無制限に行い、輸出入制限を常時実施するようにしたのが、1933年(昭和8)3月29日公布の「米穀統制法」(昭和8年法律第24号)で、「米穀法」にかわり、同年9月20日から施行されます。この法律は、1935年(昭和10)頃までの農村恐慌期、米過剰期には米価の一定の引上げ、安定のために機能しました。
1936年(昭和11)に改正され、補完的法律として「米穀自治管理法」が制定されて、管理委員会が定めた一定数量の米を市場供給制限のために産地貯蔵させることで過剰米の統制が行われます。しかし、翌年日中戦争が勃発すると担い手不足等による国内生産の縮小、朝鮮・台湾での消費増加による移入量減少などによる米不足が起こりました。
そこで、1939年(昭和14)には「米穀配給統制法」が制定され、取引所は廃止され、代替として半官半民の日本米穀株式会社を設立、米穀の卸売商や小売商は許可制および組合服従化され、統制強化されます。
そして、1941年(昭和16)12月8日に太平洋戦争が始まると、翌年2月21日には米の供出・配給制と公定米価を定めた「食糧管理法」(昭和17年法律第40号)が公布され、「米穀統制法」は7月1日をもって廃止されました。以後、流通米全量に対して国家管理がされる状況が戦後までしばらく続きました。
尚、以下に「米穀統制法」(昭和11年法律第23号による改正後の条文)を全文掲載しておきますので、ご参照下さい。
〇「米穀統制法」(昭和8年法律第24号)
第一条 政府ハ米穀ノ数量又ハ市価ヲ調節シ米穀ノ統制ヲ図ル為本法ニ依リ米穀ノ買入及売渡ヲ行フ
第二条 政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ毎年米穀ノ最低価格及最高価格ヲ公定シ之ヲ告示ス
2 前項ノ最低価格及最高価格ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ米穀生産費、家計費及物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シテ之ヲ定ム
3 政府ハ第一項ノ最低価格ノ決定ニ付テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ金利及保管料ヲ加算スルコトヲ得
4 前二項ノ規定ニ依リ定メタル最低価格又ハ最高価格ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ物価ノ変動著シキ場合又ハ米穀ノ需給状況ニ著シキ変動ヲ生ジ若ハ生ズルノ虞アル場合ニ於テハ之ヲ改定スルコトヲ得
第三条 政府ハ前条ノ最低価格又ハ最高価格ヲ維持スル為勅令ノ定ムル所ニ依リ最低価格ニ依ル売渡ノ申込又ハ最高価格ニ依ル買入ノ申込ニ応ジテ米穀ノ買入又ハ売渡ヲ為ス
第四条 政府ハ道府県ヨリ該地域外ニ又ハ朝鮮若ハ台湾ヨリ内地ニ移出スル米穀ノ数量ヲ月別平均的ナラシムル為勅令ノ定ムル所ニ依リ出廻期ニ於テ米穀ノ買入ヲ為シ出廻期後ニ於テ米穀ノ売渡ヲ為スコトヲ得
2 前項ノ買入又ハ売渡ノ価格ハ時価ニ準拠シテ之ヲ定ム
第四条ノ二 政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ災害、事変其ノ他避クベカラザル事由アル場合ニ於テ米穀ノ配給上特ニ必要アリト認ムルトキハ米穀ノ市価ニ悪影響ヲ及ボサザル場合ニ限リ所有米穀ノ総数量ヨリ最高価格ヲ維持スル為必要ナル数量ヲ控除シタル数量ノ範囲内ニ於テ道府県ニ対シ米穀ノ売渡ヲ為スコトヲ得
2 前項ノ売渡ノ価格ハ時価ニ準拠シテ之ヲ定ム
第五条 政府ハ必要ニ応ジ所有米穀ノ貯蔵、買換、交換、加工及整理ノ為ニスル売渡並ニ輸入ヲ目的トスル米穀ノ買入及輸出ヲ目的トスル米穀ノ売渡ヲ為スコトヲ得
2 前項ノ買入又ハ売渡ノ価格ハ時価ニ準拠シテ之ヲ定ム
第六条 政府ガ米穀ノ買換ヲ為サントスル場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ買換ニ代ヘ買換ノ為売渡ヲ為サントスル米穀ヲ道府県ニ対シ貸付スルコトヲ得
第七条 米穀ノ輸入又ハ輸出ハ勅令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外政府ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ之ヲ為スコトヲ得ズ
第八条 政府ハ米穀ノ統制ヲ図ル為特ニ必要アリト認ムルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ期間ヲ指定シ粟、高梁、黍、小麦又ハ小麦粉ノ輸入ヲ制限スルコトヲ得
第九条 政府ハ米穀ノ統制ヲ図ル為特ニ必要アリト認ムルトキハ勅令ヲ以テ期間ヲ指定シ米穀、粟、高梁、黍、小麦又ハ小麦粉ノ輸入税ヲ増減又免除スルコトヲ得
第十条 米穀生産費、家計費並ニ米穀其ノ他ノ穀物ノ生産高、現在高、移動及価格ノ調査ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十一条 政府ハ前条ニ規定スル事項其ノ他米穀ノ統制ニ関シ必要ナル事項ヲ調査スル為特ニ必要アリト認ムルトキハ米穀其ノ他ノ穀物ノ生産者、取引業者、倉庫業者其ノ他占有者ニ対シ必要ナル事項ノ報告ヲ命ジ又ハ官吏若ハ吏員ヲシテ其ノ営業所、倉庫其ノ他ノ場所ニ臨検シ帳簿物件ヲ検査セシムルコトヲ得
2 前項ノ場合ニ於テハ当該官吏又ハ吏員ハ其ノ身分ヲ証明スル証票ヲ携帯スベシ
第十二条 第七条ノ規定ニ違反シテ米穀ヲ輸入若ハ輸出シ又ハ第八条ノ規定ニ依ル制限ニ違反シテ粟、高梁、黍、小麦又ハ小麦粉ヲ輸入シタル者ハ五千円以下ノ罰金ニ処シ其ノ米穀、粟、高梁、黍、小麦又ハ小麦粉ヲ没収ス若シ其ノ全部又ハ一部ヲ没収スルコト能ハザルトキハ其ノ価格ヲ追徴ス
2 営業者未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ前項ノ罰則ハ之ヲ法定代理人ニ適用ス但シ営業ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
3 営業者ハ其ノ代理人、戸主、家族、雇人其ノ他ノ従業者ガ其ノ業務ニ関シ第七条ノ規定又ハ第八条ノ規定ニ依ル制限ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ処罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
4 法人ノ代表者其ノ他ノ従業者法人ノ業務ニ関シ第七条ノ規定又ハ第八条ノ規定ニ依ル制限ニ違反シタルトキハ其ノ罰則ヲ法人ニ適用ス
第十三条 第十一条第一項ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ又ハ当該官吏若ハ吏員ノ職務ノ執行ヲ妨ゲタル者ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
附 則
1 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
2 米穀法ハ之ヲ廃止ス
3 本法施行前米穀法第三条ノ規定ニ依リ為シタル許可ハ本法第七条ノ規定ニ依リ之ヲ為シタルモノト看做ス
4 本法施行前ニ米穀法ノ罰則ヲ適用スべキ行為アリタルトキハ本法施行ノ後ト雖モ仍其ノ罰則ヲ適用ス
附 則 (昭和十一年法律第二十三号)
1 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
2 第四条ノ二ノ規定ニ依ル米穀ノ売渡ニ関スル一切ノ歳入歳出ハ米穀需給調節特別会計ニ属セシム
「法令全書」より
米穀統制法(べいこくとうせいほう)は、米価の大幅な変動を抑制するため、米の数量と価格を調節し、その流通を統制するため、政府による米価基準の設定、輸出入制限などを定めた法律でした。
大正時代初期までは、米価は自由放任でしたが、1918年(大正7)の米騒動、および第一次世界大戦終結により、米価は不安定な状態となり、原敬内閣時に植民地米増産を中心とする食糧自給政策と1921年(大正10)の「米穀法」による価格調節・安定策が実施されます。これが、満州事変が始まる中で、1931年(昭和6)に改正され、売買に際し米価の最高価格及び最低価格が定められるようになりました。
さらに、公定した最高価格・最低価格に基づき買入・売渡を無制限に行い、輸出入制限を常時実施するようにしたのが、1933年(昭和8)3月29日公布の「米穀統制法」(昭和8年法律第24号)で、「米穀法」にかわり、同年9月20日から施行されます。この法律は、1935年(昭和10)頃までの農村恐慌期、米過剰期には米価の一定の引上げ、安定のために機能しました。
1936年(昭和11)に改正され、補完的法律として「米穀自治管理法」が制定されて、管理委員会が定めた一定数量の米を市場供給制限のために産地貯蔵させることで過剰米の統制が行われます。しかし、翌年日中戦争が勃発すると担い手不足等による国内生産の縮小、朝鮮・台湾での消費増加による移入量減少などによる米不足が起こりました。
そこで、1939年(昭和14)には「米穀配給統制法」が制定され、取引所は廃止され、代替として半官半民の日本米穀株式会社を設立、米穀の卸売商や小売商は許可制および組合服従化され、統制強化されます。
そして、1941年(昭和16)12月8日に太平洋戦争が始まると、翌年2月21日には米の供出・配給制と公定米価を定めた「食糧管理法」(昭和17年法律第40号)が公布され、「米穀統制法」は7月1日をもって廃止されました。以後、流通米全量に対して国家管理がされる状況が戦後までしばらく続きました。
尚、以下に「米穀統制法」(昭和11年法律第23号による改正後の条文)を全文掲載しておきますので、ご参照下さい。
〇「米穀統制法」(昭和8年法律第24号)
第一条 政府ハ米穀ノ数量又ハ市価ヲ調節シ米穀ノ統制ヲ図ル為本法ニ依リ米穀ノ買入及売渡ヲ行フ
第二条 政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ毎年米穀ノ最低価格及最高価格ヲ公定シ之ヲ告示ス
2 前項ノ最低価格及最高価格ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ米穀生産費、家計費及物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シテ之ヲ定ム
3 政府ハ第一項ノ最低価格ノ決定ニ付テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ金利及保管料ヲ加算スルコトヲ得
4 前二項ノ規定ニ依リ定メタル最低価格又ハ最高価格ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ物価ノ変動著シキ場合又ハ米穀ノ需給状況ニ著シキ変動ヲ生ジ若ハ生ズルノ虞アル場合ニ於テハ之ヲ改定スルコトヲ得
第三条 政府ハ前条ノ最低価格又ハ最高価格ヲ維持スル為勅令ノ定ムル所ニ依リ最低価格ニ依ル売渡ノ申込又ハ最高価格ニ依ル買入ノ申込ニ応ジテ米穀ノ買入又ハ売渡ヲ為ス
第四条 政府ハ道府県ヨリ該地域外ニ又ハ朝鮮若ハ台湾ヨリ内地ニ移出スル米穀ノ数量ヲ月別平均的ナラシムル為勅令ノ定ムル所ニ依リ出廻期ニ於テ米穀ノ買入ヲ為シ出廻期後ニ於テ米穀ノ売渡ヲ為スコトヲ得
2 前項ノ買入又ハ売渡ノ価格ハ時価ニ準拠シテ之ヲ定ム
第四条ノ二 政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ災害、事変其ノ他避クベカラザル事由アル場合ニ於テ米穀ノ配給上特ニ必要アリト認ムルトキハ米穀ノ市価ニ悪影響ヲ及ボサザル場合ニ限リ所有米穀ノ総数量ヨリ最高価格ヲ維持スル為必要ナル数量ヲ控除シタル数量ノ範囲内ニ於テ道府県ニ対シ米穀ノ売渡ヲ為スコトヲ得
2 前項ノ売渡ノ価格ハ時価ニ準拠シテ之ヲ定ム
第五条 政府ハ必要ニ応ジ所有米穀ノ貯蔵、買換、交換、加工及整理ノ為ニスル売渡並ニ輸入ヲ目的トスル米穀ノ買入及輸出ヲ目的トスル米穀ノ売渡ヲ為スコトヲ得
2 前項ノ買入又ハ売渡ノ価格ハ時価ニ準拠シテ之ヲ定ム
第六条 政府ガ米穀ノ買換ヲ為サントスル場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ買換ニ代ヘ買換ノ為売渡ヲ為サントスル米穀ヲ道府県ニ対シ貸付スルコトヲ得
第七条 米穀ノ輸入又ハ輸出ハ勅令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外政府ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ之ヲ為スコトヲ得ズ
第八条 政府ハ米穀ノ統制ヲ図ル為特ニ必要アリト認ムルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ期間ヲ指定シ粟、高梁、黍、小麦又ハ小麦粉ノ輸入ヲ制限スルコトヲ得
第九条 政府ハ米穀ノ統制ヲ図ル為特ニ必要アリト認ムルトキハ勅令ヲ以テ期間ヲ指定シ米穀、粟、高梁、黍、小麦又ハ小麦粉ノ輸入税ヲ増減又免除スルコトヲ得
第十条 米穀生産費、家計費並ニ米穀其ノ他ノ穀物ノ生産高、現在高、移動及価格ノ調査ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十一条 政府ハ前条ニ規定スル事項其ノ他米穀ノ統制ニ関シ必要ナル事項ヲ調査スル為特ニ必要アリト認ムルトキハ米穀其ノ他ノ穀物ノ生産者、取引業者、倉庫業者其ノ他占有者ニ対シ必要ナル事項ノ報告ヲ命ジ又ハ官吏若ハ吏員ヲシテ其ノ営業所、倉庫其ノ他ノ場所ニ臨検シ帳簿物件ヲ検査セシムルコトヲ得
2 前項ノ場合ニ於テハ当該官吏又ハ吏員ハ其ノ身分ヲ証明スル証票ヲ携帯スベシ
第十二条 第七条ノ規定ニ違反シテ米穀ヲ輸入若ハ輸出シ又ハ第八条ノ規定ニ依ル制限ニ違反シテ粟、高梁、黍、小麦又ハ小麦粉ヲ輸入シタル者ハ五千円以下ノ罰金ニ処シ其ノ米穀、粟、高梁、黍、小麦又ハ小麦粉ヲ没収ス若シ其ノ全部又ハ一部ヲ没収スルコト能ハザルトキハ其ノ価格ヲ追徴ス
2 営業者未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ前項ノ罰則ハ之ヲ法定代理人ニ適用ス但シ営業ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
3 営業者ハ其ノ代理人、戸主、家族、雇人其ノ他ノ従業者ガ其ノ業務ニ関シ第七条ノ規定又ハ第八条ノ規定ニ依ル制限ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ処罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
4 法人ノ代表者其ノ他ノ従業者法人ノ業務ニ関シ第七条ノ規定又ハ第八条ノ規定ニ依ル制限ニ違反シタルトキハ其ノ罰則ヲ法人ニ適用ス
第十三条 第十一条第一項ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ又ハ当該官吏若ハ吏員ノ職務ノ執行ヲ妨ゲタル者ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
附 則
1 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
2 米穀法ハ之ヲ廃止ス
3 本法施行前米穀法第三条ノ規定ニ依リ為シタル許可ハ本法第七条ノ規定ニ依リ之ヲ為シタルモノト看做ス
4 本法施行前ニ米穀法ノ罰則ヲ適用スべキ行為アリタルトキハ本法施行ノ後ト雖モ仍其ノ罰則ヲ適用ス
附 則 (昭和十一年法律第二十三号)
1 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
2 第四条ノ二ノ規定ニ依ル米穀ノ売渡ニ関スル一切ノ歳入歳出ハ米穀需給調節特別会計ニ属セシム
「法令全書」より