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 今日は、明治時代前期の1886年(明治19)に、「帝国大学令」が公布(同年4月1日施行)された日です。
 「帝国大学令(ていこくだいがくれい)」は、「学校令」(学校種別の5単行勅令の総称で、他に師範学校令、小学校令、中学校令、諸学校通則があった)の一つとして、帝国大学の基本的な事項を規定していました。
 憲法の制定作業に入っていた伊藤博文が、ドイツやオーストリアを範とし、1885年(明治18)に内閣を組織すると共に、初代文相森有礼とはかり、帝国を代表する政府直轄の大学の設立を構想します。その中で、まず東京大学を軸とし他の官省設立の専門教育機関を統合した帝国大学を設置し、それを頂点に、その入学者を育成する高等中学校を全国に5校設け、各府県1校の公立尋常中学校と(中学校令)、各郡1~2校の高等小学校と各町村の尋常小学校とを配して(小学校令)、国民教育の基盤の上に各段階の学校制度を体系付けることとしたものでした。また、その教員養成制度として、高等師範学校(全国に1校、官立)、尋常師範学校(府県に各1校、府県立)の二段階から成る独自の師範学校制度も設立(師範学校令)します。
 「帝国大学令」では、「国家ノ須要ニ応スル学術技芸ヲ教授シ及其蘊奥ヲ攷究スルヲ以テ目的トス」と規定され、大学院(学術研究機関)と法科(法律学科と政治学科の2部)・医科・工科・文科・理科からなる5つの分科大学(学術技芸の教育機関)で構成されました。帝国大学には、総長(勅任官)、評議官、書記官、書記が置かれ、各分科大学は、長、教頭、教授、助教授、舎監、書記が置かれます。
 1890年(明治23)の改正で、分科大学に農科(農学科・林学科・獣医学科の3部)が加えられ、1893年(明治26)の改正で、別個に「帝国大学官制」(職員について)が定められるとともに、新たに講座制や教授会の設置などが決められました。
 その後、1897年(明治30)に2番目の帝国大学として京都帝国大学、1907年(明治40)に仙台に東北帝国大学が設置され、文部省の管轄下に入った札幌農学校が東北帝国大学農科大学に改組されます。さらに、京都帝国大学福岡医科大学を母体にして、1910年(明治43)福岡に九州帝国大学が設置され、明治時代末には北海道から九州までの各地に4帝国大学が分布するに至りました。
 1918年(大正7)に東北帝国大学から分かれて、5番目の北海道帝国大学が設置された翌年に、「帝国大学令」は全面改正され、分科大学の名称を廃止し、学部の名称を使用するようになります。
 それからも、1924年(大正13)に京城帝国大学、928年(昭和3)に台北帝国大学、1931年(昭和6)に大阪帝国大学、1939年(昭和14)に名古屋帝国大学と設置され、太平洋戦争前には9帝国大学となりました。
 戦後、1947年(昭和22年)に「帝国大学令」が「国立総合大学令」に改題され、1949年(昭和24年)5月31日の「国立学校設置法」の公布・施行により、「国立総合大学令」は廃止されます。
 以下に、制定当初の「帝国大学令」を全文掲載しておきますので、ご参照下さい。

〇「帝国大学令」(明治19年勅令第3号)

第一条 帝国大学ハ国家ノ須要ニ応スル学術技芸ヲ教授シ及其蘊奥ヲ攷究スルヲ以テ目的トス

第二条 帝国大学ハ大学院及分科大学ヲ以テ構成ス大学院ハ学術技芸ノ蘊奥ヲ攷究シ分科大学ハ学術技芸ノ理論及応用ヲ教授スル所トス

第三条 分科大学ノ学科ヲ卒ヘ定規ノ試験ヲ経タル者ニハ卒業証書ヲ授与ス

第四条 分科大学ノ卒業生若クハ之ト同等ノ学力ヲ有スル者ニシテ大学院ニ入リ学術技芸ノ蘊奥ヲ攷究シ定規ノ試験ヲ経タル者ニハ学位ヲ授与ス

第五条 帝国大学職員ヲ置ク左ノ如シ
  総長 勅任
  評議官
  書記官 奏任
  書記 判任

第六条 帝国大学総長ハ文部大臣ノ命ヲ承ケ帝国大学ヲ総轄ス其職掌ノ要領ヲ定ムルコト左ノ如シ
  第一 帝国大学ノ秩序ヲ保持スル事
  第二 帝国大学ノ状況ヲ監視シ改良ヲ加フルノ必要アリト認ムル事項ハ案ヲ具ヘテ文部大臣ニ提出スル事
  第三 評議会ノ議長トナリテ其議事ヲ整理シ又議事ノ顛末ヲ文部大臣ニ報告スル事
  第四 法科大学長ノ職務ニ当ル事

第七条 評議会ハ便宜ニ従ヒ帝国大学若クハ文部省ニ於テ開設ス
2 評議会ノ議ニ付スヘキ事項左ノ如シ
  第一 学科課程ニ関スル事項
  第二 大学院及分科大学ノ利害ノ鎖長ニ関スル事項

第八条 評議官ハ文部大臣各分科大学教授ヨリ各二人ヲ特選シテ之ニ充ツ

第九条 評議官ハ五箇年ヲ以テ任期トス任期満ツルノ後時宜ニ依リ更ニ勤続ヲ命スルコトアルヘシ

第十条 分科大学ハ法科大学医科大学工科大学文科大学及理科大学トス
2 法科大学ヲ分テ法律学科及政治学科ノ二部トス

第十一条 分科大学職員ヲ置ク左ノ如シ
  長 奏任
  教頭 奏任
  教授 奏任
  助教授 奏任
  舎監 奏任
  書記 判任

第十二条 分科大学長ハ教授ヨリ特選シテ之ニ兼任ス
2 分科大学長ハ帝国大学総長ノ命令ノ範囲内ニ於テ主管科大学ノ事務ヲ掌理ス

第十三条 各分科大学ノ教頭ハ教授ヨリ特選シテ之ニ兼任ス
2 教頭ハ教授及助教授ノ職務ヲ監督シ及教室ノ秩序ヲ保持スルコトヲ掌ル

第十四条 各分科大学ノ教授助教授ノ人員ハ其学科ノ軽重及学生ノ員数ニ応シテ別ニ文部大臣ノ定ムル所ニ依

   「文部省ホームページ」より

☆帝国大学一覧(設立順)

1,帝国大学(東京帝国大学)-1886年(明治19)設立 
 【専門部】医学 【学部】理・一工・二工・医・農・法・文・経
2,京都帝国大学-1897年(明治30)設立 
 【専門部】医学 【学部】理・工・医・農・法・文・経
3,東北帝国大学-1907年(明治40)設立 
 【専門部】医学 【学部】理・工・医・法文
4,九州帝国大学-1911年(明治44)設立 
 【専門部】医学・工学 【学部】理・工・医・農・法文
5,北海道帝国大学-1918年(大正7)設立 
 【専門部】医学・農林・土木 【学部】理・工・医・農
6,京城帝国大学-1924年(大正13)設立 
 【学部】理工・医・法文
7,台北帝国大学-1928年(昭和3)設立 
 【専門部】医学 【学部】理・工・医・農・文政
8,大阪帝国大学-1931年(昭和6)設立 
 【専門部】医学 【学部】理・工・医
9,名古屋帝国大学-1939年(昭和14)設立 
 【専門部】医学 【学部】理・工・医