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 今日は、明治時代後期の1905年(明治38)に、小説家・詩人・文芸評論家伊藤聖が生まれた日です。
 伊藤整(いとう せい)は、北海道松前郡炭焼沢村(現在の松前町)で、小学校教員の父の長男として生まれましたが、本名は「ひとし」と読みました。
 1906年(明治39)に父の塩谷村(現在の小樽市塩谷町)役場転職に伴い移住します。旧制小樽中学を経て、小樽高等商業学校(現在の小樽商科大学)に入学しましたが、上級生に小林多喜二や高濱年尾がいました。
 1925年(大正14)に卒業後は、旧制小樽市立中学の英語教師となり、百田宗治主宰の『椎の木』同人として、詩集『雪明りの路』(1926年)を出版します。1927年(昭和2)に、教師を辞して上京し、旧制東京商科大学(現在の一橋大学)本科へ入学、フランス文学を学び、梶井基次郎、三好達治とも知遇を得ました。
 1929年(昭和4)に友人らと批評誌『文芸レビュー』を創刊し、小説『感情細胞の断面』 (1930年) で川端康成に認められます。しかし、大学を中退し、1932年(昭和7)に金星堂編集部へ入社、その後職をかえつつも、評論集『新心理主義文学』(1932年)、小説集『生物祭』(1932年)、翻訳『ユリシーズ』共訳、ジョイス作(1931~34年)小説『幽鬼の街』(1937年)などを出して、「新心理主義」の代表的理論家兼実作者として文壇に登場しました。
 戦時下では、知識人の生き方をさぐる小説『得能(とくのう)五郎の生活と意見』(1940~41年)、『得能物語』(1942年)などを発表します。
 太平洋戦争後は、混乱期の知識人の姿を小説『鳴海仙吉』(1946~48年)に戯画化しました。1948年(昭和23)に日本文芸家協会理事、翌年から1950年(昭和25)まで早稲田大学第一文学部講師、1949年(昭和24)に東京工業大学専任講師(英語)、1958年(昭和33)には同大学教授に昇格します。
 その一方で、完訳『チャタレイ夫人の恋人』で猥褻罪により起訴されたのを機に芸術表現の自由をめぐる法廷闘争を展開、その体験から得た組織と人間の主題を評論『裁判』(1952年)、小説『花ひらく』(1953年)、『火の鳥』(1949~53年)として出す中で、1953年(昭和28)に「婦人公論」に戯文エッセイを連載し、翌年『女性に関する十二章』として出版したところベストセラーとなりました。
 その後、1963年(昭和38)に評論『日本文壇史』で第11回菊池寛賞、1966年(昭和41)に第23回日本芸術院賞、1968年(昭和43)に芸術院会員、1970年(昭和45)に第2回日本文学大賞と数々の栄誉に輝きます。
 また、日本近代文学館の設立にも尽力しましたが、1969年(昭和44)11月15日に、東京において、64歳で亡くなりました。
 尚、1990年(平成2)、その業績を永く顕彰するために、伊藤整文学賞が創設されています。

〇伊藤整の主要な著作

・詩集『雪明りの路(みち)』(1926年)
・小説『感情細胞の断面』(1930年)
・評論集『新心理主義文学』(1932年)
・小説集『生物祭』(1932年)
・翻訳『ユリシーズ』共訳、ジョイス作(1931~34年)
・小説『幽鬼の街』(1937年)
・小説『街と村』(1937~38年)
・小説『得能(とくのう)五郎の生活と意見』(1940~41年)
・小説『得能物語』(1942年)
・小説『鳴海(なるみ)仙吉』(1946~48年)
・評論集『小説の方法』(1948年)
・翻訳『チャタレイ夫人の恋人』D・H・ローレンス作(1950年)
・評論『裁判』(1952年)
・エッセイ『伊藤整氏の生活と意見』(1951~52年)
・小説『花ひらく』(1953年)
・エッセイ『女性に関する十二章』(1953年)
・評論『文学と人間』(1953年)
・『文学入門』(1953年)
・小説『火の鳥』(1949~53年)
・評論『小説の認識』(1955年)
・小説『若い詩人の肖像』(1954~56年)
・評論『芸術は何のためにあるか』(1957年)
・小説『誘惑』(1957年)
・小説『氾濫』(1956~58年)
・定本「伊藤整詩集」(1958年)
・小説『年々(ねんねん)の花』(1962~63年)
・小説『発掘』(1962~64年)
・小説『変容』(1967~68年)
・評論『日本文壇史』(1952~69年)
・『太平洋戦争日記』全3巻(1983年)