この切手は、明治天皇・皇后両陛下の大婚(天皇の結婚のこと)25年祝典(銀婚)にあたって発行されたもので、紅色の2銭(当時の内国用封書用)切手(14,800,000枚)と青色の5銭(当時の外国用封書用)切手(1,000,000枚)の2種類がありました。両方とも凸版印刷で、大きさは縦29mmx横37mmm、デザインは、雌雄の鶴2羽と菊花紋章となっています。
当時の日本には、記念切手発行という考え方がなく、在留外国人の新聞投書によって、銀婚の祝典を記念する切手の発行という考えを知り、当時の黒田清隆逓信大臣の命で、急遽発行に至りました。
〇記念切手とは?
国家または国民的に重要な事柄を記念して、特別(限定的)に発行される郵便切手のことです。世界では、1871年発行のペルーの鉄道20周年記念切手が最初とされてきました。
日本では、1894年(明治27)3月9日発行の「明治天皇銀婚記念切手」が最初で、世界では4番目とされています。当時日本では、「紀念郵便切手」とされていましたが、これは「記念」には「かたみ」の意味があり、これを避けたためだといわれ、大正から昭和にかけて「記念」の文字に変わり、現在に至りました。
当初は記念切手の発行頻度は少なく、数年に一度の割合で、皇室関係のものが多かったのですが、昭和時代に入って多様化して増加しました。太平洋戦争後の1946年(昭和21)からは毎年発行されるようになり、近年では、毎年数十種類出されるようになっています。
☆明治・大正時代に発行された記念切手一覧
・1894年(明治27)3月9日 明治天皇銀婚記念(2銭・5銭)
・1896年(明治29)8月1日 日清戦争勝利記念(2銭2種・5銭2種)
・1900年(明治33)5月10日 大正婚儀記念(3銭)
・1905年(明治38)7月1日 日韓通信業務「合同」記念(3銭)
・1906年(明治39)4月29日 日露戦争凱旋観兵式記念(1銭5厘・3銭)
・1915年(大正4)11月10日 大正大礼記念(1銭5厘・3銭・4銭・10銭)
・1916年(大正5)11月3日 裕仁立太子礼記念(1銭5厘・3銭・10銭)
・1919年(大正8)7月1日 世界大戦平和記念(1銭5厘・3銭・4銭・10銭)
・1919年(大正8)10月3日 飛行郵便試験記念(1銭5厘・3銭)
・1920年(大正9)9月25日 第1回国勢調査記念(1銭5厘・3銭)
・1920年(大正9)11月1日 明治神宮鎮座記念(1銭5厘・3銭)
・1921年(大正10)4月20日 郵便創始50年記念(1銭5厘・3銭・4銭・10銭)
・1921年(大正10)9月3日 皇太子(裕仁)帰朝記念(1銭5厘・3銭・4銭・10銭)
・1923年(大正12)4月16日 皇太子(裕仁)台湾訪問記念(1銭5厘・3銭)
・1925年(大正14)5月10日 大正銀婚記念(1銭5厘・3銭・8銭・20銭)
注:1922年(大正12)11月発行予定で関東大震災のため中止された、皇太子(裕仁)結婚式記念(1銭5厘・3銭・8銭・20銭)がありました(一部流出)