江戸開城(えどかいじょう)は、戊辰戦争の流れの中で、1868年(慶応4/明治元)1月の鳥羽・伏見の戦いで幕府軍が敗北後、同年3~4月に行われた江戸城明け渡しのことでした。
1月3日に鳥羽・伏見の戦いが始まりましたが、幕府軍の敗色が濃厚になり、1月6日に徳川慶喜が大坂城を脱出し、海路で江戸へ逃れ、2月12日に慶喜は、上野寛永寺に入って謹慎し、恭順を示しました。新政府は東征軍を組織して、東海道、東山道、北陸道の3方面から進軍を開始、東征大総督有栖川宮熾仁親王に率いられた東海道軍は、駿府(静岡)まで達します。
そこで、幕府陸軍奉行勝海舟は、幕臣山岡鉄舟を使節として駿府(静岡)へ派遣、3月9日に西郷隆盛と接触させました。11日には東山道先鋒総督参謀の板垣退助が八王子駅に到着、12日には同じく伊地知正治が板橋に入り、13日には東山道先鋒総督岩倉具定も板橋駅に入って、江戸城の包囲網を作りつつ、江戸総攻撃の3月15日が迫ります。
その中で、13日から江戸田町(現在の東京都港区)の薩摩藩江戸藩邸において、旧幕府側の最高責任者である会計総裁・大久保一翁、陸軍総裁・勝海舟と維新政府側の大総督府下参謀・西郷隆盛との交渉が始まりました。翌日の会談で、「1.徳川慶喜は故郷の水戸で謹慎する。2.慶喜を助けた諸侯は寛典に処して、命に関わる処分者は出さない。3.武器・軍艦はまとめておき、寛典の処分が下された後に差し渡す。4.城内居住の者は、城外に移って謹慎する。5.江戸城を明け渡しの手続きを終えた後は即刻田安家へ返却を願う。6.暴発の士民鎮定の件は可能な限り努力する。」の条件で、15日の江戸総攻撃が中止されることになります。
この背景には、維新政府内部の徳川一門、輪王寺宮、静寛院宮(和宮)の嘆願、内戦の拡大を喜ばないイギリス公使 H.パークスの要請などがありました。
西郷隆盛は上京して慶喜処分案の朝裁を得、4月4日に東海道先鋒総督橋本実梁、副総督柳原前光が勅使として江戸城に入城、4月11日に正式に明渡しが行われ、無血開城となります。
しかし、あくまで抗戦を主張する幕臣たちの一部は彰義隊などとして上野に立て籠りますが、5月15日に新政府軍に攻撃されて壊滅し、24日には徳川氏処分案を示して徳川亀之助(家達)を駿府70万石に封じました。
その後も、脱走した旧幕府軍や奥羽越列藩同盟の諸藩と新政府軍との間で、奥州や箱館などで戦闘が続きます。しかし、1869年(明治2)5月18日に、箱館五稜郭が陥落し、旧幕府軍が降伏して、戊辰戦争がすべて終わり、新政府軍の勝利となりました。
〇戊辰戦争関係略年表(日付は旧暦です)
<1868年(慶応4/明治元)>
・1月3日 「鳥羽伏見の戦い」で「戊辰戦争」が始まる
・1月6日 徳川慶喜が大坂城を脱出し、海路で江戸へ逃れる
・2月12日 徳川慶喜は、上野寛永寺に入って謹慎し、恭順を示す
・3月13~14日 西郷隆盛と勝海舟の会談が行われ、江戸での戦闘が回避される
・4月11日 江戸城が無血開城される
・5月3日 奥羽25藩が「奥羽列藩同盟」を結成する
・5月6日 長岡藩など北越6藩が新たに加わり「奥羽越列藩同盟」となる
・5月15日 上野山にいる彰義隊を新政府軍が一日で破る(上野戦争)
・7月14日 白河口の戦いで、新政府軍が勝利する
・7月29日 奥州の二本松城、越後の長岡城が陥落する
・8月23日 新政府軍が会津藩若松城下に侵攻し、会津側は若松城で籠城戦を開始する
・9月8日 明治に改元される
・9月9日 米沢藩が新政府軍に寝返える
・9月10日 仙台藩が降伏する
・9月22日 会津藩が降伏し、「会津戦争」が終わる
・10月26日 榎本武揚軍が箱館を占領する
・11月15日 暴風雨のため榎本武揚軍の旗艦開陽丸が沈没する
<1869年(明治2)>
・3月9日 箱館の榎本武揚軍追討のため、新政府軍艦隊が江戸湾を出発する
・5月11日 箱館総攻撃が始まる
・5月18日 五稜郭が陥落し、旧幕府軍が降伏して「箱館戦争」が終結し、「戊辰戦争」が終わる