東京国立博物館(とうきょうこくりつはくぶつかん)は、日本を中心とする東洋諸地域の美術工芸、考古遺物を保管・展示している日本の代表する博物館で、1882年(明治15)3月20日に東京・上野の寛永寺本坊跡地(現在の東京都台東区上野公園)に開館しました。
その前身は、1871年(明治4)設置の文部省博物局が翌年、湯島聖堂大成殿(現在の東京都文京区湯島)で開催した日本最初の博覧会で、1873年(明治6)に「博覧会事務局」(1872年設置)に併合され、湯島から内山下町(現在の東京都千代田区内幸町)に移転しました。そこでも、博覧会が開かれ、終了後は毎月1と6の日に公開されるようになります。
1877年(明治10)に、上野の寛永寺本坊跡地で第1回内国勧業博覧会が開催され、1881年(明治14)に同所に煉瓦造2階建の本館(イギリス人建築家ジョサイア・コンドル設計)が完成、第2回内国勧業博覧会の展示館として使用された後、翌年3月20日に、明治天皇の行幸を得て、「博物館」の開館式が行われましたが、附属動物園(恩賜上野動物園の前身)も同時開園しています。
1886年(明治19)に、宮内省の管理となり、1889年(明治22)に「帝国博物館」と改称し、さらに翌年、当時東京・京都・奈良にあった各「帝国博物館」を「帝室博物館」と改称しました。
1909年(明治42)に、隣接して表慶館が開館したものの、1923年(大正12)9月1日の関東大震災で本館・2号館・3号館が大破して使用不能となります。翌年に、動物園が博物館から分離し、動物園を含む上野公園が宮内省から東京市に下賜され、1925年(大正14)には、自然史関連の資料を「東京博物館」(後の国立科学博物館)などに移しました。
1938年(昭和13)に、復興本館(現在の本館)が開館しましたが、1945年(昭和20)3月に太平洋戦争下の空襲激化のため観覧を停止せざるを得なくなり、戦後の1846年(昭和21)3月から再開されています。
1947年(昭和22)5月3日には、文部省所管となり、新憲法公布と共に「国立博物館」と改称されました。その後、1968年(昭和43)に東洋館が完成、1978年(昭和53)に法隆寺宝物館が開館(1999年改築)、1984年(昭和59)に資料館が完成、1999年(平成11)に平成館が開館と施設が充実されてきています。
収蔵品は、日本および東洋の美術・工芸・考古遺品など国宝89件、重要文化財643件を含む、総数117,460件(2018年3月31日時点)ですが、これとは別に、寄託品として国宝55件、重要文化財260件を含む総数3,109件を保管してきました。
尚、2001年(平成13)に京都国立博物館,奈良国立博物館と共に独立行政法人国立博物館に移行、2007年(平成19)には、独立行政法人国立文化財機構となって、現在に至っています。
〇博物館とは?
広辞苑によると、「古今・東西にわたって考古学資料・美術品・歴史的遺物、その他の学術的資料を博く蒐集し、これを組織的に陳列して一般公衆の展覧に供し、学術研究の資とし、社会教育に寄与するための施設。」となっていました。
また、博物館法では、「博物館は、歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料を収集し、保管し(育成を含む)、展示して教育的配慮のもとに一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資するために必要な事業を行い、あわせて、これらの資料に関する調査研究をする機関である」とされています。
日本では、明治時代前期の1872年(明治5)に文部省博物局の管轄で湯島の聖堂に開設されたのが最初とされ、1875年(明治8)になって内務省管轄の博物館が設置されました。この博物館は、帝国博物館、東京帝室博物館などと名称を変え、太平洋戦争後、国立博物館となり、1952年(昭和27)に現在の東京国立博物館になったのです。
そして、戦後になって博物館の数は急速に増えていきました。日本では現在、博物館の数は増加傾向にあり、文部科学省の調査では、2011年(平成23)10月現在で、5,747館があります。
☆東京国立博物館関係略年表
・1871年(明治4) 文部省博物局が設置される
・1872年(明治53月) 文部省博物局により、日本最初の「博覧会」が湯島聖堂大成殿(現在の東京都文京区湯島)で開催される
・1873年(明治6) 「文部省博物館」は太政官正院の「博覧会事務局」(1872年設置)に併合され、場所も湯島から内山下町(現在の東京都千代田区内幸町)に移転する
・1875年(明治8) 「博覧会事務局」は再び「博物館」と改称され、内務省の管轄となる
・1875年(明治8) 博覧会事務局副総裁の佐野常民は大部のウィーン万国博覧会報告書を提出(大東京博物館設置の必要性を力説)する
・1876年(明治9)、再度「博物館」に改称する
・1877年(明治10) 上野の寛永寺本坊跡地(後に東京国立博物館の敷地となる)で第1回内国勧業博覧会が開催される
・1881年(明治14) 上野公園の寛永寺本坊跡に煉瓦造2階建の本館(イギリス人建築家ジョサイア・コンドル設計)が完成、第2回内国勧業博覧会の展示館として使用される
・1881年(明治14) 農商務省の管理となる
・1882年(明治15)3月20日 明治天皇の行幸を得て、「博物館」の開館式が行われるが、附属動物園(恩賜上野動物園の前身)も同時開園した
・1886年(明治19) 宮内省の管理となる
・1888年(明治21) 宮内省図書寮の付属になる
・1889年(明治22) 「帝国博物館」と改称する
・1900年(明治33) 当時東京・京都・奈良にあった各「帝国博物館」を「帝室博物館」と改称する
・1908年(明治41) 片山東熊設計の石造および煉瓦造2階建(ネオ・ルネサンス様式)、表慶館(2,049平方m)が竣工する
・1909年(明治42) 表慶館が開館する
・1923年(大正12)9月1日 関東大震災で本館・2号館・3号館が大破して使用不能となる
・1924年(大正13) 動物園が博物館から分離し、動物園を含む上野公園が宮内省から東京市に下賜される
・1925年(大正14) 自然史関連の資料を「東京博物館」(後の国立科学博物館)などに移す
・1928年(昭和3) 復興本館(現在の本館)の建設が決まる
・1932年(昭和7)12月 復興本館(現在の本館)が着工する
・1938年(昭和13)11月 復興本館(現在の本館)が開館(22,416平方m)する
・1940年(昭和15) 皇紀2,600年を記念して「正倉院御物特別展観」が開催される
・1945年(昭和20)3月 太平洋戦争下の空襲激化のため観覧を停止する
・1946年(昭和21)3月 戦後、観覧が再開される
・1947年(昭和22)5月3日 文部省所管となり、新憲法公布と共に「国立博物館」と改称される
・1947年(昭和22)9月 機関紙「博物館ニュース」が創刊される
・1952年(昭和27) 「東京国立博物館」と名称を変更する
・1965年(昭和40) 「ツタンカーメン展」を開催し大人気となる
・1968年(昭和43) 文化庁発足と同時にその所管となる
・1968年(昭和43) 谷口吉郎設計の東洋館(12,531平方m)が完成する
・1972年(昭和47) 創立100周年を記念して「東京国立博物館所蔵名品展」が開催される
・1974年(昭和49) 「モナ・リザ展」を開催し大人気(入場者151万人)となる
・1978年(昭和53) 法隆寺宝物館が開館する
・1984年(昭和59)2月 新しく資料館の建物が完成する
・1992年(平成4) 創立120周年を記念して特別展「日本と東洋の美」が開催される
・1999年(平成11)7月 法隆寺宝物館が改築され(3,980平方m)て開館する
・1999年(平成11)10月 平成館(17,981平方m)が開館する
・2001年(平成13)4月 京都国立博物館,奈良国立博物館と共に独立行政法人国立博物館に移行する
・2007年(平成19)4月 独立行政法人国立文化財機構となる